(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.全体的な構成の説明
[1−1.全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システム12を搭載した燃料電池車両10(以下「FC車両10」又は「車両10」という。)の駆動系及び電力系を主として示す概略全体構成図である。FC車両10は、燃料電池システム12(以下「FCシステム12」という。)に加え、走行モータ14(以下「モータ14」という。)及びインバータ16を有する。
【0024】
FCシステム12は、燃料電池ユニット20(以下「FCユニット20」という。)と、高電圧バッテリ22(以下「バッテリ22」ともいう。)(蓄電装置)と、昇圧コンバータ24と、昇降圧コンバータ26と、補機28と、電子制御装置30(以下「ECU30」という。)とを有する。
【0025】
上記にいう駆動系とは、車両10を駆動する構成(主としてモータ14)を指す。電力系とは、車両10において電力を供給する構成(主としてFCシステム12)を指す。後述するように、さらに、車両10(又はFCシステム12)は、燃料電池スタック50に対して反応ガス(すなわち、燃料ガス及び酸化剤ガス)を供給するガス系と、燃料電池スタック50を冷却する冷却系とを有する。
【0026】
1つの構成要素が、複数の系に含まれることもある。例えば、モータ14は、車両10の駆動力を生成する点で駆動系に含まれると共に、回生電力を生成する点で電力系にも含まれる。複数の系に含まれる構成要素については、いずれかの系において詳細を説明する。
【0027】
[1−2.駆動系]
本実施形態のモータ14は、3相交流ブラシレス式である。モータ14は、FCユニット20及びバッテリ22から供給される電力に基づいて駆動力を生成し、当該駆動力によりトランスミッション32を通じて車輪34を回転させる。また、モータ14は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]をバッテリ22等に出力する。モータ14の各相(U相、V相、W相)の電流は、電流センサ36u、36v、36wにより検出される。或いは、3相のうち2相のみ電流を検出し、これらの電流から残りの1相の電流を検出してもよい。
【0028】
インバータ16は、3相ブリッジ型の構成を有し、直流−交流変換を行う。より具体的には、インバータ16は、直流を3相の交流に変換してモータ14に供給する一方、回生動作に伴う交流−直流変換後の直流を昇降圧コンバータ26を通じてバッテリ22等に供給する。なお、モータ14とインバータ16を併せて負荷40という。
【0029】
[1−3.電力系]
(1−3−1.FCユニット20)
FCユニット20は、燃料電池スタック50(以下「FCスタック50」又は「FC50」という。)と、その周辺部品とを備える。FCスタック50は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セルを積層した構造を有する。
【0030】
前記周辺部品には、FCスタック50のアノードに対して水素(燃料ガス)を給排するアノード系と、FCスタック50のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排するカソード系と、FCスタック50を冷却する冷却系と、セル電圧モニタ52とが含まれる。後述するように、前記周辺部品の一部は、補機28にも含まれる。なお、
図1に示すように、FCユニット20(FC50)とインバータ16の間において昇圧コンバータ24と並列に、逆流防止ダイオード53が配置されている。
【0031】
セル電圧モニタ52は、FCスタック50を構成する複数の単セル毎のセル電圧Vcellを検出する機器であり、モニタ本体と、モニタ本体と各単セルとを接続するワイヤハーネスとを備える。モニタ本体は、所定周期で全ての単セルをスキャニングし、各単セルのセル電圧Vcellを検出し、最大セル電圧Vcell_max、平均セル電圧Vcell_ave及び最低セル電圧Vcell_minを算出する。そして、最大セル電圧Vcell_max、平均セル電圧Vcell_ave及び最低セル電圧Vcell_minをECU30に出力する。
【0032】
FC50の出力電圧(以下「FC電圧Vfc」又は「スタック電圧Vfc」という。)は、電圧センサ54により検出され、FC50の出力電流(以下「FC電流Ifc」又は「スタック電流Ifc」という。)は、電流センサ56により検出され、いずれもECU30に出力される。FC50と昇圧コンバータ24の間には、コンタクタ58が配置される。
【0033】
(1−3−2.高電圧バッテリ22)
バッテリ22は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池又はキャパシタ等を利用することができる。本実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。バッテリ22の出力電圧(以下「バッテリ電圧Vbat」という。)[V]は、電圧センサ60により検出され、バッテリ22の出力電流(以下「バッテリ電流Ibat」という。)[A]は、電流センサ62により検出され、それぞれECU30に出力される。ECU30は、バッテリ電圧Vbatとバッテリ電流Ibatとに基づいて、バッテリ22の残容量(SOC)[%]を算出する。換言すると、ECU30は、電圧センサ60及び電流センサ62と合わせて残容量検出部を構成する。
【0034】
(1−3−3.昇圧コンバータ24)
昇圧コンバータ24は、FC50の出力電圧(FC電圧Vfc)を昇圧してインバータ16に供給する昇圧型の電圧変換装置(DC/DCコンバータ)である。昇圧コンバータ24は、FC50とインバータ16との間に配置される。換言すると、昇圧コンバータ24は、一方がFC50のある1次側1Sfに接続され、他方がバッテリ22と負荷40との接続点である2次側2Sに接続されている。以下では、昇圧コンバータ24を、FC50側電圧制御ユニットの意味で「FC−VCU24」とも称する。
【0035】
(1−3−4.昇降圧コンバータ26)
昇降圧コンバータ26は、昇降圧型の電圧変換装置(DC/DCコンバータ)である。すなわち、昇降圧コンバータ26は、バッテリ22の出力電圧(バッテリ電圧Vbat)を昇圧してインバータ16に供給すると共に、モータ14の回生電圧(以下「回生電圧Vreg」という。)又はFC電圧Vfcとしてのインバータ入力端電圧Vinvを降圧してバッテリ22に供給することが可能である。昇降圧コンバータ26は、バッテリ22とインバータ16との間に配置される。換言すると、昇降圧コンバータ26は、一方がバッテリ22のある1次側1Sbに接続され、他方がFC50と負荷40との接続点である2次側2Sに接続されている。以下では、昇降圧コンバータ26を、バッテリ22側電圧制御ユニットの意味で「BAT−VCU26」とも称する。
【0036】
上記のように、インバータ入力端電圧Vinvは、電圧センサ78(
図1)により検出される。また、BAT−VCU26の出口端電流(以下「出口端電流Ibatvcu」という。)は、電流センサ104により検出される。
【0037】
本実施形態では、ECU30によりFC−VCU24及びBAT−VCU26を制御することにより、FCユニット20からの電力(以下「FC電力Pfc」という。)と、バッテリ22から供給される電力(以下「バッテリ電力Pbat」という。)[W]と、モータ14からの回生電力Pregとの供給先を制御する。
【0038】
(1−3−5.補機28)
補機28としては、例えば、エアポンプ150(
図2)、ウォータポンプ170、ラジエータファン174、エアコンディショナ、降圧型DC−DCコンバータ、低電圧バッテリ、アクセサリ及びECU30の少なくとも1つを含むことができる。
【0039】
なお、前記降圧型DC−DCコンバータは、昇降圧コンバータ26(BAT−VCU26)の1次側1Sbにおける電圧を降圧して前記低電圧バッテリ、前記アクセサリ、ラジエータファン174及びECU30に供給する。前記低電圧バッテリは、低電圧機器を作動させるためのバッテリ(例えば、12Vバッテリ)である。前記アクセサリは、オーディオ機器、ナビゲーション装置等の機器を含む。
【0040】
(1−3−6.ECU30)
ECU30は、通信線106(
図1)を介して、モータ14、インバータ16、FCユニット20、バッテリ22、昇圧コンバータ24、昇降圧コンバータ26及び補機28を制御する。当該制御に際しては、ECU30は、記憶部に記憶されたプログラムを実行する。また、ECU30は、電圧センサ54、60、78、電流センサ36u、36v、36w、56、62、80、104等の各種センサの検出値を用いる。
【0041】
ここでの各種センサには、上記センサに加え、開度センサ110及びモータ回転数センサ112(
図1)が含まれる。開度センサ110は、アクセルペダル114の開度θp[度]を検出する。モータ回転数センサ112は、モータ14の回転数(以下「モータ回転数Nmot」又は「回転数Nmot」という。)[rpm]を検出する。ECU30は、回転数Nmotを用いてFC車両10の車速V[km/h]を検出する。さらに、ECU30には、メインスイッチ116(以下「メインSW116」という。)が接続される。メインSW116は、FCユニット20及びバッテリ22からモータ14への電力供給の可否を切り替えるものであり、ユーザにより操作可能である。
【0042】
ECU30は、マイクロコンピュータを含み、必要に応じて、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェースを有する。なお、ECU30は、1つのECUのみからなるのではなく、モータ14、FCユニット20、バッテリ22、昇圧コンバータ24、昇降圧コンバータ26及び補機28毎に複数のECUから構成することもできる。
【0043】
ECU30は、FCスタック50の状態、バッテリ22の状態及びモータ14の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定したFC車両10全体としてFCシステム12に要求される負荷から、FCスタック50が負担すべき負荷と、バッテリ22が負担すべき負荷と、回生電源(モータ14)が負担すべき負荷の配分(分担)を調停しながら決定し、モータ14、インバータ16、FCユニット20、バッテリ22、昇圧コンバータ24及び昇降圧コンバータ26に指令を送出する。
【0044】
[1−4.ガス系]
(1−4−1.全体構成)
図2は、FCユニット20のガス系を主として示す概略構成図である。FCユニット20は、FCスタック50のアノードに対して水素(燃料ガス)を給排するアノード系と、FCスタック50のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排するカソード系と、FCスタック50を冷却する冷却系とを備える。
【0045】
(1−4−2.アノード系)
アノード系は、水素タンク120、レギュレータ122、パージ弁128、圧力センサ132、濃度センサ134及び温度センサ136を有する。
【0046】
水素タンク120は、燃料ガスとしての水素を収容するものであり、配管120a、レギュレータ122及び配管122aを介して、アノード流路138の入口に接続されている。これにより、水素タンク120の水素は、配管120a等を介してアノード流路138に供給可能である。なお、配管120aには、遮断弁(図示せず)が設けられており、FCスタック50の発電の際、当該遮断弁は、ECU30により開とされる。
【0047】
レギュレータ122は、導入される水素の圧力を所定値に調整して排出する。すなわち、レギュレータ122は、配管122bを介して入力されるカソード側の空気の圧力(パイロット圧)に応じて、下流側の圧力(アノード側の水素の圧力)を制御する。従って、アノード側の水素の圧力は、カソード側の空気の圧力に連動し、後記するように、酸素濃度を変化させるべくエアポンプ150の回転数等を変化させると、アノード側の水素の圧力も変化する。
【0048】
配管128aの一部は、パージ弁128及び配管128bを介して、後記する配管154bに設けられた希釈ボックス140に接続されている。パージ弁128は、FCスタック50の発電が安定していないと判定された場合、ECU30からの指令に基づき所定時間、開となる。希釈ボックス140は、パージ弁128からのアノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する。
【0049】
圧力センサ132は、配管122aに取り付けられ、アノード流路138に向かう水素の圧力[Pa]を検出してECU30に出力する。濃度センサ134は、配管122aに取り付けられ、アノード流路138に向かう水素の濃度を検出してECU30に出力する。温度センサ136は、配管128aに取り付けられアノードオフガスの温度[℃]を検出してECU30に出力する。
【0050】
(1−4−3.カソード系)
カソード系は、エアポンプ150、加湿器152、背圧弁154、流量センサ158、濃度センサ162、圧力センサ164及び温度センサ166を有する。
【0051】
エアポンプ150は、外気(空気)を圧縮してカソード側に送り込むものであり、その吸気口は、配管150aを介して車外(外部)と連通している。エアポンプ150の吐出口は、配管150b、加湿器152及び配管152aを介して、カソード流路168の入口に接続されている。エアポンプ150がECU30の指令に従って作動すると、エアポンプ150は、配管150aを介して車外の空気を吸気して圧縮し、この圧縮された空気が配管150b等を通ってカソード流路168に圧送される。
【0052】
加湿器152は、水分透過性を有する複数の中空糸膜152eを備えている。そして、加湿器152は、中空糸膜152eを介して、カソード流路168に向かう空気とカソード流路168から排出された多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させ、カソード流路168に向かう空気を加湿する。
【0053】
カソード流路168の出口側には、配管152b、加湿器152、配管154a、背圧弁154及び配管154bが配置されている。カソード流路168から排出されたカソードオフガス(酸化剤オフガス)は、配管152b等を通って、車外に排出される。
【0054】
背圧弁154は、例えば、バタフライ弁で構成され、その開度がECU30によって制御されることで、カソード流路168における空気の圧力を制御する。より具体的には、背圧弁154の開度が小さくなると、カソード流路168における空気の圧力が上昇し、体積流量当たりにおける酸素濃度(体積濃度)が高くなる。逆に、背圧弁154の開度が大きくなると、カソード流路168における空気の圧力が下降し、体積流量当たりにおける酸素濃度(体積濃度)が低くなる。
【0055】
流量センサ158は、配管150bに取り付けられ、カソード流路168に向かう空気の流量[g/s]を検出してECU30に出力する。
【0056】
濃度センサ162は、配管150bに取り付けられ、カソード流路168に向かう空気の酸素濃度を検出してECU30に出力する。圧力センサ164は、配管154bに取り付けられ、カソード流路168からのカソードオフガスの圧力[Pa]を検出してECU30に出力する。
【0057】
温度センサ166は、配管154aに取り付けられ、カソードオフガスの温度を検出してECU30に出力する。ここで、循環ガスの温度は、カソードオフガスの温度と略等しいため、温度センサ166の検出するカソードオフガスの温度に基づいて、循環ガスの温度を検知することができる。
【0058】
[1−5.冷却系]
冷却系は、ウォータポンプ170、ラジエータ172、ラジエータファン174及び温度センサ176等を有する。ウォータポンプ170は、FC50内に冷却水(冷媒)を循環させることでFC50を冷却する。FC50を冷却して温度が上昇した冷却水は、ラジエータファン174による送風を受けるラジエータ172で放熱される。温度センサ176は、冷却水の温度(以下「水温Tw」という。)を検出し、ECU30に出力する。
【0059】
2.本実施形態の制御
次に、ECU30における制御について説明する。ここでは、主として、FC50の起動時における制御(起動時制御)に着目する。FC50の起動時制御の具体的説明に入る前に前提となる事項を確認しておく。
【0060】
[2−1.第1前提事項(セル電圧Vcellに応じた劣化)]
図3は、FCスタック50を構成するFCセルの電位(セル電圧Vcell)[V]とセルの劣化量Dとの関係の一例を示している。すなわち、
図3中の曲線180は、セル電圧Vcellと劣化量Dとの関係を示す。
【0061】
図3において、電位v1(例えば、0.5V)を下回る領域(以下「白金凝集増加領域R1」又は「凝集増加領域R1」という。)では、FCセルに含まれる白金(酸化白金)について還元反応が激しく進行し、白金が過度に凝集する。電位v1から電位v2(例えば、0.8V)までは、還元反応が安定的に進行する領域(以下「白金還元領域R2」又は「還元領域R2」という。)である。
【0062】
電位v2から電位v3(例えば、0.9V)までは、白金について酸化還元反応が進行する領域(以下「白金酸化還元進行領域R3」又は「酸化還元領域R3」という。)である。電位v3から電位v4(例えば、0.95V)までは、白金について酸化反応が安定的に進行する領域(以下「白金酸化安定領域R4」又は「酸化領域R4」という。)である。電位v4からOCV(開回路電圧)までは、セルに含まれるカーボンの酸化が進行する領域(以下「カーボン酸化領域R5」という。)である。
【0063】
上記のように、
図3では、セル電圧Vcellが白金還元領域R2又は白金酸化安定領域R4にあれば、隣り合う領域と比較してFCセルの劣化の進行度合が小さい。一方、セル電圧Vcellが白金凝集増加領域R1、白金酸化還元進行領域R3、又はカーボン酸化領域R5にあれば、隣り合う領域と比較してFCセルの劣化の進行度合が大きい。
【0064】
なお、
図3では、曲線180を一義的に定まるような表記としているが、実際は、単位時間当たりにおけるセル電圧Vcellの変動量(変動速度Acell)[V/sec]に応じて曲線180は変化する。
【0065】
図4には、変動速度Acellが異なる場合の酸化の進行と還元の進行の様子の例を示すサイクリックボルタンメトリ図である。
図4において、曲線190は、変動速度Acellが高い場合を示し、曲線192は、変動速度Acellが低い場合を示す。
図4からわかるように、変動速度Acellに応じて酸化又は還元の進行度合が異なるため、必ずしも各電位v1〜v4は一義的に特定されない。また、FCセルの個体差によっても各電位v1〜v4は変化し得る。このため、電位v1〜v4は、理論値、シミュレーション値又は実測値に誤差分を反映させたものとして設定することが好ましい。
【0066】
また、FCセルの電流−電圧(IV)特性は、一般的な燃料電池セルと同様、セル電圧Vcellが下がるほど、セル電流Icell[A]が増加する(
図5参照)。加えて、FCスタック50の発電電圧(FC電圧Vfc)は、セル電圧VcellにFCスタック50内の直列接続数Nfcを乗算したものである。直列接続数Nfcは、FCスタック50内で直列に接続されるFCセルの数であり、以下、単に「セル数」ともいう。
【0067】
以上を踏まえ、本実施形態では、FC50の起動時において、FCスタック50の目標電圧(目標FC電圧Vfc_tar)[V]を、主として、白金還元領域R2内に設定しつつ、必要に応じて白金酸化安定領域R4内に設定する(具体例は、
図11等を用いて説明する。)。このような目標FC電圧Vfc_tarの切替えを行うことにより、FC電圧Vfc及び各セル電圧Vcellが、領域R1、R3、R5(特に、白金酸化還元進行領域R3)内にある時間を極力短縮し、FCスタック50の劣化を防止することができる。
【0068】
なお、上記の処理では、FCスタック50の供給電力(FC電力Pfc)と、FCシステム12全体の負荷(以下「システム負荷Psys」という。)が等しくならない場合が存在する。この点、FC電力Pfcがシステム負荷Psysを下回っている場合、その不足分は、バッテリ22から供給する。また、FC電力Pfcがシステム負荷Psysを上回っている場合、その余剰分は、バッテリ22に充電する。
【0069】
なお、
図3では、電位v1〜v4を具体的な数値として特定したが、これは、後述する制御を行うためであり、当該数値は、あくまで制御の便宜を考慮して決定するものである。換言すると、曲線180からもわかるように、劣化量Dは連続的に変化するため、制御の仕様に応じて、電位v1〜v4は、適宜設定することができる。
【0070】
但し、白金還元領域R2は、曲線180の極小値(第1極小値Vlmi1)を含む。白金酸化還元進行領域R3では、曲線180の極大値(極大値Vlmx)を含む。白金酸化安定領域R4は、曲線180の別の極小値(第2極小値Vlmi2)を含む。
【0071】
[2−2.第2前提事項(FC50による発電の終了後におけるアノード側及びカソード側におけるガスの残存状態)]
ECU30側でFC50における発電を停止させることを決定した場合であっても、FC50内に反応ガス(水素及び酸素)が残存している間は、FC50は発電を継続する。また、アノード側に残存している水素は、透過によりカソード側に移動する。ここにいう「FC50内」には、アノード流路138及びカソード流路168のみならず、配管122a、128a、152a、152b等を含む。
【0072】
従って、ECU30がFC50の発電を停止させるための処理を行った後、FC50の発電を再開する場合、アノード側の水素濃度及びカソード側の酸素濃度は、状況に応じて種々の値を取り得る。
【0073】
例えば、ECU30がFC50における発電を停止させるための処理を開始してから比較的短い時間しか経過していない場合、カソード側に移動した水素の残存量が比較的多い。このため、アノード側及びカソード側のいずれにも比較的高い濃度の水素が存在することとなる。以下では、この状態を「H
2−H
2状態」ともいう。また、「H
2−H
2状態」において発電を開始(再開の場合を含む。)することを「H
2−H
2起動」ともいう。
【0074】
一方、ECU30がFC50における発電を停止させるための処理を開始してから比較的長い時間が経過した場合、カソード側に移動した水素は、外部からの酸素と反応して消費される。このため、アノード側及びカソード側のいずれにおいても空気の濃度が比較的高くなる。以下では、この状態を「Air−Air状態」ともいう。また、「Air−Air状態」において発電を開始(再開の場合を含む。)することを「Air−Air起動」ともいう。
【0075】
本実施形態では、反応ガスの残存状態が「H
2−H
2状態」及び「Air−Air状態」のいずれであるかを考慮して、FC50の起動時処理を行う。なお、水素及び空気(酸素)の濃度は、常に変化し得るため、反応ガスの残存状態をさらに細分化して起動時制御を行うことも可能である。
【0076】
[2−3.第3前提事項(反応ガスの不足に伴う劣化)]
図5に示すように、セル電流Icell(FC電流Ifc)は、セル電圧Vcell(FC電圧Vfc)に応じて変化する。本実施形態では、FC−VCU24又はBAT−VCU26を用いてFC電圧Vfcを制御することにより、セル電圧Vcell及びセル電流Icellを制御する。
【0077】
FC50の起動時においては、各セルに対する反応ガス(水素及び酸素の少なくとも一方)の供給速度は、セル毎に変化し得る。すなわち、反応ガスの供給開始から出力電圧の立ち上がりまでの電圧立ち上がり時間Tsが短いセル(以下「第1セル」という。)と、電圧立ち上がり時間Tsが長いセル(以下「第2セル」という。)とが存在し得る。このため、FCスタック50全体としての電圧(FC電圧Vfc)は、所望の値に到達していたとしても、電圧立ち上がり時間Tsが長い(反応ガスの供給及び置換が遅い)第2セルには、反応ガスが十分に供給されていない場合があり得る。特に、起動時にはこの傾向が顕著に現れ得る。
【0078】
反応ガスが十分に供給されていない場合であっても、FC−VCU24又はBAT−VCU26を用いてFC電圧Vfcを変化させると、第2セルは、セル電圧VcellをFC電圧Vfcの変化に追従しようとする。その場合、第2セルには、十分な反応ガスが供給されていないため、第2セルは劣化が促進することとなる。
【0079】
図6及び
図7は、H
2−H
2起動時における複数のセルの反応の第1例及び第2例を示す図である。より具体的には、
図6及び
図7は、「H
2−H
2状態」において、FC50が電力供給を開始しない場合の第1セル及び第2セルそれぞれのセル電圧Vcell及びセル電位Pcellと、FC50が電力供給を行う場合の第1セル及び第2セルそれぞれのセル電圧Vcell、セル電位Pcell及びセル電流Icellの第1例及び第2例を示す図である。なお、
図6及び
図7の上側は同じである。
【0080】
図6及び
図7の上側に示すように、FC50が電力供給を開始しない場合、第1セルは、ECU30による反応ガスの供給開始時点(時点t1)と略同時に反応ガスが供給される。このため、第1セルのセル電圧Vcell及びセル電位Pcellは、ECU30による反応ガスの供給開始直後に変化し、時点t3において、セル電圧Vcellが閾値THvcellに到達する。閾値THvcellは、セルが所定の電力供給性能を発揮可能であることを判定する閾値である。
【0081】
一方、第2セルは、ECU30による反応ガスの供給開始(時点t1)から所定時間(以下「遅延時間Td1」という。)遅延した時点(時点t2)に反応ガスが供給される。このため、第2セルのセル電圧Vcell及びセル電位Pcellは、ECU30による反応ガスの供給開始から遅れて変化し、時点t4において、セル電圧Vcellが閾値THvcellに到達する。
【0082】
また、
図6において、第2セルに反応ガスの供給が開始される直前(時点t2の直前)においてFC50が電力供給を開始する場合、第2セルの劣化が進むこととなる。
【0083】
一方、
図7において、第1セルのセル電圧Vcellが閾値THvcellに到達した時点t3においてFC50が電力供給を開始する場合、時点t3では、第2セルに対する反応ガスの供給が既に開始されている。このため、第2セルの劣化を抑制することが可能となる。
【0084】
図8及び
図9は、Air−Air起動時における複数のセルの反応の第1例及び第2例を示す図である。より具体的には、
図8及び
図9は、「Air−Air状態」において、FC50が電力供給を開始しない場合の第1セル及び第2セルそれぞれのセル電圧Vcell及びセル電位Pcellと、FC50が電力供給を行う場合の第1セル及び第2セルそれぞれのセル電圧Vcell、セル電位Pcell及びセル電流Icellの第1例及び第2例を示す図である。
図8及び
図9の上側は同じである。
図6の場合(H
2−H
2状態)と同様、
図8の場合も第2セルの劣化が進むこととなる。
【0085】
すなわち、
図8に示すように、FC50が電力供給を開始しない場合、第1セルは、ECU30による反応ガスの供給開始時点(時点t11)と略同時に反応ガスが供給される。このため、第1セルのセル電圧Vcell及びセル電位Pcellは、ECU30による反応ガスの供給開始直後に変化し、時点t12において、セル電圧Vcellが閾値THvcellに到達する。
【0086】
一方、第2セルは、ECU30による反応ガスの供給開始から所定時間(以下「遅延時間Td2」という。)遅延した時点(時点t13)に反応ガスが供給される。このため、第2セルのセル電圧Vcell及びセル電位Pcellは、ECU30による反応ガスの供給開始から遅れて変化する。このため、第2セルのセル電圧Vcell及びセル電位Pcellは、ECU30による反応ガスの供給開始(時点t11)から遅れて変化し、時点t14において、セル電圧Vcellが閾値THvcellに到達する。
【0087】
また、
図8において、FC50が時点t12において電力供給を開始する場合、第1セルのセル電圧Vcellは既に閾値THvcellに到達しているため、第1セルの劣化は進まない。一方、第2セルは、遅延時間Td2が経過する前に時点t12が来るため、反応ガスが十分に供給される前に、セル電圧Vcell及びセル電位Pcellが変化してしまう。その結果、第2セルの劣化が進むこととなる。
【0088】
一方、
図9において、第2セルのセル電圧Vcellが閾値THvcellに到達した時点t14においてFC50が電力供給を開始する場合、時点t14では、第2セルに対する反応ガスの供給が既に開始されている。このため、第2セルの劣化を抑制することが可能となる。
【0089】
本実施形態では、上記のような遅延時間Td1、Td2(以下「遅延時間Td」と総称する。)並びに第1セル及び第2セルの劣化を考慮した制御を行う。
【0090】
図10は、反応ガスの複数の残存状態(「H
2−H
2状態」及び「Air−Air状態」)それぞれについて、FC50からの電力供給なしの状態でのFC電圧Vfcの一例を示す図である。
図10に示すように、「H
2−H
2状態」からの起動(H
2−H
2起動)よりも「Air−Air状態」からの起動(Air−Air起動)の方が、FC電圧Vfcの立ち上がりが速い。このため、H
2−H
2起動の場合と比較して、Air−Air起動の場合、第1セルのセル電圧Vcellの立ち上がりに合わせて第2セルの発電を開始させると、第2セルの劣化度合いが大きくなってしまう。
【0091】
そこで、本実施形態では、Air−Air起動の場合、第1セルよりも第2セルの劣化防止を重視した制御を行う。但し、後述するように、第1セルの劣化防止を重視してもよい。
【0092】
[2−4.起動時制御]
(2−4−1.基本的な考え方)
次に、FC50の起動時制御についての基本的な考え方について説明する。本実施形態では、H
2−H
2起動及びAir−Air起動いずれの場合も、FC50の起動時におけるFC電圧Vfcの目標値(以下「FC目標電圧Vfc_tar」という。)を複数のガス充填状態それぞれについて2段階に分けて制御する。
【0093】
H
2−H
2起動での第1段階でのFC目標電圧Vfc_tar(以下「H
2−H
2起動時第1段階目標値Vtar11」、「第1段階目標値Vtar11」又は「目標値Vtar11」という。)は、FC50からの電力供給を開始した時点の値である(
図12及び
図13参照)。また、Air−Air起動での第1段階でのFC目標電圧Vfc_tar(以下「Air−Air起動時第1段階目標値Vtar12」、「第1段階目標値Vtar12」又は「目標値Vtar12」という。)は、FC50からの電力供給を開始した時点の値である(
図12参照)。上記のように、FC50からの電力供給の開始前は、FC−VCU24及びBAT−VCU26による制御を行わない。このため、反応ガスの供給によりFC電圧Vfcが上昇するのを待つこととなる。
【0094】
H
2−H
2起動での第1段階でのFC目標電圧Vfc_tar(第1段階目標値Vtar11)は、最大セル電圧Vcell_maxが酸化還元領域R3(
図3)に入ることによるセルの劣化を抑制することを考慮して設定する。一方、Air−Air起動での第1段階でのFC目標電圧Vfc_tar(第1段階目標値Vtar12)は、第2セルの劣化を抑制することを考慮して設定する。なお、電力供給の開始後は、最大セル電圧Vcellを含む各セル電圧Vcellは、FC−VCU24又はBAT−VCU26により制御することができる。
【0095】
第2段階でのFC目標電圧Vfc_tar(以下「第2段階目標値Vtar2」又は「目標値Vtar2」という。)は、H
2−H
2起動及びAir−Air起動の場合で共通であり、FC50からの電力供給を開始した後の値である(
図12及び
図13参照)。
【0096】
H
2−H
2起動の場合、第2段階目標値Vtar2は、第1段階目標値Vtar11よりも高い値に設定される(
図12参照)。このため、FC電流Ifcは、第1段階目標値Vtar11の場合よりも低くなる(
図5参照)。一方、Air−Air起動の場合、第2段階目標値Vtar2は、第1段階目標値Vtar12よりも低い値に設定される(
図12参照)。このため、FC電流Ifcは、第1段階目標値Vtar12の場合よりも高くなる(
図5参照)。第2段階目標値Vtar2は、第2セルに対する反応ガスの到達(電圧立ち上がり時間Ts)を考慮すると共に、バッテリSOCを考慮して設定する。
【0097】
(2−4−2.具体的な流れ)
図11は、FC50の起動時制御のフローチャートである。
図11のフローチャートは、メインスイッチ116がオフからオンに切り替えられたことを契機として開始される。
図12は、H
2−H
2起動時及びAir−Air起動時それぞれについて
図11の制御を用いた場合における前記燃料電池スタックの出力電圧の例を示す図である。
【0098】
ステップS1において、ECU30は、反応ガスの残存状態を確認する。具体的には、ソーク時間TSoak(FC50の発電を停止させるための処理を開始してからの時間)を確認する。或いは、濃度センサ134が検出した水素濃度及び濃度センサ162が検出した酸素濃度の少なくとも一方に基づいて反応ガスの残存状態を確認することも可能である。或いは、水素濃度はアノード側圧力と対応関係があることから圧力センサ132が検出したアノード側圧力に基づいて反応ガスの残存状態を確認してもよい。
【0099】
或いは、水素濃度及び酸素濃度は、FC電圧Vfcとある程度対応関係があることから、FC電圧Vfcを用いて反応ガスの残存状態を推定することも可能である。或いは、FC50の発電状態はFC50の温度とある程度対応関係があると共に、FC50の温度と冷媒温度とは対応関係があることから、温度センサ176が検出した冷媒温度(水温Tw)を用いて反応ガスの残存状態を推定してもよい。
【0100】
ステップS2において、ECU30は、残存状態が「H
2−H
2状態」であるか否かを判定する。例えば、ソーク時間TSoakが、残存状態を判定するためのソーク時間閾値THtsoakを下回るか否かを判定する。
【0101】
「H
2−H
2状態」である場合(S2:YES)、ステップS3において、ECU30は、反応ガスの供給を開始する。
【0102】
ステップS4において、ECU30は、FC50からの電力供給を開始するか否かを判定する。例えば、電圧センサ54が検出したFC電圧Vfc(スタック電圧)が電力供給開始閾値THps1(以下「閾値THps1」ともいう。)以上であるか否かを判定する。閾値THps1は、FC50からの電力供給を開始するか否かを判定するためFC電圧Vfcの閾値である。閾値THps1としては、例えば、H
2−H
2起動時第1段階目標値Vtar11又はその近傍値を設定することが可能である。閾値THps1の設定方法については、後述する。
【0103】
電力供給を開始しない場合(S4:NO)、ステップS4を繰り返す。すなわち、FC50を待機状態として電力供給を開始しない。
【0104】
電力供給を開始する場合(S4:YES)、ステップS5において、ECU30は、コンタクタ58を閉にさせた上で、FC−VCU24又はBAT−VCU26を作動させる(
図12の時点t25参照)。その際、FC目標電圧Vfc_tarを第1段階目標値Vtar11に設定する。ステップS5の後は、ステップS10に進む。
【0105】
ステップS2に戻り、「H
2−H
2状態」でない場合(S2:NO)、すなわち、「Air−Air状態」である場合、ステップS6において、ECU30は、反応ガスの供給を開始する。具体的には、ステップS3と同様である。
【0106】
ステップS7において、ECU30は、FC50からの電力供給開始の要否を判定するための第1条件が満たされるか否かを判定する。当該第1条件としては、例えば、電圧センサ54が検出したFC電圧Vfcが電力供給開始閾値THps2(以下「閾値THps2」ともいう。)以上であることを用いることができる。閾値THps2は、FC50からの電力供給を開始するか否かを判定するためFC電圧Vfcの閾値である。閾値THps2としては、例えば、Air−Air起動時第1段階目標値Vtar12又はその近傍値を設定することが可能である。閾値THps2の設定方法については、後述する。
【0107】
第1条件が満たされない場合(S7:NO)、ステップS7を繰り返す。すなわち、FC50を待機状態として電力供給を開始しない。
【0108】
第1条件が満たされる場合(S7:YES)(
図12の時点t22参照)、ステップS8において、ECU30は、FC50からの電力供給開始の要否を判定するための第2条件が満たされるか否かを判定する。当該第2条件としては、例えば、所定時間T1が経過したか否かを判定する。所定時間T1は、「Air−Air状態」からの起動(Air−Air起動)時の開始待ち時間である(
図12も参照)。
【0109】
図10を参照して説明したように、「Air−Air状態」の場合、FC電圧Vfcは急激に立ち上がる。このため、閾値THps2が、この急激な立ち上がりの際のFC電圧Vfcの範囲に含まれる場合、第2セルには反応ガスが十分に供給されていない可能性又は第2セルのセル電圧Vcellの立ち上がりが遅れている可能性がある。そこで、本実施形態では、FC電圧Vfcでの判断に加え、所定時間T1を用いることで電力供給開始の要否の判断の精度を向上させる。なお、ステップS8の判断を用いずに、ステップS7の判断のみを用いてもよい。或いは、ステップS7の判断を用いずに、ステップS8の判断のみを用いてもよい。
【0110】
第2条件が満たされない場合(S8:NO)、ステップS8を繰り返す。すなわち、FC50を待機状態として電力供給を開始しない。
【0111】
第2条件が満たされる場合(S8:YES)(
図12の時点t23参照)、ステップS9において、ECU30は、FC50からの電力供給を開始させる。具体的には、ECU30は、コンタクタ58を閉にさせた上で、FC−VCU24又はBAT−VCU26を作動させる。その際、FC目標電圧Vfc_tarを第1段階目標値Vtar12に設定する。FC50の特性(第1セル及び第2セルの電圧立ち上がり時間Ts)等によっては、目標値Vtar12を、ステップS5で用いる目標値Vtar11と等しくしてもよい。ステップS9の後は、ステップS10に進む。
【0112】
ステップS5又はS9の後、ステップS10において、ECU30は、所定時間T2(反応ガス供給時間)が経過したか否かを判定する。所定時間T2は、上述した遅延時間Td1、Td2を補償するために設定される時間である。例えば、所定時間T2は、遅延時間Td1、Td2のうち長いもの以上とすることができる。この場合、所定時間T2は、第2セルのセル電圧Vcellが閾値THvcellに到達するのに必要な時間以上としてもよい。上記のような所定時間T2が経過すると、第2セルについても反応ガスが十分に供給され、セル電圧Vcellを閾値THvcellまで上昇させることが可能となる。
【0113】
なお、遅延時間Td1、Td2が互いに異なる場合、H
2−H
2起動の場合とAir−Air起動の場合とで所定時間T2を異ならせてもよい。この場合、H
2−H
2起動の場合、所定時間T2は遅延時間Td1以上とすることができる。また、Air−Air起動の場合、所定時間T2は遅延時間Td2以上とすることができる。いずれの場合も、所定時間T2は、第2セルのセル電圧Vcellが閾値THvcellに到達するのに必要な時間以上としてもよい。
【0114】
所定時間T2が経過していない場合(S10:NO)、ステップS11において、ECU30は、バッテリSOCが高いか否かを判定する。具体的には、ECU30は、バッテリSOCが過充電判定閾値THsoc(以下、「閾値THsoc」ともいう。)以上であるか否かを判定する。閾値THsocは、バッテリ22が過充電となっているか否かを判定する閾値である。なお、ステップS11は、H
2−H
2起動の場合のみに行い、Air−Air起動の場合、ステップS11を省略してもよい。
【0115】
バッテリSOCが高くない場合(S11:NO)、ステップS10に戻る。すなわち、第1段階目標値Vtar11又はVtar12をFC目標電圧Vfc_tarとしてFC50の発電を継続する。所定時間T2が経過した場合(S10:YES)(
図12の時点t24、t26参照)又はバッテリSOCが高い場合(S11:YES)、ステップS12に進む。
【0116】
ステップS12において、ECU30は、第1段階目標値Vtar11又はVtar12から第2段階目標値Vtar2にFC目標電圧Vfc_tarを切り替える。上記のように、H
2−H
2起動の場合、目標値Vtar2は、目標値Vtar11よりも高い値である(
図12及び
図13参照)。従って、FC電圧Vfcが目標値Vtar2となるように制御すると、FC電流Ifc及びFC電力Pfcを抑制することとなる。一方、Air−Air起動の場合、目標値Vtar2は、目標値Vtar12よりも低い値である(
図12参照)。従って、FC電圧Vfcが目標値Vtar2となるように制御すると、FC電流Ifc及びFC電力Pfcを増加することとなる。
【0117】
なお、ステップS12で用いる第2段階目標値Vtar2は、バッテリ22のSOCに応じて可変としてもよい。すなわち、SOCが相対的に低いとき、第2段階目標値Vtar2を低下させ、SOCが相対的に高いとき(例えば、過充電に近い値であるとき)、第2段階目標値Vtar2を増加させることもできる。この場合、H
2−H
2起動では、第2段階目標値Vtar2が取り得る最大値を第1段階目標値Vtar11よりも高い値とし、第2段階目標値Vtar2が取り得る最小値を第1段階目標値Vtar11よりも低い値としてもよい。一方、Air−Air起動では、第2段階目標値Vtar2が取り得る最大値及び最小値をいずれも第1段階目標値Vtar12よりも低い値としてもよい。このように、第2段階目標値Vtar2をSOCに応じて可変とすることにより、SOCに応じて柔軟に第2段階目標値Vtar2を設定することが可能となる。
【0118】
ステップS13において、ECU30は、FC50の起動を完了するか否かを判定する。換言すると、通常発電を行うか否かを判定する。FC50の起動を完了しない場合(S13:NO)、ステップS13を繰り返す。すなわち、第2段階目標値Vtar2をFC目標電圧Vfc_tarとしてFC50の発電を継続する。FC50の起動を完了する場合(S13:YES)、
図11の処理を終了し、通常発電に移行する。
【0119】
(2−4−3.電力供給開始閾値THps1、THps2及び第1段階目標値Vtar11、Vtar12の設定)
次に、電力供給開始閾値THps1、THps2及び第1段階目標値Vtar11、Vtar12の設定方法について説明する。
【0120】
図13は、FC50の起動時(H
2−H
2起動時)においてFC50から電力供給を行わせずに反応ガス(燃料ガス及び酸化剤ガス)を供給した場合のセル電圧Vcellの特性の一例を示す図である。
図13には、最大セル電圧Vcell_max、平均セル電圧Vcell_ave及び最小セル電圧Vcell_minが示される。さらに、
図13には、セル電圧VcellがVc1以上のセル数Nvc1、セル電圧VcellがVc2以上のセル数Nvc2及びセル電圧VcellがVc3V以上のセル数Nvc3が示される。
図13中のNtotalは、FC50におけるFCセルの総数を示す。
【0121】
FC50からの電力供給の開始タイミングに関し、FC電圧Vfcを制御しない場合、FC電圧Vfcは、開放端電圧(OCV)まで上昇してしまう。上記のように、FC電圧Vfcが酸化還元領域R3、酸化領域R4、カーボン酸化領域R5内の値になってしまうと、FC50の劣化が進んでしまう。特にカーボン酸化領域R5では劣化が顕著である。そこで、FC電圧Vfcが高くなり過ぎないように制御する必要がある。本実施形態では、FC−VCU24又はBAT−VCU26を用いてFC電圧Vfcを制御する。
【0122】
また、FC−VCU24又はBAT−VCU26によりFC電圧Vfcを制御するためには、FC50から電力を供給させる必要がある。この場合、セルに十分な反応ガス(燃料ガス又は酸化剤ガス)が行き届かない状態でFC50から電力供給をさせると、セル電圧Vcellが低い第2セルは、劣化が進んでしまう。
【0123】
図13において、時点t31では、最大セル電圧Vcell_maxがVc2直前まで到達し、最小セル電圧Vcell_minは、Vc4である。時点t31において、FC50からの電力供給を開始すれば、最大セル電圧Vcell_maxのセルを含む全てのセルでVc2を下回るように電圧制御が可能である。加えて、最大セル電圧Vcell_maxがVc2に届かない状態で、最小セル電圧Vcell_minを比較的高くさせることが可能となる。換言すると、Vc2を上記閾値THvcellとした場合、最小セル電圧Vcell_minのセルの劣化を相対的に抑制することが可能となる。
【0124】
そこで、本実施形態では、最大セル電圧Vcell_maxがVc2[V]未満となるようにFC電圧Vfcを制御することで、最大セル電圧Vcell_maxのセル及び最小セル電圧Vcell_minのセルのいずれも劣化を抑制する。
【0125】
なお、仮に平均セル電圧Vcell_aveがVc2未満となるように電圧制御した場合、セル電圧VcellがVc2以上となるセル数Nvc2が、時点t32では全体の約1/3を超えてしまい、セルの劣化を防ぐという観点からは十分とはいえない。
【0126】
また、
図13の特性は、あくまで一例であり、各セルの特性によっては異なる結果が生じ得ることに留意されたい。重要なのは、電力供給開始閾値THps1、THps2及び第1段階目標値Vtar11は、最大セル電圧Vcell_maxのセルの劣化を抑制する観点及び各セル電圧Vcellのばらつきを考慮して設定する観点に着目して設定することである。
【0127】
また、
図10に示したように、「Air−Air状態」では、FC電圧Vfcの立ち上がりが速いため、アノード側で水素が不足した状態の発電を行い易い。この点を考慮して、FC50からの電力供給のタイミングを遅くするため、閾値THps1よりも閾値THps2を高く設定する。この場合、閾値THps2は、最大セル電圧Vcell_maxのセルの劣化を抑制する観点及び各セル電圧Vcellのばらつきを考慮して設定する観点の両方に着目して設定した値とする代わりに、第2セルのセル電圧Vcellが立ち上がりの遅れを補償するFC電圧Vfcに対応して設定する。従って、第2セルの電圧立ち上がり時間Tsに着目する場合、第2段階目標値Vtar2を第1段階目標値Vtar12よりも低い値に設定することとなり得る。
【0128】
(2−4−4.タイムチャートの例)
図14は、「H
2−H
2状態」において
図11の制御を用いた場合におけるFC電圧Vfc、FC電流Ifc、最大セル電圧Vcell_max、最小セル電圧Vcell_min及び平均セル電圧Vcell_aveの例を示すタイムチャートである。本タイムチャートでは、電力供給開始閾値THps1と第1段階目標値Vtar11とが等しい場合(THps1=Vtar11)を想定する。また、FC電圧Vfcとセル電圧Vcellでは縮尺が異なっていることに留意されたい。
【0129】
時点t41において、メインスイッチ116がオフからオンに切り替えられると、FC50の起動制御(
図11)が開始される。これに伴い、FC電圧Vfc、最大セル電圧Vcell_max及び平均セル電圧Vcell_aveが上昇していく。また、最小セル電圧Vcell_minは、遅延時間Tdが経過した時点で立ち上がりを開始する。
【0130】
時点t42において、FC電圧Vfcが電力供給開始閾値THps1(=第1段階目標値Vtar11)に到達すると、ECU30は、コンタクタ58を閉とし、FC50からの電力供給を開始させる。これに伴い、FC電流Ifcが増加する。また、この際のFC目標電圧Vfc_tarは、第1段階目標値Vtar11である。
【0131】
時点t43において、所定時間T2が経過すると、ECU30は、第1段階目標値Vtar11から第2段階目標値Vtar2へとFC目標電圧Vfc_tarを切り替える。これに伴い、各電圧パラメータ(FC電圧Vfc、最大セル電圧Vcell_max、最小セル電圧Vcell_min及び平均セル電圧Vcell_ave)が増加する。また、FC50の電流−電圧(IV)特性(
図5)より、FC電流Ifcが低下する。
【0132】
3.本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、反応ガスの残存状態に応じて電力供給開始閾値THps1、THps2及び第1段階目標値Vtar11、Vtar12を切り替える(
図11)。従って、反応ガスの残存状態を踏まえて電力供給開始閾値THps1、THps2及び第1段階目標値Vtar11、Vtar12を設定可能となり、FCスタック50の劣化を防止することが可能となる。
【0133】
本実施形態では、ECU30(制御部)は、第1段階目標値Vtar11、Vtar12の後に用いる目標電圧パラメータである第2段階目標値Vtar2を設定し、FCスタック50からの電力供給の開始後に所定の条件が満たされたか否かを判定し(S10、S11)、所定の条件が満たされた場合、第1段階目標値Vtar11、Vtar12から第2段階目標値Vtar2に切り替えてFC電圧Vfcを変化させてFC電力Pfcを変化させ、各セルの劣化が進む電圧範囲を劣化進行領域と定義し、電圧立ち上がり時間Tsが短いセルを第1セルと定義し、電圧立ち上がり時間Tsが長いセルを第2セルと定義するとき、前記所定の条件は、第2セルの電圧立ち上がり時間Tsより長く且つ反応ガスの残存状態に基づいて算出される反応ガス供給時間が経過したこと(S10)、及びバッテリSOC(過充電判定パラメータ)が、過充電を判定するための過充電判定閾値THsocを上回ったこと(S11)とする。
【0134】
これにより、所定時間T2(反応ガス供給時間)が経過した場合(
図11のS10:YES)又はバッテリ22(蓄電池)が過充電の状態になりそうな場合(S11:YES)には、FCスタック50のFC目標電圧Vfc_tar(目標電圧パラメータ)を目標値Vtar11から目標値Vtar2に切り替えてFC50の出力電力Pfcを変化させる。これにより、FC50からの不要な電力供給の抑制、又はバッテリ22の保護を図ることが可能となる。
【0135】
本実施形態では、H
2−H
2起動では、第2段階目標値Vtar2を、第1段階目標値Vtar11よりも高い目標電圧パラメータに対応させ、所定の条件が満たされた場合、第1段階目標値Vtar11から第2段階目標値Vtar2に切り替えてFC電圧Vfcを上昇させてFC電力Pfcを減少させ、第1段階目標値Vtar11は、第2セルのセル電圧Vcellが立ち上がっていない状態において、第1セルのセル電圧Vcellが、劣化進行領域内の値である劣化進行電圧を下回るFC電圧Vfcに対応して設定され、第2段階目標値Vtar2は、第2セルのセル電圧Vcellが立ち上がった状態において、第1セルのセル電圧Vcellが劣化進行電圧を下回るFC電圧Vfcに対応して設定される。
【0136】
これにより、H
2−H
2起動では、第1段階目標値Vtar11及び第2段階目標値Vtar2のいずれについても第1セル(電圧立ち上がり時間Tsが短いセル)の劣化防止を図ることが可能となる。
【0137】
本実施形態において、Air−Air起動では、第2段階目標値Vtar2を、第1段階目標値Vtar12よりも低い目標電圧パラメータに対応させ、所定の条件が満たされた場合、第1段階目標値Vtar12から第2段階目標値Vtar2に切り替えてFC電圧Vfcを低下させてFC電力Pfcを増加させ、第1段階目標値Vtar12は、第2セルのセル電圧Vcellが立ち上がっていない状態において、第2セルのセル電圧Vcellが、第2セルのセル電圧Vcellの立ち上がりの遅れを補償するFC電圧Vfcに対応して設定され、第2段階目標値Vtar2は、第2セルのセル電圧Vcellが立ち上がった状態において、第1セルのセル電圧Vcellが劣化進行電圧を下回るFC電圧Vfcに対応して設定され、所定の条件は、第2セルの電圧立ち上がり時間Tsより長く且つ反応ガスの残存状態に基づいて算出される反応ガス供給時間が経過したこととする。
【0138】
これにより、Air−Air起動では、第1段階目標値Vtar12では第2セル(電圧立ち上がり時間Tsが長いセル)の劣化防止を図ることが可能となる。また、所定時間T2(反応ガス供給時間)が経過した場合(
図11のS10:YES)には、FCスタック50のFC目標電圧Vfc_tar(目標電圧パラメータ)を第1段階目標値Vtar12から第2段階目標値Vtar2に切り替えてFC50のFC電力Pfcを増加させる。これにより、例えば、第1セルのセル電圧Vcellの立ち上がりが相対的に速い場合において、第2セルに加え、第1セル(電圧立ち上がり時間Tsが短いセル)の劣化防止を図ることが可能となる。
【0139】
本実施形態において、FCシステム12は、FC−VCU24及びBAT−VCU26を備え、FC−VCU24又はBAT−VCU26の変圧率を制御することにより、FC電圧Vfcを制御する。これにより、FC電圧Vfcを簡易に制御することが可能となる。
【0140】
本実施形態において、FCシステム12は、FC電圧Vfc(スタック電圧)を検出する電圧センサ54(スタック電圧検出部)を備え、ECU30(制御部)は、FC電圧Vfcが電力供給開始閾値THps1又はTHps2に到達した場合(
図11のS4:YES又はS7:YES)、FC50からの電力供給を開始させる(S5又はS9)。スタック電圧としてのFC電圧Vfcを用いることで、セル電圧Vcellを用いる場合と比較して、簡易な構成で電力供給の開始タイミングを判定することが可能となる。
【0141】
本実施形態において、FCシステム12は、過充電判定パラメータとしてのバッテリSOCを検出する残容量検出部(電圧センサ60、電流センサ62及びECU30)を備え、ECU30(制御部)は、FC50からの電力供給の開始後、SOCが過充電判定閾値THsocを上回った場合(
図11のS11:YES)、H
2−H
2起動時第1段階目標値Vtar11から第2段階目標値Vtar2に切り替えてFC電圧Vfcを増加させてFC電流Ifc及びFC電力Pfcを減少させる。これにより、バッテリSOCに基づいて制御することで、より確実にバッテリ22の過充電を防ぐことが可能となる。
【0142】
4.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0143】
[4−1.搭載対象]
上記実施形態では、FCシステム12をFC車両10に搭載したが、これに限らず、例えば、FC50の起動時に第1及び第2段階目標値Vtar11、Vtar12、Vtar2を用いる観点からすれば、FCシステム12を別の対象に搭載してもよい。例えば、FCシステム12を船舶や航空機等の移動体に用いることもできる。或いは、FCシステム12を、ロボット、製造装置、家庭用電力システム又は家電製品に適用してもよい。
【0144】
[4−2.FCシステム12の構成]
上記実施形態では、FC50と高電圧バッテリ22を並列に配置し、FC50の手前に昇圧コンバータ24を配置し、バッテリ22の手前に昇降圧コンバータ26を配置する構成としたが、これに限らない。例えば、バッテリ22の手前に配置するDC/DCコンバータを昇降圧式ではなく、昇圧式としてもよい。或いは、FC50と高電圧バッテリ22を並列に配置し、FC−VCU24を用いず、BAT−VCU26のみを用いる構成であってもよい。或いは、FC50とFC−VCU24のみを用い、バッテリ22及びBAT−VCU26を用いない構成も可能である。
【0145】
上記実施形態では、モータ14を交流式としたが、例えば、FC50の起動時に第1及び第2段階目標値Vtar11、Vtar12、Vtar2を用いる利用する観点からすれば、モータ14は、直流式とすることも可能である。この場合、インバータ16を省略することも可能である。
【0146】
上記実施形態では、モータ14をFC車両10の走行用又は駆動用としたが、例えば、FC50の起動時に第1及び第2段階目標値Vtar11、Vtar12、Vtar2を用いる観点からすれば、これに限らない。例えば、モータ14を車載機器(例えば、電動パワーステアリング、エアコンプレッサ、エアコンディショナ)用に用いてもよい。
【0147】
[4−3.FCシステム12の制御]
上記実施形態では、電力供給開始閾値THps1、THps2並びに第1及び第2段階目標値Vtar11、Vtar12、Vtar2をFC電圧Vfcの値とした。しかしながら、例えば、FC50の起動時にFC電圧Vfcを2段階に制御する観点からすれば、これらの値は、FC電圧Vfc以外の電圧パラメータであってもよい。そのような電圧パラメータとしては、例えば、セル電圧Vcell(最大セル電圧Vcell_max、最小セル電圧Vcell_min及び平均セル電圧Vcell_aveを含む。)を用いることができる。
【0148】
例えば、
図11のフローチャートにおいて、最大セル電圧Vcell_maxの値として、電力供給開始閾値THps1、THps2並びに第1及び第2段階目標値Vtar11、Vtar12、Vtar2を設定してもよい。
【0149】
そのような変形例に係るFCシステム12は、複数のセルの出力電圧であるセル電圧Vcellを検出するセル電圧モニタ52(セル電圧検出部)を備え、ECU30(制御部)は、電力供給開始閾値THps1、THps2と比較する電圧パラメータとして、最大セル電圧Vcell_maxを用い、さらに、ECU30は、所定時間T2(反応ガス供給時間)が経過したか否かを、最大セル電圧Vcell_maxが所定のセル電圧閾値(例えば、
図13の電圧Vc1、Vc2、Vc3のいずれか)を上回るか否かに基づいて判定し、電力供給開始閾値THps1、THps2は、反応ガスの残存状態に基づいて設定される。
【0150】
上記変形例によれば、最大セル電圧Vcell_maxを用いて電力供給開始タイミング及び出力電力の制限タイミングを制御することが可能となる。これにより、H
2−H
2起動時には、各セルのセル電圧Vcellが劣化進行電圧以上となることをより確実に回避することが可能となる。また、Air−Air起動時には、第2セルの劣化防止等をより確実に行うことが可能となる。
【0151】
電力供給開始閾値THps1、THps2並びに第1及び第2段階目標値Vtar11、Vtar12、Vtar2について、複数種類の電圧パラメータを同時に用いることも可能である。
【0152】
上記実施形態では、第1及び第2段階目標値Vtar11、Vtar12、Vtar2を用いることで、起動時におけるFC目標電圧Vfc_tarを2段階に変化させた。しかしながら、例えば、第1セル及び第2セルの電圧立ち上がり時間Tsの相違に着目した制御の観点からすれば、起動時におけるFC目標電圧Vfc_tarを3段階以上で変化させてもよい。この場合、FC目標電圧Vfc_tar又は電圧パラメータの目標値を徐々に上げて行くことで、FC電流Ifc及びFC電力Pfcを徐々に低下させる。
【0153】
上記実施形態では、反応ガスの残存状態として、H
2−H
2状態とAir−Air状態の2つを設定したが、アノード側及びカソード側における水素濃度及び酸素濃度に応じて3つ以上の残存状態を設定してもよい。
【0154】
上記実施形態では、第1段階目標値Vtar11、Vtar12から第2段階目標値Vtar2へと切り替える条件として、所定時間T2が経過したこと(
図11のS10)及びバッテリSOCが閾値THsoc以上となったこと(S11)の両方を用いた。しかしながら、その他の観点(例えば、FC50の起動時に第1及び第2段階目標値Vtar11、Vtar12、Vtar2を用いる観点)からすれば、いずれか一方のみを用いてもよい。
【0155】
上記実施形態では、バッテリ22が過充電状態にあるか否かをSOCを用いて判定したが(
図11のS11)、過充電を判定可能なパラメータであれば、SOC以外の数値を用いてもよい。
【0156】
上記実施形態では、Air−Air状態の場合(
図11のS2:NO)において、FC50からの電力供給を開始する条件として、FC電圧Vfcが電力供給開始閾値THps2以上となったこと(S7)及び所定時間T1が経過したこと(S8)の両方を用いた。しかしながら、その他の観点(例えば、FC50の起動時に第1及び第2段階目標値Vtar12、Vtar2を用いる観点)からすれば、いずれか一方のみを用いてもよい。