(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機EL素子は、さまざまな用途に用いることができるため、さまざまな色の光を発する素子が求められる。しかしながら、所望の発光色を得るため、ホスト材料中のゲスト材料等を変更し、有機EL素子ごとに有機発光層の膜厚等を設定・変更して作製された従来の有機EL素子は、作製に時間と労力がかかり、煩雑である。また、その結果コストの削減が困難になる。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、発光色が多様であって、効率よく簡易に製造できる発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、一対の電極が発光性の有機化合物を含む層(以下、エレクトロルミネッセンス(EL)層と呼ぶ)を挟持する発光素子において、当該発光素子の発光色が、当該一対の電極の構成によって変化することに着眼した。具体的には、一のEL層を一方が反射電極層であり他方が半透過・半反射電極層の間に挟持する発光素子と、一のEL層を一方が反射電極層であり他方が透明導電層の間に挟持する発光素子とでは、発光色が異なる。なぜなら、反射電極層と半透過・半反射電極層が構成する微小共振器構造(マイクロキャビティ構造ともいう)が、EL層が発する光の特定の波長を、発光素子の外部に取り出し易くする。その結果、発光スペクトルの形状が変化し、発光色を変化せしめるためである。
【0011】
そして、反射電極層と透明導電層の間にEL層を備えた発光装置であって、透明導電層に接するように設けられた半透過・半反射性の第1の導電層を有する第1の発光素子領域と、半透過・半反射性の第1の導電層を有しない第2の発光素子領域を有する発光装置の構成に想到した。
【0012】
このような構成を有する発光装置は、第1の発光素子領域の面積と第2の発光素子領域の面積の比を調整して、その発光色を多様に変化できる。なお、その面積比は半透過・半反射性の第1の導電層を反射電極層に重ねて形成する面積を変えることにより、容易に調整できる。
【0013】
すなわち、本発明の一態様は、第1の発光素子領域と第2の発光素子領域を有する発光装置であって、第1の発光素子領域と第2の発光素子領域は、いずれも反射電極層と透明導電層の間にEL層を挟持し、第1の発光素子領域は、透明導電層に接して半透過・半反射性の第1の導電層を備える発光装置である。
【0014】
上記発光装置は第1の発光素子領域と第2の発光素子領域が同時に発光するため、上記発光装置の発光スペクトルは第1の発光素子領域の発光スペクトルと第2の発光素子領域の発光スペクトルを重ね合わせたものである。第1の発光素子領域は反射電極層に重ねて半透過・半反射性の第1の導電層を備えるため、共振器効果(キャビティ効果)が発現し、その間のEL層が発する特定の波長を有する光の強度を高めることができる。そのため、第1の導電層を第1の発光素子領域に形成することにより、簡易に発光装置の発光を所望の色にすることが出来る。
【0015】
本発明の一態様は上記発光装置において、第1の導電層が透明導電層より電気抵抗が低いことを特徴とする発光装置である。
【0016】
第1の導電層が透明導電層より電気抵抗が低いため、透明導電層の電圧降下を抑制することが出来る。その結果、発光ムラのない発光装置を提供することが出来る。
【0017】
第1の発光素子領域が第1の導電層によって特定波長領域の光の強度を相対的に高めるように光学的距離が調整されている発光装置であって、第1の発光素子領域と第2の発光素子領域からの発光色が互いに補色の関係であることを特徴とする発光装置である。
【0018】
第1の導電層を有する第1の発光素子領域において、EL層が発する特定波長領域の光の強度を相対的に高める。その特定波長領域と第2の発光素子領域からの発光色を、補色関係にする。よって第1の発光素子領域からの発光強度を高めれば、第1の発光素子領域からの発光と第2の発光素子領域からの発光バランスを調整できるので、所望の白色発光、たとえばCIE色度座標(x,y)=(0.33,0.33)に近づけることができる。
【0019】
本発明の一態様は、第1の発光素子領域が前記第1の導電層によって青色を呈する光の強度を相対的に高めるように光学的距離が調整されていることを特徴とする白色発光装置である。
【0020】
例えば、赤色、緑色、青色の発光により白色発光を得るEL発光装置において、青色を呈する光の強度が赤色、緑色に比べ低い場合、発光色は黄色みがかった白になる。そこで、第1の導電層を有する第1の発光素子領域において、第1の導電層によって青色を呈する光の強度を相対的に高めるように光学的距離を調整することにより、発光装置としての発光は、赤色、緑色、青色の発光スペクトルとのバランスを調整できるので、所望の白色発光、たとえばCIE色度座標(x,y)=(0.33,0.33)に近づけることができる。
【0021】
本発明の一態様は、第1の発光素子領域と第2の発光素子領域に重なるレンズをアレイ状に複数備えることを特徴とする発光装置である。
【0022】
レンズによって、第1の発光素子領域からの発光と第2の発光素子領域からの発光を効果的に混合させ、スペクトルの形状を自然光に近づけることにより演色性の優れた白色発光を取り出すことが出来る。
【0023】
本発明の一態様は、上記発光装置を用いた照明装置である。
【0024】
上記発光装置において設けられた第1の導電層により、所望の発光色に発光装置の発光色を調整することが可能である。また、発光装置内で透明導電層の電圧が降下しにくいため、発光ムラのない照明装置を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様は、発光色が多様な発光装置を提供することができる。また、本発明の一態様によれば、発光色が多様な発光装置を効率よく簡易に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
本発明の一態様である発光装置の構成について、
図1を用いて説明する。
【0029】
図1(A)に示す発光装置160は、本発明の発光装置の概要を表した断面図である。第1の発光素子領域10は、反射電極層100と、第2の導電層102と、EL層800と、透明導電層103と、第1の導電層101を有する。第2の発光素子領域20は、反射電極層100と、第2の導電層102と、EL層800と、透明導電層103を有する。発光装置160は基板410の上に形成されている。反射電極層100と第2の導電層102を一方の電極とし、透明導電層103と第1の導電層101を他方の電極として、外部電源に接続して発光装置160に電力を供給する事が出来る。
【0030】
本実施の形態では、EL層800が、EL層800Bと、EL層800Gと、EL層800Rの3層で構成されている場合について説明する(
図1(B))。EL層800Bは青色を呈する光を発し、EL層800Gは緑色を呈する光を発し、EL層800Rは赤色を呈する光を発する。なお、本明細書等においては、青色を呈する光は450〜485nmの波長帯域に、緑色を呈する光は500〜565nmの波長帯域に、赤色を呈する光は600nm〜740nmの波長帯域に、他の可視光の波長域より強度の高い発光スペクトルを有する。
【0031】
本実施の形態では、第1の発光素子領域10において、EL層800Bから発光した青色を呈する光を、反射電極層100と第1の導電層101によるキャビティ効果で他の色を呈する光の強度よりも高める。その方法について以下に説明する。
【0032】
EL層800Bが発する青色の光に含まれる特定の光の波長をλとする。また、反射電極層100と第1の導電層101の距離をh、反射電極層100と第1の導電層101の光学的距離をL、波長λを有する光が、反射電極層100と第1の導電層101で反射する際に生じる位相シフトの和をφラジアンとする。なお、光学的距離Lとは、反射電極層100と第1の導電層101の距離hに、反射電極層100と第1の導電層101に挟持されているEL層の屈折率nを乗じたものである(式(1))。また、位相シフトφは、反射電極層100、第1の導電層101の屈折率、吸収係数と、これら一対の電極に挟持されているEL層の屈折率nを用いて計算することができる。
【0034】
EL層800Bが発する青色の光に含まれる波長λを有する光を相対的に強める場合には、以下に示す式(2)を満たすように反射電極層100と第1の導電層101の距離hを調整すればよい。その結果、キャビティ効果により第1の発光素子領域10で、波長λを有する光の強度が高められる。
【0035】
(数2)
(2L)/λ+φ/(2π)=N(Nは整数)(2)
【0036】
<発光装置160の発光について>
赤色、緑色、青色の発光により白色発光を得るEL発光装置において、青色を呈する光の強度が赤色、および緑色に比べ低い場合、発光色は黄色みがかった白になる。一方、上述したように第1の発光素子領域10はキャビティ効果により青色を呈する光の強度が相対的に高められている。
【0037】
発光装置160において、第1の発光素子領域10と第2の発光素子領域20は同時に発光するため、発光装置160の発光は、第1の発光素子領域10の発光と第2の発光素子領域20の発光を足したものである。キャビティ効果により第1の発光素子領域10からの発光は青色を呈する光の強度を相対的に高めている。そのため、発光装置160の発光は、青色を呈する光の強度が高くなり、他の色の発光スペクトルとのバランスを調整することができるので、所望の白色たとえばCIE色度座標が(x,y)=(0.33,0.33)に近づけることができる。また、相対的に青色を呈する光の強度が高くなるため、可視光領域のスペクトルの形状が改善して、演色性の優れた白色発光装置を得ることが出来る。
【0038】
なお、発光装置全体として所望の発光色、または演色性のよい白色発光を得るには、例えば青色を呈する光の強度が適切になるように、第1の発光素子領域10と、第2の発光素子領域20の面積比率を設定すればよい。
【0039】
本実施の形態では青色を呈する光の強度を高めたが、青色に限定されることなく、複数の色を呈する光を有する白色発光素子の発光スペクトルの中で、相対的に強度の低い光の強度を高めるように、反射電極層100と第1の導電層101の距離hを設定すればよい。また、第1の発光素子領域10と第2の発光素子領域20の面積比率は、発光装置全体の発光として所望の白色、たとえばCIE色度座標が(x,y)=(0.33,0.33)に近づくように、または、発光スペクトルの形状が自然光に近い白色発光になるように設定すればよい。
【0040】
また本実施の形態では白色発光装置に説明したが、特定の波長だけの光を発する発光素子でもよい。第1の発光素子領域10において、反射電極層100と第1の導電層101によるキャビティ効果により、EL層から発光した所望の波長領域の光の強度を高めることができる。その結果、所望の色を得ることができる。
【0041】
また、上記の第1の導電層101は、透明導電層103より電気抵抗が低い材料とすることが好ましい。このような第1の導電層101を発光装置内でストライプ状(
図2(A))または格子状(
図2(B))に設けることにより、発光装置内で透明導電層103の電圧が降下することを抑制することが出来る。その結果、発光ムラのない発光装置を得ることが出来る。特に、発光面積が広い照明装置においては有効である。
【0042】
また、後述するように第1の導電層101は、蒸着法、スパッタリング法により成膜し、メタルマスク等を用いて、形成できる。そのため、簡易に第1の発光素子領域10を設ける事が出来るので、効率よく簡易に所望の発光色の発光装置を得ることができる。
【0043】
以下、本実施の形態で示す発光装置を構成する各層の詳細について説明する。
【0044】
<電極の構成>
(第1の導電層)
第1の導電層101は、透明導電層103に接するように形成する。第1の導電層101を形成する領域の面積、領域の形状は、発光装置全体として所望の発光色が得られるように設定すればよい。第1の導電層101は半透過・半反射性を有する導電膜である。第1の導電層101は、Mg:Ag(マグネシウムと銀の合金)、Mg:In(マグネシウムとインジウムの合金)などの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した半透過・半反射性を有する膜を用いればよい。半透過・半反射性を有する膜とは、例えば波長300−800 nmの領域において、透過率20−75%, 反射率4−55%である膜を用いることができる。一例として、
図6にAgとMgの質量比10:1で、膜厚が10nmのMg:Ag薄膜の透過率と反射率の結果を示す。ここでは、第1の発光素子領域10において、第1の導電層101を通過させて発光させるので、光が透過する1nm〜10nmのMg:Ag膜を用いる。第1の導電層101は、メタルマスクを用いて真空蒸着法、スパッタリング法で形成することが出来る。そのため、容易に発光色が多様な発光装置を作製することができる。
【0045】
(反射電極層)
反射電極層100は、たとえばガラス基板、樹脂基板、金属基板等の基板上に形成すればよい。反射電極層100としては、反射率の高い金属膜により形成することができる。反射率の高い金属膜としては、アルミニウム、銀、または、これらの金属材料を含む合金等を、単層または積層して形成することができる。アルミニウムを含む合金としては、例えば、Al:Ni:La(アルミニウムとニッケルとランタンの合金)、Al:Ni:La:Cu(アルミニウムとニッケルとランタンと銅の合金)、Al:Ni:La:Nd(アルミニウムとニッケルとランタンとネオジムの合金)、Al:Ni:La:Ge(アルミニウムとニッケルとランタンとゲルマニウムの合金)を挙げることができる。これらの合金は平坦性がよいので、反射電極として好適である。また、反射率の高い金属膜と他の薄い金属膜(好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下)との積層構造としてもよい。例えば、薄いチタン膜を形成することにより、後に形成されるEL層800と反射率の高い金属膜(アルミニウム、アルミニウムを含む合金、または銀など)との間に形成される絶縁膜の生成を抑制することができるので好適である。なお、薄い金属膜は酸化されていてもよいが、この場合、酸化されても絶縁化しにくい材料、例えばチタンやモリブデンを用いるのが好ましい。反射電極層100は、スパッタリング法、真空蒸着法により形成することが出来る。
【0046】
(第2の導電層)
第2の導電層102は、反射電極層100と接するように形成する。第2の導電層102は、EL層800へキャリアを注入する層、光学的距離を調整する膜のいずれか一方または両方として機能する。第2の導電層102として用いることができる材料としては、可視光に対する透光性を有する導電材料が好ましい。
【0047】
具体的には、導電性の金属酸化物を用いて形成することができる。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム錫酸化物(In
2O
3―SnO
2、ITOと略記する)、インジウム亜鉛酸化物(In
2O
3―ZnO)、またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。第2の導電層102はスパッタリング法で形成することが出来る。
【0048】
本実施の形態では、第2の導電層102を第1の発光素子領域10と第2の発光素子領域20に設けたが、これに限定されることなく、第1の発光素子領域10のみに設けてもよいし、または第2の発光素子領域20にのみ設けてもよい。第2の導電層102を島状に加工しない場合、工程が少なくなる利点がある。
【0049】
(透明導電層)
透明導電層103は、後述するEL層800に接するように形成する。透明導電層103は、導電性の金属酸化物を用いて形成することができる。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウムスズ酸化物(In
2O
3―SnO
2、ITOと略記する)、インジウム亜鉛酸化物(In
2O
3―ZnO)、またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。透明導電層103は、スパッタリング法で形成することが出来る。
【0050】
<EL層>
(EL層800)
本実施の形態では、EL層800Bが青色の発光を呈し、EL層800Gが緑色、EL層800Rが赤色の発光を呈する場合を示す。EL層800B、800G、800Rは、それぞれ正孔注入層701B、701G、701R、正孔輸送層702B、702G、702R、有機発光層703B、703G、703R、電子輸送層704B、704G、704R、電子注入層705B、705G、705Rを有する。正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層は、それぞれ目的の発光色を得られるように最適なものを選べばよい。一例としてEL層800Bの膜構成を
図1(C)に示す。正孔注入層701B、正孔輸送層702B、有機発光層703B、電子輸送層704B、電子注入層705Bをこの順番で形成すればよい。EL層に用いることができる正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層を以下に示す。
【0051】
(正孔注入層)
正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0052】
また、低分子の有機化合物である芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0053】
さらに、主鎖または側鎖に芳香族アミン、カルバゾール誘導体等を有する高分子化合物を用いることもできる。また、酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0054】
特に、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質に電子受容性物質を含有させた複合材料を用いることにより、第2の導電層102からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質と電子受容性物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層701を形成することにより、第2の導電層102からEL層800への正孔注入が容易となる。
【0055】
複合材料に用いる有機化合物としては、低分子化合物(芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素等)、主鎖または側鎖に芳香族アミン、カルバゾール誘導体等を有する高分子化合物など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0056】
また、電子受容性物質としては、有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0057】
(正孔輸送層)
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、芳香族アミン化合物を用いることができる。これらは主に10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0058】
また、正孔輸送層702には、カルバゾール誘導体や、アントラセン誘導体等の正孔輸送性の高い低分子化合物、正孔輸送性の高い高分子化合物を用いてもよい。
【0059】
(有機発光層)
有機発光層703は、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。所望の発光色が得られる蛍光性化合物または燐光性化合物を用いればよい。
【0060】
なお、有機発光層703としては、発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ゲスト材料をホスト材料に分散させることにより、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。ホスト材料としては各種のものを用いることができる。ただし、ホスト材料の最低空軌道準位(LUMO準位)は、ゲスト材料のLUMO準位よりも高く、ホスト材料の最高被占有軌道準位(HOMO準位)は、ゲスト材料のHOMO準位より低い物質を用いることが好ましい。
【0061】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。ホスト材料の結晶化を抑制するために、例えば、嵩高い物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うために、アシストドーパント材料を添加してもよい。アシストドーパント材料のLUMO準位は、ゲスト材料のLUMO準位より高く、ホスト材料のLUMO準位より低いことが好ましい。またアシストドーパント材料のHOMO準位は、ゲスト材料のHOMO準位より低く、ホスト材料のHOMO準位より高いことが好ましい。
【0062】
(電子輸送層)
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層704には、電子輸送性の高い物質、たとえば、金属キノリノール錯体や、オキサジアゾール誘導体や、トリアゾール誘導体、または主にブロッキング材料として使われるバソフェナントロリン・バソキュプロインなどのフェナントロリン誘導体等を用いることができる。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0063】
(電子注入層)
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム等のアルカリ金属・アルカリ土類金属、またはフッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム等のアルカリ金属・アルカリ土類金属のフッ化物、またはリチウムアセチルアセトナト錯体、カルシウムアセチルアセトナト錯体等のアルカリ金属・アルカリ土類金属のアセチルアセトナト錯体等を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0064】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、有機発光層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、スピンコート法等の方法で形成することができる。
【0065】
本実施の形態では、3層のEL層を有する発光素子において、赤、緑、青の発光色を得て、白色発光を得ているが、2層のEL層を用いて二つの発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。その場合も、発光色の中で相対的に発光スペクトルの強度が低い色の光の強度を高くさせるように、反射電極層100と第1の導電層101の距離hを設定し、第1の発光素子領域10と第2の発光素子領域20の面積比率を、発光素子全体の発光として所望の白色、たとえばCIE色度座標が(x,y)=(0.33,0.33)、または演色性のよい白色発光を得るように設定することが可能である。
【0066】
なお、本発明の一態様では、EL層800に、複数のEL層が設けられた発光素子(タンデム型発光素子)を適用することができる。タンデム型発光素子に用いるEL層の構成例は実施の形態5で説明する。
【0067】
(実施の形態2)
本発明の一態様である発光装置の構成について、
図3(A)を用いて説明する。
【0068】
図3(A)に示す発光装置170は、本発明の発光装置の概要を表した断面図である。第1の発光素子領域10では、第1の導電層101と、透明導電層103と、EL層800と、反射電極層100を有する。第2の発光素子領域20では、透明導電層103と、EL層800と、反射電極層100を有する。第1の導電層101と透明導電層103を一方の電極とし、反射電極層100を他方の電極として、外部電源に接続して発光装置170に電力を供給する事が出来る。
【0069】
発光装置170は基板410の上に形成されている。発光装置170は、基板410側から光を取り出す。
【0070】
本実施の形態では、EL層800は、赤色、緑色、青色の領域に発光スペクトルを有する。EL層800の詳細は実施の形態1を参酌することができる。
【0071】
本実施の形態では、第1の発光素子領域10において、EL層800Bから発光した青色を呈する光の強度を、反射電極層100と第1の導電層101によるキャビティ効果で高める。その方法は実施の形態1を参酌することが出来る。
【0072】
<発光装置170の発光について>
赤色、緑色、青色の発光により白色発光を得るEL発光装置において、青色を呈する光の強度が赤色、緑色に比べ低い場合、発光色は黄色みがかった白になる。また、自然光と比較して青色を呈する光の強度が弱い場合、白色の演色性が劣る。一般的に、EL素子において青色を呈する光は他の色を呈する光に比べ強度が低い傾向がある。一方、上述したように第1の発光素子領域10はキャビティ効果により青色を呈する光の強度を高めている。
【0073】
発光装置170において、第1の発光素子領域10と第2の発光素子領域20は同時に発光するため、発光装置170の発光は、第1の発光素子領域10の発光と第2の発光素子領域20の発光を足したものである。キャビティ効果により第1の発光素子領域10からの発光は青色を呈する光の強度を相対的に高めている。そのため、発光装置170の発光は、青色を呈する光の強度が高くなり、他の色の発光スペクトルとのバランスを調整することが出来るので、所望の白色、たとえばCIE色度座標が(x,y)=(0.33,0.33)に近い白色発光が得られる。また、相対的に青色を呈する光の強度が高くなるため、可視光領域のスペクトルの形状が改善して演色性の優れた白色発光を得ることが出来る。
【0074】
なお、発光装置全体として所望の色調、または演色性のよい白色発光を得るには、青色を呈する光の強度が適切になるように、第1の発光素子領域10と、第2の発光素子領域20の面積比率を設定すればよい。
【0075】
本実施の形態では青色を呈する光の強度を高めたが、青色に限定されることなく、所望の白色発光が得られるように、発光スペクトルの中で特定波長領域の光の強度を高めるように、反射電極層100と第1の導電層101の距離hを設定すればよい。また、第1の発光素子領域10と第2の発光素子領域20の面積比率は、発光装置全体の発光として所望の白色、たとえばCIE色度座標が(x,y)=(0.33,0.33)に近づくように、または、発光スペクトルの形状が自然光に近い白色発光になるように設定すればよい。
【0076】
また、上記の第1の導電層101は、透明導電層103より電気抵抗が低い材料であることが好ましい。そのため、第1の導電層101を発光装置内でストライプ状、または格子状に設けることにより、発光装置内で透明導電層103の電圧が降下することを抑制することが出来る。その結果、発光ムラのない発光装置を得ることが出来る。特に、発光面積が広い照明装置においては有効である。
【0077】
本実施の形態で示す発光装置を構成する各層の詳細については、実施の形態1を参酌することが出来る。
【0078】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一形態に係る発光装置を用いた照明装置260を、
図4を参照しながら説明する。
図4(B)は照明装置の平面図、
図4(A)は
図4(B)におけるc−d断面図である。
【0079】
照明装置260は、実施の形態1で示した発光装置160を用いた照明装置である。照明装置260は、第1の発光素子領域10と、第2の発光素子領域20を有する。第1の発光素子領域10と第2の発光素子領域20を合わせた領域を、発光装置161と定義する。第1の発光素子領域10は、反射電極層100と、第2の導電層102と、EL層800、透明導電層103、第1の導電層101を有する。第2の発光素子領域20は、反射電極層100と、第2の導電層102と、EL層800、透明導電層103を有する。反射電極層100と、第2の導電層102と、EL層800、透明導電層103、第1の導電層101の構成については、実施の形態1を参酌することが出来る。
【0080】
照明装置260は基板400上に発光装置161を有し、シール材405によって基板400と対向基板500の間に封止されている。シール材405は、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂、フリットガラスなどを用い、ディスペンサ法、スクリーン印刷法で形成すればよい。対向基板500は、基板400と対向しない面にレンズアレイ315を備える。レンズアレイ315は、アクリル(PMMA)樹脂、石英、ガラス等を用い、公知の作製方法で形成することが出来る。
【0081】
反射電極層100の一部は、シール材405の外に伸張してパッド412に電気的に接続されている。また透明導電層103および第1の導電層101の一部は、シール材405の外に伸張して、パッド413に電気的に接続されている。よって、パッド412、パッド413を外部入力端子として用いることが出来る。
【0082】
本実施の形態では、EL層800が、EL層800Bと、EL層800Gと、EL層800Rの3層で構成されている場合について説明する(
図1(B))。EL層800Bは青色を呈する光を発し、EL層800Gは緑色を呈する光を発し、EL層800Rは赤色を呈する光を発する。
【0083】
本実施の形態では、第1の発光素子領域10において、EL層800Bから発光した青色を呈する光を、反射電極層100と第1の導電層101によるキャビティ効果で他の色を呈する光の強度よりも高める。その方法については、実施の形態1を参酌することが出来る。
【0084】
<照明装置260の発光について>
赤色、緑色、青色の発光により白色発光を得るEL発光装置において、たとえば青色を呈する光の強度が赤色、緑色に比べ低い場合、発光色は黄色みがかった白になる。また、自然光と比較して青色を呈する光の強度が弱い場合、白色の演色性が劣る。一般的に、EL素子において青色を呈する光は他の色を呈する光に比べ強度が低い傾向がある。一方、上述したように第1の発光素子領域10はキャビティ効果により青色を呈する光の強度を相対的に高めている。
【0085】
発光装置161において、第1の発光素子領域10と第2の発光素子領域20は同時に発光するため、発光装置161の発光は、第1の発光素子領域10の発光と第2の発光素子領域20の発光を足したものである。キャビティ効果により第1の発光素子領域10からの発光は青色を呈する光の強度を相対的に高めている。そのため、発光装置161の発光は、青色を呈する光の強度が高くなり、他の色の発光スペクトルとのバランスを調整することができるので、所望の白色たとえばCIE色度座標が(x,y)=(0.33,0.33)を得ることができる。また、相対的に青色を呈する光の強度が高くなるため、可視光領域のスペクトルの形状が改善して、演色性の優れた白色発光を得ることが出来る。
【0086】
照明装置260は、発光装置161で構成されている。照明装置260の発光として所望の色調、または演色性のよい白色発光を得るには、青色を呈する光の強度が適切になるように、第1の発光素子領域10と、第2の発光素子領域20の面積比率を設定し、発光装置161の配置を最適化すればよい。
【0087】
また、上記の第1の導電層101は、透明導電層103より電気抵抗が低い材料で形成する。そのため、第1の導電層101を発光装置内でストライプ状または格子状に設けることにより、発光装置内で透明導電層103の電圧が降下することを抑制することが出来る。その結果、発光ムラのない発光装置を得ることが出来る。特に、発光面積が広い照明装置においては有効である。
【0088】
なお、本実施の形態では、第1の導電層101はストライプ状に配置する構成としたが、第1の導電層101の配置方法はこれに限られず、格子状に配置してもよいし、必要な領域のみに島状に配置する構成としてもよい。
【0089】
レンズアレイ315は第1の発光素子領域と第2の発光素子領域とに重なるように配置する。レンズアレイ315によって、第1の発光素子領域10からの発光と第2の発光素子領域20からの発光を効果的に混合させ、演色性の優れた白色発光を取り出せる。レンズアレイの代わりに拡散シートを用いても良い。
【0090】
本発明の一形態に係る照明装置は、演色性の優れた、発光ムラのない白色発光を得ることが出来る。
【0091】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置を用いて完成させた照明装置の一例について、
図5を用いて説明する。
【0092】
本発明の一態様では、発光部が曲面を有する照明装置を実現することができる。
【0093】
図5(A)では、本発明の一態様の発光装置を適用した、室内の照明装置901、卓上照明装置903、及び面状照明装置904を示す。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、厚みが薄いため、壁に取り付けて使用することができる。その他、ロール型の照明装置902として用いることもできる。
【0094】
図5(B)に別の照明装置の例を示す。
図5(B)に示す卓上照明装置は、照明部9501、支柱9503、支持台9505等を含む。照明部9501は、本発明の一態様の発光装置を含む。このように、本発明の一態様では、曲面を有する照明装置、又はフレキシブルに曲がる照明部を有する照明装置を実現することができる。このように、フレキシブルな発光装置を照明装置として用いることで、照明装置のデザインの自由度が向上するのみでなく、例えば、自動車の天井、ダッシュボード等の曲面を有する場所にも照明装置を設置することが可能となる。
【0095】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0096】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様に適用できるタンデム型発光素子に用いるEL層の構成例について、
図3(B)を用いて説明する。
【0097】
タンデム型発光素子のEL層800は、積層されたEL層810とEL層811との間に、電荷発生層850を設けた構成である。EL層810とEL層811は、所望の発光を得られるEL層を選択し、実施の形態1で説明したEL層を適宜用いればよい。また、電荷発生層850は実施の形態1で説明した複合材料で形成することができる。また、電荷発生層850は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。