特許第6052807号(P6052807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6052807-キッチンの幕板の結合構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052807
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】キッチンの幕板の結合構造
(51)【国際特許分類】
   A47B 77/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   A47B77/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-203511(P2013-203511)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-66206(P2015-66206A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀越 政彦
(72)【発明者】
【氏名】若杉 直人
【審査官】 蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−070823(JP,A)
【文献】 特開2007−190121(JP,A)
【文献】 実開平06−052577(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/00−77/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクの前方に配置されキャビネットの躯体の一部を構成する補助幕板と、
前記補助幕板の前面に配置された化粧幕板と、
前記化粧幕板に取り付けられる手すりとを備え、
前記化粧幕板にはボルト穴が設けられていて、
前記手すりは前記化粧幕板の前面から前記ボルト穴にボルト留めされていて、
前記補助幕板には、前記化粧幕板の後面に突出した前記ボルトの軸が挿通される貫通孔が設けられていることを特徴とするキッチンの幕板の結合構造。
【請求項2】
前記化粧幕板の前記ボルト穴の背面には、前記ボルトが締結される雌ネジが切られた板材である固定部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のキッチンの幕板の結合構造。
【請求項3】
前記キッチンはコンロエリア、調理エリア、シンクエリアを有し、
前記手すりは、前記調理エリアとシンクエリアに亘って配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキッチンの幕板の結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクの前面の幕板に手すりを備えたキッチンの幕板の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車椅子に乗った人が自立して生活できる環境が望まれている。住宅では段差をなくしたバリアフリーが提供され、世間にも広く認知されている。一方、従来の通常のキッチンは、車椅子に乗ったまま利用しようとした場合、使いやすいものではなかった。
【0003】
キッチンを車椅子の人にとって使いやすくしようとした場合、キッチンの前面に手すりを設けることが考えられる。手すりを設ければ、車椅子を方向転換しようとするときや、車椅子から立ち上がろうとするときの補助となり、また立って作業する際にもたれかかっても服が濡れることを防ぐことができる。
【0004】
従来から、キッチンの前面に手すりを設けた構造については様々な提案がされている。特許文献1では、手すりを支持する支持金具を、幕板の切欠または穴に取り付けてネジ止めする構造が開示されている。特許文献2には、手すり(身体支持具)に長い雄ネジを取り付け、流し台の天板の裏面に雌ネジの軸受を取り付けて、突出長さを調節可能にした手すりが提案されている。特許文献3には、手すりの支持アームを幕板の切欠に通して、支持アームの固定片(板)を幕板の裏側にネジ止めする構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−086585号公報
【特許文献2】特開平7−023825号公報
【特許文献3】特開平8−000375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車椅子の人用の手すりとして考えたとき、ほぼ全体重を支持しうる耐荷重が必要である。キッチンの幕板は多くの場合MDF(medium density fiberboard:中密度繊維板)であるため、特許文献1−3のようにネジ止めしただけでは所望の耐荷重は得られない。高い耐荷重を得るためには、幕板を貫通させて所定の太さのボルトで留めることが考えられる。
【0007】
さらにしかし、キッチンは複数の色からなるカラーバリエーションが準備される場合がある。そのためキッチンの前面は、キャビネットの躯体を構成する補助幕板と、カラーバリエーションごとに色づけされた化粧幕板を2枚重ねして構成される場合がある。このとき手すりは前面に配置された化粧幕板に取り付けられることになるが、ボルト留めすると、ボルトの軸またはナットが邪魔して化粧幕板と補助幕板とを近接させにくく、また幕板同士の連結作業が容易でないという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、手すりが取り付けられる化粧幕板と補助幕板との連結作業を容易にすることが可能なキッチンの幕板の結合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるキッチンの幕板の結合構造の代表的な構成は、シンクの前方に配置されキャビネットの躯体の一部を構成する補助幕板と、補助幕板の前面に配置された化粧幕板と、化粧幕板に取り付けられる手すりとを備え、化粧幕板にはボルト穴が設けられていて、手すりは化粧幕板の前面からボルト穴にボルト留めされていて、補助幕板には、化粧幕板の後面に突出したボルトの軸が挿通される貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、化粧幕板を補助幕板の前面に配置する際にボルトの軸が貫通孔に挿通されることから、ボルトの軸が位置合わせのガイドとなることから、幕板同士の連結作業が容易になる。またボルトの軸が邪魔になることがなく、化粧幕板と補助幕板を近接させることができるため、キッチンの小型化を図ることができる。また支障なくボルトを使用することができることから、十分な耐荷重をもって手すりを取り付けることができ、車椅子の使用者に対する安全性を向上させることができる。
【0011】
化粧幕板のボルト穴の背面には、ボルトが締結される雌ネジが切られた板材である固定部材が取り付けられていることが好ましい。これにより、ナットを使用するよりも薄くすることができるため、化粧幕板と補助幕板の間の距離を近づけることができる。このためシンクからキッチンの前端までの距離を短くすることができ、キッチンのデザイン性を向上させることができる。
【0012】
キッチンはコンロエリア、調理エリア、シンクエリアを有し、手すりは、調理エリアとシンクエリアに亘って配置されていることが好ましい。このように長い手すりとすることにより、車椅子に乗った状態で方向転換したり、車椅子から立ち上がって左右につかまり移動することが容易になる。これにより、車椅子の使用者の利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、手すりが取り付けられる化粧幕板と補助幕板との連結作業を容易にすることが可能なキッチンの幕板の結合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかるキッチンの全体斜視図である。
図2】キッチンの幕板の結合構造を説明する図である。
図3】手すりの支持部材近傍の断面図である。
図4】キッチンを前方斜め上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は本実施形態にかかるキッチンの全体斜視図である。図1に示すように、本実施形態にかかるキッチン100は、コンロ102が載置されるコンロキャビネット110、およびシンク104が設置されるシンクキャビネット120からなる2つのキャビネットを連結して構成される。キッチン100は、車椅子Wに乗った使用者Pが使用しやすいようにワークトップ120aの高さが低く設定されている。
【0017】
コンロキャビネット110は、コンロ102が載置される天板116の下方に開き戸からなる収納部116を設けている。シンクキャビネット120は、調理スペースとなるワークトップ120aと、シンク104を備えている。またシンクキャビネット120において、コンロキャビネット110の反対側の端に、引出132・開き戸134からなる収納部130を設けている。
【0018】
コンロキャビネット110の収納部112、およびシンクキャビネット120の収納部130の下端は、車椅子WのステップW1より高い位置に配置している。収納部112、130の下側は、それぞれ壁面が奥側に後退した蹴込み114、136となっている。蹴込み114、136の前面は、収納部112、130の前面よりも大きく後退している。収納部112、130の下端の高さ(蹴込み114、136の高さ)を上記のように構成したことにより、車椅子WのステップW1上に置かれた使用者の足P1と収納部112、130との干渉が防がれるため、車椅子Wに乗ったままで使用者Pがキッチン100に近づくことができる。また、ステップW1を収納部112、130の下方を通過させながら方向転換をすることが可能となる。これらのことから、車椅子Wの使用者Pがキッチンを快適に利用することが可能となる。
【0019】
さらにキッチン100は、シンクキャビネット120の前面の幕板に手すり200が取り付けられている。
【0020】
図2はキッチンの幕板の結合構造を説明する図である。キッチン100は、シンク104の前方に補助幕板124と化粧幕板126が配置されている。補助幕板124は木工ダボ218およびコーナー部材220によってシンクキャビネット120の側板122に固定され、シンクキャビネット120の躯体の一部を構成する構造部材である。補助幕板124は、通常は外部から観察されない。
【0021】
化粧幕板126は補助幕板124の前面に配置され、補助幕板124に固定される。補助幕板にはスペーサ222が前面側からネジ224によって取り付けられている。スペーサ222および補助幕板124には貫通したネジ穴222aが設けられていて、背面側からネジ226によって化粧幕板126を締結固定する。
【0022】
手すり200は両端に支持部材202を備え、化粧幕板126に取り付けられる。支持部材202はほぼL字型の部材であり、一方の腕で手すり200を支持し、他方の腕が化粧幕板126に締結される。支持部材202にはボルト穴202aが設けられていて、化粧幕板126にもこれと対応する位置にボルト穴126aが設けられている。そして支持部材202(すなわち手すり200)は、化粧幕板126の前面からボルト穴202a、126aを挿通したボルト204によってボルト留めされる。
【0023】
化粧幕板126のボルト穴126aの背面には、ボルト204が締結される雌ネジが切られた板材である固定部材206がネジ208によって取り付けられている。これにより、ナットを使用するよりも薄くすることができるため、化粧幕板126と補助幕板124の間の距離を近づけることができる。このためシンクからキッチンの前端までの距離を短くすることができ、キッチンのデザイン性を向上させることができる。
【0024】
一方、補助幕板124には、化粧幕板126の後面に突出したボルト204の軸が挿通される貫通孔124aが設けられている。したがって、化粧幕板126を補助幕板124の前面に配置する際に、ボルト204の軸が貫通孔124aに挿通される。すると、ボルト204の軸が位置合わせのガイドとなることから、幕板同士の連結作業が容易になる。
【0025】
図3は手すりの支持部材近傍の断面図である。図3に示すように、化粧幕板126を補助幕板124に取り付けた後にも、ボルト204の軸が邪魔になることがなく、化粧幕板と補助幕板を近接させることができる。このため、キッチン100全体の小型化を図ることができる。また、このように支障なくボルト204を使用することができることから、ネジによって支持部材202を化粧幕板に締結する場合よりも十分な耐荷重をもって手すり200を取り付けることができ、車椅子Wの使用者Pに対する安全性を向上させることができる。
【0026】
図4はキッチンを前方斜め上方から見た図である。図4に示すように、キッチン100はコンロエリアA1、調理エリアA2、シンクエリアA3、作業エリアA4に分けることができる。そして手すり200は、調理エリアA2とシンクエリアA3に亘って配置されている。なお作業エリアA4の前面は引出132であるが、最上段の引出132の代わりに幕板を取り付けて、手すり200を調理エリアA2から作業エリアA4まで、またはシンクエリアA3から作業エリアA4まで配置してもよい。このように長い手すり200とすることにより、使用者Pが車椅子Wに乗った状態で方向転換したり、車椅子Wから立ち上がって左右につかまり移動することが容易になる。これにより、車椅子Wの使用者Pの利便性を向上させることができる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、シンクの前面の幕板に手すりを備えたキッチンの幕板の結合構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
A1…コンロエリア、A2…調理エリア、A3…シンクエリア、A4…作業エリア、100…キッチン、102…コンロ、104…シンク、110…コンロキャビネット、112…収納部、114…蹴込み、116…天板、120…シンクキャビネット、120a…ワークトップ、122…側板、124…補助幕板、124a…貫通孔、126…化粧幕板、126a…ボルト穴、130…収納部、132…引出、134…開き戸、136…蹴込み、200…手すり、202…支持部材、202a…ボルト穴、204…ボルト、206…固定部材、208…ネジ、218…木工ダボ、220…コーナー部材、222…スペーサ、222a…ネジ穴、224…ネジ、226…ネジ、P…使用者、W…車椅子
図1
図2
図3
図4