特許第6052893号(P6052893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052893
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20060101AFI20161219BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20161219BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20161219BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C02F3/28 A
   C02F3/34 Z
   C02F1/28 N
   C12N1/00 R
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-187490(P2013-187490)
(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公開番号】特開2015-54264(P2015-54264A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】三井 昌文
(72)【発明者】
【氏名】竹繁 隆徳
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−031206(JP,A)
【文献】 特開2000−271593(JP,A)
【文献】 特開平05−277493(JP,A)
【文献】 特開2006−247601(JP,A)
【文献】 特開2005−246119(JP,A)
【文献】 米国特許第05411665(US,A)
【文献】 国際公開第2012/091032(WO,A1)
【文献】 特開2006−305476(JP,A)
【文献】 特開2001−321792(JP,A)
【文献】 特開平09−173058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00− 3/34
C02F 11/00−11/20
C02F 1/28
C12N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂含有排水を嫌気性処理する嫌気性処理設備であって、
前記油脂含有排水を導入し、乳化物分解菌により、前記油脂含有排水中の乳化物を分解し油脂と分離液とに油水分離する乳化物分解槽と、
酸生成菌を収容し、前記分離液を導入し酸発酵する酸生成槽と、
前記酸生成槽で生じた酸発酵液を導入しメタン発酵するメタン発酵槽と、を備えることを特徴とする嫌気性処理設備。
【請求項2】
前記乳化物分解槽で油水分離した前記油脂を回収する油脂回収手段と、
前記油脂回収手段で回収した前記油脂を鹸化処理する鹸化処理槽と、
前記鹸化処理槽で生じた鹸化処理液を前記酸生成槽に供給するための第1ラインと、を備えることを特徴とする請求項1記載の嫌気性処理設備。
【請求項3】
前記鹸化処理槽で生じた前記鹸化処理液を前記乳化物分解槽に供給するための第2ラインを備えることを特徴とする請求項2記載の嫌気性処理設備。
【請求項4】
前記乳化物分解槽は、前記油脂を吸着する性質を備えた油脂吸着担体を収容し、
前記油脂回収手段は、前記油脂を吸着した前記油脂吸着担体を回収して前記鹸化処理槽に供給し、
前記第2ラインは、鹸化処理された前記油脂吸着担体を前記乳化物分解槽に供給することを特徴とする請求項3に記載の嫌気性処理設備。
【請求項5】
油脂含有排水を嫌気性処理する嫌気性処理方法であって、
前記油脂含有排水中の乳化物を、乳化物分解槽内の乳化物分解菌により分解すると共に油脂と分離液とに油水分離し、
前記分離液を酸生成槽内の酸生成菌により酸発酵し、
前記酸生成槽で生じた酸発酵液を、メタン発酵槽に導入してメタン発酵することを特徴とする嫌気性処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油脂含有排水を処理する設備として、嫌気性処理設備が利用されている。例えば特許文献1には、油脂含有排水を油水分離装置にて油脂と分離液とに油水分離した後、分離した油脂を鹸化処理し、分離液と鹸化処理液とを嫌気性処理する技術が開示されている。この嫌気性処理では、まず酸生成槽で、分離液及び鹸化処理液を酸生成菌で処理することにより有機物を分解し、酢酸等の有機酸を生成する。そして、この有機酸が含まれた酸発酵液をメタン発酵槽内に導入してメタン菌により発酵させることにより、メタンガスを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許登録第3852896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油脂含有排水には、単なる油脂と水の混合物だけではなく、有機酸、タンパク質、アルコール等の乳化物が含まれている。これらは、凝集分離等による分離が困難であり、乳化物によって乳化された油脂が除去されないまま嫌気性処理設備に導入される。このため、当該乳化された油脂は、油水分離装置では分離しきれずに、酸生成槽及びメタン発酵槽内にてスカムとして蓄積するおそれがあった。また、酸生成槽内の酸生成菌及びメタン発酵槽内のメタン菌に油脂が付着し発酵を阻害するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、酸生成槽及びメタン発酵槽にスカムが蓄積すること、且つ、酸生成槽内の酸生成菌及びメタン発酵槽内のメタン菌に油脂が付着し発酵を阻害することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による嫌気性処理設備は、油脂含有排水を嫌気性処理する嫌気性処理設備であって、油脂含有排水を導入し、乳化物分解菌により、油脂含有排水中の乳化物を分解し油脂と分離液とに油水分離する乳化物分解槽と、酸生成菌を収容し、分離液を導入し酸発酵する酸生成槽と、酸生成槽で生じた酸発酵液を導入しメタン発酵するメタン発酵槽と、を備えることを特徴としている。
【0007】
また、本発明による嫌気性処理方法は、油脂含有排水を嫌気性処理する嫌気性処理方法であって、油脂含有排水中の乳化物を、乳化物分解槽内の乳化物分解菌により分解すると共に油脂と分離液とに油水分離し、分離液を酸生成槽内の酸生成菌により酸発酵し、酸生成槽で生じた酸発酵液をメタン発酵槽に導入してメタン発酵することを特徴としている。
【0008】
このような嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法によれば、油脂含有排水中の乳化物の種類に拘らず、油脂含有排水中に乳化している乳化物は、乳化物分解槽において乳化物分解菌により確実且つ効果的に分解されて油脂と分離液とに油水分離される。この油脂から分離された分離液が酸生成槽に導入されるため、酸生成槽及びメタン発酵槽にスカムが蓄積すること、且つ、酸生成槽内の酸生成菌及びメタン発酵槽内のメタン菌に油脂が付着し発酵を阻害することを防止できる。
【0009】
ここで、乳化物分解槽で油水分離した油脂を回収する油脂回収手段と、油脂回収手段で回収した油脂を鹸化処理する鹸化処理槽と、鹸化処理槽で生じた鹸化処理液を酸生成槽に供給するための第1ラインと、を備えることが好ましい。このように、乳化物分解槽にて油水分離した油脂を油脂回収手段により回収するため、乳化物分解槽にスカムが蓄積すること、及び乳化物分解菌に油脂が付着し発酵を阻害することを防止できる。また、油脂回収手段で回収した油脂を鹸化処理槽で鹸化処理して分解し、その鹸化処理液が酸生成槽等を介してメタン発酵槽に供給されるため、メタン発酵槽で生じるバイオガスの回収量を高めることができる。
【0010】
また、鹸化処理槽で生じた鹸化処理液を乳化物分解槽に供給するための第2ラインを備えることが好ましい。これにより、鹸化しきれなかった油脂が再度乳化物分解槽で油水分離され、その後に鹸化処理槽で鹸化処理されるため、油脂の分解率を高めることができる。
【0011】
ここで、乳化物分解槽は、油脂を吸着する性質を備えた油脂吸着担体を収容し、油脂回収手段は、油脂を吸着した油脂吸着担体を回収して鹸化処理槽に供給し、第2ラインは、鹸化処理された油脂吸着担体を乳化物分解槽に供給してもよい。これによれば、油脂を吸着した油脂吸着担体を回収することで油水分離ができると共に、当該油脂吸着担体を油脂回収手段によって回収することで、乳化物分解槽にスカムが蓄積すること、及び乳化物分解菌に油脂が付着し発酵を阻害することを一層防止できる。また、油脂回収手段によって回収され油脂を吸着した油脂吸着担体を、鹸化処理した後に乳化物分解槽に供給するため、油脂吸着担体を繰り返し使用できる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、酸生成槽及びメタン発酵槽にスカムが蓄積すること、且つ酸生成槽内の酸生成菌及びメタン発酵槽内のメタン菌に油脂が付着し発酵を阻害することを防止する嫌気性処理設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。
図5】本発明の第5実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。
図6】本発明の第6実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による嫌気性処理方法及び嫌気性処理装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。
【0016】
図1に示すように、嫌気性処理設備100は、油脂と乳化物によって乳化された油脂とを含有する有機性排水(油脂含有排水)を嫌気性処理する設備であり、原水となる油脂含有排水を貯留する原水槽1と、油脂含有排水を導入し、乳化物分解菌により油脂含有排水中の乳化物を分解し油脂と分離液とに油水分離する乳化物分解槽2と、酸生成菌を収容し分離液を導入して酸発酵する酸生成槽3と、酸発酵液を導入しメタン発酵するメタン発酵槽4と、油水分離された油脂を鹸化処理する鹸化処理槽5と、これらの槽に接続され、原水、油脂、酸発酵液等を輸送するラインL1〜L10と、を主体として備える。また、嫌気性処理設備100は、上述の構成以外に、ガス利用設備として、ガスホルダ6と、脱硫塔7と、ボイラ8と、これらに接続されるガスパイプG1〜G4とを備える。
【0017】
乳化物分解槽2は、原水槽1に貯留された油脂含有排水をラインL1を介して導入し、油脂含有排水を一定時間滞留することで、乳化物分解槽2内で水と分離しやすい状態の油脂を油水分離する。乳化物分解槽2は、乳化物分解槽2内に収容される乳化物分解菌によって、油脂含有排水に含有される乳化物(タンパク質、高分子有機酸、アルコール等)を分解し、乳化物としての効果を喪失させることで、水と乳化している状態の油脂と有機物を含有する液(分離液)とに油水分離する。このように、乳化物分解槽2では、水と分離しやすい状態の油脂も、水と乳化している状態の油脂も油水分離することができる。
【0018】
油水分離の手段としては、例えば比重差分離、浮上分離(常圧浮上、加圧浮上)、オイルスキマー、膜分離等の公知の技術が挙げられ、油水分離された油脂を回収するための手段(油脂回収手段)を兼ねる。また、ラインL8は、分離された油脂を鹸化処理槽5に送るためのものである。
【0019】
乳化物分解槽2に収容される乳化物分解菌としては、高分子有機酸の分解菌(例えば、「Syntrophomonadaceae科」、「Coprothermobacter属」)、タンパク質分解菌(例えば、「Bacteroides属」、「Butyrivibrio属」、「Streptococcus属」)等が挙げられる。
【0020】
酸生成槽3は、酸生成槽3内に収容される酸生成菌によって、ラインL2を介して導入された分離液に含有される有機物(糖、乳化物分解菌によって分解された有機酸及びタンパク質、有機酸、アルコール等)を酸発酵し低分子化することで、低分子化された有機物が溶解した酸発酵液を生成する。ラインL5は、乳化物分解槽2の菌体濃度を高めるため、酸生成槽3から汚泥及び酸発酵液の一部を乳化物分解槽2に返送するためのものである。
【0021】
酸生成槽3に収容される酸生成菌としては、酸生成細菌(例えば、「Clostridium属」、「Acetivibrio属」、「Ruminococcus属」)、通性嫌気性細菌(例えば、「Bacillus属」、「Lactobacillus属」、「Aeromonas属」、「Micrococcus属」)等が挙げられる。
【0022】
メタン発酵槽4は、酸生成槽3からラインL3を介して酸発酵液を導入し、酸発酵液中の低分子化された有機物を、メタン発酵槽4内に収容されるメタン菌によって嫌気性処理し、メタン及び二酸化炭素を主成分とするバイオガスを発生する。ガスパイプG1は、メタン発酵槽4で発生するバイオガスを、メタン発酵槽4の上部からガスホルダ6に送るものである。また、ラインL4は、メタン発酵槽4で嫌気性処理された後の処理水を外部へ排出するものである。また、ラインL6は、乳化物分解槽2の菌体濃度を高めるため、メタン発酵槽4から汚泥及び処理水の一部を乳化物分解槽2に返送するものである。また、ラインL7は、酸生成槽3の菌体濃度を高めるため、メタン発酵槽4から汚泥及び処理水の一部を酸生成槽3に返送するものである。なお、図1ではラインL6はラインL5に接続されているが、ラインL6とラインL5とは独立していてもよく、ラインL6が直接乳化物分解槽2に接続されていてもよい。
【0023】
メタン発酵槽4に収容されるメタン菌としては、「Methanobacterium属」、「Methanothermobacter属」、「Methanobrevibacter属」、「Methanosarcina属」、「Methanosaeta属」等が挙げられる。
【0024】
鹸化処理槽5は、ラインL8を介して導入された油脂にアルカリ(NaOHまたはKOH等)を添加してアルカリ性(pH=10〜13)とし、蒸気等により加熱することによって鹸化処理を行う。ラインL9(第1ライン)は、鹸化処理槽5で鹸化処理された液(鹸化処理液)を酸生成槽3に供給するためのものである。また、ラインL10(第2ライン)は、鹸化処理液を乳化物分解槽2に供給するためのものである。
【0025】
一方、ガス利用設備を構成するガスホルダ6は、メタン発酵槽4で発生したバイオガスを一旦貯蔵するためのものである。脱硫塔7は、ガスホルダ6からガスパイプG2を介して供給されたバイオガスを脱硫するためのものである。
【0026】
ボイラ8は、脱硫塔7からガスパイプG3を介して供給されたバイオガスを燃焼することにより、加熱等のための蒸気を発生させるものである。また、ガスパイプG4は、この蒸気を鹸化処理の熱源とするように鹸化処理槽5に供給するためのものである。
【0027】
次に、嫌気性処理設備100の作用について説明する。油脂含有排水が原水槽1を経て乳化物分解槽2に導入され、前述したように乳化物分解槽2内で油脂を乳化する乳化物が分解されることで、油脂と有機物を含有する分離液とに油水分離される。そして油脂と分離され、有機物を含有する分離液が酸生成槽3内で酸発酵されることで、低分子化された有機物を含有する酸発酵液がメタン発酵槽4に導入される。メタン発酵槽4では酸発酵液内の有機物がメタン発酵され、バイオガスが発生すると共に処理水が外部に排出される。発生したバイオガスは、ガスホルダ6に貯留されてから、脱硫槽7、ボイラ8へ供給される。また、酸生成槽3から汚泥及び酸発酵液の一部が乳化物分解槽2に返送され、且つ、メタン発酵槽4から汚泥及び処理水の一部が乳化物分解槽2に返送され、乳化物分解菌が返送されることで、乳化物分解槽2の乳化物分解菌濃度を維持すると共に、乳化物分解槽2内の油脂含有排水を希釈できる。
【0028】
一方、乳化物分解槽2にて分離された油脂は油脂回収手段によって回収される。油脂回収手段によって回収された油脂は鹸化処理槽5にて鹸化処理され、油脂が分解されて鹸化処理液が生成される。そして、この鹸化処理液が乳化物分解槽2又は酸生成槽3に導入される。鹸化処理液はアルカリ性であるため、酸生成槽3で生成した酸を中和することができる。このため、酸生成槽3に鹸化処理液が導入されることにより、酸生成槽3で生成した酸を中和するために添加するNaOH等のアルカリの量を減らすことができる。そして、乳化物分解槽2を介した鹸化処理液及び酸生成槽3に導入された鹸化処理液が酸発酵された後にメタン発酵槽4に供給され、メタン発酵される。
【0029】
なお、万一、酸生成槽3及びメタン発酵槽4でスカムが発生し蓄積した場合でも、このスカムが鹸化処理槽5で鹸化処理されるように、油脂回収手段と同様のスカム回収手段などを酸生成槽3及びメタン発酵槽4に別途設けてもよい。
【0030】
このような嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法によれば、油脂含有排水中の乳化物の種類に拘らず、油脂含有排水中に乳化している乳化物は、乳化物分解槽2において乳化物分解菌により確実且つ効果的に分解されて油脂と分離液とに油水分離され、この油脂から分離された分離液が酸生成槽3に導入されるため、酸生成槽3及びメタン発酵槽4にスカムが蓄積すること、且つ、酸生成槽3内の酸生成菌及びメタン発酵槽4内のメタン菌に油脂が付着し発酵を阻害することを防止できる。
【0031】
また、本実施形態における嫌気性処理設備100においては、乳化物分解槽2にて油水分離した油脂を油脂回収手段で回収するため、乳化物分解槽2にスカムが蓄積すること、及び乳化物分解菌に油脂が付着し発酵を阻害することを防止できる。また、油脂回収手段で回収した油脂を鹸化処理槽5で鹸化処理して分解し、その鹸化処理液が酸生成槽3等を介してメタン発酵槽4に供給されるため、メタン発酵槽4で生じるバイオガスの回収量を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態における嫌気性処理設備100においては、鹸化処理槽5で生じた鹸化処理液を乳化物分解槽1に供給するための第2ラインを備えることにより、鹸化しきれなかった油脂が再度乳化物分解槽2で油水分離され、その後に鹸化処理槽5で鹸化処理されるため、油脂の分解率を高めることができる。
【0033】
なお、特許文献1記載の嫌気性処理方法では、油水分離設備で油水分離効率を向上するために凝集剤やpH調整剤といった薬剤を投入する場合には、これらの薬剤が多量に必要である。そのため、薬品コストや凝集剤由来のスラッジ処分費が増大する問題が発生する。しかしながら、本実施形態では、酸生成槽3で酸生成菌による生物処理を利用した油水分離を行うため、薬品コストは不要であり、且つ、凝集剤由来のスラッジの発生もないことから、ランニングコストを低減できる。
【0034】
[第2の実施形態]
図2は、第2の実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。図2に示されるように、第2の実施形態の嫌気性処理設備200が第1の実施形態の嫌気性処理設備100と異なる点は、油水分離手段として加圧水製造装置10を用いた点である。
【0035】
加圧水製造装置10は、乳化物分解槽2で加圧浮上による油水分離を行う時に用いられる加圧水を製造する装置である。加圧水製造装置10は、ラインL4の処理水の一部をラインL11を介して導入し、導入した処理水に圧縮空気を溶解することで加圧水を製造し、乳化物分解槽2にラインL12を介して加圧水を供給する。なお、圧縮空気は、ガスホルダ6に貯蔵されているバイオガス(特に二酸化炭素)を、ガスパイプG5を介して用いている。
【0036】
このような嫌気性処理設備200によれば、処理水の一部及びバイオガスを用いて加圧水が製造され、乳化物分解槽2に供給されることで、大気圧下の乳化物分解槽2内で微細な気泡が発生する。この気泡の浮力によって、気泡が付着した油脂が効率よく浮上することとなる。なお、本実施形態では処理水の一部を加圧水の製造に用いたが、酸発酵液または鹸化処理液を用いてもよい。
【0037】
[第3の実施形態]
図3は、第3の実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。図3に示されるように、第3の実施形態の嫌気性処理設備300が第1の実施形態の嫌気性処理設備100と異なる点は、油水分離手段として複数の油脂吸着担体9を用いた点である。
【0038】
油脂吸着担体9は、油脂を吸着する性質を備えており、例えば多孔質物質としてスポンジまたは多孔質セラミックス等が用いられる。油脂吸着担体9は、乳化物分解槽2及び鹸化処理槽5に収容されている。なお、油脂吸着担体9を乳化物分解槽2、鹸化処理槽5から回収するための手段は、図示はしていないが、ポンプ等公知の装置がラインL8、ラインL10内に設けられてもよい。また、ストレーナー又はスクリーン等を用いて、油脂吸着担体8を乳化物分解槽2又は鹸化処理槽5から分離及び回収する構成としてもよい。
【0039】
このような嫌気性処理設備300によれば、油脂が吸着された油脂吸着担体9が乳化物分解槽2から回収された後、鹸化処理槽5にて油脂が鹸化処理され、油脂吸着担体9に吸着していた油脂の分解物が鹸化処理液に溶解する。そして、鹸化処理後の油脂吸着担体9が乳化物分解槽2に供給され、これら一連の処理が繰り返される。
【0040】
この第3の実施形態の場合、第1の実施形態と同様の効果が奏されるのに加えて、油脂吸着担体9により油脂を効果的に分離できると共に、回収され油脂を吸着した油脂吸着担体9を、鹸化処理した後に乳化物分解槽2に供給するため、油脂吸着担体9を繰り返し使用できる。
【0041】
[第4の実施形態]
図4は、第4の実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。図4に示されるように、第4の実施形態の嫌気性処理設備400が第1の実施形態の嫌気性処理設備100と異なる点は、油脂含有排水の導入、乳化物分解及び油水分離、分離液の排出、鹸化処理のサイクルを繰り返し行うバッチ式処理(回分式処理)で嫌気性処理を行うようにした点である。具体的には、乳化物分解槽2、鹸化処理槽5に代えて、上記サイクルを行う乳化物分解槽12を用いた点である。
【0042】
このような嫌気性処理設備400によれば、乳化物分解槽12に導入された油脂含有排水は一定時間滞留されると共に排水内の乳化物が分解されることで、油脂と分離液とに油水分離される。乳化物分解槽12から分離液が排出された後、槽12内にアルカリが添加され残存した油脂が鹸化処理される。乳化物分解槽12は油脂を鹸化処理した後、油脂含有排水の導入が行われる。すなわち、乳化物分解槽12にて乳化物分解処理と、油水分離処理と、鹸化処理とが繰り返し行われる。
【0043】
このように、本実施形態の嫌気性処理設備400においては、乳化物分解槽12で乳化物の分解及び油水分離と、分離液の排出と、鹸化処理とを含むサイクルを繰り返し行うバッチ式処理(回分式処理)で嫌気性処理を行うことができ、第1の実施形態と同様に、油脂から分離された分離液が酸生成槽3に導入されるため、酸生成槽3及びメタン発酵槽4にスカムが蓄積すること、且つ、酸生成槽3内の酸生成菌及びメタン発酵槽4内のメタン菌に油脂が付着し発酵を阻害することを防止できる。また、乳化物分解槽12で油水分離した油脂を、乳化物分解槽12内で鹸化処理して分解するため、乳化物分解槽12にスカムが蓄積することと、乳化物分解菌に油脂が付着し乳化物の分解を阻害することを防止できる。
【0044】
[第5の実施形態]
図5は、第5の実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。図5に示されるように、第5の実施形態の嫌気性処理設備500が第4の実施形態の嫌気性処理設備400と異なる点は、乳化物分解槽12が複数の油脂吸着担体9を収容した点である。複数の油脂吸着担体9は、分離液が乳化物分解槽12から排出される際にも、乳化物分解槽12内に留まる。この第5の実施形態の場合も、第4の実施形態と同様の効果が奏されるのに加えて、油脂を吸着した油脂吸着担体9を乳化物分解槽12内で鹸化処理することにより、油脂吸着担体9を繰り返し使用できる。
【0045】
[第6の実施形態]
図6は、第6の実施形態に係る嫌気性処理方法を採用した嫌気性処理設備を示す概略構成図である。図6に示されるように、第6の実施形態の嫌気性処理設備600が第4の実施形態の嫌気性処理設備400と異なる点は、原水槽1に接続されるバッチ式の乳化物分解槽12を備える設備が複数並列に配置されている点である。具体的には、原水槽1はラインL1,L1を介して乳化物分解槽12,12にそれぞれ接続され、乳化物分解槽12,12には、各々のラインL2,L2を介して酸生成槽3が接続される。
【0046】
このような嫌気性処理設備600によれば、乳化物分解槽12,12の各々で、第4の実施形態に示したバッチ式処理が行われる。そして、一方の乳化物分解槽12で油脂含有排水の流入時に、他方の乳化物分解槽12で運転、排水を行い、また、他の乳化物分解槽12で油脂含有排水の流入時に、一方の乳化物分解槽12で運転、排水が行われている。このように、乳化物分解槽12,12における各処理のタイミングを異ならせることにより、各乳化物分解槽のバッチ式処理が並行して行われる。なお、嫌気性処理設備600は、さらに複数の乳化物分解槽を備えていてもよい。
【0047】
この第6の実施形態の場合も、第4の実施形態と同様の効果が奏されるのに加えて、乳化物分解槽12を備えるラインL1,L2を複数並列にすることで、油脂含有排水を何れかの設備から排出するかを選択し、連続的に流す連続処理を実施できる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、乳化物分解槽2には、乳化物分解菌を保持する性質を備える複数の乳化物分解菌保持担体が乳化物分解槽2に収容されていてもよい。乳化物分解菌保持担体としては、例えば多孔質物質としてスポンジまたは多孔質セラミックス等が用いられる。この乳化物分解菌保持担体を用いることによって、乳化物分解菌の菌体濃度を保持でき、乳化物分解処理を安定して行うことができる。また、本発明は上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…原水槽、2,12…乳化物分解槽、3…酸生成槽、4…メタン発酵槽、5…鹸化処理槽、9…油脂吸着担体、10…加圧水製造装置、100,200,300,400,500,600…嫌気性処理設備、L1〜L12…ライン、G1〜G5…ガスパイプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6