特許第6052864号(P6052864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052864
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】食器洗い用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20161219BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C11D17/08
   C11D1/68
   C11D1/75
   C11D3/20
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-229054(P2012-229054)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-80499(P2014-80499A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】大谷 孝
(72)【発明者】
【氏名】吉川 清章
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−144023(JP,A)
【文献】 特開2005−325167(JP,A)
【文献】 特開2008−260852(JP,A)
【文献】 特開2005−170878(JP,A)
【文献】 特開2004−262955(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0105933(US,A1)
【文献】 欧州特許第01589093(EP,B1)
【文献】 中国特許出願公開第1745165(CN,A)
【文献】 特開2005−053971(JP,A)
【文献】 特開2009−132823(JP,A)
【文献】 欧州特許第02218768(EP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0256035(US,A1)
【文献】 米国特許第06506717(US,B1)
【文献】 特開2012−197335(JP,A)
【文献】 特開2013−057026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 17/08
C11D 1/68
C11D 1/75
C11D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2−エチルヘキシルグリセリルエーテル〔以下、(a)成分という〕を1質量%以上、5質量%以下、(b)アルキルグリコシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕を10質量%以上、30質量%以下、(c)アミンオキシド型界面活性剤〔以下、(c)成分という〕を3質量%以上、10質量%以下、及び水を含有し、
(d)陰イオン界面活性剤〔以下、(d)成分という〕と(c)成分のモル比(d)/(c)が0以上、0.2以下であり、且つ、
(b)成分、(c)成分、及び、(d)成分の含有量の合計が20質量%以上、40質量%以下である、
食器洗い用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(d)成分の含有量が1質量%以下である、請求項1記載の食器洗い用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
20℃におけるpHが5以上、8以下である、請求項1又は2記載の食器洗い用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(a)成分と(c)成分の質量比(c)/(a)が1以上、5以下である、請求項1〜3の何れか1項記載の食器洗い用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
下記(f−1)成分〜(f−3)成分から選ばれる一種以上の殺菌剤を含有しない、請求項1〜4の何れか1項記載の食器洗い用液体洗浄剤組成物。
(f−1)成分:トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノールから選ばれる芳香族系有機殺菌剤
(f−2)成分:4級窒素原子に結合する4つの基のうち、1又は2個が炭素数8以上、12以下のアルキル基であり、残りが炭素数1以上、3以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩型殺菌剤
(f−3)成分:ポリリジン、ヘキサメチレンビグアニドから選ばれる高分子殺菌剤
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の食器洗い用液体洗浄剤組成物を1質量%以上、20質量%以下含有する処理液を、バイオフィルムが存在する厨房廻りの器具に接触させるバイオフィルム除去方法。
【請求項7】
接触が、浸漬であり、浸漬時間が0.1時間以上、15時間以下である、請求項6記載のバイオフィルム除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗い用液体洗浄剤組成物に関する。特に、バイオフィルム除去効果を有する食器洗い用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオフィルムは生物膜又はスライムともいわれ、一般に水系で菌等の微生物が物質の表面に付着して増殖する際に、微生物細胞が産生する多糖、タンパク質及び核酸などの高分子物質により形成された、微生物を包み込む構造体を指す。バイオフィルムが形成されると、微生物による種々の問題が発生するため、様々な産業分野で問題となっている。例えば、食品プラントの配管内にバイオフィルムが形成されると、このバイオフィルムが剥がれ落ちて製品内へ異物として混入されたり、菌に由来する毒素により食中毒が発生する原因となったりする。さらに、金属表面へのバイオフィルム形成は金属腐食の原因となり、設備の老朽化を促進する。
【0003】
業務用施設の厨房では非常に高い衛生管理が求められている。しかし、現場調査の結果、まな板などの調理器具及びスポンジなどの洗浄道具に菌が残存しやすいことが知られている。調理器具や洗浄道具に残存した菌が繁殖すると、調理器具や洗浄道具が汚染される。特に、洗浄道具において菌が繁殖すると、繁殖した菌が調理器具や食器類、さらには食物に交差汚染することが懸念される。
【0004】
繁殖した菌はバイオフィルムを形成していることも知られている。バイオフィルムが形成されると、殺菌剤の効果が著しく低減するため、バイオフィルムの形成を抑制したり、形成したバイオフィルムを除去したりする方法が種々検討されている。
【0005】
特許文献1には、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、アルキルグリコシド、及びアミンオキシドを含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。特許文献1には、該組成物が陰イオン界面活性剤を含有できることが記載されており、その実施例、配合例には、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、アルキルグリコシド、アミンオキシド、及び陰イオン界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物が記載されている。また、特許文献2には2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、アルキルグリコシド、及びアミンオキシドを含有し20℃でのpHが9.5〜11.5である硬質表面洗浄剤の技術が開示されている。
【0006】
また、食器洗い用洗浄剤組成物は直接口に入る食物と接触する食器や俎板などを洗浄するため、より高いレベルの殺菌効果を付与することが安全のため必要であり、特に外食産業の厨房や、弁当や惣菜などを取り扱う中食の厨房において用いられる食器洗い用洗浄剤には、食中毒などの感染リスクを低減するために厳密な殺菌・除菌効果を付与することが必要である。例えば、特許文献3〜5には、殺菌剤を用いた洗浄剤の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−325167号公報
【特許文献2】特開2008−045108号公報
【特許文献3】特開2008−260822号公報
【特許文献4】特開2006−249124号公報
【特許文献5】特開2005−170878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、洗浄剤に通常の殺菌剤を用いただけでは効果的な殺菌効果がなかなか得られないのが現実であり、また、殺菌剤を常時用いた場合には、耐性菌が発生するリスクもある。従って、より高いレベルで感染リスクを低減するために、殺菌剤を用いなくても効果的な除菌効果が得られる技術が強く求められている。
【0009】
本発明者らはこのような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、俎板の傷やスポンジ内などにバイオフィルムが形成されており、それが原因で殺菌剤が有効に作用せず、効果的な殺菌・除菌効果が得られないことを見出した。また、これらバイオフィルムは通常の洗浄剤では落としきれないため、俎板の傷やスポンジ内などに残存しやすいことも判明した。従って、バイオフィルムを効果的に除去できれば、殺菌剤を用いなくても効果的に除菌できる技術につながるため有用であると考えられる。特許文献1では、バイオフィルムの効果的な除去については言及されておらず、その実施例、配合例に開示されている組成物も、バイオフィルムの除去という観点では、更なる改良が望まれることが判明した。
【0010】
本発明の課題は、バイオフィルムを効果的に除去することができる食器洗い用液体洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(a)2−エチルヘキシルグリセリルエーテル〔以下、(a)成分という〕を1質量%以上、5質量%以下、(b)アルキルグリコシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕を10質量%以上、30質量%以下、(c)アミンオキシド型界面活性剤〔以下、(c)成分という〕を3質量%以上、10質量%以下、及び水を含有し、
(d)陰イオン界面活性剤〔以下、(d)成分という〕と(c)成分のモル比(d)/(c)が0以上、1以下であり、且つ、
(b)成分、(c)成分、及び、(d)成分の含有量の合計が20質量%以上、40質量%以下である、
食器洗い用液体洗浄剤組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、上記本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物を1質量%以上、20質量%以下含有する処理液を、バイオフィルムが存在する厨房廻りの器具に接触させるバイオフィルム除去方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、バイオフィルムを効果的に除去することができる食器洗い用液体洗浄剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は2−エチルヘキシルグリセリルエーテルである。該グリセリルエーテルは2−エチルヘキサノールとエピハロヒドリンやグリシドール等のエポキシ化合物をBF3等の酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法が一般的であり、特開2001−49291号公報に記載されているように複数の生成物を含む混合物である。具体的には、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルとして、エポキシ化合物の1位に2−エチルヘキサノールが付加した化合物〔3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール(以下、(a1)成分という〕やエポキシ化合物の2位に付加した化合物〔2−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,3−プロパンジオール(以下、(a2)成分という〕が挙げられる。また、副生成物として、(a1)又は(a2)にさらにエポキシ化合物が付加した多付加化合物〔以下、(a3)成分という〕が挙げられる。
【0015】
本発明では(a3)成分の含有量が(a)成分中に30質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下の2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルを用いることが好適である。
【0016】
<(b)成分>
本発明の(b)成分はアルキルグリコシド型界面活性剤であり、一般式(b1)で示されるアルキルグリコシド型界面活性剤が好適である。
【0017】
1b−(O−R2bnm (b1)
〔式中、R1bは炭素数8以上、16以下の直鎖アルキル基であり、R2bは、炭素数2以上、4以下のアルキレン基である。Gは還元糖に由来する基を示す。nは平均付加モル数であり0以上、5以下の数を示し、mは平均縮合度であり1以上、3以下の数を示す。〕
【0018】
一般式(1)においてR1bは炭素数12以上、14以下の直鎖アルキル基が好適である。また、nは好ましくは0以上であり、そして、好ましくは3以下、更に2以下であり、更に好ましくは0である。R2bはエチレン基が好ましい。また、Gは還元糖に由来する基であり、より具体的にはグリコシド基が挙げられる。原料の還元糖としては、アルドースとケトースの何れであっても良く、また、炭素数が3個以上、6個以下のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースを挙げることができる。アルドースとして具体的にはアピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができ、ケトースとしてはフラクトースを挙げることができる。本発明ではこれらの中でも炭素数5又は6のアルドペントースあるいはアルドヘキソースが好ましく、中でもグルコースがより好ましい。
【0019】
一般式(1)中、mは糖の平均縮合度を示し、好ましくは1以上の数であり、そして、好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下の数である。
【0020】
一般式(1)の化合物は、上記糖とR1b−(O−R2bn−OHとを酸触媒を用いてアセタール化反応又はケタール化反応することで容易に合成することができる。また、アセタール化反応の場合、ヘミアセタール構造であっても良く、通常のアセタール構造であっても良い。
【0021】
<(c)成分>
本発明では(c)成分として、アミンオキシド型界面活性剤、好適には炭素数8〜18の炭化水素基を有するアミンオキシド型界面活性剤を用いる。より具体的には下記一般式(c1)の化合物が好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
〔式中、R1cは炭素数8以上、16以下のアルキル基又はアルケニル基である。Xは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−から選ばれる基であり、R2cは炭素数1以上、6以下のアルキレン基であり、pは0又は1の数である。R3c、R4cは、それぞれ炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。〕
【0024】
一般式(c1)において、R1cは好ましくは炭素数10以上、14以下のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくはpが0の場合はラウリル基又はミリスチル基であり、pが1の場合はラウリル酸からカルボキシル基を除いた残基又はミリスチン酸からカルボキシル基を除いた残基である。Xは、好ましくは−COO−又は−CONH−であり、より好ましくは−CONH−である。R2cの炭素数は、好ましくは2又は3であり、R3c、R4cは、好ましくはメチル基である。さらにpは0が好適である。
【0025】
N−ラウリル−N,N−ジメチルアミン−N−オキシド、N−ミリスチル−N,N−ジメチルアミン−N−オキシド、N−(1−ラウロイルアミノプロピル)−N,N−ジメチルアミン−N−オキシド、及び、N−(1−ミリスチロイルアミノプロピル)−N,N−ジメチルアミン−N−オキシドから選ばれる1種又は2種以上のアミンオキシドが好ましい。
【0026】
<食器洗い用液体洗浄剤組成物>
本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物は(a)成分及び(c)成分がバイオフィルムに作用し、バイオフィルムを軟化・除去されやすい状態に変性させ、(b)成分が効果的に除去する作用を有すると考えられ、これら3成分が相乗的に働くことで、殺菌剤を用いなくても優れた除菌効果を得ることができる。なお、後述するように、本発明では、(c)成分に十分な効果を発現させるために、陰イオン界面活性剤の含有量は制限される。
【0027】
本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物の(a)成分の含有量は1質量%以上、5質量%以下であり、2質量%以上、5質量%以下が好ましい。また、本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物の(b)成分の含有量は10質量%以上、30質量%以下であり、15質量%以上、そして、25質量%以下が好ましい。また、本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物の(c)成分の含有量は3質量%以上、10質量%以下であり、4質量%以上、更に5質量%以上が好ましく、そして、9質量%以下、更に8質量%以下が好ましい。
【0028】
本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物の(b)成分及び(c)成分の含有量の合計は、バイオフィルム除去性の観点から、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。
【0029】
本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物において、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量の質量比(c)/(a)は、バイオフィルム除去性の観点から、1以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.2以上であることが更に好ましく、1.5以上であることがより更に好ましい。また、質量比(c)/(a)は、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
【0030】
<(d)成分>
一般的には(c)成分は(d)成分である陰イオン界面活性剤とコンプレックスを形成しやすく、従来は食器洗い洗浄剤の技術において、このようなコンプレックスを形成させることで陰イオン界面活性剤の洗浄効果や起泡力を高めるブースターとして用いられている。しかしながら、このようなコンプレックスを形成させると、バイオフィルムの除去効果は低減することが新たに判明した。すなわちコンプレックスを形成しないフリーな(c)成分の存在が本発明の効果を得るために重要である。
【0031】
そのため、本発明では、(d)成分の含有量が制限される。本発明では、(d)成分の含有量が、(c)成分の含有量に対して0モル%以上、100モル%以下である。すなわち、本発明では、(d)成分/(c)成分のモル比が0以上、1以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下であることが非常に重要である。なお、このモル比は、全(c)成分の合計モル数と全(d)成分の合計モル数で対比される。また、本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物中の(d)成分の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0質量%、即ち、(d)成分は含有しないことが好ましい。
【0032】
(d)成分としては、炭化水素基を有する陰イオン界面活性剤が挙げられる。更に(d)成分としては、炭素数6以上、22以下の炭化水素基を有する陰イオン界面活性剤が挙げられる。
【0033】
より具体的な(d)成分としては、分子中に炭素数10以上、そして炭素数18以下、更に16以下、更に15以下のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸、分子中に炭素数10以上、そして炭素数18以下、更に16以下、更に15以下のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル、分子中に炭素数10以上、そして炭素数18以下、更に16以下、更に15以下のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキレンオキシド平均付加モル数1以上6以下、更に4モル以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、オレフィン(炭素数8以上、更に10以上、そして炭素数18以下、更に16以下、更に15以下)スルホン酸、アルカン(炭素数8以上、更に10以上、そして炭素数18以下、更に16以下、更に15以下)スルホン酸、α−スルホ脂肪酸(炭素数8以上、更に10以上、そして炭素数18以下、更に16以下、更に15以下)、α−スルホ脂肪酸(炭素数8以上、更に10以上、そして炭素数18以下、更に16以下、更に15以下)低級アルキル(炭素数1以上、3以下)エステル、脂肪酸(炭素数10以上、そして炭素数18以下、更に16以下、更に15以下)、分子中に炭素数8以上、12以下のアルケニルコハク酸及びこれらの塩が挙げられる。塩としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミンから選ばれるものを挙げることができる。
【0034】
本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物の(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の含有量の合計は、バイオフィルム除去性の観点から、20質量%以上であり、好ましくは25質量%以上であり、そして、40質量%以下であり、好ましくは35質量%以下である。
【0035】
<(e)成分>
本発明では上述の界面活性剤に加えて、本発明の効果を損なわない程度に(b)〜(d)成分以外の他の界面活性剤(以下(e)成分という)を併用しても差し支えない。具体的には、ベタイン型両性界面活性剤、更に、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムカルボベタイン、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムカルボベタイン、N−アルカノイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムカルボベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N−アルカノイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アンモニウムスルホベタインから選ばれる両性界面活性剤が好適であり、これらのアルキル基、又はアルカノイル基の炭素数は10以上、16以下が好ましい。
【0036】
また、他の(e)成分としては、アルキル基の炭素数が10以上、16以下であり、オキシアルキレン基の炭素数が2及び/又は3であり、オキシアルキレン基平均付加モル数が5以上、50以下であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0037】
本発明の(e)成分は、洗浄効果や起泡性の点から含有することができるが、本発明の効果を損なうおそれがあるため、用いる場合には組成物中の含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0038】
一般的には食器洗い用洗浄剤は油に対する乳化力を充分備え、油汚れに高い洗浄力を有することが必要である。一般的には(d)成分である陰イオン界面活性剤を含有させて洗浄力を高めることがなされるが、本発明では陰イオン界面活性剤を含有しなくても(a)成分〜(c)成分、並びに好ましくは(e)成分を上記のように制御することにより、バイオフィルム除去効果だけでなく、油汚れに対して洗浄力を得ることができるものである。
【0039】
本発明ではバイオフィルム除去効果だけでなく、油汚れに対する洗浄力の点から、組成物中の界面活性剤の含有量の合計、更には組成物中の(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分の含有量の合計が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。なお、ここでの界面活性剤の含有量には(a)成分の含有量は含まないものとする。
【0040】
本発明では、基本的に(a)成分〜(c)成分、及び(d)成分を上記のように制御することにより、殺菌剤を用いなくてもバイオフィルムを除去することにより高い除菌効果を得ることができる。従って、本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物として、殺菌剤〔下記(f)成分〕を含有しない組成物が提供される。
【0041】
一方、外食産業の厨房や、弁当や惣菜などを取り扱う中食の厨房などで用いる場合には、より確実に食中毒リスクを低減されることが望まれる場合がある。その場合には本発明に殺菌剤を併用すると、本発明の技術によりバイオフィルムが除去され、内在していた菌が浮遊するため、従来、バイオフィルム存在下では有効ではなかった殺菌剤が有効に働く。このため、より高度な衛生管理を行う場合には、殺菌剤を併用することもできる。
【0042】
<(f)成分>
殺菌剤〔以下、(f)成分という〕としては、下記(f−1)成分〜(f−3)成分から選ばれる一種以上の殺菌剤を挙げることができる。
(f−1)成分:トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノールから選ばれる芳香族系有機殺菌剤。
(f−2)成分:4級窒素原子に結合する4つの基のうち、1又は2個が炭素数8以上、12以下のアルキル基であり、残りが炭素数1以上、3以下のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩型殺菌剤(塩としては塩素イオン、臭素イオン、炭素数1又は2のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1以上、12以下の脂肪酸イオン、炭素数1以上、3以下のアルキル基が1個以上、3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンが好適である)。
(f−3)成分:ポリリジン、ヘキサメチレンビグアニドから選ばれる高分子殺菌剤。
【0043】
なお、(f−2)成分は界面活性剤としての作用も有するが、(f−2)成分を用いる場合には、本発明では界面活性剤として取り扱わないことにする。
【0044】
本発明では(f)成分を用いる場合には、組成物中の(f)成分の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、更に0.05質量%以上であり、そして、好ましくは1質量%以下、更に0.5質量%以下である。
【0045】
<その他の成分>
本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物は、一般に食器洗い用液体洗浄剤組成物に配合し得る成分を含有することができる。具体的には、ガラスコップなどのウォータースポットの形成抑制や曇り抑制、あるいはシンクの水垢の形成を抑制するなどの目的からキレート剤を含有することができる。具体的に使用できるキレート剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、クエン酸、コハク酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(ディクエスト2010)を挙げることができ、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)及びクエン酸が好適である。
【0046】
キレート剤の含有量は、組成物中に好ましくは1質量%以上、更に3質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、更に7質量%以下である。
【0047】
本発明では貯蔵安定性及びゲル化防止の点から、有機溶剤、ゲル化防止剤を含有することができる。
【0048】
有機溶剤としては、エタノール、イソプパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチルカルビトールなどが挙げられる。有機溶剤の含有量は、組成物中に好ましくは1質量%以上、更に3質量%以上、そして、好ましくは7質量%以下、更に6質量%以下である。
【0049】
ゲル化防止剤としては、例えば特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体、好ましくはポリアルキレングリコールを挙げることができる。ゲル化防止剤は、含有量が多すぎると洗浄効果を低下させる場合があるため、組成物中の含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5 質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下であるが、理想的には配合しないで組成物を設計することが好ましい。ゲル化防止としてのポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチングリコールを標準としたときのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量が200以上、3000以下のポリプロピレングリコール、及び重量平均分子量が200以上、3000以下のポリエチレングリコールが挙げられる。
【0050】
本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物は、更に、通常の液体洗浄剤に配合されている成分である、ハイドロトロープ剤、香料成分、防腐剤、濁り剤、着色剤、保湿剤等を含有することができる。
【0051】
食器洗い用液体洗浄剤組成物は、20℃におけるpHが好ましくは5以上、更に6以上であり、そして、好ましくは8以下、更に7以下である。
【0052】
本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物は、水で希釈して用いられる。具体的には、本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物を1質量%以上、20質量%以下含有する処理液を、バイオフィルムが存在する厨房廻りの器具に接触させるバイオフィルム除去方法が提供される。厨房廻りの器具としては、皿、はし、及びスプーン等の食器、並びに俎板、包丁、及びボウル等の調理器具等が挙げられる。本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物は、製麺機、炊飯ライン、コンベア、カッター、及びスライサー等の食品加工設備に使用することもできる。
【0053】
厨房廻りや台所廻りでは、俎板の傷やスポンジ内などにバイオフィルムが形成されており、これら存在が感染リスクを高めるため、本発明では、これら厨房廻りの器具のバイオフィルムが存在する部分に、本発明の食器洗い用液体洗浄剤組成物を含有する処理液(以下“本発明に係る処理液”という)を接触させる。本発明に係る処理液中の食器洗い用液体洗浄剤組成物の濃度は1質量%以上、更に3質量%以上、そして、20質量%以下、更に10質量%以下であることがより好ましい。本発明に係る処理液を接触させる際には、例えば硬質表面を有する俎板などの厨房廻りの器具に対しては、スポンジ、キッチンンペーパー、布などの可撓性材料に本発明に係る処理液を含浸させたものでこすり洗いをする方法、あるいは、本発明に係る処理液に俎板などの対象を浸漬させた後、スポンジ、キッチンンペーパー、布などの可撓性材料でこすり洗いするなどの方法を採用することができる。浸漬する場合には、浸漬時間は0.1時間以上、更に0.2時間以上、そして、15時間以下、更に10時間以下が好ましい。本発明に係る処理液の温度は、5℃以上、更に10℃以上、そして、50℃以下、更に40℃以下が好ましい。
【0054】
上記のように本発明に係る処理液を対象物に接触させた後は、水道水ですすぎ、そのまま次の調理工程を行ってもよく、乾燥させても差し支えない。
【実施例】
【0055】
《バイオフィルム除去性の評価》
ポリエチレンのテストピース〔標準試験版PE(両面保護テープ付き)、日本テストパネル社製〕を、底面が1.5cm×1.5cmの正方形となるように切り出し、有効塩素濃度0.1質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液100mLに200枚を液温25℃で1時間浸漬した後、イオン交換水200mLで濯ぎ、25℃で1時間乾燥した。その後、そのテストピースをエタノール100mLに液温25℃で30分間浸漬した後、25℃で1時間乾燥し、殺菌洗浄したテストピースAとした。
【0056】
テストピースAを24ウェルプレート(ファルコン社製)の各ウェルに1枚ずつセットする。一方、MTC2培地(Becton Dickinson社製)にOD=1に調整した緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を1質量%混合した菌液を調製し、各ウェルに1mL添加して25℃にて2日間培養し、バイオフィルムを形成した。菌液を廃棄して、イオン交換水2mLによる3分間の洗浄、及び、洗浄液(水)の廃棄を3回繰り返し、バイオフィルムを形成したテストピースBとした。
【0057】
テストピースBを、別に用意した24ウェルプレートの各ウェルに1枚ずつセットし、表1の各食器洗い用液体洗浄剤組成物をイオン交換水で20倍希釈した液(5質量%水溶液)2mLを各ウェルに投入して、10分間テストピースBを浸漬(液温20℃)した。
【0058】
その後、各バイオフィルム除去剤組成物の希釈液を廃棄して、イオン交換水2mLによる3分間の洗浄、及び、洗浄液(水)の廃棄を3回繰り返した。
【0059】
その後、各ウェルに0.3質量%のクリスタルバイオレット液(和光純薬工業株式会社)を2mL投入し、テストピースを90分間浸漬して染色した。
【0060】
その後、クリスタルバイオレット液を廃棄し、イオン交換水2mLで3分間洗浄、及び、洗浄液(水)の廃棄を2回繰り返し、テストピースBを別に用意した24ウェルプレートに1枚ずつセットし、その中にエタノール2mLを投入し、25℃で12時間浸漬し、クリスタルバイオレットをエタノール中に溶解させた後、このエタノール液の吸光度を測定した。
【0061】
この吸光度(サンプル吸光度)に基づき、バイオフィルム除去率(%)を下記の式にて算出して、表1に記載した。
【0062】
バイオフィルム除去率(%)=100×(An−As)/An
式中、
As:サンプル吸光度
An:ネガティブコントロール吸光度
※ネガティブコントロール吸光度はバイオフィルム除去剤の代わりに水を添加して測定したものである。
【0063】
以下に、表1中の化合物について記載する。
・2−エチルヘキシルグリセリルエーテル:下記の方法で合成した化合物〔(a3)成分の多付加化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィーの分析の結果1質量%以下であった。〕
【0064】
<2−エチルヘキシルグリセリルエーテルの合成方法>
酢酸(キシダ化学社製;1級,純度99%以上)9.57g、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(シェルジャパン社製,純度99%)150g、イオン交換水28.44g、及び水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製;特級,純度95%)6.61gを300mL丸底フラスコに一括して仕込み、三日月羽根(幅4cm,高さ1.6cm)にて300rpmの攪拌保持し反応させ、2−エチルヘキシルグリセリルエーテルを得た。反応はガスクロマトグラフィーによる定量分析にて転化率99%となった時点で終了した。
【0065】
・アルキルグリコシド:一般式(b1)においてR1bがラウリル基、nが0、Gがグルコースに由来する基、グルコースの縮合度mが1.3のアルキルグリコシド型界面活性剤
・AO−I:N−ラウリル−N,N−ジメチルアミン−N−オキシド〔一般式(c1)においてR1cは炭素数12のアルキル基であり、p=0であり、R3c、R4cは共に炭素数1のアルキル基である化合物。〕
・AO−II:アルキル組成が炭素数12のアルキル基80モル%、炭素数14のアルキル基20モル%である、N−アルキル−N,N−ジメチルアミン−N−オキシド〔一般式(c1)においてR1cは炭素数12又は炭素数14のアルキル基であり、p=0であり、R3c、R4cは共に炭素数1のアルキル基である化合物。〕
・AO−III:N−(1−ミリスチロイルアミノプロピル)−N,N−ジメチルアミン−N−オキシド〔一般式(c1)においてR1cが炭素数13のアルキル基であり、Xは−CONH−であり、R2cは炭素数3のアルキレン基であり、p=1であり、R3c、R4cは共に炭素数1のアルキル基である化合物。〕
・ES:オキシエチレン平均付加モル数が4のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム
・ベタイン:N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン
【0066】
【表1】