(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の造粒物の粒度推定方法を用いて推定した造粒物の平均粒度及び/又は粒度分布に基づいて、鉱石の造粒プロセスを制御することを特徴とする造粒プロセスの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の造粒物の粒度推定方法及び造粒プロセス制御方法について説明する。
鉱石は、焼成、か焼、還元、化合などの利用目的によって、所定の大きさの塊にする必要がある。鉱石を所定の大きさの塊にする処理として、造粒プロセスというものがある。
造粒プロセスでは、例えば、小さな粒状の鉱石、水及びバインダーを、回転するディスクペレタイザに投入し、これら原料(鉱石、水、バインダー)をディスクペレタイザ上で転動させることにより、鉱石(原料)を所定の大きさの塊にする。以降、造粒物プロセスで所定の大きさにした鉱石(原料)のことを造粒物という。
【0013】
このような鉱石を転動させて造粒物を生成する転動造粒プロセスでは、製造される個々の造粒物の大きさにはバラつきが存在する。造粒物の粒度分布(各粒度の造粒物の個数の存在比率)は正規分布と見なせることが知られている(化学工学便覧第3版、p850)。
さて、転動造粒プロセスなどの造粒プロセスにおいて、所定の大きさの塊に形成された造粒物は、ベルトコンベアやパレット台車などの運搬機械に載せられて造粒プロセスから下工程に送られる。
【0014】
例えば、造粒プロセスで製造した造粒物を上段ベルトコンベアに載せて運搬後、上段ベルトコンベアから下段ベルトコンベアに落下させて、下段ベルトコンベア上に堆積した造粒物を下工程に向けて運搬する。或いは、造粒プロセスで製造した造粒物を金属製のパレット台車に堆積して、パレット台車を下工程に向けて走行させることにより造粒物を運搬する。
【0015】
本発明では、運搬機械上に堆積した造粒物の状態に着目して、造粒物の粒度(平均粒度、粒度分布)を推定している。以下、造粒物の粒度の推定方法について詳しく説明する。
まず、造粒物を上側のベルトコンベアから下側のベルトコンベアに落下させた場合を例にとり、運搬機械上に堆積した造粒物の状態がどのようになるか説明する。
図1(a)(b)は、上段ベルトコンベアから下ベルトコンベアに造粒物を落下させている状況を例示したものである。
【0016】
図1に示すように、上段ベルトコンベア1は、紙面の右左方向に造粒物Gを運搬するもので、下段ベルトコンベア2は紙面の上下方向に造粒物Gを運搬するものである。上段ベルトコンベア1の運搬方向と下段ベルトコンベア2の運搬方向とは直交している。
このような上段ベルトコンベア1及び下段ベルトコンベア2を備えた運搬機械3において、例えば、造粒物の大きさが「大」、「中」、「小」が混在する造粒物群を、上段ベルトコンベア1から下段ベルトコンベア2に落下させたとする。
【0017】
造粒物の大きさが「大」である大造粒物G1は、慣性力が大きいために大きく飛び、下段ベルトコンベア2上において、上段ベルトコンベア1の先端から最も離れた位置に着地し易い。また、造粒物の大きさが「小」である小造粒物G2は、慣性力が小さい上に空気抵抗等の影響を大きく受けるため直ちに減速し、下段ベルトコンベア2上において、上段ベルトコンベア1の先端から最も近い位置に着地し易い。また、造粒物の大きさが「中」である中造粒物G3は、下段ベルトコンベア2上において、大造粒物G1と小造粒物G2の間の位置に落下し易い。
【0018】
つまり、下段ベルトコンベア2上において、上段ベルトコンベア1に最も近い位置を原点Oとしたとき、原点Oに近い側に小造粒物G2が堆積し、原点Oに最も遠い側に大造粒物G1が堆積し、幅方向中央部側に中造粒物G3が堆積する。言い換えれば、下段ベルトコンベア2上では、造粒物が落下する前の進行方向に沿って、小粒(細粒)から大粒(粗粒)へと分級された堆積層が形成される。
【0019】
なお、
図2に示すように、上段ベルトコンベア1から下段ベルトコンベア2に造粒物を落下させる運搬機械3において、上段ベルトコンベア1が傾斜している場合がある。傾斜した上段ベルトコンベア1と水平方向との角度は、5度〜50度のものが多く、造粒物の安息角よりも大きければ、造粒物は重力によって落下運動するため、
図1と同じような状況下で下段ベルトコンベア2上に造粒物は堆積する。即ち、
図2に示したように、上段ベルトコンベア1が傾斜している場合であっても、下段ベルトコンベア2上において、上段ベルトコンベア1に最も近い側に小造粒物G2が堆積し、最も離れた側に大造粒物G1が堆積し、小造粒物G2と大造粒物G1との間に中造粒物G3が堆積する
また、
図3に示すように、造粒物を運搬機械3で運搬するにあたって、上段ベルトコンベア1の代わりに篩い部材4を採用することがある。篩い目部材4を採用した場合、篩い目部材4は、例えば、板材で構成され、この板材に篩い目が形成されたものとなる。
【0020】
この篩い目は、運搬元から運搬先に向けて順に大きくする。即ち、篩い目部材において、篩いの分級サイズは造粒物群の進行方向に沿って拡大して配置している。
図3のように、篩い目部材から下段ベルトコンベア2に造粒物を落下させた場合でも、下段ベルトコンベア2上の造粒物は、落下前の進行方向に沿って細粒から粗粒に分級された状態で堆積していく。なお、篩い部材は、自身が振動して造粒物を運搬したり、傾斜して重力により造粒物を運搬するものであってもよい。また、篩い目部材は、所定の間隔にローラーを設置して、ローラの回転力により造粒物を分級しつつ運搬するものであってもよい。
【0021】
したがって、造粒プロセスで製造した造粒物を、所定の方向に移動させた後に落下させることにより、造粒物の落下前の進行方向に沿って分級することができる。
さて、工業規模の造粒プロセスで製造される造粒物は、先述のとおり、造粒物の大きさと、その大きさの造粒物の重量比率が正規分布に従って整理できることがわかっている。即ち、母集団である造粒物群の平均粒度を示す造粒物に関してはその重量比率が最も高くなると共に、造粒物群における個々の造粒物の粒度のバラツキの大小は正規分布における標準偏差の大小と同じであると考えられる。換言すれば、造粒物群の粒度分布は、母集団の平均粒度と標準偏差が求まれば推定が可能である。
【0022】
しかしながら、連続して多量の造粒物を生産する造粒プロセスの場合、使用する原料条件、大気湿度、などの外乱影響によって、平均粒度や標準偏差の値は刻一刻と変化する。造粒物群を回分的にサンプリングして粒度分布を測定したとしても、実際には空間的にも時間的にも一部分のサンプリングに過ぎず測定結果の代表性には常に疑念が生じる。
そこで、発明者らは様々な角度から検証を行い、造粒物がベルトコンベア等の運搬機械3上へ落下する際に分級して堆積するという特性と、造粒物群が正規分布に従う特徴的な粒度分布との両方に着目して運搬機械上に落下した造粒物群の堆積表面形状から推定することを見出した。
【0023】
図4(a)は、下段ベルトコンベア2に堆積した造粒物群における複数の堆積形状を例示したものである。説明の便宜上、
図4(a)の実線で示した堆積形状を「堆積形状A」、点線で示した堆積形状を「堆積形状B」、二点鎖線で示した堆積形状を「堆積形状C」とする。
堆積形状とは、下段ベルトコンベア2に堆積した造粒物の輪郭を示したものである。詳しくは、堆積形状とは、下段ベルトコンベア2の正面(進行方向側の下流側)から当該下段ベルトコンベア2に堆積した造粒物群を見て、その堆積層の上部の稜線を示したものである。
【0024】
図4(a)に示すように、堆積形状Aの頂部(造粒物が最も堆積した部分)の位置、即ち、「堆積ピーク位置」は、下段ベルトコンベア2の幅方向中央部からやや左側にシフトしていて、堆積形状Cの頂部の位置と同じである。このように、堆積形状Aと堆積形状Cとの堆積ピーク位置が下段ベルトコンベア2に対して同じ位置であるため堆積形状Aの造粒物の粒径と、堆積形状Cの造粒物の粒径とは同じであると考えられる。
【0025】
さて、
図4(b)は、造粒物の粒度と重量比率との分布図を示したものである。この第1分布〜第3分布は、
図4(a)で示した堆積形状A、堆積形状B、堆積形状Cのいずれかの堆積物の分布である。
図4(b)に示すように、第1分布及び第2分布は、ピークにおける造粒物の粒度が同じとなっているため、堆積ピーク位置が同じである堆積形状Aの造粒物、或いは、堆積形状Cの造粒物のいずれかであると推測できる。
【0026】
ここで、
図4(a)で示した堆積形状Aと堆積形状Cとの下段ベルトコンベア2に対する広がりを見てみると、堆積形状Cは、堆積形状Aに比べて下段ベルトコンベア2の幅方向に広がっている。言い換えれば、堆積形状Cの堆積ピーク位置における堆積層の高さ(堆積形状Cの盛り上がり高さ)は、堆積形状Aの堆積ピーク位置における堆積層の高さよりも低くなっている。
【0027】
一方、
図4(b)に示すように、第1分布のピークにおける重量比率は、第2分布のピークにおける重量比率よりも小さい。ゆえに、第1分布及び第2分布のうち、ピークにおける重量比率が小さい第1分布が、堆積層の高さが低い堆積形状Cに対応していると考えられ、ピークにおける重量比率が大きい第2分布が、堆積層の高さが高い堆積形状Aに対応していると考えられる。
【0028】
また、
図4(a)に示すように、堆積形状Bの頂部の位置(堆積ピーク位置)は、堆積形状A及び堆積形状Cの頂部の位置(堆積ピーク位置)に比べてやや左側にシフトしているため、堆積形状Bの造粒物の粒度は、堆積形条A及び堆積形状Cよりも大きいと考えられる。また、堆積形状Bの堆積ピーク位置における堆積層の高さは、堆積形状Aの堆積ピーク位置における堆積層の高さと同じである。それゆえ、
図4(b)において、重量比率のピークが第2分布と同じで且つ造粒物の粒度が第2分布よりも大きい第3分布が、堆積形状Bの造粒物における分布と推測することができる。
【0029】
以上、まとめると、造粒物は落下前の進行方向に沿って粒度分級され、運搬機械3上に堆積することになるが、これにより得られた堆積形状(堆積表面)を、運搬機械3上で測定して、最も高く堆積した位置(堆積ピーク位置)を取得すると共に、堆積ピーク位置における堆積ピーク高さ(堆積形状の盛り上がり高さ)を取得し、これら堆積ピーク位置及び堆積ピーク高さと、予め用意された造粒物の粒度と重量比率の分布とを比較することにより、運搬機械上に堆積した造粒物の平均粒度及び/又は粒度分布を推定することができる。なお、造粒物の粒度分布は正規分布に従うため、重量比率が最も高い粒度が平均粒度
に等しくなる。即ち、粒度分布において、堆積ピーク高さに対応する粒度が平均粒度となる。
【0030】
上述したように、下段ベルトコンベア2(運搬機械)に造粒物が堆積したときの堆積形状を見て、最も高く堆積している位置には、その位置に対応した粒度の造粒物が主に堆積しており、堆積形状の広がりによって造粒物の粒度における存在比率(造粒プロセスでは重量比率)のバラツキを得ることができる。
なお、運搬機械上の造粒物の堆積形状の測定にあたっては、測定器を用いて運搬機械に対してレーザ光を照射し、照射したレーザ光を撮像手段で撮像した上で、三角測量法の原理により形状を求めてもよいし、造粒物から反射したレーザ光を受光することにより測定器から造粒物までの距離を求め(TOF法による距離計測法)、この距離に基づいて測定してもよい。このように、非接触型の測定器を用いることによって、堆積表面形状を崩さずに対象物までの距離を測定することができる。また、運搬機械の幅方向に落下又は堆積完了した瞬間にレーザ光を照射することにより、運搬機械上の造粒物群の運搬方向単位長さ当たり、あるいは単位経過時間当たりで平均化した堆積形状を得られるようにすることが望ましい。
【0031】
例えば、運搬機械の移動時の揺れや振動の影響を受けて堆積した造粒物が転動した場合は、堆積表面の最も高く堆積した位置や堆積高さが変化することがあるが、堆積形状を平均化したものとすることにより、上述した外乱影響が複雑に介在する環境下(運搬機械の移動時の揺れや振動がある環境下)でも造粒物の粒度等を測定することが可能である。
また、堆積ピーク位置及び堆積ピーク高さを有する粒度分布は、予め造粒プロセスを行い、造粒プロセスにて造粒した造粒物を運搬機械に落下させて、検量線を作成し、この検量線を用いることで堆積ピーク位置、堆積ピーク高さを、それぞれ平均粒度、標準偏差に換算して求める。検量線の作成方法は、例えば、運転中の運搬機械にて堆積ピーク位置、堆積ピーク高さを実測し、次に運搬機械を停止させて、運搬機械上の造粒物群をサンプリングする。サンプリングした造粒物群は、篩いにかけて粒度分布を実測し、平均粒度と標準偏差を求めておく。このような操作を複数の造粒条件にて実施することで、堆積ピーク位置と平均粒度の関係、堆積ピーク高さと標準偏差の関係を求めて、粒度分布を作成する。
【0032】
以上のように、鉱石の造粒プロセスにおいて造粒した造粒物を運搬機械に落下させて当該運搬機械上に堆積しながら運搬する際に、運搬機械上における造粒物の堆積形状を測定し、測定した堆積形状に基づいて、造粒物の平均粒度、粒度分布を推定することができる。
図5〜12は、運搬機械に造粒物を堆積しながら運搬しているときに、運搬機械上における造粒物の堆積形状から造粒物の平均粒径や粒度分布を推測する操業をまとめたものである。
【0033】
図5は、製鉄用の造粒物を製造する造粒設備を例示したものである。
図5に示すように、造粒設備10では、原料槽Aから1mm以下の鉱石や石灰石等を切り出し、これら鉱石及び石灰石に水、バインダーを混合して、混合物を直径6mのディスクペレタイザ11に供給し、当該ディスクペレタイザ11を回転することにより、造粒物を製造する。なお、以下の説明では、原料(鉱石、石灰石、バインダー、水)をディスクペレタイザ11にて造粒したものを生ボールという。
【0034】
ディスクペレタイザ11は、生ボール(造粒物)を運搬する運搬機械3に接続されており、生ボールは、造粒後に運搬機械3に移動する。
図6に示すように、運搬機械3は、上流側に設置されたディスクペレタイザ11に接続され且つ上下方向に傾斜するシードスクリーン(篩い部材)4と、このシードスクリーン4の下側で当該シードスクリーン4で篩いにかけられた生ボールを運搬するベルトコンベア12とから構成されたものである。
【0035】
シードスクリーン4は、傾斜の角度が生ボールの安息角を越え、生ボールを転動落下させながら分級するもので、傾斜型篩いである。シードスクリーン4の傾斜角度は20度としている。このシードスクリーン4においては、過小粒径品を除くための篩い目を有する
ものの、生ボールを分級する傾斜面(斜面領域)には連続して、篩い目が形成されており、生ボールの落下時には、慣性力と空気抵抗が働き、上述した
図1や2等と同じように、生ボールは堆積する。
【0036】
詳しくは、シードスクリーン4において、上流側(上部側)には7mmの篩い目が連続して形成され、下流側(下部側)には15mmの篩い目が連続して形成されている。7mmの篩い目が形成された直下には、7mm以下の生ボールを受けるホッパ13aが設けられ、シードスクリーン4の傾斜面の下端側には、15mm超の生ボールを受けるホッパ13bが設けられている。それゆえ、このシードスクリーン4では、過小(粒径が7mm以下)の生ボールはホッパ13aに入ることになり、過大(粒径が15mm超)]の生ボールはホッパ13bに入ることになり、後工程に搬送することが不適合である生ボールが除去されることになる。つまり、粒径が7mm以上15mm以下の生ボールがベルトコンベア12に落下する。
【0037】
ここで、ベルトコンベア12上においては、シードスクリーン4の上流側に近い側(右側)に粒径の小さな生ボールが堆積し、シードスクリーン4の下流側に近い側(左側)に粒径の大きな生ボールが堆積する。なお、ベルトコンベア12の幅は800mmである。
図7は、シードスクリーン4と、ベルトコンベア12とを上面から見たものである。
図7(a)は、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角が90度(シードスクリーン4とベルトコンベア12とが直交)である場合を示し、
図7(b)及び(c)は、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角が135度である場合を示し、
図7(d)は、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角が45度である場合を示している。なお、上述したように、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角は、両者を上面視(平面視)した状態において、シードスクリーン4の幅方向中心線とベルトコンベア12の幅方向中心線との角度のことである。
【0038】
図7(a)に示すように、シードスクリーン4とベルトコンベア12とが直交している場合、シードスクリーン4から落下した生ボールは、上述したように、ベルトコンベア12の幅方向に沿って大きさ順に堆積していく。ここで、シードスクリーン4とベルトコンベア12とが直交していない場合、シードスクリーン4から落下した生ボールは、上述したように、ベルトコンベア12の幅方向に沿って大きさ順に堆積しない可能性がある。しかしながら、操業や実験等により確認したところ、
図7(b)〜(d)に示すように、シードスクリーン4とベルトコンベア12とのなす角が45度〜135度である場合、シードスクリーン4から落下した生ボールは、ベルトコンベア12の幅方向に沿って大きさ順に堆積した。即ち、
図2に示すように、生ボールは、大きさ順にベルトコンベア12に落下した。
【0039】
なお、
図7(a)は、測定器13から照射したレーザ光の走査線がベルトコンベア12の進行方向、即ち、ベルトコンベア12の幅方向中心線と直交している例を示している。言い換えれば、レーザ光の走査線がシードスクリーン4の幅方向中心線と平行となっている例を示している。
図7(b)、(d)は、レーザ光の走査線がシードスクリーン4の幅方向中心線と平行となっている例を示している。
図7(c)は、レーザ光の走査線がベルトコンベア12の幅方向中心線と平行となっている場合を示している。
図7(a)〜(d)のいずれの場合でも、ベルトコンベア12上の生ボールの堆積形状を適正に測定することができた。
【0040】
次に、レーザ距離計などの測定器13によって、生ボールの堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)の計算方法について説明する。
図8に示すように、ベルトコンベア12の上方に測定器13(レーザ距離計)を設置する。レーザ距離計のレーザ光の走査方向は、上述した
図7に示した通りである。
まず、ベルトコンベア12の正面(進行方向側の下流側)から当該ベルトコンベア12を見た状態において、原点O(基準点)を定め、ベルトコンベア12の幅方向をX軸方向、ベルトコンベア12の上面(生ボールを載置する面)と直交する方向(X軸と直交する方向)をY軸方向とおく。なお、原点Oは、ベルトコンベア12の上面と同一平面上に設定することが望ましい。また、レーザ距離計の設置位置を座標系で表し、位置(Xf、Y
f)とする。なお、レーザ距離計は、センサ部が回転しながら走査・測距を繰返すもので、例えば、北陽電機社製LX−04等である。
【0041】
レーザ距離計では、計測情報として、例えば、センサ部を通りX軸と平行な軸とレーザ光の垂直成分との角度β[°]と、センサ部から生ボールまでの距離Dが出力される。これにより、レーザ距離計による任意の測定座標(Xm、Ym)は、次式により求めることができる。
Xm=Xf+D×cos(π×β/180)
Ym=Yf−D×sin(π×β/180)
このように、複数の測定座標(Xm、Ym)を計測することにより、堆積ピーク位置や堆積ピーク高さを求めることができる。
【0042】
なお、レーザ距離計の走査線の範囲がベルトコンベア12の幅に収まるように設定していてもよい。また、レーザ距離計をベルトコンベア12から離れた位置で設置するほど、レーザ距離計によって生ボースの堆積形状を測定するための視野を大きくすることができるものの、余りにもレーザ距離計をベルトコンベア12から離すと、レーザ距離計による最小測定角(例えば、LX−04の場合であれば約0.35°)に起因して測定間隔が大きくなり過ぎる。一方、レーザ距離計をベルトコンベア12に近づけすぎると、生ボールの堆積状況によっては、死角部分が発生して測定できない可能性がある。ゆえに、レーザ距離計とベルトコンベア12との距離は適正に設定することが必要ある。例えば、80t/時(1時間)で生ボールをシードスクリーン4から落下させてベルトコンベア12で運搬するものとし、ベルトコンベア12の幅を0.8mに設定した場合は、レーザ距離計とベルトコンベア12との距離を0.5mにする。ただし、レーザ距離計とベルトコンベア12との距離は、ベルトコンベア12上に堆積する生ボールの状況やレーザ距離計の性能によって適正に設定すればよく上述したものに限定されない。
【0043】
次に、生ボールの堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)に基づいて、生ボールの平均粒度等を推定する方法について説明する。
造粒設備10のディスクペレタイザ11を用いて、生産量80t/時で生ボールを製造し、製造した生ボールを連続的にシードスクリーン4に供給する。また、シードスクリーン4を介してベルトコンベア12で生ボールを運搬する。例えば、ベルトコンベア12の運搬速度を50m/分とする。ベルトコンベア12で生ボールを運搬中に、レーザ距離計を用いてベルトコンベア12上に堆積した生ボールの堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)を測定する。生ボールがベルトコンベア12上を安定して流れている状況を確認し、所定時間後、造粒工程(造粒装置)を停止する。
【0044】
そして、レーザ距離計を通過してベルトコンベア12上にある生ボールを採取する。例えば、レーザ距離計の直下のベルトコンベア12上を採取開始点とし、この採取開始点から下流側に2m進んだ場所を採取終了点とし、採取開始点から採取終了点の間にあるベルトコンベア12上の生ボールを回収(採取)する。採取した生ボールを、篩い等で分級して、採取した全生ボール重量に対する当該サイズの分級重量の比率を計算する。また、回収した全生ボールの平均粒度と、標準偏差を求める。
【0045】
即ち、造粒装置による生ボールの製造、堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)を測定した生ボールの回収、回収した全生ボール重量に対する当該サイズの分級重量の比率の計算、平均粒度、標準偏差の計算を行う。
表1は、実験番号1〜9の平均粒度と、標準偏差を求めた結果である。
図9は、実験番号1における全生ボール重量に対する当該サイズの分級重量の比率である。
【0047】
次に、ベルトコンベア12上で採取した生ボールがレーザ距離計上を通過したときの計測情報を全て抽出して、抽出した計測上方に基づいて堆積形状(堆積ピーク位置、堆積ピーク高さ)を求める。即ち、ベルトコンベア12上で採取開始点から採取終了点までの生ボールにおける堆積形状を求める。
具体的には、ベルトコンベア12の運搬速度は50m/分であるため、当該ベルトコンベア12によって生ボールが2m進む時間(採取開始点から採取終了点まで進む時間)は2.4秒である。この間に、例えば、レーザ距離計は28ミリ秒で1回の走査を行うため、生ボールが2m進む間に約85回走査をし、85回分の計測情報が得られる。この85回分の計測情報を平均して、堆積形状を求める。
図10は、実験番号1における生ボールの堆積層の稜線(堆積形状)を描いたものである。表2は、実験番号1〜9における堆積ピーク位置と堆積ピーク高さとをまとめたものである。
【0049】
次に、平均粒度、標準偏差、堆積ピーク位置、堆積ピーク高さを求めた後、これらのデータを用いて、
図11に示すように生ボールの堆積位置と平均粒度との関係、或いは、
図12に示すように、生ボールの堆積ピーク高さと標準偏差との関係を求める。
図11に示す一次近似線が、堆積ピーク位置から平均粒度を求める検量線となる。また、
図12に示す一次近似線が、堆積ピーク高さから標準偏差(バラツキ)を求める検量線となる。
【0050】
実操業では、連続して運搬される生ボールの堆積形状をレーザ距離計で測定し続け、計測情報に基づいて、堆積ピーク位置と堆積ピーク高さを計算し、予め求めておいた検量線を用い、生ボースの平均粒度と粒度の標準偏差を求め、これらを出力したり保存するという一連の処理を行う。
以上、本発明によれば、運搬機械上における造粒物の堆積形状に基づいて、簡単に造粒物の平均粒度や粒度分布を推定することができる。即ち、本発明では、従来のようにバッチサンプリングによる平均粒度の推定や粒度分布の取得に比べて、平均粒度や粒度分布をリアルタイム(例えば、1分以内)に把握することができる。また、短時間で造粒物の平
均粒度等を把握することができるため、造粒プロセスで造粒物を製造したときの歩留を向上させることもできる。つまり、上述した造粒物の粒度推定方法を用いて、推定した造粒物の平均粒度、粒度分布等に基づいて、造粒プロセス、即ち、造粒装置を制御することができる。
【0051】
次に、造粒プロセスの制御方法について説明する。
造粒プロセス(造粒装置)で製造された生ボールは、例えば、製鉄用ペレットを製造するのに用いられる。製鉄用ペレットは、微粉の鉄鉱石又は粉砕粉をディスクペレタイザ11にて造粒した生ボールを、後工程の焼成プロセスにて焼成することにより製造されるものである。製鉄用ペレットは、例えば、高炉用装入原料として用いられ、この場合は、高炉炉頂までの運搬時に崩壊や粉化が発生せず、さらに、高炉炉内でも崩壊や粉化が進まず炉内の通気性を悪化させないようにすることが望まれている。また、製鉄用ペレットは、炉内において炉内の還元ガスによって、昇温と還元が速やかに進行することが望まれる。即ち、製鉄用ペレットは、高強度でかつ還元が進むものが望まれており、これらを達成するためには、製鉄用ペレットの元材料となる生ボールの平均粒度や粒度分布が影響する。例えば、生ボールの平均粒度が小さすぎると、高炉内の充填層の空隙率が低下し通気不良の一因となり得る。一方、生ボールの平均粒径が大きすぎると、焼成プロセスでの内部への伝熱が不足し、低強度の製鉄用ペレットとなる懸念がある。
【0052】
また、生ボール群の粒度のバラツキが大きすぎると、焼成プロセスにおいて焼けムラが発生して、製鉄用ペレット(焼成ペレット)の強度の個体差が非常に大きくなってしまう。
このようなことから、生ボールを製造する造粒プロセスでは、平均粒度と標準偏差に管理値を設けている場合が多く、生ボールの製造段階で、平均粒度と標準偏差(粒度のバラツキ)をリアルタイムで監視し、造粒プロセスを制御することにより、上述したような問題を解消することができる。
【0053】
具体的には、造粒装置(造粒プロセス)において、生ボールを製造している間、生ボールの平均粒度や標準偏差を、例えば、1分単位で検出して、これらをディスクペレタイザ11等の操作をする操作者(オペレータ)が見ることができるように、モニタ(画面)に逐次表示する。
図13〜15は、生ボールの平均粒度及び標準偏差の変化を示したものである。
【0054】
図13に示すように、造粒プロセスで生ボールを製造中に、例えば、生ボールの平均粒度が管理値の上限値(12.6mm)を超えた場合、作業者(オペレータ)は、平均粒度を低下させる必要があると判断し、ディスクペレタイザ11の回転速度を8.6rpmから8.4rpmに0.2rpm低下させた。しばらくすると、生ボールの平均粒度は下がり、管理値内に入ることとなった。
【0055】
図14に示すように、例えば、生ボールの標準偏差(粒度のバラツキ)が管理値の上限値(3.5mm)を超えた場合、作業者(オペレータ)は、粒度分布の標準偏差を低下させる必要があると判断し、生ボールを製造するときの水分(原料中の水分)を7.2質量%から7.0質量%へ0.2質量%低下させた。しばらくすると、生ボールの標準偏差(粒度のバラツキ)は小さくなり、管理値内に入ることとなった。
【0056】
図15に示すように、例えば、生ボールの平均粒度が管理値の下限値(11.5mm)を下回り、さらに、生ボールの標準偏差が管理値の上限値(3.5mm)を超えた場合、ディスクペレタイザ11の傾斜角度を52度から49度へ3度変更した。しばらくすると、生ボールの平均粒度は上がり及び標準偏差は下がり、管理値内に入ることとなった。
なお、ディスクペレタイザ11の操業条件の変更が造粒物の性状に及ぼす影響については、例えば、特開2003−275570号公報、特開2011−026689号公報に示されている。
【0057】
図16は、生ボールを焼成する前に篩いにかけられた不良品(フルイ下粉発生量)についてまとめたものである。
生ボールの造粒後であって、焼成炉の直前には、ローラスクリーンを用いて焼成する前の生ボールを分級除去する分級除去装置が設けられている。高炉において、通気性を悪化
させる生ボールの粒径は、例えば7mmと定められており、7mmを下回るものは、分級除去装置によって除去される。分級除去装置で除去された生ボール(不良品)は、フルイ下粉発生量と言われており、フルイ下粉発生量は少ないのが望ましい。本発明では、生ボールの平均粒度及び標準偏差をリアルタイムで推定して、これらに基づいて造粒プロセスを制御しているため、
図16に示すように、本発明によって、フルイ下粉発生量を激減することができた。なお、
図16に示した本発明において、フルイ下粉発生量が零にならなかった理由として、造粒工程(造粒プロセス)から焼成工程までの運搬中に生ボールが壊れて小さくなってしまったことが原因と考えられる。
【0058】
以上述べたように、本発明の造粒物の粒度推定方法、及びこの粒度推定方法を用いた造粒プロセスの制御方法を採用することで、造粒物の堆積形状から素早く造粒物の平均粒度や粒度分布を推定することができると共に、所望の大きさの造粒物を安定的に製造することが可能となる。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する領域を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。