特許第6053118号(P6053118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6053118シミュレーション装置、シミュレーション方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053118
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/06 20130101AFI20161219BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20161219BHJP
【FI】
   A61F2/06
   A61F2/82
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-204859(P2012-204859)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-57743(P2014-57743A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】川澄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】多賀 一郎
(72)【発明者】
【氏名】野見山 弘章
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0200120(US,A1)
【文献】 特開2003−325458(JP,A)
【文献】 特表2013−505782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
A61F 2/82
G06Q 50/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の分岐を有する血管の3次元血管モデルに基づいて、体内留置型の管状治療具を用いた治療方針に関するシミュレーションを行うシミュレーション装置であって、
前記管状治療具を用いた治療に関し、治療した患者の病変部に対してどのような管状治療具の規格がこれまでに選定されたのかを示す過去の情報および前記病変部の位置および形状、または前記管状治療具の留置位置における血管の形状を含む過去の症例情報を記憶するデータベースと、
前記データベースに記憶された前記過去の情報および前記過去の症例情報と、前記3次元血管モデルと、に基づいて、前記病変部の位置と、前記病変部および前記病変部の周囲の形状と、を解析し、前記病変部に適した前記管状治療具の規格の選定を行うマッチング処理手段と、
該選定された規格の前記管状治療具と前記3次元血管モデルとを合成して、治療結果予想図としての3次元データを生成するフィッティング処理手段と、
前記マッチング処理手段による選定結果を前記データベースに記憶させる記憶手段と、を備え
前記マッチング処理手段が、前記分岐の位置や形状からなる分岐状態をも含む前記病変部に適した前記管状治療具の規格の選定を行うことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
前記マッチング処理手段は、前記病変部に適した管状治療具の規格として、該病変部に最適な管状治療具の規格を1つ選定することを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記フィッティング処理手段が生成した前記3次元データを表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記管状治療具がステントグラフトであることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記管状治療具がZ型ステント骨格を有するステントグラフトであることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
患者の分岐を有する血管の3次元血管モデルに基づいて、体内留置型の管状治療具を用いた治療方針に関するシミュレーションを行うシミュレーション装置におけるシミュレーション方法であって、
前記管状治療具を用いた治療に関し、治療した患者の病変部に対してどのような管状治療具の規格がこれまでに選定されたのかを示す過去の情報および前記病変部の位置および形状、または前記管状治療具の留置位置における血管の形状を含む過去の症例情報を記憶する情報記憶ステップと、
前記過去の情報および前記過去の症例情報と、前記3次元血管モデルと、に基づいて、前記病変部の位置と、前記病変部および前記病変部の周囲の形状と、を解析し、前記病変部に適した前記管状治療具の規格の選定を行うマッチング処理ステップと、
該選定した規格の前記管状治療具と前記3次元血管モデルとを合成して、治療結果予想図としての3次元データを生成するフィッティング処理ステップと、
前記選定結果を前記過去の情報および前記過去の症例情報に追加する情報追加ステップと、を備え
前記マッチング処理ステップにおいて、前記分岐の位置や形状からなる分岐状態をも含む前記病変部に適した前記管状治療具の規格の選定を行うシミュレーション方法。
【請求項7】
患者の分岐を有する血管の3次元血管モデルに基づいて、体内留置型の管状治療具を用いた治療方針に関するシミュレーションを行うシミュレーション装置におけるシミュレーション方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記管状治療具を用いた治療に関し、治療した患者の病変部に対してどのような管状治療具の規格がこれまでに選定されたのかを示す過去の情報および前記病変部の位置および形状、または前記管状治療具の留置位置における血管の形状を含む過去の症例情報を記憶する情報記憶ステップと、
前記過去の情報および前記過去の症例情報と、前記3次元血管モデルと、に基づいて、前記病変部の位置と、前記病変部および前記病変部の周囲の形状と、を解析し、前記病変部に適した前記管状治療具の規格の選定を行うマッチング処理ステップと、
該選定した規格の前記管状治療具と前記3次元血管モデルとを合成して、治療結果予想図としての3次元データを生成するフィッティング処理ステップと、
前記選定結果を前記過去の情報および前記過去の症例情報に追加する情報追加ステップと、をコンピュータに実行させ
前記マッチング処理ステップにおいて、前記分岐の位置や形状からなる分岐状態をも含む前記病変部に適した前記管状治療具の規格の選定を行わせるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置、シミュレーション方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動脈瘤の外科的治療方法として、ステントグラフト内挿術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このステントグラフトの内挿術においては、術前の患者の動脈瘤CT(Computed Tomography)画像を解析し、手術の適応評価、留置位置の計画、規格選定などの治療方針を検討する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−227486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血管や動脈瘤の形態には個人差があるとともに、患者の病変部に適したステントグラフトの規格選定および留置を術前に想定できる装置はなかった。このため、治療方針の検討には、医師の経験が重要であり、高精度かつ短時間に治療方針を検討することは容易ではなかった。
そして、上述の課題は、ステントグラフトに限らず、ステントグラフト以外の体内留置型の管状治療具(例えば、ステントや人工血管)でも生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、患者の体内に留置する体内留置型の管状治療具を用いた治療方針の検討を容易化できるシミュレーション装置、シミュレーション方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
(1) 本発明は、患者の生体器官3次元モデル(例えば、後述の3次元血管モデルAAに相当)に基づいて、体内留置型の管状治療具(例えば、図5のステントグラフトBBに相当)を用いた治療方針に関するシミュレーションを行うシミュレーション装置(例えば、図1のシミュレーション装置1に相当)であって、前記管状治療具を用いた治療に関する過去の情報および過去の症例を記憶するデータベース(例えば、図1のデータベース10に相当)と、前記データベースに記憶された前記過去の情報および過去の症例と、前記生体器官3次元モデルと、に基づいて、病変部(例えば、図2の動脈瘤Xに相当)の位置と、該病変部および該病変部の周囲の形状と、を解析し、該病変部に適した管状治療具の規格の選定を行うマッチング処理手段(例えば、図1のマッチング処理部20に相当)と、該選定された規格の管状治療具と前記生体器官3次元モデルとを合成して、治療結果予想図としての3次元データを生成するフィッティング処理手段(例えば、図1のフィッティング処理部30に相当)と、前記マッチング処理手段による選定結果を前記データベースに記憶させる記憶手段(例えば、図1のマッチング処理部20に相当)と、を備えたことを特徴とするシミュレーション装置を提案している。
【0008】
この発明によれば、管状治療具を用いた治療に関する過去の情報および過去の症例と、患者の生体器官3次元モデルと、に基づいて、管状治療具の規格を選定する。このため、病変部の位置や、病変部および病変部の周辺の形状に応じて、患者の病変部に適した管状治療具の規格を選定できる。
また、選定した規格の管状治療具と生体器官3次元モデルとを合成して治療結果予想図としての3次元データを生成する。この3次元データを表示装置(例えば、後述の表示手段や外部モニタなど)に表示させれば、医師は、治療結果予想図を確認することで、病変部と管状治療具との位置関係をイメージすることができ、管状治療具の留置を術前に想定できる。
以上によれば、管状治療具を用いた治療方針の検討を容易化できる。
【0009】
(2) 本発明は、(1)のシミュレーション装置について、前記生体器官3次元モデルが、分岐(例えば、図2の胸部大動脈A1と、腕頭動脈A10、左総頸動脈A20、および左鎖骨下動脈A30と、との分岐に相当)を有する血管の3次元血管モデルであり、前記マッチング処理手段が、前記分岐の位置や形状からなる分岐状態をも含む前記病変部に適した管状治療具の規格の選定を行うことを特徴とするシミュレーション装置を提案している。
【0010】
この発明によれば、血管の分岐の近傍に病変部が発生している場合に、この血管の分岐の位置や形状からなる分岐状態を考慮して管状治療具の規格を選定できる。
【0011】
(3) 本発明は、(1)または(2)のシミュレーション装置について、前記マッチング処理手段は、前記病変部に適した管状治療具の規格として、該病変部に最適な管状治療具の規格を1つ選定することを特徴とするシミュレーション装置を提案している。
【0012】
この発明によれば、病変部に最適なものとして選定された1つの管状治療具の規格をもとに、フィッティング処理手段による3次元データの生成処理など、後段の処理を行うことが可能となる。このため、病変部に適した管状治療具の規格として複数の規格を選定する場合と比較して、管状治療具を用いた治療方針の検討をさらに容易化できる。
【0013】
(4) 本発明は、(1)〜(3)のいずれかのシミュレーション装置について、前記フィッティング処理手段が生成した前記3次元データを表示する表示手段(例えば、図1の表示部40に相当)を備えることを特徴とするシミュレーション装置を提案している。
【0014】
この発明によれば、治療結果予想図として生成された3次元データを、表示手段によって3次元表示する。このため、医師は、表示手段に表示された治療結果予想図を確認することで、病変部と管状治療具との位置関係をイメージすることができ、管状治療具の留置を術前に想定できる。
【0015】
また、この発明によれば、上述のように治療結果予想図を3次元表示する。このため、患者は、治療結果予想図を確認することで、管状治療具を用いてどのような治療が行われるのかを術前に認識できる。
【0016】
(5) 本発明は、(1)〜(4)のいずれかのシミュレーション装置について、前記管状治療具がステントグラフト(例えば、図5のステントグラフトBBに相当)であることを特徴とするシミュレーション装置を提案している。
【0017】
この発明によれば、ステントグラフトを用いた治療方針の検討について、上述のように容易化できる。
【0018】
(6) 本発明は、(1)〜(4)のいずれかのシミュレーション装置について、前記管状治療具がZ型ステント骨格を有するステントグラフト(例えば、図5のステントグラフトBBに相当)であることを特徴とするシミュレーション装置を提案している。
【0019】
この発明によれば、Z型ステント骨格を有するステントグラフトを用いた治療方針の検討について、上述のように容易化できる。
【0020】
(7) 本発明は、患者の生体器官3次元モデル(例えば、後述の3次元血管モデルAAに相当)に基づいて、体内留置型の管状治療具(例えば、図5のステントグラフトBBに相当)を用いた治療方針に関するシミュレーションを行うシミュレーション方法であって、前記管状治療具を用いた治療に関する過去の情報および過去の症例を記憶する情報記憶ステップ(例えば、ステントグラフトを用いた治療に関する過去の情報および過去の症例を図1のデータベース10が記憶する処理に相当)と、前記過去の情報および過去の症例と、前記生体器官3次元モデルと、に基づいて、病変部(例えば、図2の動脈瘤Xに相当)の位置と、該病変部および該病変部の周囲の形状と、を解析し、該病変部に適した管状治療具の規格の選定を行うマッチング処理ステップ(例えば、図3のマッチング処理に相当)と、該選定した規格の管状治療具と前記生体器官3次元モデルとを合成して、治療結果予想図としての3次元データを生成するフィッティング処理ステップ(例えば、図4のフィッティング処理に相当)と、前記選定結果を前記過去の情報および過去の症例に追加する情報追加ステップ(例えば、図3のステップS4の処理に相当)と、を備えたことを特徴とするシミュレーション方法を提案している。
【0021】
この発明によれば、管状治療具を用いた治療に関する過去の情報および過去の症例と、患者の生体器官3次元モデルと、に基づいて、管状治療具の規格を選定する。このため、病変部の位置や、病変部および病変部の周辺の形状に応じて、患者の病変部に適した管状治療具の規格を選定できる。
また、選定した規格の管状治療具と生体器官3次元モデルとを合成して治療結果予想図としての3次元データを生成する。この3次元データを表示装置(例えば、後述の表示手段や外部モニタなど)に表示させれば、医師は、治療結果予想図を確認することで、病変部と管状治療具との位置関係をイメージすることができ、管状治療具の留置を術前に想定できる。
以上によれば、管状治療具を用いた治療方針の検討を容易化できる。
【0022】
(8) 本発明は、(7)のシミュレーション装置について、前記生体器官3次元モデルが、分岐(例えば、図2の胸部大動脈A1と、腕頭動脈A10、左総頸動脈A20、および左鎖骨下動脈A30と、との分岐に相当)を有する血管の3次元血管モデルであり、前記マッチング処理ステップにおいて、前記分岐の位置や形状からなる分岐状態をも含む前記病変部に適した管状治療具の規格の選定を行うことを特徴とするシミュレーション方法を提案している。
【0023】
この発明によれば、血管の分岐の近傍に病変部が発生している場合に、この血管の分岐の位置や形状からなる分岐状態を考慮して管状治療具の規格を選定できる。
【0024】
(9) 本発明は、患者の生体器官3次元モデル(例えば、後述の3次元血管モデルAAに相当)に基づいて、体内留置型の管状治療具(例えば、図5のステントグラフトBBに相当)を用いた治療方針に関するシミュレーションを行うシミュレーション方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記管状治療具を用いた治療に関する過去の情報および過去の症例を記憶する情報記憶ステップ(例えば、ステントグラフトを用いた治療に関する過去の情報および過去の症例を図1のデータベース10が記憶する処理に相当)と、前記過去の情報および過去の症例と、前記生体器官3次元モデルと、に基づいて、病変部(例えば、図2の動脈瘤Xに相当)の位置と、該病変部および該病変部の周囲の形状と、を解析し、該病変部に適した管状治療具の規格の選定を行うマッチング処理ステップ(例えば、図3のマッチング処理に相当)と、該選定した規格の管状治療具と前記生体器官3次元モデルとを合成して、治療結果予想図としての3次元データを生成するフィッティング処理ステップ(例えば、図4のフィッティング処理に相当)と、前記選定結果を前記過去の情報および過去の症例に追加する情報追加ステップ(例えば、図3のステップS4の処理に相当)と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
【0025】
この発明によれば、管状治療具を用いた治療に関する過去の情報および過去の症例と、患者の生体器官3次元モデルと、に基づいて、管状治療具の規格を選定する。このため、病変部の位置や、病変部および病変部の周辺の形状に応じて、患者の病変部に適した管状治療具の規格を選定できる。
また、選定した規格の管状治療具と生体器官3次元モデルとを合成して治療結果予想図としての3次元データを生成する。この3次元データを表示装置(例えば、後述の表示手段や外部モニタなど)に表示させれば、医師は、治療結果予想図を確認することで、病変部と管状治療具との位置関係をイメージすることができ、管状治療具の留置を術前に想定できる。
以上によれば、管状治療具を用いた治療方針の検討を容易化できる。
【0026】
(10) 本発明は、(9)のプログラムについて、前記生体器官3次元モデルが、分岐(例えば、図2の胸部大動脈A1と、腕頭動脈A10、左総頸動脈A20、および左鎖骨下動脈A30と、との分岐に相当)を有する血管の3次元血管モデルであり、前記マッチング処理ステップにおいて、前記分岐の位置や形状からなる分岐状態をも含む前記病変部に適した管状治療具の規格の選定を行わせるためのプログラムを提案している。
【0027】
この発明によれば、血管の分岐の近傍に病変部が発生している場合に、この血管の分岐の位置や形状からなる分岐状態を考慮して管状治療具の規格を選定できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、管状治療具を用いた治療方針の検討を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るシミュレーション装置のブロック図である。
図2】3次元血管モデルの一例を示す図である。
図3】前記シミュレーション装置に設けられたマッチング処理部が行うマッチング処理のフローチャートである。
図4】前記シミュレーション装置に設けられたフィッティング処理部が行うフィッティング処理のフローチャートである。
図5】ステントグラフトの一例を示す図である。
図6】前記フィッティング処理を説明するための図である。
図7】前記フィッティング処理を説明するための図である。
図8】前記フィッティング処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション装置1のブロック図である。シミュレーション装置1は、胸部大動脈の一部に発生した動脈瘤に対してステントグラフトを用いて治療を行うための治療方針に関するシミュレーションを行う。このシミュレーション装置1は、データベース10、マッチング処理部20、フィッティング処理部30、および表示部40を備える。
【0032】
表示部40は、画像を表示する表示装置であり、例えばブラウン管(CRT)や、液晶ディスプレイで構成される。なお、この表示部40は、パソコンに接続されるモニタであってもよいし、スマートフォンやタブレット端末といった携帯端末であってもよい。
【0033】
データベース10は、情報を記憶する記憶装置であり、例えばEPROMやフラッシュメモリといった不揮発性のメモリや、ハードディスクといった磁気ディスクや、CD−ROMで構成される。このデータベース10は、ステントグラフト治療に関する過去の情報および過去の症例と、規格ごとのステントグラフトのCADデータと、を記憶しているとともに、マッチング処理部20による後述の選定結果を適宜記憶する。
【0034】
なお、上述のステントグラフト治療に関する過去の情報とは、例えば、治療した患者の病変部に対してどのようなステントグラフトの規格がこれまでに選定されたのかを示す情報のことである。また、上述の過去の症例とは、これまでに治療した患者の病変部に関する情報のことであり、例えば、動脈瘤の位置および形状や、ステントグラフトの留置位置の血管の形状などのことである。過去の情報やマッチング処理部20による選定結果と、過去の症例と、は互いに紐付けられており、データベース10を参照すれば、どのような病変部に対してどのようなステントグラフトの規格がこれまでに選定されたのかを判別できるようになっている。
【0035】
マッチング処理部20は、プロセッサやメモリを含んで構成される。このマッチング処理部20は、データベース10に記憶されている情報と、後述の3次元血管モデルと、に基づいて、動脈瘤の位置と、動脈瘤および動脈瘤の周囲の血管の形状と、を解析し、病変部に適したステントグラフトの規格の選定を行う。このマッチング処理部20について、図2および図3を用いて以下に詳述する。
【0036】
図2は、3次元血管モデルAAを示す図である。3次元血管モデルAAは、患者の胸部大動脈A1にできた動脈瘤Xと、この動脈瘤Xの周辺の血管と、のCTデータをCAD(Computer Aided Design)データ化したものである。3次元血管モデルは、シミュレーション装置1において生成されるものであってもよいし、シミュレーション装置1の外部において生成されるものであってもよい。
【0037】
なお、図2に示す3次元血管モデルAAにおいて、胸部大動脈A1からは、腕頭動脈A10、左総頸動脈A20、および左鎖骨下動脈A30が分岐している。また、腕頭動脈A10は、右総頸動脈A11および右鎖骨下動脈A12に分岐している。
【0038】
図3は、マッチング処理部20が行うマッチング処理のフローチャートである。
【0039】
ステップS1において、マッチング処理部20は、データベース10に記憶されている情報と、3次元血管モデルAAと、を読み出し、ステップS2に処理を移す。なお、3次元血管モデルAAの生成をシミュレーション装置1が行う場合には、このステップS1において、マッチング処理部20や、シミュレーション装置1に設けられたマッチング処理部20以外の構成が、3次元血管モデルAAを生成し、この3次元血管モデルAAをマッチング処理部20が読み出すものとする。また、3次元血管モデルAAの生成をシミュレーション装置1の外部で行う場合には、シミュレーション装置1の外部で生成された3次元血管モデルAAを、このステップS1において、マッチング処理部20が読み出すものとする。
【0040】
ステップS2において、マッチング処理部20は、ステップS1において読み出した各種情報に基づいて、動脈瘤Xの位置と、動脈瘤Xおよび動脈瘤Xの周囲の血管の形状と、を解析し、ステップS3に処理を移す。
【0041】
ステップS3において、マッチング処理部20は、ステップS2における解析結果に基づいて、患者の病変部に適したステントグラフトの規格の選定を行い、ステップS4に処理を移す。
【0042】
なお、患者の病変部に適したステントグラフトの規格の選定には、患者の大動脈瘤長、中枢側または末梢側ネック長(ステントグラフトの固定部の長さ)、ネック径(ステントグラフトの固定部に対応する血管部分の径)などのパラメータを用いる。これらパラメータは、患者の3次元血管モデルAAを生成する際に求められ、生成された3次元血管モデルAAと紐付けられる。
図2におけるネック長とは、左鎖骨下動脈A30または左総頸動脈A20の起始部から、動脈瘤Xの起始部までの長さのことである。
また、図2におけるネック径とは、動脈瘤Xの起始部における中枢側および末梢側の胸部大動脈A1の正常血管部分の径のことである。
【0043】
また、マッチング処理部20による選定結果には、患者の病変部に適したステントグラフトの形状、径、貫通孔(後述の図5の貫通孔B1を参照)の形状や位置などのパラメータが含まれるものとする。
【0044】
また、ステントグラフトの規格の選定では、マッチング処理部20は、患者の病変部に最適な規格を1つを選定してもよいし、患者の病変部に適した規格を複数選定してもよい。マッチング処理部20が複数の規格を選定した場合には、その中から1つを、患者の病変部に最適な規格としてシミュレーション装置1の操作者(例えば医師)に選定させるものとする。
【0045】
ステップS4において、マッチング処理部20は、ステップS3における選定結果をデータベース10に記憶させ、ステップS5に処理を移す。
【0046】
ステップS5において、マッチング処理部20は、シミュレーション装置1の操作者(例えば医師)に対して、ステップS3における選定結果を出力し、図3のマッチング処理を終了する。なお、選定結果の出力については、例えば、表示部40により選定結果を画像で表示することで実現してもよいし、選定結果を紙に印刷することで実現してもよい。
【0047】
図1に戻って、フィッティング処理部30は、プロセッサやメモリを含んで構成される。このフィッティング処理部30は、マッチング処理部20により選定された規格のステントグラフトと、上述の3次元血管モデルAAと、を合成して、治療結果予想図として3次元データを生成する。このフィッティング処理部30について、図4〜7を用いて以下に詳述する。
【0048】
図4は、フィッティング処理部30が行うフィッティング処理のフローチャートである。
【0049】
ステップS11において、フィッティング処理部30は、マッチング処理部20による選定結果に基づいて、患者の病変部に最適な規格のステントグラフトのCADデータをデータベース10より抽出し、ステップS12に処理を移す。この処理によれば、動脈瘤Xの位置と、動脈瘤Xおよび動脈瘤Xの周囲の血管の形状と、を考慮したステントグラフトのCADデータが、データベース10より抽出されることになる。
【0050】
図5は、フィッティング処理部30においてデータベース10より抽出されたステントグラフトBBのCADデータを示す図である。ステントグラフトは、ステントと呼ばれる骨格に、グラフトと呼ばれる人工血管を被覆したものである。ステントは、いわゆるZ型ステント骨格を有しており、金属細線がジグザグ状に折り返されるとともに、略円筒状に形成されている。金属細線は、例えばステンレス鋼や、Ni−Ti合金や、チタン合金で形成される。一方、グラフトは、ステントを外周から覆うように縫合固定され、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)といったフッ素樹脂や、ポリエチレンテレフタレートといったポリエステル樹脂で形成される。図5のステントグラフトBBのグラフトの一部には、2つの貫通孔B1が設けられている。
【0051】
図4に戻って、ステップS12において、フィッティング処理部30は、ステップS11においてデータベース10より抽出したステントグラフトBBのCADデータと、上述の3次元血管モデルAAと、に基づいて、ステントグラフトBBを留置した場合の治療結果予想図を、3次元データで生成し、ステップS13に処理を移す。
【0052】
図6〜8は、図2の3次元血管モデルAAと、図5のステントグラフトBBと、に基づいて、フィッティング処理部30により上述の3次元データを生成する過程を示す図である。図6、7、8の順番にステントグラフトBBを移動および変形させていくことにより、ステントグラフトBBを胸部大動脈A1の形状に合わせるとともに、腕頭動脈A10、左総頸動脈A20、および左鎖骨下動脈A30を貫通孔B1から突出させる。これによれば、腕頭動脈A10、左総頸動脈A20、および左鎖骨下動脈A30の血流を妨げることなく動脈瘤Xの近傍にステントグラフトBBを留置する場合の治療結果予想図が、3次元データで生成されることになる。
【0053】
なお、3次元データを生成する際に、フィッティング処理部30は、シミュレーション装置1の操作者(例えば医師)による入力を受付け、受付けた入力を用いることとしてもよい。この場合、シミュレーション装置1の操作者は、表示部40に表示される3次元データを見て、ステントグラフトの径や角度や、貫通孔の形状や位置などについて、クリックしたり数値を入力したりできるものとする。そして、これらクリックや数値の入力に応じて、フィッティング処理部30が3次元データを適宜調整するものとする。
【0054】
図4に戻って、ステップS13において、フィッティング処理部30は、ステップS12において生成した3次元データを表示部40により表示させ、図4に示したフィッティング処理を終了する。
【0055】
以上のシミュレーション装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0056】
シミュレーション装置1は、ステントグラフトを用いた治療に関する過去の情報および過去の症例と、患者の3次元血管モデルと、に基づいて、ステントグラフトの規格を選定する。このため、動脈瘤の位置と、動脈瘤および動脈瘤の周囲の血管の形状と、に応じて、患者の病変部に適したステントグラフトの規格を選定できる。
また、選定した規格のステントグラフトと3次元血管モデルとを合成して治療結果予想図を生成し、この治療結果予想図を3次元表示する。このため、医師は、360度に亘って好きな角度から治療結果予想図を確認して、血管とステントグラフトとの位置関係をイメージすることができ、ステントグラフトの留置を術前に想定できる。
以上によれば、ステントグラフトを用いた治療方針の検討を容易化できる。
【0057】
また、シミュレーション装置1は、治療結果予想図を3次元表示する。このため、患者は、360度に亘って好きな角度から治療結果予想図を確認して、ステントグラフトを用いてどのような治療が行われるのかを術前に認識できる。これによれば、患者の治療に対する不安を軽減できる。
【0058】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0059】
例えば、上述の実施形態では、管状治療具としてステントグラフトを例に挙げて説明したが、これに限らず、ステントや人工血管などの体内留置型の管状治療具であれば本発明を適用できる。なお、ステントグラフトとしては、胸部大動脈用のステントグラフト以外には、例えば、腹部大動脈用のステントグラフトや、胸腹部大動脈用のステントグラフトがある。また、ステントとしては、例えば、コロナリーステントといった血管内留置用ステントや、胆管ステントといった血管以外の器官に留置するステントがある。
【0060】
また、上述の実施形態では、病変部として動脈瘤を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、静脈瘤や狭窄部が病変部である場合にも、本発明を適用できる。なお、上述の動脈瘤とは、例えば大動脈瘤や脳動脈瘤や抹消動脈瘤(膝窩動脈瘤、腸骨動脈瘤など)のことであり、上述の静脈瘤とは、例えば下肢静脈瘤のことである。
【符号の説明】
【0061】
1・・・シミュレーション装置
10・・・データベース
20・・・マッチング処理部
30・・・フィッティング処理部
40・・・表示部
AA・・・3次元血管モデル
A1・・・胸部大動脈
A10・・・腕頭動脈
A11・・・右総頸動脈
A12・・・右鎖骨下動脈
A20・・・左総頸動脈
A30・・・左鎖骨下動脈
BB・・・ステントグラフト
B1・・・貫通孔
X・・・動脈瘤
図1
図3
図4
図2
図5
図6
図7
図8