(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053129
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
B62D5/04
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-260904(P2012-260904)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104921(P2014-104921A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋輔
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−095117(JP,A)
【文献】
特開2008−290616(JP,A)
【文献】
特表2000−500102(JP,A)
【文献】
特開2012−136214(JP,A)
【文献】
特開2007−276740(JP,A)
【文献】
特開2008−304201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、該駆動源に取り付けられるハウジングと、該ハウジングに内装されてステアリングシャフトの操舵トルクを検出し、検出したトルク値に応じた信号をセンサ信号端子から出力するセンサコイルを有するトルクセンサと、前記ハウジングに収納され、前記トルクセンサの信号によって前記駆動源を制御する制御装置とを備えてなる電動パワーステアリング用駆動装置であって、
前記ハウジングは、
前記センサコイルを収納するよう、該ハウジングの一端側が開口すると共に、その底部に前記ステアリングシャフトが挿通可能な挿通孔を有するセンサコイル収納部と、
前記センサコイル収納部に隣接して配置され、前記制御装置を収納するよう、前記センサコイル収納部の開口方向と同一方向に開口した制御装置収納部と、
前記制御装置収納部と前記センサコイル収納部とを連通する切欠連通部と、を有し、
前記制御装置は、
複数のターミナルが配設されたターミナルモジュールと、
該ターミナルモジュールの下面側に配置され、前記ハウジングの前記制御装置収納部の底部に配置される駆動系制御装置と、
前記ターミナルモジュールの上面側に配置され、前記センサ信号端子が挿通される端子孔を有する制御系基板と、を有し、
前記制御装置と前記センサコイルは、前記ハウジングの開口側に臨んで、前記制御装置収納部と前記センサコイル収納部にそれぞれ配置され、
前記センサ信号端子は、前記端子孔に保持された状態で前記制御系基板と電気的に接続されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動パワーステアリング用駆動装置において、
前記駆動系制御装置は、前記ハウジングの前記制御装置収納部上に載置され、前記駆動系制御装置から発生する熱は、ヒートシンクとして機能する前記ハウジングを介して放熱されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電動パワーステアリング用駆動装置において、
前記ターミナルモジュールは、前記センサ信号端子が挿通される信号線ガイド部を有し、
前記センサ信号端子は、信号線ガイド部に挿通された状態で前記端子孔に保持されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング用駆動装置において、
前記センサ信号端子は、前記端子孔を貫通した状態で前記制御系基板に接続・固定されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング用駆動装置において、
前記ハウジングは、前記駆動源と前記制御装置とを電気的に接続するための駆動源接続端子が配置される駆動源端子配設部をさらに有し、
前記駆動源接続端子は、前記ハウジングの開口側に臨んで、前記駆動源端子配設部に配置されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項6】
請求項5記載の電動パワーステアリング用駆動装置において、
前記センサコイル及び前記駆動源接続端子は、前記ハウジングに前記駆動系制御装置が収納された状態で取り付けられ、
前記センサコイルの前記センサ信号端子は、前記駆動系制御装置の上方に配置される前記制御系基板と電気的に接続され、
前記駆動源接続端子は、前記駆動系制御装置と電気的に接続されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電動パワーステアリング用駆動装置において、
前記センサ信号端子は、前記切欠連通部に臨んで配置され、その先端が前記ハウジングの開口側に突出してなることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の電動パワーステアリング用駆動装置において、
前記ターミナルモジュールは、
前記制御装置と外部とを電気的に接続するためのカプラと、
前記カプラと電気的に接続されたバスバーと、
前記バスバーに設けられた端子と、
該ターミナルモジュールの下側に配置された前記駆動系制御装置から上方に向かって延設された端子が挿通される開口部と、を有し、
前記駆動系制御装置の前記端子は、前記開口部に挿通された状態で、前記バスバーに設けられた前記端子と電気的に接続されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項9】
駆動源と、該駆動源に取り付けられるハウジングと、ステアリングシャフトの操舵トルクを検出し、検出したトルク値に応じた信号をセンサ信号端子から出力するセンサコイルを有するトルクセンサと、前記トルクセンサの信号によって前記駆動源を制御する制御装置とを備えてなる電動パワーステアリング用駆動装置であって、
前記ハウジングは、
前記センサコイルを収納するよう、該ハウジングの一端側が開口すると共に、その底部に前記ステアリングシャフトが挿通可能な挿通孔を有するセンサコイル収納部と、
前記センサコイル収納部に隣接して配置され、前記制御装置を収納するよう、前記センサコイル収納部の開口方向と同一方向に開口した制御装置収納部と、
前記制御装置収納部と前記センサコイル収納部とを連通する切欠連通部と、を有するケースを備え、
前記制御装置は、
複数のターミナルが配設されたターミナルモジュールと、
該ターミナルモジュールの下面側に配置され、前記ケースの前記制御装置収納部の底部に配置される駆動系制御装置と、
前記ターミナルモジュールの上面側に配置され、前記センサ信号端子が挿通される端子孔を有する制御系基板と、を有し、
前記制御装置と前記センサコイルは、前記ケースの開口側に臨んで、前記制御装置収納部と前記センサコイル収納部にそれぞれ配置され、
前記センサ信号端子は、前記端子孔に保持された状態で前記制御系基板と電気的に接続されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【請求項10】
請求項9記載の電動パワーステアリング用駆動装置において、
前記駆動系制御装置は、前記ハウジングの前記制御装置収納部上に載置され、前記駆動系制御装置から発生する熱は、ヒートシンクとして機能する前記ハウジングを介して放熱されることを特徴とする電動パワーステアリング用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置の駆動源として使用される電動パワーステアリング用駆動装置に関し、特に、電動モータと該電動モータの制御装置等を一体的に配した電動パワーステアリング用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動パワーステアリング装置の駆動源として、特許文献1に記載されているような、電動モータと該電動モータの制御装置、及び、電動モータの回転出力を減速してステアリングコラムに伝達する減速機構などを一体的に組み付けた駆動装置が知られている。このような駆動装置では、電動モータの出力軸にウォームギヤのウォーム軸が一体的に連結されており、ギヤボックス内に配された減速機構のウォームホイールと噛合している。ギヤボックスには、ウォームホイール装着側の開口部から、トルクセンサのセンサコイルが組み込まれる。ギヤボックスのウォームホイール装着側とは反対側には、モータの制御装置が取り付けられる。センサコイルからは、ギヤボックスを貫通させて制御装置側に信号線が引き出され、該信号線は、制御装置の制御基板等に電気的に接続される。そして、ウォームホイール装着側の開口部や、制御装置には、それぞれの側からカバーが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−276740号公報
【特許文献2】特開2003−95117号公報
【特許文献3】特開2008−37131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような駆動装置では、トルクセンサのセンサコイルを組み付ける方向と制御装置を組み付ける方向が異なるため、組み付け性が悪く、ギヤボックスに信号線引き出し用の貫通孔が必要になるという問題があった。この場合、ギヤボックスは、通常、アルミダイカスト等の金属にて形成されるため、信号線引き出し用の貫通孔には、信号線との間の絶縁性を確保するための部材や工夫が別途必要となるという問題もあった。さらに、センサコイルは、ギヤボックス内にてウォームホイールの奥に配置されるため、ウォームホイールを組んだ後ではセンサコイルが組み込めない。このため、トルクセンサや制御装置等の電気関係部品の組み付けを一連の作業として行うことができず、制御素子等の電気部品等をモジュール化する上で課題となっていた。
【0005】
本発明の目的は、電気関係部品を同じ方向から組み付け可能に配置し、電動パワーステアリング用駆動装置の組み付け性を向上させると共に、制御素子等の電気部品をモジュール化し、装置の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動パワーステアリング用駆動装置は、駆動源と、該駆動源に取り付けられるハウジングと、該ハウジングに内装されてステアリングシャフトの操舵トルクを検出
し、検出したトルク値に応じた信号をセンサ信号端子から出力するセンサコイルを有するトルクセンサと、前記ハウジングに収納され、前記トルクセンサの信号によって前記駆動源を制御する制御装置とを備えてなる電動パワーステアリング用駆動装置であって、前記ハウジングは、前記センサコイルを収納するよう、該ハウジングの一端側が開口すると共に、その底部に前記ステアリングシャフトが挿通可能な挿通孔を有するセンサコイル収納部と、前記センサコイル収納部に隣接して配置され、前記制御装置を収納するよう、前記センサコイル収納部の開口方向と同一方向に開口した制御装置収納部と、前記制御装置収納部と前記センサコイル収納部とを連通する
切欠連通部と、を有し、
前記制御装置は、複数のターミナルが配設されたターミナルモジュールと、該ターミナルモジュールの下面側に配置され、前記ハウジングの前記制御装置収納部の底部に配置される駆動系制御装置と、前記ターミナルモジュールの上面側に配置され、前記センサ信号端子が挿通される端子孔を有する制御系基板と、を有し、前記制御装置と前記センサコイルは、前記ハウジングの開口側に臨んで、前記制御装置収納部と前記センサコイル収納部にそれぞれ配置され、前記センサ信号端子は、前記端子孔に保持された状態で前記制御系基板と電気的に接続されることを特徴とする。
【0007】
前記電動パワーステアリング用駆動装置において、
駆動系制御装置を前記ハウジングの前記制御装置収納部上に載置し、前記駆動系制御装置から発生する熱をヒートシンクとして機能する前記ハウジングを介して放熱するようにしても良い。
【0008】
また、前記ターミナルモジュールに、前記センサ信号端子が挿通される信号線ガイド部を設け、前記センサ信号端子を、信号線ガイド部に挿通した状態で前記端子孔に保持するようにしても良く、前記センサ信号端子を、前記端子孔を貫通した状態で前記制御系基板に接続・固定しても良い。
【0009】
さらに、前記ハウジングに、前記駆動源と前記制御装置とを電気的に接続するための駆動源接続端子が配置される駆動源端子配設部を設け、前記駆動源接続端子を、前記ハウジングの開口側に臨んで、前記駆動源端子配設部に配置しても良い。
【0010】
前記センサコイル及び前記駆動源接続端子を、前記ハウジングに前記駆動系制御装置が収納された状態で取り付け、前記センサコイルの前記センサ信号端子を、前記駆動系制御装置の上方に配置される前記制御系基板と電気的に接続すると共に、前記駆動源接続端子を、前記駆動系制御装置と電気的に接続するようにしても良い。
【0011】
前記センサ信号端子を前記切欠連通部に臨んで配置し、その先端を前記ハウジングの開口側に突出させるようにしても良い。
【0012】
前記ターミナルモジュールは、前記制御装置と外部とを電気的に接続するためのカプラと、前記カプラと電気的に接続されたバスバーと、前記バスバーに設けられた端子と、該ターミナルモジュールの下側に配置された前記駆動系制御装置から上方に向かって延設された端子が挿通される開口部と、を有し、前記駆動系制御装置の前記端子は、前記開口部に挿通された状態で、前記バスバーに設けられた前記端子と電気的に接続されるようにしても良い。
【0013】
また、本発明の他の電動パワーステアリング用駆動装置は、駆動源と、該駆動源に取り付けられるハウジングと、ステアリングシャフトの操舵トルクを検出し、検出したトルク値に応じた信号をセンサ信号端子から出力するセンサコイルを有するトルクセンサと、前記トルクセンサの信号によって前記駆動源を制御する制御装置とを備えてなる電動パワーステアリング用駆動装置であって、前記ハウジングは、前記センサコイルを収納するよう、該ハウジングの一端側が開口すると共に、その底部に前記ステアリングシャフトが挿通可能な挿通孔を有するセンサコイル収納部と、前記センサコイル収納部に隣接して配置され、前記制御装置を収納するよう、前記センサコイル収納部の開口方向と同一方向に開口した制御装置収納部と、前記制御装置収納部と前記センサコイル収納部とを連通する切欠連通部と、を有するケースを備え、前記制御装置は、複数のターミナルが配設されたターミナルモジュールと、該ターミナルモジュールの下面側に配置され、前記ケースの前記制御装置収納部の底部に配置される駆動系制御装置と、前記ターミナルモジュールの上面側に配置され、前記センサ信号端子が挿通される端子孔を有する制御系基板と、を有し、前記制御装置と前記センサコイルは、前記ケースの開口側に臨んで、前記制御装置収納部と前記センサコイル収納部にそれぞれ配置され、前記センサ信号端子は、前記端子孔に保持された状態で前記制御系基板と電気的に接続されることを特徴とする。
【0014】
前記電動パワーステアリング用駆動装置において、
駆動系制御装置を前記ハウジングの前記制御装置収納部上に載置し、前記駆動系制御装置から発生する熱をヒートシンクとして機能する前記ハウジングを介して放熱するようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動パワーステアリング用駆動装置によれば、トルクセンサのセンサコイルと制御装置及び駆動源接続端子等の電気部品をハウジング又はケースの開口方向から組み付けられるようにしたので、従来は反対面側からそれぞれ取り付けていたセンサコイルと制御装置を同じ方向から組み付けることができる。このため、従来の装置に比して組み付けが容易であり、作業性の改善を図ることが可能となる。また、電気部品のモジュール化も容易となり、制御装置がコンパクト化され、装置の小型化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1である電動パワーステアリング用駆動装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の電動パワーステアリング用駆動装置におけるコントロールユニットの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図1の電動パワーステアリング用駆動装置からコントロールユニットの制御装置カバーを外した状態を示した説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態2である電動パワーステアリング用駆動装置の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1である電動パワーステアリング用駆動装置の全体構成を示す斜視図である。
図1の装置は、例えば、コラムアシスト式EPSの動力源として使用され、自動車のステアリングシャフトに対し動作補助力を付与する。本発明による電動パワーステアリング用駆動装置(以下、EPS駆動装置と略記する)1は、電動モータ2と、ウォーム減速機構を内蔵するギヤボックス3、及び、コントロールユニット(ECU:制御装置)4が一体的に組み付けられた機電一体構造となっている。EPS駆動装置1は、ステアリング機構に取り付けられ、電動モータ2の図示しない回転軸からの回転出力は、ギヤボックス3によって減速され、ステアリングシャフト5に伝達される。
【0018】
電動モータ2にはブラシレスモータが使用され、電動モータ2のモータケース6aの開口部側にはブラケット6bが取り付けられており、これらによって駆動源が構成されている。そして、電動モータ2のブラケット6bがギヤボックス3のハウジング13に取り付けられている。電動モータ2の回転軸は、ギヤボックス3側に延びており、回転軸の先端側にはウォームギヤ12を有するウォーム軸11が回転軸と一体回転可能に連結されている。ウォーム12は、ギヤハウジング(ハウジング)13に形成されたウォーム軸収容部13a内に配置されている。また、ウォーム軸11の両端側はそれぞれ図示しない一対の軸受によってウォーム軸収容部13a内に軸支されている。なお、ここでは、回転軸とウォーム軸11とが別体となっているが、回転軸とはウォームを一体形成した回転軸によってそれを回転させるようにしても良い。
【0019】
ギヤハウジング13にはさらに、ウォームホイール収容部13bも設けられている。ウォームホイール収容部13b内にはウォーム12が配置されており、ウォーム12はウォームホイール14と噛合している。ウォームホイール14は、ステアリングホイールが取り付けられたステアリングシャフト5に固定されている。ハウジング13内には、ステアリングシャフト5に加わる負荷を検出するトルクセンサのセンサコイル15と、電動モータ2の駆動制御を行うコントロールユニット4も併せて収容されている。
【0020】
図2は、コントロールユニット4の構成を示す分解斜視図、
図3は、EPS駆動装置1からコントロールユニット4のカバー(制御装置カバー)16を外した状態を示した説明図である。
図2に示すように、ハウジング13は、一端側(
図2において上面側)が開口しており、トルクセンサのセンサコイル収容部21と、制御装置収納部22、及び、端子台配設部(駆動源端子配設部)23が設けられている。センサコイル収容部21と制御装置収納部22は共に、ハウジング13の同一面側を開口する形で設けられている。トルクセンサ収容部21は、制御装置収納部22に隣接して配置され、制御装置収納部22との間には、信号線接続用に切欠連通部24が設けられている。
【0021】
センサコイル収容部21の底部には、ステアリングシャフト5が挿通可能な挿通孔25が設けられている。そして、センサコイル収容部21の内側に、センサコイル15のコイルモジュールが取り付けられる。センサコイル15は、検出したトルク値に応じた信号を出力するセンサ信号端子(信号線接続部)26を有しており、センサ信号端子26は、切欠連通部24に臨んで配置され、信号端子26の先端(信号線接続部)は開口方向に突出している。センサコイル15の上には、シャフトカバー27が取り付けられる(
図1参照)。
【0022】
制御装置収納部22は平面状となっており、その一部に、コンデンサC1やチョークコイルC2などの比較的体積の大きい電子部品が収容可能な素子収容部28が凹設されている。制御装置収納部22には、FETモジュール(駆動系制御装置)31や、バスバーモジュール(ターミナルモジュール)32、制御系基板33など、センサコイル15の検出信号に基づいて電動モータ2を制御する制御装置が取り付けられる。また、制御装置収納部22の電動モータ2側には、端子台配設部23が隣接配置されており、端子台配設部23には、電動モータ2側と電気的に接続されるモータ端子台(駆動源接続端子)34が取り付けられる。
【0023】
FETモジュール31は、金属ベース基板(例えば、銅製)41と、合成樹脂製のモールド部42とから構成されている。金属ベース基板41上には、FETや半導体リレー等のパワー系の電子部品(図示せず)がベアチップ実装されている。モールド部42は、電子部品を覆うように成形されており、モールド部42の上面には、端子43a〜43dが突出している。本発明のEPS駆動装置1では、FET等の素子がベアチップ実装され、関係部品がモジュール化された状態となっているため、素子を実装する部位が小型化されると共に、組み付けも容易となる。
【0024】
制御装置収納部22上には放熱グリスが塗布されており、FETモジュール31は、放熱グリスを介して制御装置収納部22上に載置される。FETモジュール31に実装されたFET等にて発生する熱は、金属ベース基板41から放熱グリスを介して、ハウジング13に放熱される。ハウジング13は、熱伝導率の高いアルミダイカストにて形成されており、EPS駆動装置1では、ハウジング13がヒートシンクとしても機能している。
【0025】
FETモジュール31の上には、コンデンサC1やチョークコイルC2等の電気素子が配置されたバスバーモジュール32が取り付けられる。なお、バスバーモジュール32を制御装置収納部22に取り付けた状態では、コンデンサC1やチョークコイルC2等の比較的体積の大きい電子部品はハウジング13の素子収容部28内に配置されるようになっている。バスバーモジュール32は、合成樹脂製の筐体部44内に複数の金属製のバスバー(導電板)45がインサートモールドされた構成となっている。各バスバー45の一端はカプラ46内に配置され、ターミナル47となっている。バスバーモジュール32には、FETモジュール31上の各端子43a、43dが挿通される開口部48や、各端子43b、43c、センサ信号端子26がそれぞれ挿通される複数の信号線挿通孔が形成された信号線ガイド部49a〜49cが形成されている。端子43dは、バスバーモジュール32の開口部48を貫通してバスバー45上に設けられた端子51と電気的に溶接される。
【0026】
バスバーモジュール32の上には、制御系基板33が取り付けられる。制御系基板33には、センサ信号端子26や端子43b,43cが貫通した状態で電気的に接続される複数の端子孔(スルーホール)52が設けられている。制御系基板33上には、アルミニウム製のカバー16がネジ61によって取り付けられる。バスバーモジュール32の
図2において右側には、モータ端子台34が取り付けられる。モータ端子台34には、モータ端子板53と電動モータ2の内部に配される図示しない回転センサに接続される信号線端子54が設けられている。モータ端子板53は、FETモジュール31の端子43aと突き合わされ、抵抗溶接される。信号線端子54は、制御系基板33の端子孔52を貫通した状態で半田等によって電気的に接続される。モータ端子板53と信号線端子54は、電動モータ2の一端側に設けられ軸方向に向かって延びる図示しないモータ側端子とそれぞれ電気的に接続されている。モータ端子台34に上には、ターミナルカバー55が取り付けられる。
【0027】
このようなEPS駆動装置1は、次のようにして組み付けられる。まず、ハウジング13の制御装置収納部22に放熱グリスを塗布し、その上にFETモジュール31を載置する。次に、ハウジング13のセンサコイル収容部21に、センサコイル15のコイルモジュールを取り付ける。コイルモジュールは、ネジ62によってハウジング13に固定される。そして、モータ端子台34の各モータ端子板53がFETモジュール31の各端子43aと面で対向するように、ネジ63によって、端子台配設部23にモータ端子台34が取り付けられ、各モータ端子板53と各端子43aが電気的に接続される。モータ端子台34を取り付けた後、FETモジュール31上に、バスバーモジュール32を載置する。なお、センサコイル15とモータ端子台34の組み込み順序は逆であっても良い。
【0028】
バスバーモジュール32をFETモジュール31上に載置する際、センサコイル15のセンサ信号端子26と端子43b、43cはバスバーモジュール32の各信号線ガイド部49b〜49dにガイドされると共に、FETモジュール31上の端子43a、43dは開口部48に挿通される。また、各端子43dは、バスバーモジュール31の開口部48を貫通して各バスバー45上の端子51と面で対向し、この状態で溶接され電気的に接続される。バスバーモジュール32は、ネジ64によって、FETモジュール31と共にハウジング13に固定される。
【0029】
モータ端子台34のモータ端子板53は、FETモジュール31の端子43aと電気的に溶接される。その際、その溶接部はバスバーモジュール32の切欠き部49に位置するようになっている。その後、バスバーモジュール32上に、ネジ65によって、制御系基板33が取り付けられ、バスバーモジュール32の各信号線ガイド部49b〜49dによってガイドされた、センサコイル15のセンサ信号端子26や、FETモジュール31上の端子43b,43c、モータ端子台34の信号線端子54が制御系基板33上の各端子孔52を貫通した状態でハンダ等によって電気的に接続される。なお、モータ端子台34の信号線端子54は、バスバーモジュール32の信号線挿通孔を有する信号線ガイド部49aにガイドされて対応する各端子孔52と電気的に接続される。その際、当該EPS駆動装置1では、各モジュールや基板を固定した後、端子類をその位置でハンダ付けや溶接して接続・固定するため、端子の長さにて各部品の高さ方向のガタを吸収することができる。各端子を接続した後、ネジ61によって、制御系基板33上にカバー16が取り付けられ、制御系基板33等の制御装置が覆蓋される。以上により、コントロールユニット4部分の組み付けが完了する。
【0030】
コントロールユニット4部分を組み付けた後、電動モータ2を取り付ける。電動モータ2側の複数の端子(図示せず)は、モータ端子台34に位置合わせされモータ端子板53の他端部と図示しないネジ等の固定手段により電気的に接続される。そして、モータ端子台34上にターミナルカバー55が取り付けられる。また、コントロールユニット4とは反対面側(
図1において矢示X方向の面)から、ステアリングシャフト5とウォームホイール14を組み付ける。そして、反対面側に図示しないギヤハウジングカバーを取り付け、全体の組み付けを完了する。
【0031】
このように、本発明のEPS駆動装置1は、従来は反対面側からそれぞれ取り付けていたトルクセンサのセンサコイルと制御装置等の電気部品を全て同じ方向から組み付けることができる。すなわち、電気関係部品の組み付けを一連の作業として一方向から行うことが可能となる。このため、従来の装置に比して組み付けが容易であり、作業性の改善を図ることが可能となる。また、電気部品のモジュール化も容易となり、制御装置がコンパクト化され、装置の小型化も可能となる。
【0032】
さらに、ギヤハウジングにトルクセンサのセンサコイルの信号線引き出し用に特別な貫通孔を設ける必要がないため、ハウジング構造が簡素化されると共に、開口部分に特別な絶縁部材等を設ける必要もなく、製品コストの低減が図られる。加えて、機電一体化により、システムメーカにてEPS駆動装置全体を製造することが容易となり、組付工程や部品の管理工数も削減できる。
【0033】
一方、従来の一般的な制御装置として、予め駆動系と制御系の素子を一体化(モジュール化)して一気に装着する構成もある。ところが、このような装置では、ケースの奥に制御基板を配する構造が多く、その場合、ケースの奥が見えない状態で基板を組み付けなければならず、基板の設置位置にずれが生じる恐れがある。このため、従来の装置では、かかる位置ずれを吸収すべく、基板とケースとの間に放熱シートを介在させる方式が多く用いられている。しかしながら、この構造の場合、放熱シートにはある程度の厚みがあるため、放熱効率が低下すると共に、放熱シートの分だけコストが嵩むことは避けられない。また、このようなモジュール品を収納するケースに関しても、上記位置ずれを加味した設計とすると、装置自体の小型化の妨げとなる。この点、本願発明では、放熱効率を優先し、FET等の制御系素子をモジュール化する一方、パワー系素子はバスバーモジュールに配し、これらを積み上げる構造を採用している。このため、位置関係を合わせて各モジュールを載置でき、放熱シートに代えて放熱グリスを採用することが可能となり、放熱性向上とコスト削減を図ることが可能となる。また、部品の積み上げ時に誤差を吸収できるので装置の小型化も可能となる。
【0034】
次に、本発明の実施の形態2を図面に基づいて詳細に説明する。
図4は、本発明の実施の形態2である電動パワーステアリング用駆動装置の全体構成を示す斜視図である。なお、前述の実施の形態1と同一部品、同一構成の部位については説明を省略する。
【0035】
本実施の形態においても、電動モータ2のモータケース6aの開口部側にはブラケット6aが取り付けられ、このブラケット6aがギヤボックス3のギヤハウジング71に取り付けられている。このギヤハウジング71には、ウォーム軸収容部71aとウォームホイール収容部71bが設けられている。そして、前述の実施の形態1装置とは、ギヤハウジング71の一端側(
図4において上面側)に、センサコイル収容部と、制御装置収納部、端子台配設部が設けられていない点、つまり、ギヤハウジング71がギヤボックスとしての機能のみを備える点で異なっている。
【0036】
本実施形態においては、制御装置4とセンサコイル15とモータ端子台34は、ギヤハウジング71とは別体に設けられたコントロールユニット用ケース(ケース)72に収納される。実施の形態1のハウジング3と同様に、コントロールユニット用ケース72は、一端側(
図4において上面側)が開口しており、センサコイル収容部と、制御装置収納部、及び、端子台配設部(駆動源端子配設部)が設けられている。センサコイル収容部と制御装置収納部は共に、コントロールユニット用ケース72の同一面側を開口する形で設けられている。センサコイル収容部は、制御装置収納部に隣接して配置され、制御装置収納部22との間には、信号線接続用に切欠連通部が設けられている。
【0037】
実施の形態2の装置においても、コントロールユニット用ケース72に、前述の実施形態と同様の順序で各構成部品が取り付けられ、コントロールユニット4部分の組み付けが完了する。そして、コントロールユニット4部分を組み付けた後、別途組み付けが完了しているハウジング71にこのコントロールユニット4を合体させて、全体の組み付けを完了する。
【0038】
このように、本発明のEPS駆動装置1は、従来は反対面側からそれぞれ取り付けていたトルクセンサのセンサコイルと制御装置等の電気部品を全て同じ方向から組み付けることができる。すなわち、電気関係部品の組み付けを一連の作業として一方向から行うことが可能となる。このため、従来の装置に比して組み付けが容易であり、作業性の改善を図ることが可能となる。また、電気部品のモジュール化も容易となり、制御装置がコンパクト化され、装置の小型化も可能となる。さらに、この実施の形態2においては、EPS駆動装置1として制御装置が一体か別体かの仕様に応じ、ギヤハウジングを作り分けることなくギヤハウジング71を共用化することができる。このため、部品を複数用意することなくコストダウンを図ることが可能となる。
【0039】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、FET等の素子をモジュール化したFETモジュール31を用いる構成を示したが、FET等の素子を必ずしもモジュール化する必要はなく、通常の基板に各種素子を配する構成を採用しても良い。但し、装置の小型化や組付性の向上という点では、モジュール化することが好ましい。
【0040】
1 電動パワーステアリング用駆動装置
2 電動モータ
3 ギヤボックス
4 コントロールユニット(制御装置)
5 ステアリングシャフト
6a モータケース
6b ブラケット
11 ウォーム軸
12 ウォームギヤ
13 ギヤハウジング(ハウジング)
13a ウォーム軸収容部
13b ウォームホイール収容部
14 ウォームホイール
15 センサコイル
16 カバー(制御装置カバー)
21 センサコイル収容部
22 制御装置収納部
23 端子台配設部(駆動源端子配設部)
24 切欠連通部
25 挿通孔
26 センサ信号端子(信号線接続部)
27 シャフトカバー
28 素子収容部
31 FETモジュール(駆動系制御装置)
32 バスバーモジュール(ターミナルモジュール)
33 制御系基板
34 モータ端子台(駆動源接続端子)
41 金属ベース基板
42 モールド部
43a〜43d 端子
44 筐体部
45 バスバー
46 カプラ
47 ターミナル
48 開口部
49a〜49c 信号線ガイド部
51 端子
52 端子孔
53 モータ端子板
54 信号線端子
55 ターミナルカバー
61〜65 ネジ
71 ギヤハウジング
71a ウォーム軸収容部
71b ウォームホイール収容部
72 コントロールユニット用ケース(ケース)
C1 コンデンサ
C2 チョークコイル