【実施例1】
【0076】
ここでは、同一基板上に画素部(nチャネル型TFT及びpチャネル型TFT)と、画
素部の周辺に設ける駆動回路のTFT(nチャネル型TFT及びpチャネル型TFT)を
同時に作製し、OLEDを有する発光装置を作製する作製方法について詳細に説明する。
【0077】
まず、厚さ0.7mmの耐熱性ガラス基板(第1の基板300)上にプラズマCVD法
により下地絶縁膜の下層301として、プラズマCVD法で成膜温度400℃、原料ガス
SiH
4、NH
3、N
2Oから作製される酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=
27%、N=24%、H=17%)を50nm(好ましくは10〜200nm)形成する。次
いで、表面をオゾン水で洗浄した後、表面の酸化膜を希フッ酸(1/100希釈)で除去
する。次いで、下地絶縁膜の上層302として、プラズマCVD法で成膜温度400℃、
原料ガスSiH
4、N
2Oから作製される酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=
59%、N=7%、H=2%)を100nm(好ましくは50〜200nm)の厚さに積層
形成し、さらに大気解放せずにプラズマCVD法で成膜温度300℃、成膜ガスSiH
4
で非晶質構造を有する半導体膜(ここではアモルファスシリコン膜)を54nmの厚さ(
好ましくは25〜80nm)で形成した。
【0078】
本実施例では下地絶縁膜104を2層構造として示したが、珪素を主成分とする絶縁膜の
単層膜または2層以上積層させた構造として形成しても良い。また、半導体膜の材料に限
定はないが、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム(Si
XGe
1-X(X=0.
0001〜0.02))合金などを用い、公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、また
はプラズマCVD法等)により形成すればよい。また、プラズマCVD装置は、枚葉式の
装置でもよいし、バッチ式の装置でもよい。また、同一の成膜室で大気に触れることなく
下地絶縁膜と半導体膜とを連続成膜してもよい。
【0079】
次いで、非晶質構造を有する半導体膜の表面を洗浄した後、オゾン水で表面に約2nm
の極薄い酸化膜を形成する。次いで、TFTのしきい値を制御するために微量な不純物元
素(ボロンまたはリン)のドーピングを行う。ここでは、ジボラン(B
2H
6)を質量分離
しないでプラズマ励起したイオンドープ法を用い、ドーピング条件を加速電圧15kV、
ジボランを水素で1%に希釈したガスを流量30sccmとし、ドーズ量2×10
12/c
m
2で非晶質シリコン膜にボロンを添加した。
【0080】
次いで、重量換算で10ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布し
た。塗布に代えてスパッタ法でニッケル元素を全面に散布する方法を用いてもよい。
【0081】
次いで、加熱処理を行い結晶化させて結晶構造を有する半導体膜を形成する。
この加熱処理は、電気炉の熱処理または強光の照射を用いればよい。電気炉の熱処理で行
う場合は、500℃〜650℃で4〜24時間で行えばよい。ここでは脱水素化のための
熱処理(500℃、1時間)の後、結晶化のための熱処理(550℃、4時間)を行って
結晶構造を有するシリコン膜を得た。なお、ここでは炉を用いた熱処理を用いて結晶化を
行ったが、短時間での結晶化が可能なランプアニール装置で結晶化を行ってもよい。なお
、ここではシリコンの結晶化を助長する金属元素としてニッケルを用いた結晶化技術を用
いたが、他の公知の結晶化技術、例えば固相成長法やレーザー結晶化法を用いてもよい。
【0082】
次いで、結晶構造を有するシリコン膜表面の酸化膜を希フッ酸等で除去した後、結晶化率
を高め、結晶粒内に残される欠陥を補修するためのレーザー光(XeCl:波長308n
m)の照射を大気中、または酸素雰囲気中で行う。レーザー光には波長400nm以下のエ
キシマレーザ光や、YAGレーザの第2高調波、第3高調波を用いる。ここでは、繰り返
し周波数10〜1000Hz程度のパルスレーザー光を用い、当該レーザー光を光学系にて
100〜500mJ/cm
2に集光し、90〜95%のオーバーラップ率をもって照射し、シリ
コン膜表面を走査させればよい。ここでは、繰り返し周波数30Hz、エネルギー密度4
70mJ/cm
2でレーザー光の照射を大気中で行なった。なお、大気中、または酸素雰囲気中
で行うため、レーザー光の照射により表面に酸化膜が形成される。なお、ここではパルス
レーザーを用いた例を示したが、連続発振のレーザーを用いてもよく、非晶質半導体膜の
結晶化に際し、大粒径に結晶を得るためには、連続発振が可能な固体レーザを用い、基本
波の第2高調波〜第4高調波を適用するのが好ましい。代表的には、Nd:YVO
4レーザ
ー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を適用す
ればよい。連続発振のレーザーを用いる場合には、出力10Wの連続発振のYVO
4レー
ザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換する。また、共振器の中
にYVO
4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ま
しくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光に成形して、被処理体に
照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm
2程度(好ましくは
0.1〜10MW/cm
2)が必要である。そして、10〜2000cm/s程度の速度
でレーザ光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射すればよい。
【0083】
なお、ここではシリコンの結晶化を助長する金属元素としてニッケルを用いた熱結晶化を
行った後にレーザー光を照射する技術を用いたが、ニッケルを添加することなく、連続発
振のレーザー(YVO
4レーザーの第2高調波)でアモルファスシリコン膜を結晶化させ
てもよい。
【0084】
次いで、レーザー光の照射により形成された酸化膜を希フッ酸で除去した後、オゾン水
で表面を120秒処理して合計1〜5nmの酸化膜からなるバリア層を形成する。ここで
はオゾン水を用いてバリア層を形成したが、酸素雰囲気下の紫外線の照射で結晶構造を有
する半導体膜の表面を酸化する方法や酸素プラズマ処理により結晶構造を有する半導体膜
の表面を酸化する方法やプラズマCVD法やスパッタ法や蒸着法などで1〜10nm程度
の酸化膜を堆積してバリア層を形成してもよい。本明細書中、バリア層とは、ゲッタリン
グ工程において金属元素が通過可能な膜質または膜厚を有し、且つ、ゲッタリングサイト
となる層の除去工程においてエッチングストッパーとなる層を指している。
【0085】
次いで、バリア層上にスパッタ法にてゲッタリングサイトとなるアルゴン元素を含む非
晶質シリコン膜を50nm〜400nm、ここでは膜厚150nmで形成する。ここでの
成膜条件は、成膜圧力を0.3Paとし、ガス(Ar)流量を50(sccm)とし、成膜パ
ワーを3kWとし、基板温度を150℃とした。なお、上記条件での非晶質シリコン膜に
含まれるアルゴン元素の原子濃度は、3×10
20/cm
3〜6×10
20/cm
3、酸素の原
子濃度は1×10
19/cm
3〜3×10
19/cm
3である。その後、電気炉を用いて550
℃、4時間の熱処理を行いゲッタリングして、結晶構造を有する半導体膜中のニッケル濃
度を低減した。
電気炉に代えてランプアニール装置を用いてもよい。
【0086】
次いで、バリア層をエッチングストッパーとして、ゲッタリングサイトであるアルゴン
元素を含む非晶質シリコン膜を選択的に除去した後、バリア層を希フッ酸で選択的に除去
する。なお、ゲッタリングの際、ニッケルは酸素濃度の高い領域に移動しやすい傾向があ
るため、酸化膜からなるバリア層をゲッタリング後に除去することが望ましい。
【0087】
次いで、得られた結晶構造を有するシリコン膜(ポリシリコン膜とも呼ばれる)の表面
にオゾン水で薄い酸化膜を形成した後、レジストからなるマスクを形成し、所望の形状に
エッチング処理して島状に分離された半導体層を形成する。半導体層を形成した後、レジ
ストからなるマスクを除去する。
【0088】
次いで、フッ酸を含むエッチャントで酸化膜を除去すると同時にシリコン膜の表面を洗
浄した後、ゲート絶縁膜303となる珪素を主成分とする絶縁膜を形成する。ここでは、
プラズマCVD法により115nmの厚さで酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、
O=59%、N=7%、H=2%)で形成した。
【0089】
次いで、ゲート絶縁膜上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜と、膜厚100〜40
0nmの第2の導電膜とを積層形成する。本実施例では、ゲート絶縁膜303上に膜厚5
0nmの窒化タンタル膜、膜厚370nmのタングステン膜を順次積層し、以下に示す手
順でパターニングを行って各ゲート電極及び各配線を形成する。
【0090】
第1の導電膜及び第2の導電膜を形成する導電性材料としてはTa、W、Ti、Mo、
Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材
料で形成する。また、第1の導電膜及び第2の導電膜としてリン等の不純物元素をドーピ
ングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜や、、AgPdCu合金を用いてもよい
。また、2層構造に限定されず、例えば、膜厚50nmのタングステン膜、膜厚500n
mのアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜、膜厚30nmの窒化チタン膜を順
次積層した3層構造としてもよい。また、3層構造とする場合、第1の導電膜のタングス
テンに代えて窒化タングステンを用いてもよいし、第2の導電膜のアルミニウムとシリコ
ンの合金(Al−Si)膜に代えてアルミニウムとチタンの合金膜(Al−Ti)を用い
てもよいし、第3の導電膜の窒化チタン膜に代えてチタン膜を用いてもよい。また、単層
構造であってもよい。
【0091】
上記第1の導電膜及び第2の導電膜のエッチング(第1のエッチング処理および第2の
エッチング処理)にはICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッ
チング法を用いると良い。ICPエッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極
に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調
節することによって所望のテーパー形状に膜をエッチングすることができる。ここでは、
レジストからなるマスクを形成した後、第1のエッチング条件として1Paの圧力でコイル
型の電極に700WのRF(13.56MHz)電力を投入し、エッチング用ガスにCF
4とCl
2
とO
2とを用い、それぞれのガス流量比を25/25/10(sccm)とし、基板側(
試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイア
ス電圧を印加する。なお、基板側の電極面積サイズは、12.5cm×12.5cmであ
り、コイル型の電極面積サイズ(ここではコイルの設けられた石英円板)は、直径25c
mの円板である。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして端部をテーパー
形状とする。この後、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング条件に変え
、エッチング用ガスにCF
4とCl
2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sc
cm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入して
プラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも2
0WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF
4
とCl
2を混合した第2のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチング
される。なお、ここでは、第1のエッチング条件及び第2のエッチング条件を第1のエッ
チング処理と呼ぶこととする。
【0092】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング処理を行う。
ここでは、第3のエッチング条件としてエッチング用ガスにCF
4とCl
2とを用い、それ
ぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500
WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを60秒行った。基
板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)
電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この後、レジストからなるマ
スクを除去せずに第4のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF
4とCl
2とO
2
とを用い、それぞれのガス流量比を20/20/20(sccm)とし、1Paの圧力でコ
イル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約20秒
程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力
を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。なお、ここでは、第3のエッチン
グ条件及び第4のエッチング条件を第2のエッチング処理と呼ぶこととする。この段階で
第1の導電層304aを下層とし、第2の導電層304bを上層とするゲート電極304
および各電極305〜307が形成される。この段階で、画素の上面構造を、例えば、図
6に示したものとすればよい。
【0093】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、ゲート電極304〜307をマスクと
して全面にドーピングする第1のドーピング処理を行う。第1のドーピング処理はイオン
ドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1.
5×10
14atoms/cm
2とし、加速電圧を60〜100keVとして行う。n型を付与する
不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。自己整合的に第
1の不純物領域(n
--領域)322〜325が形成される。
【0094】
次いで、新たにレジストからなるマスクを形成するが、この際、スイッチングTFT4
03のオフ電流値を下げるため、マスクは、画素部401のスイッチングTFT403を
形成する半導体層のチャネル形成領域及びその一部を覆って形成する。また、マスクは駆
動回路のpチャネル型TFT406を形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺
の領域を保護するためにも設けられる。加えて、マスクは、画素部401の電流制御用T
FT404を形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域を覆って形成され
る。
【0095】
次いで、上記レジストからなるマスクを用い、選択的に第2のドーピング処理を行って
、ゲート電極の一部と重なる不純物領域(n
-領域)を形成する。第2のドーピング処理
はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。ここでは、イオンドープ法を用
い、フォスフィン(PH
3)を水素で5%に希釈したガスを流量30sccmとし、ドー
ズ量を1.5×10
14atoms/cm
2とし、加速電圧を90keVとして行う。この場合、レ
ジストからなるマスクと第2の導電層とがn型を付与する不純物元素に対するマスクとな
り、第2の不純物領域311、312が形成される。第2の不純物領域には1×10
16〜
1×10
17/cm
3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加される。ここでは、第2の
不純物領域と同じ濃度範囲の領域をn
-領域とも呼ぶ。
【0096】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第3のドーピング処理を行う。
第3のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。
n型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。
ここでは、イオンドープ法を用い、フォスフィン(PH
3)を水素で5%に希釈したガス
を流量40sccmとし、ドーズ量を2×10
15atoms/cm
2とし、加速電圧を80keV
として行う。この場合、レジストからなるマスクと第1の導電層及び第2の導電層がn型
を付与する不純物元素に対するマスクとなり、第3の不純物領域313、314、326
〜328が形成される。第3の不純物領域には1×10
20〜1×10
21/cm
3の濃度範囲で
n型を付与する不純物元素を添加される。ここでは、第3の不純物領域と同じ濃度範囲の
領域をn
+領域とも呼ぶ。
【0097】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスクを形成
して第4のドーピング処理を行う。第4のドーピング処理により、pチャネル型TFTを
形成する半導体層を形成する半導体層にp型の導電型を付与する不純物元素が添加された
第4の不純物領域318、319、332、333及び第5の不純物領域316、317
、330、331を形成する。
【0098】
また、第4の不純物領域318、319、332、333には1×10
20〜1×10
21/c
m
3の濃度範囲でp型を付与する不純物元素が添加されるようにする。尚、第4の不純物領
域318、319、332、333には先の工程でリン(P)
が添加された領域(n
--領域)であるが、p型を付与する不純物元素の濃度がその1.5
〜3倍添加されていて導電型はp型となっている。ここでは、第4の不純物領域と同じ濃
度範囲の領域をp
+領域とも呼ぶ。
【0099】
また、第5の不純物領域316、317、330、331は第2の導電層のテーパー部
と重なる領域に形成されるものであり、1×10
18〜1×10
20/cm
3の濃度範囲でp型を
付与する不純物元素が添加されるようにする。ここでは、第5の不純物領域と同じ濃度範
囲の領域をp
-領域とも呼ぶ。
【0100】
以上までの工程でそれぞれの半導体層にn型またはp型の導電型を有する不純物領域が
形成される。導電層304〜307はTFTのゲート電極となる。
【0101】
次いで、ほぼ全面を覆う絶縁膜(図示しない)を形成する。本実施例では、プラズマC
VD法により膜厚50nmの酸化シリコン膜を形成した。勿論、この絶縁膜は酸化シリコ
ン膜に限定されるものでなく、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用
いても良い。
【0102】
次いで、それぞれの半導体層に添加された不純物元素を活性化処理する工程を行う。こ
の活性化工程は、ランプ光源を用いたラピッドサーマルアニール法(RTA法)、或いは
YAGレーザーまたはエキシマレーザーを裏面から照射する方法、或いは炉を用いた熱処
理、或いはこれらの方法のうち、いずれかと組み合わせた方法によって行う。
【0103】
また、本実施例では、上記活性化の前に絶縁膜を形成した例を示したが、上記活性化を
行った後、絶縁膜を形成する工程としてもよい。
【0104】
次いで、窒化シリコン膜からなる第1の層間絶縁膜308を形成して熱処理(300〜
550℃で1〜12時間の熱処理)を行い、半導体層を水素化する工程を行う。この工程
は第1の層間絶縁膜308に含まれる水素により半導体層のダングリングボンドを終端す
る工程である。酸化シリコン膜からなる絶縁膜(図示しない)の存在に関係なく半導体層
を水素化することができる。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより
励起された水素を用いる)を行っても良い。
【0105】
次いで、第1の層間絶縁膜308上に有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜309
を形成する。本実施例では塗布法により膜厚1.6μmのアクリル樹脂膜309aを形成
し、さらに、スパッタ法により200nmの窒化シリコン膜309bを積層する。なお、
ここでは、1.6μmのアクリル樹脂に窒化シリコン膜を積層した例を示したが、層間絶
縁膜の材料または膜厚は、特に限定されず、ゲート電極とその上に形成する電源供給線と
の間で容量を形成する場合には、適宜、有機絶縁膜または無機絶縁膜の膜厚を0.5μm
〜2.0μmとすればよい。
【0106】
次いで、pチャネル型TFTからなる電流制御用TFT404のドレイン領域に接して
後で形成される接続電極に接して重なるよう画素電極334を形成する。本実施例では、
画素電極はOLEDの陽極として機能させ、OLEDの発光を画素電極に通過させるため
、透明導電膜とする。
【0107】
次いで、ゲート電極またはゲート配線となる導電層に達するコンタクトホールと、各不純
物領域に達するコンタクトホールを形成する。本実施例では複数のエッチング処理を順次
行う。本実施例では第2の層間絶縁膜をエッチングストッパーとして第3の層間絶縁膜を
エッチングした後、第1の層間絶縁膜をエッチングストッパーとして第2の層間絶縁膜を
エッチングしてから第1の層間絶縁膜をエッチングした。
【0108】
その後、Al、Ti、Mo、Wなどを用いて電極335〜341、具体的にはソース配線
、電源供給線、引き出し電極及び接続電極などを形成する。ここでは、これらの電極及び
配線の材料は、Ti膜(膜厚100nm)とシリコンを含むAl膜(膜厚350nm)と
Ti膜(膜厚50nm)との積層膜を用い、パターニングを行った。こうして、ソース電
極及びソース配線、接続電極、引き出し電極、電源供給線などが適宜、形成される。なお
、層間絶縁膜に覆われたゲート配線とコンタクトを取るための引き出し電極は、ゲート配
線の端部に設けられ、他の各配線の端部にも、外部回路や外部電源と接続するための電極
が複数設けられた入出力端子部を形成する。また、先に形成された画素電極334と接し
て重なるよう設けられた接続電極341は、電流制御用TFT404のドレイン領域に接
している。
【0109】
以上の様にして、nチャネル型TFT405、pチャネル型TFT406、およびこれ
らを相補的に組み合わせたCMOS回路を有する駆動回路402と、1つの画素内にnチ
ャネル型TFT403またはpチャネル型TFT404を複数備えた画素部401を形成
することができる。
【0110】
本実施例では、OLED400に接続するpチャネル型TFT404のチャネル形成領
域329の長さを格段に長いものとする。例えば、上面構造を
図5に示したものとすれば
よい。
図5ではチャネル長Lの長さを500μmとした。なお、チャネル幅Wは4μmと
した。
【0111】
各電極のパターニングが終了したら、レジストを除去して熱処理を行い、次いで、画素
電極334の端部を覆うように両端にバンクとよばれる絶縁物342a、342bを形成
する。バンク342a、342bは珪素を含む絶縁膜もしくは樹脂膜で形成すれば良い。
ここでは、有機樹脂膜からなる絶縁膜をパターニングしてバンク342aを形成した後、
スパッタ法で窒化シリコン膜を成膜し、パターニングしてバンク342bを形成する。
【0112】
次いで、両端がバンクで覆われている画素電極334上にEL層343およびOLED
の陰極344を形成する。
【0113】
EL層343としては、発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせてE
L層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。例え
ば、低分子系有機EL材料や高分子系有機EL材料を用いればよい。また、EL層として
一重項励起により発光(蛍光)する発光材料(シングレット化合物)からなる薄膜、また
は三重項励起により発光(リン光)する発光材料(トリプレット化合物)からなる薄膜を
用いることができる。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用い
ることも可能である。これらの有機EL材料や無機材料は公知の材料を用いることができ
る。
【0114】
また、陰極344に用いる材料としては仕事関数の小さい金属(代表的には周期表の1
族もしくは2族に属する金属元素)や、これらを含む合金を用いることが好ましいとされ
ている。仕事関数が小さければ小さいほど発光効率が向上するため、中でも、陰極に用い
る材料としては、アルカリ金属の一つであるLi(リチウム)を含む合金材料が望ましい
。なお、陰極は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線を経由して入力端子部に端
子電極を有している。
【0115】
ここまでの工程が終了した段階が
図7である。
【0116】
次いで、陰極と、有機化合物層と、陽極とを少なくとも有するOLEDを有機樹脂、保
護膜、封止基板、或いは封止缶で封入することにより、OLEDを外部から完全に遮断し
、外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐこと
が好ましい。ただし、後でFPCと接続する必要のある入出力端子部には保護膜などは設
けなくともよい。
【0117】
次いで、異方性導電材で入出力端子部の各電極にFPC(フレキシブルプリントサーキッ
ト)を貼りつける。異方性導電材は、樹脂と、表面にAuなどがメッキされた数十〜数百
μm径の導電性粒子とから成り、導電性粒子により入出力端子部の各電極とFPCに形成
された配線とが電気的に接続する。
【0118】
また、必要があれば、偏光板と位相差板とで構成される円偏光板等の光学フィルムを設
けてもよいし、ICチップなどを実装させてもよい。
【0119】
以上の工程でFPCが接続されたモジュール型の発光装置が完成する。
【0120】
また、フルカラー表示する場合、本実施例の画素部における等価回路図を
図8に示す。
図8中の701が
図7のスイッチングTFT403に対応しており、702が電流制御用
TFT404に対応している。赤色を表示する画素は、電流制御用TFT404のドレイ
ン領域に赤色を発光するOLED703Rが接続され、ソース領域にはアノード側電源線
(R)706Rが設けられている。また、OLED703Rには、カソード側電源線70
0が設けられている。また、緑色を表示する画素は、電流制御用TFTのドレイン領域に
緑色を発光するOLED703Gが接続され、ソース領域にはアノード側電源線(G)7
06Gが設けられている。また、青色を表示する画素は、電流制御用TFTのドレイン領
域に青色を発光するOLED703Bが接続され、ソース領域にはアノード側電源線(B
)706Bが設けられている。それぞれ色の異なる画素にはEL材料に応じて異なる電圧
をそれぞれ印加する。本実施例では、チャネルコンダクタンスgdを低下させるために、
チャネル長を長くし、従来よりも格段に高いゲート電圧値でオン状態として駆動させる。
【0121】
また、ここでは、表示の駆動方法として、線順次駆動方法の1種である時分割階調駆動
方法を用いる。また、ソース線に入力する映像信号は、アナログ信号であってもよいし、
デジタル信号であってもよく、適宜、映像信号に合わせて駆動回路などを設計すればよい
。
【実施例3】
【0126】
実施例1または実施例2により得られるモジュール型の発光装置(ELモジュールとも呼
ぶ)の上面図及び断面図を示す。
【0127】
図6(A)は、ELモジュールを示す上面図、
図14(B)は
図14(A)をA−A’
で切断した断面図である。
図14(A)において、基板500(例えば、耐熱性ガラス等
)に、下地絶縁膜501が設けられ、その上に画素部502、ソース側駆動回路504、
及びゲート側駆動回路503を形成されている。これらの画素部や駆動回路は、上記実施
例1や実施例2に従えば得ることができる。
【0128】
また、518は有機樹脂、519は保護膜であり、画素部および駆動回路部は有機樹脂
518で覆われ、その有機樹脂は保護膜519で覆われている。さらに、接着剤を用いて
カバー材で封止してもよい。カバー材は、支持体として剥離前に接着してもよい。
【0129】
なお、508はソース側駆動回路504及びゲート側駆動回路503に入力される信号
を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキ
ット)509からビデオ信号やクロック信号を受け取る。なお、ここではFPCしか図示
されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良
い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはP
WBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0130】
次に、断面構造について
図14(B)を用いて説明する。基板500上に接して下地絶
縁膜501が設けられ、絶縁膜501の上方には画素部502、ゲート側駆動回路503
が形成されており、画素部502は電流制御用TFT511とそのドレインに電気的に接
続された画素電極512を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路5
03はnチャネル型TFT513とpチャネル型TFT514とを組み合わせたCMOS
回路を用いて形成される。
【0131】
これらのTFT(511、513、514を含む)は、上記実施例1のnチャネル型T
FT、上記実施例1のpチャネル型TFTに従って作製すればよい。
【0132】
なお、実施例1に従って同一基板上に画素部502、ソース側駆動回路504、及びゲ
ート側駆動回路503形成している。
【0133】
画素電極512は発光素子(OLED)の陰極として機能する。また、画素電極512
の両端にはバンク515が形成され、画素電極512上には有機化合物層516および発
光素子の陽極517が形成される。
【0134】
有機化合物層516としては、発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わ
せて有機化合物層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれ
ば良い。例えば、低分子系有機化合物材料や高分子系有機化合物材料を用いればよい。ま
た、有機化合物層516として一重項励起により発光(蛍光)する発光材料(シングレッ
ト化合物)からなる薄膜、または三重項励起により発光(リン光)する発光材料(トリプ
レット化合物)からなる薄膜を用いることができる。また、電荷輸送層や電荷注入層とし
て炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機材料や無機材料は公知
の材料を用いることができる。
【0135】
陽極517は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線508を経由してFPC5
09に電気的に接続されている。さらに、画素部502及びゲート側駆動回路503に含
まれる素子は全て陽極517、有機樹脂518、及び保護膜519で覆われている。
【0136】
なお、有機樹脂518としては、できるだけ可視光に対して透明もしくは半透明な材料を
用いるのが好ましい。また、有機樹脂518はできるだけ水分や酸素を透過しない材料で
あることが望ましい。
【0137】
また、有機樹脂518を用いて発光素子を完全に覆った後、すくなくとも
図14に示す
ように保護膜519を有機樹脂518の表面(露呈面)に設けることが好ましい。また、
基板500の裏面を含む全面に保護膜を設けてもよい。ここで、外部入力端子(FPC)
が設けられる部分に保護膜が成膜されないように注意することが必要である。マスクを用
いて保護膜が成膜されないようにしてもよいし、CVD装置でマスキングテープとして用
いるテフロン(登録商標)等のテープで外部入力端子部分を覆うことで保護膜が成膜され
ないようにしてもよい。保護膜519として、窒化珪素膜、DLC膜、またはAlN
XO
Y
膜を用いればよい。
【0138】
以上のような構造で発光素子を保護膜519で封入することにより、発光素子を外部か
ら完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等の有機化合物層の酸化による劣化を
促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高い発光装置を得ること
ができる。
【0139】
また、画素電極を陰極とし、有機化合物層と、透光性を有する陽極とを積層して
図14
とは逆方向に発光する構成としてもよい。また、画素電極を陽極とし、有機化合物層と陰
極を積層して
図14とは逆方向に発光する構成としてもよい。
図15にその一例を示す。なお、上面図は同一であるので省略する。
【0140】
図15に示した断面構造について以下に説明する。基板600上に絶縁膜610が設け
られ、絶縁膜610の上方には画素部602、ゲート側駆動回路603が形成されており
、画素部602は電流制御用TFT611とそのドレインに電気的に接続された画素電極
612を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路603はnチャネル
型TFT613とpチャネル型TFT614とを組み合わせたCMOS回路を用いて形成
される。
【0141】
これらのTFT(611、613、614を含む)は、上記実施例1のnチャネル型T
FT、上記実施例1のpチャネル型TFTに従って作製すればよい。
【0142】
画素電極612は発光素子(OLED)の陽極として機能する。また、画素電極612
の両端にはバンク615が形成され、画素電極612上には有機化合物層616および発
光素子の陰極617が形成される。
【0143】
陰極617は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線608を経由してFPC6
09に電気的に接続されている。さらに、画素部602及びゲート側駆動回路603に含
まれる素子は全て陰極617、有機樹脂618、及び保護膜619で覆われている。さら
に、カバー材620と接着剤で貼り合わせてもよい。
また、カバー材620には凹部を設け、乾燥剤621を設置してもよい。
【0144】
また、
図15では、画素電極を陽極とし、有機化合物層と陰極を積層したため、発光方
向は
図15に示す矢印の方向となっている。
【0145】
また、ここではトップゲート型TFTを例として説明したが、TFT構造に関係なく本
発明を適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタ
ガ型TFTに適用することが可能である。