特許第6052839号(P6052839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052839
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】光学特性が維持された耐擦傷性物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/245 20060101AFI20161219BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20161219BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C03C17/245 A
   C03C17/34 Z
   G09F9/00 302
【請求項の数】8
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2016-512998(P2016-512998)
(86)(22)【出願日】2014年5月6日
(65)【公表番号】特表2016-524581(P2016-524581A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】US2014036873
(87)【国際公開番号】WO2014182640
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】61/820,407
(32)【優先日】2013年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/877,568
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,カール ウィリアム サード
(72)【発明者】
【氏名】ポールソン,チャールズ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】プライス,ジェイムズ ジョセフ
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/052666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00−17/44
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する主要面を有する無機酸化物基板と、
前記無機酸化物基板の第1の主要面において配置される光学フィルム構造と
を含んでなる物品において、
前記光学フィルム構造が、
Alの第1の副層及びAlOの第2の副層を含む第1の層;および
SiOの第2の層、
を含む光学フィルム構造であり、
前記光学フィルム構造が耐擦傷性を示し、前記物品が、可視スペクトルにおいて85%以上の平均透過率を示し、
前記光学フィルム構造が、ダイヤモンドBerkovitchインデンターテストで測定した場合、16GPa以上の硬度を有するものであり
前記物品が、
直入射で見た場合、透過率色座標と参照点との間の距離が2未満であるような透過率色座標を有する(L、a、b)比色分析系の色透過率、および
直入射で見た場合、反射率色座標と参照点との間の距離が2未満であるような反射率色座標を有する(L、a、b)比色分析系の色反射率
のいずれか1つ以上を示し、
前記参照点が、色座標(a=0、b=0)および前記基板の色座標の少なくとも1つを含んでなり、
前記参照点が前記基板の前記色座標である場合、前記距離が、√((a物品−a基板+(b物品−b基板)に等しく、
前記参照点が、前記色座標(a=0、b=0)である場合、前記距離が、√((a物品+(b物品)に等しいことを特徴とする、物品。
【請求項2】
前記物品が、前記無機酸化物基板であって、その上に前記光学フィルム構造が配置されていない前記無機酸化物基板の全反射率以下の全反射率を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1の層が前記第2の層の厚さより大きい厚さを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の物品。
【請求項4】
前記光学フィルム構造が、2μm以上の厚さを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記無機酸化物基板が、結晶質基板または非晶質基板を含んでなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記光学フィルム構造と前記無機酸化物基板との間に配置される中間層をさらに含んでなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記光学フィルム構造が、BN、Ag、Cr、およびそれらの組合せから選択される変性剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記光学フィルム構造が、炭化ケイ素球面対向面に対して測定される場合、0.3未満の摩擦係数を示すことを特徴とする、請求項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下、2013年9月13日出願の米国仮特許出願第61/877,568号明細書、および2013年5月7日出願の米国仮特許出願第61/820,407号明細書の優先権の利益を主張する。上記仮特許出願の内容は依拠され、かつ参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、耐擦傷性を有し、かつ光学特性が維持された、ディスプレイカバーグラス用途のための物品、特に、耐擦傷性を含んでなる光学フィルム構造を含み、可視スペクトルにおいて85%以上の平均光線透過率を示す物品に関する。本明細書に定義されるように、「可視スペクトル」という句は、約380nm〜約780nmの範囲の波長を含む。
【背景技術】
【0003】
カバーグラス物品は、電子機器製品内の重要なデバイスを保護するため、インプットおよび/またはディスプレイ用のユーザインタフェースを提供するため、および/または多くの他の機能のために、しばしば使用される。そのような製品には、スマートフォン、mp3プレーヤーおよびコンピュータータブレットなどの移動式デバイスが含まれる。これらの用途では、しばしば、耐擦傷性、ならびに最大光線透過率および最小反射率に関して、強い光学性能特徴が要求される。さらにまた、カバーグラス用途では、反射および/または透過において示されるか、知覚される色が、視野角が変化した場合に、相当に変化しないことが要求される。これは、反射または透過において、色が視野角によって相当の程度まで変化する場合、製品の使用者は、ディスプレイの色または輝度の変化を知覚し、それによって、ディスプレイの感性品質を減少させるおそれがあるためである。
【0004】
既知のカバーグラス物品は、しばしば、苛酷な作動条件で使用した後に擦傷を示す。証拠は、単一の事象において生じる激しい接触によって引き起こされるダメージが、移動式デバイスにおいて使用されるカバーグラス物品における可視の擦傷の主要な原因であることを示唆する。カバーグラス物品上に著しい擦傷が発生すると、擦傷は光散乱の増加を引き起こし、それによって、ディスプレイ上で、輝度、像の明瞭さおよびコントラストの有意な減少が引き起こされ得るため、製品の外観は劣化する。著しい擦傷は、タッチ感応性ディスプレイの正確さおよび信頼性に影響を及ぼすおそれもある。したがって、これらの擦傷、およびそれほど著しくない擦傷も、見苦しく、かつ製品性能に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
単一事象の擦傷ダメージを、摩耗ダメージと対比することができる。摩耗ダメージは、典型的に硬質の対面式物体(例えば、砂、砂利および紙やすり)からのすり接触を往復させることに起因するため、カバーグラスは典型的に摩耗ダメージを経験しない。その代わりに、カバーグラス物品は、典型的に、指などの軟質物体のみからのすり接触を往復させることに耐える。加えて、摩耗ダメージは、フィルム材料における化学結合を劣化させる可能性があり、かつ物品にフレーキングおよび他の種類のダメージを引き起こす可能性がある熱を発生させる可能性がある。加えて、摩耗ダメージは、擦傷を引き起こす単一事象より長期間、経験されることが多いため、摩耗ダメージを経験するフィルム材料が酸化するおそれもあり、これはさらに、フィルム、したがって、物品の耐久性を劣化させる。擦傷を引き起こす単一事象には、一般に、摩耗ダメージを引き起こす事象と同一の条件が関与せず、したがって、摩耗ダメージを防ぐためにしばしば利用される解決案は、物品における擦傷を防ぎ得ない。さらに、既知の擦傷および摩耗ダメージの解決案は、しばしば、光学特性を悪化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、耐擦傷性および良好な光学性能を示す新規物品、およびそれらの製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、対向する主要面および対向するマイナー面を有する無機酸化物基板と、無機酸化物基板の対向する主要面の少なくとも1つにおいて配置される光学フィルム構造とを含む物品に関する。1つ以上の実施形態による物品は、可視スペクトル(例えば、380nm〜780nm)において85%以上の平均光線透過率を示す。特定の実施形態において、物品は、無機酸化物基板であって、その上に光学フィルム構造が配置されていない無機酸化物基板の全反射率以下の全反射率(それは、鏡面反射率および拡散反射率を含む)を示す。1つ以上の実施形態の物品は、可視スペクトルにおいて実質的に一定の、実質的に平坦な透過率スペクトル(もしくは反射率スペクトル)、または透過率(もしくは反射率)を示す。物品は、(L、a、b)比色分析系において、参照点からの透過率色または反射率座標距離が約2未満であるような色を示してもよい。1つ以上の実施形態において、参照点は、L色空間の起点(0、0)(または色座標a=0、b=0)、あるいは無機酸化物基板の色座標であってもよい。
【0008】
1つ以上の実施形態において、無機酸化物基板は、非晶質基板、結晶質基板またはそれらの組合せを含んでもよい。非晶質基板が利用される実施形態において、非晶質基板としては、強化されてもよく、または強化されていなくてもよいガラス基板を含むことができる。非晶質基板の例には、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラス、および/またはアルカリアルミノボロシリケートガラスが含まれる。結晶質の基板の例には、強化ガラスセラミック基板、非強化ガラスセラミック基板、単結晶基板(例えば、サファイヤなどの単結晶基板)、またはそれらの組合せが含まれる。
【0009】
1つ以上の実施形態によれば、光学フィルム構造は、耐擦傷性を物品に与える。例えば、光学フィルム構造は、本明細書に記載されるダイヤモンドBerkovitchインデンター試験によって測定した場合、少なくとも16GPaの硬度を有する、少なくとも1つの層を含んでもよい。他の実施形態において、光学フィルム構造は、炭化ケイ素球面対向面に対して測定される場合、0.3未満の摩擦係数を示してもよい。
【0010】
光学フィルム構造としては、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物、アルミニウム含有窒化物(例えば、AlNおよびAlSiN)、アルミニウム含有酸窒化物(例えば、AlOおよびSiAl)、アルミニウム含有酸化物、またはそれらの組合せが含まれてよい。いくつかの実施形態において、光学フィルム構造は、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せなどの透明誘電体物質を含む。1つ以上の実施形態の光学フィルム構造は、層状構造、または特に、少なくとも2層(例えば、第1の層および第2の層)を、第1の層が、無機酸化物基板と第2の層との間に配置されるように有してもよい。
【0011】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造の第1の層としては、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物、アルミニウム含有酸化物、アルミニウム含有酸窒化物(例えば、AlOおよびSiAl)、アルミニウム含有窒化物(例えば、AlNおよびAlSiN)、またはそれらの組合せが含まれてよい。特に、第1の層は、Al、AlN、AlOまたはそれらの組合せを含んでもよい。別の任意選択において、第1の層は、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せなどの透明誘電体物質も含んでもよい。
【0012】
光学フィルム構造がAlNまたはAlOを含む実施形態において、AlNまたはAlOは、非晶質構造、微結晶質構造、またはそれらの組合せを含んでもよい。あるいは、または追加的に、AlNまたはAlOは、多結晶質構造を含んでもよい。
【0013】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、1つ以上の変性剤を組み込んでもよい。あるいは光学フィルム構造は、変性剤を含まなくてもよい。1つ以上の特定の実施形態において、少なくとも1つの変性剤は、AlNを利用する光学フィルム構造に組み込まれてもよい。そのような実施形態において、AlNは、少なくとも1つの変性剤によってドーピングされてもよいか、または合金化されてもよい。典型的な変性剤には、BN、Ag、Cr、Mg、CおよびCaが含まれる。1つの変形形態において、光学フィルム構造は、導電性特性を示す。そのような実施形態において、光学フィルム構造は、Mgおよび/またはCaをその中に含む変性剤を組み込んでもよい。
【0014】
光学フィルム構造の第1の層は、第1の副層および第2の副層を含んでもよい。そのような実施形態において、第1の副層は、第2の副層と無機酸化物基板との間に配置されてもよい。1つの変形形態において、第1の副層はAlを含んでもよく、かつ第2の副層はAlNを含んでもよい。
【0015】
1つ以上の実施形態において、第1の副層はAlOを含んでもよく、かつ第2の副層はAlNを含んでもよい。別の変形形態において、第1の層は、3つの副層(例えば、第1の副層、第2の副層および第3の副層)を含む。そのような実施形態において、第1の副層および第3の副層はAlNを含んでもよく、かつ第2の副層は、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せなどの透明誘電体物質を含んでもよい。
【0016】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造の第1の層は、組成勾配を含んでもよい。組成勾配は、酸素含有量勾配、窒素含有量勾配、ケイ素含有量勾配および/またはアルミニウム含有量勾配を含んでもよい。1つ以上の実施形態において、組成勾配は、ケイ素およびアルミニウムの原子%が、互いに独立して第1の層の厚さに沿って、または互いに関して変化する、ケイ素/アルミニウム組成勾配を含んでもよい。他の実施形態において、組成勾配は、酸素および窒素の原子%が、互いに独立して第1の層の厚さに沿って、または互いに関して変化する、酸素/窒素組成勾配を含んでもよい。
【0017】
特定の実施形態において、第1の層の酸素含有量および/またはケイ素含有量は、無機酸化物基板から離れて移動する方向で、第1の層の厚さに沿って低下してもよい。別の実施形態において、アルミニウムおよび/または窒素含有量勾配は、無機酸化物基板から離れて移動する方向で、第1の層の厚さに沿って増加してもよい。1つ以上の例において、第1の層は酸素含有量勾配を含んでもよく、かつAlNを含んでもよい。そのような実施形態において、第1の層は、第2の層に隣接して、酸素を含まなくてもよい。特定の例において、第1の層の組成勾配は、第1の層の厚さに沿って一定である。他の特定の例において、第1の層の組成勾配は、第1の層の厚さに沿って一定ではない。他のより特定の例において、第1の層の組成勾配は、第1の層の厚さに沿って階段状に生じ、かつ階段状組成勾配は一定であっても、または一定でなくてもよい。
【0018】
1つ以上の実施形態によれば、第1の層は、屈折率勾配を含む。光学フィルム構造および/または物品の本明細書に記載される光学特性を改善するために、第1の層の屈折率は、第1の層の厚さに沿って、増加または減少、あるいは他に変化してもよい。
【0019】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造の第2の層は、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せなどの透明誘電体物質を含む。
【0020】
任意に、光学フィルム構造は、光学フィルム構造の第2の層上に配置される追加的なフィルムまたは層を含んでもよい。1つの変形形態において、物品は、巻付フィルムを含んでもよい。巻付フィルムは、無機酸化物基板の対向するマイナー面の1つ以上、および/あるいは対向する主要面の1つ以上において配置されてもよい。巻付フィルムが無機酸化物基板の対向する主要面の1つ以上において配置される実施形態において、巻付フィルムは、無機酸化物基板と光学フィルム構造との間に配置されてもよい。巻付フィルムは、光学フィルム構造の一部(例えば、光学フィルム構造の第1の副層)を形成してもよい。
【0021】
物品は、不動態化フィルムまたは中間層を任意に含んでもよい。1つ以上の実施形態において、中間層は、光学フィルム構造と無機酸化物基板との間に配置されてもよい。1つ以上の他の実施形態において、中間層は、光学フィルム構造の一部分でもよい。例えば、1つ以上の実施形態において、中間層は、光学フィルム構造の第1の層または第1の副層の一部分を形成してもよい。
【0022】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、少なくとも約1μm、または少なくとも約2μmの厚さを有してもよい。光学フィルム構造が層状構造を含む場合、第1の層は、光学フィルム構造の第2の層の厚さより大きい厚さを有してもよい。
【0023】
本開示の第2の態様は、本明細書に記載される物品の形成方法に関する。1つ以上の実施形態において、この方法は、その他の場合は本明細書に提供されるような、無機酸化物基板を提供するステップと、約0.5mTorr(0.07Pa)〜約10mTorr(1.3Pa)の範囲の圧力で、無機酸化物基板上に低応力光学フィルム構造を配置するステップとを含む。光学フィルム構造は、少なくとも16GPaの硬度を示してもよい。光学フィルム構造は、本明細書に記載されるような層状構造を有してもよい。
【0024】
1つ以上の実施形態において、この方法は、無機酸化物基板上に光学フィルム構造を配置するために真空蒸着技術を使用するステップを含む。真空蒸着技術には、化学蒸着、物理蒸着、熱蒸発および/または原子層堆積が含まれてもよい。1つ以上の実施形態において、この方法は、さらに、例えば、変性剤によって光学フィルム構造をドーピングすることによる、光学フィルム構造の導電率を増加させるステップを含む。光学フィルム構造の導電率を増加させるために利用されてもよい典型的な変性剤には、Mg、Caおよびそれらの組合せが含まれる。この方法の1つ以上の実施形態は、光学フィルム構造の潤滑度を増加させるステップを含んでもよい。特定の実施形態において、光学フィルム構造の潤滑度を増加させるステップには、光学フィルム構造にBNを組み込むステップを含む。1つ以上の実施形態において、この方法は、光学フィルム構造の応力を低下させるステップを含んでもよい。特定の実施形態において、この方法は、BN、Ag、Crまたはそれらの組合せの1つ以上を光学フィルム構造に組み込むことによる、光学フィルム構造の応力を低下させるステップを含んでもよい。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、この方法は、酸素および/または窒素を光学フィルム構造に導入するステップを含んでもよい。一例において、この方法は、光学フィルム構造において酸素含有量勾配および/または窒素含有量勾配を作成するステップを任意に含んでもよい。1つの変形形態において、酸素含有量勾配は、無機酸化物基板から離れて移動する方向で、光学フィルム構造の厚さに沿って減少する酸素含有量を含む。1つの変形形態において、窒素含有量勾配は、無機酸化物基板から離れて移動する方向で、光学フィルム構造の厚さに沿って増加する窒素含有量を含む。この方法は、ケイ素含有量勾配および/またはアルミニウム含有量勾配を作成するステップを含んでもよい。1つ以上の実施形態において、この方法は、光学フィルム構造においてケイ素含有量勾配および/またはアルミニウム含有量勾配を作成するために、無機酸化物基板上で、光学フィルム構造を形成するための1つ以上の供給源物質(例えば、ケイ素および/またはアルミニウム)を堆積するステップと、1つ以上の供給源物質に供給される動力などの1つ以上のプロセス条件を変更するステップとを含んでもよい。1つ以上の実施形態において、この方法は、光学フィルム構造と無機酸化物基板との間に中間層を配置するステップ、または中間層を光学フィルム構造に組み込むステップを含む。
【0026】
追加的な特徴および効果は、以下の詳細な説明で明らかにされ、そして一部において、その記載から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0027】
上記の概要および以下の詳細な説明は、両方とも単なる例示であり、かつ特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要およびフレームワークを提供するように意図されることは理解されるべきである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれており、これは、本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を例示し、説明と共に、様々な実施形態の原理および操作を説明するために有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、1つ以上の実施形態による物品の例示である。
図2図2は、1つ以上の実施形態による物品の例示である。
図3図3は、1つ以上の実施形態による物品の例示である。
図4図4は、1つ以上の実施形態による物品の例示である。
図4A図4Aは、図4に示される物品の特定の実施形態を示す。
図5図5は、1つ以上の実施形態による物品の例示である。
図5A図5Aは、図5に示される物品の特定の実施形態を示す。
図6A図6Aは、図4および5に示される物品の酸素またはケイ素含有量のグラフである。
図6B図6Bは、図4および5に示される物品の窒素またはアルミニウム含有量のグラフである。
図7図7は、図2の物品の光学フィルム構造の厚さおよび屈折率の関係のグラフである。
図8図8は、図3の物品の光学フィルム構造の厚さおよび屈折率の関係のグラフである。
図9図9は、図4の物品の光学フィルム構造の厚さおよび屈折率の関係のグラフである。
図10A図10Aは、図5の物品の光学フィルム構造の厚さおよび屈折率の関係のグラフである。
図10B図10Bは、1つ以上の別の実施形態による物品の光学フィルム構造の厚さおよび屈折率の関係のグラフである。
図11図11は、実施例1による光学フィルム構造の色透過率を示す等高線プロットである。
図12図12は、実施例2による光学フィルム構造の色透過率を示す等高線プロットである。
図13図13は、実施例3による光学フィルム構造の色透過率を示す等高線プロットである。
図14図14は、実施例4による光学フィルム構造の色透過率を示す等高線プロットである。
図15図15は、実施例5による光学フィルム構造の色透過率を示す等高線プロットである。
図16図16は、実施例6による光学フィルム構造の色透過率を示す等高線プロットである。
図17図17は、実施例7による光学フィルム構造の色透過率を示す等高線プロットである。
図18図18は、実施例8による光学フィルム構造の色透過率を示す等高線プロットである。
図19A図19Aは、実施例1の透過率における明度、Lの等高線プロットである。
図19B図19Bは、実施例1のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)の距離、dを示すプロットである。
図19C図19Cは、実施例1のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)のlog10dを示すプロットである。
図20A図20Aは、実施例2の透過率における明度、Lの等高線プロットである。
図20B図20Bは、実施例2のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)の距離、dを示すプロットである。
図20C図20Cは、実施例2のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)のlog10dを示すプロットである。
図21A図21Aは、実施例3の透過率における明度、Lの等高線プロットである。
図21B図21Bは、実施例3のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)の距離、dを示すプロットである。
図21C図21Cは、実施例3のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)のlog10dを示すプロットである。
図22A図22Aは、実施例4の透過率における明度、Lの等高線プロットである。
図22B図22Bは、実施例4のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)の距離、dを示すプロットである。
図22C図22Cは、実施例4のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)のlog10dを示すプロットである。
図23A図23Aは、実施例5の透過率における明度、Lの等高線プロットである。
図23B図23Bは、実施例5のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)の距離、dを示すプロットである。
図23C図23Cは、実施例5のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)のlog10dを示すプロットである。
図24A図24Aは、実施例6の透過率における明度、Lの等高線プロットである。
図24B図24Bは、実施例6のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)の距離、dを示すプロットである。
図24C図24Cは、実施例6のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)のlog10dを示すプロットである。
図25A図25Aは、実施例7の透過率における明度、Lの等高線プロットである。
図25B図25Bは、実施例7のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)の距離、dを示すプロットである。
図25C図25Cは、実施例7のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)のlog10dを示すプロットである。
図26A図26Aは、実施例8の透過率における明度、Lの等高線プロットである。
図26B図26Bは、実施例8のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)の距離、dを示すプロットである。
図26C図26Cは、実施例8のL色空間における起点(0、0)からの軸によって示されるSiOおよびAl膜厚に相当する、透過率における特定の色点(a、b)のlog10dを示すプロットである。
図27図27は、1つ以上の実施形態による層の可視スペクトル上の反射率%を例示する。
図28図28は、1つ以上の実施形態による層の可視スペクトル上の透過率%を例示する。
図29A図29Aは、実施例11の光学フィルム構造に関する、反射率におけるaの等高線プロットである。
図29B図29Bは、実施例11の光学フィルム構造および基板に関する、反射率におけるaの等高線プロットである。
図29C図29Cは、実施例11の光学フィルム構造および基板に関する、反射率におけるbの等高線プロットである。
図29D図29Dは、実施例11の光学フィルム構造および基板に関する、反射率におけるbの等高線プロットである。
図29E図29Eは、L色空間の起点(0、0)からの、実施例11の光学フィルム構造および基板に関する、反射率におけるaおよびbの距離の等高線プロットである。
図29F図29Fは、基板の色座標からの、光学フィルム構造および基板に関する、反射率におけるaおよびbの距離の等高線プロットである。
図30A図30Aは、実施例11の光学フィルム構造に関する、透過率におけるaの等高線プロットである。
図30B図30Bは、実施例11の光学フィルム構造および基板に関する、透過率におけるaの等高線プロットである。
図30C図30Cは、実施例11の光学フィルム構造に関する、透過率におけるbの等高線プロットである。
図30D図30Dは、実施例11の光学フィルム構造および基板に関する、透過率におけるbの等高線プロットである。
図30E図30Eは、L色空間の起点(0、0)からの、実施例11の光学フィルム構造および基板に関する、透過率におけるaおよびbの距離の等高線プロットである。
図30F図30Fは、基板の色座標からの、光学フィルム構造および基板に関する、透過率におけるaおよびbの距離の等高線プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、添付の図面に例示される実施形態、実施例を詳細に参照する。図面を通して、可能な場合は常に、同一参照番号が、同一または同類の部分を参照するために使用される。
【0030】
図1を参照すると、本開示の第1の態様は、対向する主要側面112、114および対向するマイナー側面116、118を有する無機酸化物基板110と、無機酸化物基板110の対向する主要側面112の1つにおいて配置される光学フィルム構造120とを含む物品100に関する。光学フィルム構造は、対向する主要側面112において配置されることに加えて、またはその代わりに、他の対向する主要側面114および/または対向するマイナー側面116、118の一方もしくは両方において配置されてもよい。
【0031】
「フィルム」という用語は、本明細書に記載される光学フィルム構造に適用される場合、非連続堆積または連続堆積プロセスを含む、当該技術分野におけるいずれかの既知の方法によって形成される1つ以上の層を含んでもよい。そのような層は、互いに直接接触していてもよい。この層は、同一材料または2種以上の異なる材料から形成されてもよい。1つ以上の他の実施形態において、そのような層は、その間に配置される異なる材料の介在層を有してもよい。1つ以上の実施形態において、フィルムは、1つ以上の連続的かつ中断されない層および/あるいは1つ以上の非連続的かつ中断された層(すなわち、互いに隣接して形成される異なる材料を有する層)を含んでもよい。
【0032】
本明細書で使用される場合、「配置」という用語は、コーティング、堆積および/または当該技術分野において既知のいずれかの方法を使用する表面上への材料の形成を含む。配置された材料によって、本明細書に定義される層またはフィルムが構成されてもよい。「上に配置される」という句は、材料が表面と直接接触するように、表面上へ材料を形成することの実例を含み、かつ1つ以上の介在材料が、配置された材料と表面との間にあるように、材料が表面上で形成される実例も含む。介在材料は、本明細書に定義される層またはフィルムを構成してもよい。
【0033】
1つ以上の実施形態によると、物品100は可視スペクトルにおいて85%以上の平均透過率を示す。1つ以上の実施形態において、物品100は15%以下の全反射率を有する。本明細書で使用される場合、「透過率」という用語は、材料(例えば、物品、無機酸化物基板または光学フィルム構造またはそれらの一部分)を通して透過する、所与の波長範囲内での入射光強度のパーセントとして定義される。「反射率」という用語は、同様に、材料(例えば、物品、無機酸化物基板または光学フィルム構造またはそれらの一部分)から反射する、所与の波長範囲内での入射光強度のパーセントとして定義される。透過率および反射率は、特定の線幅を使用して測定される。1つ以上の実施形態において、透過率および反射率の特徴決定のスペクトル分解は、5nm未満または0.02eVである。
【0034】
1つ以上の特定の実施例において、物品100は、可視スペクトルにおいて、約85%以上、約85.5%以上、約86%以上、約86.5%以上、約87%以上、約87.5%以上、約88%以上、約88.5%以上、約89%以上、約89.5%以上、約90%以上、約90.5%以上、約91%以上、約91.5%以上、約92%以上、約92.5%以上、約93%以上、約93.5%以上、約94%以上、約94.5%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の平均透過率を示し得る。1つ以上の他の実施例において、物品は、約15%以下、約14%以下、約13%以下、約12%以下、約11%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下または約6%以下の全反射率を有し得る。いくつかの特定の実施形態において、物品は、約6.8%以下、約6.6%以下、約6.4%以下、約6.2%以下、約6%以下、約5.8%以下、約5.6%以下、約5.4%以下、約5.2%以下、約5%以下、約4.8%以下、約4.6%以下、約4.4%以下、約4.2%以下、約4%以下、約3.8%以下、約3.6%以下、約3.4%以下、約3.2%以下、約3%以下、約2.8%以下、約2.6%以下、約2.4%以下、約2.2%以下、約2%以下、約2.8%以下、約2.6%以下、約2.4%以下、約2.2%以下、約2%以下、約1.8%以下、約1.6%以下、約1.4%以下、約1.2%以下、約1%以下または約0.5%以下の全反射率を有する。1つ以上の実施形態によると、物品100は、無機酸化物基板110の全反射率以下の全反射率を有する。他の実施形態において、物品は、約20%または10%未満で、無機酸化物基板の全反射率とは異なる全反射率を有する。
【0035】
1つ以上の実施形態によると、物品100は、可視スペクトルにおいて、85%以上の平均光透過を示す。「光透過」という用語は、媒体を透過する光の量を示す。光透過の測定は、媒体上での光入射と、媒体を出る(媒体によって反射または吸収されない)光の量との間の比率である。言い換えると、光透過は、媒体によって反射されず、かつ媒体によって吸収されない入射光の分数である。「平均光透過」という用語は、CIE規格の観測者によって記載されるように、光効率関数によって乗算される光透過のスペクトル平均を示す。物品100は、可視スペクトルにおいて、85%以上、85.5%以上、86%以上、86.5%以上、87%以上、87.5%以上、88%以上、88.5%以上、89%以上、89.5%以上、90%以上、90.5%以上、91%以上、91.5%以上、92%以上、92.5%以上、93%以上、93.5%以上、94%以上、94.5%以上または95%以上の平均光透過を示し得る。
【0036】
物品100は、物品が、前面からの垂直入射以外の角度で見られる時に、物品は、反射率色調を提供しないか、あるいは提供される反射率色調が、中性または無色であるように、前面101および光学特性を含む。言い換えると、前面101の前で直接的にではない別の角度から観察されると、反射率は無色である。追加的に、または代わりに、視野角が変化する場合でさえも、物品から反射する色は実質的に変化しない。1つ以上の実施形態において、物品は、透過光に関して垂直入射で、参照点からの色座標距離が約2未満である、(L、a、b)比色分析系における色透過率および/または反射率を示す。1つ以上の実施形態において、参照点は、色座標a=0、b=0であってもよいか、または参照点は、無機酸化物基板110の色座標でもよい。1つ以上の特定の実施形態において、透過率および/または反射率色座標距離は、1未満または0.5未満であってもよい。1つ以上の特定の実施形態において、透過率および/または反射率色座標距離は、1.8、1.6、1.4、1.2、0.8、0.6、0.4、0.2、0、ならびにその間の全範囲および部分範囲であってよい。参照点が色座標a=0、b=0である場合、色座標距離は、次の方程式、色座標距離=√((a*)+(b*))によって算出される。参照点が無機酸化物基板110の色座標である場合、色座標距離は、次の方程式、
色座標距離=√((a物品−a基板+(b物品−b基板
によって算出される。
【0037】
無機酸化物基板
図1〜5に示すように、無機酸化物基板110は、少なくとも1つの対向する主要面(112、114)上に配置される光学フィルム系120、220、320、420、520を含む。無機酸化物基板110は、その上に配置されるフィルムまたは材料を含んでもよく、または含まなくてもよい、マイナー表面116、118を含む。無機酸化物基板110は、非晶質基板、結晶質基板またはそれらの組合せを含んでもよい。1つ以上の実施形態において、非晶質基板として、強化されてもよく、または強化されていなくてもよいガラス基板を含んでもよい。適切なガラス基板の例には、ソーダ石灰ガラス基板、アルカリアルミノシリケートガラス基板、アルカリ含有ボロシリケートガラス基板、およびアルカリアルミノボロシリケートガラス基板が含まれる。いくつかの変形形態において、ガラス基板は酸化リチウムを含まなくてもよい。1つ以上の他の実施形態において、無機酸化物基板110は、ガラスセラミック基板(強化されていても、または強化されていなくてもよい)などの結晶の基板を含んでもよく、あるいはサファイヤなどの単結晶構造を含んでもよい。1つ以上の特定の実施形態において、無機酸化物基板110は、非晶質ベース(例えば、ガラス)および結晶質クラッディング(例えば、サファイヤ層、多結晶質アルミナ層および/または尖晶石(MgAl)層)を含む。
【0038】
無機酸化物基板110は、実質的に平面であってもよいが、他の実施形態では、曲線状であるか、あるいはその他の場合に成形されたか、または調整された無機酸化物基板を利用してもよい。無機酸化物基板110は、実質的に光学的に透明でもよくて、透過してもよくて、光散乱がなくてもよい。無機酸化物基板110は、約1.45〜約1.55の範囲の屈折率を有してもよい。無機酸化物基板110は、そのような基板の1つ以上の対向する主要表面112、114で測定される、(本明細書に記載されるような非強化の無機酸化物基板と比較して)高い平均曲げ強度、または(本明細書に記載されるような非強化の無機酸化物基板と比較して)破損に対する高い表面歪みを有するものとして特徴づけられてもよい。
【0039】
追加的に、または代わりに、無機酸化物基板110の厚さは、美的理由および/または機能的理由のため、その寸法の1つ以上に沿って変化してもよい。例えば、無機酸化物基板110の端縁は、無機酸化物基板110のより中心領域と比較して、より厚くてもよい。無機酸化物基板110の長さ、幅および厚さ寸法は、物品の用途または使用によって変化してもよい。
【0040】
無機酸化物基板110は、様々な異なるプロセスを使用して提供されてもよい。例えば、無機基板110がガラス基板を含む場合、典型的なガラス基板を形成方法としては、フロートガラスプロセスおよびダウンドロープロセス、例えば、フュージョンドローおよびスロットドローが含まれる。
【0041】
フロートガラスプロセスによって調製されるガラス基板は、なめらかな表面によって特徴づけられてもよく、そして溶融金属、典型的にスズの床において溶融ガラスをフローティングすることによって均一な厚さが作成される。一例のプロセスにおいて、溶融スズ床の表面上に供給される溶融ガラスは、フローティングガラスリボンを形成する。スズ浴に沿ってガラスリボンが流れるため、ガラスリボンが、スズからローラー上へ持ち上げることができる固体ガラス基板へと凝固するまで、温度は徐々に低下する。浴から出たら、ガラス基板はさらに冷却することができ、内部応力を低下させるためにアニールすることができる。
【0042】
ダウンドロープロセスは、比較的初期の表面を有する、均一な厚さを有するガラス基板を製造する。ガラス基板の平均曲げ強度は、表面欠陥の量および径によって制御されるため、最小限の接触を有した初期表面は、より高い初期強度を有する。次いで、この高強度のガラス基板が、(例えば、化学的に)さらに強化される場合、結果として生じる強度は、ラップされて研磨された表面を有するガラス基板のものより高くなることができる。ダウンドローされたガラス基板は、約2mm未満の厚さまで引き抜かれてもよい。加えて、ダウンドローガラス基板は、費用が高い研磨を必要とせず、その最終用途で使用することができる、非常に平面で、なめらかな表面を有する。
【0043】
フュージョンドロープロセスは、例えば、溶融ガラス原材料を受け取るためのチャネルを有するドローイングタンクを使用する。チャネルは、チャネルの両側で、チャネルの長さに沿って上部で開いている堰を有する。チャネルに溶融材料が充填した場合、溶融ガラスは堰からあふれ出る。重力のため、溶融ガラスは、2つのフローティングガラスフィルムとして、ドローイングタンクの外部表面から下へ流れる。ドローイングタンクのこれらの外部表面は、それらがドローイングタンクの下の端縁で一緒になるように、下方向および内心に延在する。2つのフローティングガラスフィルムは、この端縁で一緒になり、溶融して、単一のフローティングガラス基板を形成する。フュージョンドロー方法は、チャネル上でフローティングする2つのガラスフィルムが溶融するため、得られたガラス基板の外部表面のいずれも、装置のいずれかの部分と接触しないという利点を提供する。したがって、フュージョンドローガラス基板の表面特性は、そのような接触による影響を受けない。
【0044】
スロットドロープロセスは、フュージョンドロー法とは異なる。低速ドロープロセスにおいて、溶融原材料ガラスがドローイングタンクに提供される。ドローイングタンクの底部は、スロットの長さに延在するノズルを有する開放スロットを有する。溶融ガラスはスロット/ノズルの中を流れて、連続的な基板として、アニール化領域に、下方向へ引き抜かれる。
【0045】
いくつかの実施形態において、ガラス基板のために使用される組成物は、NaSO、NaCl、NaF、NaBr、KSO、KCl、KF、KBrおよびSnOを含む群から選択される、0〜2モル%の少なくとも1つの清澄剤でバッチ処理されてもよい。
【0046】
一旦形成されたら、ガラス基板は、強化されたガラス基板を形成するために強化されてもよい。ガラスセラミック基板は、ガラス基板と同様の方法で強化されてもよいことに留意する必要がある。本明細書で使用される場合、「強化された基板」という用語は、例えば、ガラスまたはガラスセラミック基板の表面において、より小さなイオンに対して、より大きいイオンのイオン交換によって、化学的に強化されたガラス基板またはガラスセラミック基板を示し得る。しかしながら、熱テンパリングなどの当該技術分野において既知の他の強化方法が、強化されたガラス基板を形成するために利用されてもよい。
【0047】
本明細書に記載される強化された基板は、イオン交換プロセスによって化学的に強化されてもよい。イオン交換プロセスにおいて、典型的に、所定の期間、溶融塩浴へのガラスまたはガラスセラミック基板の浸漬によって、ガラスまたはガラスセラミック基板の表面またはその付近のイオンは、塩浴からのより大きい金属イオンに交換される。一実施形態において、溶融塩浴の温度は約400〜430℃であり、かつ所定の時間は約4〜約8時間である。ガラスまたはガラスセラミック基板へのより大きいイオンの組み込みによって、基板の近表面領域、または基板の表面および隣接領域において圧縮応力が形成され、基板が強化される。相当する引張応力は、圧縮応力の釣合いをとるために、基板の中心領域、または基板の表面からある距離をおいた領域において誘導される。この強化プロセスを利用するガラスまたはガラスセラミック基板は、化学的に強化されたか、またはイオン交換されたガラスもしくはガラスセラミック基板として、より詳細に記載されてもよい。
【0048】
一例において、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板中のナトリウムイオンは、硝酸カリウム塩浴などの溶融浴からのカリウムイオンによって置き換えられるが、より大きい原子半径を有する他のアルカリ金属イオン、例えば、ルビジウムまたはセシウムをガラス中のより小さなアルカリ金属イオンと置き換えることができる。特定の実施形態によると、ガラスまたはガラスセラミック中のより小さなアルカリ金属イオンは、Agイオンによって置き換えられることができる。同様に、限定されないが、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物などの他のアルカリ金属塩を、イオン交換プロセスにおいて使用してもよい。
【0049】
ガラスネットワークが弛緩することができる温度未満の温度における、より大きいイオンによるより小さなイオンの置換によって、応力プロフィールをもたらす、強化された基板の表面を横切るイオンの分布を生じる。入って来るイオンのより大きい体積は、強化された基板の表面において圧縮応力(CS)、および中心において張力(中心張力またはCT)を生じる。圧縮応力は、以下の関係によって中心張力と関連する。
【0050】
【数1】
【0051】
式中、tは、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板の全体の厚さであり、そして層の圧縮深さ(DOL)は、交換の深さである。交換の深さは、イオン交換プロセスによって促進されるイオン交換が生じる、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板内の深さ(すなわち、ガラス基板の表面から、ガラスまたはガラスセラミック基板の中心領域までの距離)として記載されてもよい。
【0052】
一実施形態において、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、300MPa以上、例えば、400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上または800MPa以上の表面圧縮応力を有することができる。強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、15μm以上、20μm以上(例えば、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm以上)の層の圧縮深さ、および/または10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上(例えば、42MPa、45MPaまたは50MPa以上)であるが、100MPa未満(例えば、95、90、85、80、75、70、65、60、55MPa以下)の中心張力を有してもよい。1つ以上の特定の実施形態において、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、以下:500MPaより大きい表面圧縮応力、15μmより大きい層の圧縮深さ、および18MPaより大きい中心張力の1つ以上を有する。
【0053】
理論によって束縛されることなく、500MPaより大きい表面圧縮応力および約15μmより大きい層の圧縮深さを有する強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、典型的に、非強化ガラスまたはガラスセラミック基板(または言い換えると、イオン交換されなかったか、もしくはその他の場合で強化されなかったガラス基板)よりも、破損に対する大きい歪みを有することが考えられる。
【0054】
無機酸化物基板で使用されてもよいガラスの例には、アルカリアルミノシリケートガラス組成物またはアルカリアルミノボロシリケートガラス組成物が含まれてよいが、他のガラス組成物が考察される。そのようなガラス組成物は、イオン交換可能として特徴づけられてもよい。本明細書で使用される場合、「イオン交換可能」とは、基板の表面または付近に位置するカチオンを、サイズが大きいか、または小さい、同一原子価を有するカチオンと交換することができる組成物を含んでなる基板を意味する。一例において、ガラス組成物は、SiO、BおよびNaOを含んでなり、(SiO+B)≧66モル%およびNaO≧9モル%である。一実施形態において、ガラス組成物は、少なくとも6重量%の酸化アルミニウムを含む。さらなる実施形態において、無機酸化物基板は、アルカリ土属酸化物の含有量が少なくとも5重量%であるように、1つ以上のアルカリ土属酸化物を有するガラス組成物を含む。適切なガラス組成物は、いくつかの実施形態において、少なくともKO、MgOおよびCaOの1つをさらに含んでなる。特定の実施形態において、無機酸化物基板で使用されるガラス組成物は、61〜75モル%のSiO、7〜15モル%のAl、0〜12モル%のB、9〜21モル%のNaO、0〜4モル%のKO、0〜7モル%のMgOおよび0〜3モル%のCaOを含んでなることができる。
【0055】
さらなる例において、無機酸化物基板のために適切なガラス組成物は、60〜70モル%のSiO、6〜14モル%のAl、0〜15モル%のB、0〜15モル%のLiO、0〜20モル%のNaO、0〜10モル%のKO、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO、0〜1モル%のSnO、0〜1モル%のCeO、50ppm未満のAsおよび50ppm未満のSbを含んでなり、12モル%≦(LiO+NaO+KO)≦20モル%および0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0056】
なおさらなる例において、無機酸化物基板のために適切なガラス組成物は、63.5〜66.5モル%のSiO、8〜12モル%のAl、0〜3モル%のB、0〜5モル%のLiO、8〜18モル%のNaO、0〜5モル%のKO、1〜7モル%のMgO、0〜2.5モル%のCaO、0〜3モル%のZrO、0.05〜0.25モル%のSnO、0.05〜0.5モル%のCeO、50ppm未満のAsおよび50ppm未満のSbを含んでなり、14モル%≦(LiO+NaO+KO)≦18モル%および2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0057】
特定の実施形態において、無機酸化物基板のために適切なアルカリアルミノシリケートガラス組成物は、アルミナ、少なくとも1つのアルカリ金属、ならびにいくつかの実施形態において、50モル%より多いSiO、他の実施形態において、少なくとも58モル%のSiO2、およびさらに他の実施形態において、少なくとも60モル%のSiOを含んでなり、その比率は、
【0058】
【数2】
【0059】
である。この比率において、成分はモル%で表され、そして変性剤はアルカリ金属酸化物である。このガラス組成物は、特定の実施形態において、58〜72モル%のSiO、9〜17モル%のAl、2〜12モル%のB、8〜16モル%のNaOおよび0〜4モル%のKOを含んでなり、その比率は、
【0060】
【数3】
【0061】
である。
【0062】
なおさらに別の実施形態において、無機酸化物基板は、64〜68モル%のSiO、12〜16モル%のNaO、8〜12モル%のAl、0〜3モル%のB、2〜5モル%のKO、4〜6モル%のMgOおよび0〜5モル%のCaOを含んでなり、66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%、NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(NaO+B)−Al≦2モル%、2モル%≦NaO−Al≦6モル%、および4モル%≦(NaO+KO)−Al≦10モル%であるアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含んでもよい。
【0063】
他の実施形態において、無機酸化物基板は、2モル%以上のAlおよび/またはZrO、あるいは4モル%以上のAlおよび/またはZrOを含んでなるアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含んでなってもよい。
【0064】
無機酸化物基板110が結晶質基板を含む場合、基板は、Alを含んでもよい単結晶を含んでもよい。そのような単結晶質基板は、サファイヤと呼ばれる。結晶質基板のための他の適切な材料には、多結晶質アルミナ層および/または尖晶石(MgAl)が含まれる。
【0065】
任意に、結晶質基板100は、強化されていても、または強化されていなくてもよいガラスセラミック基板を含んでもよい。適切なガラスセラミックの例としては、LiO−Al−SiO系(すなわち、LAS系)ガラスセラミック、MgO−Al−SiO系(すなわち、MAS系)ガラスセラミック、および/またはβ−石英固溶体、β−リシア輝石ss、菫青石およびリチウムジシリケートを含む支配的結晶相を含むガラスセラミックが含まれてよい。ガラスセラミック基板は、本明細書に開示されるガラス基板強化プロセスを使用して強化されてもよい。1つ以上の実施形態において、MAS系ガラスセラミック基板は、LiSO溶融塩で強化されてもよく、それによって、Mg2+に対して2Liの交換を生じることができる。
【0066】
1つ以上の実施形態による無機酸化物基板110は、約100μm〜約5mmの範囲の厚さを有することができる。無機酸化物基板110の厚さの例は、約100μm〜約500μmの範囲(例えば、100、200、300、400または500μm)である。無機酸化物基板110厚さのさらなる例は、約500μm〜約1000μmの範囲(例えば、500、600、700、800、900または1000μm)である。無機酸化物基板110は、約1mmより大きい(例えば、約2、3、4または5mm)厚さを有してもよい。1つ以上の特定の実施形態において、無機酸化物基板110は、2mm以下または1mm未満の厚さを有してもよい。無機酸化物基板110は、酸性研磨されるか、またはその他の場合で表面欠陥の影響を除去するか、もしくは低下させるために処理されてもよい。
【0067】
光学フィルム構造
本明細書に記載される光学フィルム構造は耐擦傷性を有し、これは、光学フィルム構造の硬度、および/または光学フィルム構造を形成する層の1つ以上の硬度によって特徴づけられてもよい。1つ以上の特定の実施形態において、光学フィルム構造は、ダイヤモンドBerkovitchインデンター試験で測定した場合、約16GPa以上、約17GPa以上、約18GPa以上、約19GPa以上、約20GPa以上、約22GPa以上の硬度を有する。本明細書で使用される場合、「Berkovitchインデンター試験」には、Berkovitchインデンターで表面にインデントをつけ、表面から少なくとも約100nmのインデント深さを有するインデントを形成することによる表面上の硬度を測定するための試験を含む。光学フィルム構造120は、ダイヤモンドBerkovitchインデンター試験で測定した場合、約16GPa以上、約17GPa以上、約18GPa以上、約19GPa以上、約20GPa以上、約22GPa以上の硬度を有する少なくとも1つの層を有してもよい。
【0068】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、擦傷深さの減少によって測定される耐擦傷性を有する。特に、光学フィルム構造を含む物品は、光学フィルム構造を含まない無機酸化物基板110における擦傷深さと比較して、擦傷深さの減少を示し得る。ダイヤモンドBerkovitchインデンターを使用して、(光学フィルム構造の側面で)物品の表面に沿って少なくとも100μmの長さで、10μm/秒の速度で160mNの負荷を使用し、その上に配置される光学フィルム構造を有する物品を傷つける場合、得られた擦傷は、少なくとも約30%、少なくとも約31%、少なくとも約32%、少なくとも約33%、少なくとも約34%、少なくとも約35%、少なくとも約36%、少なくとも約37%、少なくとも約38%、少なくとも約39%、少なくとも約40%、少なくとも約41%、少なくとも約42%、少なくとも約43%、少なくとも約44%、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、少なくとも約60%(ならびにその間の全ての範囲および部分範囲)で、(その上に光学フィルム構造が配置されない)無機酸化物基板110上で同様に(すなわち、同一インデンター、負荷、速度および長さを使用して)形成される擦傷の深さ未満の深さを有する。光学フィルム構造のこの耐擦傷性特性は、物品が非晶質基板(例えば、強化されたガラス基板および/または強化されていないガラス基板)、結晶質基板(例えば、強化されたガラスセラミック基板、強化されていないガラスセラミックガラス基板、およびサファイヤなどの単結晶質基板)、またはそれらの組合せを利用する場合に存在し得る。加えて、光学フィルム構造のこの耐擦傷性特性は、ダイヤモンドBerkovitchインデンターを使用して、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mmまたは少なくとも5mmの長さで、10μm/秒の速度で、物品が傷つけられる場合に存在し得る。1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、光学フィルム構造を含む物品が、物品の表面に沿って少なくとも100μmの長さで、10μm/秒の速度で160mNの負荷を使用し、ダイヤモンドBerkovitchインデンターによって傷つけられる場合に、得られた擦傷が、250nm未満、240nm未満、230nm未満または220nm未満の擦傷深さを有するように耐擦傷性を有する。本明細書に記載される擦傷深さは、光学フィルム構造の最初のそのままの表面から測定されてもよい。言い換えると、擦傷深さは、光学フィルム構造へのダイヤモンドBerkovitchインデンターの貫入に起因する光学フィルム構造材料の転置のために擦傷の端縁周囲に構築され得る光学フィルム構造のいずれの量も含まない。
【0069】
1つ以上の実施形態において、サファイヤを含む無処理の無機酸化物基板110と比較した場合、および化学的に強化されたガラスを含む無処理の無機酸化物基板110と比較した場合、物品100は、擦傷深さの減少を示す。1つ以上の特定の実施形態において、化学的に強化されたガラスを含む無処理の無機酸化物基板110に対する物品100の擦傷深さの減少は、無処理の化学的に強化されたガラス基板に対する無処理のサファイヤ基板の擦傷深さの減少より、少なくとも2倍大きい。例えば、無処理のサファイヤ基板は、無処理の強化されたガラス基板と比較して、30〜40%の擦傷深さの減少を示し得るが、この物品は、無処理の強化されたガラス基板と比較して、60〜75%以上の擦傷深さの減少を示す。1つ以上の特定の実施形態において、物品100の擦傷深さの減少は、化学的に強化されたガラスを含む無処理の無機酸化物基板110と比較して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも85%、ならびにその間の全範囲および部分範囲である。
【0070】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、擦傷幅の減少によって測定される、耐擦傷性を示す。特に、光学フィルム構造を含む物品は、光学フィルム構造を含まない無機酸化物基板110の擦傷深さと比較して、擦傷幅の減少を示し得る。ダイヤモンドBerkovitchインデンターを使用して、(光学フィルム構造の側面で)物品の表面に沿って少なくとも100μmの長さで、10μm/秒の速度で160mNの負荷を使用し、本明細書に記載されるように、その上に配置される光学フィルム構造を有する物品を傷つける場合、得られた擦傷は、その上に配置された光学フィルム構造を含まない無機酸化物基板110上で同様に(すなわち、同一インデンター、負荷、速度および長さを使用して)形成された擦傷の幅よりも、少なくとも約30%、少なくとも約31%、少なくとも約32%、少なくとも約33%、少なくとも約34%、少なくとも約35%、少なくとも約36%、少なくとも約37%、少なくとも約38%、少なくとも約39%、少なくとも約40%、少なくとも約41%、少なくとも約42%、少なくとも約43%、少なくとも約44%、少なくとも約45%少ない(ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲)幅を有する。光学フィルム構造のこの耐擦傷性特性は、物品が非晶質基板(例えば、強化されたガラス基板および/または強化されていないガラス基板)、結晶質基板(例えば、強化されたガラスセラミック基板、強化されていないガラスセラミックガラス基板、およびサファイヤなどの単結晶質基板)、またはそれらの組合せを利用する場合に存在し得る。加えて、光学フィルム構造のこの耐擦傷性特性は、ダイヤモンドBerkovitchインデンターを使用して、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mmまたは少なくとも5mmの長さで、10μm/秒の速度で、物品が傷つけられる場合に存在し得る。1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、光学フィルム構造を含む物品が、物品の表面に沿って少なくとも100μmの長さで、10μm/秒の速度で160mNの負荷を使用し、ダイヤモンドBerkovitchインデンターによって傷つけられる場合に、得られた擦傷が、20nm未満、19nm未満、18nm未満、17nm未満、約16nm未満、約15nm未満、約14nm未満、約13nm未満、約12nm未満、約11nm未満、約10nm未満、約9nm未満、約8nm未満、約7nm未満、約6nm未満、約5nm未満、約4nm未満、約3nm未満、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲の擦傷幅を有するように耐擦傷性を有する。本明細書に記載される擦傷幅は、光学フィルム構造の最初のそのままの表面から測定されてもよい。言い換えると、擦傷幅は、光学フィルム構造へのダイヤモンドBerkovitchインデンターの貫入に起因する光学フィルム構造材料の転置のために擦傷の端縁周囲に構築され得る光学フィルム構造のいずれの量も含まない。
【0071】
いくつかの実施形態において、光学フィルムは、マイクロダクタイル擦傷および/またはラテラル擦傷の形成を防ぐ。マイクロダクタイル擦傷は、無制限の長さを有する材料における単一の溝を含む。ラテラル擦傷は、マイクロダクタイル擦傷の結果として形成される亀裂または擦傷である。ラテラル擦傷は、長さが同様に無制限されるが、それらが形成されるマイクロダクタイル擦傷から横に位置する。
【0072】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される光学フィルム構造を有する物品は、ガーネット紙やすり試験を使用して評価した場合、耐擦傷性を示してもよい。ガーネット紙やすり試験は、携帯電話などの移動式電子デバイスに組み込まれる場合の本明細書に記載される物品の日々の使用条件を複製するか、または模倣するように意図される。本明細書に記載される物品は、表面を150グリットガーネット紙やすり(3Mによって供給される)によって手で1回けずった後、肉眼で観察した場合、その表面上にいずれの擦傷も実質的に含まない。
【0073】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される光学フィルム構造を有する物品は、耐摩耗性も示す。いくつかの実施形態において、耐摩耗性は、Crockmeter、テイバー磨耗試験機および他の同様の標準器具を使用するものなどの当該技術分野において既知の試験によって測定される。例えば、Crockmeterは、そのような摩擦を受ける表面のCrock耐性を決定するために使用される。Crockmeterは、重量を調整したアームの端部に取り付けられた摩擦端または「フィンガー」との直接接触を表面に受けさせる。Crockmeterによって供給される標準フィンガーは、直径15ミリメートル(mm)の固体アクリルロッドである。標準クロッキング布のクリーンな部分を、このアクリルフィンガーに据え付ける。次いで、フィンガーを、900gの圧力下で試料上に載置し、そして耐久性/クロック耐性の変化を観察するために、試料上でアームを機械的に前後に繰り返し移動させる。本明細書に記載される試験で使用されるCrockmeterは、1分あたりの60回転の均一ストローク速度を提供する動力付きモデルである。Crockmeter試験は、「Standard Test Method for Determination of Abrasion and Smudge Resistance of Images Produced from Business Copy Products」と題されたASTM試験手順F1319−94に記載され、これは、参照によって全体として本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるコーティングされた物品のクロック耐性または耐久性は、ASTM試験手順F1319−94によって定義される特定の数のワイプの後、光学的(例えば、反射率、曇り、または透過率)測定によって決定される。「ワイプ」は、摩擦端またはフィンガーの2ストロークまたは1サイクルとして定義される。
【0074】
光学フィルム構造は、図1〜5に示すように、1つ以上の層を含んでもよい。これらの層の1つ以上は、光学的マネージメント機能(例えば、反射防止および/または無色透過率特性の提供)を提供しながらも、光学フィルム構造、したがって、物品100に、耐擦傷性特性を与え得る。1つ以上の他の実施形態において、光学フィルム構造において最も厚い層は、光学フィルム構造、したがって、物品に、耐擦傷性特性を提供する。光学フィルム構造の層の厚さは、光学フィルム構造および/または物品の耐擦傷性を調整するために変更されてもよい。追加的に、または代わりに、光学フィルム構造の1つ以上の層は、光学フィルム構造および/または物品の光学特性を調整するために、特定の材料および/または材料特性を含んでもよい。例えば、層は、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せなどの透明誘電体物質を含んでもよい。
【0075】
光学フィルム構造は、1μm以上の厚さを有してもよい。1つ以上の特定の実施形態において、光学フィルム構造の厚さは、約2μm以上であってもよい。1つ以上の他の実施形態において、光学フィルム構造の厚さは、約1μm〜約20μm、約1μm〜約15μm、約1μm〜約10μm、約1μm〜約8μm、約1μm〜約5μm、約1.5μm〜約20μm、約2μm〜約20μm、約2.5μm〜約20μm、約3μm〜約20μmの範囲、ならびにその間の全範囲および部分範囲であってよい。いくつかの実施形態において、光学フィルム構造は、約0.5μm〜約5μm、または約1μm〜約3μmの範囲の厚さを有してもよい。特定の光学フィルム構造120は、約1.1μm、約1.3μm、約1.4μm、約1.5μm、約1.6μm、約1.7μm、約1.8μm、約1.9μm、約2.1μm、約2.2μm、約2.3μm、約2.4μm、約2.5μm、約2.6μm、約2.7μm、約2.8μm、約2.9μm、約3.0μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約15μmまたは約20μmの厚さを有してもよい。
【0076】
1つ以上の実施形態による光学フィルム構造は、可視スペクトルにおいて実質的に透明であり得るか、または透明であり得る。1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、物品100の反射率を維持するか、または低下させて、かつ故意に物品100の反射率を増加させるいずれの材料も含まない。1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、約1.8〜2.2の範囲の平均屈折率を有する。
【0077】
光学フィルム構造は、以下の材料:ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物、ケイ素含有酸窒化物、アルミニウム含有窒化物(例えば、AlNおよびAlSiN)、アルミニウム含有酸窒化物(例えば、xおよびyがゼロより大きいAlOおよびSiAl)、ならびにアルミニウム含有酸化物の1つ以上を含んでよい。1つ以上の実施形態において、SiAlは、(u+v)=1および(x+y)=1である組成物を含む。1つ以上の実施形態において、AlOは、x+y=1およびx<0.5である組成物を含む。適切なアルミニウム含有酸化物の一例には、Alが含まれる。1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、AlOまたはSiAlを含んでなる単層を含む。1つ以上の他の実施形態において、光学フィルム構造は、xが約0〜約1の範囲にあるAlOまたはSiAlを含んでもよい。1つ以上の他の実施形態において、光学フィルム構造は、他の金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、ダイヤモンド様炭素材料および/またはそれらの組合せを含んでもよい。典型的な金属には、アルミニウムおよびケイ素に加えて、B、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、TaおよびWが含まれる。
【0078】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、AlN、AlO、SiAlN、SiAl、ならびに酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素の少なくとも1つを含んでもよい。任意に、AlNおよび酸化アルミニウムを含む光学フィルム構造は、アルミニウム含有酸窒化物を含まなくてもよい。1つ以上の他の実施形態において、光学フィルム構造は、AlNおよびアルミニウム含有酸窒化物を含んでもよい。任意に、AlNおよびアルミニウム含有酸窒化物を含む光学フィルム構造は、アルミニウム含有酸化物を含まなくてもよい。特定の実施形態において、光学フィルム構造は、酸窒化アルミニウムを含んでなってもよく、アルミニウム含有酸化物、AlNおよびアルミニウム含有酸窒化物の全3種が光学フィルム構造に存在するように、酸素および窒素の量が変更されてもよい。光学フィルム構造は、光学フィルム構造が、SiO、SiO、AlSiN、SiAlおよびSiの1つ以上を含むように、ケイ素を含んでもよく、かつ酸素、窒素、ケイ素および/またはアルミニウムの量が、これらの材料のいずれか、および全てを提供するために変更されてもよい。
【0079】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造に利用される材料は、光学フィルム構造の光学特性を最適化するために選択されてもよい。例えば、Al、SiO、SiO、SiAlおよびAlOは、視野角が直入射(すなわち、0度)から斜入射に変化する場合に反射率色点における変動を最小化するために、光学フィルム構造に利用されてもよい。斜入射は、0度より大きく、90度未満(例えば、10度以上、20度以上、30度以上、40度以上、50度以上、60度以上、70度以上、75度以上、80度以上、85度以上、86度以上、87度以上、88度以上、89度以上または89.5度以上)の範囲であってよい。
【0080】
1つ以上の特定の実施形態において、光学フィルム構造における酸素および/または窒素の量、あるいは光学フィルム構造の1つ以上の層における酸素および/または窒素の量は、光学フィルム構造が、約500nmの波長において1.9を超える屈折率を有するように調整されてもよい。1つ以上の特定の実施形態において、酸素含有量および/または窒素含有量は、光学フィルム構造、あるいは光学フィルム構造の1つ以上の層が、約500nmの波長において、1.92以上、1.94以上、1.96以上、1.98以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上または2.5以上の屈折率を示すように調整されてもよい。酸素含有量および/または窒素含有量は、光学フィルム構造の特定の層において調整されてもよい。例えば、酸素含有量および/または窒素含有量は、AlO、SiOおよび/またはAlSiNを含有する光学フィルム構造の層において、上記の様式で調整されてもよい。
【0081】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造で利用される材料は、光学フィルム構造の耐擦傷性を最適化するために選択されてもよい。例えば、Siおよび/またはAlNは、光学フィルム構造120で利用される材料の少なくとも50重量%を構成してもよい。Siおよび/またはAlNは、任意に、光学フィルム構造120で利用される材料の55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上または75重量%以上を構成してもよい。追加的に、または代わりに、酸素含有量は、硬度を調整するために変更されてもよく、そして/またはドーパントおよび合金は、光学フィルム構造120の潤滑度を変更するために使用されてもよい。
【0082】
光学フィルム構造のために選択される材料は、イオン拡散バリア特性を付与し得る。1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、無機酸化物基板110から、無機酸化物基板上に配置される他のフィルムまたは層(例えば、光学フィルム構造そのもの、またはいずれかの透明導電性酸化物層、反射防止層または他のそのような層)へのナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの拡散に対して、拡散バリアを提供してもよい。
【0083】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、小グレイン多結晶質構造を有するAlNを含んでもよい。1つ以上の特定の実施形態において、光学フィルム構造は、非晶質および/または微結晶質構造を有するAlNを含んでもよい。理論によって束縛されることなく、光学フィルム構造における少なくともいくつかの非晶質構造の含有は、光学フィルム構造における亀裂の形成を防ぎ得、かつ/または亀裂または亀裂を引き起こす力からのエネルギーを分散させる等方性機械特性を付与すると考えられる。
【0084】
図2に例示される実施形態において、物品200は、無機酸化物基板110の対向する主要面112、114の1つにおいて配置される光学フィルム構造220を含む。図2に示される光学フィルム構造220は、第1の層222および第2の層224を含む。第1の層222は、第1の副層226が、無機酸化物基板110と第2の副層228との間に配置されるように、第1の副層226および第2の副層228を含む。1つ以上の実施形態において、第1の層222は、アルミニウム含有酸化物、アルミニウム含有酸窒化物、AlNまたはそれらの組合せを含んでもよく、かつ第2の層224は、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せなどの透明誘電体物質を含んでもよい。1つ以上の特定の実施形態において、第1の層222は、Al、AlN、AlO、SiAlN、SiAlまたはそれらの組合せを含んでもよい。1つの変形形態において、第1の副層226はAlを含んでもよい。別の変形形態において、第1の副層はAlOを含んでもよい。さらにもう1つの変形形態において、第2の副層228はAlNを含む。一実施形態において、光学フィルム構造220は、Alを含んでなる第1の副層226およびAlNを含む第2の副層228を含む第1の層222と、透明誘電体物質(例えば、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せ)を含む第2の層224とを含んでなる。もう1つの実施形態において、光学フィルム構造220は、AlOを含む第1の副層226およびAlNを含む第2の副層228を有する第1の層222と、透明誘電体物質(例えば、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せ)を含む第2の層224とを含んでなる。Alが第2の層224で利用される実施形態において、窒素および酸素ガス濃度は、光学フィルム構造の層を形成するためのAl、AlOおよび/またはAlNを形成するために変更することができる。
【0085】
1つ以上の特定の実施形態において、第2の副層228は、AlN、AlO、SiAlN、SiAlまたはそれらの組合せを含むことができ、そして第1の副層226および/または第2の層224より実質的に厚いか、または厚い。1つ以上の実施形態において、第2の副層228は、第1の副層226および第2の層224の組み合わせられた厚さより実質的により大きいか、または大きい厚さを有する。1つの変形形態において、第2の副層228は、1μm以上の厚さを有してもよい。例えば、第2の副層228は、約1μm〜約3μm、または特に、約2μm〜約3μmの範囲の厚さを有してもよい。特定の実施形態としては、約1.1μm以上、約1.2μm以上、約1.3μm以上、約1.4μm以上、約1.5μm以上、約1.6μm以上、約1.7μm以上、約1.8μm以上、約1.9μm以上、約2μm以上、約2.1μm以上、約2.2μm以上、約2.3μm以上、約2.4μm以上、約2.5μm以上、約2.6μm以上、約2.7μm以上、約2.8μm以上、約2.9μm以上または約3μm以上の厚さを有する第2の副層228が含まれてもよい。第2の副層228がAlNを含む実施形態において、第2の副層の厚さは、約2μm以上でもよい。例えば、第2の副層は、約2.2μm以上、約2.3μm以上、約2.4μm以上、約2.5μm以上、約2.6μm以上、約2.7μm以上、約2.8μm以上、約2.9μm以上または約3μm以上の厚さを有してもよい。第1の副層226および第2の層224の典型的な厚さは、本明細書の実施例で例示され、かつ本明細書に記載される光学特性を提供するために変更することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、より厚い第2の副層228(例えば、約5μmまたは約10μmより大きい厚さを有するもの)の使用によって、光学特性の向上が提供される。例えば、いくつかの実例において、より厚い副層228の使用は、角度メタメリズムを低下させるか、または排除する。角度メタメリズムは、視野角が斜入射にある時の透過率または反射率における知覚色変化をもたらす。光学フィルムのいくつかのデザインにおいて、反射率スペクトルまたは透過率スペクトルは、可視スペクトルにおける振動を含む。ある種の条件において、これらの振動は、視野角が直入射から斜入射まで変化する時に移動する。発光物の線幅(例えば、F02発光物のスペクトル成分の線幅)が狭い場合、振動のこの運動は、(透過率または反射率における)色の変化として、より容易に知覚される(したがって、角度メタメリズムが存在する)。発光物の線幅(例えば、D65発光物のスペクトル成分の線幅)がより広い場合、振動の運動は、(透過率または反射率における)色の変化として、容易に知覚されないか、または知覚されない(したがって、角度メタメリズムは低下するか、または排除される)。理論によって束縛されることなく、より厚い第2の副層の使用によって、全てまたは特定の発光物における角度メタメリズムが少なくとも低下させるか、または排除され得ると考えられる。そのような発光物は、CIEによって決定される標準光源、例えば、A発光物(タングステンフィラメント照明を表す)、B発光物(日光をシミュレーションする発光物)、C発光物(日光をシミュレーションする発光物)、Dシリーズ発光物(天然日光を表す)、およびFシリーズ発光物(さまざまな蛍光灯を表す)を含む。特定の実施形態において、より厚い第2の副層の使用は、F02発光物における角度メタメリズムを低下さ得るか、または排除し得る。角度メタメリズムは、視野角が、直入射から、約0度〜約80度、約0度〜約75度、約0度〜約70度、約0度〜約65度、約0度〜約60度、約0度〜約55度、約0度〜約50度、約0度〜約45度、約0度〜約40度、約0度〜約35度、約0度〜約30度、約0度〜約25度、約0度〜約20度、約0度〜約15度、約5度〜約80度、約5度〜約80度、約5度〜約70度、約5度〜約65度、約5度〜約60度、約5度〜約55度、約5度〜約50度、約5度〜約45度、約5度〜約40度、約5度〜約35度、約5度〜約30度、約5度〜約25度、約5度〜約20度、約5度〜約15度の範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲の斜入射にある場合、より厚い第2の副層を用いることによって低下され得るか、または排除され得る。光学フィルムは、直入射から約0度〜約80度の範囲の全ての斜入射角度において、角度メタメリズムの低下を示してもよい。
【0087】
第1の副層226の屈折率は、約1.45〜約1.8の範囲にあってもよい。1つ以上の特定の実施形態において、第1の副層226の屈折率は、約1.6〜約1.75の範囲にあってもよい。例えば、第1の副層226の屈折率は、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよく、これは第1の副層に沿った位置に存在し得る。第2の副層228の屈折率は、約1.8〜約2.2の範囲にあってもよい。1つ以上の実施形態において、第2の副層の屈折率は、約2.0〜約2.15であってもよい。例えば、第2の副層228の屈折率は、1.8、1.82、1.84、1.86、1.88、1.90、1.92、1.94、1.96、1.98、1.99、2.0、2.02、2.04、2.06、2.08、2.1、2.12、2.14、2.15、2.16、2.18、2.2、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよく、これは第2の副層に沿った位置に存在し得る。第2層224の屈折率は、約1.4〜約1.6の範囲であってもよい。特定の実施形態において、第2の層224は、約1.45〜約1.55の範囲の屈折率を有してもよい。例えば、第2の層224の屈折率は、1.4、1.42、1.44、1.46、1.48、1.50、1.52、1.54、1.56、1.58、1.6、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよく、これは第2の層に沿った位置に存在し得る。
【0088】
図7は、一般に、図2に例示される光学フィルム構造220の光学特性を例示する。グラフ中、x軸上の厚さの値は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向の、光学フィルム構造220の厚さを示す。光学フィルム構造220の屈折率の値はy軸上で提供され、光学フィルム構造の厚さに沿った屈折率の変化を示す。図7のグラフは、無機酸化物基板110(または無機酸化物基板110と光学フィルム構造220との間の他のいずれかの層)、あるいは空気(または光学フィルム構造220上に配置される他のいずれかの層)の屈折率を考慮しない。無機酸化物基板110と第1の副層226との間の界面は、番号600によって示され、第1の副層226と第2の副層228との間の界面は、番号610によって示され、第2の副層228と第2の層224との間の界面は、番号620によって示され、そして第2の層224と空気との間の界面は、番号630によって示される。図7に示すように、第1の副層226および第2の層224の屈折率は、第2の副層228の屈折率より小さい。1つの特定の実施形態において、第1の副層226は約1.75の屈折率を有し、第2の副層は約2.1の屈折率を有し、そして第2の層224は約1.5の屈折率を有する。図7中、第2の副層228は、第1の副層226および第2の層224より大きい厚さを有する。
【0089】
図3に例示される実施形態において、物品300は、無機酸化物基板110の対向する主要面112、114の1つにおいて配置される光学フィルム構造320を含む。図3に示される光学フィルム構造320は、第1の層322および第2の層324を含む。第1の層322は、第1の副層326、第2の副層328および第3の副層330を含む。図3に示される実施形態において、第1の層320中、第2の副層328は、第1の副層326と第3の副層330との間にある。第1の副層326は、無機酸化物基板110と第2の副層328との間に配置され、一方、第3の副層330は、第2の副層328と第2の層324との間に配置される。1つ以上の実施形態において、第1の層322は、アルミニウム含有酸化物、アルミニウム含有酸窒化物、AlNまたはそれらの組合せを含んでもよく、そして透明誘電体物質(例えば、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Y、ならびに他の同様の材料、およびそれらの組合せ)をさらに含んでもよい。1つ以上の特定の実施形態において、第1の層322は、Al、AlN、AlOまたはそれらの組合せを含んでもよく、そして透明誘電体物質(例えば、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Y、ならびに他の同様の材料、およびそれらの組合せ)をさらに含んでもよい。第2の層324は、透明誘電体物質(例えば、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Y、ならびに他の同様の材料、およびそれらの組合せ)を含んでもよい。1つの変形形態において、第1の副層326はAlNを含んでもよく、第2の副層328はSiOを含んでもよく、そして第3の副層330はAlNを含んでもよい。別の変形形態において、第1の副層326はAlNを含んでもよく、第2の副層328はAlを含んでもよく、そして第3の副層330はAlNを含んでもよい。Alが第2の副層328および第2の層324で利用される実施形態において、窒素および酸素ガス濃度は、光学フィルム構造の層を形成するためのAlまたはAlNのいずれかを形成するために変更することができる。
【0090】
1つ以上の特定の実施形態において、第1の副層326および第3の副層330は、第2の副層328または第2の層324のいずれかの厚さより大きいか、または実質的に大きいそれぞれの厚さを有し得るか、または組み合わされた厚さを有し得る。1つ以上の実施形態において、第1の副層326および第3の副層330は、第2の副層328および第2の層324の組み合わされた厚さより大きいか、または実質的に大きいそれぞれの厚さを有し得るか、または組み合わされた厚さを有し得る。1つの変形形態において、第1の副層326および/または第3の副層330は、約1μm以上のそれぞれの、または組み合わされた厚さを有してもよい。例えば、第1の副層326および/または第3の副層330は、約1.1μm以上、約1.2μm以上、約1.3μm以上、約1.4μm以上、約1.5μm以上、約1.6μm以上、約1.7μm以上、約1.8μm以上、約1.9μm以上、または約2μm以上のそれぞれの、または組み合わされた厚さを有してもよい。第1の副層326および/または第3の副層330がAlNを含む実施形態において、これらの副層326、328の厚さは、約2μm以上のそれぞれの、または組み合わされた厚さを有してもよい。例えば、第1の副層326および/または第3の副層328は、約2.1μm以上、約2.2μm以上、約2.3μm以上、約2.4μm以上、約2.5μm以上、約2.6μm以上、約2.7μm以上、約2.8μm以上、約2.9μm以上または約3μm以上のそれぞれの、または組み合わされた厚さを有してもよい。1つ以上の実施形態において、第1の副層326は、第3の副層330と同一あるか、または異なる厚さを有してもよい。第1の副層326は、第3の副層330の厚さより大きいか、またはそれ未満の厚さを有してもよい。1つ以上の実施形態において、第2の副層328およびと第2の層324の厚さは同一である。1つ以上の他の実施形態において、光学フィルム構造320は、第1および第3の副層326、330が厚く、そして第2の副層328および第2の層324が、第1および第3の副層326、330と比べて薄い厚/薄/厚/薄の厚さ体制を有する。
【0091】
第1の副層326の屈折率は、約1.7〜約2.1の範囲にあってもよい。例えば、第1の副層326の屈折率は、1.70、1.72、1.74、1.76、1.78、1.80、1.82、1.84、1.86、1.88、1.90、1.92、1.94、1.96、1.98、2.0、2.1、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよい。1つ以上の他の実施形態において、屈折率は、第1の副層326の硬度の増大に関連する。第3の副層330の屈折率は、約1.7〜約2.1の範囲にあってもよい。1つ以上の実施形態において、第3の副層330の屈折率は、約2.0〜約2.1の範囲にあってもよい。例えば、第3の副層330の屈折率は、1.70、1.72、1.74、1.76、1.78、1.80、1.82、1.84、1.86、1.88、1.90、1.92、1.94、1.96、1.98、2.0、2.1、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよい。1つ以上の他の実施形態において、屈折率は、第1の副層326の硬度の増大に関連する。第2の副層328の屈折率は、約1.45〜約1.8の範囲にあってもよい。1つ以上の実施形態において、第2の副層328の屈折率は、約1.65〜約1.75の範囲にあってもよい。例えば、第2の副層328の屈折率は、1.45、1.46、1.48、1.50、1.52、1.54、1.56、1.58、1.60、1.62、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.78、1.8、ならびにその間の全範囲および部分範囲でもよい。第2の層324の屈折率は、約1.45〜約1.8の範囲であってよい。1つ以上の実施形態において、第2の副層328の屈折率は、約1.45〜約1.55の範囲にあってもよい。例えば、第2の副層328の屈折率は、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.58、1.60、1.62、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.78、1.8、ならびにその間の全範囲および部分範囲でもよい。
【0092】
図8は、一般に、図3に例示される光学フィルム構造320の光学特性を示す。グラフ中、x軸上の厚さの値は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向の、光学フィルム構造320の厚さを示す。光学フィルム構造320の屈折率の値はy軸上で提供され、光学フィルム構造の厚さに沿った屈折率の変化を示す。図8中、グラフは、無機酸化物基板110(または無機酸化物基板110と光学フィルム構造320との間の他のいずれかの層)、あるいは空気(または光学フィルム構造320上に配置される他のいずれかの層)の屈折率を考慮しない。無機酸化物基板110と第1の副層326との間の界面は、番号700によって示され、第1の副層326と第2の副層328との間の界面は、番号710によって示され、第2の副層328と第3の副層330との間の界面は、番号720によって示され、第3の副層330と第2の層324との間の界面は、番号730によって示され、そして第2の層324と空気との間の界面は、番号740によって示される。図8に示すように、第1の副層326および第3の層330の屈折率は、第2の副層328の屈折率および第2の層324の屈折率より大きい。図8に示される実施形態において、第1の副層326および第3の副層330の屈折率は互いに等しいように示され、そして第2の副層328および第2の層324の屈折率は互いに等しいように示される。1つ以上の他の実施形態において、第1の副層326の屈折率は、第3の副層330の屈折率とは異なってもよく、そして第2の副層328の屈折率は、第2の層324の屈折率とは異なってもよい。図8中、第1および第3の副層326、330の厚さは、第2の副層328および第2の層324の厚さより大きいものとして示される。加えて、第3の副層330の厚さは、第1の副層324の厚さより大きいように示されるが、第1の副層324が、第3の副層330より大きい厚さを有することも可能であり得る。
【0093】
図4に示される実施形態において、物品400は、無機酸化物基板110の対向する主要面112、114の1つにおいて配置される光学フィルム構造420を含む。図4に示される光学フィルム構造420は、第1の層422および第2の層424を含む。第1の層422は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有酸窒化物、窒化ケイ素、アルミニウム含有酸化物、アルミニウム含有酸窒化物(例えば、AlOおよびSiAl)、アルミニウム含有窒化物(例えば、AlNおよびAlSiN)、またはそれらの組合せを含む。第2の層424は、透明誘電体物質(例えば、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せ)を含んでもよい。
【0094】
第1の層422は、酸素含有量勾配、窒素含有量勾配、ケイ素含有量勾配およびアルミニウム含有量勾配の少なくとも1つ、ならびにそれらの様々な組合せを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「勾配」という用語は、層の組成中の元素の原子%における変動を示す。元素の原子%の変動は、層の複数の副層の間で生じてもよい。いくつかの場合には、勾配を有する層を形成するために、互いと異なる元素の原子%を有する、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120または130の副層が利用されてもよい。酸素勾配を含む層において、層と無機酸化物基板110との間の界面またはその付近の層の組成における酸素(原子%)の量は、層と別の層(例えば、第1の層および第2の層)との間の界面またはその付近、およびそれらの間の他の領域の層の組成における酸素(原子%)の量とは異なってもよい。
【0095】
1つ以上の実施形態において、組成勾配は、ケイ素およびアルミニウムの原子%が、互いに独立して、または互いに関連して、第1の層の厚さに沿って変化するケイ素/アルミニウム組成勾配を含んでもよい。他の実施形態において、構成勾配は、酸素および窒素の原子%が、互いに独立して、または互いに関連して、第1の層の厚さに沿って変化する酸素/窒素組成勾配を含んでもよい。1つ以上の実施形態において、無機酸化物基板110と第1の層422との間の界面またはその付近の酸素対窒素の比率は、第1の層422と第2の層424との間の界面またはその付近の酸素対窒素の比率より大きくてもよい。例えば、無機酸化物基板110と第1の層422との間の界面またはその付近における第1の層422に存在する窒素は、非常に少なくなり得るか、または窒素は存在し得ず、かつ/あるいは第1の層422と第2の層424との間の界面の界面またはその付近における第1の層422に存在する酸素は、非常に少なくなり得るか、または窒素は存在し得ない。1つ以上の実施形態において、無機酸化物基板110と第1の層422との間の界面またはその付近のケイ素対アルミニウムの比率は、第1の層422と第2の層424との間の界面またはその付近のケイ素対アルミニウムの比率より大きくてもよい。例えば、無機酸化物基板110と第1の層422との間の界面またはその付近における第1の層422に存在するアルミニウムは、非常に少なくなり得るか、またはアルミニウムは存在し得ず、かつ/あるいは第1の層422と第2の層424との間の界面の界面またはその付近における第1の層422に存在するケイ素は、非常に少なくなり得るか、またはケイ素は存在し得ない。
【0096】
1つ以上の実施形態において、酸素含有量勾配および/または窒素含有量勾配は、堆積プロセス(すなわち、光学フィルム構造が無機酸化物基板上へ堆積される堆積チャンバー)に導入される酸素ガスおよび/または窒素ガスの流速によって制御されてもよい。酸素または窒素含有量を増加させるためには、酸素または窒素の流速を増加させる。いくつかの実施形態において、アルミニウムおよび/またはケイ素勾配は、アルミニウムおよび/またはケイ素供給源物質に向けられる電力を制御することによって制御されてもよい(例えば、光学フィルム構造を形成するためにスパッタリングが使用される場合、アルミニウムおよび/またはケイ素スパッタリングターゲットに向けられる電力は制御される)。アルミニウムまたはケイ素含有量を増加させるためには、アルミニウムおよび/またはケイ素供給源物質に向けられる電力を増加させる。
【0097】
第1の層422における酸素および/またはケイ素の含有量は、図6Aにおいて例示されるように、無機酸化物基板110から離れて移動する厚さtに沿って移動して、第1の層422の厚さtに沿って減少してもよい。酸素含有量および/またはケイ素含有量勾配は、第1の層422の全厚さtに沿って延在してもよい。別の変形形態において、酸素含有量および/またはケイ素含有量勾配は、第1の層422の一部分の厚さtに沿って延在してもよく、一方、第1の層422の残りの部分は、酸素含有量および/またはケイ素含有量勾配を含まなくてもよく、したがって、一定の酸素および/またはケイ素含有量を有してもよい(酸素および/またはケイ素を含まなくてもよい)。例えば、酸素含有量および/またはケイ素含有量勾配は、光学フィルム構造と無機酸化物基板110との間の界面、あるいは無機酸化物基板110と酸素含有量および/またはケイ素含有量勾配を含有する層との間の他の層、例えば、中間層まで続いてもよく、これについては、以下に詳細に説明される。あるいは、酸素含有量および/またはケイ素含有量勾配は、無機酸化物基板110、または無機酸化物基板110と第1の層422の間に配置される中間層からある距離において停止してもよい。1つ以上の実施形態において、第1の層422の酸素含有量および/またはケイ素含有量は、光学フィルム構造420と無機酸化物基板110との間の界面の付近で最大であってよく、かつ、第1の層422と第2の層424との間の界面の付近で最少となってよい。1つ以上の実施形態において、第1の層422の組成は、第1の層422の酸素含有量および/またはケイ素含有量次第であり得る。例えば、第1の層422は、無機酸化物基板110に隣接する第1の層422の領域において最高酸素含有量および/またはケイ素含有量を含んでもよい。図5に示される実施形態のように、第1の層422は、第2の層424に隣接する第1の層422の領域において、最低酸素含有量および/またはケイ素含有量を含んでもよい。
【0098】
1つ以上の特定の実施形態において、無機酸化物基板110に隣接する第1の層422の領域は、最高酸素含有量を含み、かつ窒素含有量を含まなくてもよい(すなわち、y=0)。1つのそのような特定の実施形態において、無機酸化物基板110に隣接する第1の層422の領域は、Al、SiOまたはそれらの組合せを含んでもよい。
【0099】
1つ以上の実施形態において、第1の層422は、アルミニウム含有量勾配および/または窒素含有量勾配を含んでもよい。第1の層422におけるアルミニウムおよび/または窒素の含有量は、図6Bにおいて例示されるように、無機酸化物基板110から離れて移動する厚さtに沿って移動して、第1の層422の厚さtに沿って増加する。アルミニウム含有量および/または窒素含有量勾配は、第1の層422の全厚さtに沿って延在してもよい。別の変形形態において、アルミニウム含有量および/または窒素含有量勾配は、第1の層422の一部分の厚さtに沿って延在してもよく、一方、第1の層422の残りの部分は、アルミニウム含有量および/または窒素含有量勾配を含まなくてもよく、したがって、一定のアルミニウム含有量および/または窒素含有量を有してもよい(アルミニウムおよび/または窒素を含まなくてもよい)。例えば、アルミニウム含有量および/または窒素含有量勾配は、光学フィルム構造と無機酸化物基板110との間の界面、あるいは無機酸化物基板110とアルミニウム含有量および/または窒素含有量勾配を含有する層との間の他の層、例えば、中間層まで続いてもよく、これについては、以下に詳細に説明される。あるいは、アルミニウム含有量および/または窒素含有量勾配は、無機酸化物基板110、または無機酸化物基板110と第1の層422の間に配置される中間層からある距離において停止してもよい。1つ以上の実施形態において、第1の層422のアルミニウム含有量および/または窒素含有量は、光学フィルム構造420と無機酸化物基板110との間の界面の付近で最低であってよく、かつ、第1の層422と第2の層424との間の界面の付近で最大となってよい。図6Bは、第1の層424の相対的なアルミニウム含有量および/または窒素含有量を例示する。1つ以上の実施形態において、第1の層422は、第1の層422のケイ素含有量、酸素含有量、アルミニウム含有量および/または窒素含有量に応じて、酸化ケイ素、ケイ素酸化窒化物、窒化ケイ素、アルミニウム含有酸化物、アルミニウム含有酸窒化物(例えば、AlOおよびSiAl)またはアルミニウム含有窒化物(例えば、AlNおよびAlSiN)を含む。例えば、第1の層422は、図6Aに示すように、第2の層424に隣接する第1の層422の領域において、最低ケイ素含有量および/または酸素含有量を含んでもよい。図6Aに示されるように、第1の層422は、無機酸化物基板110に隣接する第1の層422の領域において、最高ケイ素含有量および/または酸素含有量を含んでもよい。図4Aは、第1の層422が、ケイ素勾配、アルミニウム勾配、酸素勾配および窒素勾配を含む実施形態を例示する。図4A中、ケイ素および酸素含有量は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向の厚さとともに減少し、そしてアルミニウムおよび窒素含有量は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向の厚さにおいて増加させる。ケイ素、アルミニウム、酸素および窒素のそれぞれの相対的な量は、図4Aに示されるが、ケイ素、アルミニウム、酸素および窒素の含有量の変化は、線形または一貫していなくてもよく、そしてSiO、SiO、SiAl、AlSiNおよびAlNの混合物が、第1の層422の様々な厚さにおいて存在してもよいことは留意されるべきである。
【0100】
無機酸化物基板110に隣接する領域と第2の層424に隣接する領域との間で、第1の層422は、AlO(式中、xおよびyは存在する窒素の量次第であり、かつ無機酸化物基板110から離れて移動する方向の厚さtに沿って窒素含有量が増加すると、変化してもよい)を含んでもよい。そのうえ、無機酸化物基板110に隣接する領域と第2の層424に隣接する領域との間で、第1の層422は、SiAl(式中、(u+v)=1および(x+y)=1である)またはSiO(式中、xおよびyは存在する窒素および/またはアルミニウムの量次第であり、かつ無機酸化物基板110から離れて移動する方向の厚さtに沿って窒素含有量および/またはアルミニウム含有量が増加すると、変化する)を含んでもよい。
【0101】
別の実施形態において、第1の層は、SiAlおよび/またはSiO(式中、厚さtに沿った第1の層422の少なくとも1つの領域において、xまたはyはゼロに等しくてもよい)を含む。1つ以上の特定の実施形態において、無機酸化物基板110に隣接する第1の層422の領域は、窒素含有量を含まず、かつ最高酸素含有量(すなわち、y=0)を含んでもよい。そのような特定の実施形態において、無機酸化物基板110に隣接する第1の層422の領域は、SiOを含んでもよい。別の特定の実施形態において、第2の層424に隣接する第1の層422の領域は、最高窒素含有量および/または最高アルミニウム含有量、ならびに最低酸素含有量および/または最低ケイ素含有量を含んでもよい。そのような実施形態において、第2の層424に隣接する第1の層422の領域は、AlN、SiまたはAlSiNを含んでもよい。
【0102】
1つ以上の実施形態において、第1の層422は、無機酸化物基板110に隣接するSiOを含むか、あるいはケイ素および/または酸素が豊富であってもよく、かつアルミニウムおよび/または窒素が不足もしくは欠如していてもよい。1つ以上の実施形態において、第1の層422は、第2の層424に隣接するAlNを含むか、あるいはアルミニウムおよび/または窒素が豊富であってもよく、かつケイ素および/または酸素が不足もしくは欠如していてもよい。
【0103】
別の実施形態において、第1の層は、AlO(式中、厚さtに沿った第1の層422の少なくとも1つの領域において、yはゼロに等しくてもよい)を含む。1つ以上の特定の実施形態において、無機酸化物基板110に隣接する第1の層422の領域は、最高酸素含有量を含んでもよく、かつ窒素含有量を含まなくてもよい(すなわち、y=0)。1つのそのような特定の実施形態において、無機酸化物基板110に隣接する第1の層422の領域は、Alを含んでもよい。
【0104】
1つ以上の実施形態において、層422の組成は、視野角が直入射(すなわち、0度)から斜入射に変化する場合に反射率色点における変動を最小化するために、調整されてもよい。そのような実施形態において、層422の組成は、第1の層422と第2の層424との間の界面の付近の組成、第1の層が、AlN、AlSiN、Si、SiAl(式中、x<0.1)またはAlO(式中、x<0.1)を含んでなるようにグラデュエーション化される。
【0105】
1つ以上の特定の実施形態において、第1の層422は、第2の層424の厚さよりも実質的により大きいか、または大きい厚さを有する。1つの変形形態において、第1の層422は1μm以上の厚さを有する。例えば、第1の層422は、1.1μm以上、1.2μm以上、1.3μm以上、1.4μm以上、1.5μm以上、1.6μm以上、1.7μm以上、1.8μm以上、1.9μm以上、2μm以上、2.1μm以上、2.2μm以上、2.3μm以上、2.4μm以上、2.5μm以上、2.6μm以上、2.7μm以上、2.8μm以上、2.9μm以上または3μm以上の厚さを有してもよい。
【0106】
図4に示される実施形態において、第1の層422の屈折率は、約1.6〜約2.1の範囲にあってもよい。例えば、第1の層422の屈折率は、1.6、1.62、1.64、1.66、1.68、1.70、1.72、1.74、1.76、1.78、1.80、1.82、1.84、1.86、1.88、1.90、1.92、1.94、1.96、1.98、2.0、2.1、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよい。第2の層424の屈折率は、約1.45〜約1.55の範囲にあってもよい。例えば、第2の層424の屈折率は、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよい。以下により詳細に説明されるように、光学フィルム構造420の第1の層422は、屈折率勾配を有してもよい。
【0107】
Alが第2の層424に利用される実施形態において、窒素および酸素ガス濃度は、光学フィルム構造の層を形成するためのAl、AlOおよび/またはAlNのいずかを形成するために変更することができる。
【0108】
1つ以上の他の実施形態において、光学フィルム構造420は、第2の層424を含まなくてもよく、かつ第1の層422のみを含んでもよい。
【0109】
図9は、一般に、図4に例示される光学フィルム構造420の光学特性を例示する。グラフ中、x軸上の厚さ値は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向における光学フィルム構造420の厚さを示す。光学フィルム構造420の屈折率値はy軸上で提供され、光学フィルム構造の厚さに沿った屈折率の変化を示す。図9中、グラフは、無機酸化物基板110(または無機酸化物基板110と光学フィルム構造420との間の他のいずれかの層)、あるいは空気(または光学フィルム構造420上に配置される他のいずれかの層)の屈折率を考慮しない。無機酸化物基板110と第1の層422との間の界面は、番号800によって示され、第1の層422と第2の層424との間の界面は、番号810によって示され、第2の層424と空気との間の界面は、番号820によって示される。図9に示すように、第1の層422の屈折率は、無機酸化物基板110(または無機酸化物基板と第1の層との間の界面800)から離れて移動する厚さに沿って増加させる。1つ以上の実施形態において、屈折率は、第1の層422の酸素含有量の変化とともに変化する。図9中、第1の層422の屈折率は、第1の層422のより広い部分に関して、第2の層424の屈折率より大きい。言い換えると、第1の層422のより大きい部分は、第2の層424より高い屈折率を有する。図9中、第1の層422の厚さは、第2の層424の厚さより大きいものとして示される。
【0110】
図5は、無機酸化物基板110の対向した主要面112、114の1つの上で配置される光学フィルム構造520を含む物品500を例示する。図5に示される光学フィルム構造520は、第1の層522および第2の層524を含む。第1の層522は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有酸窒化物、窒化ケイ素、アルミニウム含有酸化物、アルミニウム含有酸窒化物(例えば、AlOおよびSiAl)、アルミニウム含有窒化物(例えば、AlNおよびAlSiN)、またはそれらの組合せを含む。第2の層524は、透明誘電体物質(例えば、SiO、GeO、Al、Nb、TiO、Yおよび他の同様の材料、ならびにそれらの組合せ)、あるいはそれらの組合せを含んでもよい。第1の層522は、第1の副層526および第2の副層528を含む。第1の副層526は、光学フィルム構造420に関して記載されるように、酸素含有量勾配、窒素含有量勾配、ケイ素含有量勾配およびアルミニウム含有量勾配、ならびにそれらの様々な組合せを含んでもよい。
【0111】
1つ以上の実施形態において、第1の副層526は、第1の副層526の酸素含有量、ケイ素含有量、窒素含有量および/またはアルミニウム含有量次第で、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有酸窒化物、窒化ケイ素、アルミニウム含有酸化物、アルミニウム含有酸窒化物(例えば、AlOおよびSiAl)、アルミニウム含有窒化物(例えば、AlNおよびAlSiN)、ならびに/あるいはそれらの組合せを含む。特定の実施形態において、第1の副層526は、AlNおよび/またはSiを含まなくてもよい。言い換えると、1つ以上の特定の実施形態の第1の副層526は、厚さtを通して酸素を含むが、酸素の量は厚さtに沿って変化する。第2の副層528は、AlNおよび/またはSiを含んでもよい。1つ以上の実施形態において、第2の副層528は、いずれかの故意に含まれた酸素を含まなくてもよい。したがって、1つ以上の実施形態において、第1の層522の酸素含有量勾配は、第1の副層526の厚さtのみに沿って延在してもよいが、第2の副層528は、酸素を含まなくてもよい。
【0112】
図5Aは、第1の副層526が、ケイ素勾配、アルミニウム勾配、酸素勾配および窒素勾配を含む実施形態を例示する。5A図中、ケイ素および酸素含有量は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向の厚さにおいて減少し、かつアルミニウムおよび窒素含有量は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向の厚さにおいて増加させる。ケイ素、アルミニウム、酸素および窒素のそれぞれの相対的な量が示されるが、ケイ素、アルミニウム、酸素および窒素の含有量の変化は、線形または一貫していなくてもよく、そしてSiO、SiO、SiAl、AlSiNおよびAlNの混合物が、第1の副層526の様々な厚さにおいて存在してもよいことは留意されるべきである。1つ以上の実施形態において、第1の副層はAlNを含まなくてもよく、かつSiO、SiO、SiAlおよび/またはAlSiNのみを含んでもよく、かつ第2の副層は、AlNを含んでもよい。
【0113】
1つ以上の実施形態において、無機酸化物基板110から離れて移動する方向における、第1の層422または第1の副層526の厚さtに沿った酸素、ケイ素、アルミニウムおよび/または窒素含有量の減少または増加は一定であってよい。1つ以上の他の実施形態において、酸素、ケイ素、アルミニウムおよび/または窒素の減少または増加は一定ではない。酸素、ケイ素、アルミニウムおよび/または窒素の減少または増加が一定ではない、そのような実施形態において、酸素、ケイ素、アルミニウムおよび/または窒素は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向において厚さtの部分に沿って減少するか、または一定のままであるが、第1の層422または第1の副層526のそれぞれの酸素、ケイ素、アルミニウムおよび/または窒素含有量は、一般的な傾向として、無機酸化物基板110から離れて移動する方向において厚さtに沿って増加または減少することは理解されるであろう。例えば、本明細書に開示される酸素含有量勾配を有する光学フィルム構造の層は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向において厚さtに沿って酸素含有量の増加を含まない。第1の層422または第1の副層526の厚さtの部分に沿って、酸素含有量が減少するか、または一定のままである実施形態の酸素含有量勾配は、「階段状」酸素含有量勾配と呼ばれてもよく、あるいは第1の層422または第1の副層526の厚さに沿って階段状に減少する酸素含有量を有すると記載されてもよい。1つ以上の特定の実施形態において、酸素含有量は、無機酸化物基板110のより付近で、第1の層422または第1の副層526の厚さに沿って、より遅い割合で減少してもよく、かつ第2の層424または第2の副層528のより付近で、第1の層422または第1の副層526の厚さに沿ってより速い割合で減少してもよい。言い換えると、酸素含有量が第1の層422または第1の副層526の厚さに沿って減少する割合は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向において増加してもよい。したがって、酸素含有量勾配は、無機酸化物基板から離れて移動する方向において厚さtに沿って、線形または非線形に増加してもよい。これらの種類の勾配(すなわち、階段状、一定、より速い/よい遅い割合、線形および非線形)は、ケイ素含有量、アルミニウム含有量および/または窒素含有量が、第1の層422または第1の副層526の厚さに沿って増減する、本明細書に記載されるケイ素含有量勾配、アルミニウム勾配および窒素勾配に等しく適用可能である。
【0114】
1つ以上の実施形態において、第2の副層528は、光学フィルム構造の硬度を最適化するために調整される厚さを有する。1つ以上の特定の実施形態において、第2の副層528の厚さは、第1の副層526に関して調整されてもよい。1つ以上の特定の実施形態において、第2の副層528は、第1の副層526または第2の層524よりも実質的に厚いか、または厚い。1つ以上の実施形態において、第2の副層528は、第1の副層526および第2の層524の組合せられた厚さよりも実質的に大きいか、または大きい厚さを有する。1つの変形形態において、第2の副層528は、1μm以上の厚さを有してもよい。例えば、第2の副層528は、約1μm〜約3μm、より特には、約2μm〜約3μmの厚さを有してもよい。第2の副層528の特定の実施形態は、約1.1μm以上、約1.2μm以上、約1.3μm以上、約1.4μm以上、約1.5μm以上、約1.6μm以上、約1.7μm以上、約1.8μm以上、約1.9μm以上、約2μm以上、約2.1μm以上、約2.2μm以上、約2.3μm以上、約2.4μm以上、約2.5μm以上、約2.6μm以上、約2.7μm以上、約2.8μm以上、約2.9μm以上または約3μm以上の厚さを有してもよい。第2の副層528がAlNを含む実施形態において、第2の副層の厚さは、2μm以上であってもよい。例えば、第2の副層528は、約2.2μm以上、約2.3μm以上、約2.4μm以上、約2.5μm以上、約2.6μm以上、約2.7μm以上、約2.8μm以上、約2.9μm以上または約3μm以上の厚さを有してもよい。
【0115】
第1の副層526の屈折率は、約1.6〜約2.1の範囲にあってもよい。例えば、第1の副層326の屈折率は、1.6、1.62、1.64、1.66、1.68、1.70、1.72、1.74、1.76、1.78、1.80、1.82、1.84、1.86、1.88、1.90、1.92、1.94、1.96、1.98、2.0、2.1、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲を含んでもよい。第2の副層528の屈折率は、約2.0〜約2.1の範囲にあってもよい。例えば、第2の副層の屈折率は、2.0、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよい。第2の層524の屈折率は、約1.45〜約1.55の範囲にあってもよい。例えば、第2の層524の屈折率は、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、ならびにその間の全範囲および部分範囲を含んでもよい。以下により詳細に記載されるように、光学フィルム構造520の第1の層522は、屈折率勾配を有してもよい。
【0116】
Alが第2の層524に利用される実施形態において、窒素および酸素ガス濃度は、光学フィルム構造の層を形成するためのAl、AlOおよび/またはAlNのいずれかを形成するために変更することができる。
【0117】
図10Aは、一般に、図5に例示される光学フィルム構造520の光学特性を例示する。グラフ中、x軸上の厚さ値は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向における光学フィルム構造520の厚さを示す。光学フィルム構造520の屈折率値はy軸上で提供され、光学フィルム構造の厚さに沿った屈折率の変化を示す。図10A中、グラフは、無機酸化物基板110(または無機酸化物基板110と光学フィルム構造520との間の他のいずれかの層)、あるいは空気(または光学フィルム構造520上に配置される他のいずれかの層)の屈折率を考慮しない。無機酸化物基板110と第1の副層526との間の界面は、番号900によって示され、第1の副層526と第2の副層528との間の界面は、番号910によって示され、第2の副層528と第2の層524との間の界面は、番号920によって示され、第2の層524と空気との間の界面は、番号930によって示される。図10Aに示すように、第1の副層526の屈折率は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向において第1の副層526(または無機酸化物基板と第1の副層526との間の界面900)の厚さに沿って増加する。1つ以上の他の実施形態において、第1の副層526の屈折率は、第1の副層526の酸素含有量の変化とともに変化する。加えて、第1の副層526は、第1の副層526の大部分の厚さに沿って、第2の層524の屈折率より大きい屈折率を有する。第2の副層は、第2の副層の全厚さに沿って、第2の層524の屈折率より大きい屈折率を有する。図10A中、第1および第2の副層526、528の厚さは、第2の層524の厚さより大きいものとして示される。加えて、第1および第2の副層526、528の厚さは、ほぼ等しいように示されるが、いくつかの実施形態において、第1および第2の副層526、528の1つは、第1および第2の副層の他方よりも大きい厚さを有してもよい。
【0118】
図10Bは、一般に、図5に示される光学フィルム構造の他の実施形態の光学特性を示す。図10Bで示される実施形態において、第2の副層528は、第2の層524と同一の屈折率を有する。1つ以上の実施形態において、第2の副層528は、第2の層524の少なくとも一部分と組成が同様でもよいか、または同一でもよい。図10Bに示されるグラフ中、x軸上の厚さの値は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向における光学フィルム構造520の厚さを示す。光学フィルム構造520の屈折率値はy軸上で提供され、光学フィルム構造の厚さに沿った屈折率の変化を示す。図10B中、グラフは、無機酸化物基板110(または無機酸化物基板110と光学フィルム構造520との間の他のいずれかの層)、あるいは空気(または光学フィルム構造520上に配置される他のいずれかの層)の屈折率を考慮しない。無機酸化物基板110と第1の副層526との間の界面は、番号1000によって示され、第1の副層526と第2の副層528との間の界面は、番号1010によって示され、第2の副層528と第2の層524との間の界面は、番号1020によって示され、そして第2の層524と空気との間の界面は、番号1030によって示される。図10ABに示すように、第1の副層526の屈折率は、無機酸化物基板110(または無機酸化物基板と第1の副層526との間の界面900)から離れて移動する方向において、第1の副層526の厚さに沿って増加する。1つ以上の他の実施形態において、第1の副層526の屈折率は、第1の副層526の酸素含有量の変化とともに変化する。加えて、第1の副層526は、第1の副層526の厚さの少なくとも一部分に沿って、第2の層524の屈折率より低い屈折率を有する。第2の副層は、第2の副層の全厚さに沿って、第2の層524の屈折率と同様の屈折率を有する。図10B中、第1および第2の副層526、528の厚さは、第2の層524の厚さより大きく示されるが、第1の副層526、第2の副層528および第2の層524の厚さは、所望の耐擦傷性および光学特性を提供する必要に応じて、等しくてもよく、あるいは互いに対してより厚くても、またはより薄くてもよい。加えて、第1および第2の副層526、528の厚さは、ほぼ等しいように示されるが、いくつかの実施形態において、第1および第2の副層526、528の1つは、第1および第2の副層の他方よりも大きい厚さを有してもよい。
【0119】
図4および5に示される実施形態において、光学フィルム構造の第1の層422、522は、屈折率勾配を有してもよい。屈折率勾配は、第1の層422、522における酸素および/または窒素含有量勾配に関連してもよく、あるいは第1の層422、522における組成勾配に起因してもよい。図2および3に示される第1の層222、322は、屈折率勾配を有してもよい。そのような実施形態において、光学フィルム構造の第1の層の屈折率は、無機酸化物基板110から離れて移動する方向において、厚さtに沿って増加してもよい。例えば、屈折率勾配は、約1.45〜約2.2の範囲、または特に、約1.7〜約2.1の範囲にあってもよい。酸素含有量勾配を利用する実施形態において、酸素含有量は、可視スペクトルに沿って光学特性を最適化するために調節されてもよい。同様に、窒素含有量勾配を利用する実施形態において、窒素含有量は、可視スペクトルに沿って光学特性を最適化するために調節されてもよい。
【0120】
1つ以上の実施形態において、第1の層222、322、422、522は、ケイ素を含まないか、またはアルミニウムを含まない。1つ以上の特定の実施形態において、第1の層222、322、422、522は、AlNまたはSiを含むが、第1の層222、322、422、522のAlNまたはSiと無機酸化物基板110との間に酸化物が配置される。酸化物は、物品が、その他の場合は本明細書に記載されるように、可視スペクトルにおいて約85%以上の平均透過率を示すように、光学特性を調節するように選択されてもよい。1つ以上の実施形態において、酸化物は、物品が、可視スペクトルにおいて、本明細書に記載される光学フィルム構造のない無機酸化物基板110の全反射率以下の全反射率を示すように、光学特性を調節するように選択されてもよい。1つ以上の実施形態において、酸化物は、物品が、その他の場合は本明細書に記載されるように、参照点からの色座標距離が約2未満であるように、(L、a、b)比色分析系における色透過率または反射率を示すように、光学特性を調節するように選択されてもよい。
【0121】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される光学フィルム構造は、ナノ構造または故意に添加されたナノ構造、例えば、微粒子を含まない。故意に添加されたナノ構造は、そのようなナノ構造の特性(例えば、光学フィルム構造またはその中のいずれかの層の表面積を増加させるため、反射防止特性を提供するため、など)のために、光学フィルム構造に故意に導入された微粒子である。1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される光学フィルム構造は、多孔性層または故意に添加された多孔性を有する層を含まない。故意に添加された多孔性は、多孔性を提供するか、または増加させるために光学フィルム構造を処理すること、あるいは多孔性を提供するか、または増加させるために光学フィルム構造に細孔形成材料を含むことを含む。1つ以上の実施形態において、第2の層224、324、424、524は、アルミニウムまたはアルミニウム酸化窒化物を排除する。
【0122】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される光学フィルム構造は、1つ以上の特性を向上させるか、または抑制するために、変性剤を含んでもよい。1つ以上の特定の実施形態において、光学フィルム構造の導電率を向上させるために、変性剤を光学フィルム構造に組み込むことができる。そのような実施形態において、光学フィルム構造は、導電率を制御するために変性されてもよいか、あるいはMgおよび/またはCaでドーピングされてもよい。Siおよび/またはGeなどの他の変性剤ドーパントが、本明細書に記載される光学フィルム構造、特に、AlNを含んでなる光学フィルム構造の層に組み込まれてもよい。1つ以上の実施形態において、Siおよび/またはGe変性剤またはドーパントの使用によって、本明細書に記載される光学フィルム構造の所与の層の酸素または窒素含有量を変更することを必要とせずに、屈折率の制御が可能となる。言い換えると、Siおよび/または、Geの使用によって、酸素または窒素含有量を変更させることを必要とすることなく、光学フィルム構造内の所与の層の屈折率の制御を可能にする。さらに、少量で使用される場合(すなわち、y<0.1およびx+y=1のAlNxSiyを提供するため)、SiはAlNの硬度を向上させ得る。ホウ素は、適切に本明細書に開示されるいずれの材料とも合金化されてもよい。例えば、AlNは、x+y=1であるAlxByNを提供するために、ホウ素と合金化されてもよい。少量のホウ素の組み込みは、光学フィルム構造内の特定の層に、または光学フィルム構造全体に潤滑度の改善を提供し得る。ホウ素の組み込みは、光学フィルム構造内の特定の層に、または光学フィルム構造全体に硬度の増加を提供することもできる。本明細書に記載される窒素または窒化物を含む光学フィルム構造の層は、炭素変性剤またはドーパントを任意に含んでもよい。1つ以上の実施形態において、炭素変性剤またはドーパントは、光学フィルム構造内で炭化物を形成するための合金として使用されてもよい。あるいは光学フィルム構造は、変性剤またはドーパントを含まなくてもよく、あるいは故意に添加された変性剤またはドーパントを含まなくてもよい。
【0123】
1つ以上の他の実施形態において、六方晶系BNを含む変性剤またはドーパントを、光学フィルム構造の光学特性を改善するために、光学フィルム構造に組み込むことができる。例えば、六方晶系BNは、光学フィルム構造の1つ以上の層の屈折率を増加させるために、光学フィルム構造に組み込まれてもよい。このように変性されるか、またはドーピングされる光学フィルム構造の層は、AlN、Si、SiO、SiAl、AlSiNまたはAlOを含んでもよい。
【0124】
任意に、六方晶系BN、Ag、Crおよび/または他の大きい原子を含む変性剤は、光学フィルム構造の機械的特性を改善するために、光学フィルム構造に組み込まれてもよい。特に、六方晶系BN、Ag、Crおよび/または他の大きい原子を含む変性剤の使用は、光学フィルム構造における応力を管理するために、光学フィルム構造に組み込まれてもよい。理論によって束縛されることなく、ある種の原子によるAlN、Si、SiO、SiAl、AlSiNまたはAlO層のドーピングは、フィルムの応力を緩和し、フィルムがより低い応力を有することを可能にし得る。緩和されたフィルムは、単一事象の擦傷などの力を受けた場合、フレーク剥離の傾向がなく、それによって擦傷ダメージが防がれ、さらに、光学ダメージが防がれる。例となる原子は、銀(Ag)、イットリウム(Y)、インジウム(In)およびスズ(Sn)、ならびに周期表の第5列の他の元素を含む。追加的に、ドーパントとしてのリンの使用は、光学フィルム構造に緩和効果を提供し得る。緩和されたフィルムは、擦傷を引き起こすスライド接触事象の間に生じる力によって引き離されることに抵抗する。したがって、光学フィルム構造へのある種の原子の含有は、望ましくない張力または圧縮を生じることなく、フィルムが所望の硬度を有することを可能にする。そのようなある種の原子の含有は、光学フィルム構造の光学特性の調整に関する追加的な自由度を提供する。
【0125】
1つ以上の実施形態において、六方晶系BN変性剤は、光学フィルム構造に潤滑度を与えるために、光学フィルム構造に組み込まれてもよい。六方晶系BNは、グラフェンと同様のシート様構造を有してもよい。
【0126】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、AlN、Si、SiO、SiAl、AlSiNまたはAlOを含むが、六方晶系BN変性剤を光学フィルム構造に組み込んでいない他の光学フィルム構造の摩擦係数より低い摩擦係数を有してもよい。例えば、炭化ケイ素球面対向面を使用して測定される場合、AlN、Si、SiO、SiAl、AlSiNまたはAlOを含んでなり、かつ六方晶系BN変性剤を組み込んだ光学フィルム構造は、約0.3未満の摩擦係数を有してもよい。1つ以上の実施形態において、摩擦係数は、約0.28以下、約0.26以下、約0.24以下、約0.22以下、約0.20以下、約0.18以下、約0.16以下、約0.14以下、約0.12以下または約0.1以下であってもよい。
【0127】
1つ以上の実施形態において、AlN、Si、SiO、SiAl、AlSiNまたはAlOを含んでなる光学フィルム構造の層に変性剤が組み込まれてもよい。例えば、図2に示される実施形態において、変性剤は、AlNまたはAlOを含む第2の副層226に組み込まれてもよい。図3に示される実施形態において、第1の副層326および/または第3の副層330に変性剤が組み込まれてもよい。図4に示される実施形態において、第1の層422において変性剤が組み込まれてもよい。図5に示される実施形態において、第1の副層526または第2の副層528において変性剤が組み込まれてもよい。
【0128】
1つ以上の実施形態において、フッ素を含む変性剤が、本明細書に開示される第2の層224、324、424、524に組み込まれてもよい。そのような実施形態において、フッ素変性剤は、第2の層、したがって光学フィルム構造の摩擦係数を低下させる。フッ素変性剤は、光学フィルム構造の他の層に組み込まれてもよい。1つ以上の実施形態において、本明細書に開示される第2の層は、SiOおよびフッ素を含む変性剤を含んでなる。
【0129】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される光学フィルム構造は、赤外線反射層または材料を排除する。光学フィルム構造は、赤外線領域に特に調整される光学特性を有する層または材料を排除してもよい。
【0130】
図1に示すように、無機酸化物基板110は、対向するマイナー表面116、118を含む。1つ以上の実施形態において、物品100は、対向するマイナー面116、118、および/または対向する主要面112、114において配置されてもよい巻付フィルム(示されず)を含んでもよい。そのような実施形態において、巻付フィルムは無機酸化物基板110と、光学フィルム構造120、220、320、420、520との間に配置されてもよい。あるいは巻付フィルムは、第1の層222、322、422、522の全部または一部を形成してもよい。特定の実施形態において、巻付フィルムは、第1の副層226、326、526の全部または一部を形成してもよい。巻付フィルムは、Alを含んでもよい。巻付フィルムは、本明細書に開示される第1の副層226、326、526および第1の層424に核形成層を提供し得る。核形成層は、第1の副層226、326および526または第1の層424の最初のいくつかの原子層における原子の原子配置に影響を及ぼし得る(すなわち、第1の副層226、326、526または第1の層424と巻付フィルムとの間の界面から10nm未満である核形成層)。
【0131】
本明細書に開示される物品は、その上に配置される追加的なフィルムまたは層を含んでもよい。例えば、物品は反射防止フィルムおよび/または不動態化フィルムを含んでもよい。典型的な反射防止フィルムは、単層または複数の層(例えば、4層フィルム、6層フィルムなど)を含んでもよい。複数の層を有する反射防止フィルムが利用される場合、層は異なる屈折率を含んでもよく、そして高い屈折率(H)および低屈折率(L)を有する層を含んでもよい。ここで、「高い」および「低い」とは、互いに対して、および反射防止フィルムの既知の範囲内である。層は、高い屈折率層と低い屈折率層が交替するように配置されてもよい。1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される無機酸化物基板110と光学フィルム構造との間に中間層が配置されてもよい。特定の実施形態において、中間層は、物品の平均曲げ強度を維持するために、有機材料、無機材料またはそれらの組合せのフィルムまたは層を含んでもよい。中間の層は、互いに同一の組成または異なる組成を有してもよい、いくつかの層の複合でもよい。1つ以上の特定の実施形態において、中間層はポリマーを含む。典型的なポリマーとしては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチルエーテルケトン、パリレン、ポリテトラフルオロエタンなどが含まれる。中間層は、ダイヤモンド様炭素を含んでもよい。中間層は、光学フィルム構造に起因する亀裂が無機酸化物基板に架橋することを防ぐ、破損に対する平均歪み、破壊靱性または弾性率特性を有してもよい。1つ以上の実施形態において、中間層は、本明細書に記載される光学フィルム構造の第1の副層を形成してもよい。そのような実施形態において、中間層を含んでなる第1の副層は、約300nmの厚さを有してもよい。光学フィルム構造の他の層は、光学フィルム構造が、全体として、その他の場合には本明細書に記載されるような厚さを有するように、300nmを超える厚さを有してもよいことは理解されるであろう。光学フィルム構造の間の別々の層として、または光学フィルム構造の一部として中間層が含まれる場合、光学フィルム構造(および/またはその中の層のいずれも)は、構造の光学特性を変性するために調整されてもよい。
【0132】
本明細書に記載される光学フィルム構造は、真空蒸着技術、例えば、化学蒸着(例えば、プラズマ強化化学蒸着)、物理蒸着法(例えば、反応性もしくは非反応性スパッタリングまたはレーザー切除)、熱またはeビーム蒸発および/または原子層堆積を使用して、無機酸化物基板110上に配置されてもよい。本明細書に開示される光学フィルム構造を配置することの処理条件は、光学フィルム構造の機械的特性、あるいは光学フィルム構造の1つ以上の特定の層の機械的特性を調整するために変性されてもよい。例えば、1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、光学フィルム構造内の応力を低下させるために、高圧で堆積される。典型的な高圧は、約0.5mTorr(0.07Pa)〜約50mTorr(6.7Pa)の範囲の圧力を含む。1つ以上の実施形態において、高圧は、10mTorr(1.3Pa)を含む。1つ以上の実施形態において、AlNを含む光学フィルム構造の層は、高圧で配置される。特定の実施形態において、光学フィルム構造の他の層、例えば、AlNを含んでいないものは、低圧で配置されてもよい。低圧の例には、約2mTorr(0.27Pa)〜約20mTorr(2.7Pa)の範囲の圧力を含む。
【0133】
本開示の第2の態様は、本明細書に記載される物品を形成する方法に関する。1つ以上の実施形態において、この方法は、本明細書に記載されるように、対向する主要面を有する強化ガラス基板、非強化ガラス基板、強化ガラスセラミック基板、または非強化ガラスセラミック基板であってよい無機酸化物基板を提供するステップと、無機酸化物基板の対向する主要面の1つにおいて光学フィルム構造を配置するステップとを含んでなる。1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、約2mTorr(0.27Pa)〜約20mTorr(2.7Pa)tの範囲の圧力で無機酸化物基板上に配置され、より低圧で堆積された光学フィルム構造より低い応力を有する光学フィルム構造が提供される。1つ以上の特定の実施形態において、光学フィルム構造は約3mTorr(0.4Pa)の圧力で配置される。利用されてもよい圧力は、変化されてもよい。これらは例であり、それらの正確な値は、利用される反応器、反応器エンジニアリング(例えば、反応器形状、寸法、キャリアガス、スループットなど)次第で変化させることができることに留意されたい。
【0134】
1つ以上の実施形態において、光学フィルム構造は、真空蒸着技術によって無機酸化物基板上に配置されてもよい。典型的な真空蒸着技術としては、化学蒸着、プラズマ強化化学蒸着、物理蒸着法、例えば、スパッタリング、熱蒸発および原子層堆積が含まれる。
【0135】
1つ以上の実施形態において、この方法は、光学フィルム構造の1つ以上の特性を変性することを含む。1つ以上の特性には、導電率、潤滑度、応力、屈折率、硬度、厚さ、堆積速度および環境とのフィルム反応性、およびそれらの組合せが含まれてよい。導電性、潤滑度、応力および屈折率特性の1つ以上の変性は、光学フィルム構造への、本明細書に記載される変性剤の1つ以上の組み込みを含んでもよい。1つ以上の実施形態において、この方法は、光学フィルム構造の導電率を増加させることを含む。特定の実施形態において、光学フィルム構造の導電率を増加させることは、Mg、Caまたはそれらの組合せを含んでもよい変性剤またはドーパントによって光学フィルム構造にドーピングすることを含む。1つ以上の実施形態による方法は、光学フィルム構造の潤滑度を増加させることを含んでもよい。1つ以上の特定の実施形態において、光学フィルム構造の潤滑度を増加させることは、光学フィルム構造にBNを組み込むことを含む。1つ以上の実施形態において、この方法は、光学フィルム構造における応力を低下させることを含む。そのような実施形態において、応力を低下させることは、光学フィルム構造に、1つ以上のBN、Ag、Cr、またはそれらの組合せを組み込むことを含む。
【0136】
1つ以上の実施形態において、この方法は、光学フィルム構造に酸素を導入することを含む。酸素の導入は、光学フィルム構造の屈折率を変性し得る。1つ以上の実施形態において、この方法は、その他の場合は本明細書に記載される通りの光学フィルム構造において酸素含有量勾配を作成することを含んでもよい。
【実施例】
【0137】
様々な実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかにされる。
【0138】
本開示の精神または範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を実行することができることは当業者に明白である。
【0139】
実施例1〜8
以下の実施例において、3層光学フィルム構造が設計され、そして試料の透過率は、様々なモデルを使用して、可視スペクトルに渡って評価された。3層光学フィルム構造の各層の屈折率および減衰係数を特徴づけるために偏光解析法が使われた。実施例1〜8に記載される光学フィルム構造の光学挙動を決定するために、各層の屈折率および減衰係数情報を、既知のモデルツール(例えば、薄フィルム設計コード)において使用した。上記特徴決定およびモデリングは、本明細書に記載される光学フィルム構造の2層、4層または他の層構成において使用することができる。
【0140】
屈折率および減衰係数情報が測定されて、実施例1〜8において使用される光学フィルム構造は、約2インチ(約5.08cm)×2インチ(約5.08cm)の幅および長さ寸法を有する強化ガラス基板上でイオンビームスパッタリングプロセスを使用して形成した。ガラス基板は、約65モル%のSiO、約14モル%のAl、約5モル%のB、約14モル%のNaO、約2.5モル%のMgOおよび約0.1モル%のSnOを含む組成を有するアルカリアルミノボロシリケートガラスを含んだ。ガラス基板は、少なくとも約700MPaのCSおよび少なくとも約40μmのDOLを示すように強化された。CSおよびDOLは、ガラス基板を約400〜430℃の温度を有する溶融塩浴に約4〜約8時間、浸漬することによって形成された。光学フィルム構造のそれぞれの層の厚さは、堆積時間によって制御された。堆積温度は約200℃で維持され、そして圧力は6.7×10−6トル(893×10−6Pa)で維持された。光学フィルム構造の各層は、約4kWで供給されたDC電力を用いて、約75sccm(126.75×10−3Pa・m/秒)の速度で流されるアルゴンの存在下、適切なターゲット(例えば、ゲルマニウム含有酸化物を形成するためのGeターゲット、ケイ素含有酸化物を形成するためのSiターゲット、あるいはアルミニウム含有酸化物、窒化物または酸窒化物を形成するためのAlターゲット)からスパッタリングされた。イオンビームは、酸素(約2sccm(3.38×10−3Pa・m/秒)の速度で流れる)、窒素(約50sccm(84.5×10−3Pa・m/秒)の速度で流れる)、およびアルゴン(約25sccm(42.25×10−3Pa・m/秒)の速度で流れる)ガスの混合物を使用して、約180W〜約800Wの範囲で電力で発生させた。例えば、Alを形成する場合、イオンビームは約600Wの電力で発生し、AlOを形成する場合、イオンビームは約180Wの電力で発生し、そしてSiOを形成する場合、イオンビームは約800Wの電力で発生した。Alは、約3Å(0.3nm)/秒の速度で形成され、AlOは、約1.6Å(0.16nm)/秒の速度で形成され、そしてSiOは、約5Å(0.5nm)/秒の速度で形成された。
【0141】
既知の構造において、最低反射率を有するデザインは、視野角が直入射(すなわち、0度)から斜入射に変化した時、反射率色点においてなお変動を示した。したがって、低反射率領域(必ずしも最低反射率領域ではない)は色の低下を有し(すなわち、低反射率領域は、(a、b)起点により近い)、これは、デザインの2層のインピーダンス整合層の厚さおよび分散の変動によって達成される。
【0142】
実施例1において、光学フィルム構造のインピーダンス整合層は、高い屈折率および比較的高い硬度を有する層(例えば、x≧0のAlO)を包囲するAlおよびSiO層を含む。特に、実施例1において、Alの第1の副層、AlOの第2の副層およびSiOの第2の層を含む光学フィルム構造を有する試料は調製され、そして各層の屈折率および減衰係数値は偏光解析法を使用して測定された。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更された。AlO層の厚さは一定であった。SiOおよびAl層のそれぞれの厚さに関して、実施例1による試料のL色座標は予測された。図11は、実施例1による、透過における光学フィルム構造色性能の等高線プロットを示すが、ここで、aのための条件はゼロであり、そしてbのための条件はゼロである。追加的に、起点からのデザインの性能の空間(a、b)における距離は、真に先入観のない白色(または無色)透明度への近さの測定を与える。
【0143】
図11に示される等高線プロットに関して、AlO厚さは1850nmで一定に保持され、そして、SiOおよびAl層の厚さは、上記モデリングを使用して、それぞれ、0〜160nmおよび0〜800nmで変動する。3種の材料を含む層の屈折率および減衰係数の実験的測定に適合された分散体関数が利用された。
【0144】
図11に示される等高線プロットは、デザインパラメーター(すなわち、SiO層およびAl層の厚さ)に低い色分解(a、b)≒(0、0)の感度に関するデータを提供するために、ゼロ付近の等高線に限定される。他の等高線レベルは、明確にするため、抑制された。
【0145】
結果は、実線の最も細い等高線(a=0.0)および破線の最も太い等高線(b=0.0)が交差、またはほぼ交差する領域で一致する分解があった。図11のこれらの交差における厚さを有するSiO、AlおよびAlO層の含有は、無色透過率を有する光学フィルム構造を提供する。そのような光学フィルム構造は、表1に示される。
【0146】
【表1】
【0147】
実施例2において、実施例1で測定された屈折率および減衰係数値を利用した。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更されたが、AlO層の厚さは、約2000nmで一定であった。SiOおよびAl層のそれぞれのモデル化された厚さに関して、実施例2による試料のL色座標は予測された。実施例1に関して、AlO層の厚さは、2000nmまで増加し、AlO層の厚さにおける等高線の依存を示す。図12は、実施例2による、透過における光学フィルム構造色性能の等高線プロットである。
【0148】
図12のこれらの交差における厚さを有するSiO、AlおよびAlO層の含有は、無色透過率を有する光学フィルム構造を提供する。そのような光学フィルム構造は、表2に示される。
【0149】
【表2】
【0150】
実施例3において、実施例1で測定された屈折率および減衰係数値を利用した。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更されたが、AlO層の厚さは、約2250nmで一定であった。図13は、AlO層が約2250nmの一定の厚さを有する実施例3による、透過における光学フィルム構造色性能の等高線プロットである。
【0151】
図13のこれらの交差における厚さを有するSiO、AlおよびAlO層の含有は、無色透過率を有する光学フィルム構造を提供する。そのような光学フィルム構造は、表3に示される。
【0152】
【表3】
【0153】
実施例4において、実施例1で測定された屈折率および減衰係数値を利用した。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更されたが、AlO層の厚さは、約2500nmで一定であった。図14は、AlO層が約2500nmの一定の厚さを有する実施例4による、透過における光学フィルム構造色性能の等高線プロットである。
【0154】
図14のこれらの交差における厚さを有するSiO、AlおよびAlO層の含有は、無色透過率を有する光学フィルム構造を提供する。そのような光学フィルム構造は、表4に示される。
【0155】
【表4】
【0156】
実施例5において、実施例1で測定された屈折率および減衰係数値を利用した。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更されたが、AlO層の厚さは、約2750nmで一定であった。図15は、AlO層が約2750nmの一定の厚さを有する実施例5による、透過における光学フィルム構造色性能の等高線プロットである。
【0157】
図15のこれらの交差における厚さを有するSiO、AlおよびAlO層の含有は、無色透過率を有する光学フィルム構造を提供する。そのような光学フィルム構造は、表5に示される。
【0158】
【表5】
【0159】
実施例6において、実施例1で測定された屈折率および減衰係数値を利用した。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更されたが、AlO層の厚さは、約3000nmで一定であった。図16は、AlO層が約3000nmの一定の厚さを有する実施例6による、透過における光学フィルム構造色性能の等高線プロットである。
【0160】
図16のこれらの交差における厚さを有するSiO、AlおよびAlO層の含有は、無色透過率を有する光学フィルム構造を提供する。そのような光学フィルム構造は、表6に示される。
【0161】
【表6】
【0162】
実施例7において、実施例1で測定された屈折率および減衰係数値を利用した。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更されたが、AlO層の厚さは、約3250nmで一定であった。図17は、AlO層が約3250nmの一定の厚さを有する実施例7による、透過における光学フィルム構造色性能の等高線プロットである。
【0163】
図17のこの交差における厚さを有するSiO、AlおよびAlO層の含有は、無色透過率を有する光学フィルム構造を提供する。そのような光学フィルム構造は、表7に示される。
【0164】
【表7】
【0165】
実施例8において、実施例1で測定された屈折率および減衰係数値を利用した。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更されたが、AlO層の厚さは、約3500nmで一定であった。図18は、AlO層が約3250nmの一定の厚さを有する実施例8による、透過における光学フィルム構造色性能の等高線プロットである。
【0166】
図18のこれらの交差における厚さを有するSiO、AlおよびAlO層の含有は、ほぼ無色(完全に無色ではない)透過率を有する光学フィルム構造を提供する。そのような光学フィルム構造は、表8に示される。
【0167】
【表8】
【0168】
図11〜18に示すように、光学フィルム構造内のAlOのより厚い層に関して(例えば約3500nmの厚さ)、パラメーター空間のb表面は、パラメーター空間のこの領域に関して、ゼロをもはや横切らない(すなわち、b表面パラメーター空間は、b=0およびa=0であるaパラメーター空間ともはや交差しない)。したがって、より厚いAlO層によって、無色またはほぼ無色の透過率を達成するために他の層(例えば、SiOおよびAl層)を調整するための選択がほとんどない。
【0169】
色空間の起点(0、0)からの特定の色点(a、b)の距離は、ユークリッドの距離、d=√(a2+b2)によって与えられる。図19A、20A、21A、22A、23A、24A、25Aおよび26Aに示される等高線プロットは、それぞれ、実施例1〜8による試料のためのデザイン空間の同一範囲における明度、Lを示す。図19B、19C、20B、20C、21B、21C、22B、22C、23B、23C、24B、24C、25B、25C、26Bおよび26Cは、それぞれ、実施例1〜8の試料のプロットを示す。偽色は、一次(図19B、20B、21B、22B、23B、24B、25Bおよび26B)および対数(19C図、20C、21C、22C、23C、24C、25Cと26C)規模の両方におけるSiOおよびAl厚さの関数としての起点からの距離、dの値を示す。色起点(透明/白色)からの距離は、デザインパラメーターの関数としてプロットされる。
【0170】
図19A、20A、21A、22A、23A、24A、25Aおよび26Aは、透過率または明度を示し、明度が大きいほど、より大きい透過率を表す。図19B、19C、20B、20C、21B、21C、22B、22C、23B、23C、24B、24C、25B、25C、26Bおよび26Cの暗い領域は、L色空間の起点(0,0)からの距離が最少であるSiO、AlおよびAlO層の厚さを示す。明度および距離(d)を比較する場合、SiO、AlおよびAlOの適切な厚さは、透過率が最大化され、一方、距離d(および色透過率)が最小化されるように得ることができる。例えば、図19Aおよび19B中、35nmの厚さを有するSiO層、200nmの厚さを有するAl層および1850nmの厚さを有するAlO層を有する光学フィルム構造は、図19Bをベースとする無色透過率を有するが、そのような光学フィルム構造は、95%〜96%の明度を有し得る。同様に、90nmの厚さを有するSiO層、100nmの厚さを有するAl層、および1850nmの厚さを有するAlO層を選択することによって、99%の明度を提供され得るが、そのような光学フィルム構造は、2または3を超える距離、dを有し得、したがって、無色透過率を有さない。
【0171】
図19C、20C、21C、22C、23C、24C、25Cと26Cを参照すると、暗い領域は、変形形態に対してあまり感応性ではない光学フィルム構造デザインの層の厚さを示す。したがって、これらの図は、製造変動に耐え、なおかつ所望の無色透過率を達成することが可能であり得る光学フィルム構造の層の厚さを選択するために使用されてもよい。
【0172】
実施例9
実施例9および比較例9Aのそれぞれの試料1つは、スパッタリング法を使用して形成された。各試料は、それぞれ、50mmの長さおよび幅寸法を有する、実施例1〜8で利用されたものと同一の基板を提供することによって製造された。実施例9は、SiAl(式中、u、v、xおよびyは、層の厚さに沿って変動して、酸素含有量勾配、ケイ素含有量勾配、アルミニウム含有量勾配および窒素含有量勾配を提供する)を含んでなる層を含んだ。比較例9AはAlN層を含んだ。実施例9のSiAlを含む層は、プロフィロメトリーで測定される約260nmの厚さを有し、そしてケイ素およびアルミニウムターゲット、ならびに窒素および酸素ガスを使用して、スパッタリングプロセスによって形成された。AlN層(勾配なし)は、プロフィロメトリーで測定したところ、約250nmの厚さを有した。比較例9Aの勾配のない層は、実施例9の層と同様の方法で形成されたが、アルミニウムターゲットのみが利用され、そして窒素ガスのみが利用された。実施例9および比較例9Aのそれぞれの層を形成するための全堆積時間は、約6時間であった。
【0173】
図27は、SiAl勾配を含む実施例9の層およびそのような勾配のない比較例9Aの層の反射率%を示す。比較例9Aの勾配のない層と比較した場合、実施例9の層は、可視スペクトルにおいて平坦な反射率スペクトル(または透過率スペクトル)を示す。言い換えると、実施例9の層は、比較例9Aの均一な層と比較して、反射率%における振動の振幅の減少を示す。図27に示すように、可視スペクトルにおける実施例9の層の反射率は、実質的に一定であるか、または約20%より大きい変化がない。言い換えると、実施例9の層は約16%の平均反射率を有し、そして最大(例えば18%)および最小(例えば14%)は16%の平均反射率の約20%未満である。比較のために、比較例9AのAlN層の反射率%は、可視スペクトルにおける反射率%が約8%程度の低さから約27%程度の高さまで変化するような振動を示す。
【0174】
実施例10
実施例10および比較例10Aのそれぞれの試料1つは、スパッタリング法を使用して形成された。各試料は、それぞれ、50mmの長さおよび幅寸法を有する、実施例1〜8で利用されたものと同一の基板を提供することによって製造された。実施例10は、SiAl(式中、u、v、xおよびyは、層の厚さに沿って変動して、酸素含有量勾配、ケイ素含有量勾配、アルミニウム含有量勾配および窒素含有量勾配を提供する)を含んでなる121副層を有する層を含んだ。SiAl層の121副層は、ガラス基板の1つの側面上に形成された。層は、最初に、約20sccm(33.8×10−3Pa・m/秒)の速度で流れるアルゴン、40sccm(67.6×10−3Pa・m/秒)の速度で流れる窒素、および2sccm(3.38×10−3Pa・m/秒)の速度で流れる酸素の存在下で、約3mTorr(0.4Pa)の圧力においてケイ素ターゲットをスパッタリングすることによって形成された。RF電力は、4Wで、少なくとも最初に3分間供給された。最初の3分後、次いで、DC電力を発生させ、50Wで開始してアルミニウムターゲットからアルミニウムをスパッタリングさせた。DC電力は、その後3分ごとに300Wまで20Wずつ増加させた。DC電力が増加する間、RF電力、アルゴンガス流速、窒素ガス流速および酸素ガス流速は一定だった。300WのDC電力に達した後、RF電力を、連続段階で400Wから0Wまで減少させ、そしてDC電力は、480WのDC電力が発生するまで、各増加の間に3分間で、20Wの増加で増加を続けた。その後、次いで、連続段階において、約0.2sccm(0.338×10−3Pa・m/秒)の増加で、0.05sccm(0.0845×10−3Pa・m/秒)の最終減少で、酸素ガス流速を、2sccm(3.38×10−3Pa・m/秒)から0.25sccm(0.4225×10−3Pa・m/秒)の酸素まで減少させた。酸素流速が0.25sccm(0.4225×10−3Pa・m/秒)まで減少した後、堆積プロセスをさらに3時間続けて、そしてAlNのみの層が形成された。言い換えると、酸素が0.25sccm(0.4225×10−3Pa・m/秒)で流された時に形成された副層は、AlNを含んでなった。全堆積プロセスの間、窒素およびアルゴンの流速は一定であり、かつ圧力は一定であった。クリーニングステップは、堆積の間、あるいは流速、RF電力またはDC電力のいずれかの変化の間に実行されなかった。
【0175】
比較例10Aは、単一のAlO層を含んだ。実施例10のSiAlを含む層は、比較例10AのAlOの単層と同一の厚さを有した。実施例10は、ケイ素およびアルミニウムターゲット、ならびに窒素および酸素ガスを使用して、スパッタリングによって形成された。比較例10A(勾配なし)は、実施例10の層と同様の方法で形成されたが、アルミニウムターゲットのみが利用され、そして酸素および窒素ガスが利用された。
【0176】
図28は、SiAl勾配を含む実施例10の層およびそのような勾配のない比較例10Aの層の透過率%を示す。比較例10Aの勾配のない層と比較した場合、実施例10の層は、可視スペクトルにおいて平坦な透過率スペクトルを示す。言い換えると、実施例10の層は、比較例10Aの均一な層と比較して、透過率%における振動の振幅の減少を示す。図28に示すように、可視スペクトルにおける実施例10の層の透過率は、実質的に一定であるか、または約4%より大きい変化がない。比較のために、比較例10AのAlO層の透過率%は、可視スペクトルにおける透過率%が約78%程度の低さから約93%程度の高さまで変化するような振動を示す。実施例10の勾配層は、その他の場合は本明細書に記載されるような擦傷耐性も示した。
【0177】
理論によって束縛されることなく、本明細書に記載される光学フィルム構造、ならびにアルミニウム含有量、ケイ素含有量、窒素含有量および/または酸素含有量勾配を含む層(例えば、第1の層422および/または第1の副層526および/または実施例9および実施例10の層)の反射率%の振動の振幅は、酸素含有量が層の厚さに沿って一次的に減少する場合、約0まで減少し得ることが考えられる。
【0178】
実施例11
以下の実施例において、ガラス基板上で配置された3層光学フィルム構造が設計された。光学フィルム構造およびガラス基板の透過率および反射率は、実施例1〜8と同一の方法で、様々なモデルを使用して、可視スペクトルに渡って評価された。3層光学フィルム構造の各層の屈折率および減衰係数を特徴づけるために、再び偏光解析法が使われた。光学フィルム構造および基板の光学挙動を決定するために、各層の屈折率および減衰係数情報を、既知のモデルツール(例えば、薄フィルム設計コード)において使用した。
【0179】
光学フィルム構造は、実施例1〜8と同一の方法で形成され、実施例1〜8で使用されるものと同一の基板を使用した。
【0180】
実施例11において、光学フィルム構造のインピーダンス整合層は、高い屈折率および比較的高い硬度を有する層を包囲するAlおよびSiO層を含んだ。特に、光学フィルム構造は、Alの第1の副層、AlOの第2の副層およびSiOの第2の層を含んだ。AlおよびSiO層の厚さは、測定された屈折率および減衰係数値をベースとして、上記のモデリングを使用して変更された。AlO層の厚さは2μmで一定であった。SiOおよびAl層のそれぞれの厚さに関して、試料のL色座標は予測された。
【0181】
図29Aは、実施例11による光学フィルム構造および基板のa反射率色性能の等高線プロットを示す。等高線プロットでは、光学フィルム構造および基板の組合せの反射率が無色であることを示す。SiO層およびAl層のための適切な厚さは、実線R、a=0.5線と破線R、a=−0.5線との間、いくつかの場合、2つの破線R、a=0線の間の等高線に沿った厚さを含む。これらの厚さを有するSiOおよびAl層が2μmのAlO層と組み合わせられる場合、光学フィルムおよび基板は、約−0.5〜約0.5の範囲のa値を示し、これは、次に、光学フィルムおよび基板の色座標と色座標(a=0、b=0)との間の距離を制限する。0nm〜500nmの間のAl厚さに関して、適切なSiO層厚さの例には、約0nm〜約60nmが含まれ、Alおよび/またはSiO層のためのより特定の厚さは、実線R、a=0.5線と破線R、a=−0.5線の間に含まれる。1つ以上の実施形態において、0nm〜500nmのAl厚さに関して、SiO層のための適切な厚さは、約0nm〜約150nmの範囲の厚さを含むこともできるが、実線R、a=0.5線と破線R、a=−0.5線との間のより広範囲にわたる層厚の範囲含まれる厚さを使用することによって、製造におけるより高い適応性が提供される(すなわち、厚さの軽度の変動は、a値に劇的に影響を及ぼさない)。このために、0nm〜60nmのSiOの厚さ、および0nm〜200nmのAl層厚さによって、約−0.5〜約0.5の範囲のa値および色座標(a=0、b=0)から最小距離の色座標を示す光学フィルムと基板との組合せが提供されながら、光学フィルム厚の変動に対するより大きい耐性が提供され得る。
【0182】
図29Bは、実施例11による光学フィルム構造およびその下の基板のa反射率色性能の等高線プロットを示す。この等高線は、光学フィルム構造および基板の組合せと無処理の基板(光学フィルム構造なし)との差異を示す。等高線プロットでは、プロットされた量に関するゼロの値は、光学フィルム構造および基板の組合せが、無処理の基板と同じ色座標を有することを意味する。図29Bに示すように、等高線は、基板に適応するようにシフトする。したがって、実線R、a=0.5線と破線R、a=−0.5線との間、いくつかの場合、2つの破線R、a=−0.5線の間のSiOおよびAl層の厚さは、図29Aに示されるものから変更される。これらの厚さを有するSiOおよびAl層が2μmのAlO層と組み合わせられる場合、光学フィルムおよび基板の組合せは、約−0.5〜約0.5の範囲のa値を示し、これは、次に、光学フィルムおよび基板の組合せの色座標と無処理の基板(光学フィルム構造なし)色座標との間の距離を制限する。0nm〜500nmの間のAl厚さに関して、適切なSiO層厚さの例には、約0nm〜約60nmが含まれ、Alおよび/またはSiO層のためのより特定の厚さは、実線R、a=0.5線と破線R、a=−0.5線の間に含まれる。1つ以上の実施形態において、0nm〜500nmのAl厚さに関して、SiO層のための適切な厚さは、約0nm〜約140nmの範囲の厚さを含むこともできるが、実線R、a=0.5線と破線R、a=−0.5線との間のより広範囲にわたる層厚の範囲含まれる厚さを使用することによって、製造におけるより高い適応性が提供される(すなわち、厚さの軽度の変動は、a値に劇的に影響を及ぼさない)。このために、0nm〜60nmの範囲の厚さを有するSiO層、および0nm〜200nmの範囲の厚さを有するAl層の使用によって、約−0.5〜約0.5の範囲のa値を示す光学フィルムと基板との組合せが提供されながら、光学フィルム厚の変動に対するより大きい耐性が提供され得る。光学フィルムにおける、そのようなSiOおよびAl層、ならびに2μm厚のAlO層の使用は、基板と組み合わせられる場合、色座標(a=0、b=0)からの距離において近い(例えば、<2)色座標を示す物品を提供する。
【0183】
図29Cは、実施例11による光学フィルム構造および基板のb反射率色性能の等高線プロットを示す。等高線プロットでは、光学フィルム構造および基板の組合せが無色であることを示す。SiO層およびAl層のための適切な厚さは、実線R、b=0.5線と破線R、b=−0.5線との間、いくつかの場合、2つの破線R、b=−0.5線の間の等高線に沿った厚さを含む。これらの厚さを有するSiOおよびAl層が2μmのAlO層と組み合わせられる場合、光学フィルムおよび基板の組合せは、約−0.5〜約0.5の範囲のb値を示し、これは、次に、色座標(a=0、b=0)からの距離を制限する。0nm〜約500nmの間のAl層厚に関して、適切なSiO層厚さの例には、約0nm〜約40nm、または約170nm〜約175nmが含まれ、AlおよびSiO層のためのより特定の厚さは、実線R、b=0.5線と破線R、b=−0.5線の間に含まれる。約175nmの厚さを有するSiO2層が使用されてもよく、改善されたb反射率色性能を有する光学フィルムおよび基板の組み合わせが提供され得るが、この厚さからの偏差はb値への変化をもたらし得る。
【0184】
図29Dは、実施例11による光学フィルム構造および基板のb反射率色性能の等高線プロットを示す。等高線プロットの等高線は、光学フィルム構造および基板の組合せと無処理の基板(光学フィルム構造なし)との差異を示す。等高線プロットでは、プロットされた量に関するゼロの値は、光学フィルム構造および基板の組合せが、無処理の基板と同じ色座標を有することを意味する。図29Dに示すように、等高線は、基板に適応するようにシフトする。したがって、実線R、b=0.5線と破線R、b=−0.5線との間、いくつかの場合、2つの破線R、b=−0.5線の間のSiOおよびAl層の厚さは、図29Cに示されるものから変更される。これらの厚さを有するSiOおよびAl層が2μmのAlO層と組み合わせられる場合、光学フィルムおよび基板の組合せは、約−0.5〜約0.5の範囲のb値を示し、これは、次に、光学フィルムおよび基板の組合せの色座標と無処理の基板(光学フィルム構造なし)色座標との間の距離を制限する。0nm〜約500nmの間のAl層厚に関して、適切なSiO層の厚さの例には、0nm〜約30nm、または約170nm〜約175nmが含まれ、AlおよびSiOの両方のためのより特定の厚さは、実線R、b=0.5線と破線R、b=−0.5線の間に含まれる。図29Cと比較して、Al層のための厚さおよび厚さ範囲は、図29Dにおいて有意に変化しなかった。
【0185】
図29Eは、物品(光学フィルムおよび基板を含む)の反射率色座標と色座標(a=0、b=0)との距離が、約1未満、約0.5未満、約0.2未満および約0.1未満である、SiOおよびAl層の厚さを示す。図29Eは、約0nm〜約50nmの範囲の厚さを有するSiO層、および約0nm〜約180nmの範囲の厚さを有するAl層を有し、Alおよび/またはSiO層のより特定の厚さが実線d=0.1線と破線d=1.0線の間に含まれる光学フィルムは、2μmの厚さのAlO層と組み合わされる場合、約1未満の色座標(a=0、b=0)からの距離を有する反射における色座標を示すことを示す。別の例において、約0nm〜約50nmの範囲の厚さを有するSiO層、約0nm〜約500nmの範囲の厚さを有するAl層、2μmの厚さのAlO層およびガラス基板の組合せは、所望の反射率色性能を示す。別の例において、約75nm〜約100nmの範囲の厚さを有するSiO層、約250nm〜約500nmの範囲の厚さを有するAl層、2μmの厚さのAlO層およびガラス基板の組合せは、所望の反射率色性能を示すが、SiOおよびAl層のこれらの厚さ範囲は、厚さ変動におけるより低い耐性をもたらし、光学フィルムおよび基板の組合せの透過率が、いくつかの他の厚さ以上に改善されることが発見された。
【0186】
図29Fは、物品の色座標と基板の色座標との距離が、約1未満、約0.5未満、約0.2未満および約0.1未満である、SiOおよびAl層の厚さを示す。図29Fは、ガラス基板および光学フィルム、2μm厚のAlO層、約0nm〜約30nmまたは35nmの範囲の厚さを有するSiO層、および約0nm〜約170nmの範囲の厚さを有するAl層の組合せ(AlおよびSiOの両方のより特定の厚さは実線d=0.1線と破線d=1.0線との間に含まれる)は、約1未満の基板の色座標からの距離を有する反射における色座標を示すことを示す。別の例には、基板、ならびに2μm厚AlO層、約30nm〜約40nmの厚さを有するSiO層および約260nm〜約290nmの厚さを有するAl層を有する光学フィルムが含まれる。さらにもう1つの例には、基板、ならびに2μm厚AlO層、約20nm〜約40nmの厚さを有するSiO層および約420nm〜約450nmの厚さを有するAl層を有する光学フィルムが含まれる。
【0187】
図30Aは、実施例11による光学フィルム構造および基板のa透過率色性能の等高線プロットを示す。等高線プロットでは、光学フィルム構造および基板の組合せが無色であることを示す。SiO層およびAl層のための適切な厚さは、実線T、a=0.5線と破線T、a=−0.5線との間、いくつかの場合、2つの破線T、a=−0.5線の間の等高線に沿った厚さを含む。これは、光学フィルムにおいて2μmのAlO層と組み合わせられる場合、約−0.5〜約0.5の範囲のa値を提供する。これらの厚さを有するSiOおよびAl層が2μmのAlO層と組み合わせられる場合、光学フィルムは、約−0.5〜約0.5の範囲のa値を示し、これは、次に、光学フィルムおよび基板の色座標と色座標(a=0、b=0)との間の距離を制限する。0nm〜約500nmの間のAl層厚に関して、適切なSiO層厚さの例には、約0nm〜約160nmが含まれ、AlおよびSiOの両方のためのより特定の厚さは、実線T、a=0.5線と破線T、a=−0.5線との間に含まれる。所望のa透過率を提供しない厚さの例には、約10nm〜約120nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約65nm〜約105nmの厚さを有するSiO層、約185nm〜約275nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約20nm〜約140nmの厚さを有するSiO層、または約350nm〜約420nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約0nm〜約125nmの厚さを有するSiO層が含まれ、これらの厚さ範囲および組合せは、2つの破線T、a=−0.5線の間に含まれる。
【0188】
図30Bは、実施例11による光学フィルム構造および基板のa透過率色性能の等高線プロットを示す。この等高線は、光学フィルム構造および基板の組合せと無処理の基板(光学フィルム構造なし)との差異を示す。等高線プロットでは、プロットされた量に関するゼロの値は、光学フィルム構造および基板の組合せが、無処理の基板と同じ色座標を有することを意味する。図30Bに示すように、等高線は、基板に適応するようにシフトする。したがって、実線T、a=0.5線と破線T、a=−0.5線との間、いくつかの場合、2つの破線T、a=−0.5線の間のSiOおよびAl層の厚さは、図30Aに示されるものから変更される。これらの厚さを有するSiOおよびAl層が2μmのAlO層と組み合わせられる場合、光学フィルムおよび基板は、約−0.5〜約0.5の範囲のa値を示し、これは、次に、基板(光学フィルムなし)の色座標からの光学フィルムおよび基板の色座標の距離を制限する。0nm〜約500nmの間のAl層厚に関して、適切なSiO層厚さの例には、約0nm〜約160nmが含まれ、Alおよび/またはSiOのためのより特定の厚さは、実線T、a=0.5線と破線T、a=−0.5線との間に含まれる。所望のa透過率を提供しない厚さの例には、約0nm〜約120nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約65nm〜約105nmの厚さを有するSiO層、約190nm〜約275nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約20nm〜約120nmの厚さを有するSiO層、または約330nm〜約420nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約0nm〜約125nmの厚さを有するSiO層が含まれ、これらの厚さ範囲および組合せは、2つの破線T、a=−0.5線の間に含まれる。
【0189】
図30Cは、実施例11による光学フィルム構造および基板のa透過率色性能の等高線プロットを示す。等高線プロットでは、光学フィルム構造および基板の組合せが無色であることを示す。SiO層およびAl層のための適切な厚さは、実線T、b=0.5線と破線T、b=−0.5線との間、いくつかの場合、2つの破線T、b=−0.5線の間の等高線に沿った厚さを含む。これらの厚さを有するSiOおよびAl層が2μmのAlO層と組み合わせられる場合、光学フィルムおよび基板の組合せは、約−0.5〜約0.5の範囲のb値を示し、これは、次に、光学フィルム構造および基板の色座標と色座標(a=0、b=0)との間の距離を制限する。0nm〜約500nmの間のAl層厚に関して、適切なSiO層厚さの例には、約0nm〜約90nmが含まれ、Alおよび/またはSiO層のためのより特定の厚さは、実線T、b=0.5線と破線T、b=−0.5線との間に含まれる。所望のb透過率を提供しない厚さの例には、約0nm〜約250nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約20nm〜約80nmの厚さを有するSiO層、約260nm〜約500nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約20nm〜約80nmの厚さを有するSiO層、または約80nm〜約150nm、約220nm〜約290nm、もしくは約380nm〜約440nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約0nm〜約25nmの厚さを有するSiO層が含まれ、これらの厚さ範囲および組合せは、2つの破線T、b=−0.5線の間または2つの実線b=0.5線の間に含まれる。
【0190】
図30Dは、実施例11による光学フィルム構造および基板のb反射率色性能の等高線プロットを示す。この等高線は、光学フィルム構造および基板の組合せと無処理の基板(光学フィルム構造なし)との差異を示す。等高線プロットでは、プロットされた量に関するゼロの値は、光学フィルム構造および基板の組合せが、無処理の基板と同じ色座標を有することを意味する。図30Dに示すように、等高線は、基板に適応するようにシフトする。したがって、実線T、b=0.5線と破線T、b=−0.5線との間、いくつかの場合、2つの破線T、b=−0.5線の間のSiOおよびAl層の厚さは、図30Cに示されるものから変更される。これらの厚さを有するSiOおよびAl層が2μmのAlO層と組み合わせられる場合、光学フィルムは、約−0.5〜約0.5の範囲のb値を示し、これは、次に、光学フィルムおよび基板の組合せの色座標と基板(光学フィルムなし)の色座標との間の距離を制限する。0nm〜約500nmの間のAl層厚に関して、適切なSiO層厚さの例には、約0nm〜約40nm、約70nm〜約100nm、もしくは約160nm〜約175nmが含まれ、Alおよび/またはSiOのためのより特定の厚さは、実線T、b=0.5線と破線T、b=−0.5線との間に含まれる。所望のb透過率を提供しない厚さの例には、約0nm〜約500nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約0nm〜約80nmの厚さを有するSiO層、約0nm〜約500nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約80nm〜約170nmの厚さを有するSiO層、または約100nm〜約130nm、もしくは約230nm〜約290nm、もしくは約390nm〜約420nmの厚さを有するAl層と組み合わせた約0nm〜約25nmの厚さを有するSiO層が含まれ、これらの厚さ範囲および組合せのいくつかは、2つの破線T、b=−0.5線の間または2つの破線T、b=0.5線の間に含まれる。
【0191】
図30Eは、物品(光学フィルムおよび基板を含む)の反射率色座標と色座標(a=0、b=0)との距離が、約1未満、約0.5未満、約0.2未満および約0.1未満である、SiOおよびAl層の厚さを示す。図30Eは、SiO層およびAl層の厚さが極めて少ない光学フィルムが、2μmの厚さのAlO層と組み合わされる場合、約1より大きい色座標(a=0、b=0)からの距離を有する透過率における色座標を示すことを示す。例えば、約0nm〜約50nmの範囲の厚さを有するSiO層、および約0nm〜約500nmの範囲の厚さを有するAl層を有する光学フィルムは(Alおよび/またはSiO層のより特定の厚さは実線d=0.1線と破線d=1.0線との間に含まれる)、2μmの厚さのAlOと組み合わされる場合、約1未満の色座標(a=0、b=0)からの距離を有する透過率における色座標を示す。別の例において、SiO層の厚さは約0nm〜約50nmであることができ、Al層の厚さは約0nm〜約220nmであることができ、Alおよび/またはSiO層のより特定の厚さは、実線d=0.1線と破線d=1.0線との間に含まれる。別の例において、SiO層の厚さは約60nm〜約100nmであることができ、Al層の厚さは約100nm〜約500nmであることができ、Alおよび/またはSiO層のより特定の厚さは、実線d=0.1線と破線d=1.0線との間に含まれる。
【0192】
図30Fは、物品の色座標と基板の色座標との距離が、約1未満、約0.5未満、約0.2未満および約0.1未満である、SiOおよびAl層の厚さを示す。図30Fは、基板および2μmの厚さのAlO層を有する光学フィルム、約0nm〜約50nmの範囲の厚さを有するSiO層、および約0nm〜約200nmの範囲の厚さを有するAl層が(Alおよび/またはSiO層のより特定の厚さは実線d=0.1線と破線d=1.0線との間に含まれる)、約1未満の基板の色座標からの距離を有する透過率における色座標を示すことを示す。別の例において、SiO層の厚さは約70nm〜約100nmであることができ、Al層の厚さは約100nm〜約500nmであることができ、Alおよび/またはSiO層のより特定の厚さは、実線d=0.1線と破線d=1.0線との間に含まれる。
【0193】
図29A〜29Fおよび30A〜30Fにおいて、−0.5〜0.5の範囲のaおよびb、ならびに0.1、0.2、0.5および1のdの等高線を利用し、本明細書に記載される光学特性を達成するための様々なデザインパラメーターを示した。関心の発光物および/または観察者の好み次第で、より大きい範囲の等高線(例えば、約−1〜約1、または約−2〜約2の範囲のaまたはb、あるいはd=1.5、2、2.5など)を使用することができることに留意されたい(すなわち、いくつかの観察者は、a、b、aおよびbの組合せのより大きい変動、ならびにより大きい距離dが容認できることを発見する)。
【0194】
本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、様々な修正形態および変更形態がなすことができることは、当業者に明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図5A
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図20A
図21A
図22A
図23A
図24A
図25A
図26A
図28
図29A
図29B
図29C
図29D
図29E
図29F
図30A
図30B
図30C
図30D
図30E
図30F
図19B
図19C
図20B
図20C
図21B
図21C
図22B
図22C
図23B
図23C
図24B
図24C
図25B
図25C
図26B
図26C
図27