特許第6052989号(P6052989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052989
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】換気装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/10 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   F24F7/10 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-4896(P2013-4896)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2014-137162(P2014-137162A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】磯良 淳
(72)【発明者】
【氏名】嘉山 正恵
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−251472(JP,A)
【文献】 特開2008−298327(JP,A)
【文献】 実開昭61−010455(JP,U)
【文献】 特開2003−247737(JP,A)
【文献】 特開2003−021385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外空間と室内空間との間を換気するための換気装置であって、
前記室外空間に向けて開口して設けられた流入口と、前記室内空間に向けて開口して設けられた流出口と、前記流入口から前記流出口に至る通路とを有するハウジングと、
前記通路内において回転することにより当該通路の開度を変更可能に設けられ、前記通路を開く開位置にあるときに、回転中心に対して前記通路内を流れる空気の向きに沿って延びるとともに前記回転中心から前記流入口側に向かって延びる突出部が設けられた回転羽と、
前記回転羽を挟んで前記ハウジングとの間に形成される流路の少なくとも一方に設けられる絞り部と、を備え
前記絞り部は、前記回転羽の全長に亘り設けられることを特徴とする換気装置。
【請求項2】
室外空間と室内空間との間を換気するための換気装置であって、
前記室外空間に向けて開口して設けられた流入口と、前記室内空間に向けて開口して設けられた流出口と、前記流入口から前記流出口に至る通路とを有するハウジングと、
前記通路内において回転することにより当該通路の開度を変更可能に設けられ、前記通路を開く開位置にあるときに、回転中心に対して前記通路内を流れる空気の向きに沿って延びるとともに前記回転中心から前記流入口側に向かって延びる突出部が設けられた回転羽と、
前記回転羽により前記通路が仕切られることによって形成される第一流路と第二流路とのうちの第一流路中に設けられる圧力差発生手段と、を備え、
前記圧力差発生手段は、前記流入口から前記通路内に空気が通過したとき、前記圧力差発生手段より前記第一流路の上流側の箇所と前記第二流路との間で圧力差を生じさせることにより、前記突出部を開位置から回転させることを特徴とする換気装置。
【請求項3】
前記回転羽は、開位置にあるときに、その回転中心の下方に自重による重心が配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の換気装置。
【請求項4】
前記ハウジングに対して回転自在に支持された回転軸と、
前記回転軸と前記回転羽とを連結する連結部材と、を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の換気装置。
【請求項5】
前記回転羽が前記通路を閉じる閉位置から開位置に向かう回転を規制する回転規制手段を更に備え、
前記回転羽は、開位置にあるときに、前記回転規制手段に対して下側から係合される係合部が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の換気装置。
【請求項6】
前記回転羽が前記通路を閉じる閉位置にあるときに、前記回転羽の回転中心を通る軸線から離れた位置に設けられ、互いに対向する前記通路の内面の少なくとも一方と、前記回転羽との間に間隙が設けられるように構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の換気装置。
【請求項7】
前記流出口を開閉可能に設けられた開閉蓋を更に備えることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の換気装置。
【請求項8】
本換気装置が取り付けられる壁から前記室内空間及び前記室外空間のそれぞれに向かう水平方向を第1方向としたとき、
前記流入口は、前記第1方向に向けて開口して設けられ、
前記流出口は、前記第1方向と直交する方向に向けて開口して設けられ、
前記回転羽は、前記開位置にあるとき、前記回転中心に対して前記流入口とは反対側にて前記流出口側に臨む面において、前記流入口に対して前記第1方向に離れた位置に、前記流入口とは反対側に向かうにつれて前記流出口に近づくような斜面が設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の室外空間と室内空間との間を換気するために用いられる換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高層建築物のような建物においては、高階層になるほど風が強いうえ、落下に対する安全性を配慮する観点から、窓を開閉することができない構造とされている。このため、窓を開閉しなくとも、室外空間と室内空間との間で換気することができるような換気装置の提案が望まれる。このような換気装置の一例としては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この換気装置は、室外空間から室内空間に向けて空気が通過する通路を有するハウジングと、ハウジングの通路内において回転自在に支持された回転羽とを備えている。この回転羽が回転することによってハウジング内の通路の開度が変更され、通路内を通過する空気の流量が調整可能とされている。これにより、室外空間から室内空間に空気を取り込みつつ、突風が吹いたときにはハウジング内の通路の開度が調整され、室内空間に不快な空気流が生じるのが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−286447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建物の窓の採光性や建物自体の意匠性の観点からは、換気装置の高さ寸法を抑えることが要求されている。このためには、ハウジングの通路の横断面における高さ寸法を抑える必要がある。この一方で、回転羽が開位置にあるとき、室内空間に所望の流量の空気を取り込むためには、その通路の横断面において、通路の内面と回転羽と間に、その流量の空気を取り込むことができる流路を確保する必要がある。本発明者は、ハウジングの通路の横断面における高さ寸法を抑えつつ、回転羽が開位置にあるときに、室内空間に空気を取り込むための流路を確保できる構造について、改善の余地があると認識するに至った。
【0006】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハウジングの通路の横断面における高さ寸法を抑えつつ、回転羽が開位置にあるときに、室内空間に空気を取り込むための流路を確保できる換気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のある態様の換気装置は、室外空間と室内空間との間を換気するための換気装置であって、室外空間に向けて開口して設けられた流入口と、室内空間に向けて開口して設けられた流出口と、流入口から流出口に至る通路とを有するハウジングと、通路内において回転することにより通路の開度を変更可能に設けられ、通路を開く開位置にあるときに、回転中心に対して通路内を流れる空気の向きに沿って延びる突出部が設けられた回転羽と、回転羽を挟んでハウジングとの間に形成される流路の少なくとも一方に設けられる絞り部と、を備える。
【0008】
また、本発明のある態様の換気装置は、室外空間と室内空間との間を換気するための換気装置であって、室外空間に向けて開口して設けられた流入口と、室内空間に向けて開口して設けられた流出口と、流入口から流出口に至る通路とを有するハウジングと、通路内において回転することにより通路の開度を変更可能に設けられ、通路を開く開位置にあるときに、回転中心に対して通路内を流れる空気の向きに沿って延びる突出部が設けられた回転羽と、流入口から通路内に空気が通過したときに、回転羽を挟んでハウジングとの間で形成される異なる流路間で圧力差を生じさせることにより、突出部を開位置から回転させる圧力差発生手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る換気装置によれば、ハウジングの通路の横断面における高さ寸法を抑えつつ、回転羽が開位置にあるときに、室内空間に空気を取り込むための流路を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る換気装置が取り付けられるカーテンウォールの構成を示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る換気装置の構成を示す側面断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る換気装置の構成を示す平面断面図である。
図4】回転羽の回転中心と回転羽の自重による重心との位置関係について説明するための説明図である。
図5】回転羽が閉位置から開位置に回転移動して、第1の回転ストッパに対して回転羽の係合部が係合したときの状態を模式的に示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る換気装置の開閉蓋により流出口を閉じた状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る換気装置1が取り付けられるカーテンウォール71の構成を示す正面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る換気装置1の構成を示す側面断面図であり、図3は、その平面断面図である。
【0012】
換気装置1は、図2に示すように、建物7等の壁により仕切られた室外空間3と室内空間5との間を換気するために用いられる。本実施形態において、換気装置1は、建物7の床、梁等の躯体に取り付けられた壁としてのカーテンウォール71に取り付けられる。
【0013】
図1に戻り、カーテンウォール71は、例えば、複数の枠部材を矩形状に枠組みして構成された枠体72と、枠体72の内側に嵌め込まれたガラス板73とを備える。カーテンウォール71は、換気装置1の取り付け位置において、上下に間隔を空けて設けられた一対の換気装置用横枠72aを備えている。換気装置1は、その一対の換気装置用横枠72aに取り付けられる。
【0014】
換気装置1は、図2に示すように、ハウジング11と、回転羽21と、第1の回転ストッパ41と、第2の回転ストッパ43と、開閉蓋51と、を備えている。
【0015】
ハウジング11は、図2図3に示すように、例えば、上下に間隔を空けて配置された上部フレーム11Aと下部フレーム11Bと、上部フレーム11A及び下部フレーム11Bの左右方向両側の側部に接続された側部フレーム11Cとを備えている。ハウジング11は、これら上部フレーム11A、下部フレーム11B及び側部フレーム11Cにより箱状に形成されている。ハウジング11は、一対の換気装置用横枠72aの室内側側面に対してビス等の固定具61により固定して取り付けられる。
【0016】
ハウジング11は、図2に示すように、室外空間3に開口して設けられた流入口13と、室内空間5に開口して設けられた流出口15と、流入口13から流出口15に至る通路17とを有している。これら流入口13、流出口15及び通路17は、上部フレーム11A、下部フレーム11B及び側部フレーム11Cの内側に形成されている。本実施形態において、流入口13は水平方向に開口して設けられ、流出口15は鉛直方向上側に向けて開口して設けられているが、その開口する方向について限定するものではない。
【0017】
回転羽21は、通路17内においてハウジング11に対して回転自在に支持されている。回転羽21は、その回転中心Rcを通る軸線が、ハウジング11の流入口13から流出口15に向けて空気が流れる方向と交差するように略水平に設けられている。回転羽21は、回転することによりハウジング11内の通路17の開度を変更可能に設けられ、これにより、通路17内を通過する空気の流量を調整可能となる。回転羽21は、後述のように、通路17内を通過する空気の風速が遅いとき、通路17を開く開位置で静止し、通路17内を通過する空気の風速が早いとき、通路17を閉じる閉位置まで回転して静止する。
【0018】
本実施形態において、換気装置1は、図3に示すように、通路17内においてハウジング11に対して回転自在に回転羽21を支持させるための構成として、受け部材31と、回転軸32と、連結部材33とを備えている。
【0019】
受け部材31は、通路17内において、ハウジング11の左右方向両側の側部フレーム11Cに対して、ビス等の固定具62により固定されている。回転軸32は、受け部材31の軸受け孔内に挿通されており、ハウジング11に対して回転自在に支持されている。連結部材33は、例えば、回転軸32に対して溶接等により固定された軸側固定部33aと、回転羽21の上面に対してビス等の固定具63により固定された羽側固定部33bとを備え、回転軸32と回転羽21とを連結している。回転羽21は、回転軸32に対して連結部材33を介して連結されることにより、通路17内においてハウジング11に対して回転自在に支持される。なお、このとき、回転羽21の回転中心Rcは回転軸32の回転中心と一致することになる。
【0020】
図2に戻り、回転羽21は、突出部22と、絞り部23と、中空部24と、係合部25とを備えている。回転羽21は、アルミニウム等の金属材料を素材とした押出成形等をすることにより成形され、各部位が一体に設けられているが、別々の部材を組み合わせて構成されていてもよい。
【0021】
回転羽21の突出部22は、回転羽21が開位置にあるときに、回転中心Rcに対して通路17内を流れる空気の向き(例えば、水平方向)に沿って延びて設けられている。また、突出部22は、回転羽21が開位置にあるときに、流入口13側から流出口15側にかけての通路17内の空気の流れを遮らないように延びている。回転羽21は、通路17内を流れる空気を突出部22により受けなくとも開位置から回転できるように絞り部23が設けられている。本実施形態において、突出部22は、流入口13が水平方向に開口しており、その突出部22が設けられた位置において通路17内を略水平に空気が流れることから、その空気の流れる向きに沿うように略水平に延びて設けられている。突出部22は平板状に形成されている。以下においては、回転羽21の回転中心Rcに対して突出部22が延びている方向を回転羽21の前側とし、その逆方向を回転羽21の後側として説明する。
【0022】
回転羽21の絞り部23は、回転羽21の前後方向の中間位置において、回転羽21の下方に向けて突出するように設けられている。絞り部23は、回転羽21の前側から後側に向かうにつれて、ハウジング11の通路17の下面17aに対して徐々に近づくような円弧状にその下面が形成され、例えば、中空筒状に設けられている。回転羽21の中空部24は、絞り部23の上面から連続した円弧状面が形成されるようにその上面が形成され、中空筒状に設けられている。回転羽21の係合部25は、回転羽21の後端部において、上方に向けて突出するように設けられている。
【0023】
回転羽21の突出部22は、第1の回転ストッパ41によって、その回転が規制され、回転羽21が開位置に保持される。回転羽21の突出部22は、開位置から回転したとき、第2の回転ストッパ43によって、その回転が規制され、回転羽21が閉位置に保持される。図2においては、回転羽21が閉位置にあるときの状態を二点鎖線で示している。
【0024】
回転羽21が開位置にあるとき、ハウジング11の通路17が回転羽21により仕切られることによって、回転羽21を挟んでハウジング11との間に、第一流路18と第二流路19との異なる流路が形成される。本実施形態において、第一流路18は、回転羽21の下面とハウジング11の通路17の下面17aとにより形成される。第二流路19は、回転羽21の上面とハウジング11の通路17の上面17bとにより形成される。
【0025】
絞り部23は、回転羽21の下側の第一流路18中に設けられている。本実施形態において、絞り部23は、回転羽21に設けられているが、ハウジング11の通路17の内面である下面17aに設けられていてもよい。この場合、ハウジング11の通路17の下面17aは、回転羽21が開位置にあるときに、第一流路18の流入口13側から流出口15側に向かう中間位置において、その下面17aの一部が回転羽21に向けて突出するように設けられることになる。
【0026】
絞り部23は、第一流路18を通過する空気の抵抗として機能し、第一流路18を通過する空気の流速は、第二流路19を通過する空気の流速よりも遅くなる。この結果、ハウジング11の流入口13から通路17内に空気が通過したときに、第二流路19の圧力が第一流路18の圧力より小さくなり、第二流路19と第一流路18との間で圧力差が生じる。そして、回転羽21の突出部22に対して閉位置に向かう力が圧力差により作用し、突出部22が開位置から回転し始める。
【0027】
このように絞り部23は、第一流路18と第二流路19とで圧力差を生じさせることにより、突出部22を開位置から回転させる圧力差発生手段として設けられる。回転羽21の突出部22に作用する圧力差により、回転羽21が開位置から回転可能となるように、第一流路18は、その途中に絞り部23が設けられることによって、その断面形状が調整される。この断面形状は、第一流路18の流入口13側の断面積に対して、その絞り部23の位置での断面積が小さくなるように調整される。この断面積の比が大きくなるほど、突出部22に作用する圧力差が増大し、回転羽21が開位置から回転しやすくなる。
【0028】
また、回転羽21の突出部22は、回転羽21を開位置から回転させるための圧力差による力を受ける部位として機能している。突出部22は、回転羽21が開位置にあるときに、その回転中心Rcから通路17内を流れる空気の向きに沿って延びる長さが長くなるほど、圧力差による力により開位置から回転し易くなる。突出部22は、圧力差による力によって開位置から回転可能となるように、その回転中心Rcから通路17内を流れる空気の向きに沿って延びる長さが調整される。
【0029】
図4は、回転羽21の回転中心Rcと回転羽21の自重による重心Gcとの位置関係について説明するための説明図である。図4(a)は回転羽21が開位置にあるときの状態を示し、図4(b)は回転羽21が開位置から閉位置に回転したときの状態を示す。
【0030】
回転羽21は、図4(a)に示すように、開位置にあるとき、その自重による重心Gcが回転中心Rcに対して下方に設けられる。この理由について説明する。図4(b)に示すように、回転羽21が開位置から回転したとき、回転羽21の重心Gcが回転中心Rcに対して同一高さとなるまでの回転量の範囲内であれば、その回転量が増加するほど、回転中心Rcから重心Gcまでの水平距離Lhが長く成る。重心Gcに対する重力により回転中心Rc周りに作用する曲げモーメントMは、この回転中心Rcから重心Gcまでの水平距離Lhが長くなるほど増加することになる。また、この曲げモーメントMは、回転羽21に対して開位置に向かう付勢力として作用することになる。したがって、回転羽21の回転量が増加するほど、回転羽21に対して開位置に向かう付勢力、換言すると、回転羽21の回転抵抗が増大することになる。
【0031】
ここで、本実施形態に係る換気装置1は、図2に示すように、回転軸32に対して回転羽21が連結部材33により連結されている。このため、この連結部材33の長さや、回転羽21に対する連結部材33の固定位置等を調整することによって、回転羽21の回転中心Rcと、回転羽21の自重による重心Gcとの位置関係を自由に調整することができる。これは、回転羽21が回転するときの回転中心Rcから重心Gcまでの水平距離Lhを自由に調整できることを意味しており、これにより、回転羽21の回転抵抗を調整するうえでの設計の自由度が向上する。
【0032】
回転羽21の係合部25は、回転羽21が開位置にあるときに、第1の回転ストッパ41に対して下側から係合し、回転羽21の突出部22の回転が規制される。これにより、以下に説明するように、回転羽21の回転動作に伴う騒音が軽減される。
【0033】
図5は、回転羽21が閉位置から開位置に回転移動して、第1の回転ストッパ41に対して回転羽21が係合したときの状態を模式的に示す説明図である。図5(a)は、回転羽21が第1の回転ストッパ41に対して上側から係合したときの状態を示し、図5(b)は、そのときの回転軸32と受け部材31の軸受け孔31aとの関係を示している。図5(c)は、回転羽21の係合部25が第1の回転ストッパ41に対して下側から係合したときの状態を示し、図5(d)は、そのときの回転軸32と受け部材31の軸受け孔31aとの関係を示している。
【0034】
回転軸32と受け部材31の軸受け孔との間には、一般的に、隙間としてのクリアランス31bが設けられている。このため、図5(a)、(b)に示すように、閉位置から開位置に向けて回転羽21が急に回転移動したとき、回転羽21が第1の回転ストッパ41に対して上側から係合すると、その係合箇所を回転支点として回転羽21が回転しようとする。この結果、受け部材31の軸受け孔31a内で回転軸32が跳ねるように動いてしまい、回転軸32と軸受け孔31aとが接触することにより騒音が発生してしまう。これに対して、図5(c)、(d)に示すように、回転羽21の係合部25が第1の回転ストッパ41に対して下側から係合すると、受け部材31の軸受け孔内での回転軸32の跳ね動きが抑えられ、騒音が軽減される。
【0035】
図2図3に戻り、第1の回転ストッパ41は、回転羽21の後方において、ハウジング11の左右方向両側の側部フレーム11Cに対して、ビス等の固定具64により固定された棒状部材から構成されている。第1の回転ストッパ41は、回転羽21が開位置にあるときに、回転羽21の突出部22の閉位置から開位置に向かう回転を規制する第1の回転規制手段として設けられている。第1の回転ストッパ41の代替として、回転羽21が、ハウジング11の通路17の内面である上面17bや下面17aに対して係合して、その回転が規制されるようにしてもよい。
【0036】
第2の回転ストッパ43は、回転羽21の上方において、ハウジング11の左右方向両側の側部フレーム11Cに対して、ビス等の固定具65により固定された棒状部材から構成されている。第2の回転ストッパ43は、回転羽21の突出部22の開位置から閉位置に向かう回転を規制する第2の回転規制手段として設けられている。この第2の回転規制手段としての第2の回転ストッパ43は設けられていなくともよい。第2の回転ストッパ43の代替として、回転羽21が、ハウジング11の通路17の内面である上面17bや下面17aに対して係合して、その回転が規制されるようにしてもよい。
【0037】
図6は、換気装置1の開閉蓋51により流出口15を閉じた状態を示す側面断面図である。開閉蓋51は、ハウジング11の流出口15を開閉可能に設けられている。開閉蓋51は、下部フレーム11Bの上部において、下部フレーム11Bに対してピン52を介して回転自在に取り付けられている。開閉蓋51は、ピン52周りに回転移動させることにより、ハウジング11の流出口15を閉じる閉蓋位置と、流出口15を開く開蓋位置との間を移動でき、これにより流出口15を開閉可能とされている。開閉蓋51は、手動、電動の何れにより開閉操作が行われてもよい。
【0038】
ハウジング11は、流出口15の上側縁部に設けられた弾性体からなる環状シール53を備えている。環状シール53は、開閉蓋51が流出口15を閉じる閉蓋位置にあるとき、開閉蓋51とハウジング11との間に挟み付けられ、開閉蓋51とハウジング11との間のシール性が高められる。
【0039】
なお、ハウジング11は、図2に示すように、回転羽21が閉位置にあるとき、回転羽21の回転中心Rcを通る軸線から離れた位置に設けられ、互いに対向する通路17の内面である上面17b、下面17aと、その回転羽21との間に、間隙16a、16bが設けられるように構成されている。この通路17の内面である上面17b、下面17aは、回転中心Rcを通る軸線を間に挟んで対向している。
【0040】
本実施形態においては、回転羽21が閉位置にあるとき、回転羽21の突出部22の先端部と、ハウジング11の通路17の上面17bとの間に間隙16aが設けられている。また、回転羽21の下面と、ハウジング11の通路17の下面17aとの間に間隙16bが設けられている。これにより、回転羽21が閉位置にあるときでも、ハウジング11の左右方向に亘る広い範囲において、その間隙16a、16bを空気が通過して換気され、室内空間5の環境が快適なものとなる。なお、この間隙16a、16bは、対向する通路17の内面である上面17b、下面17aの少なくとも一方と、回転羽21との間で設けられていればよい。
【0041】
また、ハウジング11は、図3に示すように、例えば、回転羽21の左右の両側において、ハウジング11との間に側部間隙16cが設けられるように構成されている。これにより、回転羽21が閉位置にあるときでも、ハウジング11の左右両側において、その側部間隙16cを空気が通過して換気され、室内空間5の環境が快適なものとなる。なお、側部間隙16cは、回転羽21の左右の両側に限らず、左右のいずれか一方側にのみ設けられていてもよい。
【0042】
また、ハウジング11は、図2に示すように、その流出口15の通路17側の縁部であって、流入口13側に位置する縁部15aが面取りされて形成されている。これにより、ハウジング11の流入口13から流出口15に向けて通過する空気の流路が大きくなり、室内空間5に取り込める流量を増大させることができる。
【0043】
以上のように構成される換気装置1の動作について説明する。換気装置1により室内空間5と室外空間3との間で換気を行う場合、換気装置1の流出口15が開かれるように開閉蓋51を開蓋位置にまで移動させておく。
【0044】
室外空間3から室内空間5に向けて通路17内を通過する空気の風速が遅いとき、回転羽21は開位置において停止したままとなる。このとき、ハウジング11の通路17の開度が最大となり、室外空間3から室内空間5に取り込まれる空気の流入量を風速に対して大きくすることができる。
【0045】
回転羽21は、例えば、3m/秒のように、予め定められた下限風速を超えた風速の空気が通路17内を通過するとき、開位置から閉位置に向けて回転しはじめる。このような風速の空気が通路17内を通過するときに回転羽21が回転しはじめるように、ハウジング11の通路17、第一流路18、第二流路19、絞り部23、回転羽21の形状や、回転羽21の重さ等が調整される。
【0046】
回転羽21は、開位置から閉位置に向けて回転するまでの間、主として、回転羽21に作用する開位置に向かう付勢力と、回転羽21の突出部22に空気が押し当たる力と、圧力差により生じる力とが釣り合う位置で、その回転が停止する。このため、ハウジング11の通路17内を通過する空気の風速が大きくなると、回転羽21の突出部22に対して空気が押し当たる力が大きくなる。回転羽21は、その空気の押し当たる力と付勢力等とが釣り合う位置に移動するまで、閉位置に向けて回転して停止する。また、ハウジング11の通路17内を通過する空気の風速が小さくなると、回転羽21の突出部22に対して空気が押し当たる力が小さくなる。回転羽21は、その空気の押し当たる力と付勢力等とが釣り合う位置に移動するまで、開位置に向けて回転して停止する。
【0047】
回転羽21が開位置から閉位置に向けて回転するまでの間は、ハウジング11の通路17の開度が風速に応じて増減し、その開度に応じた流入量の空気が室内空間5に取り込まれる。ハウジング11の通路17の開度は、風速が強くなるほど狭くなり、室外空間3から室内空間5に取り込まれる空気の流入量が風速に対して抑えられる。
【0048】
回転羽21は、例えば、10m/秒〜20m/秒のように、予め定められた上限風速より早い風速の空気が通路17内を通過するとき、閉位置において静止したままとなる。このとき、ハウジング11の通路17の開度が最小となり、室外空間3から室内空間5に取り込まれる空気の流入量が風速に対して大きく抑えられる。これにより、室内空間5において不快な空気流が生じるのを抑え、風速によらず快適な室内環境が得られる。
【0049】
なお、室外空間3と室内空間5との間で換気を行わない場合、換気装置1の流出口15が閉じられるように開閉蓋51を閉蓋位置にまで移動させておく。このように、開閉蓋51があることによって、換気装置1の利用者が換気の有無を任意で切り替えられる。また、開閉蓋51を手動により開閉操作するときは、停電時においても換気の有無を切り替えられる。
【0050】
本実施形態に係る換気装置1によれば、回転羽21が開位置にあるとき、回転羽21を回転させるための突出部22が、回転中心Rcに対して通路17内を流れる空気の向きに沿って延びて設けられている。このため、ハウジング11の通路17の横断面において、回転羽21が通路17の高さ方向に延びていない分、回転羽21の高さ寸法を抑え、通路17の横断面の高さ寸法を抑えることができる。また、通路17の横断面の高さ寸法を抑えつつも、回転羽21が開位置にあるとき、室内空間5に所望の流量の空気を取り込むことができる高さ寸法の流路18、19を、通路17の内面と回転羽21との間に確保できる。また、回転羽21の突出部22が略水平に延びた通路17中に略水平に延びて設けられている場合、通路17の横断面の高さ寸法を抑えることによって、換気装置1の高さ寸法を抑えることができる。更に、換気装置1を小型化することによりコストダウンが図られる。
【0051】
また、換気装置1の第一流路18中に絞り部23が設けられているため、回転羽21に対して風を押し当てる力を利用することなく、回転羽21の突出部22に対して圧力差による力を作用させて開位置から回転させることができる。このため、回転羽21を回転させるための突出部22が通路17内を流れる空気の向きに沿って延びて設けられていても、回転羽21を開位置から回転させることができる。
【0052】
また、回転羽21を開位置に戻すうえで、回転羽21の回転中心と重心との位置関係に基づき作用する付勢力を利用しているため、回転羽21を開位置に戻すために錘やモーターが不要となり、部材数の削減によりコストダウンが図られる。また、回転羽21を開位置に戻すために錘が不要であるため、回転羽21の回転軸32が回転動作することによって、受け部材31との間で生じる摩耗が抑えられる。
【0053】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0054】
上述の実施形態においては、本発明に係る換気装置1を建物7に適用した例を示したが、トンネル等の土木構造物に適用されていてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態においては、回転羽21と回転軸32とが連結部材33により連結されて同軸上に連続して配置されないように構成された例を示した。変形例においては、連結部材33を設けないこととして回転羽21と回転軸32とが同軸状に連続して配置されていてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態においては、絞り部23のような圧力差発生手段が第一流路18中に設けられた例を示したが、圧力差発生手段は第二流路19中に設けられていてもよい。この場合、閉位置から開位置に向けて回転羽21を回転させるうえでは、公知の錘等の付勢手段により開位置に向かう付勢力を回転羽21に作用させることとしてよい。
【0057】
また、上述の実施形態においては、回転羽21が開位置にあるときに、回転羽21の突出部22が略水平に延びた通路17中に略水平に延びて設けられている場合を説明した。変形例においては、略鉛直に空気が流れるような略鉛直に延びた通路17中に、回転羽21の突出部22が略鉛直に延びて設けられていてもよい。この変形例においては、回転羽21の突出部22が設けられた位置において、通路17内を略鉛直に空気が流れることから、突出部22もその空気の流れに沿って略鉛直に延びて設けられる。
【符号の説明】
【0058】
1:換気装置 3:室外空間 5:室内空間 11:ハウジング 13:流入口 15:流出口 17:通路 18:第一流路 19:第二流路 21:回転羽 22:突出部 23:絞り部 25:係合部 31:軸受け 32:回転軸 33:連結部材 41:第1の回転ストッパ 43:第2の回転ストッパ 51:開閉蓋 Rc:回転中心 Gc:重心
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図6