特許第6052721号(P6052721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052721
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】新規乳酸菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20161219BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20161219BHJP
   A23L 19/20 20160101ALI20161219BHJP
   C12R 1/25 20060101ALN20161219BHJP
【FI】
   C12N1/20 A
   A23L33/135
   A23L19/20
   C12R1:25
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-145915(P2012-145915)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-7987(P2014-7987A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年6月11日
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-926
(73)【特許権者】
【識別番号】399061916
【氏名又は名称】東海漬物株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】小村 美香
(72)【発明者】
【氏名】西尾 翔子
(72)【発明者】
【氏名】佐津川 満
(72)【発明者】
【氏名】森田 達也
(72)【発明者】
【氏名】日野 真吾
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−180836(JP,A)
【文献】 特開2009−082127(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052996(WO,A1)
【文献】 特開2009−089626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P−926)。
【請求項2】
Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P−926)を含むことを特徴とするプロバイオティクス製品。
【請求項3】
免疫賦活作用を有するものである請求項2に記載のプロバイオティクス製品。
【請求項4】
さらにフラクトオリゴ糖および/またはセロオリゴ糖を含む請求項2または3に記載のプロバイオティクス製品。
【請求項5】
漬物製品である請求項2〜4のいずれかに記載のプロバイオティクス製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規乳酸菌、および、当該新規乳酸菌を含むプロバイオティクス製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりと、消費者が乳酸菌に抱く好印象から、乳酸菌を利用した飲食品製品が多くみられる。また、食品業界だけでなく、医療分野でも治療医学から予防医学へと重点がシフトしてきている。このように、毎日の食事から健康を実現できるプロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックス等を利用した飲食品やサプリメントの市場は拡大の一途を辿っている。
【0003】
ここで、プロバイオティクスとは、腸内フローラ(腸内菌叢)のバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物と定義され、プレバイオティクスとは、プロバイオティクスの働きを助ける物質のことで、消化管上部で分解・吸収されず、腸内のプロバイオティクスのエサになり、悪玉菌を増やさず善玉菌だけを増やすものをいう。また、バイオジェニックスとは、直接、あるいは腸内フローラを介して免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓・造血作用などの生体調節、生体防御、疾病予防・回復、老化制御等に働く食品成分と定義されている(バイオジェニックス研究会ホームページより)。
【0004】
プロバイオティクスを利用した食品等として、例えば特許文献1には、Pediococcus pentosaceus OS株による果菜発酵物が開示されている。特許文献2には、Lactobacillus brevisに属する乳酸菌を用いた発酵飲食品の製造方法が記載されている。また、特許文献3には、免疫調節作用を有し、健康食品などに利用可能なLactobacillus Pentosus S−PT84株が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−295352号公報
【特許文献2】国際公開第2008/149654号パンフレット
【特許文献3】特開2005−333919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来、プロバイオティクスを利用した食品等は開発されている。しかし、近年の健康志向の高まりから、より優れたプロバイオティクスは常に求められている。例えば免疫賦活作用を直接示すプロバイオティクスであれば、体調の改善のみならず、疾患の予防にも役立ち得る。
【0007】
そこで本発明は、胃酸や胆汁酸に対して安定であり消化管下部まで到達して腸内フローラを改善することができ、且つ、優れた免疫賦活作用を示す新規なプロバイオティクス乳酸菌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、漬物開発品から上記特性を有する新規な乳酸菌を見出して、本発明を完成した。
【0009】
本発明に係る新規乳酸菌は、Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P−926)である。
【0010】
また、本発明に係るプロバイオティクス製品は、Lactobacillus plantarum TK61406株(受託番号:NITE P−926)を含むことを特徴とする。
【0011】
上記プロバイオティクス製品は、Lactobacillus plantarum TK61406株に由来する免疫賦活作用を有するという特性を有する。かかる作用効果により、疾患などの治療効果のみならず、予防効果も期待することができる。
【0012】
上記プロバイオティクス製品としては、上記新規乳酸菌と共にフラクトオリゴ糖および/またはセロオリゴ糖を含むものが好ましい。上記新規乳酸菌と共にこれらプレバイオティクスを摂取すれば、消化管下部における上記新規乳酸菌の増殖や活動が活発になり、腸内フローラの改善がより一層進み得る。
【0013】
上記プロバイオティクス製品の形態としては、漬物製品が好ましい。従来、漬物製造において発酵に関与する乳酸菌スターターについてはよく研究されているが、風味の制御や過発酵の抑制といった製造適正が重視されて選抜されてきた経緯があり、健康に対する効果、特に腸内環境改善効果を志向して開発された漬物製造用乳酸菌スターターはない。一方、本発明乳酸菌は、上記のとおりプロバイオティクス製品に適用できるのみならず、漬物製造乳酸菌スターターとしても利用できるので、本発明に係るプロバイオティクス製品の好適な形態としては、漬物製品が挙げられる。また、当該漬物製品は、従来にない優れたプロバイオティクス製品でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る新規乳酸菌は、食品である漬物製品から単離されたものであり、非常に安全である。また、胃酸や胆汁酸に対して安定であり、経口摂政されても消化管下部まで到達することができ、且つ腸内フローラを改善可能である。さらに本発明乳酸菌は、非常に優れた免疫賦活作用を示す。よって本発明乳酸菌は、近年、注目が集まっているプロバイオティクス製品に適用可能なものとして非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明乳酸菌を摂取したマウスの糞便から培養された菌のプラスミドDNAのバンドパターン写真である。
図2図2は、様々なプレバイオティクスを含む培地で本発明乳酸菌を培養した場合における生菌数と培地中有機酸量を示すグラフである。
図3図3は、脾臓細胞を本発明乳酸菌と共に培養した場合に産生されるサイトカインの量の変化を示すグラフである。(1)はIFN−γの量を示し、(2)はIL−12の量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る新規乳酸菌であるLactobacillus plantarum TK61406株は、下記の通り寄託機関に寄託されている。
(i) 寄託機関の名称およびあて名
名称: 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
あて名: 日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8
(ii) 寄託日: 2010年4月9日
(iii) 受託番号: NITE P−926
【0017】
本発明に係る新規乳酸菌の形態的特徴や生化学的性状などは、以下のとおりである。なお、表1中、「+(w)」は弱い陽性を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
本発明に係る新規乳酸菌は、後記実験データのとおり、経口摂取により消化管下部に到達し、腸内フローラを改善することができる。従って、本発明に係る新規乳酸菌は、プロバイオティクスとして食品などに添加して利用可能である。
【0020】
詳しくは、先ず、本発明に係る新規乳酸菌を培養する。培養条件は特に制限されず、上記特徴に応じた培養条件とすればよい。例えば、グルコースやフルクトースなどの炭素源;酵母エキスやタンパク質加水分解物などの一般的栄養成分;グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸およびその塩;硫酸マグネシウムなどのミネラル成分;乳酸や酢酸ナトリウムなどのpH調整剤を添加した培地中、pH3以上、8以下、より好ましくはpH3.5以上、7.5以下、10℃以上、40℃以下、より好ましくは20℃以上で十分に培養することができる。また、培養は、前培養と、工業的な大量培養の二段階で行ってもよい。
【0021】
次いで、培養された新規乳酸菌を集める。さらに、集めた新規乳酸菌を凍結乾燥してから粉末化してもよい。或いは、培養液のまま利用してもよい。
【0022】
得られた本発明乳酸菌は、食品、健康食品、医薬品などに利用することができる。食品としては、例えば、賦形剤などの添加剤と共に錠剤やカプセル剤などとし、健康食品や医薬品として用いることができる。また、本発明乳酸菌が利用可能な食品としては、漬物、ヨーグルト、ドレッシング類、飲料などが挙げられる。特に、本発明菌は乳酸菌であることから、漬物やヨーグルトの製造に本発明に係る新規乳酸菌を直接用い、そのまま食品としてもよい。以下、特に、本発明乳酸菌を用いた漬物について説明する。
【0023】
本発明に係る漬物の原料として用いる野菜類は、浅漬の材料として一般的なものであれば特に制限されない。例えば、キュウリ、ゴーヤ、ズッキーニ、冬瓜などのウリ科果菜類;トウガラシ、トマト、ナス、ピーマンなどのナス科果菜類;ニンニク、ネギ、ラッキョウなどのユリ科茎菜類;空心菜などのヒルガオ科茎菜類;ショウガなどのショウガ科茎菜類;タケノコなどのイネ科茎菜類;カブ、ザーサイ、大根などのアブラナ科根菜類;ニンジンなどのセリ科根菜類;ミョウガなどのショウガ科花菜類;青菜、キャベツ、小松菜、山東菜、ターサイ、高菜、チンゲンサイ、野沢菜、白菜、ホウレンソウ、水菜、壬生菜などのアブラナ科葉菜類;ニラなどのユリ科葉菜類;レタスなどのキク科葉菜類を挙げることができる。
【0024】
原料野菜としては、当然ながら、収穫後、洗浄したものが好ましい。また、原料野菜は、事前に適当な大きさに裁断しておいてもよい。
【0025】
次に、上記工程を経た原料野菜を、調味液に漬ける前に下漬してもよい。当該工程は任意であるが、下漬処理により原料野菜の細胞が脱水されて組織が柔軟になり、調味液が野菜類に浸透し易くなる。下漬処理の一例としては、原料野菜に塩化ナトリウムをまぶし、圧力をかけつつ一昼夜静置することが挙げられる。
【0026】
次に、原料野菜を調味液へ漬けることにより漬物とする。その際、本発明に係る新規乳酸菌を用いる。具体的には、調味液へ本発明乳酸菌を添加してもよいし、また、本発明乳酸菌を事前培養し、培養液と共に原料野菜へ塗布してもよい。なお、原料野菜を調味液に漬けるとは、原料野菜が調味液と十分に接触することを意味し、例えば、原料野菜を調味液に完全に浸漬してもよいし、原料野菜が調味液に浸る程度にしてもよいし、原料野菜と調味液の混合物を振とうしたり攪拌してもよいものとする。
【0027】
調味液は、浅漬の製造に用いられるものであれば特に制限されない。浅漬用調味液の配合成分としては、例えば、食塩や塩化ナトリウム;グルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;グアニル酸やイノシン酸などの核酸;砂糖、異性化液糖、水飴、オリゴ糖、ステビア、サッカリン、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトールなどの甘味料;クエン酸、乳酸、酢酸、酢酸ナトリウムなどのpH調整剤;醤油、魚醤、酸分解アミノ酸液、タンパク質加水分解物、動植物エキス、酵母エキス、みりんなどの調味料などを挙げることができる。
【0028】
上記で得られた浅漬は、野菜類が調味液に漬けられた状態のまま小分け包装して製品としてもよいし、調味液を原料野菜から除去して製品としてもよい。本発明に係る新規乳酸菌は、調味液中に含まれるか或いは野菜内に浸透しているので、浅漬の摂取により体内に取り込まれ、消化管下部まで到達し、腸内フローラを改善することができる。
【0029】
本発明に係るプロバイオティクス製品には、上記新規乳酸菌に加え、プレバイオティクスを添加してもよい。かかるプレバイオティクスとしては、フラクトオリゴ糖もしくはセロオリゴ糖、またはフラクトオリゴ糖とセロオリゴ糖との組合せが好ましい。本発明乳酸菌にこれらプレバイオティクスを併用すれば、本発明乳酸菌の増殖や活動が活発になり、腸内フローラの改善効果がより一層高まり得る。
【0030】
プレバイオティクスの使用量は、プロバイオティクス製品における本発明乳酸菌の配合量や製品形態などにより適宜調整すればよいが、例えば、プロバイオティクス製品全体に対して0.05質量%以上、10質量%以下程度とすればよい。0.05質量%以上であれば、本発明乳酸菌に対するプレバイオティクスの効果がより確実に発揮され得る。一方、プレバイオティクスの量が多過ぎると効果が飽和することの他、プロバイオティクス製品の味に影響が出る可能性があり得るので、当該割合としては10質量%以下が好適である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0032】
実施例1
(1) 本発明に係る乳酸菌の単離と実験動物への投与
本願出願人が製造した漬物製品からLb.plantarum TK61406株を単離した。
【0033】
体重105〜107g、5週齢のWistar系雄性ラット12匹を6匹ずつ、本発明乳酸菌であるTK61406株投与群とコントロール群の2群に分け、米国国立栄養研究所標準準精製飼料(AIN-76 semi-purified-diet)と水を自由摂取させつつ3日間馴化飼育した。次いで、本発明乳酸菌投与群には、TK61406株の凍結乾燥菌体1010個を1mLの生理食塩水に懸濁し、シリンジを使って1日1回経口投与した。それ以外は馴化飼育期間と同様に、飼料と水を自由摂取させつつ7日間飼育した。
【0034】
(2) 生菌到達確認試験
本発明乳酸菌投与群では、馴化飼育後から0日目、3日目および7日目に糞便を回収した。得られた糞便をTK61406株用選択培地(ソルビトールと5%NaClを含む)に塗布し、30℃で48時間培養した。1匹当たり5株のシングルコロニーを採取し、プラスミドDNAのバンドパターンを解析し、また、糖類に対する資化性を試験した。7日目の糞便から培養された菌のプラスミドDNAのバンドパターンを図1に示す。なお、比較のために、分子量マーカーと共に、TK61406株自体のバンドパターンを同時に示す。また、レーン数の関係から、各ラットから採取したシングルコロニーから1コロニーまたは2コロニーを任意に選択して試験した。
【0035】
図1のとおり、TK61406株を摂取したマウスの糞便からは、TK61406株が検出されることが明らかにされている。また、採取されたコロニーの糖類資化性は、いずれもTK61406株と同様であった。従って、本発明に係るTK61406株は、経口摂取された場合、胃酸や胆汁酸の存在にもかかわらず、生きたまま消化管下部(大腸)まで到達できることが証明された。なお、馴化飼育直後と馴化飼育後から7日目に各ラットの摂餌量と体重を測定したが、コントロール群と本発明乳酸菌投与群との間に有意差は認められず、本発明乳酸菌による食欲等への影響が無いことが確認された。
【0036】
さらに、TK61406株投与7日目の糞便における生菌数を計測した。詳しくは、CO2ガスを吹き付けてから密栓し、重石をのせて115℃で20分間オートクレーブすることにより調製した嫌気性希釈液に採取した糞便を段階希釈し、測定試料とした。得られた測定試料(100μL)を、嫌気性細菌用のEG寒天培地、Eubacterium属細菌用のES寒天培地、Bacteroidaceae属細菌用のBAC寒天培地、Lactic Acid Bacteria属細菌用のMRS寒天培地、Enterobacteriaceae属細菌用のDHL培地、好気性細菌用のTS寒天培地、Bifidobacterium属細菌用のTOS寒天培地、Lactobacillus属細菌用のLBS変法培地、Streptococcus属細菌用のTATAC寒天培地、嫌気性細菌用のBL寒天培地、Clostridium属細菌用のNN寒天培地、Staphylococcus属細菌用のPEES寒天培地、Yeast用のP寒天培地、またはTK61406株用の選択培地に均一に拡げ、それぞれに適した温度(30℃または37℃)、日数(1〜3日間)、酸素条件(好気培養または嫌気培養)で培養した後、30〜300個のコロニーが生育したプレートを用いて生菌数を計測した。各コロニーについて色や形態の特徴でグルーピングし、グラム染色性、カタラーゼ活性、溶血帯の有無、酸素条件の変更による生育の有無を確認し、菌種を判別した。計測された生菌数(log cfu/g糞便)につき、チューキークレーマーの多重比較検定を行った。但し、Staphylococcusのみクラスカルワリスの検定を行った。結果を表2に示す。なお、表2中、「*」はp<0.01で有意差があることを示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2に示す結果のとおり、本発明に係るTK61406株により、腸内における乳酸菌数が有意に増加することが証明された。本発明乳酸菌は食品である漬物から単離されたものであって安全なものであることから、腸内で本発明乳酸菌が増加できるということは、悪性大腸菌などの悪玉菌の増殖が抑制され、腸内フローラが改善されることを意味する。
【0039】
実施例2 プレバイオティクスとのin vitro併用実験
乳酸菌用培地であるGYP培地のグルコース(1質量%)を表3に示すプレバイオティクスに置換した液体培地を用いてTK61406株を30℃で24時間培養した。また、比較のため、糖類を含まないGYP培地と、D−グルコースを含む通常のGYP培地を用い、同様に培養した。
【0040】
【表3】
【0041】
培養後、培養液の一部(1mL)を採取して生菌数を計測し、また、HPLC(カラム:昭和電工社製「Shodex RSpak KC−811」)を用いて培地中の有機酸量を測定した。生菌数の結果を図2(1)に、有機酸量の結果を図2(2)に示す。
【0042】
図2(1)のとおり、フラクトオリゴ糖、セロオリゴ糖、難消化性でない通常のデンプンを培地に添加した場合に、D−グルコースと同程度に生菌数が明らかに増加し、また、フラクトオリゴ糖およびセロオリゴ糖を培地に添加した場合に、培地中の有機酸量が明らかに増加した。従って、本発明に係るTK61406株にフラクトオリゴ糖またはセロオリゴ糖を併用することにより、腸内におけるTK61406株の増殖をより一層促すことができ、且つその活動を活発化せしめ得ることが実証された。
【0043】
実施例3 プレバイオティクスとのin vivo併用実験
体重90〜110g、5週齢の雄性Wistar系ラット12匹を6匹ずつTK61406株投与群とTK61406株+フラクトオリゴ糖投与群とに任意に分けた。TK61406株投与群用の餌としては、米国国立栄養研究所標準準精製飼料(AIN-76 semi-purified-diet)に107/gの菌数割合でTK61406株を添加したものを用いた。また、TK61406株+フラクトオリゴ糖投与群には、さらに3質量%の割合でフラクトオリゴ糖(明治フードマテリア社製,メイオリゴ(登録商標)P)を混合した餌を与えた。各群ラットを、水と上記餌を自由摂取させつつ14日間飼育した。その後、ラットを屠殺して盲腸を取り出し、その内容物重量、組織重量、pH、免疫グロブリンA(IgA)量を測定し、また、上記実施例2と同様にHPLCにて有機酸量を測定した。得られた測定値につき、二元配置分散分析およびチューキーの全群比較検定で有意差検定を行った。結果を表4に示す。なお、表4中、「*」はp<0.01で有意差があることを示す。
【0044】
【表4】
【0045】
上記結果のとおり、本発明に係るTK61406株に加えてプレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖を併用投与することにより、腸内の有機酸量が有意に増加することが実証された。この結果は、フラクトオリゴ糖の併用によりTK61406株または腸内善玉細菌の活動が活発になったことによると考えられる。
【0046】
実施例4 TK61406株による免疫賦活化効果の確認試験
上記実施例3の結果のとおり、本発明に係るTK61406株をフラクトオリゴ糖と併用することにより、腸内の免疫グロブリンAの量が顕著に増加することが明らかとなった。そこで、TK61406株自体による免疫賦活化効果を確認した。
【0047】
5週齢の雄性Wistar系ラット3匹から無菌的に脾臓を摘出し、RPMI−1640培地(SIGMA社製R8758)中ですり潰した。セルストレーナーで脾臓細胞を濾別し、50mLファルコンチューブへ入れた。RPMI−1640培地を使って遠心洗浄した後、赤血球溶血試薬(144mM塩化アンモニウム,17mMトリス,pH7.2)で赤血球を溶血除去し、ハンクス平衡塩溶液(SIGMA社製H4641)を使った遠心洗浄を2回行った。Antibiotic antimycotic solution 100×(SIGMA社製A5955)を用いて抗生物質1%とFBS20%含むRPMI培地を調製し、得られた脾臓細胞を懸濁し、96wellプレートに5×105/200μLの菌数割合で播種した。さらに、TK61406株を10μL/mLの菌数割合で添加し、5%CO2雰囲気下、37℃で3日間培養した。培養後の培養液を遠心分離し、上清を回収し、ELISA法によりサイトカインであるIFN−γとIL−12を定量した。また、陽性対照としてTK61406株の代わりに100μg/mLの濃度でLPSを添加してサイトカインを誘導したもの、陰性対照としてLPSもTK61406株も添加しなかったものについても同様に試験を行った。結果を図3と表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
上記結果のとおり、本発明に係るTK61406株を脾臓細胞に添加した場合には、陽性対照であるLPSを添加した場合以上にIFN−γとIL−12が産生された。IFN−γはTh1型のサイトカインであり、その濃度が高まれば、Th2型疾病に対して有効である。また、IL−12はIFN−γは活性化因子である。従って、本発明に係るTK61406株の投与により、細胞性の自然免疫が賦活化されることが明らかにされた。
図1
図2
図3