(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対向する側面を有する二つの躯体間に略水平に架設される横エキスパンションジョイントカバーと、前記二つの躯体間に略垂直に架設される縦エキスパンションジョイントカバーと、で形成されるコーナー部を被覆するエキスパンションジョイントカバーのコーナー被覆構造であって、
一方の躯体に固定された第1の化粧カバーと、
前記第1の化粧カバーに連続するように配置された第2の化粧カバーと、
を前記横エキスパンションジョイントカバーの上方に配置し、
前記第2の化粧カバーは、他方の躯体にX方向(平面視における躯体間隙短手方向)へ摺動自在に取り付けられる第1のブラケットと、前記第1の化粧カバーにY方向(平面視における躯体間隙長手方向)へ摺動自在に取り付けられる第2のブラケットと、で支持されていることを特徴とする、エキスパンションジョイントカバーのコーナー被覆構造。
前記第2の化粧カバーは、前記横エキスパンションジョイントカバーにY方向へ摺動自在に取り付けられる第3のブラケットで支持されていることを特徴とする、請求項1記載のエキスパンションジョイントカバーのコーナー被覆構造。
前記第1の化粧カバー及び前記第2の化粧カバーの下方に、二つの躯体間の間隙をカバーする受材を設けたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のエキスパンションジョイントカバーのコーナー被覆構造。
前記第2の化粧カバーには、前記他方の躯体に臨む縁部、及び、前記第1の化粧カバーに臨む縁部に、緩衝材が取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のエキスパンションジョイントカバーのコーナー被覆構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した特許文献1記載の構造では、縦カバー材12と水切カバー材11とが一体的に連結されているために可動範囲が限定的となっており、水切カバー材11と横カバー材13との間の隙間dが許容する範囲内でしか縦カバー材12が回動できない。すなわち、二つの躯体が相互にY方向(平面視における躯体間隙長手方向)に変位できる範囲が限定的となっているため、地震などの揺れに追随し辛いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、二つの躯体が相互に変動した場合の可動範囲を大きくすることで地震などの揺れに十分に追随することができるエキスパンションジョイントカバーのコーナー被覆構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0007】
(請求項1)
請求項1に記載のエキスパンションジョイントカバーのコーナー被覆構造は、互いに対向する側面を有する二つの躯体間に略水平に架設される横エキスパンションジョイントカバーと、前記二つの躯体間に略垂直に架設される縦エキスパンションジョイントカバーと、で形成されるコーナー部を被覆するエキスパンションジョイントカバーのコーナー被覆構造であって、一方の躯体に固定された第1の化粧カバーと、前記第1の化粧カバーに連続するように配置された第2の化粧カバーと、を前記横エキスパンションジョイントカバーの上方に配置し、前記第2の化粧カバーは、他方の躯体にX方向(平面視における躯体間隙短手方向)へ摺動自在に取り付けられる第1のブラケットと、前記第1の化粧カバーにY方向(平面視における躯体間隙長手方向)へ摺動自在に取り付けられる第2のブラケットと、で支持されていることを特徴とする。
【0008】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記第2の化粧カバーは、前記横エキスパンションジョイントカバーにY方向へ摺動自在に取り付けられる第3のブラケットで支持されていることを特徴とする。
【0009】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記第2の化粧カバーの先端部に開閉可能な開閉扉を設け、前記第1の化粧カバーがY方向へ摺動したときに、前記開閉扉を押し開けることで前記第1の化粧カバーのY方向への摺動が妨げられないようにしたことを特徴とする。
【0010】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記横エキスパンションジョイントカバーの側面を覆う第3の化粧カバーを備え、前記第3の化粧カバーは、水平方向へ回動可能となるように他方の躯体に固定されるとともに、前記横エキスパンションジョイントカバーにY方向へ摺動自在に取り付けられる第4のブラケットで支持されていることを特徴とする。
【0011】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記第1の化粧カバー及び前記第2の化粧カバーの下方に、二つの躯体間の間隙をカバーする受材を設けたことを特徴とする。
【0012】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記第1の化粧カバーは、勾配を設けた樋形状であることを特徴とする。
【0013】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、上記した請求項1〜6のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
すなわち、前記第2の化粧カバーには、前記他方の躯体に臨む縁部、及び、前記第1の化粧カバーに臨む縁部に、緩衝材が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、一方の躯体に固定された第1の化粧カバーと、前記第1の化粧カバーに連続するように配置された第2の化粧カバーと、を横エキスパンションジョイントカバーの上方に配置し、前記第2の化粧カバーは、他方の躯体にX方向(平面視における躯体間隙短手方向)へ摺動自在に取り付けられる第1のブラケットと、前記第1の化粧カバーにY方向(平面視における躯体間隙長手方向)へ摺動自在に取り付けられる第2のブラケットと、で支持されている。すなわち、化粧カバーが分割されており、しかも第2の化粧カバーにX方向とY方向のいずれにも摺動できるようにブラケットが取り付けられているため、二つの躯体が相互にどのように変動した場合でも、大きな可動範囲で追従することができる。よって、地震などの揺れが発生した場合でも、化粧カバーの破損を防ぎつつ十分に追随することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記第2の化粧カバーは、前記横エキスパンションジョイントカバーにY方向へ摺動自在に取り付けられる第3のブラケットによって更に支持されているため、よりスムーズに第2の化粧カバーを可動させて、化粧カバーの破損を防ぐことができる。また、第2の化粧カバーを横エキスパンションジョイントカバーで間接的に支持しているので、第2の化粧カバーの凹みやガタツキを抑制することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記第2の化粧カバーの先端部に開閉可能な開閉扉を設け、前記第1の化粧カバーがY方向へ摺動したときに、前記開閉扉を押し開けることで前記第1の化粧カバーのY方向への摺動が妨げられないように構成されている。このような構成によれば、通常時は開閉扉が閉状態となるので、意匠性を向上させることができ、かつ、雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。そして、第1の化粧カバーがY方向へ摺動したときには、開閉扉がスムーズに開状態となり、第1の化粧カバーの動きを妨げることがない。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は上記の通りであり、前記横エキスパンションジョイントカバーの側面を覆う第3の化粧カバーを備え、前記第3の化粧カバーは、水平方向へ回動可能となるように他方の躯体に固定されるとともに、前記横エキスパンションジョイントカバーにY方向へ摺動自在に取り付けられる第4のブラケットで支持されている。このような構成によれば、通常時は第3の化粧カバーが閉状態となるので、意匠性を向上させることができ、かつ、雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。そして、横エキスパンションジョイントカバーが移動したときには、第3の化粧カバーがスムーズに開状態となり、横エキスパンションジョイントカバーの動きを妨げることがない。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は上記の通りであり、前記第1の化粧カバー及び前記第2の化粧カバーの下方に、二つの躯体間の間隙をカバーする受材を設けたので、化粧カバーで網羅できない箇所においても雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は上記の通りであり、前記第1の化粧カバーは、勾配を設けた樋形状であるので、エキスパンションジョイントカバーや躯体の間隙部に雨水等を侵入させずに確実に排出することができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は上記の通りであり、前記第2の化粧カバーには、前記他方の躯体に臨む縁部、及び、前記第1の化粧カバーに臨む縁部に、緩衝材が取り付けられている。このため、第2の化粧カバーが摺動することで他方の躯体や第1の化粧カバーに衝突する場合でも、部材の破損等を有効に防止することができる。また、緩衝材が第2の化粧カバーと他方の躯体または第1の化粧カバーとの隙間を埋めるため、雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、平面視における躯体間隙短手方向を「X方向」、平面視における躯体間隙長手方向を「Y方向」をして説明する(
図1参照)。
【0023】
(エキスパンションジョイントカバーについて)
本実施形態に係るエキスパンションジョイントカバーは、
図1に示すような二つの躯体10,11間に配置される。
【0024】
二つの躯体10,11は、互いに対向する側面10a,11aを有しており、2つの側面10a,11aが間隙を有して向かい合って配置されている。二つの躯体10,11のうち、一方の躯体10は、平坦な側面10aによって他方の躯体11に向かい合っている。一方、他方の躯体11は、一方の躯体10の側面10aに臨む位置に段差を設けた形状となっている。具体的には、一方の躯体10の側面10aよりも低い屋根面にパラペット12が配置され、このパラペット12の端部から立ち上がる前面11bを備えることで、他方の躯体11の側面11aを一方の躯体10側から見たときに、L字形の段部が形成されている。
【0025】
本実施形態に係るエキスパンションジョイントカバーは、この二つの躯体10,11間に略水平に架設される横エキスパンションジョイントカバー15と、前記二つの躯体10,11間に略垂直に架設される縦エキスパンションジョイントカバー16と、を備えており、この2つのエキスパンションジョイントカバーが略直角に配置されることでコーナー部17を形成している。
【0026】
横エキスパンションジョイントカバー15は、一方の躯体10に臨む端縁に形成された固定部15aと、固定部15aから略水平に延出形成された水平部15bと、水平部15bにおける固定部15aとは逆側の端縁に形成された下垂部15cと、を備えている。この横エキスパンションジョイントカバー15は、固定部15aを使用して一方の躯体10に略水平に固定される。このとき、他方の躯体11の方向に張り出した水平部15bがパラペット12上に移動可能に載置される。これにより、水平部15bで二つの躯体10,11間の水平方向の間隙を覆っている。そして、水平部15bは、二つの躯体10,11間の間隙よりも大きな幅で形成されているため、他方の躯体11側へと突出した状態となる。このため、地震などの揺れが生じて二つの躯体10,11が移動した場合でも、水平部15bがパラペット12上で移動することで揺れに追従できるようになっている。また、水平部15bの端部に下垂部15cが設けられていることで、下垂部15cでパラペット12を覆った状態となるので、意匠性も良く、雨水等が躯体間隙へ侵入するのを防ぐ。
【0027】
縦エキスパンションジョイントカバー16は、一方の躯体10に臨む端縁に形成された固定部16aと、固定部16aから延出形成されて略垂直な面を形成する垂直部16bと、垂直部16bにおける固定部16aとは逆側の端縁に形成された折曲部16cと、を備えている。この縦エキスパンションジョイントカバー16は、固定部16aを使用して一方の躯体10に略垂直に固定される。これにより、垂直部16bで二つの躯体10,11間の垂直方向の間隙を覆っている。そして、垂直部16bは、二つの躯体10,11間の間隙よりも大きな幅で形成されているため、他方の躯体11側へと突出した状態となる。垂直部16bは他方の躯体11に固定されていないため、地震などの揺れが生じて二つの躯体10,11が移動した場合でも、垂直部16bが移動することで揺れに追従できるようになっている。また、他方の躯体11側へと突出した垂直部16bの端部には折曲部16cが設けられているため、折曲部16cの先端が他方の躯体11の前面11bに臨むようになっており、縦エキスパンションジョイントカバー16と他方の躯体11との間に隙間ができにくい構造となっているため、雨水等が躯体間隙へ侵入するのを防ぐ。
【0028】
(コーナー被覆構造について)
上記した横エキスパンションジョイントカバー15及び縦エキスパンションジョイントカバー16は、
図1に示すように、地震などで躯体10,11が揺れた場合でも互いに接触しないように、縦方向及び横方向に所定の間隔を設けて配設される。このため、コーナー部17には間隙が生じることとなるが、本実施形態においてはこのコーナー部17の間隙を被覆するコーナー被覆構造を備えている。
【0029】
本実施形態に係るコーナー被覆構造は、
図1〜3に示すように、一方の躯体10に固定された第1の化粧カバー20と、第1の化粧カバー20に連続するように配置された第2の化粧カバー21と、第2の化粧カバー21の前端部に設けられた開閉扉23と、横エキスパンションジョイントカバー15の側面を覆う第3の化粧カバー24と、第2の化粧カバー21を支持する第1のブラケット25・第2のブラケット26・第3のブラケット27と、第3の化粧カバー24を支持する第4のブラケット28と、第1の化粧カバー20及び第2の化粧カバー21の下方に設けられた受材40と、を備えている。
【0030】
(第1の化粧カバー20)
第1の化粧カバー20は、
図1に示すように一方の躯体10に固定される化粧カバーである。この第1の化粧カバー20は、
図3に示すように、一方の躯体10に臨む端縁に形成された固定部20aと、固定部20aから略水平に延出形成された雨受部20bと、雨受部20bと連続するように固定部20aとは逆側に形成された突出部20cと、突出部20cと雨受部20bとの高さの違いによって形成された段部20dと、を備えている。この第1の化粧カバー20は、固定部20aを使用して一方の躯体10に略水平に固定され、横エキスパンションジョイントカバー15の上方に略水平に配置される。
なお、雨受部20bは、
図3の矢印が示す方向に勾配を設けた樋形状となっており、上面で受けた雨などをスムーズに排出できるようになっている。
【0031】
また、突出部20cは、雨受部20bよりも低く形成されて第2の化粧カバー21の方向に張り出して設けられている。この突出部20cは、後述する第2のブラケット26のスライドユニット31を取り付けるためのものであり、第2の化粧カバー21の下方に入り込んで第2の化粧カバー21に覆われるように配置される。
【0032】
(第2の化粧カバー21)
第2の化粧カバー21は、第1の化粧カバー20よりも他方の躯体11側に配置され、第1の化粧カバー20に並設される化粧カバーである。この第2の化粧カバー21は、複数(本実施形態においては3つ)の可動式のブラケットで支持されており、いずれの躯体に対しても直接的に固定されていないため、X方向にもY方向にも移動可能となっている。この第2の化粧カバー21は、上面の高さ位置が第1の化粧カバー20とほぼ同じレベルになるように第1の化粧カバー20に連続するように配置されており、横エキスパンションジョイントカバー15の上方に略水平に配置されている。
【0033】
なお、この第2の化粧カバー21の屋根部21aは、
図3の矢印が示す方向に勾配を設けた形状となっており、上面で受けた雨などをスムーズに排出できるようになっている。
【0034】
また、この第2の化粧カバー21の側壁部21c(第1の化粧カバー20から見て遠い側の側面部)は、側面視において第1の化粧カバー20の突出部20cなどが露出しないように覆うとともに、雨水やホコリ等の侵入を防ぐように、下方に突出して形成されている。
【0035】
この第2の化粧カバー21には、
図1及び
図2に示すように、他方の躯体11に臨む縁部及び第1の化粧カバー20に臨む縁部に緩衝材21dが取り付けられている。緩衝材21dは、弾性変形が可能であればよく、例えばゴム材などを使用可能である。この緩衝材21dは、耐候性・耐久性・耐水性があり、外部に使用しても劣化し難いものが望ましい。このような緩衝材21dを設けることで、耐衝撃性能を高めることができることができるのみならず、
図6に示すように、緩衝材21dによって他方の躯体11や第1の化粧カバー20との間の隙間を埋めることができるので、雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。
【0036】
(開閉扉23)
開閉扉23は、
図1に示すように、第2の化粧カバー21の前面側の前端部21bに開閉可能に設けられる部材である。この開閉扉23は、第2の化粧カバー21の前面側の切欠きを覆うとともに、雨水やホコリ等の侵入を防ぐためのものである。
【0037】
この開閉扉23は、蝶番22を介して第2の化粧カバー21に取り付けられており、通常時においては自重によって下方に垂れ下がって閉状態を維持している(バネなどの付勢部材を使用して閉状態を保つように付勢してもよい)。しかしながら、地震などで躯体が変位することで第1の化粧カバー20がY方向へ摺動すると、第1の化粧カバー20の突出部20cによって開閉扉23は容易に押し開けられる。すなわち、通常においては閉状態を保って意匠性の向上や異物の侵入を防ぐ効果を発揮する一方、揺れが生じたときには開状態となって第1の化粧カバー20の摺動を妨げないように構成されている。
【0038】
(第3の化粧カバー24)
第3の化粧カバー24は、横エキスパンションジョイントカバー15の側面を覆うための化粧カバーである。この第3の化粧カバー24は、他方の躯体11に対して水平方向へ回動可能となるように固定される。具体的には、他方の躯体11の前面11bに固定された支持材43に蝶番44を接続し、この蝶番44に第3の化粧カバー24を接続することで、第3の化粧カバー24は他方の躯体11に回動自在に固定される。
【0039】
この第3の化粧カバー24は、後述するように、可動式のブラケットによって横エキスパンションジョイントカバー15に連結支持されており、地震などで横エキスパンションジョイントカバー15が変位した場合には、横エキスパンションジョイントカバー15を覆いつつ揺れに追従するように構成されている。
【0040】
(第1のブラケット25)
第1のブラケット25は、第2の化粧カバー21に固定されるとともに、他方の躯体11にX方向へ摺動自在に取り付けられる可動式のブラケットであり、第2の化粧カバー21と他方の躯体11とを移動可能に接続するものである。この第1のブラケット25は、
図4に示すように、長尺のレール材30と、レール材30に対してスライド可能に係合するスライドユニット31と、を備えている。
【0041】
このうち、長尺のレール材30は、長手方向に沿ってレール溝30aを内側に形成した部材であり、スライドユニット31を摺動可能にガイドするためのものである。このレール材30は、任意の場所に固定用の孔が穿設され、この孔を使用して留具などで他部材に固定される。
【0042】
一方、スライドユニット31は、レール材30のレール溝30aにスライド可能に挿入されるスライド板32と、スライド板32に回動可能に接続される回動部材34と、スライド板32と回動部材34とを閉状態に付勢するためのバネ33と、回動部材34に回動可能に接続される固定板35と、を備えている。
スライド板32は、レール溝30aに挿入される板状部材であり、端部に回動部材34と接続するための円弧部32aが形成されている。
【0043】
回動部材34は、一端部にスライド板32と接続するための軸部34aが形成され、他端部に固定板35と接続するための回動軸孔34bが形成された部材である。軸部34aがスライド板32の円弧部32aによって回動可能に保持されることで、回動部材34は軸部34aを中心に回動可能となっている。
【0044】
バネ33は、
図5に示すように、回動部材34の軸部34aに取り付けられるねじりコイルばねであり、スライド板32と回動部材34とが折り畳まれた状態となるように付勢している。
【0045】
固定板35は、所定の位置にスライドユニット31を固定するための板状部材である。たとえば、固定板35に固定用の孔を穿設し、この孔を使用して留具などで固定板35を固定する。この固定板35は、
図4に示すように、端部に回動部材34と接続するためのピン支持部35aを備えている。回動部材34の回動軸孔34bに貫通させたピン36をこのピン支持部35aで回転可能に支持することで、回動部材34がピン36を中心に回動可能となっている。
【0046】
このスライドユニット31は、
図5に示すように、バネ33の付勢力によって、通常時においては折り畳まれた状態を維持している。このため、通常の使用時においては回動部材34が不用意に回動しないため、部材の余計なバタつきが抑制されるようになっている。一方、地震などで躯体が変位した場合には、回動部材34が回動可能であるため、固定板35が固定されているにもかかわらず、固定板35とスライド板32とが蛇腹状に開閉して揺れに追従できるように形成されている。すなわち、スライドユニット31は、レール材30に対してスライド可能に係合するのみならず、スライド方向とは別方向に伸縮可能となっている。
【0047】
第1のブラケット25は、レール材30が第2の化粧カバー21に固定される。また、固定板35が他方の躯体11の前面11bに取り付けられる(具体的には、他方の躯体11の前面11bに固定されたL字固定材41を使用して固定板35が他方の躯体11の前面11bに取り付けられる)。このとき、レール材30の長手方向(レール溝30aのガイド方向)がX方向となっているため、レール材30に沿ってスライドユニット31が摺動することで、第2の化粧カバー21と他方の躯体11とが互いにX方向へ摺動自在となっている。このため、地震などで第2の化粧カバー21と他方の躯体11とが互いにX方向に移動した場合でも、レール材30に沿ってスライドユニット31が摺動することで揺れに追従できるようになっている。なお、第2の化粧カバー21と他方の躯体11とが互いに上下に移動した場合でも、回動部材34が回動することで固定板35とスライド板32とが蛇腹状に開閉して揺れに追従できるようになっている。
【0048】
(第2のブラケット26)
第2のブラケット26は、第2の化粧カバー21に固定されるとともに、第1の化粧カバー20にY方向へ摺動自在に取り付けられる可動式のブラケットであり、第2の化粧カバー21と第1の化粧カバー20とを移動可能に接続するものである。この第2のブラケット26の基本的構成は第1のブラケット25と同様である。
【0049】
この第2のブラケット26は、レール材30が第2の化粧カバー21に固定され、固定板35が第1の化粧カバー20の突出部20cに取り付けられる。このとき、レール材30の長手方向(レール溝30aのガイド方向)がY方向となっているため、レール材30に沿ってスライドユニット31が摺動することで、第2の化粧カバー21と第1の化粧カバー20とが互いにY方向へ摺動自在となっている。このため、地震などで第2の化粧カバー21と第1の化粧カバー20とが互いにY方向に移動した場合でも、レール材30に沿ってスライドユニット31が摺動することで揺れに追従できるようになっている。なお、第2の化粧カバー21と第1の化粧カバー20とが互いに上下に移動した場合でも、回動部材34が回動することで固定板35とスライド板32とが蛇腹状に開閉して揺れに追従できるようになっている。
【0050】
(第3のブラケット27)
第3のブラケット27は、第2の化粧カバー21に固定されるとともに、横エキスパンションジョイントカバー15にY方向へ摺動自在に取り付けられる可動式のブラケットであり、第2の化粧カバー21と横エキスパンションジョイントカバー15とを移動可能に接続するものである。この第3のブラケット27の基本的構成は第1のブラケット25と同様である。
【0051】
この第3のブラケット27は、レール材30が第2の化粧カバー21に固定され、固定板35が横エキスパンションジョイントカバー15の水平部15bに取り付けられる。このとき、レール材30の長手方向(レール溝30aのガイド方向)がY方向となっているため、レール材30に沿ってスライドユニット31が摺動することで、第2の化粧カバー21と横エキスパンションジョイントカバー15とが互いにY方向へ摺動自在となっている。すなわち、地震などで第2の化粧カバー21と横エキスパンションジョイントカバー15とが互いにY方向に移動した場合でも、レール材30に沿ってスライドユニット31が摺動することで揺れに追従できるようになっている。なお、第2の化粧カバー21と横エキスパンションジョイントカバー15とが互いに上下に移動した場合でも、回動部材34が回動することで固定板35とスライド板32とが蛇腹状に開閉して揺れに追従できるようになっている。
【0052】
(第4のブラケット28)
第4のブラケット28は、第3の化粧カバー24に固定されるとともに、横エキスパンションジョイントカバー15にY方向へ摺動自在に取り付けられる可動式のブラケットであり、第3の化粧カバー24と横エキスパンションジョイントカバー15とを移動可能に接続するものである。この第4のブラケット28の基本的構成は第1のブラケット25と同様である。
【0053】
この第4のブラケット28は、レール材30が第3の化粧カバー24に固定される。また、固定板35が横エキスパンションジョイントカバー15の下垂部15cに取り付けられる(具体的には、横エキスパンションジョイントカバー15の下垂部15cに固定された平型固定材42を使用して固定板35が横エキスパンションジョイントカバー15の下垂部15cに取り付けられる)。このとき、レール材30の長手方向(レール溝30aのガイド方向)がY方向となっているため、レール材30に沿ってスライドユニット31が摺動することで、第3の化粧カバー24と横エキスパンションジョイントカバー15とが互いにY方向へ摺動自在となっている。すなわち、地震などで第3の化粧カバー24と横エキスパンションジョイントカバー15とが互いにY方向に移動した場合でも、レール材30に沿ってスライドユニット31が摺動することで揺れに追従できるようになっている。なお、第2の化粧カバー21と横エキスパンションジョイントカバー15とが互いにX方向に移動した場合でも、回動部材34が回動することで固定板35とスライド板32とが蛇腹状に開閉して揺れに追従できるようになっている。
【0054】
(受材40)
受材40は、第1の化粧カバー20及び第2の化粧カバー21の下方に配置される板状部材である。この受材40の上面は、
図3の矢印が示す方向に勾配を設けた樋形状となっており、上面で受けた雨などをスムーズに排出できるようになっている。
【0055】
この受材40は、第1の化粧カバー20及び第2の化粧カバー21ではカバーできない二つの躯体10,11間の間隙をカバーするために設けられるものであり、少なくとも、第2の化粧カバー21と縦エキスパンションジョイントカバー16とが交わる角部の直下にオーバーラップするように配置される。
【0056】
(揺れに対する追従性について)
上記したようなコーナー被覆構造によれば、地震などにより二つの躯体10,11が互いに変位した場合でも、X方向及びY方向を問わずにその動きに追従することができる。
【0057】
すなわち、二つの躯体の相対位置がX方向に変位した場合には、
図7及び
図8が示すように、第1のブラケット25が摺動するとともに、第4のブラケット28が回動し、化粧カバーに無理な負荷がかからないようになっている。
【0058】
また、二つの躯体の相対位置がY方向に変位した場合には、
図9及び
図10が示すように、第2のブラケット26、第3のブラケット27、第4のブラケット28が摺動することで、化粧カバーに無理な負荷がかからないようになっている。
【0059】
なお、特に図示しないが、二つの躯体の相対位置がXYの両方向に変位した場合でも、すべてのブラケットが作動することで揺れに追従して化粧カバーに無理な負荷がかからないようにすることができる。
(まとめ)
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、一方の躯体10に固定された第1の化粧カバー20と、前記第1の化粧カバー20に連続するように配置された第2の化粧カバー21と、を横エキスパンションジョイントカバーの上方に配置し、前記第2の化粧カバー21は、他方の躯体11にX方向(平面視における躯体間隙短手方向)へ摺動自在に取り付けられる第1のブラケット25と、前記第1の化粧カバー20にY方向(平面視における躯体間隙長手方向)へ摺動自在に取り付けられる第2のブラケット26と、で支持されている。すなわち、化粧カバーが分割されており、しかも第2の化粧カバー21にX方向とY方向のいずれにも摺動できるようにブラケットが取り付けられているため、二つの躯体10,11が相互にどのように変動した場合でも、大きな可動範囲で追従することができる。よって、地震などの揺れが発生した場合でも、第1の化粧カバー20及び第2の化粧カバー21の破損を防ぎつつ十分に追随することができる。
【0061】
また、前記第2の化粧カバー21は、前記横エキスパンションジョイントカバー15にY方向へ摺動自在に取り付けられる第3のブラケット27で支持されているため、よりスムーズに第2の化粧カバー21を可動させて、化粧カバーの破損を防ぐことができる。また、第2の化粧カバー21を横エキスパンションジョイントカバー15で間接的に支持しているので、第2の化粧カバー21の凹みやガタツキを抑制することができる。
【0062】
また、前記第2の化粧カバー21の前端部21bに開閉可能な開閉扉23を設け、前記第1の化粧カバー20がY方向へ摺動したときに、前記開閉扉23を押し開けることで前記第1の化粧カバー20のY方向への摺動が妨げられないように構成されている。このような構成によれば、通常時は開閉扉23が閉状態となるので、意匠性を向上させることができ、かつ、雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。そして、第1の化粧カバー20がY方向へ摺動したときには、開閉扉23がスムーズに開状態となり、第1の化粧カバー20の動きを妨げることがない。
【0063】
また、前記横エキスパンションジョイントカバー15の側面を覆う第3の化粧カバー24を備え、前記第3の化粧カバー24は、水平方向へ回動可能となるように他方の躯体11に固定されるとともに、前記横エキスパンションジョイントカバー15にY方向へ摺動自在に取り付けられる第4のブラケット28で支持されている。このような構成によれば、通常時は第3の化粧カバー24が閉状態となるので、意匠性を向上させることができ、かつ、雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。そして、横エキスパンションジョイントカバー15がX方向へ摺動したときには、第3の化粧カバー24がスムーズに開状態となり、横エキスパンションジョイントカバー15の動きを妨げることがない。
【0064】
また、前記第1の化粧カバー20及び前記第2の化粧カバー21の下方に、二つの躯体10,11間の間隙をカバーする受材40を設けたので、第1の化粧カバー20及び第2の化粧カバー21で網羅できない箇所においても雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。
【0065】
また、前記第1の化粧カバー20は、勾配を設けた樋形状であるので、エキスパンションジョイントカバーや躯体の間隙部に雨水等を侵入させずに確実に排出することができる。
【0066】
また、前記第2の化粧カバー21には、前記他方の躯体11に臨む縁部、及び、前記第1の化粧カバー20に臨む縁部に、緩衝材21dが取り付けられている。このため、第2の化粧カバー21が摺動することで他方の躯体11や第1の化粧カバー20に衝突する場合でも、部材の破損等を有効に防止することができる。また、緩衝材21dが第2の化粧カバー21と他方の躯体11または第1の化粧カバー20との隙間を埋めるため、雨水やホコリ等の侵入を防ぐことができる。