(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル支保で地盤を補強するロックボルトとして、軸方向に延びる凹溝が形成され、地盤に形成された穿孔に内装して、内部を加圧して膨張させることにより、その外周面が地盤の穿孔の内周面に密着する膨張用異型鋼管のロックボルトが知られている。
【0003】
この種のロックボルトは、特許文献1〜4に示すように、各種形状のものが各種の製造工程を経て製造されるが、素管を全長に亘ってプレス加工、ロール加工、引抜加工を適宜用いて軸方向に延びる凹溝が形成された異型形状の管材を形成し、その後、必要に応じて両端を縮径し、管材の両端に変形しないスリーブを外嵌し、両端のスリーブを管材に溶接で固定して管材の内部空間を閉塞する点で共通している。
【0004】
例として、プレス加工で膨張用異型鋼管のロックボルト100を製造する場合、
図10に示すように、素管101aを全長に亘ってプレス加工して押し潰し、押し潰した管材101bを両側方から押圧するようにプレス加工して丸め、軸方向に延びる凹溝102が形成された丸まった形状の管材101とし、管材101の両端にそれぞれ口元スリーブ103と先端スリーブ104を外嵌して溶接し、管材101の内部空間を閉塞することにより製造される。口元スリーブ103には予め或いは管本体101への固定後に連通孔105が形成され、この連通孔105からロックボルト100の内部に流体を流入して内部を加圧することにより、変形しない口元スリーブ103と変形しない先端スリーブ104との間に位置する管材101の部分が膨張するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記既存の膨張用異型鋼管のロックボルトは、管材の軸方向の全長に亘って凹溝が形成されているものであるため、その端部にスリーブを外嵌して管材の内部空間を閉塞する加工が高度で煩雑なものとなる。即ち、加圧によって膨張し、断面形状に凹部を有する異型形状の管材の両端部に、加圧しても変形しない円筒形状のスリーブを嵌め込み、そのスリーブ内又はスリーブ端部で異型形状の管材の両端部に溶接する必要があるため、加工に手間を要し、加工精度が悪いと加圧した際に管材がきちんと膨張する以前にスリーブ近傍での封止状態が損なわれ、所要の膨張をしてロックボルトの機能を果たすことが困難となる。
【0007】
更に、管材膨張前の破断は、スリーブを長くすることによってある程度低減することができるが、スリーブを長くした場合、管材を膨張させてもスリーブの部分は地盤の穿孔や鋼管の内壁等に密着することができないため、その長さ分だけ摩擦定着長が少なくなり、ロックボルト長に対する非密着長が大きくなるという問題がある。また、これらの課題は膨張用異型鋼管を、ロックボルト以外に、各種の孔や鋼管内で膨張、密着させる他の補強材等に用いる場合でも共通する。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、管本体の端部閉塞の加工を容易且つ確実に行うことができると共に、全長に対する摩擦定着長をより長くすることができる膨張用異型鋼管及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の膨張用異型鋼管は、管本体の両端部に形成される断面形状が円周形
だけの非膨張部分である縮径部と、前記両端部の縮径部の間
に設けられる前記管本体の中央部
と、前記管本体の両端開口を閉塞するように
前記管本体に溶接で固定される
円盤状の第1のプレート及び
円盤状の第2のプレートとを備え、
前記中央部に内側に凹んで軸方向に延びて凹溝が形成され、前記凹溝が形成された前記中央部の断面形状の周長が前記縮径部の断面形状の周長よりも長くなっていると共に、前記第1のプレートに、前記管本体の内部に加圧用の流体を流入させる連通孔が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、円周形
だけの非膨張部分である縮径部に
円盤状の第1のプレートと
円盤状の第2のプレートを固定することができるので、管本体或いは管材の端部閉塞の加工を容易且つ確実に行うことができ、所要の膨張と密着が確実に得られる高品質の膨張用異型鋼管とすることができる。また、管本体の両端部に長いスリーブを設ける必要が無く
、管本体の両端開口を閉塞できることから、全長に対して膨張する長さ、摩擦定着長が得られる長さをより長くすることができ、更に、スリーブを嵌め込む作業も不要となる。
【0010】
本発明の膨張用異型鋼管は、前記管本体の中央部の周長が、設置される空間内で膨張時に膨らみきれない長さに設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、地盤の穿孔や鋼管の内部等の膨張用異型鋼管が設置される空間内で、膨張用異型鋼管が全部膨らみきらない状態で膨張、密着するので、膨張後に周方向に作用する押出力と、その押出力による摩擦定着を持続的且つ確実に得ることができる。
【0011】
本発明の膨張用異型鋼管は、
前記円盤状の第1のプレート及び
前記円盤状の第2のプレートが前記管本体の両端部の先端に当接され、前記管本体の外周側で前記管本体と溶接して固定されることを特徴とする。
この構成によれば、管本体の外周側で溶接できるので溶接作業を容易化することができる。また、
円盤状のプレートを管本体の両端部の先端に当接することにより、寸法精度の許容範囲を広くすることができ、ひいては歩留まりを向上することができる。
【0012】
本発明の膨張用異型鋼管は、
前記円盤状の第1のプレート及び
前記円盤状の第2のプレートの外周縁が前記管本体の縮径部の内周面に当接され、前記管本体の軸方向側で前記管本体と溶接して固定されることを特徴とする。
この構成によれば、管本体の軸方向側で
円盤状のプレートと管本体を溶接することにより、見えにくい箇所で溶接して膨張用異型鋼管の見栄えを向上することができる。
【0013】
本発明の膨張用異型鋼管は、
前記円盤状の第2のプレートに、前記管本体の内部から前記加圧用の流体を流出する第2の連通孔が形成され、
前記円盤状の第2のプレート側に直列に連結される別の膨張用異型鋼管内に、前記第2の連通孔を介して前記加圧用の流体を流入可能であることを特徴とする。
この構成によれば、長尺な地盤の穿孔等に複数の膨張用異型鋼管を連結して設置し、複数の膨張用異型鋼管により、長尺で無駄な非定着長が非常に少ない摩擦定着を実現することができる。
【0014】
本発明の膨張用異型鋼管の製造方法は、本発明の膨張用異型鋼管の製造方法であって、円筒形の素管の両端部に
分割金型の押し込みで縮径加工を施して前記縮径部を形成する第1工程を行った後に、前記凹溝を形成してから
前記円盤状の第1のプレートと
前記円盤状の第2のプレートを固定する第2工程、又は
前記円盤状の第1のプレートと
前記円盤状の第2のプレートを固定してから前記凹溝を形成する第2工程を行うことを特徴とする。
この構成によれば、凹溝の形成等を行う工程の前に
分割金型の押し込みで縮径加工を施して縮径部を形成することにより、円筒形の素管から容易且つ正確に縮径部を形成することができる。また、先行して
分割金型の押し込みで縮径加工を施して、肉厚で且つ加工硬化によって強度が高められる縮径部を形成し、縮径部の部分の形状を安定させることができ、中央部に任意の形状や数の凹溝を形成することが容易になり、製品の多様化を図ることができる。また、
分割金型の押し込みで縮径加工を施して縮径部を形成することにより、縮径部の強度を加工硬化で強化し、膨張用異型鋼管の膨張時における封止状態の安定性をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の膨張用異型鋼管或いはその製造方法によれば、管本体の端部閉塞の加工を容易且つ確実に行うことができると共に、全長に対する摩擦定着長をより長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明による実施形態の膨張用異型鋼管の正面図、(b)はその縦断面図、(c)はA−A線矢視断面図、(d)はB−B線矢視断面図、(e)はC−C線矢視断面図、(f)は左側面図、(g)は右側面図。
【
図2】(a)〜(c)は実施形態の膨張用異型鋼管を地盤の穿孔で膨張させる使用例を示す説明図。
【
図3】(a)は膨張用異型鋼管の中央部の膨張前の状態を示す断面説明図、(b)はその膨張後の状態を示す断面説明図。
【
図4】(a)〜(d)は実施形態の膨張用異型鋼管の製造工程における凹溝の加工までの手順を示す工程説明図。
【
図5】(a)〜(c)は実施形態の膨張用異型鋼管の製造工程における凹溝を有する管本体から膨張用異型鋼管を完成するまでの手順を示す工程説明図。
【
図6】(a)〜(c)は素管端部の分割金型による縮径を説明する模式説明図。
【
図7】(a)は縮径した管材を示す縦断面図、(b)は同図(a)の管材への凹溝の形成とプレートの配置を説明する縦断説明図、(c)はプレートを固定した膨張用異型鋼管の縦断面図。
【
図8】(a)は第1変形例の膨張用異型鋼管の縦断面図、(b)は第2変形例の膨張用異型鋼管の縦断面図。
【
図9】(a)〜(f)は実施形態と変形例の膨張用異型鋼管の各種使用例を示す説明図。
【
図10】(a)〜(d)は従来例の膨張用異型鋼管のロックボルトの製造工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の膨張用異型鋼管及びその製造方法〕
本実施形態の膨張用異型鋼管1は、
図1に示すように、管本体2を有し、管本体2の両端部には断面形状が円周形の縮径部21・21が形成され、両端部の縮径部21・21の間は、縮径部21より周長が長い中央部22となっている。中央部22には、内側に凹んで軸方向に延びる凹溝23が形成されており、凹溝23は管本体2の周面に縮径部21・21に達しない長さで形成されている。本実施形態の凹溝23は管本体2に単数形成されているが、周方向に間隔を開けて複数形成することも可能である。
【0018】
管本体2の両端には、両端開口を閉塞するように円盤状の第1のプレート3と円盤状の第2のプレート4が配置され、それぞれ管本体2と溶接等で固定されている。本実施形態では、第1のプレート3の外径と第2のプレート4の外径が管本体2の縮径部21の外径と略同一になっており、第1のプレート3と第2のプレート4は管本体2の両端部の先端に当接、換言すれば縮径部21の先端に当接されている。そして、第1のプレート3と管本体2の当接面の外周端や、第2のプレート4と管本体2の当接面の外周端において、第1のプレート3、第2のプレート4と管本体2がそれぞれ溶接され、第1のプレート3、第2のプレート4が管本体2の外周側で管本体2と溶接して固定されている。
【0019】
第1のプレート3には、管本体2の内部に加圧用の流体を流入させる連通孔31が形成されていると共に、管本体2の軸方向の外側に突出するように円筒状の導入パイプ32が設けられており、導入パイプ32は連通孔31の外周に配置されている。導入パイプ32は、管本体2と第1のプレート3、第2のプレート4で閉塞された空間内に加圧用の流体を流入する際に、連通孔3に流体を導入する機能を有する。連通孔3から前述の閉塞空間に流入する流体は、閉塞空間内を加圧し、流体増加による閉塞空間内の圧力上昇に伴って、凹溝23の深さが漸次浅くなるようにして管本体2の中央部22が膨張するようになっている。
【0020】
膨張用異型鋼管1は、ロックボルト等として使用され、例えば
図2(a)に示すように、地盤200の穿孔201内に第2のプレート4を先端側、第1のプレート3を開口側にして設置される。そして、注水装置等の流体の注入装置の注入口10を導入パイプ32に接続して注入装置から流体を加圧供給し、注入口10から供給される流体が連通孔3を介して管本体2と第1のプレート3と第2のプレート4で閉塞される閉塞空間内に流入し、閉塞空間内が流入する流体で加圧される(
図2(b)参照)。
【0021】
この流体注入の加圧に伴い、
図2(c)及び
図3に示すように、管本体2の中央部22は凹溝23の深さが漸次浅くなるように膨張し、中央部22或いは膨張用異型鋼管1の略全長に亘って穿孔201の周面に密着する。この際、管本体2の中央部22の周長を設置する空間内である穿孔201内で膨張時に膨らみきらない長さに設定し、膨張して穿孔201に周面が密着した状態で、凹溝23が僅かに残るようにすると、膨張後に
図3(b)の矢印のように周方向に作用する押出力と、その押出力による摩擦定着を持続的且つ確実に得ることができて好ましい。
【0022】
また、中央部22よりも肉厚の厚い縮径部21は、流体注入の加圧によっても膨張せず、縮径部21、第1のプレート3、第2のプレート4の形状は基本的にそのままの状態で維持され、管本体2の第1のプレート3と第2のプレート4による封止状態が維持される。
【0023】
本実施形態の膨張用異型鋼管1を製造する際には、先ず、円筒形の素管2aの両端部に縮径加工を施して縮径部21を形成する。この縮径加工には、例えば分割金型の押し込みによる加工、或いはローラ成形による加工等の適宜の加工を用いることが可能であり、
図4(a)〜(c)及び
図6は、分割金型320の押し込みによる加工の例である。
【0024】
図示例の縮径加工では、
図6(a)、(b)に示すように、当接面322に近接して、複数の分割片321が隙間を開けて周状に配置されている分割金型310を用い、素管2aの先端を押圧面322に当接すると共に、素管2aの端部近傍にテーパーリング310を外嵌めし、テーパーリング310の内側のテーパー面311が素管2aの中央に向かって径が縮小するようにして配置する。尚、分割金型320の各分割片321の外周面はテーパーリング310のテーパー面311に略倣うように傾斜して形成されている。
【0025】
そして、所定位置に固定されたテーパーリング310側に分割金型320を押し進め、押圧面322で押して素管2aを移動すると共に、分割片321をテーパーリング310内に押し込む。これにより、
図6(c)に示すように、分割片321がテーパー面311に倣って内側に押され、この複数の分割片321で素管2aの端部が外周から押圧され、更に、分割片321・321相互の隙間がなくなるまで加圧されて、端部に縮径部21が形成される。この分割金型320の押し込みによる縮径加工を素管2aの両端部に施すことにより、
図4(c)及び
図7(a)に示すように、両端部に縮径部21・21が形成された管材2bが得られる。
【0026】
次いで、
図4(d)に示すように、断面視略半円形の溝が軸方向に延びて形成されている下金型410に、管材2bを中央部22bが載置されるようにして配置し、この状態で、中央部22bに略対応する長さで軸方向に凸条が形成されている凸条型420を、管材2bの中央部22bに押し込み、中央部22bに略対応する長さの凹溝23が軸方向に延びて形成される管本体2が得られる(
図5(a)、
図7(b)参照)。尚、本実施形態では、管本体2に凹溝23が単数形成されるが、複数の凹溝を周方向に間隔を開けて形成することも可能である。
【0027】
その後、
図5(b)、(c)及び
図7(b)、(c)に示すように、管本体2の両端開口を閉塞するように管材2bの先端に当接して第1のプレート3、第2のプレート4を配置し、第1のプレート3と管本体2の当接面の外周端の箇所で周方向に第1のプレート3と管本体2とを溶接すると共に、第2のプレート4と管本体2の当接面の外周端の箇所で周方向に第2のプレート4と管本体2とを溶接し、図示省略する溶接部でそれぞれ固定する。この際、連通孔31が円盤状の第1のプレート3の中心から周縁側に寄った位置に設けられている第1のプレート3を用い、連通孔31から管本体2の軸方向に延びる線上に凹溝23が配置されないように構成すると、連通孔31から管本体2の内部空間への流体の加圧流入がスムーズに行うこと等ができて好ましい。
【0028】
尚、
図4、
図5、
図7では、縮径部21が両端部に形成された管材2bに凹溝23を形成して管本体2を形成した後に第1のプレート3と第2のプレート4を管本体2に固定する例を示したが、縮径部21が両端部に形成された管材2bの両端開口を閉塞するように第1のプレート3、第2のプレート4を配置して固定した後に、この管材2bの中央部22bに凹溝23を形成し、両端開口が第1のプレート3と第2のプレート4で閉塞された管本体2を得るようにすることも可能である。この場合の第1のプレート3、第2のプレート4の配置固定や、凹溝23の形成にも上述と同様の方法を用いることが可能である。
【0029】
上記実施形態の膨張用異型鋼管1によれば、円周形の縮径部21に第1のプレート3と第2のプレート4を固定することができるので、管本体2或いは管材2bの端部閉塞を容易且つ確実に行うことができ、所要の膨張と密着が確実に得られる高品質の膨張用異型鋼管1とすることができる。また、管本体2の両端部に長いスリーブを設ける必要が無く、管本体2の外周面に重ならないプレート3、4で管本体の両端部を閉塞できることから、全長に対して膨張する長さ、摩擦定着長が得られる長さをより長くすることができ、更に、スリーブを嵌め込む作業も不要となる。
【0030】
また、第1のプレート3及び第2のプレート4を管本体2の両端部の先端に当接し、管本体2の外周側で管本体2と溶接して固定することにより、溶接作業を容易化することができる、また、プレート3、4を管本体2の両端部の先端に当接することにより、寸法精度の許容範囲を広くし、ひいては歩留まりを向上することができる。
【0031】
また、膨張用異型鋼管1の製造において、凹溝23の形成等を行う工程の前に縮径部21を形成することにより、円筒形の素管2aから容易且つ正確に縮径部21を形成することができる。また、先行して縮径加工を施して、肉厚で且つ加工硬化によって強度が高められる縮径部21を形成し、縮径部21の部分の形状を安定させることができ、中央部22に任意の形状や数の凹溝23を形成することが容易になり、製品の多様化を図ることができる。また、縮径加工を施して縮径部を形成することにより、縮径部の強度を加工硬化で強化し、膨張用異型鋼管の膨張時における封止状態の安定性をより一層高めることができる。
【0032】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものであり、下記変形例も包含する。
【0033】
例えば上記実施形態では第1のプレート3、第2のプレート4を円盤状としたが、
図8(a)の第1変形例の膨張用異型鋼管1mのように、第1のプレート3m、第2のプレート4mを円盤の外周縁から管本体2の軸方向に突出する係合縁33、41が形成されているものとしてもよい。第1のプレート3m及び第2のプレート4mは管本体2の両端部の先端に当接されると共に、係合縁33、41が両端部の縮径部21・21に係合するようにして配置され、管本体2の外周側である係合縁33、41の先端箇所で図示省略する溶接部で管本体2と溶接して固定される。
【0034】
第1変形例の膨張用異型鋼管1mは、管本体2の外周面に僅かに重なる程度のプレート3m、4mで管本体2の両端開口を閉塞でき、上記実施形態と同様に、スリーブを用いる場合よりも、全長に対して膨張する長さ、摩擦定着長が得られる長さをより長くすることができ、更に、スリーブを嵌め込む作業も不要である。また、管本体2の外周側で溶接できるので溶接作業を容易化することができると共に、プレート3m、4mを管本体2の両端部の先端に当接することにより、寸法精度の許容範囲を広くし、ひいては歩留まりを向上することができる。その他、上記実施形態と対応する構成から対応する効果が得られる。
【0035】
また、
図8(b)の第2変形例の膨張用異型鋼管1nのように、円盤状の第1のプレート3n、円盤状の第2のプレート4nの外径を管本体2の縮径部21の内径と略同一にし、第1のプレート3n及び第2のプレート4nの外周縁が管本体2の縮径部21の内周面に当接するようにして、第1のプレート3n及び第2のプレート4nを縮径部21の先端或いは先端近傍に配置してもよい。この場合、管本体2の軸方向側である、第1のプレート3nと管本体2の当接面の軸方向端部、第2のプレート4nと管本体2の当接面の軸方向端部にて、図示省略する溶接部で第1のプレート3nと管本体2、第2のプレート4nと管本体2をそれぞれ溶接して固定する。
【0036】
第2変形例の膨張用異型鋼管1nでは、管本体2の軸方向側でプレート3n、4nと管本体2を溶接することにより、見えにくい箇所で溶接して膨張用異型鋼管1nの見栄えを向上することができる。その他、上記実施形態と対応する構成から対応する効果が得られる。
【0037】
また、本発明の膨張用異型鋼管はロックボルト以外にも、切羽前方の補強材等の地盤の補強材、或いは鋼管の内部に設置され鋼管を補強する補強材、或いは注入用のパッカー等の適宜の用途に用いることが可能であり、例えば
図9(a)〜(f)のように使用することが可能である。
【0038】
図9(a)の例は、地盤200の穿孔201に打設されている円筒形の鋼管51内の中間位置に実施形態の短尺の膨張用異型鋼管1を配置し、注入管11で流体を加圧注入して膨張用異型鋼管1を膨張させて、鋼管51の中間位置で膨張用異型鋼管1を鋼管51の内周面に密着させるものであり、鋼管51の特定部位を補強する補強材として膨張用異型鋼管1が用いられている。尚、この使用例で補強する鋼管は、地盤200の穿孔201内に打設されるものに限定されず適宜であり、例えば垂直方向に立つ柱状の鋼管内の適宜の位置に膨張用異型鋼管1を配置し、その鋼管内で膨張、密着させて柱状の鋼管の特定部位を補強するようにしてもよい。
【0039】
図9(b)の例は、地盤200の穿孔201の先端近傍の位置に実施形態の短尺の膨張用異型鋼管1を配置し、注入管11で流体を加圧注入して膨張用異型鋼管1を膨張させ、穿孔201の先端近傍で穿孔201の周面に膨張用異型鋼管1を密着させるものであり、穿孔201の孔奥に設置して湧き水を止水する用途等として用いられている。
【0040】
図9(c)の例は、地盤200の穿孔201に打設されている円筒形の鋼管52内の口元近傍に短尺の膨張用異型鋼管1pを配置するものである。膨張用異型鋼管1pは、上記実施形態の膨張用異型鋼管1の第1のプレート3にリング状のベアリングプレート34が設けられているものであり、その他の構成は上記実施形態の膨張用異型鋼管1と同じである。膨張用異型鋼管1pには、図示省略する注入管を介して流体が加圧注入され、鋼管52内の口元近傍の位置で膨張し、鋼管52の周面に密着している。この膨張、密着により、ベアリングプレート34が地盤200に押し付けられ、地盤200の緩み止めがなされるようになっている。尚、本例は、ベアリングプレート34以外の適宜の部材を既設の鋼管52の口元や地盤200の穿孔201の口元に設置する際に用いることができる。
【0041】
図9(d)の例は、地盤200の穿孔201の口元近傍に短尺の膨張用異型鋼管1qを配置するものである。膨張用異型鋼管1qは、先端の第2のプレート4qが所定以上の圧力で溶接部が破壊されて開放するようになっている。その他の特に言及しない構成は上記実施形態の膨張用異型鋼管1と同じである。膨張用異型鋼管1qには、流体が加圧注入され、穿孔201の口元近傍の位置で膨張し、穿孔201の周面に密着する。そして、更なる流体の過加圧注入によって第2のプレート4qが開放し、口元近傍で定着している膨張用異型鋼管1qよりも孔奥に流体が注入される。本例は、例えば膨張用異型鋼管1qを口元コーキングとして用い、孔奥に地盤改良材を注入する場合等に使用することができる。尚、過加圧の流体注入に代え、膨張用異型鋼管1qの膨張後に、第2のプレート4qを棒で突き破って開放し、その開放部から孔奥に流体を注入することも可能である。
【0042】
図9(e)の例は、地盤200の穿孔201内に膨張用異型鋼管1r、1sを直列に連結して配置するものである。膨張用異型鋼管1rは、第2のプレート4rの外周面に不図示の螺旋溝が形成され、第2のプレート4rに流体を流出させる不図示の連通孔が形成されており、又、膨張用異型鋼管1sは、第1のプレート3sの外周面に不図示の螺旋溝が形成され、導入パイプ32が設けられていないものであり、その他の構成は上記実施形態の膨張用異型鋼管1と同じである。膨張用異型鋼管1r、1sは第2のプレート4rと第1のプレート3sの螺旋溝にカプラ6を螺合して連結され、第2のプレート4rの連通孔とカプラ6と第1のプレート3sの連通孔を介して、膨張用異型鋼管1rに流入した流体を膨張用異型鋼管1sに流出可能になっている。
【0043】
そして、膨張用異型鋼管1rに流体が加圧注入され、注入された流体が膨張用異型鋼管1sにも流れ込み、膨張用異型鋼管1r、1sが膨張して穿孔201の周面に密着する。本例は、穿孔201の長さが長いなど膨張用異型鋼管の設置箇所が長尺な場合のロックボルト等として使用することが可能であり、複数の膨張用異型鋼管1r、1sにより、長尺で無駄な非定着長が非常に少ない摩擦定着を実現することができる。尚、膨張用異型鋼管1r、1sを連結する構成は適宜であり、例えばカプラ6を用いずに、第2のプレート4rに内周面に螺旋溝が形成された凹部若しくは外周面に螺旋溝が形成された螺合部を設け、第1のプレート3sに外周面に螺旋溝が形成された螺合部若しくは内周面に螺旋溝が形成された凹部を設け、第2のプレート4rの螺旋溝と第1のプレート3sの螺旋溝を相互に螺合して螺合部と凹部を嵌め合わせるように連結し、第2のプレート4rの連通孔と第1のプレート3sの連通孔を介して、膨張用異型鋼管1rに流入した流体を膨張用異型鋼管1sに流出する構成等とすることが可能である。また、連結する膨張用異型鋼管の数も、必要に応じて適宜である。
【0044】
図9(f)の例は、複数箇所に地盤改良材の吐出孔531が形成されている円筒形の鋼管53が地盤200の穿孔201に打設され、その鋼管53内に膨張用異型鋼管1tを配置するものである。膨張用異型鋼管1tは、先端の第2のプレート4tが所定以上の圧力で溶接部が破壊されて開放するようになっている。その他の特に言及しない構成は上記実施形態の膨張用異型鋼管1と同じである。膨張用異型鋼管1tには、流体として地盤改良材が加圧注入され、鋼管53内で膨張して鋼管53の内面に密着する。そして、更なる流体の過加圧注入によって第2のプレート4qが開放し、この開放部から地盤改良材が流出し、鋼管53の先端開口や吐出孔531から周囲の地盤200に注入され、周囲の地盤200が改良される。尚、過加圧の流体注入に代え、膨張用異型鋼管1yの膨張後に、第2のプレート4tを棒で突き破って開放し、その開放部から地盤改良材を注入することも可能である。
【0045】
また、膨張用異型鋼管1tに、所定圧以上で開放する圧力開放孔を例えば凹溝23の箇所等に管本体2tに間隔を開けて複数箇所に設け、膨張用異型鋼管1tの膨張、鋼管53の内周面に密着後に、地盤改良材の過加圧注入によって圧力開放孔を開放し、圧力開放孔から吐き出される地盤改良材を、鋼管53内、鋼管53の吐出孔531を介して周囲の地盤200に吐出し、鋼管53の周囲の地盤200が改良するようにすることも可能である。