【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0032】
実施例1
(1) 本発明に係る乳酸菌の単離と実験動物への投与
本願出願人が製造した漬物製品からLb.plantarum TK61406株を単離した。
【0033】
体重105〜107g、5週齢のWistar系雄性ラット12匹を6匹ずつ、本発明乳酸菌であるTK61406株投与群とコントロール群の2群に分け、米国国立栄養研究所標準準精製飼料(AIN-76 semi-purified-diet)と水を自由摂取させつつ3日間馴化飼育した。次いで、本発明乳酸菌投与群には、TK61406株の凍結乾燥菌体10
10個を1mLの生理食塩水に懸濁し、シリンジを使って1日1回経口投与した。それ以外は馴化飼育期間と同様に、飼料と水を自由摂取させつつ7日間飼育した。
【0034】
(2) 生菌到達確認試験
本発明乳酸菌投与群では、馴化飼育後から0日目、3日目および7日目に糞便を回収した。得られた糞便をTK61406株用選択培地(ソルビトールと5%NaClを含む)に塗布し、30℃で48時間培養した。1匹当たり5株のシングルコロニーを採取し、プラスミドDNAのバンドパターンを解析し、また、糖類に対する資化性を試験した。7日目の糞便から培養された菌のプラスミドDNAのバンドパターンを
図1に示す。なお、比較のために、分子量マーカーと共に、TK61406株自体のバンドパターンを同時に示す。また、レーン数の関係から、各ラットから採取したシングルコロニーから1コロニーまたは2コロニーを任意に選択して試験した。
【0035】
図1のとおり、TK61406株を摂取したマウスの糞便からは、TK61406株が検出されることが明らかにされている。また、採取されたコロニーの糖類資化性は、いずれもTK61406株と同様であった。従って、本発明に係るTK61406株は、経口摂取された場合、胃酸や胆汁酸の存在にもかかわらず、生きたまま消化管下部(大腸)まで到達できることが証明された。なお、馴化飼育直後と馴化飼育後から7日目に各ラットの摂餌量と体重を測定したが、コントロール群と本発明乳酸菌投与群との間に有意差は認められず、本発明乳酸菌による食欲等への影響が無いことが確認された。
【0036】
さらに、TK61406株投与7日目の糞便における生菌数を計測した。詳しくは、CO
2ガスを吹き付けてから密栓し、重石をのせて115℃で20分間オートクレーブすることにより調製した嫌気性希釈液に採取した糞便を段階希釈し、測定試料とした。得られた測定試料(100μL)を、嫌気性細菌用のEG寒天培地、Eubacterium属細菌用のES寒天培地、Bacteroidaceae属細菌用のBAC寒天培地、Lactic Acid Bacteria属細菌用のMRS寒天培地、Enterobacteriaceae属細菌用のDHL培地、好気性細菌用のTS寒天培地、Bifidobacterium属細菌用のTOS寒天培地、Lactobacillus属細菌用のLBS変法培地、Streptococcus属細菌用のTATAC寒天培地、嫌気性細菌用のBL寒天培地、Clostridium属細菌用のNN寒天培地、Staphylococcus属細菌用のPEES寒天培地、Yeast用のP寒天培地、またはTK61406株用の選択培地に均一に拡げ、それぞれに適した温度(30℃または37℃)、日数(1〜3日間)、酸素条件(好気培養または嫌気培養)で培養した後、30〜300個のコロニーが生育したプレートを用いて生菌数を計測した。各コロニーについて色や形態の特徴でグルーピングし、グラム染色性、カタラーゼ活性、溶血帯の有無、酸素条件の変更による生育の有無を確認し、菌種を判別した。計測された生菌数(log cfu/g糞便)につき、チューキークレーマーの多重比較検定を行った。但し、Staphylococcusのみクラスカルワリスの検定を行った。結果を表2に示す。なお、表2中、「*」はp<0.01で有意差があることを示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2に示す結果のとおり、本発明に係るTK61406株により、腸内における乳酸菌数が有意に増加することが証明された。本発明乳酸菌は食品である漬物から単離されたものであって安全なものであることから、腸内で本発明乳酸菌が増加できるということは、悪性大腸菌などの悪玉菌の増殖が抑制され、腸内フローラが改善されることを意味する。
【0039】
実施例2 プレバイオティクスとのin vitro併用実験
乳酸菌用培地であるGYP培地のグルコース(1質量%)を表3に示すプレバイオティクスに置換した液体培地を用いてTK61406株を30℃で24時間培養した。また、比較のため、糖類を含まないGYP培地と、D−グルコースを含む通常のGYP培地を用い、同様に培養した。
【0040】
【表3】
【0041】
培養後、培養液の一部(1mL)を採取して生菌数を計測し、また、HPLC(カラム:昭和電工社製「Shodex RSpak KC−811」)を用いて培地中の有機酸量を測定した。生菌数の結果を
図2(1)に、有機酸量の結果を
図2(2)に示す。
【0042】
図2(1)のとおり、フラクトオリゴ糖、セロオリゴ糖、難消化性でない通常のデンプンを培地に添加した場合に、D−グルコースと同程度に生菌数が明らかに増加し、また、フラクトオリゴ糖およびセロオリゴ糖を培地に添加した場合に、培地中の有機酸量が明らかに増加した。従って、本発明に係るTK61406株にフラクトオリゴ糖またはセロオリゴ糖を併用することにより、腸内におけるTK61406株の増殖をより一層促すことができ、且つその活動を活発化せしめ得ることが実証された。
【0043】
実施例3 プレバイオティクスとのin vivo併用実験
体重90〜110g、5週齢の雄性Wistar系ラット12匹を6匹ずつTK61406株投与群とTK61406株+フラクトオリゴ糖投与群とに任意に分けた。TK61406株投与群用の餌としては、米国国立栄養研究所標準準精製飼料(AIN-76 semi-purified-diet)に10
7/gの菌数割合でTK61406株を添加したものを用いた。また、TK61406株+フラクトオリゴ糖投与群には、さらに3質量%の割合でフラクトオリゴ糖(明治フードマテリア社製,メイオリゴ(登録商標)P)を混合した餌を与えた。各群ラットを、水と上記餌を自由摂取させつつ14日間飼育した。その後、ラットを屠殺して盲腸を取り出し、その内容物重量、組織重量、pH、免疫グロブリンA(IgA)量を測定し、また、上記実施例2と同様にHPLCにて有機酸量を測定した。得られた測定値につき、二元配置分散分析およびチューキーの全群比較検定で有意差検定を行った。結果を表4に示す。なお、表4中、「*」はp<0.01で有意差があることを示す。
【0044】
【表4】
【0045】
上記結果のとおり、本発明に係るTK61406株に加えてプレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖を併用投与することにより、腸内の有機酸量が有意に増加することが実証された。この結果は、フラクトオリゴ糖の併用によりTK61406株または腸内善玉細菌の活動が活発になったことによると考えられる。
【0046】
実施例4 TK61406株による免疫賦活化効果の確認試験
上記実施例3の結果のとおり、本発明に係るTK61406株をフラクトオリゴ糖と併用することにより、腸内の免疫グロブリンAの量が顕著に増加することが明らかとなった。そこで、TK61406株自体による免疫賦活化効果を確認した。
【0047】
5週齢の雄性Wistar系ラット3匹から無菌的に脾臓を摘出し、RPMI−1640培地(SIGMA社製R8758)中ですり潰した。セルストレーナーで脾臓細胞を濾別し、50mLファルコンチューブへ入れた。RPMI−1640培地を使って遠心洗浄した後、赤血球溶血試薬(144mM塩化アンモニウム,17mMトリス,pH7.2)で赤血球を溶血除去し、ハンクス平衡塩溶液(SIGMA社製H4641)を使った遠心洗浄を2回行った。Antibiotic antimycotic solution 100×(SIGMA社製A5955)を用いて抗生物質1%とFBS20%含むRPMI培地を調製し、得られた脾臓細胞を懸濁し、96wellプレートに5×10
5/200μLの菌数割合で播種した。さらに、TK61406株を10μL/mLの菌数割合で添加し、5%CO
2雰囲気下、37℃で3日間培養した。培養後の培養液を遠心分離し、上清を回収し、ELISA法によりサイトカインであるIFN−γとIL−12を定量した。また、陽性対照としてTK61406株の代わりに100μg/mLの濃度でLPSを添加してサイトカインを誘導したもの、陰性対照としてLPSもTK61406株も添加しなかったものについても同様に試験を行った。結果を
図3と表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
上記結果のとおり、本発明に係るTK61406株を脾臓細胞に添加した場合には、陽性対照であるLPSを添加した場合以上にIFN−γとIL−12が産生された。IFN−γはTh1型のサイトカインであり、その濃度が高まれば、Th2型疾病に対して有効である。また、IL−12はIFN−γは活性化因子である。従って、本発明に係るTK61406株の投与により、細胞性の自然免疫が賦活化されることが明らかにされた。