特許第6053106号(P6053106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053106
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】サッシ
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/66 20060101AFI20161219BHJP
   E06B 3/62 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   E06B3/66 Z
   E06B3/62 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-124063(P2012-124063)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249610(P2013-249610A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大友 敏克
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−182449(JP,A)
【文献】 特開2011−246900(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/046492(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02209047(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54−3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層ガラスとグレチャンと框とを備え、框は、内周側に開口して複層ガラスの端縁部を呑み込む溝を有し、グレチャンは、複層ガラスの見込み方向一方側面に接着される見付け片と複層ガラスの端面に対向する底面部を有する一方側部材と、複層ガラスの見込み方向他方側面に当接し、一方側部材の底面部に設けられた嵌合溝に見込方向から嵌合する嵌合片を有する他方側部材の2部材からなり、一方側部材と他方側部材とで複層ガラスの端縁部を挟持すると共に、一方側部材と他方側部材とが複層ガラスの見込面内の外周側位置で嵌合していることを特徴とするサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスをグレチャンにより框の溝に保持したサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサッシの障子は、図6,7に示すように、框の内周側に形成された溝90内に断面コ字形のグレチャン91を介して複層ガラス92の端部を嵌め込んで保持している。複層ガラス92は、グレチャン91を介して框の溝90の室外側の壁と室内側の壁の間に挟持されているだけなので、複層ガラス92とグレチャン91の間と、グレチャン91と框の溝90の間とにそれぞれずれが生じ、複層ガラス92が框の溝90から抜けるおそれがある。特に戸先框93は、障子を開閉操作する力でたわもうとするため、ガラスの框抜けが起きやすい。これを防ぐため従来は、框の見付寸法を大きくしたり框に中空部を設けるなどして框の剛性を高める必要があった。しかし近年、框の見付寸法をスリムにしたサッシが求められるようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、框の見付寸法をスリムにしても、複層ガラスが框の溝から抜けるのを防止できるサッシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明によるサッシは、複層ガラスとグレチャンと框とを備え、框は、内周側に開口して複層ガラスの端縁部を呑み込む溝を有し、グレチャンは、複層ガラスの見込み方向一方側面に接着される見付け片と複層ガラスの端面に対向する底面部を有する一方側部材と、複層ガラスの見込み方向他方側面に当接し、一方側部材の底面部に設けられた嵌合溝に見込方向から嵌合する嵌合片を有する他方側部材の2部材からなり、一方側部材と他方側部材とで複層ガラスの端縁部を挟持すると共に、一方側部材と他方側部材とが複層ガラスの見込面内の外周側位置で嵌合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によるサッシは、グレチャンの一方側部材の見付け片が複層ガラスと接着していることで、グレチャンと複層ガラスとの間でずれが生じず、複層ガラスと框を強固に結合させられるため、框の見付寸法をスリムにしても、複層ガラスが框の溝から抜けるのを防止できる。グレチャンを一方側部材と他方側部材とに分割したことで、一方側部材への接着剤の塗布及び複層ガラスとの接着が容易に行え、一方側部材と他方側部材とを複層ガラスの外周側位置で嵌合させて一体化し、框の溝に押し込むことで、框への取付けも容易に行える。框は従来のものを利用でき、ガラスの交換も可能である。また、一方側部材と他方側部材とを複層ガラスの見込面内の外周側位置で嵌合したことで、厚みの異なる複層ガラスに対して框の見込寸法を大きくすることなく、他方側部材を兼用できる。他方側部材の嵌合片を一方側部材の底面部に設けられた嵌合溝に見込方向から直接嵌合することで、一方側部材の見付け片を複層ガラスと接着しながら容易に嵌合させられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図3に示すサッシの外障子の下框を拡大して示す縦断面図である。
図2図4に示すサッシの外障子の戸先框を拡大して示す横断面図である。
図3】本発明のサッシの一実施形態を示す縦断面図である。
図4】本発明のサッシの一実施形態を示す横断面図である。
図5】複層ガラスを框に取付ける手順を示す縦断面図である。
図6】従来のサッシの縦断面図である。
図7】従来のサッシの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜4は、本発明のサッシの一実施形態を示している。本サッシは、図3,4に示すように、躯体開口部に取付けたサッシ枠6と、サッシ枠6内に引違い状に開閉自在に納めた外障子7a及び内障子7bと、サッシ枠6内の外障子7aの室外側に左右方向に移動自在に納めた網戸8とを備えている。
サッシ枠6は、上枠9と下枠10と左右の竪枠11,11とを枠組みして構成してある。
外障子7aと内障子7bは、上框3aと下框3bと戸先框3cと召合せ框3dとを框組みし、その内側に複層ガラス1を納めて構成してある。各框3a,3b,3c,3dは、内周側に開口した溝12を有し、その溝12にグレチャン2を介して複層ガラス1の端縁部を嵌め込んで保持している。また框3a,3b,3c,3dは、室外側の部分がアルミ形材13で形成され、室内側の部分が樹脂形材14で形成してある。
外障子7aと内障子7bは、図3に示すように、上枠9と下枠10とに設けたレール15a,15bに案内され、上下枠9,10の長手方向に沿って摺動自在となっており、図4に示すように、閉鎖時に外障子7aは室内側から見て左側に、内障子7bは室内側から見て右側に位置し、クレセント16により施錠される。
【0010】
複層ガラス1は、見込み方向に間隔をおいて配置された室外側と室内側のガラスパネル17a,17bを、両ガラスパネル17a,17b間の周縁部に配置されたスペーサー及びシール材18にて接着して構成されている。
【0011】
図1は下框3bを拡大して示しており、グレチャン2は同図に示すように一方側部材4と他方側部材5の2部材で構成してある。
一方側部材4は、複層ガラス1の室内側の見付け面に沿う見付け片19と、見付け片19の外周側端部より室外側にのびて複層ガラス1の端面に対向する底面部20と、底面部20の見込み方向中間部より内周側に突出した断面L形の係止片21を有しており、底面部20と係止片21によって室外側が開口した嵌合溝22が形成してある。嵌合溝22内には、係止片21と底面部20とに係止用の突起23a,23bが設けてある。見付け片19と底面部20とのコーナー部には、室内側のガラスパネル17bの端面に当接するガラス当接部24が形成してあり、また係止片21の内周側面は室外側のガラスパネル17aの端面に当接しており、ガラス当接部24と係止片21との間に内周側が開口した排水用溝25が形成されている。排水用溝25の底面には、水抜き孔26が長手方向に間隔をおいて複数形成してある。見付け片19の中間部室外側面には、複層ガラス1の室内側面に当接する突起27が設けてあり、突起27よりも外周側の見付け片19根元側の室外側面に接着剤28が塗布され、接着剤28により見付け片19が複層ガラス1と接着している。見付け片19の先端部には、複層ガラス1の室内側面に当接する当接部29が軟質樹脂で形成されており、当接部29には下框3bの溝12の室内側壁12aの先端部が係止する係止溝30が設けてある。なお、一方側部材4の当接部29以外の部分は、硬質樹脂で形成してある。
他方側部材5は、複層ガラス1の室外側の見付け面に沿う見付け片31と、見付け片31の外周側端部より室内側にのびる嵌合片32とが硬質樹脂で形成されている。嵌合片32の先端部には、係止用の突起23cが設けてある。見付け片31の先端部には、複層ガラス1の室外側面に当接する当接部33が軟質樹脂で形成されており、当接部33には下框3bの溝12の室外側壁12bの先端部が係止する係止溝34が設けてある。
【0012】
一方側部材4と他方側部材5とは、一方側部材4の嵌合溝22に他方側部材5の嵌合片32を室外側から挿入することで、複層ガラス1の外周側位置で嵌合し一体化している。嵌合片32を嵌合溝22内に挿入すると、係止片21の内側に設けた突起23aにより嵌合片32が底面部20に向けて押し付けられ、嵌合片32の突起23cと底面部20の突起23bとが係止した状態に保持されるため、容易に抜けない。
【0013】
下框3bの溝12は、図1に示すように、室内側壁12aが室外側に倒れるように若干傾斜している。一体化したグレチャン2を下框3bの溝12に内周側から押し込むと、グレチャン2は溝12の室内側壁12aと室外側壁12bに挟まれて室内外方向にやや圧縮され、溝12の室外側壁12bと室内側壁12aの先端部がグレチャン2の見付け片19,31先端の係止溝30,34に係止して、グレチャン2が溝12内に保持される。上記のように溝12の室内側壁12aが室外側に倒れるように傾斜していることで、グレチャン2が溝12から抜けにくくなっている。
【0014】
これまで下框3bの部分について説明したが、図2に示すように、戸先框3cや他の框3a,3dについても、下框3bと同様のグレチャン2を用いて複層ガラス1の端縁部を框の溝12に保持している。戸先框3cは、中空部をなくして従来のものよりも見付寸法Wをスリムにしてあり、そのため本サッシは戸先框3cの見付寸法Wをスリムにした分だけ従来のものよりも視界が広くなり、採光性や意匠性が向上する(図4,7参照)。グレチャン2は、下框3b以外の部分については、水抜き孔26は設けてあってもよいし、設けてなくてもよい。
なおグレチャン2は、一本のものを複層ガラス1の四周に回すように設けてもよいし、複層ガラス1の上下左右の四辺に分割してあってもよい。
【0015】
図5は、複層ガラス1の框3a,3b,3c,3dの溝12への取付手順を示している。まず図5(a)に示すように、グレチャン2の一方側部材4の見付け片19に接着剤28を塗布し、接着剤28により見付け片19を複層ガラス1の室内側面に接着させる。このとき、一方側部材4の係止片21の内周側面とガラス当接部24を複層ガラス1の端面に当接させることで、一方側部材4を位置決めできる。また、見付け片19の中間部に設けた突起27により、接着剤28が見付け片19の先端側に漏れるのを防ぐことができる。その後、他方側部材5の嵌合片32を一方側部材4の嵌合溝22に室外側から嵌合させ、一方側部材4と他方側部材5とを一体化する。その後、図5(b)に示すように、グレチャン2を取付けた複層ガラス1の端縁部を框3a,3b,3c,3dの溝12内に押し込み、溝12の室内側壁12aと室外側壁12b間にグレチャン2を嵌合させる。
【0016】
以上に述べたように本サッシは、グレチャン2の一方側部材4が複層ガラス1と接着していることで、グレチャン2と複層ガラス1との間でずれが生じず、複層ガラス1と框3a,3b,3c,3dを強固に結合させられる。これにより、框3a,3b,3c,3dが受け持ってきた剛性を複層ガラス1に負担させられるので、図2に示すように、框3a,3b,3c,3dの見付寸法Wをスリムにしても、複層ガラス1が框の溝12から抜けるのを防止できる。
グレチャン2を一方側部材4と他方側部材5とに分割したことで、一方側部材4への接着剤28の塗布及び複層ガラス1との接着が容易に行え、一方側部材4と他方側部材5とを複層ガラス1の外周側位置で嵌合させて一体化し、框3a,3b,3c,3dの溝12に押し込むことで、框3a,3b,3c,3dへの取付けも容易に行える。框3a,3b,3c,3dは従来のものを利用でき、ガラスの交換も可能である。また、一方側部材4と他方側部材5とを複層ガラス1の外周側位置で嵌合したことで、厚みの異なる複層ガラス1に対して他方側部材5を兼用できる。
さらに、グレチャン2の一方側部材4には底面部20に排水用溝25が形成してあると共に、排水用溝25に水抜き孔26が形成してあるので、図1中の矢印35に示すように、グレチャン2の内側に浸入した水を排水用溝25に集め、水抜き孔26より外部に排水することができる。なお水抜き孔26は、他方側部材5の見付け片31と嵌合片32とのコーナー部にも設けることができる。
さらに、框3a,3b,3c,3dの溝12の室内側壁12aを溝内側に若干傾斜させたことで、グレチャン2及び複層ガラス1の溝12への保持力を高めることができ、より一層複層ガラス1を抜けにくくすることができる。
【0017】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。グレチャン2の一方側部材4及び他方側部材5の具体的な形状は適宜変更することができる。一方側部材4と他方側部材5を室内外逆にしたもの、すなわち室外側の部材を複層ガラス1に接着するものであってもよい。一方側部材4と一方側部材5は、硬質樹脂と軟質樹脂を組み合わせたり、硬質樹脂のみ、軟質樹脂のみで形成することも可能であるが、少なくとも嵌合部(嵌合溝22,嵌合片32)は硬質樹脂で形成してあることが好ましい。框の構造や材質は任意である。本発明のサッシは、引き違いサッシに限らず、開き窓、すべり出し窓、嵌め殺し窓など、あらゆる窓種に対応することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 複層ガラス
2 グレチャン
3a 上框(框)
3b 下框(框)
3c 戸先框(框)
3d 召合せ框(框)
4 一方側部材
5 他方側部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7