(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示部は、前記受付部による前記目標品質の指定の受け付けに応じて、前記項目に現在設定されている値を更に表示することを特徴とする請求項1に記載の設定支援装置。
前記表示部は、前記受付部による前記目標品質の指定の受け付けに応じて、前記項目に現在設定されている値の当該項目がとり得る値の範囲に対する余裕度を更に表示することを特徴とする請求項1に記載の設定支援装置。
【背景技術】
【0002】
溶接を行う際には、溶接対象(ワーク)の継手形状や材質に合わせて、溶接方法、溶接機器の電流や電圧、溶接速度、トーチ角度等の溶接に関する条件(以下、「溶接条件」という)を設定する作業が行われる。具体的には、実ワークの溶接と溶接条件の修正作業の繰り返しにより、所望の結果を得るための溶接条件が設定される。
【0003】
このような溶接条件の修正作業を効率化する技術としては、従来から種々のものが知られていた(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
特許文献1には、溶接施工情報を設定し、溶接対象情報を設定し、溶接施工情報と溶接対象情報を一連の検索情報として、溶接情報記録部より検索情報と一致する溶接情報を検索し、検索の結果、該当情報がなければ溶接情報導出処理部より溶接情報を算出し、溶接情報検索または溶接情報算出によって設定した溶接条件により溶接を行う自動溶接条件設定装置が記載されている。
【0005】
特許文献2には、作業者が溶接対象物に関する情報と溶接法に関する情報を設定すると、それに適した溶接電流や溶接電圧やワイヤ送給速度や溶接速度や脚長といった溶接条件の推奨値を決定して表示し、さらに、作業者が溶接条件の推奨値から値を変更した場合でも、その変更後の値に適した溶接条件の新たな推奨値を決定して表示する溶接条件決定方法が記載されている。
【0006】
特許文献3には、溶接機器を選択し、溶接の前提条件を入力し、製品要求品質を入力し、溶接変動要因の許容範囲を入力し、過去の溶接実績を基にした相関分析結果および境界条件により、変動要因が許容範囲内で変動しても製品要求品質を満たす、適正溶接条件を算出するアーク溶接条件設定方法が記載されている。
【0007】
特許文献4には、溶接対象物に関する情報と溶接機に対して設定可能な溶接条件項目である第1の溶接条件項目の値と溶接機に対して設定不可能な溶接条件項目である第2の溶接条件項目の値とを対応付けた組を複数記憶し、設定された溶接対象物に関する情報に基づいて第1の溶接条件項目の値と第2の溶接条件項目の値を選択し、第1の溶接条件項目の値を第1の表示部に表示し、第2の溶接条件項目の値を第2の表示部に表示する溶接機が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜4の技術で検索又は算出された溶接条件は、目標品質に近い品質を達成可能ではあるものの、目標品質と同じ品質を達成可能ではない。従って、その後に、実ワークの溶接と溶接条件の修正作業の試行錯誤が生じることになる。
【0010】
ここで、試行錯誤が生じる要因としては、次の点が挙げられる。即ち、第一に、目標品質を達成するためにどの溶接条件を修正すべきかが分からないという点である。第二に、目標品質を達成するために修正すべき溶接条件が分かったとしても、その溶接条件を如何なる値を限度として修正すべきかが分からないという点である。
【0011】
本発明の目的は、目標品質を達成するためにどの溶接条件を如何なる値を限度として修正すべきかを知らせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的のもと、本発明は、溶接を行う際の条件である溶接条件の設定支援装置であって、溶接における目標品質の指定を受け付ける受付部と、受付部による目標品質の指定の受け付けに応じて、目標品質を達成するために修正すべき溶接条件の項目と、目標品質を達成するために項目がとり得る値の制限を示す制限情報とを表示する表示部とを備えた設定支援装置を提供する。
【0013】
ここで、表示部は、受付部による目標品質の指定の受け付けに応じて、項目に現在設定されている値を更に表示する、ものであってよい。
【0014】
また、表示部は、受付部による目標品質の指定の受け付けに応じて、項目の値を修正することで影響が出る他の目標品質と、他の目標品質を達成するために項目がとり得る値の制限を示す他の制限情報とを更に表示する、ものであってよい。
【0015】
更に、表示部は、受付部による目標品質の指定の受け付けに応じて、項目に現在設定されている値の項目がとり得る値の範囲に対する余裕度を更に表示する、ものであってよい。
【0016】
更にまた、この装置は、溶接条件を設定する設定部を更に備え、表示部は、項目の複数の値にそれぞれ対応する複数の点を含むグラフ又は範囲を制限情報として表示し、設定部は、表示部により表示されたグラフ又は範囲に含まれる特定の点を指示する操作に応じて、特定の点に対応する値を項目に設定する、ものであってよい。
【0017】
また、本発明は、溶接を行う際の条件である溶接条件の設定支援方法であって、溶接における目標品質の指定を受け付けるステップと、目標品質の指定の受け付けに応じて、目標品質を達成するために修正すべき溶接条件の項目と、目標品質を達成するために項目がとり得る値の制限を示す制限情報とを表示するステップとを含む設定支援方法も提供する。
【0018】
更に、本発明は、溶接を行う際の条件である溶接条件の設定支援装置として、コンピュータを機能させるプログラムであって、コンピュータを、溶接における目標品質の指定を受け付ける受付部と、受付部による目標品質の指定の受け付けに応じて、目標品質を達成するために修正すべき溶接条件の項目と、目標品質を達成するために項目がとり得る値の制限を示す制限情報とを表示する表示部として機能させるためのプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、目標品質を達成するためにどの溶接条件を如何なる値を限度として修正すべきかが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
[溶接ロボットシステムの構成]
図1は、本実施の形態における溶接ロボットシステム1の概略構成例を示した図である。
【0023】
図示するように、溶接ロボットシステム1は、電極により溶接対象(ワーク)に対して溶接を行う溶接ロボット(マニピュレータ)10と、溶接ロボットシステム1を制御するロボット制御盤20と、溶接ロボットシステム1を制御するための教示データを各種キーや液晶画面で入出力する教示ペンダント30とを備える。
【0024】
溶接ロボット10は、複数の関節を有する腕(アーム)を備え、教示データに基づく各種の作業を行う。溶接ロボットシステム1の場合、腕の先端には、ワークの溶接作業を行うための溶接トーチ11が設けられる。溶接トーチ11は、開先(ワークの母材間に設けられた溝)に対して溶接ワイヤを供給するものである。
【0025】
ロボット制御盤20は、溶接ロボット10とは離れて設けられており、溶接ロボットシステム1を構成する各溶接機器の動作を制御する。例えば、ロボット制御盤20は、溶接ロボット10による溶接動作、図示しない送給装置による溶接ワイヤの送給動作、図示しない溶接電源による電極やワークへの電力の供給動作等を制御する。その際、ロボット制御盤20は、教示ペンダント30から送信された溶接条件等に基づいて各動作を制御する。また、ロボット制御盤20は、溶接ロボット10が出力した各種情報を教示ペンダント30に送信する。
【0026】
教示ペンダント30は、溶接ロボット10による溶接作業を行うために、操作者が教示データとして溶接条件等を入力すると、この溶接条件等をロボット制御盤20に送信する。また、教示ペンダント30は、ロボット制御盤20から送信された各種情報を液晶画面に表示する。本実施の形態では、表示部の一例として、教示ペンダント30を設けている。
【0027】
[本実施の形態の概要]
本実施の形態は、目標品質を達成するために修正すべき溶接条件、その溶接条件の範囲、現在設定中の溶接条件、溶接条件の範囲に対する現在設定中の溶接条件の余裕度等を表示することにより、溶接条件の設定を支援するものである。以下、このような設定の支援を設定支援装置で行うものとして、その機能構成及び動作を説明する。この設定支援装置は、溶接ロボット10内、ロボット制御盤20内、教示ペンダント30内、及び、これらとは別の装置内の何れで実現されるものでもよいが、ここでは、溶接ロボット10内で実現されるものとする。
【0028】
[設定支援装置の機能構成]
図2は、本実施の形態における設定支援装置40の機能構成例を示した図である。図示するように、設定支援装置40は、溶接条件データベース(溶接条件DB)記憶部41と、入力受付部42と、溶接条件情報取得部43と、溶接条件情報出力部44とを備える。
【0029】
溶接条件DB記憶部41は、目標品質と、その目標品質を達成するために修正すべき溶接条件の項目(溶接条件項目)と、その目標品質を達成するために溶接条件項目がとり得る値の制限を示す制限情報とを関連付けて管理する溶接条件DBを記憶する。溶接条件DBの詳細については後述する。
【0030】
入力受付部42は、操作者が教示ペンダント30を用いて情報の入力を行った後に設定キーを押下することにより入力を確定させると、教示ペンダント30からその情報を受け付ける。特に、入力受付部42は、このような情報として、まず、最初に選択された目標品質を受け付け、次に、修正する溶接条件項目を受け付け、その次に、同時に考慮する目標品質を受け付ける。本実施の形態では、目標品質の指定を受け付ける受付部の一例として、入力受付部42を設けている。
【0031】
溶接条件情報取得部43は、入力受付部42が教示ペンダント30から情報を受け付けると、溶接条件DB記憶部41に記憶された溶接条件DBや図示しない記憶領域から、溶接条件に関する情報(溶接条件情報)を取得する。特に、溶接条件情報取得部43は、まず、入力受付部42が最初に選択された目標品質を受け付けると、溶接条件DBから、溶接条件情報として、この目標品質を満たすために修正すべき溶接条件項目を取得する。次に、入力受付部42が修正する溶接条件項目を受け付けると、溶接条件DBから、溶接条件情報として、この溶接条件項目を修正することで影響が出る目標品質を取得する。その次に、入力受付部42が同時に考慮する目標品質を受け付けると、溶接条件DBから、溶接条件情報として、修正する溶接条件項目の目標品質に応じた制限を示す制限情報を取得する。また、図示しない記憶領域から、修正する溶接条件項目の溶接ロボット10の機械的な制約に基づく制限情報を取得する。更に、現在設定中の溶接条件である設定中溶接条件と、設定中溶接条件の余裕を示す余裕度とを取得する。
【0032】
溶接条件情報出力部44は、溶接条件情報取得部43が取得した溶接条件情報を教示ペンダント30に出力することにより、操作者に提示する。特に、溶接条件情報出力部44は、まず、入力受付部42が最初に選択された目標品質を受け付けると、溶接条件情報として、溶接条件項目を出力する。次に、入力受付部42が修正する溶接条件項目を受け付けると、溶接条件情報として、目標品質を出力する。その次に、入力受付部42が同時に考慮する目標品質を受け付けると、溶接条件情報として、制限情報と設定中溶接条件と余裕度とを出力する。
【0033】
[溶接条件DBの内容]
図3は、溶接条件DB記憶部41に記憶された溶接条件DBの内容の一例を示した図である。図示するように、溶接条件DBは、目標品質と、その目標品質を達成するために修正すべき溶接条件項目とを、双方向に関連付けて蓄積している。これにより、設定支援装置40は、目標品質の選択に応じて修正すべき溶接条件項目を引き出して教示ペンダント30に出力することも、溶接条件項目の選択に応じて影響のある目標品質を引き出して教示ペンダント30に出力することも可能になっている。
【0034】
また、溶接条件DBは、目標品質及び溶接条件項目に対して、溶接条件項目の値の制限を示す制限情報も関連付けて蓄積している。尚、目標品質が溶着量一定の場合、制限情報は便宜上、溶着量一定曲線と表記したが、実際は溶着量一定曲線の式を記憶しておけばよい。目標品質が正常ビード形成の場合、制限情報は便宜上、正常ビード形成範囲と表記したが、実際はこの範囲を囲む直線の式を記憶しておけばよい。また、目標品質が要求溶け込み深さで溶接条件項目が溶接電圧の場合、制限情報は便宜上、電圧溶け込み直線と表記したが、実際は電圧溶け込み直線の式を記憶しておけばよい。目標品質が要求ビード凹凸で溶接条件項目が溶接電圧の場合、制限情報は便宜上、電圧ビード直線と表記したが、実際は電圧ビード直線の式を記憶しておけばよい。
【0035】
[設定支援装置の動作]
図4は、本実施の形態における設定支援装置40の動作例を示したフローチャートである。
【0036】
まず、操作者が教示ペンダント30を用いて目標品質を選択すると、設定支援装置40では、入力受付部42が、教示ペンダント30からその選択を受け付ける(ステップ401)。このとき、操作者は複数の目標品質を選択してよく、入力受付部42は、複数の目標品質の選択を受け付けてよい。すると、溶接条件情報取得部43が、溶接条件DB記憶部41に記憶された溶接条件DBから、ステップ401で受け付けた目標品質を満たすために修正すべき溶接条件項目を読み出す(ステップ402)。そして、溶接条件情報出力部44が、ステップ402で読み出した溶接条件項目を教示ペンダント30に出力する(ステップ403)。これにより、教示ペンダント30は、選択された目標品質を満たすために修正すべき溶接条件項目を表示する。
【0037】
次に、操作者がこの教示ペンダント30に表示された溶接条件項目の中から修正する溶接条件項目を選択すると、設定支援装置40では、入力受付部42が、教示ペンダント30からその選択を受け付ける(ステップ404)。すると、溶接条件情報取得部43が、溶接条件DB記憶部41に記憶された溶接条件DBから、ステップ404で受け付けた溶接条件項目を修正することで影響が出る目標品質を読み出す(ステップ405)。そして、溶接条件情報出力部44が、ステップ405で読み出した目標品質を教示ペンダント30に出力する(ステップ406)。これにより、教示ペンダント30は、選択された溶接条件項目を修正することで影響が出る目標品質を表示する。
【0038】
次いで、操作者がこの教示ペンダント30に表示された目標品質の中から同時に考慮する目標品質を選択すると、設定支援装置40では、入力受付部42が、教示ペンダント30からその選択を受け付ける(ステップ407)。すると、溶接条件情報取得部43が、ステップ404で選択された溶接条件項目の値の制限を示す制限情報と、現在設定中の溶接条件である設定中溶接条件とを取得する(ステップ408)。ここで、制限情報には、目標品質に応じた制限情報と、溶接ロボット10の機械的な制約による制限情報とがある。溶接条件情報取得部43は、目標品質に応じた制限情報として、溶接条件DBから、ステップ401及びステップ407で選択された目標品質とステップ404で選択された溶接条件項目とに関連付けられた溶接条件項目の値の範囲等を取得すればよい。また、溶接ロボット10の機械的な制約による制限情報として、溶接条件DBとは別の記憶領域から、溶接ロボット10の機械的な制約による溶接条件項目の値の範囲(以下、「機械的範囲」という)等を取得すればよい。更に、溶接条件情報取得部43は、設定中溶接条件も、溶接条件DBとは別の記憶領域から取得すればよい。次に、溶接条件情報取得部43は、設定中溶接条件の余裕を示す余裕度を取得する(ステップ409)。溶接条件情報取得部43は、余裕度を、設定中溶接条件と、ステップ408で取得した範囲とから計算で求めればよい。その後、溶接条件情報出力部44が、ステップ408で取得した制限情報及び設定中溶接条件と、ステップ409で取得した余裕度とを教示ペンダント30に出力する(ステップ410)。これにより、教示ペンダント30は、制限情報と設定中溶接条件と余裕度とを表示する。
【0039】
以下、目標品質及び溶接条件項目の具体例を用いて、設定支援装置40の動作例を説明する。
【0040】
(第1の動作例)
第1の動作例では、目標品質の具体例として、溶着量一定及び正常ビード形成を用いる。従って、ここでは、
図3に示した溶接条件DBの行のうち、溶着量一定の行及び正常ビード形成の行のみが存在するものとして説明を行う。
【0041】
この第1の動作例では、まず、操作者が、目標品質として溶着量一定で能率を上げることを選択したとする。このときの選択方法としては、教示ペンダント30の液晶画面に目標品質を幾つか表示し、その中から溶着量一定を選択する方法を用いればよい。これにより、入力受付部42が、ステップ401で、目標品質として溶着量一定が選択された旨を受け付ける。すると、溶接条件情報取得部43が、ステップ402で、修正すべき溶接条件項目として溶接電流及び溶接速度を読み出す。そして、ステップ403で、これらを教示ペンダント30に出力する。
【0042】
次に、操作者が、修正する溶接条件項目として溶接電流及び溶接速度を選択したとする。このときの選択方法としては、教示ペンダント30の液晶画面に表示された溶接条件項目を押しボタンで選択する方法を用いてもよいし、教示ペンダント30に操作ログを採取する機能を設け、頻繁に修正される溶接条件項目を自動的に選択する方法を用いてもよい。これにより、入力受付部42が、ステップ404で、溶接条件項目として溶接電流及び溶接速度が選択された旨を受け付ける。すると、溶接条件DBで溶接電流及び溶接速度に正常ビード形成が関連付けられているので、溶接条件情報取得部43が、ステップ405で、溶接条件項目が影響を与える目標品質として正常ビード形成を読み出す。そして、ステップ406で、これを教示ペンダント30に出力する。ここで、正常ビード形成とは、アンダカット、ハンピング、オーバラップを発生させないビードの形成のことである。この正常ビード形成という目標品質が出力されることにより、溶着量一定で能率を上げるという目標品質を達成するためには、正常ビード形成も意識しつつ溶接条件を修正する必要があることが分かる。また、正常ビード形成という目標品質を選択することにより、元々の溶着量一定という目標品質に加えて正常ビード形成も考慮して溶接条件を修正することができる。
【0043】
そこで、操作者が、同時に考慮する目標品質として正常ビード形成を選択したとする。これにより、入力受付部42が、ステップ407で、目標品質として正常ビード形成が選択された旨を受け付ける。すると、溶接条件情報取得部43が、ステップ408で、溶接条件DBから、溶着量一定曲線と、正常ビード形成範囲とを読み出す。また、溶接電流及び溶接速度の機械的範囲と、現在設定中の溶接電流及び溶接速度とを取得する。その後、溶接条件情報出力部44は、ステップ410で、これらの情報を教示ペンダント30に出力し、教示ペンダント30が、これらの情報を表示する。
【0044】
図5は、このときの教示ペンダント30における表示例を示した図である。図示するように、教示ペンダント30は、溶着量が一定になる溶接電流と溶接速度との関係を示す溶着量一定曲線のグラフ31を表示している。また、教示ペンダント30は、正常ビード形成ができる溶接電流及び溶接速度の範囲32を表示している。具体的には、アンダカットが生じない限界を示すアンダカット限界線32aと、ハンピングが生じない限界を示すハンピング限界線32bと、オーバラップが生じない限界を示すオーバラップ限界線32cとにより、この範囲32を表示している。更に、教示ペンダント30は、溶接電流及び溶接速度の機械的範囲33を表示している。更にまた、教示ペンダント30は、現在設定中の溶接電流及び溶接速度を示す点34を表示している。
【0045】
また、溶接条件情報取得部43は、ステップ409で、設定中溶接条件の余裕を示す余裕度を取得する。その後、溶接条件情報出力部44は、ステップ410で、余裕度を教示ペンダント30に出力し、教示ペンダント30が、余裕度を表示する。ここで、余裕度は、ステップ408で取得した範囲の境界に対して設定中溶接条件がどれだけ近いかを示す指標でもよいし、調整可能な範囲内で設定中溶接条件がどの辺りに位置するかを示す指標でもよい。また、数値で表したものであってもよいし、グラフで表したものであってもよい。
【0046】
図6は、このときの教示ペンダント30における表示例を示した図である。ここでは、溶接電流の機械的範囲を150A〜440Aとし、溶接速度の機械的範囲を10cm/分〜35cm/分としている。また、正常ビード形成に対する範囲を表示しているが、これは、実験等で求めたものでよい。更に、現在設定中の溶接条件を(270A,18cm/分)としている。尚、この動作例において、(I,S)は、溶接電流がIで溶接速度がSである点を意味するものとする。このとき、溶着量一定曲線とアンダカット限界線の交点は(350A,30cm/分)となる。従って、10cm/分と30cm/分との中間の20cm/分をアンダカット限界線に対する余裕度が100%の溶接速度であるとする。すると、設定中溶接条件の余裕度は、100%−|18cm/分−20分/分|/20cm/分×100=90%となるので、教示ペンダント30は、図示するように、この数値を表示する。
【0047】
これにより、アンダカット限界線に対して設定中溶接条件の余裕がどの程度あるか分かる。従って、溶接速度が増すことによるアンダカットのリスクを考慮しつつ、具体的な修正量を考えながら溶接速度を修正できるようになり、目標品質に対して適切な修正量を設定できるので、試行錯誤を減らすことができる。
【0048】
また、
図7は、教示ペンダント30に表示された画面上で溶接条件を修正する操作の一例を示した図である。図の上段は、設定中溶接条件が(270A,18cm/分)である場合の画面を示したものである。この画面内の範囲やグラフ上で1点を指定することにより、図の下段のように、溶接条件を(300A,27cm/分)に変更することができる。例えば、設定支援装置40に設定部を設け、教示ペンダント30に表示されたグラフや範囲で1点を指示する操作が行われると、設定部がその点に対応する値を溶接条件項目に設定すればよい。この操作例では、1点を指定することにより複数の溶接条件(例えば、溶接電流及び溶接速度)を一括で変更することができるので、入力時間も短縮される。
【0049】
(第2の動作例)
第2の動作例では、目標品質の具体例として、要求溶け込み深さ及び要求ビード凹凸を用いる。従って、ここでは、
図3に示した溶接条件DBの行のうち、要求溶け込み深さの行及び要求ビード凹凸の行のみが存在するものとして説明を行う。
【0050】
この第2の動作例では、まず、操作者が、目標品質として要求溶け込み深さを選択したとする。これにより、入力受付部42が、ステップ401で、目標品質として要求溶け込み深さが選択された旨を受け付ける。すると、溶接条件情報取得部43が、ステップ402で、修正すべき溶接条件項目として溶接電流、溶接電圧及び溶接速度を読み出す。そして、ステップ403で、これらを教示ペンダント30に出力する。
【0051】
次に、操作者が、修正する溶接条件項目として溶接電圧を選択したとする。これにより、入力受付部42が、ステップ404で、溶接条件項目として溶接電圧が選択された旨を受け付ける。すると、溶接条件情報取得部43が、ステップ405で、溶接電圧の修正が影響を与える目標品質として要求ビード凹凸を読み出す。そして、ステップ406で、これを教示ペンダント30に出力する。
【0052】
次いで、操作者が、同時に考慮する目標品質として要求ビード凹凸を選択したとする。これにより、入力受付部42が、ステップ407で、目標品質として要求ビード凹凸が選択された旨を受け付ける。すると、溶接条件情報取得部43が、ステップ408で、溶接条件DBから、電圧溶け込み直線と、電圧ビード直線とを読み出す。また、溶接電圧の機械的範囲と、現在設定中の溶接電圧とを取得する。その後、溶接条件情報出力部44は、ステップ410で、これらの情報を教示ペンダント30に出力し、教示ペンダント30が、これらの情報を表示する。
【0053】
図8は、このときの教示ペンダント30における表示例を示した図である。図示するように、教示ペンダント30は、溶接電圧と要求溶け込み深さとの関係を示す電圧溶け込み直線のグラフ36を表示している。また、教示ペンダント30は、溶接電圧と要求ビード凹凸との関係を示す電圧ビード直線のグラフ37を表示している。更に、教示ペンダント30は、溶接電圧の機械的範囲を示す下限線38a及び上限線38bを表示している。更にまた、教示ペンダント30は、現在設定中の溶接電圧を示す線39を表示している。
【0054】
また、溶接条件情報取得部43は、ステップ409で、設定中溶接条件の余裕を示す余裕度を取得する。その後、溶接条件情報出力部44は、ステップ410で、余裕度を教示ペンダント30に出力し、教示ペンダント30が、余裕度を表示する。
【0055】
図9は、このときの教示ペンダント30における第1の表示例を示した図である。ここでは、溶接電圧の機械的範囲を25V〜35Vとしている。また、現在設定中の溶接電圧を28Vとしている。このとき、25Vを0%、35Vを100%とする。すると、現在設定中の溶接電圧の余裕度は30%となるので、教示ペンダント30は、図示するように、この数値を表示する。
【0056】
図10は、このときの教示ペンダント30における第2の表示例を示した図である。ここでも、溶接電圧の機械的範囲を
図9と同じく25V〜35Vとしている。一方で、現在設定中の溶接電圧は
図9と異なり30Vとしている。すると、現在設定中の溶接電圧の余裕度は50%となるので、教示ペンダント30は、図示するように、この数値を表示する。
【0057】
例えば、ビード形状を凹にしたい場合、電圧を高くする必要がある。その際、%表示を参考にすることで、溶接条件がとり得る範囲の中で設定中溶接条件がどの辺りにあるか、及び、どの程度まで修正することができるかが分かる。
【0058】
また、
図9又は
図10に示した表示例において、画面内の範囲やグラフの位置を指定することにより、溶接電圧を変更することもできる。
【0059】
次に、設定支援装置40のハードウェア構成について説明する。
図11は、設定支援装置40のハードウェア構成例を示す図である。
【0060】
図示するように、設定支援装置40は、例えば汎用のPC(Personal Computer)等により実現され、演算手段であるCPU101と、記憶手段であるメインメモリ102及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)103とを備える。ここで、CPU101は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトウェア等の各種プログラムを実行し、設定支援装置40の各機能を実現する。また、メインメモリ102は、各種プログラムやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、HDD103は、各種プログラムに対する入力データや各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
【0061】
また、設定支援装置40は、外部との通信を行うための通信I/F104と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構105と、キーボードやマウス等の入力デバイス106と、記憶媒体に対してデータの読み書きを行うためのドライバ107とを備える。但し、
図11はハードウェアの構成例に過ぎず、設定支援装置40は図示の構成に限定されない。
【0062】
尚、本発明の実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0063】
以上述べたように、本実施の形態では、目標品質を選択すると、1つ又は複数の修正すべき溶接条件を選択可能に表示するようにした。これにより、目標品質を満たすにはどの溶接条件を修正すればよいかが分かるので、目標品質を満たすために修正が必要な溶接条件を探索する必要がなくなった。
【0064】
また、本実施の形態では、修正すべき溶接条件の制限を示す範囲やグラフ、目標品質と修正すべき溶接条件との関係を示すグラフを表示するようにした。これにより、現在設定中の溶接条件を修正可能な範囲が分かるので、修正作業における試行錯誤を減らすことが可能となった。
【0065】
更に、本実施の形態では、修正すべき溶接条件を修正する際、現在設定中の溶接条件に加え、修正すべき溶接条件がとり得る範囲に対して現在設定中の溶接条件の余裕がどの程度あるのかを示す余裕度を表示するようにした。これにより、溶接条件の修正量の程度が分かり、目標品質を満たすまで修正する際に過大な又は過小な修正量を選択することなく適切な修正量を選択することになるので、修正作業における試行錯誤を減らすことが可能となった。
【0066】
更にまた、本実施の形態では、ある目標品質を満たすために修正すべき溶接条件を選択して修正を行う際に、その溶接条件に関連付けられた他の目標品質との関係も同時にグラフや範囲で表示するようにした。これにより、ある目標品質を満たすための修正を他の目標品質への影響も考慮しつつ行うことができるので、修正作業における試行錯誤を減らすことが可能となった。