特許第6053134号(P6053134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053134
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】高周波分配器
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/12 20060101AFI20161219BHJP
   H01P 5/103 20060101ALI20161219BHJP
   H04B 3/52 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01P5/12 Z
   H01P5/103 B
   H04B3/52
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-286735(P2012-286735)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-131114(P2014-131114A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 孝睦
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−505490(JP,A)
【文献】 特表2003−502932(JP,A)
【文献】 特開2010−021864(JP,A)
【文献】 特開昭53−145411(JP,A)
【文献】 特開昭51−081508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00−11/00
H01Q 1/00−25/04
H04B 3/00− 3/60
H04B 5/00ー 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸長する方向に沿って高周波信号を伝搬する導波管と、
前記導波管に挿入される複数の給電プローブと、を備えた高周波分配器であって、
前記複数の給電プローブのそれぞれは
記高周波信号の伝搬方向に沿って該高周波信号の管内波長の1/4の奇数倍分離間して配置された第1給電プローブと第2給電プローブと
前記伝搬方向に沿って前記高周波信号の管内波長の1/4の奇数倍分離間して配置された第3給電プローブと第4給電プローブと、
らなり、
第1端子、第2端子、第3端子を有し、前記第3端子から入力された高周波信号が前記第1端子および第2端子に分配されて出力され、且つ、前記第2端子から出力される高周波信号の位相が前記第1端子から出力される高周波信号の位相よりも90°遅れる移相分配器と、
第4端子、第5端子、第6端子を有し、前記第6端子から入力された高周波信号が前記第4端子および第5端子に分配されて出力され、且つ、前記第5端子から出力される高周波信号の位相が前記第4端子から出力される高周波信号の位相よりも90°遅れる第2の移相分配器と、
備え、
前記第1端子は前記第1給電プローブに接続し、前記第2端子は前記第2給電プローブに接続し、
前記第4端子は前記第4給電プローブに接続し、前記第5端子は前記第3給電プローブに接続し、
前記第3給電プローブおよび前記第4給電プローブは、前記第1給電プローブおよび前記第2給電プローブよりも、前記伝搬方向の下流側に配置され、
前記複数の給電プローブの前記第1給電プローブと前記第2給電プローブは、前記高周波信号の伝搬方向に沿って交互に配置され
前記複数の給電プローブの前記第4給電プローブと前記第3給電プローブは、前記高周波信号の伝搬方向に沿って交互に配置されている、
周波分配器。
【請求項2】
請求項に記載の高周波分配器であって、
前記導波管は、前記第1給電プローブおよび前記第2給電プローブが挿入される合成区間と、前記第3給電プローブおよび前記第4給電プローブが挿入される分配区間との間に、湾曲部を備える、高周波分配器。
【請求項3】
請求項に記載の高周波分配器であって、
前記湾曲部は、前記合成区間と前記分配区間とで、伸長方向が平行で且つ前記伝搬方向が反対になる形状であり、
前記移相分配器と前記第2の移相分配器は、前記導波管を挟んで配置される、高周波分配器。
【請求項4】
請求項または請求項に記載の高周波分配器であって、
前記合成区間の給電プローブ数と前記分配区間の給電プローブ数とが整数倍の関係でない、高周波分配器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の高周波分配器であって、
前記移相分配器は、90°ハイブリッド回路によって構成される、高周波分配器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの高周波信号を複数の高周波信号に分配したり、複数の高周波信号を合成したりする高周波分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の高周波分配器が考案されている。例えば、特許文献1には、導波管に複数の給電プローブを挿入した構造の高周波分配器が記載されている。この高周波分配器では、複数の給電プローブは、導波管の伸長する方向に沿って所定間隔で配置されている。
【0003】
複数の高周波信号を合成する場合には、各給電プローブに高周波信号を印加する。給電プローブに印加された各高周波信号は、導波管内の各給電プローブの位置で合成されながら、導波管内を伝搬する。
【0004】
複数の高周波信号に分配する場合には、合成の場合と逆に、導波管を伝搬する高周波信号が各給電プローブに電磁界結合して取り出されることで、高周波信号が分配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4532433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すような導波管に複数の給電プローブを挿入する形状の高周波分配器では、給電プローブ間のアイソレーションを確保することが困難であった。例えば、導波管における高周波信号の伝搬方向に沿って、高周波信号を導波管に給電して合成するための第1、第2のプローブ(第1、第2合成側給電プローブ)が配置されていたとする。
【0007】
第1合成側給電プローブから給電された高周波信号が導波管を伝搬して、第2合成側給電プローブに達した際、給電プローブ間のアイソレーションを確保していないと、第1合成側給電プローブからの高周波信号が第2合成側給電プローブを介して取り出され、第2合成側給電プローブに接続する給電回路に流れてしまう。このような現象が生じると、導波管を伝搬する高周波電力が低下し、高周波信号の合成効率が低下してしまう。
【0008】
また、給電プローブと給電回路との間にアイソレータを配置することによって、各給電回路のアイソレーションを確保できる。しかしながら、通常のアイソレータは、給電プローブから入ってきた高周波信号を電気抵抗もしくはこれに準ずる回路で熱変換する構成となっている。したがって、上述の損失への対応はできない。また、アイソレータを設けることにより、分配合成器としての可逆性が失われてしまう。さらに、アイソレータを追加することにより、サイズ及びコストが増大してしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的は、導波管に複数の給電プローブを挿入することで高周波信号の合成を行う際に、分配合成器としての可逆性を確保するとともに各給電プローブ間のアイソレーションを十分に確保できる高周波分配器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、伸長する方向に沿って高周波信号を伝搬する導波管と、導波管に挿入される複数の給電プローブと、を備えた高周波分配器に関するものであり、次の特徴を有する。複数の給電プローブのそれぞれは、高周波信号の伝搬方向に沿って高周波信号の管内波長の1/4の奇数倍分離間して配置された第1給電プローブと第2給電プローブとからなる。高周波分配器は、第1端子、第2端子、第3端子を有し、第3端子から入力された高周波信号が第1端子および第2端子に分配されて出力され、且つ、第2端子から出力される高周波信号の位相が第1端子から出力される高周波信号の位相よりも90°遅れる移相分配器を備える。第1端子は第1給電プローブに接続し、第2端子は第2給電プローブに接続する。複数の給電プローブの第1給電プローブと第2給電プローブは、高周波信号の伝搬方向に沿って交互に配置されている。
【0011】
この構成では、伝搬方向の上流側の第1給電プローブおよび第2給電プローブから導波管内に供給された高周波信号が下流側の第1給電プローブおよび第2給電プローブに達しても、これらから移相分配器に入力される各高周波信号は相殺される。これにより、隣り合う第1、第2給電プローブの組の間でのアイソレーションは、確保される。
【0012】
また、この発明の高周波分配器では、さらに、第3、第4給電プローブ、第2の移相分配器を備える。第3給電プローブおよび第4給電プローブは、伝搬方向に沿って高周波信号の管内波長の1/4の奇数倍分離間して配置されている。第2の移相分配器は、上述の移相分配器と同じ構成からなり、第1端子、第2端子、第3端子を有し、第3端子から入力された高周波信号が第1端子および第2端子に分配されて出力され、且つ、第2端子から出力される高周波信号の位相が第1端子から出力される高周波信号の位相よりも90°遅れる構造からなる。そして、第2の移相分配器の第1端子は第4給電プローブに接続し、第2の移相分配器の第2端子は前記第3給電プローブに接続する。第3給電プローブおよび第4給電プローブは、第1給電プローブおよび第2給電プローブよりも、伝搬方向の下流側に配置されている。複数の給電プローブの第4給電プローブと第3給電プローブは、高周波信号の伝搬方向に沿って交互に配置されている。
【0013】
この構成では、伝搬方向の上流側からきた高周波信号を、各第3、第4給電プローブで外部に出力することができる。すなわち、導波管を伝搬する高周波信号を、各第3、第4給電プローブで分配して出力することができる。
【0014】
また、この発明の高周波分配器では、導波管は、第1給電プローブおよび第2給電プローブが挿入される合成区間と、第3給電プローブおよび第4給電プローブが挿入される分配区間との間に、湾曲部を備える。
【0015】
この構成では、導波管が湾曲するため、高周波分配器の形状の自由度が向上する。
【0016】
また、この発明の高周波分配器では、湾曲部は、合成区間と分配区間とで伸長方向が平行で且つ伝搬方向が反対になる形状である。移相分配器と第2の移相分配器は、導波管を挟んで配置される。
【0017】
この構成では、高周波信号の合成と分配を行う高周波分配器を、小型に形成することができる。
【0018】
また、この発明の高周波分配器では、合成区間の給電プローブ数と分配区間の給電プローブ数とが整数倍の関係でない。
【0019】
この構成は、高周波分配器の具体的な構成例を示しており、入力側(合成側)と出力側(分配側)の端子数が整数倍の関係でない場合を示している。このような従来構成では複雑な構成になるような場合であっても、簡素な構成で高周波分配器を実現することができる。
【0020】
また、この発明の高周波分配器では、移相分配器は90°ハイブリッド回路によって構成される。
【0021】
この構成では、移相分配器の具体的な構成例を示しており、90°ハイブリッド回路を用いることで、簡素な構成を実現できる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、導波管に複数の給電プローブを挿入する構造の高周波分配器において分配合成器としての可逆性を確保しながら各給電プローブ間のアイソレーションを十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る高周波分配器のブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る高周波分配器に利用する高周波伝送線路のブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る高周波伝送線路において移相分配器側から高周波信号が給電される場合の動作概念を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る高周波伝送線路において導波管から高周波信号が供給される場合の第1の動作概念を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る高周波伝送線路において導波管から高周波信号が供給される場合の第2の動作概念を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る高周波伝送線路部分のブロック図である。
図7】本発明の実施形態に係る高周波伝送線路部分の外観斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る高周波分配器のブロック図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る高周波分配器を用いた多段増幅器の回路ブロック図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る多段増幅器の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態に係る高周波分配器について、図を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る高周波分配器のブロック図である。なお、本実施形態では、高周波分配器と称しているが、高周波信号の分配と高周波信号の結合の双方が可能な高周波回路のことを示す。
【0025】
高周波分配器1は、導波管20、複数の移相分配器30i1,30i2,30o1,30o2,30o3、第1給電プローブ41i1,41i2、第2給電プローブ42i1,42i2、第3給電プローブ41o1,41o2,41o3、第4給電プローブ42o1,42o2,42o3を備える。
【0026】
導波管20は、矩形導波管である。導波管20の伸長方向の両端は短絡終端21,22である。導波管20の開口断面の幅および高さは、導波管20を伝搬する高周波信号の周波数(波長λg)に基づいて決定されている。
【0027】
導波管20には、伸長方向に沿って、第1給電プローブ41i1,41i2、第2給電プローブ42i1,42i2、第3給電プローブ41o1,41o2,41o3、第4給電プローブ42o1,42o2,42o3が挿入されて、配置されている。
【0028】
第1給電プローブ41i1,41i2、第2給電プローブ42i1,42i2は、第3給電プローブ41o1,41o2,41o3、第4給電プローブ42o1,42o2,42o3よりも短絡終端21側に配置されている。
【0029】
より具体的には、導波管20の一方の短絡終端21側から、第1給電プローブ41i1、第2給電プローブ42i1、第1給電プローブ41i2、第2給電プローブ42i2の順で配置されている。隣り合う第1給電プローブ41i1,41i2は、それぞれの結合量に応じて適宜設定した間隔で配置されている。例えば、一例としては、隣り合う第1給電プローブ41i1,41i2は、伝搬する高周波信号の導波管20の管内波長λgの略整数倍(N倍)の間隔で配置されている。第1給電プローブ41i1と第2給電プローブ42i1は、管内波長λgの略1/4の間隔で配置されている。第1給電プローブ41i2と第2給電プローブ42i2は、管内波長λgの略1/4の間隔で配置されている。なお、第1給電プローブ41i1は、導波管20の短絡終端21から所定長L1だけ離間した位置に形成されている。この所定長L1は、高周波分配器の仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
さらに、第2給電プローブ42i2から短絡終端22側に向かって、第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1、第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2、第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3の順で配置されている。
【0031】
第4給電プローブ42o1と第3給電プローブ41o1は、管内波長λgの略1/4の間隔で配置されている。第4給電プローブ42o2と第3給電プローブ41o2は、管内波長λgの略1/4の間隔で配置されている。第4給電プローブ42o3と第3給電プローブ41o3は、管内波長λgの略1/4の間隔で配置されている。なお、第3給電プローブ41o3は、導波管20の短絡終端22から所定長L2だけ離間した位置に形成されている。この所定長L2も、高周波分配器の仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
第1給電プローブ41i1、第2給電プローブ42i1は、移相分配器30i1に接続されている。第1給電プローブ41i2、第2給電プローブ42i2は、移相分配器30i2に接続されている。
【0033】
第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1は、移相分配器30o1に接続されている。第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2は、移相分配器30o2に接続されている。第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3は、移相分配器30o3に接続されている。
【0034】
移相分配器30i1は入出力ポートPort30i1に接続されており、移相分配器30i2は入出力ポートPort30i2に接続されている。移相分配器30o1は入出力ポートPort30o1に接続されており、移相分配器30o2は入出力ポートPort30o2に接続されており、移相分配器30o3は入出力ポートPort30o3に接続されている。
【0035】
移相分配器30i1,30i2,30o1,30o2,30o3は、基本的に同じ構造からなる。
【0036】
移相分配器30i1、入出力ポートPort30i1、第1給電プローブ41i1、第2給電プローブ42i1、これら給電プローブが挿入される導波管20の部分によって、合成側の第1高周波伝送線路が構成される。
【0037】
移相分配器30i2、入出力ポートPort30i2、第1給電プローブ41i2、第2給電プローブ42i2、これら給電プローブが挿入される導波管20の部分によって、合成側の第2高周波伝送線路が構成される。
【0038】
移相分配器30o1、入出力ポートPort30o1、第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1、これら給電プローブが挿入される導波管20の部分によって、分配側の第1高周波伝送線路が構成される。
【0039】
移相分配器30o2、入出力ポートPort30o2、第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2、これら給電プローブが挿入される導波管20の部分によって、分配側の第2高周波伝送線路が構成される。
【0040】
移相分配器30o3、入出力ポートPort30o3、第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3、これら給電プローブが挿入される導波管20の部分によって、分配側の第3高周波伝送線路が構成される。
【0041】
各高周波伝送線路は、基本構造が同じであるので、以下では高周波伝送線路10として具体的な構成および動作を説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る高周波分配器に利用する高周波伝送線路のブロック図である。
【0042】
高周波伝送線路10は、上述の導波管20に挿入された第1給電プローブ41、第2給電プローブ42、移相分配器30、入出力ポートPort30を備える。なお、高周波伝送線路10i1,10i2においては、第1給電プローブが高周波伝送線路10の第1給電プローブに相当し、第2給電プローブが高周波伝送線路10の第2給電プローブに相当する。高周波伝送線路10o1,10o2,10o3においては、第3給電プローブが高周波伝送線路10の第1給電プローブに相当し、第4給電プローブが高周波伝送線路10の第2給電プローブに相当する。
【0043】
移相分配器30において、第1給電プローブ41と入出力ポートPort30との間には、遅延回路は備えられていない。移相分配器30において、第2給電プローブ42と入出力ポートPort30との間には、90°位相遅延回路300が備えられている。90°位相遅延回路300は、入出力ポートPort30から入力され第1給電プローブ41から出力される第1高周波信号の位相に対して、入出力ポートPort30から入力され第2給電プローブ42から出力される第2高周波信号の位相が、90°遅れる回路構成からなる。
【0044】
このような構成では、入出力ポートPort30から高周波信号が入力される場合と、導波管20から高周波信号が入力される場合において、次に示すように動作する。
【0045】
(入出力ポートPort30側から高周波信号が入力される場合)
図3は本発明の第1の実施形態に係る高周波伝送線路において移相分配器側から高周波信号が給電される場合の動作概念を示す図である。
【0046】
入出力ポートPort30から入力された高周波信号は、第1給電プローブ41と第2給電プローブ42とに分配されて出力される。この際、第2給電プローブ42に出力される第2高周波信号の電力レベルと、第1給電プローブ41に出力される第1高周波信号の電力レベルは同じである。さらに、第2高周波信号の位相は、第1高周波信号の位相よりも90°遅れる。
【0047】
第1高周波信号は、導波管20内を伝搬して第2給電プローブ42の位置に達する。この位置での第1高周波信号の位相は、第1給電プローブ41の位置での位相よりも90°遅れる。ここで、導波管20の管内波長λgでシフトする高周波信号の位相量と、移相分配器30の波長λhでシフトする高周波信号の位相量は一致する。したがって、第2給電プローブ42の位置に達した第1高周波信号の位相と、第2給電プローブ42から出力される第2高周波信号の位相は、同位相となる。これにより、第1高周波信号と第2高周波信号とが強め合うように合成される。合成された高周波信号は、導波管20内を、第2給電プローブ42側の入出力ポートPort22側へ進行するように伝搬する。
【0048】
一方、第1給電プローブ41の位置での第2高周波信号と第1高周波信号の位相差は、90°+90°=180°遅れ、逆位相となる。したがって、第1給電プローブ41側の入出力ポートPort21側へは高周波信号は伝搬されない。
【0049】
(導波管20側から高周波信号が高周波伝送線路10に入力される場合)
(A)導波管20の第2給電プローブ42側の入出力ポートPort22から高周波信号が入力される場合
図4は本発明の第1の実施形態に係る高周波伝送線路において導波管から高周波信号が給電される場合の動作概念を示す図であり、第2給電プローブ42側の入出力ポートPort22から高周波信号が入力される場合を示している。
【0050】
導波管20の入出力ポートPort22から入力された高周波信号は、一部が第2給電プローブ42から移相分配器30に出力される。さらに、第2給電プローブ42を通過した高周波信号は、第1給電プローブ41から移相分配器30に出力される。ここで、第2給電プローブ42から移相分配器30に出力される第2高周波信号と、第1給電プローブ41から移相分配器30に出力される第1高周波信号とは、電力レベルが同じになるように、導波管20に対して第1、第2給電プローブ41,42が配置されている。第1給電プローブ41の位置での第1高周波信号の位相は、第2給電プローブ42の位置での第2高周波信号の位相よりも90°遅れる。
【0051】
移相分配器30に入力された第2高周波信号は、90°位相遅延回路300で、第1高周波信号よりもλh/4位相遅延されて、入出力ポートPort30に伝搬される。したがって、入出力ポートPort30では、第1高周波信号と第2高周波信号とが同位相になり、合成された高周波信号が入出力ポートPort30から出力される。
【0052】
(B)導波管20の第1給電プローブ41側の入出力ポートPort21から高周波信号が入力される場合
図5は本発明の第1の実施形態に係る高周波伝送線路において導波管から高周波信号が給電される場合の動作概念を示す図であり、第1給電プローブ41側の入出力ポートPort21から高周波信号が入力される場合を示している。
【0053】
導波管20の入出力ポートPort21から入力された高周波信号は、一部が第1給電プローブ41から移相分配器30に出力される。さらに、第1給電プローブ41を通過した高周波信号は、第2給電プローブ42から移相分配器30に出力される。ここで、第1給電プローブ41から移相分配器30に出力される第1高周波信号と、第2給電プローブ42から移相分配器30に出力される第2高周波信号とは、電力レベルが同じになるように、導波管20に対して第1、第2給電プローブ41,42が配置されている。第2給電プローブ42での第2高周波信号の位相は、第1給電プローブ41での第1高周波信号の位相よりも90°遅れる。
【0054】
移相分配器30に入力された第2高周波信号は、90°位相遅延回路300で、第1高周波信号よりも90°位相遅延されて、入出力ポートPort30に伝搬される。したがって、入出力ポートPort30では、第1高周波信号と第2高周波信号との位相差が180°となって逆位相になる。これにより、入出力ポートPort30からは高周波信号が出力されない。
【0055】
このような構成を用いた高周波伝送線路10i1,10i2,10o1,10o2,10o3を、上述のように配置することで、高周波分配器1は、次のように動作する。
【0056】
入出力ポートPort30i1,Port30i2から高周波信号が入力される。これらの高周波信号は同位相で入力される。入出力ポートPort30i1から入力された高周波信号は、第1給電プローブ41i1、第2給電プローブ42i1から導波管20内に供給される。入出力ポートPort30i1から入力された高周波信号は、導波管20を短絡終端22方向に向かって伝搬し、第1給電プローブ41i2、第2給電プローブ42i2に達する。
【0057】
ここで、上述の図5の動作状態のように、入出力ポートPort30i1から入力された高周波信号は、第1給電プローブ41i2、第2給電プローブ42i2から入出力ポートPort30i2側には伝搬せず、導波管20内を伝搬する。
【0058】
入出力ポートPort30i2から入力された高周波信号は、第1給電プローブ41i2、第2給電プローブ42i2から導波管20内に供給される。入出力ポートPort30i2から入力された高周波信号は、導波管20を短絡終端22方向に向かって伝搬する。
【0059】
したがって、第2給電プローブ42i2から短絡終端22方向へは、入出力ポートPort30i1からの高周波信号と入出力ポートPort30i2からの高周波信号とが合成されて伝搬される。この際、例えば、上述のように、第1給電プローブ41i1,41i2が管内波長λgの整数倍の間隔で配置されており、第1給電プローブ41i1,41i2で同位相の高周波信号が給電されれば、入出力ポートPort30i1からの高周波信号と入出力ポートPort30i2からの高周波信号とは同位相であり、互いに強め合うように合成されて、導波管20を伝搬する。
【0060】
これにより、二つの入出力ポートPort30i1,Port30i2からそれぞれに入力された高周波信号は、合成されて導波管20の所定方向(ここでは短絡終端21側から短絡終端22側に向かう方向)に伝搬される。
【0061】
さらに、入出力ポートPort30i1から入力された高周波信号は、入出力ポートPort30i2に出力されない。すなわち、入出力ポートPort30i1,Port30i2間において、高いアイソレーションを確保することができる。これにより、さらに低損失に、高周波信号の合成を行うことができる。
【0062】
この際、第1、第2給電プローブ41i1,42i1の導波管20に対する挿入量と、第1、第2給電プローブ41i2,42i2の導波管20に対する挿入量とを適宜設定することで、所望の合成比で高周波信号を合成することができる。例えば、伝搬方向の上流側の第1、第2給電プローブ41i1,42i1の導波管20に対する挿入量を、伝搬方向の下流側の第1、第2給電プローブ41i2,42i2の導波管20に対する挿入量よりも大きくする。言い換えれば、伝搬方向の下流側の第1、第2給電プローブ41i2,42i2の導波管20に対する挿入量を、伝搬方向の上流側の第1、第2給電プローブ41i1,42i1の導波管20に対する挿入量よりも小さくする。これにより、所望の合成比で高周波信号を合成することができるとともに、伝搬損失をさらに抑制することができる。
【0063】
なお、上述の説明では、第1、第2給電プローブ41i2,42i2の導波管20内への挿入量によって結合量を調整する例を示したが、高周波信号の伝搬方向に沿った導波管20への第1、第2給電プローブ41i2,42i2の挿入位置によっても、結合量を調整することができる。
【0064】
合成された高周波信号は、第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1の順に達する。第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1から取り出される高周波信号は、上述の図4の場合に相当する(第4給電プローブ42o1が第2給電プローブ42に相当し、第3給電プローブ41o1が第1給電プローブ41に相当する。)。したがって、第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1から取り出される高周波信号は、入出力ポートPort30o1に出力される。ここで、第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1の導波管20に対する結合量を調整することで、高周波信号の一部を入出力ポートPort30o1から出力することができる。なお、結合量は、導波管20に対する第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1の挿入量や、導波管20の伝搬方向に対する第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1の挿入位置によって調整することができる。
【0065】
第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1の位置を通過した高周波信号は、第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2の順に達する。第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2から取り出される高周波信号は、上述の図4の場合に相当する(第4給電プローブ42o2が第2給電プローブ42に相当し、第3給電プローブ41o2が第1給電プローブ41に相当する。)。したがって、第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2から取り出される高周波信号は、入出力ポートPort30o2に出力される。ここで、第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2の導波管20に対する結合度を調整することで、高周波信号の一部を入出力ポートPort30o2から出力することができる。なお、結合度は、導波管20に対する第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2の挿入量や、導波管20の伝搬方向に対する第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2の挿入位置によって調整することができる。
【0066】
第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2の位置を通過した高周波信号は、第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3の順に達する。第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3から取り出される高周波信号は、上述の図4の場合に相当する(第4給電プローブ42o3が第2給電プローブ42に相当し、第3給電プローブ41o3が第1給電プローブ41に相当する。)。したがって、第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3から取り出される高周波信号は、入出力ポートPort30o3に出力される。ここで、第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3の導波管20に対する結合度を調整することで、高周波信号の一部を入出力ポートPort30o3から出力することができる。なお、結合度は、導波管20に対する第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3の挿入量や、導波管20の伝搬方向に対する第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3の挿入位置によって調整することができる。
【0067】
このように本実施形態の構成を用いれば、導波管20を伝搬する高周波信号を、導波管20とは異なる伝送線路に形成された複数の入出力ポートに分配して出力することができる。
【0068】
なお、ここで、第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1の導波管20に対する結合度、第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2の導波管20に対する結合度、第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3の導波管20に対する結合度の比を適宜調整することで、入出力ポートPort30o1,Port30o2,Port30o3に対して、等分配に高周波信号を出力することができる。
【0069】
例えば、第4、第3給電プローブ42o1,41o1の導波管20に対する挿入位置、第4、第3給電プローブ42o2,41o2の導波管20に対する挿入位置、第4、第3給電プローブ42o3,41o3の導波管20に対する挿入位置の電界強度が同じになるように各給電プローブが設置されている場合、各給電プローブの挿入量を次に示すように設定する。第4、第3給電プローブ42o1,41o1の導波管20に対する挿入量よりも、より下流側の第4、第3給電プローブ42o2,41o2の導波管20に対する挿入量を大きくする。第4、第3給電プローブ42o2,41o2の導波管20に対する挿入量よりも、より下流側の第4、第3給電プローブ42o3,41o3の導波管20に対する挿入量を大きくする。そして、各挿入量の比を、結合比に応じて設定する。これにより、等分配による高周波信号の分配出力が実現できる。
【0070】
なお、上述の高周波伝送線路10は、具体的に次に示す構成により実現できる。本実施形態では、移相分配器を90°ハイブリッド線路で実現する場合を示す。図6は、本発明の実施形態に係る高周波伝送線路部分のブロック図である。図7は、本発明の実施形態に係る高周波伝送線路部分の外観斜視図である。
【0071】
図7に示すように、導波管20は、断面が矩形の管状導体200からなる。管状導体200の一方のH面には、2つの貫通穴(図示せず)が形成されている。2つの貫通穴は、管状導体200の伸長する方向に沿って、波長λgの略1/4の間隔で形成されている。なお、図示しないが、管状導体200の伸長方向の両端には、導体壁が形成されている。導体壁は、開口を全て塞ぐように形成されており、管状導体200に導通している。これにより、この両端の導体壁の位置が導波管20の短絡終端21,22となる。
【0072】
第1給電プローブ41および第2給電プローブ42は、棒状導体であり、それぞれが上述の貫通穴を挿通するように、配置されている。この際、第1給電プローブ41が導体壁201側に配置される。
【0073】
第1給電プローブ41の一方端は、導波管20の管内に挿入されており、第1給電プローブ41の他方端は、90°ハイブリッド線路30Hの第1端子Ph31(具体的な構造は後述する。)に接続されている。第2給電プローブ42の一方端は、導波管20の管内に挿入されており、第2給電プローブ42の他方端は、90°ハイブリッド線路30Hの第2端子Ph32(具体的な構造は後述する。)に接続されている。
【0074】
90°ハイブリッド線路30Hは、第1端子Ph31、第2端子Ph32、第3端子Ph33、第4端子Ph34を備え、これらの端子が方形の角部となる形状で形成されている。第1端子Ph31と第2端子Ph32は、高周波信号の波長λh(形成される線路における波長)の略1/4の電気長で接続されている。第2端子Ph32と第4端子Ph34は、高周波信号の波長λh(形成される線路における波長)の略1/4の電気長で接続されている。第4端子Ph34と第3端子Ph33は、90°ハイブリッド線路30Hを伝搬する高周波信号の波長λh(形成される線路における波長)の略1/4の電気長で接続されている。第3端子Ph33と第1端子Ph31は、高周波信号の波長λh(形成される線路における波長)の略1/4の電気長で接続されている。なお、ここで言う、波長λhの略1/4の電気長とは、高周波信号の波長λhの1/4の位相と実使用上で同等と見なせる位相になり得る範囲の電気長を意味する。なお、各端子間の電気長は、λh/4の奇数倍であってもよい。第3端子Ph33は入出力ポートPort30に接続している。
【0075】
より具体的には、90°ハイブリッド線路30Hは、図7に示すような構造からなる。
【0076】
90°ハイブリッド線路30Hは、マイクロストリップ線路の態様からなり、誘電体基板300を備える。誘電体基板310は、管状導体200の貫通穴が形成される面に配置されている。この際、誘電体基板300は、平板面が管状導体200の外面に当接するように配置される。誘電体基板300の管状導体200に当接する側の面には、グランド導体340が略全面に形成されている。
【0077】
誘電体基板300のグランド導体340と反対側の面には、マイクロストリップライン311,312,313,314が形成されている。マイクロストリップライン311,313は、管状導体200の伸長する方向に長い形状である。マイクロストリップライン312,314は、マイクロストリップライン311,313の伸長する方向に直交する方向に長い形状である。マイクロストリップライン311の長さ方向の一方端は、マイクロストリップライン314の長さ方向の他方端に接続し、マイクロストリップライン311の長さ方向の他方端は、マイクロストリップライン312の長さ方向の一方端に接続する。マイクロストリップライン312の長さ方向の他方端はマイクロストリップライン313の長さ方向の一方端に接続する。マイクロストリップライン313の長さ方向の他方端はマイクロストリップライン314の長さ方向の一方端に接続する。
【0078】
マイクロストリップライン311,312,313,314の幅は、誘電体基板300の誘電率および厚みを加味した上で、伝搬する高周波信号の特性インピーダンスに基づいて決定されている。さらに、マイクロストリップライン311,312,313,314の長さは、誘電体基板300の誘電率および厚みを加味した上で、伝搬する高周波信号の波長λhの略1/4に設定されている。
【0079】
マイクロストリップライン311,314の接続点は、第1端子Ph31に相当し、マイクロストリップライン321を介して第1給電プローブ41に接続されている。マイクロストリップライン311,312の接続点は、第2端子Ph32に相当し、マイクロストリップライン322を介して第2給電プローブ42に接続されている。マイクロストリップライン321,322の長さは同じ(等電気長)である。
【0080】
マイクロストリップライン312,313の接続点は、第4端子Ph34に相当する。マイクロストリップライン313,314の接続点は、第3端子Ph33に相当し、マイクロストリップライン331を介して、入出力ポートPort30に接続されている。マイクロストリップライン331の長さは、マイクロストリップライン311,312,313,314と比較して極短く、波長λhに対して位相シフトが無視できるほど短いか、同じ(等電気長)であるとよい。
【0081】
このような構成とすることで、薄型の90°ハイブリッド線路30Hを実現することができる。そして、この薄型の90°ハイブリッド線路30Hを、導波管20に装着することで、高周波伝送線路10を小型に形成することができる。これにより、高周波分配器1を小型化に形成することができる。
【0082】
なお、上述の実施形態では、90°ハイブリッド線路30Hを、マイクロストリップ線路で実現する場合を示したが、マイクロストリップ線路以外で導波管と異なる分布定数回路によっても実現することができる。さらには、集中定数素子の回路によって、90°ハイブリッド回路を実現することもできる。
【0083】
次に、本発明の第2の実施形態に係る高周波分配器について、図を参照して説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係る高周波分配器のブロック図である。本実施形態の高周波分配器1Aは、第1の実施形態に示した高周波分配器1に対して、導波管20Aの構造が異なる。したがって、第1の実施形態に示した高周波分配器1と異なる箇所のみを具体的に説明する。
【0084】
導波管20Aは、一方向に伸長する形状の第1部分導波管211、第2部分導波管212、湾曲部220を備える。湾曲部220は、第1部分導波管211、第2部分導波管212と同様の管状導体からなり、一方の開口端と他方の開口端とが、同じ方向に向くように、360°湾曲する形状からなる。
【0085】
第1部分導波管211の一方端は短絡終端21であり、他方端は湾曲部220の一方の開口端に接続している。第2部分導波管212の一方端は湾曲部220の他方の開口端に接続しており、他方端は短絡終端22である。第1部分導波管211と第2部分導波管212は、伸長方向が平行になるように配置されており、互いの対向する導体壁が共通化されている。
【0086】
合成区間側となる第1給電プローブ41i1、第2給電プローブ42i1、第1給電プローブ41i2、第2給電プローブ42i2は、第1部分導波管211に挿入されている。分配側となる第4給電プローブ42o1、第3給電プローブ41o1、第4給電プローブ42o2、第3給電プローブ41o2、第4給電プローブ42o3、第3給電プローブ41o3は、第2部分導波管212に接続されている。
【0087】
合成区間側の給電プローブ群と、分配側の給電プローブ群は、導波管20Aを挟むように配置されている。
【0088】
このような構成とすることで、導波管20Aが湾曲して折り返される構造であるので、第1の実施形態に示した高周波分配器1と比較して、一方向の長さを大幅に短くすることができる。これにより、設置状況によって省スペース化が可能になる。また、合成区間側の移相分配器30i1,30i2と、分配区間側の複数の移相分配器30o1,30o2,30o3とが、導波管20Aを挟んで、離間して配置される。したがって、合成区間側の移相分配器30i1,30i2と、分配区間側の複数の移相分配器30o1,30o2,30o3とのアイソレーションを高くできる。
【0089】
このような高周波分配器1Aは、次に示すような多段増幅器に利用できる。図9は、本発明の第2の実施形態に係る高周波分配器を用いた多段増幅器の回路ブロック図である。図10は、本発明の第2の実施形態に係る多段増幅器の等価回路図である。
【0090】
多段増幅器2は、上述の構成からなる高周波分配器1A、高周波増幅器A11,A12,A21,A22,A23を備える。高周波増幅器A11の出力端は、入出力ポートPort30i1に接続されている。高周波増幅器A12の出力端は、入出力ポートPort30i2に接続されている。高周波増幅器A21の出力端は、入出力ポートPort30o1に接続されている。高周波増幅器A22の出力端は、入出力ポートPort30o2に接続されている。高周波増幅器A23の出力端は、入出力ポートPort30o3に接続されている。
【0091】
高周波増幅器A11,A12で増幅された高周波信号は、入出力ポートPort30i1,Port30i2から入力されて、高周波分配器1Aで合成される。合成された高周波信号は分配されて、入出力ポートPort30o1,Port30o2,Port30o3から出力され、高周波増幅器A21,A22,A23に入力される。高周波増幅器A21,A22,A23は、入力された各高周波信号を増幅して出力する。
【0092】
このように、本実施形態の構成を用いることで、所望の合成比分配比で高周波信号を合成分配しながら増幅することができる。すなわち、従来の複数の入出力ポートを持つ分配結合器では、ポート間のアイソレーションを確保するために、入力ポート数と出力ポート数が整数倍の関係にならなければならないという制約があった。しかしながら、本実施形態の構成を用いることで、入力ポート数と出力ポート数をそれぞれ任意に設定することが可能になり、例えば、従来構成では容易に構成することができなかった2入力3出力等の整数比にならない分配結合器も、容易に構成することができる。
【0093】
なお、上述の各実施形態では、合成区間側の高周波伝送線路数が二個で、分配区間側の高周波伝送線路数が三個の場合を示したが、これらの数は適宜設定することができる。これにより、所望の出力電力に増幅する多段増幅器を容易に実現することができる。
【0094】
また、上述の第2の実施形態では、360°湾曲する導波管の場合を示したが、湾曲する角度は、これに限らず、必要とする仕様に応じて適宜設定すればよい。また、第2の実施形態では、合成区間側の回路と分配区間側の回路とを導波管を介して離間する構成を示したが、導波管の同じ側に、合成区間側の回路と分配区間側の回路とを混在することもできる。
【0095】
また、上述の多段増幅器は、二段の場合を示したが、同様の構成を三段以上つなげてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,1A:高周波分配器、
2:多段増幅器、
10,10i1,10i2,10o1,10o2,10o3:高周波伝送線路、
20,20A:導波管、
21,22:短絡終端
30,30i1,30i2,30o1,30o2,30o3:移相分配器、
30H:90°ハイブリッド線路、
41i1,41i2:第1給電プローブ、
42i1,42i2:第2給電プローブ、
200:管状導体、
211:第1部分導波管、
212:第2部分導波管、
220:湾曲部、
300:90°位相遅延回路、
310:誘電体基板、
311,312,313,314,321,322,331,332:マイクロストリップライン、
340:グランド導体、
A11,A12,A21,A22,A23:高周波増幅器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10