特許第6052982号(P6052982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052982
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20161219BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20161219BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20161219BHJP
   C04B 22/04 20060101ALI20161219BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20161219BHJP
   C04B 103/40 20060101ALN20161219BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 H
   C04B24/38 Z
   C04B22/04
   C08F220/06
   C04B103:40
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-267364(P2012-267364)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-114174(P2014-114174A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】谷所 美明
(72)【発明者】
【氏名】寺井 久登
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−157898(JP,A)
【文献】 特開2011−195402(JP,A)
【文献】 特開2001−316151(JP,A)
【文献】 特開2011−195403(JP,A)
【文献】 特開2004−149362(JP,A)
【文献】 特開2002−160954(JP,A)
【文献】 特開2001−294462(JP,A)
【文献】 特開平09−071450(JP,A)
【文献】 特開2012−136389(JP,A)
【文献】 特開平11−001355(JP,A)
【文献】 特許第2774445(JP,B2)
【文献】 特開2001−038715(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01655272(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤(A)と、分散剤(B)と、多糖誘導体と、アルミニウム粉末と、水硬性粉体と、水と、骨材とを含有し、
分散剤(A)を、水硬性粉体100質量部に対して、0.09質量部以上0.40質量部以下含有し、
分散剤(A)と分散剤(B)の質量比、分散剤(A)/分散剤(B)が、30/70以上90/10以下であり、
分散剤(A)が、下記一般式(a1)で表される単量体(a1)由来の構成単位と下記一般式(a2)で表される単量体(a2)由来の構成単位を含み、単量体(a1)と単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)が1/99以上30/70以下である共重合体であり、
分散剤(B)が、下記一般式(b1)で表される単量体(b1)由来の構成単位と下記一般式(b2)で表される単量体(b2)由来の構成単位とを含み、単量体(b1)と単量体(b2)のモル比(b1)/(b2)が30/70を超え50/50以下である共重合体であり、
多糖誘導体が、多糖類又はそのアルキル化誘導体若しくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8以上40以下の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基及びスルホン酸基の塩からなる群から選ばれる一種以上の基を部分構造として有するイオン性親水性基と、で置換されてなる多糖誘導体であり、
多糖誘導体を、水硬性粉体100質量部に対して、0.0010質量部以上0.0200質量部以下含有し、
アルミニウム粉末を、10g/m以上100g/m以下含有する、
水硬性組成物。
【化1】

〔式中、
1a、R2a:水素原子又はメチル基
m1:0以上2以下の数
O:炭素数2又は炭素数3のアルキレンオキシ基
n1:平均付加モル数であり、100以上300以下の数
:水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
3a、R4a、R5a:水素原子、メチル基又は(CHm2COOM
、M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウム
m2:0以上2以下の数
を示す。〕
【化2】

〔式中、
1b、R2b:水素原子又はメチル基
m3:0以上2以下の数
O:炭素数2又は炭素数3のアルキレンオキシ基
n2:平均付加モル数であり、100以上300以下の数
:水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
3b、R4、R5b:水素原子、メチル基又は(CHm4COOM
、M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウム
m4:0以上2以下の数
を示す。〕
【請求項2】
請求項に記載の水硬性組成物を、トンネル内に配設された覆工用型枠に打設する、トンネルの覆工方法。
【請求項3】
水硬性組成物のスランプフロー値が550mm以上700mm以下である請求項に記載のトンネル覆工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にトンネル覆工用に用いる水硬性組成物に関する物であり、作業性、施工性に優れ、且つ地山、或いは一次覆工コンクリートとの優れた一体性をも期待できる水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工法等のトンネル工法において、掘削したトンネルの内周面の地山を覆って構築されるトンネル覆工コンクリートを形成するための方法として、コンクリート覆工用型枠を用いる工法が一般的に採用されている。コンクリート覆工用型枠は、例えば馬蹄形等のアーチ形状部分を含む形状のトンネルの内周面に沿って、トンネルの側壁部から上部に亘って設置されるものであり、設置されたコンクリート覆工用型枠と、トンネルの内周面の吹き付けコンクリートによって覆われる地山との間の空間部にコンクリートを打設して硬化させることにより、トンネル底部のインバート部のコンクリートと連続させるようにして、覆工コンクリートが形成される。
【0003】
トンネル覆工は、巻圧が30〜40cm程度と比較的狭く、且つ広い空間にコンクリートを充填、締固めなければならないケースが殆どである。そこで、締固め不足や未充填といった初期欠陥の発生を抑制する為に、従来のスランプが15cm程度のコンクリートからスランプフロー値が350〜500mm程度の流動性の高いコンクリートを用いて覆工を行う技術が開発されている(非特許文献1)。また、高流動コンクリートを用いたトンネル急速覆工工法が非特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献1には、硬化後の収縮を補償し、精度の高い逆打ち工法を達成するために、スランプフロー値を550〜600mmに設定し、収縮低減剤、増粘剤、アルミニウム粉末を含有するコンクリートで膨張率1.5%を得るコンクリート組成物の製造方法が開示されている。特許文献2には、多様な配合系においても、高流動コンクリートの流動性を安定させ、且つ分離抵抗性を適正化ないし安定化するために、ポリカルボン酸系分散剤と、オクタデシル基と3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基で一部の水酸基の水素原子が置換されたヒドロキシエチルセルロースを含有し、スランプフロー値が660mmで、硬化時間が5時間以上7時間未満と硬化遅延を起さないコンクリートが実施例2〜9に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−38715号公報
【特許文献2】特開2002−160954号公報
【非特許文献】
【0006】

【非特許文献1】東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)、“建設技術の紹介 トンネル覆工コンクリート”、[online]、2010年11月11日掲載、[2012年9月28日検索]、インターネット<URL:http://www.e-nexco.co.jp/dotodo/construction/concret/index.html>
【非特許文献2】株式会社鴻池組、“トンネル急速覆工 K-NTL工法”、[online]、[2012年9月28日検索]、インターネット<URL:http://www.konoike.co.jp/solution/detail/000409.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トンネルの地山の壁と型枠の間を埋めることを目的として、コンクリートの流動性を高めるには建物の基礎などのコンクリートより多い分散剤が必要となる。また、単に従来コンクリートの流動性を高めただけでは、骨材分離が生じる事から、トンネル覆工用のコンクリートには一般に分離防止の観点より増粘剤が併用される。しかしながら、比較的多い分散剤及び一般的な増粘剤を使用するとコンクリートの凝結遅延を招きやすい。分散剤や増粘剤の種類によっては過剰な流動保持性の付与や凝結遅延が原因で施工終了後も流動性が低下せず型枠の隙間等からコンクリートが漏れ出る事もある。なお、トンネル覆工用のコンクリートには、地山とコンクリートの一体化を目的に膨張剤を用いることが望ましい。
【0008】
特許文献1では、逆打ち(逆巻き)コンクリート工法における打ち継ぎ部を、直接的に施工して一体化させるために、分散剤(AE減水剤)と増粘剤とアルミニウム粉末系の膨張剤が使われている。しかし、特許文献1では収縮低減剤が多く配合されており、トンネル覆工用のコンクリートの場合は、凝結遅延のために、施工終了後も流動性が高く、型枠の隙間等からコンクリートが漏れ出る事が懸念される。
【0009】
本発明は、混練直後の流動性、分離抵抗性と膨張性に優れ、凝結遅延が少ない水硬性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分散剤(A)と、多糖誘導体と、アルミニウム粉末と、水硬性粉体と、水と、骨材とを含有し、
分散剤(A)を、水硬性粉体100質量部に対して、0.09質量部以上0.40質量部以下含有し、
分散剤(A)が、下記一般式(a1)で表される単量体(a1)由来の構成単位と下記一般式(a2)で表される単量体(a2)由来の構成単位を含み、単量体(a1)と単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)が1/99以上30/70以下である共重合体であり、
多糖誘導体が、多糖類又はそのアルキル化誘導体若しくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8以上40以下の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基及びスルホン酸基の塩からなる群から選ばれる一種以上の基を部分構造として有するイオン性親水性基と、で置換されてなる多糖誘導体である、
水硬性組成物に関する。
【0011】
【化1】
【0012】
〔式中、
1a、R2a:水素原子又はメチル基
m1:0以上2以下の数
1O:炭素数2又は炭素数3のアルキレンオキシ基
n1:平均付加モル数であり、100以上300以下の数
1:水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
3a、R4a、R5a:水素原子、メチル基又は(CH2m2COOM2
1、M2:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウム
m2:0以上2以下の数
を示す。〕
【0013】
また、本発明は、上記本発明の水硬性組成物を、トンネル内に配設された覆工用型枠に打設する、トンネルの覆工方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、混練直後の流動性、分離抵抗性と膨張性に優れ、凝結遅延が少ない水硬性組成物が提供される。本発明により、トンネル覆工用として好適な水硬性組成物が提供される。本発明の水硬性組成物は、コンクリートの分離が抑制され、混練後120分後の流動性が低く、膨張材として機能するアルミニウム粉末の効果を有効に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、分散剤(A)及び多糖誘導体を組み合わせ、分散剤(A)を水硬性粉体に対して一定量の範囲で使用することで、水硬性組成物の混練直後の流動性、分離抵抗性を制御しつつ、水硬性粉体の水和抑制も最小限にでき、アルミニウム粉末による膨張作用を有効に発揮することを見いだした。この知見に基づき、作業性、施工性に優れた水硬性組成物を得たものである。更には、本発明の水硬性組成物は、地山、或いは一次覆工コンクリートとの優れた一体性をも期待できる。
【0016】
<分散剤(A)>
分散剤(A)は、前記一般式(a1)で表される単量体(a1)由来の構成単位と前記一般式(a2)で表される単量体(a2)由来の構成単位を含み、単量体(a1)と単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)が1/99以上30/70以下である共重合体〔以下、共重合体(A)という〕からなる。
【0017】
一般式(a1)中、R1a、R2aは、それぞれ、水素原子又はメチル基である。R1aは水素原子が好ましい。R2aはメチル基が好ましい。m1は0以上2以下の数であり、0が好ましい。A1Oは炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基であり、炭素数2のアルキレンオキシ基が好ましい。n1は、A1Oの平均付加モル数であり、100以上300以下の数である。n1は、水硬性組成物の凝結遅延を抑制する観点から、105以上が好ましく、110以上がより好ましく、共重合の容易性の観点から、200以下が好ましく、150以下がより好ましい。X1は、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、水硬性組成物の分散性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0018】
単量体(a1)としては、(1)メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸から選ばれるカルボン酸とのエステル化物、(2)アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸から選ばれるカルボン酸へのエチレンオキシド(以下、EOと表記する)及び/又はプロピレンオキシド(以下、POと表記する)付加物が挙げられる。単量体(a1)は、水硬性組成物の分散性の観点から、メトキシポリエチレングリコールとアクリル酸又はメタリル酸とのエステル化物が好ましい。
【0019】
一般式(a2)中、R3a、R4a、R5aは、それぞれ、水素原子、メチル基又は(CH2m2COOM2である。R3a、R5aは、それぞれ、水素原子が好ましい。R4aは、メチル基が好ましい。M1、M2は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムである。M1、M2は、それぞれ、アルカリ金属及び水素原子が好ましい。
【0020】
単量体(a2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、及びこれらの無水物もしくは塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2以上8以下)アンモニウム塩が挙げられる。好ましくはアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、並びに無水マレイン酸から選ばれる単量体であり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる単量体である。
【0021】
共重合体(A)は、単量体(a1)と単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)が1/99以上30/70以下である。モル比(a1)/(a2)は、水硬性組成物の分散性の観点から、10/90以上が好ましく、15/85以上がより好ましく、そして、25/75以下が好ましい。
【0022】
共重合体(A)中、単量体(a1)と単量体(a2)の合計量は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、実質100質量%がより更に好ましい。
【0023】
共重合体(A)の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレングリコール換算)は、水硬性組成物の分散性の観点から、20000以上が好ましく、30000以上がより好ましく、40000以上が更に好ましく、そして、150000以下が好ましく、100000以下がより好ましい。
【0024】
共重合体(A)は、例えば反応容器に水を仕込み昇温し、その中で単量体(a1)と単量体(a2)とを連鎖移動剤等の存在下、所定のモル比(a1)/(a2)で反応させ、熟成後、中和することにより製造することができる。
【0025】
<多糖誘導体>
本発明で使用される多糖誘導体は、多糖類又はそのアルキル化若しくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8以上40以下の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基〔以下、疎水性置換基という〕と、スルホン酸基及びスルホン酸基の塩からなる群から選ばれる一種以上の基を部分構造として有するイオン性親水性基〔以下、イオン性親水性置換基という〕で置換されてなる。
【0026】
疎水性置換基は、炭素数8以上40以下の炭化水素鎖を部分構造として有する。具体的には、後述の(i)〜(v)から選ばれる疎水性置換基が挙げられる。(i)〜(v)において、部分構造として有する炭化水素鎖(アルキル基、アルケニル等)は、炭素数は8以上であり、12以上が好ましく、16以上がより好ましい。そして、40以下であり、36以下が好ましく、24以下がより好ましい。
(i)直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル基、
(ii)直鎖又は分岐鎖のアルケニル基を有するアルケニルグリセリルエーテル基、
(iii)ヒドロキシル基が置換されていてもよく、オキシカルボニル基が挿入されていてもよい、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、
(iv)ヒドロキシル基が置換されていてもよく、オキシカルボニル基が挿入されていてもよい、直鎖又は分岐鎖のアルケニル基、並びに、
(v)ヒドロキシル基が置換されていてもよく、オキシカルボニル基が挿入されていてもよい、直鎖又は分岐鎖のアシル基
【0027】
製造上の容易性の観点から、(i)のアルキルグリセリルエーテル基、(iii)のうち直鎖又は分岐鎖の無置換のアルキル基及び(iii)のうち直鎖又は分岐鎖の2−ヒドロキシアルキル基から選ばれる疎水性置換基が好ましく、(i)の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル基がより好ましい。
【0028】
ここでアルキルグリセリルエーテル基とは、アルキルグリセリルエーテルの水酸基を1個除いた残余の部分の構造をいう。アルキルグリセリルエーテル基としてより具体的には、ステアリルグリセリルエーテル基、2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル基、2−アルコキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基、2−ヒドロキシ−3−アルケニルオキシプロピル基、2−アルケニルオキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基が挙げられ、ステアリルグリセリルエーテル基が好ましい。
【0029】
これらの疎水性置換基は、多糖分子に結合しているヒドロキシエチル基やヒドロキシプロピル基の水酸基の水素原子と置換していてもよい。
【0030】
イオン性親水性置換基は、スルホン酸基及びスルホン酸基の塩からなる群から選ばれる一種以上の基を部分構造として有する置換基である。具体的には、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1以上、5以下のスルホアルキル基又はその塩が挙げられる。より具体的には、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基などが挙げられ、その全てあるいは一部がナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属類、アミン類などの有機カチオン基、アンモニウムイオンなどと塩を形成してもよい。イオン性親水性置換基は、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基が好ましい。
【0031】
水硬性組成物に優れた分離抵抗性と共に流動性を与えることができる観点から、多糖誘導体は、疎水性置換基による置換度は、構成単糖残基1単位あたり、0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.001以上が更に好ましく、そして、1以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。またイオン性親水性置換基による置換度は、構成単糖残基1単位あたり、0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上が更に好ましい。そして、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.20以下が更に好ましい。
【0032】
本発明に係る多糖類としては、セルロース;スターチ;コンニャクマンナン、トロロアオイ粘着物等の根茎多糖類;アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム等の樹液多糖類;ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム等の種子多糖類;寒天、カラギーナン、アルギン等の海草多糖類;キチン、キトサンヘパリン、コンドロイチン硫酸等の動物性多糖類;デキストラン、キサンタンガム等の微生物多糖類から選ばれる多糖類が挙げられる。多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられ、なかでもセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等セルロース及びその誘導体が好ましい。また、これら多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体において、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等の置換基は、単一の置換基で置換されたものでもよいし、複数の置換基で置換されたものでもよい。また、多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体において、その構成単糖残基当たりの置換度は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、そして、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。また置換基がアルキレンオキシ基の場合には、置換度、即ちその構成単糖残基当たりの付加モル数は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、そして、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。また、これらの多糖類又はその誘導体の重量平均分子量は、1万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、そして、1000万以下が好ましく、500万以下がより好ましい。
【0033】
本発明に係る多糖誘導体の重量平均分子量は、1万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、そして、1000万以下が好ましく、500万以下がより好ましい。
【0034】
本発明に係る多糖誘導体は、多糖類又はそのアルキル化若しくはヒドロキシアルキル化誘導体の水酸基の水素原子を部分的に疎水化(疎水性置換基の導入)又は親水化(イオン性親水性置換基の導入)した後、残りの水酸基の一部又は全部の水素をそれぞれ親水化又は疎水化することにより、又は疎水化及び親水化を同時に行うことにより得られる。
【0035】
置換基の導入は、一例として次のようにして行うことができる。すなわち、多糖類又はその誘導体を、アルカリの存在下で、アルキル基もしくはアルケニル基の炭素数が8以上、40以下のアルキルもしくはアルケニルグリシジルエーテル、炭素数が8以上、40以下の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和アルキルのエポキシド、炭素数が8以上、40以下の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和アルキルのハライド、炭素数が8以上、40以下の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和アルキルのハロヒドリン、炭素数が8以上、40以下の直鎖もしくは分岐鎖の飽和もしくは不飽和アルキルのアシルハライド、炭素数が8以上、40以下のアシル基を有するエステル、又は炭素数が8以上、40以下のアシル基を有するカルボン酸無水物と反応させることにより疎水性置換基を導入し、更にアルカリの存在下で、ビニルスルホン酸、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜5のハロアルカンスルホン酸、又はこれらの塩と反応させることにより行うことができる。
【0036】
<アルミニウム粉末>
本発明に係るアルミニウム粉末は、表面が処理された市販のアルミニウム粉末を使用できる。表面処理は、アスファルト、合成樹脂、油脂類、高級パラフィン炭化水素類、高級脂肪酸をアルミ粉末表面にコートすることや過酸化水素水で表面を酸化させることなどが挙げられる。アルミニウム粉末を水硬性組成物中に混練した後、2時間から4時間のあいだに水硬性組成物の膨張が始まるアルミニウム粉末を使用することが好ましい。
【0037】
<水硬性粉体>
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体は、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント、及びメーソンリーセメントから選ばれるセメントである。また、セメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。
【0038】
<骨材>
骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JIS A0203−2302で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JIS A0203−2303で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0039】
<水硬性組成物>
本発明の水硬性組成物は、分散剤(A)を、水硬性粉体100質量部に対して、0.09質量部以上0.40質量部以下含有する。水硬性組成物の膨張率を得る観点から、分散剤(A)の含有量は、水硬性粉体100質量部に対して、0.10質量部以上が好ましく、0.14質量部以上がより好ましく、そして、0.20質量部以下が好ましく、更に0.18質量部以下がより好ましく、更に0.17質量部以下が更に好ましい。
【0040】
本発明の水硬性組成物中の多糖誘導体の含有量は、水硬性粉体100質量部に対して、水硬性組成物の分離抵抗性を得る観点から、0.0010質量部以上が好ましく、0.0020質量部以上がより好ましく、そして、水硬性組成物の膨張率を得る観点と凝結遅延の抑制の観点から、0.0200質量部以下が好ましく、0.0160質量部以下がより好ましく、0.0100質量部以下が更に好ましく、0.0050質量部以下がより更に好ましく、0.0030質量部以下がより更に好ましい。
【0041】
本発明の水硬性組成物中のアルミニウム粉末の含有量は、水硬性組成物の膨張率を得る観点から、水硬性組成物の体積あたり10g/m3以上が好ましく、20g/m3以上がより好ましく、30g/m3以上が更に好ましく、45g/m3以上がより更に好ましく、55g/m3以上がより更に好ましく、そして、200g/m3以下が好ましく、100g/m3以下がより好ましい。
【0042】
本発明の水硬性組成物中の水硬性粉体の含有量は、水硬性組成物の分離抵抗性と硬化後の強度の観点から、水硬性組成物の体積あたり350kg/m3以上が好ましく、380kg/m3以上がより好ましく、そして、水硬性組成物の水和熱によるひび割れを抑制する観点から、450kg/m3以下が好ましく、430kg/m3以下がより好ましい。
【0043】
本発明の水硬性組成物の水(W)と水硬性粉体(C)の質量比〔W/C×100(%)〕は、水硬性組成物の流動性の観点から、40%以上が好ましく、42%以上がより好ましく、そして、水硬性組成物の硬化後の強度の観点から、50%以下が好ましく、48%以下がより好ましい。
【0044】
本発明の水硬性組成物中の骨材の含有量は、水硬性組成物の分離抵抗性と作業性の観点から、水硬性組成物の体積あたり1700kg/m3以上が好ましく、1720kg/m3以上がより好ましく、そして、1800kg/m3以下が好ましく、1760kg/m3以下がより好ましい。
【0045】
本発明の水硬性組成物中の骨材(a)中の細骨材(s)の容積比〔s/a×100(%)〕は、水硬性組成物の分離抵抗性と作業性の観点から、45%以上が好ましく、47%以上がより好ましく、そして、55%以下が好ましく、53%以下がより好ましい。
【0046】
本発明の水硬性組成物の調製直後の流動性は、水硬性組成物の型枠内への充填性の観点から、スランプフロー値が550mm以上が好ましく、600mm以上がより好ましく、そして、700mm以下が好ましく、650mm以下がより好ましい。ここで、スランプフロー値は、JIS A 1150 コンクリートのスランプフロー試験方法により測定されたものである。
【0047】
本発明の水硬性組成物の調製直後からの流動性は、水硬性組成物の運搬や打設等の作業性の観点から、60分間保持されることが好ましく、90分間保持されることがより好ましい。そして、水硬性組成物の調製直後からの流動性は、施工終了後に型枠の隙間等から漏れ出しを抑制する観点から、120分で低いことが好ましい。この流動性の保持の指標として、例えば、90分後と120分後での流動性の変化率を求める方法が挙げられる。
【0048】
調製直後から凝結開始まで、本発明の水硬性組成物中の空気量は、水硬性組成物の硬化後の凍結融解抵抗性の観点から、3.0%以上が好ましく、3.5%以上がより好ましく、そして、6.0%以下が好ましく、5.5%以下がより好ましい。
【0049】
本発明の水硬性組成物は、流動保持性の観点から、下記分散剤(B)を含有することが好ましい。
分散剤(B):下記一般式(b1)で表される単量体(b1)由来の構成単位と下記一般式(b2)で表される単量体(b2)由来の構成単位とを含み、単量体(b1)と単量体(b2)のモル比(b1)/(b2)が30/70を超え50/50以下である共重合体〔以下、共重合体(B)という〕。
【0050】
【化2】
【0051】
〔式中、
1b、R2b:水素原子又はメチル基
m3:0以上2以下の数
2O:炭素数2又は炭素数3のアルキレンオキシ基
n2:平均付加モル数であり、100以上300以下の数
2:水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
3b、R4b、R5b:水素原子、メチル基又は(CH2m4COOM4
3、M4:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウム
m4:0以上2以下の数
を示す〕
【0052】
一般式(b1)中、R1b、R2bは、それぞれ、水素原子又はメチル基である。R1bは水素原子が好ましい。R2bはメチル基が好ましい。m1は0以上2以下の数であり、0が好ましい。A2Oは炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基であり、炭素数2のアルキレンオキシ基が好ましい。n2は、A2Oの平均付加モル数であり、100以上300以下の数である。n2は、凝結遅延を抑制する観点から、105以上が好ましく、110以上がより好ましく、共重合の容易性の観点から、200以下が好ましく、150以下がより好ましい。X2は、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、水硬性組成物の流動保持性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0053】
単量体(b2)としては、(1)メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸から選ばれるカルボン酸とのエステル化物、(2)アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸から選ばれるカルボン酸へのEO及び/又はPO付加物が挙げられる。単量体(b1)は、メトキシポリエチレングリコールとアクリル酸又はメタリル酸とのエステル化物が好ましい。
【0054】
一般式(b1)中、R3b、R4b、R5bは、それぞれ、水素原子、メチル基又は(CH2m4COOM4である。R3b、R5bは、それぞれ、水素原子が好ましい。R4bは、メチル基が好ましい。M3、M4は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は置換アルキルアンモニウムである。M3、M4は、それぞれ、水素原子が好ましい。
【0055】
単量体(b2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、及びこれらの無水物もしくは塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2以上8以下)アンモニウム塩が挙げられる。好ましくはアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、並びに無水マレイン酸から選ばれる単量体であり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる単量体である。
【0056】
共重合体(B)は、単量体(b1)と単量体(b2)のモル比(b1)/(b2)が30/70を超え50/50以下である。モル比(b1)/(b2)は、水硬性組成物の流動保持性の観点から、32/68以上が好ましく、そして、40/60以下が好ましく、38/62以下がより好ましい。
【0057】
共重合体(B)中、単量体(b1)と単量体(b2)の合計量は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、実質100質量%がより更に好ましい。
【0058】
共重合体(B)の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレングリコール換算)は、水硬性組成物の流動保持性の観点から、20000以上が好ましく、30000以上がより好ましく、40000以上が更に好ましく、そして、150000以下が好ましく、100000以下がより好ましい。
【0059】
共重合体(B)は、例えば反応容器に水を仕込み昇温し、その中で単量体(b1)と単量体(b2)とを連鎖移動剤等の存在下、所定のモル比(b1)/(b2)で反応させ、熟成後、中和することにより製造することができる。
【0060】
分散剤(A)と分散剤(B)を併用する場合には、分散剤(A)と分散剤(B)の質量比、分散剤(A)/分散剤(B)は、水硬性組成物の凝結遅延を抑制する観点から、30/70以上が好ましく、50/50以上がより好ましく、60/40以上がより好ましく、65/35以上が更に好ましく、そして、流動保持性の観点から、90/10以下が好ましく、80/20以下がより好ましい。
【0061】
また、分散剤中の分散剤(A)と分散剤(B)の合計の含有量は、水硬性組成物の混練直後の流動性と凝結遅延の抑制の観点から、全分散剤中、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0062】
なお、本発明の水硬性組成物は、分散剤(A)及び分散剤(B)とは異なる分散剤〔以下、分散剤(C)という〕を、水硬性組成物の流動保持性の観点から、含有することもできるが、水硬性組成物の凝結遅延を抑制する観点から分散剤(C)は、分散剤(A)と分散剤(B)と分散剤(C)の合計中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。ここで、分散剤(C)としては、一般式(a1)中のn1が5以上100未満である以外は一般式(a1)と同じ構造の単量体(c1)由来の構成単位と前記一般式(a2)で表される単量体(a2)由来の構成単位を含み、単量体(c1)と単量体(a2)のモル比(c1)/(a2)が30/70以上60/40以下である共重合体が挙げられる。
【0063】
本発明の水硬性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有することもできる。例えば以下のものが挙げられる。
・AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルキルフェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルキルフェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルキルフェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
・起泡剤
・早強剤又は促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、水酸化カリウム、炭酸塩、蟻酸又はその塩等。
・防水剤:樹脂酸又はその塩、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
・消泡剤:ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等。
・防錆剤:亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等。
・水溶性高分子:分散剤(A)〜(C)及び多糖誘導体以外の水溶性高分子であり、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等。
【0064】
本発明の水硬性組成物は、水、水硬性粉体、分散剤(A)、多糖誘導体、アルミニウム粉末及び骨材をミキサー等で混合することにより調製することができる。水硬性組成物に配合される材料を均一になるよう混合する観点と適正な膨張率を得る観点から、予め水と分散剤(A)と多糖誘導体とを含む混練水を調製し、水硬性粉体と骨材をミキサーで混合した後に混練水をミキサー内に添加し、さらに混合した後、アルミニウム粉末をミキサー内に添加して、再び混合することが好ましい。例えば、コンクリート工場で水、水硬性粉体、骨材、分散剤(A)及び多糖誘導体とを混合した組成物を調製しておき、前記組成物を打設現場まで輸送し、打設現場で前記組成物にアルミニウム粉末を混合し、本発明の水硬性組成物を調製する方法が挙げられる。
【0065】
本発明の水硬性組成物は、トンネル覆工用、振動締固めが困難な箇所への空隙充填目的の打設(振動機が入らない箇所で、例えば、サンドイッチ構造やコンクリート充填鋼管柱等に適する)、工場製品等への用途に用いることができる。本発明の水硬性組成物はトンネル覆工用として好適である。
【0066】
本発明の水硬性組成物は、流動性、分離抵抗性と膨張性を有しており、作業性に優れ、凝結遅延が抑制されるため、養生時間を延長する事無く脱型することが可能となる。
【0067】
<トンネルの覆工方法>
本発明のトンネルの覆工方法は、本発明の水硬性組成物を、トンネル内に配設された覆工用型枠に打設する。例えば、トンネルを掘削後に補強された岩盤の内側に覆工用型枠をトンネル内に配設し、岩盤と覆工用型枠の間に本発明の水硬性組成物を充填し、例えば3〜4日養生後に型枠をはずす方法が挙げられる。本発明のトンネルの覆工方法では、スランプフロー値が550mm以上、更に600mm以上、そして、700mm以下、更に650mm以下の水硬性組成物を用いることが好ましい。ここで、スランプフロー値は、JIS A 1150 コンクリートのスランプフロー試験方法により測定されたものである。
【0068】
水硬性組成物の打設や充填の際、水硬性組成物の均一性の確保、初期欠陥の防止の観点から、バイブレータや木づちを使用して空気抜きを行うこともできる。
【実施例】
【0069】
〔1〕コンクリート配合
製造した水硬性組成物(コンクリート)の配合を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1中の使用材料は以下の通りである。
・水(W):水道水に分散剤及び多糖誘導体を添加した練り混ぜ水
・セメント(C):普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製普通ポルトランドセメントと、住友大阪セメント(株)製普通ポルトランドセメントとを、等量(質量比)混合したもの)、密度=3.16g/cm3
・細骨材1(S1):川砂(岐阜県 揖斐川産)、密度=2.61g/cm3
・細骨材2(S2):砕砂(兵庫県 西島産)、密度=2.54g/cm3
・細骨材3(S3):石灰砕砂(高知県 鳥形山産)、密度=2.65g/cm3
・粗骨材1(G1):石灰砕石2010(高知県 鳥形山産)、密度=2.72g/cm3
・細骨材2(G2):石灰砕石1005(高知県 鳥形山産)、密度=2.72g/cm3
【0072】
〔2〕分散剤、多糖誘導体、及びアルミニウム粉末
(2−1)分散剤
下記表2に用いた分散剤を示す。分散剤(A)、(B)、(C)は以下の通りである。
・分散剤(A):〔一般式(a1)において、R1aが水素原子、R2aがメチル基、m1が0、A1Oがエチレンオキシ基、n1が120、X1がメチル基の単量体〕と〔一般式(a2)において、R3a及びR5aが水素原子、R4aがメチル基、M1が水素原子の単量体〕の共重合体である分散剤A1、モル比(a1)/(a2)が20/80、重量平均分子量70,000
・分散剤(B):〔一般式(b1)において、R1bが水素原子、R2bがメチル基、m3が0、A2Oがエチレンオキシ基、n2が120、X2がメチル基の単量体〕と〔一般式(b2)において、R3b及びR5bが水素原子、R4bがメチル基、M3が水素原子の単量体〕の共重合体である分散剤B1、モル比(b1)/(b2)が35/65、重量平均分子量80,000
・分散剤(C):〔一般式(a1)において、R1aが水素原子、R2aがメチル基、m1が0、A1Oがエチレンオキシ基、n1が9、X1がメチル基の単量体〕と〔一般式(a2)において、R3a及びR5aが水素原子、R4aがメチル基、M1が水素原子の単量体〕の共重合体である分散剤C1、モル比(a1)/(a2)が53/47、重量平均分子量70,000
分散剤の重量平均分子量は以下の方法による。
【0073】
〔重量平均分子量の測定方法〕
使用カラム:東ソー(株)製
TSKguardcolumn PWxl
TSKgel G4000PWxl+G2500PWxl
溶離液:0.2mol/Lリン酸バッファー(伸陽化学工業(株)製)/高速液体クロマトグラフ用アセトニトリル(和光純薬工業(株)製)=9/1(vol%)
流速:1.0mL/min.
カラム温度:40℃
検出:RI
注入量:10μL(0.5質量%水溶液)
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)875000、540000、235000、145000、107000、24000
検量線次数:三次式
装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
ソフトウエア:EcoSEC-WS(東ソー(株)製)
【0074】
【表2】
【0075】
(2−2)多糖誘導体
多糖誘導体として、下記合成例により得られた多糖誘導体1を用いた。
<合成例>
(i)攪拌機、温度計及び冷却管を備えた1000mlのガラス製セパラブル反応容器に、重量平均分子量約80万、ヒドロキシエチル基の置換度1.8のヒドロキシエチルセルロース(HEC−QP4400、ユニオンカーバイド社製)50g、88質量%イソプロピルアルコール400g及び48質量%水酸化ナトリウム水溶液3.5gを加えてスラリー液を調製し、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。これにステアリルグリシジルエーテル4.0gを加え、80℃で7時間反応させて疎水化を行った。疎水化反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ別した。反応生成物を80質量%アセトン500gで2回、次いでアセトン500gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、疎水化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体49.4gを得た。
【0076】
(ii)攪拌機、温度計及び冷却管を備えた500mlのガラス製セパラブル反応容器に、(i)で得られた疎水化ヒドロキシエチルセルロース誘導体10.0g、イソプロピルアルコール80.0g及び48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.33gを仕込んでスラリー液を調製し、窒素気流下室温で30分間攪拌した。反応液に3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム6.4g、48質量%水酸化ナトリウム水溶液2.7g及び水20.0gからなる混合液を加え、50℃で9時間スルホン化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し生成物をろ別した。生成物を80質量%アセトン(水20質量%)500gで3回、次いでアセトン500gで2回洗浄後、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、ステアリルグリセリルエーテル基と3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基で置換されたヒドロキシエチルセルロース誘導体(多糖誘導体1)7.2gを得た。
【0077】
得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体(多糖誘導体1)のステアリルグリセリルエーテル基の置換度は0.008、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基の置換度は0.15であった。
【0078】
多糖誘導体1の疎水性置換基の置換度は、Zeisel法(D.G.Anderson,Anal.Chem.,43,894(1971))により定量した。また、イオン性親水性基の置換度はコロイド滴定法により求めた。すなわち濃度既知の多糖誘導体溶液を調製し、これに攪拌下、質量既知のN/200メチルグリコールキトサン溶液(和光純薬工業(株)製、コロイド滴定用)を加え、更にトルイジンブルー指示薬溶液(和光純薬工業(株)製、コロイド滴定用)を数滴加えた。これをN/400ポリビニル硫酸カリウム溶液(和光純薬工業(株)製、コロイド滴定用)により逆滴定し、滴定量から置換度を算出した。ここで「置換度」とは、構成単糖残基当たりの置換基の平均数を示す。
【0079】
なお、原料に用いたヒドロキシエチルセルロースの重量平均分子量と、得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体の置換度、ステアリルグリセリルエーテル(Mw:310、置換度:0.008)、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル(Mw:160、置換度:0.15)から、重量平均分子量を計算すると、82.6万となる。
【0080】
また、比較例で用いた「CMC2280」は、(株)ダイセル製のカルボキシメチルセルロース(重量平均分子量約100万、カルボキシメチル化度0.789)であり、本発明の多糖誘導体には該当しないが、便宜的に表3では、多糖誘導体の欄に記載した。
【0081】
(2−3)アルミニウム粉末
アルミニウム粉末は、(株)フローリック製セルメックを用いた。
【0082】
〔3〕コンクリートの製造及び評価
60リットルの強制二軸ミキサーを用いて、コンクリートを50リットル製造した。分散剤及び多糖誘導体と水とを混合し固形分20質量%の混和剤を調製し、さらに予め練混水に溶解した。セメントと骨材と混練水の練り混ぜは、環境温度20℃にて90秒間行った。練り混ぜ終了後、直ちに、スランプフロー値(これを「直後」のスランプフロー値とする)、コンクリート空気量(これを「直後」の空気量とする)、分離抵抗性の3種の評価項目を測定した。これら3つの評価項目の測定後、前記ミキサーにコンクリートを全量戻して混練開始から25分後まで静置した。その後、表3に示す量のアルミニウム粉末をミキサー内のコンクリートに添加して、再び30秒間混練して目的とするコンクリートを得た。ここで調製したコンクリートは、主にトンネル覆工に用いる水硬性組成物を想定して設計したものである。
【0083】
アルミニウム粉末を添加後得られたコンクリートから、凝結試験用供試体及び膨張率試験用供試体の採取を行い、残りのコンクリートについて、混練開始から、すなわちセメントへの接水から、30分後、60分後、90分後及び120分後のスランプフロー値、及び120分後の空気量を測定した。尚、スランプフロー値及び空気量の測定は、供試体採取後のコンクリートを練り板(平坦な鉄箱)上に静置し、乾燥による水分蒸発を防ぐ為に濡れタオル等で覆い、所定時間直前にスコップにて攪拌して均一とした後に実施した。すなわち、混練開始直後のコンクリートはアルミニウム粉末を含まないコンクリート、30分以後はアルミニウム粉末を含むコンクリートをそれぞれ対象として実施した。セメントが最初に水と接触した時点から水和反応が進行するため、アルミニウム粉末を添加する前に一旦練り混ぜが終了した状態の混合物を、便宜的に「直後」のコンクリートとして評価したものである。
【0084】
〈各評価項目の試験方法及び評価基準〉
1.スランプフロー値(mm)
JIS A 1150 コンクリートのスランプフロー試験方法に従った。上端内径100mm、下端内径200mm、高さ300mmのスランプコーンを用いた。
【0085】
2.120−90分流動性保持率(%)
上記1.にて測定したスランプフロー値から、90分後と120分後の流動性の変化を120−90分流動性保持率として以下の方法により算出した。その際、スランプコーン下端内径が200mmであるため、スランプフロー値から200mmを引いて計算した。
120−90分流動性保持率(%)=(120分後のスランプフロー値−200)÷(90分後のスランプフロー値−200)×100
コンクリート製造から90分後程度までに打設及び施工が完了すると仮定して、打設・施工完了後における型枠からの漏れ防止及び型枠に対する圧力の軽減を期待する基準値として、上記で算出される120−90分流動性保持率の値が小さいこと、即ち流動性の低下が大きいことが、漏れ防止及び型枠への圧力軽減の観点から好ましい。具体的には、この評価における120−90分流動性保持率は70%未満が好ましく、60%未満がより好ましい。
【0086】
3.コンクリート空気量(%)
JIS A 1128 フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力法に従った。
ワーカービリティー、凍結融解抵抗性の観点から、設定空気量4.5%との差の絶対値が1.5%以下(4.5%±1.5%以内)が好ましく、設定空気量4.5%との差の絶対値が1.0%以下(空気量が4.5%±1.0%以内)がより好ましい。
【0087】
4.分離抵抗性
アルミニウム粉末添加前のコンクリートについて、目視(肉眼)による観察評価にて行った。施工性、強度発現性、耐久性等を考慮して、○:骨材分離および水の分離なし、×:骨材分離および水の分離あり、とした。
【0088】
5.コンクリートの凝結時間(時:分)
JIS A 1147 コンクリートの凝結時間試験方法に従った。
【0089】
6.膨張率(%)
内径125mm×250mmの鋼製型枠に、水硬性組成物を230mmの高さまで詰め、高感度変位計を用いて自動測定した。
地山、或いは一次覆工コンクリートとの優れた一体性付与の観点から、膨張率は0.50%以上が好ましく、2.00%以上がより好ましい。
【0090】
【表3】
【0091】
実施例2では、分離抵抗性、凝結遅延の抑制及び膨張率に優れているのに対し、多糖誘導体としてカルボキシメチルセルロースを用いる比較例6は、分離抵抗性が劣っている。分離抵抗性を向上するためにカルボキシメチルセルロースの配合量を増やした比較例7では、凝結遅延があり、膨張率も低下することがわかる。また、分散剤(A)を水硬性粉体100質量部に対して0.10質量部用いる実施例14が、分離抵抗性、凝結遅延の抑制及び膨張率に優れているのに対し、分散剤(A)を用いない比較例4は、凝結遅延があり、膨張率も低下することがわかる。
【0092】
以上の結果より、本発明により、作業性・施工性、且つ地山、或いは一次覆工コンクリートとの優れた一体性をも期待できる、主にトンネル覆工に用いられる水硬性組成物が得られることがわかる。