(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施例1〕
図1は、実施例1のハイブリッド車両の制御装置を具えたハイブリッド車両の駆動系およびその全体制御システムを示す概略系統図である。
図1のハイブリッド車両は、エンジン1および電動モータ2を動力源として搭載され、エンジン1は、スタータモータ3により始動する。エンジン1は、Vベルト式無段変速機4を介して駆動輪5に適宜切り離し可能に駆動結合し、Vベルト式無段変速機4は、概略を以下に説明するようなものとする。
【0012】
Vベルト式無段変速機4は、プライマリプーリ6と、セカンダリプーリ7と、これらプーリ6,7間に掛け渡したVベルト8とからなるバリエータから構成された無段変速機構CVTである。プライマリプーリ6はトルクコンバータT/Cを介してエンジン1のクランクシャフトに結合し、セカンダリプーリ7はクラッチCLおよびファイナルギヤ組9を順次介して駆動輪5に結合する。かくしてクラッチCLの締結状態で、エンジン1からの動力はトルクコンバータT/Cを経てプライマリプーリ6へ入力され、その後Vベルト8、セカンダリプーリ7、クラッチCLおよびファイナルギヤ組9を順次経て駆動輪5に達し、ハイブリッド車両の走行に供される。
【0013】
かかるエンジン動力伝達中、プライマリプーリ6のプーリV溝幅を小さくしつつ、セカンダリプーリ7のプーリV溝幅を大きくすることで、Vベルト8がプライマリプーリ6との巻き掛け円弧径を大きくされると同時にセカンダリプーリ7との巻き掛け円弧径を小さくされ、Vベルト式無段変速機4はハイ側プーリ比(ハイ側変速比)へのアップシフトを行うことができる。ハイ側変速比へのアップシフトを限界まで行った場合、変速比は最高変速比に設定される。
【0014】
逆にプライマリプーリ6のプーリV溝幅を大きくしつつ、セカンダリプーリ7のプーリV溝幅を小さくすることで、Vベルト8がプライマリプーリ6との巻き掛け円弧径を小さくされると同時にセカンダリプーリ7との巻き掛け円弧径を大きくされ、Vベルト式無段変速機4はロー側プーリ比(ロー側変速比)へのダウンシフトを行うことができる。ロー側変速比へのダウンシフトを限界まで行った場合、変速は最低変速比に設定される。
【0015】
無段変速機4は、プライマリプーリ6の回転数を検出する入力回転センサ6aと、セカンダリプーリ7の回転数を検出する出力回転センサ7aとを有し、これら両回転センサにより検出された回転数に基づいて実変速比を算出し、この実変速比が目標変速比となるように各プーリの油圧制御等が行われる。
【0016】
電動モータ2はファイナルギヤ組11を介して駆動輪5に常時結合し、この電動モータ2は、バッテリ12の電力によりインバータ13を介して駆動する。
インバータ13は、バッテリ12の直流電力を交流電力に変換して電動モータ2へ供給すると共に、電動モータ2への供給電力を加減することにより、電動モータ2を駆動力制御および回転方向制御する。
なお電動モータ2は、上記のモータ駆動のほかに発電機としても機能し、後で詳述する回生制動の用にも供する。この回生制動時はインバータ13が、電動モータ2に回生制動力分の発電負荷をかけることにより、電動モータ2を発電機として作用させ、電動モータ2の発電電力をバッテリ12に蓄電する。
【0017】
実施例1のハイブリッド車両は、クラッチCLを解放すると共にエンジン1を停止させた状態で電動モータ2を駆動することで、電動モータ2の動力のみがファイナルギヤ組11を経て駆動輪5に達し、電動モータ2のみによる電気走行モード(EVモード)で走行を行う。この間、クラッチCLを解放していることで、停止状態のエンジン1を連れ回すことがなく、EV走行中の無駄な電力消費を抑制する。
【0018】
上記のEV走行状態においてエンジン1をスタータモータ3により始動させると共にクラッチCLを締結させると、エンジン1からの動力がトルクコンバータT/C、プライマリプーリ6、Vベルト8、セカンダリプーリ7、クラッチCLおよびファイナルギヤ組9を順次経て駆動輪5に達するようになり、ハイブリッド車両はエンジン1および電動モータ2によるハイブリッド走行モード(HEVモード)で走行を行う。
【0019】
ハイブリッド車両を上記の走行状態から停車させる、もしくは、この停車状態に保つに際しては、駆動輪5と共に回転するブレーキディスク14をキャリパ15により挟圧して制動することで目的を達する。キャリパ15は、運転者が踏み込むブレーキペダル16の踏力に応動して負圧式ブレーキブースタ17による倍力下でブレーキペダル踏力対応のブレーキ液圧を出力するマスタシリンダ18に接続し、このブレーキ液圧でキャリパ15を作動させてブレーキディスク14の制動を行う。ハイブリッド車両はEVモードおよびHEVモードのいずれにおいても、運転者がアクセルペダル19を踏み込んで指令する駆動力指令に応じたトルクで車輪5を駆動され、運転者の要求に応じた駆動力をもって走行される。
【0020】
ハイブリッド車両の走行モード選択と、エンジン1の出力制御と、電動モータ2の回転方向制御および出力制御と、無段変速機4の変速制御と、クラッチCLの締結、解放制御と、バッテリ12の充放電制御とは、それぞれハイブリッドコントローラ21が行う。このとき、ハイブリッドコントローラ21は、対応するエンジンコントローラ22、モータコントローラ23、変速機コントローラ24、およびバッテリコントローラ25を介してこれら制御を行うものとする。
【0021】
そのためハイブリッドコントローラ21には、ブレーキペダル16を踏み込む制動時にOFFからONに切り替わる常開スイッチであるブレーキスイッチ26からの信号と、アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ27からの信号とを入力する。ハイブリッドコントローラ21は更に、エンジンコントローラ22、モータコントローラ23、変速機コントローラ24、およびバッテリコントローラ25との間で、内部情報のやり取りを行う。
【0022】
エンジンコントローラ22は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答して、エンジン1を出力制御し、モータコントローラ23は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答してインバータ13を介し電動モータ2の回転方向制御および出力制御を行う。変速機コントローラ24は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答し、エンジン駆動されるオイルポンプO/Pからのオイルを媒体として、無段変速機4(Vベルト式無段変速機構CVT)の変速制御およびクラッチCLの締結、解放制御を行う。バッテリコントローラ25は、ハイブリッドコントローラ21からの指令に応答し、バッテリ12の充放電制御を行う。
【0023】
なお
図1では、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動輪5との間を切り離し可能に結合するため、無段変速機4に専用のクラッチCLを設けたが、
図2(a)に例示するごとく無段変速機4が、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動輪5との間に副変速機31を内蔵している場合は、副変速機31の変速を司る摩擦要素(クラッチや、ブレーキなど)を流用して、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動輪5との間を切り離し可能に結合することができる。この場合、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動輪5との間を切り離し可能に結合する専用のクラッチを追設する必要がなくてコスト上有利である。
【0024】
図2(a)の副変速機31は、複合サンギヤ31s-1および31s-2と、インナピニオン31pinと、アウタピニオン31poutと、リングギヤ31rと、ピニオン31pin, 31poutを回転自在に支持したキャリア31cとからなるラビニョオ型プラネタリギヤセットで構成する。
【0025】
複合サンギヤ31s-1および31s-2のうち、サンギヤ31s-1は入力回転メンバとして作用するようセカンダリプーリ7に結合し、サンギヤ31s-2はセカンダリプーリ7に対し同軸に配置するが自由に回転し得るようにする。
【0026】
サンギヤ31s-1にインナピニオン31pinを噛合させ、このインナピニオン31pinおよびサンギヤ31s-2をそれぞれアウタピニオン31poutに噛合させる。
アウタピニオン31poutはリングギヤ31rの内周に噛合させ、キャリア31cを出力回転メンバとして作用するようファイナルギヤ組9に結合する。
キャリア31cとリングギヤ31rとをハイクラッチH/Cにより適宜結合可能となし、リングギヤ31rをリバースブレーキR/Bにより適宜固定可能となし、サンギヤ31s-2をローブレーキL/Bにより適宜固定可能となす。
【0027】
副変速機31は、変速摩擦要素であるハイクラッチH/C、リバースブレーキR/BおよびローブレーキL/Bを、
図2(b)に○印により示す組み合わせで締結させ、それ以外を
図2(b)に×印で示すように解放させることにより前進第1速、第2速、後退の変速段を選択することができる。ハイクラッチH/C、リバースブレーキR/BおよびローブレーキL/Bを全て解放すると、副変速機31は動力伝達を行わない中立状態であり、この状態でローブレーキL/Bを締結すると、副変速機31は前進第1速選択(減速)状態となり、ハイクラッチH/Cを締結すると、副変速機31は前進第2速選択(直結)状態となり、リバースブレーキR/Bを締結すると、副変速機31は後退選択(逆転)状態となる。
【0028】
図2(a)の無段変速機4は、全ての変速摩擦要素H/C, R/B, L/Bを解放して副変速機31を中立状態にすることで、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動輪5との間を切り離すことができる。従って
図2(a)の無段変速機4は、副変速機31の変速摩擦要素H/C, R/B, L/Bが
図1におけるクラッチCLの用をなし、
図1におけるようにクラッチCLを追設することなく、Vベルト式無段変速機構CVT(セカンダリプーリ7)と駆動輪5との間を切り離し可能に結合することができる。
【0029】
図2(a)の無段変速機4は、エンジン駆動されるオイルポンプO/Pからのオイルを作動媒体として制御されるもので、変速機コントローラ24がライン圧ソレノイド35、ロックアップソレノイド36、プライマリプーリ圧ソレノイド37、ローブレーキ圧ソレノイド38、ハイクラッチ圧&リバースブレーキ圧ソレノイド39およびスイッチバルブ41を介し、無段変速機4の当該制御を以下のように制御する。尚、変速機コントローラ24には、
図1につき前述した信号に加えて、車速VSPを検出する車速センサ32からの信号、および車両加減速度Gを検出する加速度センサ33からの信号を入力する。
【0030】
ライン圧ソレノイド35は、変速機コントローラ24からの指令に応動し、オイルポンプO/Pからのオイルを車両要求駆動力対応のライン圧PLに調圧し、このライン圧PLを常時セカンダリプーリ7へセカンダリプーリ圧として供給することにより、セカンダリプーリ7がライン圧PLに応じた推力でVベルト8をスリップしないよう挟圧する。
ロックアップソレノイド36は、変速機コントローラ24からのロックアップ指令に応動し、ライン圧PLを適宜トルクコンバータT/Cに向かわせることで、トルクコンバータT/Cを所要に応じて入出力要素間が直結されたロックアップ状態にする。
【0031】
プライマリプーリ圧ソレノイド37は、変速機コントローラ24からのCVT変速比指令に応動してライン圧PLをプライマリプーリ圧に調圧し、これをプライマリプーリ6へ供給することにより、プライマリプーリ6のV溝幅と、ライン圧PLを供給されているセカンダリプーリ7のV溝幅とを、CVT変速比が変速機コントローラ24からの指令に一致するよう制御して変速機コントローラ24からのCVT変速比指令を実現する。
ローブレーキ圧ソレノイド38は、変速機コントローラ24が副変速機31の第1速選択指令を発しているとき、ライン圧PLをローブレーキ圧としてローブレーキL/Bに供給することによりこれを締結させ、第1速選択指令を実現する。
ハイクラッチ圧&リバースブレーキ圧ソレノイド39は、変速機コントローラ24が副変速機31の第2速選択指令または後退選択指令を発しているとき、ライン圧PLをハイクラッチ圧&リバースブレーキ圧としてスイッチバルブ41に供給する。
【0032】
第2速選択指令時はスイッチバルブ41が、ソレノイド39からのライン圧PLをハイクラッチ圧としてハイクラッチH/Cに向かわせ、これを締結することで副変速機31の第2速選択指令を実現する。
後退選択指令時はスイッチバルブ41が、ソレノイド39からのライン圧PLをリバースブレーキ圧としてリバースブレーキR/Bに向かわせ、これを締結することで副変速機31の後退選択指令を実現する。
【0033】
<モード切り替え制御>
実施例1のハイブリッド車両のモード切り替え動制御を、
図1の車両の駆動系に基づいて以下に説明する。
HEV走行中にアクセルペダル19を釈放してコースティング(惰性)走行へ移行した場合や、その後ブレーキペダル16を踏み込んで車両を制動する場合、電動モータ2による回生制動によって車両の運動エネルギーを電力に変換し、これをバッテリ12に蓄電しておくことでエネルギー効率の向上を図る。
【0034】
ところでHEV走行のままの回生制動(HEV回生)は、クラッチCLが締結状態であるため、エンジン1の逆駆動力(エンジンブレーキ)分および無段変速機4のフリクション分だけ回生制動エネルギーの低下を招くこととなり、エネルギー回生効率が悪い。
そのため、HEV走行中に回生制動が開始されたら、できるだけクラッチCLの解放によりエンジン1および無段変速機4を駆動輪5から切り離してEV走行へと移行することでEV回生状態となし、これによりエンジン1および無段変速機4の連れ回しをなくすことで、その分だけエネルギー回生量を稼げるようにするのが、エネルギー効率を高めるために必要である。
【0035】
一方、上記のようにクラッチCLを解放している時は燃費の観点からエンジン1を無用な運転が行われないよう停止させておくため、上記のコースティング走行中に実行されていたエンジン1への燃料噴射の中止(フューエルカット)がクラッチCLの上記解放時も継続されるよう、エンジン1への燃料噴射の再開(フューエルリカバー)を禁止することで、クラッチCLの解放時にエンジン1を停止させる。
【0036】
しかし、かようにエンジン1を停止させた場合は、アクセルペダル19を踏み込む再加速時に要求駆動力を電動モータ2のみにより賄い得ず、駆動力不足状態になることから、エンジン1をスタータモータ3により再始動させると共に、クラッチCLを締結させてEV走行からHEV走行へ切り替えることになる。
【0037】
従って、エネルギー回生効率を高めるためHEV回生の開始時にできるだけクラッチを解放して、エンジン1および無段変速機4を駆動輪5から切り離すと共にエンジン1を停止させるよう構成すると、アクセルペダル19を頻繁に釈放したり、再踏み込みする癖のある運転者が運転している場合や、主としてそのような運転を余儀なくされる走行環境下で車両を使用する場合は(以下、チェンジマインドと記載する。)、必然的にエンジン1の再始動が頻繁に行われることとなり、エンジン始動用スタータモータ3の起動回数が早期に耐久起動回数に達し、スタータモータ保護の観点から不利である。
【0038】
かといって、スタータモータ5の保護(耐久性向上)を優先させ、HEV回生制動の開始時から大きく遅れてクラッチCLを解放するのでは、エンジン1および無段変速機4を連れ回すHEV回生の期間が長くなって、エンジン1および無段変速機4の連れ回しエネルギー分だけエネルギー回生効率が悪化するという問題を生ずる。
【0039】
そこで実施例1にあっては、チェンジマインドが生じたか否かをブレーキペダル16が所定時間以上継続的に踏み込まれているか否かに基づいて判断し、所定時間以上継続的に踏み込まれていると判断した場合にはクラッチCLを解放して減速回生制御を行うこととし、それ以外の場合はチェンジマインドが生じたと判断してクラッチCLの解放を禁止することとしている。
【0040】
〔EVモードからHEVモードへの切り替え時における課題〕
ここで、EVモードにおいてクラッチCLを解放して減速回生制御を行い、その後、アクセルペダル19が踏み込まれることで、EVモードからHEVモードにモード遷移し、エンジン再始動を行うと共にクラッチCLを解放から締結に切り替えて制御する際の課題について説明する。
【0041】
クラッチCLをONからOFFに切り替えてエンジン1を停止した後に加速要求があったとき(発進時もしくは再加即時)、ドライバ要求トルクを電動モータ2のみで実現できない場合には、エンジン再始動と、クラッチCLのOFF→ONへの切り替えと、無段変速機4の変速制御(通常の変速制御に加えて必要に応じて回転同期制御)とが必要となる。
【0042】
無段変速機4の変速制御を開始するには、変速比の初期値(初期変速比)が必要となる。無段変速機4の変速比は、プーリ及びベルトから構成されるバリエータの入力軸に設けられた入力回転センサ6aの値と出力軸に設けられた出力回転センサ7aの値とに基づいて検出される。しかしながら、クラッチCLを解放した状態でエンジン停止中にあっては、バリエータの入出力軸が共に回転停止しているため、変速比を検出することができない。その後、変速比が検出可能となるのは、エンジン1のクランキングが開始し、バリエータの入出力軸が回転し始めて、入出力回転センサ6a,7aにより回転を検出可能となってからである。
【0043】
ここで、エンジンクランキングを開始してから入出力回転センサにより回転を検出して変速比を検知できるまでに要する時間を例えば0.8秒とすると、エンジンクランキングを開始してから初期変速比が検出されるまでに0.8秒かかるため、変速制御はエンジンクランキングを開始してから0.8秒後に開始されることとなる。
【0044】
ところが、エンジンクランキングを開始してから変速可能な状態(オイルポンプの吐出圧の確保等)となるまでに要する時間は0.6秒であり、初期変速比を検出するまでの時間よりも短いことが判明した。言い換えると、クランキング開始から変速制御が開始されるまでの間には、変速可能な状態となってから初期変速比検出までの0.2秒だけ遅れてしまう遅れ時間が含まれていることを意味している。尚、0.8秒,0.6秒及び0.2秒といった時間はあくまで例示であるが、この時間の相互傾向や大小関係は概ね無段変速機4全般に言えることである。
【0045】
したがって、エンジン再始動とクラッチCLの解放から締結への切り替えとを行うEVモードからHEVモードへの切り替え時、バリエータの入出力回転センサ6a,7aにより検出された初期変速比を用いて変速制御を開始する構成では、エンジン1のクランキングが開始されて変速可能な状態となったとしても、遅れ時間経過後に初期変速比が検出されるまでは変速制御を開始できないという問題がある。
【0046】
そこで、実施例1では、減速回生中にクラッチCLを締結から解放に切り替えるとき、無段変速機4の変速比を最低変速比に変速させ、その後、エンジン1を停止することとした。この場合、エンジン1が停止し、無段変速機4の回転数が停止した状態でも、変速比としては最低変速比であることが認識されているため、変速可能な状態となった段階で即座に変速制御を開始することができる。
【0047】
以下、上記モード切り替え制御を実現する制御フローについて説明する。
図3は実施例1のモード切り替え制御処理を表すフローチャートである。尚、本制御フローは、電動モータ2による回生制動の許可条件が満足されるとき、例えば電動モータ2の温度が発電を行っても大丈夫な温度域であり、且つ、バッテリ12の温度が充電可能な温度域であり、且つ、バッテリ12が充電余力を残している蓄電状態であるときに実行するのは言うまでもない。
【0048】
ステップS11においては、アクセル開度APOからアクセルペダル19が釈放されているコースティング走行か否かをチェックし、ステップS12においては、ブレーキスイッチ26がON(ブレーキペダル16が踏み込まれている制動状態)か否かをチェックする。
本実施例は、アクセルペダル19を釈放し、且つブレーキペダル16を踏み込んだときに回生制動を行うものを前提とする。従ってステップS11,12は、本発明におけるクラッチ解放許可判定手段に相当する。
ステップS11でアクセルペダル19が釈放状態でないと判定したり、ステップS12でブレーキスイッチ26がONでない(非制動状態)と判定する時は、制御をそのまま終了して本制御フローを終了する。
【0049】
ちなみに、アクセルペダル19が釈放されているコースティング走行中は、エンジン動力が不要であるからエンジン1への燃料供給を中断(フューエルカット)して、燃費の向上を図るのは通常通りである。
【0050】
ステップS11でアクセルペダル19が釈放状態であると判定し、且つステップS12でブレーキスイッチ26がON(制動状態)と判定する時、回生制動条件が揃ったことで制御をステップS13に進め、現在のHEV走行のもと運転状態に応じた所定減速度が得られるよう回生制動(HEV回生)を行う。
【0051】
次のステップS14においては、ステップS12でのブレーキスイッチON(制動)判定が設定時間ΔTs以上継続したか否かを、つまりブレーキスイッチON時間ΔT(HEV回生時間)が設定時間ΔTs以上か否かをチェックし、回生制動の開始時から設定時間経過後であるか否かを判定する。
ステップS14でブレーキスイッチON時間ΔT(HEV回生時間)が設定時間ΔTs未満であると判定する間は、ステップS20を経て制御をステップS13に戻すことで現在のHEV走行のまま、運転状態に応じた所定減速度が得られるようHEV回生を継続する。運転者がチェンジマインドによりブレーキペダル16を放し、アクセルペダル19を踏み込んだ場合には、即座にエンジン1からトルクを出力する必要があり、その場合にクラッチCLを解放してしまうと、再加速性能を確保できなくなるからである。
【0052】
ステップS14でブレーキスイッチON時間ΔT(HEV回生時間)が設定時間ΔTs以上になったと判定する時、制御をステップS15に進めてクラッチCLの解放を許可する。従ってステップS14は、本発明における意図変更判定手段に相当する。
【0053】
ステップS16では、締結状態のクラッチCLを介したエンジン1および無段変速機4の引き摺り減速度Gdを、CVTプーリ比(無段変速機4の変速比)i、エンジン回転数Neおよび車速VSPから演算する。そして、引き摺り減速度分Gdを回生制動力に上乗せし、当該上乗せした回生制動力が得られるようなEV回生を行って、EV回生への切り替え後も、現在のEV走行のもと運転状態に応じた所定減速度が得られるようにする。
【0054】
次のステップS17においては、フューエルカットされているエンジン1への燃料供給再開(フューエルリカバー)を許可する。すなわち、エンジン回転数が低下した際には、自動的に燃料噴射を再開してエンジン1の駆動状態を保ち、これによりエンジン1により駆動されるオイルポンプO/Pの油圧を確保する。
【0055】
ステップS18では、最低変速比への変速を実行する。そして、ステップS19において変速終了したか否かを判断し、変速終了するまでステップS18を繰り返す。最低変速比への変速が終了すると、ステップS20に進んでフューエルカットリカバーを禁止する。これにより、無段変速機4の変速比iが最低変速比に変速された状態でエンジン1が停止される。
【0056】
このように無段変速機4の変速比iを最低変速比に変速させることで、次回のエンジン再始動時にエンジン等の回転数が0であっても変速比を事前に認識することが可能となり、変速可能な状態となった段階で即座に変速制御を開始することができる。
【0057】
図4は実施例1のモード切り替え制御処理を表すタイムチャートである。このタイムチャートは、運転者がアクセルペダルを放した状態でコースティング走行している状態を初期状態とする。
時刻t1において、運転者がブレーキペダル16を踏み込むことでブレーキスイッチ26がONとなり、所定減速度が得られるように回生制動が開始される。
そして時刻t1から設定時間ΔTsが経過した時刻t2において、設定時間ΔTsの間、ブレーキスイッチ26のON状態が継続すると、チェンジマインドが生じていないと判断してクラッチCLの解放を許可する。このとき、エンジン1および無段変速機4の引き摺り減速度Gdを上乗せした回生制動力を発生させてEV走行のもと所定減速度を確保する。
同時にフューエルカットリカバーを許可することでオイルポンプO/Pの発生する油圧を確保し、無段変速機4を最低変速比に向けて変速させる。そして、変速が終了する時刻t3において、フューエルカットリカバーを禁止してエンジン1を停止する。
【0058】
時刻t4において、運転者がブレーキペダル16を放し、アクセルペダル19を踏み込むと、エンジン再始動要求が出力され、エンジンクランキングが開始される。そして、エンジンクランキング開始から0.6秒経過後の時刻t5において、オイルポンプO/Pの吐出圧が確保され、無段変速機4が変速可能な状態となる。
【0059】
比較例として変速比が認識できていない例を説明する。この場合には、変速比を認識するのに、変速可能な状態となってから0.2秒後に変速比を検知できるため、その時点から要求変速比に向けて変速を開始するため、変速比を達成するまでに遅れを生じる。これに対し、実施例1では、無段変速機4の変速比が最低変速比と認識できているため、要求変速比に向けて素早く変速を開始できる。
【0060】
ここで、実施例1のように最低変速比に変速比を固定することが、エンジン再始動が行われた時点における要求変速比に短時間で変速できる点について詳細に説明する。ここでは、代表的な例として、時速50km/hの時点でブレーキスイッチ16がONとなり、クラッチCLが解放された場合を想定して説明する。
【0061】
図5は時速50km/hから減速しているときの実変速比と要求変速比との関係を表す図である。図中、実線はアクセル開度が0の場合における車速に応じて予め設定された要求変速比である。一点鎖線は実施例1の場合の変速比を示し、時速50km/hのときの要求変速比から最低変速比に向けて変速させた場合を示す。点線は比較例の場合の変速比を示し、無段変速機4に特に変速指令等を出すことなく自然に変化する変速比(以下、できなり変速比と記載する。)を示す。実施例1の無段変速機4のシリンダ室内には弾性体であるコイルスプリングが内蔵され、また、各部位におけるリーク等も生じることから、できなり変速比は徐々にロー側に向かって変化する。コースティング走行であってエンジン1の停止及びクラッチCLの解放が行われた後、エンジン再始動要求が来た場合には、エンジン再始動後、無段変速機4は要求変速比に向けて変速する。
【0062】
(領域Aについて)
領域Aとは、現在の変速比から要求変速比に向けて変速する際に変化する必要のある変速比の大きさ(以下、変速量と記載する。)に着目した時、実施例1の変速量よりも比較例の変速量の方が大きい場合を示す領域である。
図5に示す例では、約22km/hにおいて実施例1の変速量と比較例の変速量とが一致する。よって、約22km/h以下の領域の場合、変速比を検知するまでのタイムラグの有無に関わらず、実施例1のほうが速く要求変速比に到達可能であることが理解できる。
【0063】
(領域Bについて)
次に、領域Bについて説明する。
図6は変速比の変化と変速時間との関係を表す特性図である。この無段変速機4は入力回転数に応じて変速速度が変化し、車速が上昇するに連れて音振性能の許容範囲内でクランキング回転数を上昇させるため変速速度も上昇する。この傾向を踏まえて見てみると、車速22km/h以上の領域では、遅れ時間0.2秒の間に最低変速比2.2から1.25まで変速可能である。そこで、
図5上に変速比1.25を設定したときに要求変速比と交差するポイントを見ると車速35km/h程度であることが理解できる。よって、領域Bを約22km/hから35km/hの範囲と定義する。この領域では、例え実施例の変速量が比較例の変速量よりも大きい場合であっても、遅れ時間0.2秒の間に要求変速比に到達可能であるため、実施例のほうが有利であることが理解できる。
【0064】
(領域Cについて)
次に、領域Cについて説明する。例えば、車速40km/hのときは、実施例における変速量が最も大きく、比較例の変速量との差も最も大きい。そこで、
図6に車速40km/hのときの最低変速比からの変速時間を見てみると、22km/hのときよりも変速速度は上昇するため、
図6の点線に示す実施例(40km/h)となる特性を示す。一方、比較例の場合、変速を開始する変速比は概ね0.9程度である。ただし、遅れ時間分だけ経過してから変速を開始することから、0.2秒経過後から
図6の点線に示す比較例(40km/h)となる特性を示す。車速40kn/hにおける要求変速比は1.1であることから、
図6を参照して要求変速比1.1に到達するタイミングを見てみると、やはり実施例のほうが比較例よりも速く要求変速比1.1に到達していることが分かる。このように、実施例において遅れ時間0.2秒経過後に要求変速比に到達する場合であっても、比較例より早く要求変速比を達成することができる。
【0065】
すなわち、領域A,B,Cの全てにおいて、エンジン再始動後、無段変速機4を要求変速比に向けて変速させるまでの時間は、エンジン停止時に最低変速比に変速させた場合のほうが、できなりの変速比から変速比を検出して変速する場合よりも常時短くできるのである。
【0066】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果が得られる。
(1)エンジン1の出力軸に結合された無段変速機4と、
無段変速機4と駆動輪との間に介装されたクラッチCLと、
駆動輪に結合された電動モータ2(電動機)と、
エンジン1により駆動され、無段変速機4とクラッチCLとに油圧を供給するオイルポンプO/Pと、
運転状態に応じて、エンジン1及び電動モータ2の出力状態と、無段変速機4の変速比と、クラッチCLの締結・解放とを制御するハイブリッドコントローラ21(制御手段)と、
を有し、
ハイブリッドコントローラ21は、クラッチCLを締結から解放に切り替えて電動モータ2により駆動輪に回生トルクを付与する減速回生中に、無段変速機4の変速比を最低変速比に変速させることとした。
すなわち、クラッチCLが解放され、かつ、エンジン1が停止状態となった場合、無段変速機4の回転が停止して変速比を検出することができないが、クラッチCLを締結から解放に切り替えるときに最低変速比に変速しているため、実変速比は最低変速比と認識できる。よって、エンジン再始動とクラッチの解放から締結への切り替えとを行う際、変速比の検出を待たずに初期変速比として最低変速比を使用することができ、遅れ時間を生じさせることなく変速制御を開始することができる。
【0067】
(2)ハイブリッドコントローラ21は、電動モータ2により駆動輪に回生トルクを付与する減速回生中、クラッチCLを締結から解放に切り換えるときは、無段変速機4の変速比を最低変速比に変速させる。
よって、再発進時において加速性能を確保できる。
【0068】
(3)運転状態に基づきクラッチCLの解放の許可判定を行うステップS11,12(クラッチ解放許可判定手段)と、
クラッチCLの解放が許可された後に運転者の意図の変更の有無を判定するステップS14(意図変更判定手段)と、
を備え、
ハイブリッドコントローラ21は、クラッチCLの解放が許可され、かつ、意図に変更が無いと判定されたときに無段変速機4の変速比を最低変速比に変速させることとした。
よって、車両走行中のチェンジマインドによる再加速要求が生じた場合に、チェンジマインドの判定の間に減速することで要求変速比を低くすることができる。よって、再加速要求が来た場合に変速量を低減でき、再加速性を確保できる。言い換えると、チェンジマインドを判断する間に減速が行われるため領域Cに存在する場合を低減して領域A,Bとすることができ、途中で再加速要求が出された場合にも素早い変速によって再加速性を確保できる。
【0069】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。
図7は実施例2のモード切り替え制御処理を表すフローチャートである。実施例1ではステップS18において最低変速比へ変速した。これに対し、実施例2では最高変速比に変速する点が異なる。すなわち、ステップS18aでは、最高変速比へ変速させる。以下、最高変速比に変更した場合の作用について説明する。
【0070】
図8は時速50km/hから減速しているときの実変速比と要求変速比との関係を表す図である。図中、実線はアクセル開度が0の場合における車速に応じて予め設定された要求変速比である。一点鎖線は実施例2の場合の変速比を示し、時速50km/hのときの要求変速比から最高変速比に向けて変速させた場合を示す。点線は比較例の場合の変速比を示し、できなり変速比を示す。
図8に示すように、実施例2の場合、全ての車速域において実施例2の変速量が比較例の変速量より大きい。しかしながら、鋭意検討の結果、実施例2の場合、最高変速比から最低変速比に向けて変速する際、遅れ時間である0.2秒を経過した時は、車両停止時のできなり変速比1.1よりも低変速比側を通過していることが理解された。すなわち、比較例の場合は変速可能状態となってから遅れ時間である0.2秒経過してから変速が開始され、この時点で既に実施例2の場合よりも高変速比側に位置しているのである。
【0071】
すなわち、最も変速量の差が大きい状態であっても、遅れ時間経過時に実施例2のほうがより低変速比側に変速することが可能となる。言い換えると、全ての車速領域において、エンジン再始動後、無段変速機4を要求変速比に向けて変速させるまでの時間は、エンジン停止時に最高変速比に変速させた場合のほうが、できなりの変速比から変速比を検出して変速する場合よりも常時短くできる。
【0072】
以上説明したように、実施例2にあっては下記に列挙する作用効果が得られる。
(1−2)エンジン1の出力軸に結合された無段変速機4と、
無段変速機4と駆動輪との間に介装されたクラッチCLと、
駆動輪に結合された電動モータ2(電動機)と、
エンジン1により駆動され、無段変速機4とクラッチCLとに油圧を供給するオイルポンプO/Pと、
運転状態に応じて、エンジン1及び電動モータ2の出力状態と、無段変速機4の変速比と、クラッチCLの締結・解放とを制御するハイブリッドコントローラ21(制御手段)と、
を有し、
ハイブリッドコントローラ21は、クラッチCLを締結から解放に切り替えて電動モータ2により駆動輪に回生トルクを付与する減速回生中に、無段変速機4の変速比を最高変速比に変速させることとした。
すなわち、クラッチCLが解放され、かつ、エンジン1が停止状態となった場合、無段変速機4の回転が停止して変速比を検出することができないが、クラッチCLを締結から解放に切り替えるときに最高変速比に変速しているため、実変速比は最高変速比と認識できる。よって、エンジン再始動とクラッチの解放から締結への切り替えとを行う際、変速比の検出を待たずに初期変速比として最高変速比を使用することができ、遅れ時間を生じさせることなく変速制御を開始することができる。
【0073】
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため異なる点についてのみ説明する。
図9はクラッチOFF時に無段変速機4を最低変速比まで変速させる際の変速速度と車速との関係を表す特性図である。実施例3では、
図7のステップS18において最低変速比に変速させる際、車速が高くなるほど低い変速速度を設定するものである。以下、この変速速度設定の作用について説明する。
図10は種々の車速から減速しているときの実変速比と要求変速比との関係を表す図である。一点鎖線はそれぞれ実変速比を示し、実線は要求変速比を示す。高車速時には変速速度が低く設定されるため実変速比が最低変速比に向けて変化するときの実変速比変化勾配は緩やかな勾配となる。これに対し、中車速→低車速と変化するに連れて実変速比の変化勾配が徐々に急峻となる。
【0074】
まず、高車速のときに要求変速比から一気に最低変速比に変速させてしまうと、途中でチェンジマインドにより再加速要求が来た場合、要求変速比に戻るまでの変速量が大きくなる。そこで、変速速度を低くし、実変速比変化勾配を緩やかにすることで、チェンジマインドによる再加速要求が来た場合、比較的要求変速比に近い位置となり、変速量を低減することができる。一方、低車速(特に、上述の領域A,B等)にあっては、最低変速比から要求変速比に変速するまでに短時間であることから、素早く最低変速比に変化させてエンジン1の作動を停止することが燃費の観点から望ましい。よって、低車速領域ほど実変速比変化勾配を急峻とすることで燃費の改善を図ることができる。
【0075】
以上説明したように、実施例3にあっては下記の作用効果が得られる。
(4)ハイブリッドコントローラ21は、最低変速比への変速時に、車速が高いときは、車速が低いときより変速速度を遅くすることとした。
よって、高車速時にチェンジマインドによる再加速要求が来た場合において、要求変速比に向けて変速する変速量を低減することができ、再加速要求を向上できる。また、低車速時には素早く最低変速比に変化させることで燃費の改善を図ることができる。
【0076】
(他の実施例)
以上、本願発明を各実施例に基づいて説明したが、上記構成に限られず、他の構成であっても本願発明に含まれる。
(5)例えば、実施例1では、クラッチCLの解放後、変速が終了するまでの間はエンジン作動(エンジンフューエルカットの禁止の解除)を行っていたが、クラッチ解放後の所定時間、エンジン作動を継続させて、その間に無段変速機4を変速させるような構成としてもよい。
これにより、例えばエンジン1に燃料噴射を行ってエンジン回転数を制御し、これにより変速速度を制御することができる。また、スタータモータ3を使用せずともエンジン始動が達成できるため、スタータモータ3の耐久性の向上を図ることができる。また、更には、触媒O
2ストレージを調整するため、リッチスパイク相当の燃料増量を行うと、次回のエンジン始動時にNOxが悪化しない。バルブタイミング変更機構VTCのような油圧制御系部品をこのタイミングで作動させることで、次回の発進時相当の回転角位置に戻すことも可能となり、エンジントータル性能の向上を図ることができる。
【0077】
(6)また、ハイブリッドコントローラ21は、クラッチCLの締結から解放への切り替え時、クラッチCLをスリップ状態にして無段変速機4を変速することしてもよい。
これにより、エンジン1を作動させることなく無段変速機4を回転させることができるため、変速速度を確保することは困難ではあるが早期にエンジン1を停止して変速できるため、燃費を改善できる。
【0078】
(7)また、ハイブリッドコントローラ21は、クラッチCLの締結から解放への切り替え後、無段変速機4のプーリ内に装着された弾性体の弾性力により変速するように構成してもよい。
これにより、エンジン1を停止し、かつ、クラッチCLでの引き摺りも生じないため、燃料消費を抑制し、かつ、回生量の増大を図ることができる。
【0079】
(8)また、上記(7)に示すように弾性体の弾性力で変速するときは、無段変速機4の油圧を積極的に抜くことが望ましい。
これにより、変速速度を高めることができ、車両停止時に最低変速比を確保することができ、再発進性能を向上できる。
【0080】
更に、実施例ではスタータモータ3によりエンジン再始動を行う構成を示したが、他の構成であっても構わない。具体的には、近年、アイドリングストップ機能付き車両であって、オルタネータをモータ・ジェネレータに置き換え、このモータ・ジェネレータにオルタネータ機能を加えてエンジン始動機能を付加することにより、アイドリングストップからのエンジン再始動時に、スタータモータではなく、このモータ・ジェネレータによりエンジン再始動を行う技術が実用化されている。本願発明も上記のようなモータ・ジェネレータによりエンジン再始動を行う構成としてもよい。
【0081】
また、実施例では、制動状態か否かの判断をブレーキスイッチのONもしくはOFFに基づいて判断したが、これに限定されるものではなく、ブレーキペダルのストロークセンサの出力値に基づいて判断する、もしくはマスタシリンダ圧等を検出するブレーキ液圧センサの出力値に基づいて判断するようにしてもよい。