特許第6052880号(P6052880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052880
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ロードセル
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   G01L1/22 F
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-36870(P2013-36870)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-163877(P2014-163877A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208444
【氏名又は名称】大和製衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 真澄
(72)【発明者】
【氏名】孝橋 徹
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−013663(JP,U)
【文献】 特開2002−195895(JP,A)
【文献】 実開平05−057630(JP,U)
【文献】 特開昭59−012326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/22
G01L 1/26
G01G 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に荷重が印加される略円柱状の荷重受け部と、
外側側面が略円柱の側面形状をなし、前記荷重受け部の側面と間隙を有して前記荷重受け部の周囲を囲み、底面が固定される固定部と、
前記荷重受け部の側面の上下方向における中間部分と前記固定部の内側表面の上下方向における中間部分との間を連結する起歪部と、
前記起歪部に貼付され、前記印加される荷重を検出するための複数の歪みゲージと、
前記荷重受け部と前記固定部との間で前記起歪部の上方の間隙からなる上部空間部と、
前記荷重受け部と前記固定部との間で前記起歪部の下方の間隙からなり、前記上部空間部と連通する下部空間部と、
前記荷重受け部の上部と前記固定部の上部との間を塞ぐように固定され、前記上部空間部の上端を規定する、可撓性を有する上蓋と、
前記荷重受け部の下部と前記固定部の下部との間を塞ぐように固定され、前記下部空間部の下端を規定する、可撓性を有する下蓋とを備え、
前記下部空間部において、前記固定部の内側表面と前記荷重受け部の側面との水平距離が前記下部空間部の上端から下端に近づくほど小さくなるように、前記固定部の内側表面がすり鉢状に構成され、
前記上蓋が固定される部分の前記固定部の内径と前記下蓋が固定される部分の前記固定部の内径とが等しく、前記上蓋と前記下蓋とが同一形状となるように構成された、
ロードセル。
【請求項2】
前記上蓋が固定される前記固定部の上部部分がリング状部材で構成され、
前記リング状部材を除く部分の前記固定部と、前記起歪部と、前記荷重受け部とが単一の起歪体で構成され、
前記起歪体に前記リング状部材が密接するように固定された、
請求項1に記載のロードセル。
【請求項3】
前記上蓋の上方において、被計量物の収容容器に取付けられる取付金具から垂下されるストッパを収容するための凹部が前記荷重受け部と前記固定部との間に設けられた、
請求項1または2に記載のロードセル。
【請求項4】
前記起歪部は、前記荷重受け部の側面の上下方向における中間部分と前記固定部の内側表面の上下方向における中間部分との間の間隙を塞ぐように環状に設けられ、
前記環状に設けられる前記起歪部に、前記上部空間部と前記下部空間部とを連通するための貫通孔が設けられた、
請求項1〜3のいずれかに記載のロードセル。
【請求項5】
前記貫通孔が複数設けられ、
前記歪みゲージが前記起歪部の複数の貼付位置に貼付され、複数の前記貼付位置が前記荷重受け部の中心軸に対して対称な位置であり、
前記複数の貫通孔が、前記荷重受け部の中心軸に対して対称な位置で、かつ各々と最も近い前記歪みゲージとの距離が等しくなる位置に設けられた、
請求項4に記載のロードセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪みゲージを用いて荷重の大きさを電気量に変換して検出するロードセルに関する。
【背景技術】
【0002】
ロードセルは、その用途等に応じて種々の構成のものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、液体を貯留するタンクやホッパの荷重検出器として用いられるロードセルの一例を図5に示す。図5は、従来のロードセルの縦断面図である。
【0004】
このロードセルの起歪体M5は、円柱状の起歪体(金属製弾性体)に、その中心軸A2に対称に穴d11と環状の溝d12とがそれぞれ設けられるとともに、コネクタ11の取付面d4が平面状に加工されているとともに、コネクタ11が取り付けられるねじ穴h1が設けられている。これにより、起歪体M5は、平面視において円形の凹部からなる着力部21aを有する荷重受け部21を中央に備え、その周囲に薄肉の起歪部23を介して環状の固定部22を備えている。荷重受け部21と固定部22とは、環状の起歪部23を介して連結されている。
【0005】
そして、起歪部23の下面に複数の歪みゲージgが貼付され、これらの歪みゲージgから得られる荷重検出信号は、コネクタ11を介して出力される。
【0006】
これら歪みゲージgが外部空気に触れることによる劣化ないし故障を防止するため、起歪部23の下方の穴d11の下部には薄肉の金属製の蓋24が溶接により固着され、歪みゲージgが貼付された空間が気密室25となるよう構成されている。また、気密室25の気密性が保持されるようにコネクタ11はねじ穴h1に取付けられている。
【0007】
ロードセルが装着される際には、固定部22は、その環状に形成された底面22eが下側の取付金具(図示せず)に複数のボルトで固定される。この下側の取付金具は、例えば基台(図示せず)上に固定されている。
【0008】
また、上側の取付金具31は、その取付部31aが、例えば円柱状のタンクの底面等に固定される。この場合、例えば、タンクの円形の底面に、このロードセルが3〜4個配置される。取付部31aの下側には、平面視において円形の凹部を有する荷重伝達部31bが設けられている。この荷重伝達部31bと着力部21aとの間に、荷重伝達部材32が挿入されている。荷重伝達部材32は、円柱の上下両面が凸面状になった形状であり、荷重伝達部31b及び着力部21aと微小面積で可動的に接触するよう構成され、横荷重(水平方向の荷重)が荷重受け部21に加わらないようにしている。
【0009】
また、取付部31aの下側には筒状のストッパ31cが設けられている。このストッパ31cは、起歪体M5の環状の溝d12に挿入され、これにより取付金具31の水平方向の移動が阻止される。
【0010】
このロードセルでは、小型化を図るために、穴d11の側面を鉛直ではなく傾斜させた構造としている。つまり、ロードセルの小型化を図るためには、起歪体M5の外径D4を小さくする必要がある。しかし、起歪部23に適切な面積を持たせるためには、起歪部23の外径D5は一定の寸法以上必要である。また、固定部22はその底面22eがボルトによって固定されているが、荷重受け部21の着力部21aに加わる負荷荷重によって固定部22が変形しないようにするためには、固定部22の底面22e付近の肉厚が厚い方が好ましい。この肉厚が薄いと剛性が低下し、負荷荷重によって底面22e付近が外径方向へ拡張変形し、それによって起歪部23への応力の流れ込みに影響を及ぼし、荷重検出誤差の原因となる。すなわち、穴d11の側面を図5のように傾斜面とすること、言い換えれば、起歪部23より下方の固定部22の内側表面をすり鉢状に構成することにより、固定部22の底面22e付近の剛性低下による変形を防止し、かつロードセルの小型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭50−104974号公報
【特許文献2】実開昭50−13663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来のロードセルでは、その製作時において、気密室25に、例えば、温度20℃において1気圧(1013.25hPa)の窒素ガスが封入されている。しかし、ロードセルの使用環境においては、例えば、周囲温度が−10℃〜+35℃程度の範囲で変化し、大気圧が950hPa〜1020hPa程度の範囲で変化することがある。このように周囲温度や大気圧が変化すると、気密室25と外部との間に圧力差が生じる状態となる。
【0013】
この圧力差によって起歪部23に応力変化が生じ、それが歪みゲージgによって検出される検出荷重に影響を与える。この検出荷重への影響は、特に、定格容量の小さいロードセル、例えば定格容量が数100kg以下のロードセルでは、無視できるものではなく、荷重検出誤差の原因となる。
【0014】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、小型化が図れ、かつ、周囲温度及び大気圧の変化による荷重検出誤差の発生を防止することができるロードセルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のある形態(aspect)に係るロードセルは、上端部に荷重が印加される略円柱状の荷重受け部と、外側側面が略円柱の側面形状をなし、前記荷重受け部の側面と間隙を有して前記荷重受け部の周囲を囲み、底面が固定される固定部と、前記荷重受け部の側面の上下方向における中間部分と前記固定部の内側表面の上下方向における中間部分との間を連結する起歪部と、前記起歪部に貼付され、前記印加される荷重を検出するための複数の歪みゲージと、前記荷重受け部と前記固定部との間で前記起歪部の上方の間隙からなる上部空間部と、前記荷重受け部と前記固定部との間で前記起歪部の下方の間隙からなり、前記上部空間部と連通する下部空間部と、前記荷重受け部の上部と前記固定部の上部との間を塞ぐように固定され、前記上部空間部の上端を規定する、可撓性を有する上蓋と、前記荷重受け部の下部と前記固定部の下部との間を塞ぐように固定され、前記下部空間部の下端を規定する、可撓性を有する下蓋とを備え、前記下部空間部において、前記固定部の内側表面と前記荷重受け部の側面との水平距離が前記下部空間部の上端から下端に近づくほど小さくなるように、前記固定部の内側表面がすり鉢状に構成され、前記上蓋が固定される部分の前記固定部の内径と前記下蓋が固定される部分の前記固定部の内径とが等しく、前記上蓋と前記下蓋とが同一形状となるように構成されている。
【0016】
この構成によれば、下部空間部において、固定部の内側表面がすり鉢状に構成されていることにより、固定部の外径を小さくしても、固定部の底面及びその付近の径方向の肉厚を厚くすることができ、固定部の底面付近の剛性低下による変形を防止し、定格容量に比して小型化を図ることができる。また、起歪部の上下に、連通する上部空間部及び下部空間部が設けられ、上部空間部の上端が可撓性を有する上蓋によって塞がれ、下部空間部の下端が可撓性を有する下蓋によって塞がれ、上蓋が固定される部分の固定部の内径と下蓋が固定される部分の固定部の内径とが等しく構成されており、上蓋と下蓋とに同一形状でかつ同じ大きさで同じ厚みのものを用いることにより、周囲温度や大気圧の変化によって、密閉された上部及び下部空間部内の圧力と大気圧との間に圧力差が生じ、その差圧分が上蓋及び下蓋に加わっても、上蓋と下蓋とからの荷重受け部に作用する力が相殺される。そのため、周囲温度及び大気圧の変化による荷重検出誤差の発生を防止することができる。
【0017】
また、前記上蓋が固定される前記固定部の上部部分がリング状部材で構成され、前記リング状部材を除く部分の前記固定部と、前記起歪部と、前記荷重受け部とが単一の起歪体で構成され、前記起歪体に前記リング状部材が密接するように固定されていてもよい。
【0018】
また、前記上蓋の上方において、被計量物の収容容器に取付けられる取付金具から垂下されるストッパを収容するための凹部が前記荷重受け部と前記固定部との間に設けられていてもよい。
【0019】
また、前記起歪部は、前記荷重受け部の側面の上下方向における中間部分と前記固定部の内側表面の上下方向における中間部分との間の間隙を塞ぐように環状に設けられ、前記環状に設けられる前記起歪部に、前記上部空間部と前記下部空間部とを連通するための貫通孔が設けられていてもよい。
【0020】
この構成によれば、環状に設けられた起歪部に貫通孔を設けることにより、上部空間部と下部空間部とが、容積が異なっていても気圧差を無くして同じ内圧を保つことができ、検出荷重への影響を無くすことができる。また、貫通孔を複数個設けることにより、周囲温度や大気圧の変化の過渡期において上部空間部と下部空間部との間で気圧差が生じたとしても、上部空間部と下部空間部との間の気体の流通速度を高め、短時間で気圧差を無くすことができる。
【0021】
また、前記貫通孔が複数設けられ、前記歪みゲージが前記起歪部の複数の貼付位置に貼付され、複数の前記貼付位置が前記荷重受け部の中心軸に対して対称な位置であり、前記複数の貫通孔が、前記荷重受け部の中心軸に対して対称な位置で、かつ各々と最も近い前記歪みゲージとの距離が等しくなる位置に設けられていてもよい。
【0022】
このように歪みゲージと貫通孔を配置することにより、歪みゲージ貼付部の応力に対して貫通孔を設けたことによる影響を極力小さくし、貫通孔を設けたことによる検出荷重への影響を無くすことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以上に説明した構成を有し、小型化が図れ、かつ、周囲温度及び大気圧の変化による荷重検出誤差の発生を防止することができるロードセルを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態の一構成例のロードセルの縦断面図であり、(b)は、同ロードセルの横断面図である。
図2】本発明の第2実施形態の一構成例のロードセルの縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態の他の構成例のロードセルの縦断面図である。
図4】本発明の第1、第2実施形態における起歪部の変形例を示すロードセルの横断面図である。
図5】従来のロードセルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0026】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態の一構成例のロードセルの縦断面図であり、図1(b)は、図1(a)のX−X線における同ロードセルの横断面図である。
【0027】
このロードセルの起歪体M1は、円柱状の起歪体(金属製弾性体)に、その中心軸A1に対称に環状の溝d1と環状の溝d2とがそれぞれ設けられるとともに、コネクタ11(図5参照)の取付面d4が平面状に加工されているとともに、コネクタ11が取り付けられるねじ穴h1が設けられている。そして、起歪体M1は、上部に凸面状の着力部1aを有する略円柱状の荷重受け部1を中央に備え、荷重受け部1の側面と間隙を有して荷重受け部1の周囲を囲む環状の固定部本体2と、荷重受け部1と固定部本体2とを連結する薄肉部分からなる環状の起歪部3とを備えている。環状の起歪部3によって、荷重受け部1の上下方向の中間部分において、荷重受け部1の側面と固定部本体2の内側表面とが連結されている。
【0028】
そして、起歪部3の下面には、複数の歪みゲージg11〜g14、g21〜g24が貼付されている。内側寄りの歪みゲージg11〜g14は引張歪み検出用の歪みゲージであり、外側寄りの歪みゲージg21〜g24は圧縮歪み検出用の歪みゲージである。これら引張歪み検出用及び圧縮歪み検出用の2つの歪みゲージからなる歪みゲージ対G1(g11,g21)、G2(g12,g22)、G3(g13,g23)、G4(g14,g24)は、それぞれ、中心軸A1を中心として互いに90度の角度をなし、かつ中心軸A1に対して対称な位置に貼付されている。これらの歪みゲージ対G1〜G4の各々において、引張歪み検出用の歪みゲージ(g11〜g14)と、圧縮歪み検出用の歪みゲージ(g21〜g24)とは、起歪部3の最も肉厚の薄い薄肉部3tを挟んで、径方向に並んで貼付されている。
【0029】
これらの歪みゲージg11〜g14、g21〜g24から得られる荷重検出信号は、コネクタ11(図5参照)を介して出力される。例えば、歪みゲージg11,g12及び歪みゲージg21,g22によって第1のブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路)が構成され、歪みゲージg13,g14及び歪みゲージg23,g24によって第2のブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路)が構成され、これら第1及び第2のブリッジ回路の合算した出力が上記荷重検出信号として出力されるように構成されていてもよい。あるいは、ホイートストンブリッジ回路が、4つの各ブリッジ辺に、2つずつの歪みゲージ(g11,g12)、(g13,g14)、(g21,g22)、(g23,g24)が直列接続されて構成され、このホイートストンブリッジ回路の出力が上記荷重検出信号として出力されるように構成されていてもよい。また、ここでは、4組の歪みゲージ対G1〜G4を用いているがこれに限定されるものではない。
【0030】
荷重受け部1は、その底面1eが、固定部本体2の底面2eを含む水平面より若干高い位置となるように、上記水平面との間に隙間d3を有するように形成されている。
【0031】
起歪部3の下方の溝d1の下部には、固定部本体2の内側側面と荷重受け部1の下部側面との間に、環状で薄肉の可撓性を有する金属製の下蓋6が溶接され、起歪部3の下方が環状の下部空間部9となるよう構成されている。また、下部空間部9の気密性が保持されるようにコネクタ11(図5参照)はねじ穴h1に密接して取付けられている。
【0032】
また、リング状部材4が、複数のボルト7で固定部本体2上に固定され、さらに固定部本体2と接する全周囲が溶接され(溶接部分12)、固定部本体2に密着されている。このリング状部材4と固定部本体2とによって固定部F1が構成されている。
【0033】
さらに、リング状部材4の内側側面と荷重受け部1の上部側面との間に、環状で薄肉の可撓性を有する金属製の上蓋5が溶接され、起歪部3の上方が環状の上部空間部8となるよう構成されている。
【0034】
ここで、リング状部材4は、その内径D2が、下蓋6が固定される部分の固定部本体2の内径D1と等しくなるように構成されている。そして、上蓋5と下蓋6とに、同一形状でかつ同じ大きさで、同じ厚みのものを用いている。
【0035】
また、環状の起歪部3には、上部空間部8と下部空間部9とを連通する複数の貫通孔h2が設けられている。貫通孔h2を設けることにより、上部空間部8と下部空間部9とが、容積が異なっていても気圧差を無くして同じ内圧を保つことができる。また、貫通孔h2を複数個設けることにより、周囲温度や大気圧の変化の過渡期において上部空間部8と下部空間部9との間で気圧差が生じたとしても、上部空間部8と下部空間部9との間の気体の流通速度を高め、短時間で気圧差を無くすことができる。
【0036】
複数の貫通孔h2は、2個ずつが中心軸A1に対して対称な位置であり、かつ各貫通孔h2と直近の歪みゲージ対(G1〜G4)との距離が等しくなるようにして、荷重受け部1からできるだけ離れた起歪部3の周囲の近傍に設けられている。このように貫通孔h2を配置することにより、歪みゲージ貼付部の応力が貫通孔h2を設けたことによる影響を受けないようにすることができる。また、各貫通孔h2の孔径は、荷重受け部1への負荷荷重によって各々の歪みゲージ貼付部へ流れ込む応力の状態にできるだけ違いを与えないように、かつ、上部空間部8と下部空間部9との間で気圧の均一化が短時間で達成できる大きさであることが好ましい。なお、ここでは、貫通孔h2の個数を、歪みゲージ貼付部の個数(歪みゲージ対G1〜G4の個数)と同数にしているが、その半分の個数としてもよい。
【0037】
また、このロードセルの製作時において、上蓋5及び下蓋6で密閉される空間部8,9内には、例えば、温度20℃において1気圧(1013.25hPa)の窒素ガスが封入されている。
【0038】
固定部本体2には、その環状に形成された底面2eに複数のねじ穴(図示せず)が設けられており、ロードセルが装着される際には、この底面2eが下側の取付金具(図示せず)に複数のボルトで固定される。この下側の取付金具は、例えば基台(図示せず)上に固定されている。
【0039】
また、上側の取付金具41は、その取付部41aが、例えば円柱状のタンクの底面等に固定される(ロードセルがタンクに装着される場合)。この場合、タンクの円形の底面に、このロードセルが3〜4個配置される。取付部41aの下側には、平面視において例えば円形の荷重伝達部41bが設けられている。この荷重伝達部41bと着力部1aとが微小面積で可動的に接触するように着力部1aの表面が凸面状に構成され、横荷重(水平方向の荷重)が荷重受け部1に加わらないようにしている。この場合、図示しない手段によって、上側の取付金具41が着力部1aに対して水平方向に移動しないようにされている。なお、荷重伝達部41bの着力部1aと接する面が凹面状に構成されていてもよい。
【0040】
本実施形態では、起歪部3より下方の固定部本体2の内側表面がすり鉢状に構成されていることにより、固定部本体2の外径を小さくしても、固定部本体2の底面2e及びその付近の径方向の肉厚を厚くすることができ、固定部本体2の底面2e付近の剛性低下による変形を防止し、定格容量に比して小型化を図ることができる。
【0041】
また、起歪部3の上下に、貫通孔h2によって連通する環状の上部空間部8及び環状の下部空間部9が設けられ、上部空間部8の上端が可撓性を有する上蓋5によって塞がれ、下部空間部9の下端が可撓性を有する下蓋6によって塞がれていることにより、歪みゲージg11〜g14、g21〜g24が外部空気に触れることがなく、歪みゲージg11〜g14、g21〜g24の劣化ないし故障を防止することができる。
【0042】
また、周囲温度や大気圧の変化によって、密閉された空間部8,9内の圧力と大気圧との間に圧力差が生じると、その差圧分が上蓋5及び下蓋6に加わることになるが、上蓋5及び下蓋6が同一形状でかつ同じ大きさ(すなわち同一面積)で同じ厚みとなるように構成されていることにより、上記差圧分によって上蓋5及び下蓋6から荷重受け部1に作用する力が相殺される。そのため、周囲温度及び大気圧の変化による荷重検出誤差の発生を防止することができる。
【0043】
すなわち、本実施形態においては、上蓋5と下蓋6とに同一形状でかつ同じ大きさで同じ厚みのものを用いるために、上蓋5が固定される部分の固定部F1の内径(リング状部材4の内径)D2が、下蓋6が固定される部分の固定部F1の内径(固定部本体2の内径)D1と等しくなるように構成されていることが重要である。また、ここで、環状の上蓋5及び下蓋6の径方向の幅は、それぞれ長さE1で等しく、且つ起歪部3の径方向の長さE2(中心軸A1を中心とする起歪部3の径方向の長さ=環状の起歪部3の幅)より小さくなっている。言い換えれば、上蓋5が固定される部分の固定部F1と荷重受け部1との間隔、及び、下蓋6が固定される部分の固定部F1と荷重受け部1との間隔は、それぞれ長さE1で等しく、且つ起歪部3の径方向の長さE2より小さくなっている。
【0044】
また、仮に、上蓋5が固定されるリング状部材4の内径を、起歪部3の上方の環状の溝d2の外径D3と等しくした場合には、上蓋5と下蓋6との大きさが異なることになり、空間部8,9内の圧力と大気圧との間に圧力差が生じたときにその差圧分によって上蓋5から荷重受け部1に作用する力と、下蓋6から荷重受け部1に作用する力とが異なり、荷重検出誤差が生じる原因になる。したがって、前述のように、上蓋5が固定されるリング状部材4の内径D2を、環状の溝d2の外径D3より小さくして、下蓋6が固定される部分の固定部本体2の内径D1と等しくすることが重要である。
【0045】
なお、本実施形態では、上蓋5及び下蓋6を例えばティグ溶接するために、荷重受け部1、固定部本体2a及びリング状部材4のそれぞれの溶接個所に細い溶接用エッジを設け、上蓋5及び下蓋6のエッジと熱容量がほぼ等しくなるようにしているが、エネルギー密度の高いレーザ溶接を行う場合には、溶接用エッジを設けなくてもよい。
【0046】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態の一構成例のロードセルの縦断面図である。
【0047】
本実施形態では、ロードセルの上側の取付金具31の構成が第1実施形態における取付金具41とは異なり、それに影響される部分のロードセルの構成が異なるが、他の部分の構成は第1実施形態と同様であり、ここでは、主に第1実施形態と異なる部分の構成について説明する。
【0048】
本実施形態では、起歪体M2によって構成される荷重受け部1の上部には、図1の着力部1aに代えて、平面視において円形の凹部からなる着力部1bが設けられている。
【0049】
そして、上側の取付金具31は、その取付部31aが、例えば円柱状のタンクの底面等に固定される。取付部31aの下側には、平面視において円形の凹部を有する荷重伝達部31bが設けられている。この荷重伝達部31bと着力部1bとの間に、荷重伝達部材32が挿入されている。荷重伝達部材32は、円柱の上下両面が凸面状になった形状であり、荷重伝達部31b及び着力部1bと微小面積で可動的に接触するよう構成され、横荷重(水平方向の荷重)が荷重受け部1に加わらないようにしている。
【0050】
また、取付部31aの下側には筒状のストッパ31cが設けられている。本実施形態では、リング状部材4aと荷重受け部1との間に、ストッパ31cが挿入される環状の溝からなるストッパ収容部10が形成されている。ストッパ31cがストッパ収容部10に挿入され、これにより取付金具31の水平方向の移動が阻止される。
【0051】
リング状部材4aは、複数のボルト7aで固定部本体2a上に固定され、さらに固定部本体2aと接する全周囲が溶接され(溶接部分12)、固定部本体2aに密着されている。このリング状部材4aと固定部本体2aとによって固定部F2が構成されている。
【0052】
本実施形態では、ストッパ収容部10を形成することによるロードセルの高さの増大を抑えるため、第1実施形態に比べ、固定部本体2aの高さを低くしている。そのため、上部空間部8の高さも低くなっている。
【0053】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
(他の構成例)
図3は、第2実施形態における他の構成例のロードセルの縦断面図である。
【0055】
このロードセルは、図2に示すロードセルにおいて、リング状部材4aの部分を、固定部本体2aの部分と同じ起歪体で形成することにより、固定部F3を構成している。この場合、ロストワックス法、機械加工により、図2のリング状部材4aに相当する部分も含めて単一の起歪体M3によって、荷重受け部1、起歪部3及び固定部F3を構成している。さらに、上蓋5及び下蓋6をレーザ溶接によって固着しているため、溶接用エッジは設けられていない。
【0056】
なお、同様にして、図1に示す第1実施形態のロードセルにおいても、リング状部材4の部分を、固定部本体2、荷重受け部1及び起歪部3と同一の起歪体で形成するようにしてもよい。
【0057】
また、先述の図1図2におけるリング状部材4,4aは、固定部本体2,2aを構成する起歪体M1,M2と同じ材料で構成されていることが好ましい。
【0058】
図3の例のように、荷重受け部1、起歪部3及び固定部(F1,F2,F3)を単一の起歪体で構成することにより、部品点数が少なくなり、組立工数を削減できるので、製作コストの低減を図ることができる。
【0059】
この図3の場合には、図2のリング状部材4aに相当する部分が内側に突出(突出部P)しているため、その突出部Pの直下部分の起歪部3の上部空間部8側の面(上面)を、機械工作の都合上、傾斜形状にすることは困難であるので、突出部Pの直下部分の起歪部3の上面は平坦な水平面になっている。なお、ロストワックス法によっても上記の部分を精度よく傾斜形状にすることは困難である。
【0060】
一方、図1図2のように、別途、リング状部材4,4aを取り付けるように構成した場合には、リング状部材4,4aを取り付ける前に、起歪部3の上部空間部8側の面の傾斜形状を工作機械によって容易かつ自由(所望の形状)に形成することができる。そのため、リング状部材4,4aの直下部分となる面を含めて起歪部3の上部空間部8側の面を、図1図2のように傾斜形状とすることにより、荷重の負荷によって荷重受け部1が下方へ変位したときに起歪部3が変形(S字変形)する結果生じる圧縮歪みと引張歪みとのそれぞれの検出箇所の間隔(距離)を長くすることができる。すなわち、引張歪み検出用の歪みゲージ(g11〜g14)と圧縮歪み検出用の歪みゲージ(g21〜g24)との貼付間隔を長くすることができ、それらに使用する歪みゲージの選択及び歪みゲージの貼付作業が容易になる、という利点がある。
【0061】
また、上記第1、第2実施形態では、起歪部3が環状に形成されている例について述べたが、これに限らない。図4は、第1、第2実施形態における起歪部の変形例を示すロードセルの横断面図である。この図4に示すように、環状の起歪部3に代えて、複数の梁状の起歪部3a〜3dを形成し、そこに歪みゲージを貼付するようにしてもよい。各起歪部3a〜3dの断面形状は、環状の起歪部3の断面形状と同様である。但し、この場合、貫通孔h2は設けられていない。また、ここでは、4つの梁状の起歪部3a〜3dを設けているが、梁状の起歪部の個数は適宜変更できる。例えば、8つの梁状の起歪部を設けるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、小型化が図れ、かつ、周囲温度及び大気圧の変化による荷重検出誤差の発生を防止することができるロードセル等として有用である。
【符号の説明】
【0063】
M1〜M3 起歪体
A1 中心軸
d1 環状の溝
F1〜F3 固定部
1 荷重受け部
1a、1b 着力部
2,2a 固定部本体
3,3a〜3d 起歪部
4,4a リング状部材
5 上蓋
6 下蓋
8 上部空間部
9 下部空間部
10 ストッパ収容部
31 取付金具
31c ストッパ
h2 貫通孔
g11〜g14、g21〜g24 歪みゲージ
図1
図2
図3
図4
図5