(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0018】
本実施の形態に係る発光モジュールは、車両用灯具をはじめとする、あらゆる照明や灯具に適用可能なものである。特に、本実施の形態に係る発光モジュールは、発光モジュールが備える複数の発光素子の一部または全部の明るさを制御することで複数の配光パターンを実現する照明や灯具に好適である。
【0019】
はじめに、本実施の形態に係る発光モジュールが適用される灯具の一例として、車両用灯具を説明する。
図1は、本実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【0020】
本実施の形態に係る車両用灯具は、主として車両前方を照射する車両用前照灯装置である。車両用前照灯装置は、ハイビーム用配光パターンの一部領域を形成可能な光を照射する灯具ユニットと、この灯具ユニットの光の照射状態を制御する照射制御部とを備える。そして、照射制御部は、ハイビーム用配光パターンの一部領域が少なくとも車幅方向に複数に分割された部分領域により形成されるように光の照射状態を制御する。また、各部分領域に対応する照射光の光度を個別に調整してハイビーム照射モードと昼間点灯照射モードを切り替えてハイビーム照射モードに適した光度分布と昼間点灯照射モードに適した光度分布を形成する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る車両用前照灯装置を構成する灯具本体ユニットの概略構造図である。本実施の形態の車両用前照灯装置は、車両の前部の車幅方向左右両端に一対の灯具本体ユニットを含む。そして、左右の灯具本体ユニットから照射される配光パターンを車両の前方で重畳させることにより車両用前照灯装置としての照射を完成させる。
図1は、左右の灯具本体ユニットのうち右側に配置される灯具本体ユニット10の構成を示す。
図1では、理解を容易にするために灯具本体ユニット10を水平面で切断して上方から見た断面図を示している。なお、左側に配置される灯具本体ユニットは右側に配置される灯具本体ユニット10と左右対称の構造であり基本構造は同一である。したがって、右側に配置される灯具本体ユニット10を説明することで左側に配置される灯具本体ユニットの説明は省略する。また、以下では、便宜上、灯具の光が照射する方向を車両前方(前側)、その反対側を車両後方(後側)として説明する場合がある。
【0022】
灯具本体ユニット10は、透光カバー12、ランプボディ14、エクステンション16、第1灯具ユニット18、および第2灯具ユニット20を有する。ランプボディ14は、樹脂などによって細長い開口部を有するカップ型に成形されている。透光カバー12は、透光性を有する樹脂などによって成形され、ランプボディ14の開口部を塞ぐようにランプボディ14に取り付けられる。こうしてランプボディ14と透光カバー12とによって実質的に閉鎖空間となる灯室が形成され、この灯室内にエクステンション16、第1灯具ユニット18、および第2灯具ユニット20が配置される。
【0023】
エクステンション16は、第1灯具ユニット18および第2灯具ユニット20からの照射光を通すための開口部を有し、ランプボディ14に固定される。第1灯具ユニット18は、第2灯具ユニット20より車両の車幅方向の外側に配置される。第1灯具ユニット18は、いわゆるパラボラ型の灯具ユニットであり、後述するロービーム用配光パターンを形成する。
【0024】
第1灯具ユニット18は、リフレクタ22、光源バルブ24、およびシェード26を有する。リフレクタ22は、カップ型に形成され、中央に挿通孔が設けられている。本実施の形態では、光源バルブ24はハロゲンランプなどフィラメントを有する白熱灯によって構成されている。なお、光源バルブ24は、放電灯等他のタイプの光源が採用されてもよい。光源バルブ24は、内部に突出するようリフレクタ22の挿通孔に挿通されてリフレクタ22に固定される。リフレクタ22は、光源バルブ24が照射した光を車両前方に向けて反射させるよう、内面の曲面が形成されている。シェード26は、光源バルブ24から車両前方へ直接進行する光を遮断する。第1灯具ユニット18の構成は公知であるため、第1灯具ユニット18に関する詳細な説明は省略する。
【0025】
図2は、本実施の形態の灯具本体ユニット10に含まれる第2灯具ユニット20の構成を示す図である。
図2では、第2灯具ユニット20を水平面で切断して上方から見た断面図を示している。第2灯具ユニット20は、ホルダ28、投影レンズ30、発光モジュール32、およびヒートシンク38を備える。第2灯具ユニット20は、ハイビーム用配光パターンの全部または一部領域を形成可能な光を照射する灯具ユニットである。すなわち、第2灯具ユニット20は、ハイビーム照射モード時に、第1灯具ユニット18により形成されるロービーム用配光パターンの上部にハイビーム用配光パターンを形成する。ハイビーム用配光パターンがロービーム用配光パターンに追加されることで、全体として照射範囲が広くなり、遠方視認性能も向上する。また、第2灯具ユニット20は、昼間点灯照射モード時に、ハイビーム照射モード時より照射光の強度を弱めて単独で光を照射することにより、昼間など対向車や歩行者などに自車の存在を認識しやすくするための昼間点灯照射ランプ、いわゆるデイタイムランニングランプ(DRL)として機能する。
【0026】
投影レンズ30は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、その後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影レンズ30は筒状に形成されたホルダ28の一方の開口部に取り付けられる。
【0027】
図3は、車両用前照灯装置に適用可能な発光モジュールの一例を示す断面図である。発光モジュール32は、基板34と、基板34に搭載され、配列されている複数の半導体発光素子であるLEDチップ36a,36bと、各LEDチップ36a,36bの各々の主発光面36a1,36b1に対向するように設けられている蛍光体層40a,40bと、を備える。蛍光体層40a,40bは、対向するLEDチップ36a,36bが発する光をそれぞれが波長変換して出射する光波長変換部として機能する。なお、LEDチップ36a,36bを特に区別しない場合は、総称してLEDチップ36と示すことがある。同様に、蛍光体層40a,40bを特に区別しない場合は、総称して蛍光体層40と示すことがある。また、各LEDチップの大きさや発光波長は必ずしも同じでなくてもよく、大きさや発光波長が異なる複数種のチップを採用してもよい。
【0028】
発光モジュール32は、ハイビーム用配光パターンの光を照射するものであり、車幅方向に複数に分割された複数の領域の一部を選択的に照射することができるように構成されている。本実施の形態の場合、複数のLEDチップのそれぞれに対応して分割されている各照射領域を合わせてハイビーム用配光パターンが形成されている。なお、その分割数は、ハイビーム照射モードや昼間点灯照射モードで要求される性能に応じて決定することができる。例えば、分割される領域の数は、複数であれば2個より多くてもよく、また、奇数個でも偶数個でも構わない。
【0029】
また、複数のLEDチップをマトリックス状に配列してもよい。「マトリックス状に配列」とは、少なくとも、複数の発光素子がm×1(mは2以上の整数)、1×n(nは2以上の整数)、m×n(m、nはいずれも2以上の整数)で配列されている場合が含まれる。2つの配列方向は、必ずしも直交している必要はなく、全体として平行四辺形や台形の領域に配列されていてもよい。この場合、発光モジュールは、鉛直方向に複数に分割された複数の領域の一部を選択的に照射することができるように構成されていてもよい。また、分割された一つの領域は、複数のLEDチップによって照射されてもよい。
【0030】
各LEDチップの各々は矩形に形成されており、基板34に順に帯状となるよう一直線状に配置される。LEDチップ36a,36bは、例えば個別に光度制御が可能な光源で構成可能である。つまり、第2灯具ユニット20は、多灯式光源となっている。
【0031】
図4(a)〜
図4(c)は、複数のLEDチップを備えた発光モジュールの配線の例を模式的に示した図である。
【0032】
図4(a)〜
図4(c)に示す発光モジュール42,44,46においては、複数のLEDチップを複数のグループに分けた場合にグループ毎に点消灯制御が可能なように配線が構成されている。また、発光モジュール42,44,46においては、各LEDチップ36に対応して、LEDチップと並列にツェナーダイオード48が接続されている。ツェナーダイオード48は、LEDチップ36を過電圧や逆電流から保護する役割を果たす。
【0033】
LEDチップ36は、例えば1mm角程度の正方形の発光面を有している。なお、発光素子がLEDチップに限られないことはもちろんであり、例えばレーザダイオードなど略点状に面発光する他の素子状の光源であってもよい。
【0034】
ヒートシンク38は、アルミなどの金属により多数のフィンを有する形状に形成され、基板34の裏面に取り付けられる。このように、発光モジュール32の光源をLEDチップ36で構成することにより、発光モジュール32の調整が精度よくできる。その結果、後述するハイビーム照射モードや昼間点灯照射モードにおいて、所望の配光特性を高い精度で実現できる。
【0035】
発光モジュール32は、複数のLEDチップ36が順に並んでホルダ28の内部に配置されるよう、基板34がホルダ28の他方の開口部に取り付けられる。複数のLEDチップ36の各々は、発光することによりそれぞれの像が灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影される。
【0036】
図5は、本実施の形態に係る車両用前照灯装置の左右の灯具本体ユニット10から前方へ照射される光により、例えば車両前方25メートルの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図である。
【0037】
ロービーム用配光パターンPLは第1灯具ユニット18によって形成される。ロービーム用配光パターンPLは左側通行の地域で利用される左配光のロービーム用配光パターンであり、その上端縁に第1カットオフラインCL1〜第3カットオフラインCL3を有する。第1カットオフラインCL1と第3カットオフラインCL3は、灯具正面方向に設定された鉛直線V−Vを境にして左右段違いで水平方向に延在する。第1カットオフラインCL1は、鉛直線V−Vより右側かつ灯具正面方向に設定された水平線H−Hより下方において水平方向に延在する。このため、第1カットオフラインCL1は対向車線カットオフラインとして利用される。
【0038】
第3カットオフラインCL3は、第1カットオフラインCL1の左端部から左上方に向かって例えば45°の傾斜角度で斜めに延在する。第2カットオフラインCL2は、第3カットオフラインCL3と水平線H−Hとの交点から左側において水平線H−H上に延在する。このため、第2カットオフラインCL2は自車線側カットオフラインとして利用される。なお、ロービーム用配光パターンPLにおいて、第1カットオフラインCL1と鉛直線V−Vとの交点であるエルボ点Eは交点H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しており、このエルボ点Eをやや左よりに囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZがリフレクタ22の形状調整等により形成され、自車線側の視認性を向上させている。
【0039】
ハイビーム用配光パターンの一部領域である付加配光パターンPAは、第2灯具ユニット20からの照射光によって形成される。付加配光パターンPAは、水平線H−Hを含んで水平方向に延びる帯状に形成される。
【0040】
付加配光パターンPAは、LEDチップ36の数にしたがい水平方向に並ぶ複数(
図5では4つ)の矩形領域に分割されて構成されている。以下、これらの領域を右から順に第1部分領域PA1〜第4部分領域PA4といい、隣り合う部分領域の境界線を分割ラインという。第2部分領域PA2と第3部分領域PA3との分割ラインは0°に設定され、鉛直線V−Vに対応する。
【0041】
第1部分領域PA1〜第4部分領域PA4は、対応する4つのLEDチップ36の照射光によってそれぞれ形成される。
【0042】
発光モジュール32は、運転者の操作または、車両に搭載され対向車や前走車など前方車両や歩行者を検出する装置からの情報に基づき、個別またはグループ化された複数のLEDチップ36毎に点消灯や調光が可能である。これにより、照射領域の異なる複数の配光パターンを得ることができる。したがって、第1部分領域PA1〜第4部分領域PA4のうち前方車両や歩行者の存在する領域を照射するLEDチップ36を消灯することにより、前方車両や歩行者に与えるグレアを抑制できる。
【0043】
例えば、自車両と反対車線を走行する対向車が存在する場合、第1部分領域PA1、第2部分領域PA2を照射するLEDチップ36を消灯することにより対向車の運転者にグレアを与えないようにすることができる。また、自車両と同じ車線を走行する先行車が存在する場合、第2部分領域PA2や第3部分領域PA3を照射するLEDチップ36を消灯することにより先行者の運転者にグレアを与えないようにすることができる。また、道路の路側帯を歩行する歩行者が存在する場合、第1部分領域PA1や第4部分領域PA4を照射するLEDチップ36を消灯することにより歩行者にグレアを与えないようにすることができる。このように、対向車や先行車、歩行者などにグレアを感じさせないように複数のLEDチップ36を部分的に消灯し、残りのLEDチップ36を点灯させることで、運転者の遠方視認性の確保が可能になる。
【0044】
ところで、複数のLEDチップ36のそれぞれが照射する領域を合成して一つの配光パターンを形成する場合、各領域の間に隙間(非照射領域)がないことが望ましい。このような観点からは、発光モジュール32は、各LEDチップ36の照射領域の境界部分が重なる方向で構成が設定されることになる。一方、各照射領域の境界部分の重なりが多いと、幾つかのLEDチップ36を消灯し、その他のLEDチップ36を点灯させた場合、点灯しているLEDチップ36の光が、消灯しているLEDチップ36の照射領域に漏れ出てしまうこととなり、その領域に存在する前走車や歩行者に対してグレアを与えることにもなる。
【0045】
そこで、
図3に示す発光モジュール32は、複数のLEDチップ36のうち互いに隣り合う一対のLEDチップ36a,36bを隔てるように、一対のLEDチップ36a,36bの間に遮光部50が設けられている。遮光部50は、基板34から、一対のLEDチップ36a,36bのそれぞれが対向する一対の蛍光体層40a,40bの間に向かって設けられている。これにより、仮に隣接しているLEDチップ36が消灯している場合であっても、消灯したLEDチップ36に対応する部分領域に存在する前走車や歩行者に与えるグレアが抑制されることになる。
【0046】
遮光部50の材料や構成は、少なくとも入射する光をそのまま透過することを妨げるものであればよい。遮光部50の材料としては、少なくとも蛍光体層40よりも光の透過率が低いものが好ましく、例えば、樹脂組成物、金属、誘電体などの不透明な各種材料から適宜選択される。なお、不透明な材料とは、電磁波の全波長域にわたって光の吸収を示す必要はなく、少なくとも発光素子が発する光の波長域に対して吸収を示すものであればよい。
【0047】
また、遮光部50は、反射部材として機能するものであってもよい。例えば、反射率の高い樹脂組成物や金属、誘電体などが挙げられる。また、遮光部50は、蛍光体層との境界面に金属膜や誘電体薄膜が形成されたものであってもよい。例えば、高屈折率と低屈折率の誘電体薄膜を交互に多層重ねた反射膜を遮光部50に設けるとよい。また、蛍光体層40と遮光部50との屈折率の違いを利用して光が遮光部50の表面で反射するようにしてもよい。この場合、遮光部50を構成する物質の屈折率は、蛍光体層40を構成する物質の屈折率よりも低いとよい。
【0048】
次に、このような遮光部が発光モジュールの輝度分布に与える影響について説明する。
図6は、遮光部の形状による輝度分布の違いを説明するための図である。
図6の横軸は、発光モジュールの長手方向における位置、縦軸は、その位置における輝度を相対値で示したものである。また、
図6に示す位置Lは各LEDチップ36の発光中心、位置Fは、遮光部に対応している。
【0049】
遮光部の形状が、
図3に示すように断面が方形であり、遮光部50が蛍光体層40と接する面がLEDチップ36の発光面に対して垂直な場合、遮光部50に対応する位置Fの輝度が大きく低下している(
図6の細線)。これは、遮光部50のように、遮光面が、LEDチップ36の発光面に対して垂直となる枠の場合、遮光部50の上方に光が届きにくいためである。
【0050】
図7は、
図3に示す発光モジュールの変形例を示す断面図である。
図7に示す発光モジュール54においては、遮光部52の上部の遮光面52aがLEDチップ36の主発光面36a1,36b1に対して斜めとなるように構成されている。これにより、
図6に示すように、遮光部52に対応する位置Fの輝度の低下が抑制される(
図6の太線)。
【0051】
なお、LEDチップ36の発光面と遮光面52aとが成す角度αは、30〜70°程度が好ましい。角度αがこの範囲よりも大きい場合には、効率的に上方に向けて光を反射できないため、遮光部の上方に輝度の暗部が生じやすい。一方、角度αが好適な範囲よりも小さい場合には、LEDチップ36間の距離が広がるため、LEDチップ36から離れている部分で暗部が生じやすい。
【0052】
遮光面52aは、その頂点が、蛍光体層40a,40bの最外面と同じ、または、最外面よりも高い位置となるように構成されているとよい。この場合、蛍光体層40a,40bが遮光面52aで仕切られるため、隣接するLEDチップに向かって蛍光体層内を導波する光は遮光される。
【0053】
次に、本実施の形態に係る発光モジュールにおいては、光の取り出し効率を更に向上するために、LEDチップの周囲に拡散部を設けている。
図8に示す発光モジュール54は、矩形のLEDチップの一つの側面が拡散部で封止されている。
図8(a)は、発光モジュール54の上面図、
図8(b)は、
図8(a)のA−A断面図、
図8(c)は、
図8(a)のB−B断面図である。
【0054】
図8(a)〜
図8(c)に示すように、拡散部56は、LEDチップ36bの一つの側面36b2を封止している。側面36b2は、LEDチップ36bの4つの側面のうち、隣接するLEDチップ36aが存在していない側の側面の一つである。また、拡散部56は、蛍光体層40bの一つの側面40b1を封止している。側面40b1は、隣接するLEDチップ36aが存在していない側の側面の一つである。拡散部56は、同様にLEDチップ36aおよび蛍光体層40aの側面の一部を封止している。
【0055】
このように、発光モジュール54において、拡散部56は、LEDチップや蛍光体層の、隣接するLEDチップが存在していない側の側面の少なくとも一部を封止し、一方向から入射した光を複数の方向へ反射するように構成されている。LEDチップ36の側面または蛍光体層40の側面から拡散部56へ出射する光は、拡散部56内で複数の方向へ反射された後に、再度LEDチップ36の側面または蛍光体層40へ入射される。拡散部56の作用で光の反射角度が変えられたことで、本来は空気と蛍光体層との界面で全反射して消失する光を空気中へ取り出すことができる。これにより、反射した光が発光モジュール54内に閉じ込められることが抑制される。また、発光モジュール54は、遮光部52によって、例えば、点灯したLEDチップ36aの照射対象領域と消灯したLEDチップ36bの照射対象領域の境界を明確にすることが可能となる。
【0056】
次に、発光モジュール54の変形例について説明する。
図9に示す発光モジュール58は、矩形のLEDチップの対向する2つの側面が拡散部で封止されている。
図9(a)は、発光モジュール58の上面図、
図9(b)は、
図9(a)のA’−A’断面図、
図9(c)は、
図9(a)のB’−B’断面図である。
【0057】
図9(a)〜
図9(c)に示すように、拡散部56aは、LEDチップ36bの一つの側面36b2を封止している。側面36b2は、LEDチップ36bの4つの側面のうち、隣接するLEDチップ36aが存在していない側の側面の一つである。また、拡散部56aは、蛍光体層40bの一つの側面40b1を封止している。側面40b1は、隣接するLEDチップ36aが存在していない側の側面の一つである。
【0058】
拡散部56bは、LEDチップ36bの一つの側面36b3を封止している。側面36b3は、LEDチップ36bの4つの側面のうち、隣接するLEDチップ36aが存在していない側の側面の一つである。また、拡散部56bは、蛍光体層40bの一つの側面40b2を封止している。側面40b2は、隣接するLEDチップ36aが存在していない側の側面の一つである。矩形のLEDチップ36bの2つの側面36b2,36b3は、4つの側面のうち対向する2つの側面である。また、矩形の蛍光体層40bの2つの側面40b1,40b2は、4つの側面のうち対向する2つの側面である。
【0059】
同様に、拡散部56a,56bは、LEDチップ36aおよび蛍光体層40aの側面の一部を封止している。
【0060】
このように、発光モジュール58において、拡散部56a,56bは、LEDチップや蛍光体層の、隣接するLEDチップが存在していない側の側面の少なくとも一部を封止し、一方向から入射した光を複数の方向へ反射するように構成されている。これにより、反射した光が発光モジュール58内に閉じ込められることが抑制される。また、発光モジュール58は、遮光部52によって、例えば、点灯したLEDチップ36aの照射対象領域と消灯したLEDチップ36bの照射対象領域の境界を明確にすることが可能となる。
【0061】
図10は、拡散部の有無による光取り出し効果の比較を示す図である。
図10に示すように、拡散部が存在することにより、発光モジュールにおける光取り出しの効率が向上していることがわかる。また、拡散部が封止する側面が二辺の場合の方が、一辺の場合よりも光取りだし効率が向上している。
【0062】
以下、上述の知見を参照しながら、比較例および実施例について説明する。なお、上述の実施の形態や、各比較例および各実施例と同様の構成については同じ符号を付して説明を適宜説明する。また、各比較例および実施例において、LEDチップの数が3個の発光モジュールについて説明するが、LEDチップの数は複数であれば3個に限られない。なお、比較例、実施例の特徴的な構成は、以下の表1〜表4に列挙する。
【0067】
表1〜表4に示す、遮光枠の垂直方向が「チップ+蛍光体」とは、基板から垂直方向に向けて蛍光体層の側面まで遮光枠が延びている状態をいう。また、遮光枠の垂直方向が「チップ」とは、基板から垂直方向に向けてLEDチップの側面まで遮光枠が延びている状態をいう。遮光枠の水平方向が「チップ間」とは、LEDチップ間であって、基板表面に対して水平方向に遮光枠が延びている状態をいう。遮光枠の水平方向が「それ以外」とは、LEDチップ間以外(例えば、LEDチップアレイの周囲)であって、基板表面に対して水平方向に遮光枠が延びている状態をいう。遮光枠の形状が「垂直」とは、遮光枠の側面がLEDチップの主発光面に対して垂直となっている状態をいい、遮光枠の形状が「テーパ」とは、遮光枠の断面形状が基板側に近付くに従って広がっている状態をいう。つまり、遮光枠の側面がLEDチップの主発光面に対して斜めとなっている状態をいう。
【0068】
表1〜表4に示す、発光モジュールの遮光が「×」とは、一つのLEDチップが照射する光が、隣接するLEDチップの照射領域に漏れ出ることを防止できない場合をいい、遮光が「○」とは、一つのLEDチップが照射する光が、隣接するLEDチップの照射領域に漏れ出ることを十分抑制できる場合をいう。
【0069】
また、表1〜表4に示す、発光モジュールの輝度ムラが「○」とは、LEDチップ間の相対輝度が所定の値以上であり、輝度ムラが余り認識されない場合をいい、輝度ムラが「△」とは、LEDチップ間の相対輝度の低下が所定の値未満であり、輝度ムラが認識されうる場合をいう。
【0070】
[比較例1]
図11(a)は、比較例1に係る発光モジュール60の断面図、
図11(b)は、比較例1に係る発光モジュール60の上面図である。
【0071】
発光モジュール60は、3つのLEDチップ36が基板34上に一列に搭載されている。各LEDチップ36の主発光面には蛍光体層40がそれぞれ積層されている。発光モジュール60は、前述した遮光部52や拡散部56を備えていない。そのため、発光モジュール60においては、一つのLEDチップ36が照射する光が、隣接するLEDチップ36の照射領域に漏れ出ることを防止できない。なお、比較例1に係る発光モジュール60において取り出される光の効率を1.00とし、以下の他の比較例や実施例の光取り出し効率を相対値で表す。
【0072】
[実施例1]
図12(a)は、実施例1に係る発光モジュール62の断面図、
図12(b)は、実施例1に係る発光モジュール62の上面図である。
【0073】
発光モジュール62は、3つのLEDチップ36が基板34上に一列に搭載されている。各LEDチップ36の主発光面には蛍光体層40がそれぞれ積層されている。発光モジュール62は、前述した遮光部50を備えている。そのため、発光モジュール62においては、一つのLEDチップ36が照射する光が、隣接するLEDチップ36の照射領域に漏れ出ることを防止できる。
【0074】
一方、発光モジュールの輝度ムラについては、
図6に示したように、LEDチップ間における輝度の低下が比較的大きく、LEDチップ間の相対輝度は0.35まで低下している。また、光取り出し効率についても、遮光枠の側面の形状が光の反射に適していないため、0.85まで低下している。
【0075】
[実施例2]
図13(a)は、実施例2に係る発光モジュール64の断面図、
図13(b)は、実施例2に係る発光モジュール64の上面図である。
【0076】
発光モジュール64は、発光モジュール62と比較して、遮光部52の形状が異なる。発光モジュール64においては、遮光部52の上部の遮光面52aがLEDチップ36の主発光面36a1,36b1に対して斜めとなるように構成されている。これにより、主発光面36a1,36b1から斜めに出射した光のうち、遮光面52aに入射した光が出射方向へ反射されるため、LEDチップ間における輝度の低下が抑制される。また、光取り出し効率についても、遮光部52の遮光面52aの形状が光の反射に適しているため、遮光部を備えていない比較例1と同様の結果である。
【0077】
[実施例3]
図14(a)は、実施例3に係る発光モジュール66の断面図、
図14(b)は、実施例3に係る発光モジュール66の上面図である。
【0078】
発光モジュール66は、発光モジュール64と比較して、遮光部68が存在する領域が異なる。発光モジュール66において、遮光部68は、LEDチップ36同士の間、および、発光モジュール66の長手方向の両端部に設けられており、発光モジュール66の短手方向の両端部には設けられていない。このような構成の発光モジュール66も、表1に示すように、実施例2に係る発光モジュール64と同等の性能を発揮している。また、他のLEDチップと隣接しない面には遮光部68が存在しないため、拡散部56を注入し易くなり、加工費の低減が図れる。
【0079】
[実施例4]
図15(a)は、実施例4に係る発光モジュール70の断面図、
図15(b)は、実施例4に係る発光モジュール70の上面図である。
【0080】
発光モジュール70は、発光モジュール64と比較して、LEDチップ36およびLEDチップ36に対向する蛍光体層40の、隣接するLEDチップが存在していない側の側面72,74と、遮光部76との間が離れている点が大きく異なる。これにより、遮光部自体の強度が向上し、遮光部を一度の操作で実装できる。よって、発光モジュールの生産性の向上が可能となる。発光モジュール70は、表2に示すように、遮光性能、輝度ムラ、光取り出し効率のいずれも所望の性能を満たすものであった。
【0081】
[実施例5〜7]
次に、拡散部を備えた発光モジュールについて説明する。実施例5〜7に係る発光モジュールは、実施例4に係る発光モジュールにおいて、側面72,74と遮光部76との間の空間に拡散部78(
図15(b)参照)を備えている点が大きく異なる。拡散部78は、光透過性の樹脂組成物と、該樹脂組成物に分散された反射体とを有しており、LEDチップ36の側面や底面、および、蛍光体層40の側面を封止している。また、実施例5〜7に係る発光モジュールは、側面72,74と遮光部76との間の空間から樹脂組成物を注入できるため、製造工程や製造装置の簡素化に寄与する。
【0082】
拡散部78における反射体の体積濃度は、例えば、5〜20%程度である。これにより、樹脂成分による封止と反射体による拡散とを高いレベルで両立できる。反射体としては、例えば、酸化チタンの粒子などが好適である。
【0083】
図16は、拡散部に充填される、反射体を含有した樹脂材料の反射率の変化を、樹脂材料の種類毎に示したグラフである。グラフの横軸は入射させる光の波長[nm]、縦軸は反射率[%]を示している。なお、反射率の測定は、樹脂材料の厚みを100μmとして行っている。
【0084】
実施例5に係る発光モジュールは、波長450nmの光に対する反射率が40%程度の拡散部を備えている。また、実施例6に係る発光モジュールは、波長450nmの光に対する反射率が55%程度の拡散部を備えている。また、実施例7に係る発光モジュールは、波長450nmの光に対する反射率が74%程度の拡散部を備えている。これにより、実施例5〜7に係る発光モジュールは、拡散部に到達した光の多くを拡散でき、光取り出し効率が1.00以上となっている。特に、反射率が50%以上の拡散部を備えている実施例6,7に係る発光モジュールの光取り出し効率は、1.09〜1.10程度と大きく向上している。
【0085】
[実施例8,9]
図17(a)は、実施例8に係る発光モジュール80の断面図、
図17(b)は、実施例8に係る発光モジュール80の上面図である。
図18(a)は、実施例9に係る発光モジュール84の断面図、
図18(b)は、実施例9に係る発光モジュール84の上面図である。なお、以下に説明する実施例8〜14、比較例2に係る発光モジュールにおいては、拡散部には、反射率96%以上の材料を用いている。
【0086】
実施例8,9に係る発光モジュール80,84は、実施例4〜7に係る発光モジュールと比較して、遮光部81,85の形状が異なり、拡散部82や拡散部86の配置が異なる。発光モジュール80においては、拡散部82は、
図17(b)に示すように、LEDチップ36や蛍光体層40の、隣接するLEDチップが存在していない側の側面74のみを封止するように配置されている。また、発光モジュール84においては、拡散部86は、
図18(b)に示すように、LEDチップ36や蛍光体層40の、隣接するLEDチップが存在していない側の側面72のみを封止するように配置されている。実施例8,9に係る発光モジュール80,84の光取り出し効率は、いずれも1.10程度と大きく向上している。また、拡散部82,84が片側に配置されているため、生産性に優れている。
【0087】
[実施例10]
図19(a)は、実施例10に係る発光モジュール88の断面図、
図19(b)は、実施例10に係る発光モジュール88の上面図である。
【0088】
実施例10に係る発光モジュール88は、実施例4に係る発光モジュール70と比較して、遮光部90の形状が一部異なる。また、蛍光体層40の側面のうち、発光モジュール88の長手方向に位置する側面40cには、反射膜92が形成されている。反射膜92は、例えば、金属膜が好適である。これにより、実施例10に係る発光モジュール88の光取り出し効率は、1.16程度と更に大きく向上している。また、発光モジュール88は、更に反射膜92を備えることでLEDチップ間の非発光部を最小にできるため、輝度ムラの点でも優れた性能を発揮する。
【0089】
[比較例2]
図20(a)は、比較例2に係る発光モジュール94の断面図、
図20(b)は、比較例2に係る発光モジュール94の上面図である。
【0090】
比較例2に係る発光モジュール94は、遮光部を備えておらず、LEDチップ36および蛍光体層40の4つの側面を拡散部96で封止している。これにより、比較例2に係る発光モジュール94の光取り出し効率は、1.15程度と大きく向上しているものの、遮光が十分ではない。
【0091】
[実施例11]
図21(a)は、実施例11に係る発光モジュール98の断面図、
図21(b)は、実施例11に係る発光モジュール98の上面図である。
【0092】
実施例11に係る発光モジュール98は、実施例4〜7に係る発光モジュールと比較して、遮光部の一部の形状が異なる。具体的には、遮光部100は、
図21(b)に示すように、下側が開放した形状となっている。実施例11に係る発光モジュール98の光取り出し効率は、1.10程度と大きく向上している。また、発光モジュール98の、
図21(b)に示す下側を開放する形状とすることで、遮光部100の強度向上、搭載精度向上、注入時間短縮による生産性向上が可能となる。
【0093】
[実施例12]
図22(a)は、実施例12に係る発光モジュール102の断面図、
図22(b)は、実施例12に係る発光モジュール102の上面図である。
【0094】
実施例12に係る発光モジュール102は、実施例4〜7に係る発光モジュールと比較して、遮光部の一部の形状が異なる。具体的には、遮光部104は、
図22(b)に示すように、ライン状に4箇所配置されており、上側および下側が開放した形状となっている。実施例12に係る発光モジュール102の光取り出し効率は、1.10程度と大きく向上している。
【0095】
[実施例13]
図23(a)は、実施例13に係る発光モジュール106の断面図、
図23(b)は、実施例13に係る発光モジュール106の上面図である。
【0096】
実施例13に係る発光モジュール106は、実施例9に係る発光モジュール84と比較して、遮光部と基板とが一体となっている点が大きく異なる。具体的には、発光モジュール106において、基板108の一部を加工して遮光部110を形成している。これにより、高い位置決め精度が必要な基板と遮光部との位置合わせの工程が必要なくなり、部品点数も削減できる。
【0097】
[実施例14]
図24(a)は、実施例14に係る発光モジュール112の断面図、
図24(b)は、実施例14に係る発光モジュール112の上面図である。
【0098】
実施例14に係る発光モジュール112は、実施例10に係る発光モジュール88と比較して、遮光部を備えず、LEDチップ36の全ての側面が拡散部114で覆われている点が大きく異なる。発光モジュール112は、蛍光体層40の側面のうち、発光モジュール112の長手方向に位置する側面40cには、反射膜92が形成されている。これにより、実施例14に係る発光モジュール112の光取り出し効率は、1.16程度と更に大きく向上している。
【0099】
なお、上述の各実施例に係る拡散部は、LEDチップ36の主発光面と反対側の底面の少なくとも一部を封止している。これにより、拡散部は、底面に向かった光も拡散できるため、反射した光が発光モジュール内に閉じ込められることが更に抑制される。
【0100】
なお、本実施の形態においては、車両用灯具としての車両用前照灯装置は、発光モジュールが備える複数のLEDチップを個別に調光制御する制御回路を備えている。また、制御回路は、発光モジュールが備える複数のLEDチップを複数のグループに分けた場合にグループ毎に調光制御するものであってもよい。このような車両用前照灯装置は、前述の発光モジュールを備えることで、所望の配光特性を高い精度で実現することができる。
【0101】
以上、本発明を実施の形態や各実施例をもとに説明した。この実施の形態や実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。