(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クレーンの車体に水平旋回自在且つ起伏自在に設けられて伸縮可能に形成されたブームの先端からフックとロープを介して吊り下げられる吊荷を移動する際に用いられる作業確認装置であって、
前記ブーム先端から下方を撮像してその撮像画像を取得するカメラと、
前記撮像画像からオペレータに表示するための表示画像を作成する画像処理手段と、
前記表示画像を前記オペレータに表示するモニタと、
前記クレーンの前記吊荷の最大吊下荷重性能に関わる作業領域線を作成する作業領域線作成手段と、
前記オペレータにより任意の高さが指定される高さ入力手段とを備え、
前記作業領域線作成手段は、前記高さ入力手段により前記任意の高さが指定された場合には、前記任意の高さを基準にして前記作業領域線を作成し、
前記画像処理手段は、前記表示画像として前記任意の高さを基準にして作成された前記作業領域線を前記撮像画像に重畳したものを作成することを特徴とする作業確認装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、作業領域線は地面を基準にして作成されるので、例えばカメラから視て斜めの方向に立体物の屋上が映っても立体物の高さが考慮されずに地面を基準とした作業領域線が屋上にそのまま重畳されてしまい、実際の作業領域線よりも作業半径が小さい方向にずれることになる。そのため、吊荷が作業領域線を越えても停止せず、オペレータに混乱を与えるおそれがある。そこで、吊荷の移動作業をより安全に行うことができる作業確認装置が検討されている。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、吊荷の移動作業をより安全に行うことができる作業確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような作業確認装置を採用した。
【0011】
本発明の作業確認装置は、クレーンの車体に水平旋回自在且つ起伏自在に設けられて伸縮可能に形成されたブームの先端からフックとロープを介して吊り下げられる吊荷を移動する際に用いられる作業確認装置であって、
前記ブーム先端から下方を撮像してその撮像画像を取得するカメラと、
前記撮像画像からオペレータに表示するための表示画像を作成する画像処理手段と、
前記表示画像を前記オペレータに表示するモニタと、
前記クレーンの前記吊荷の最大吊下荷重性能に関わる作業領域線を作成する作業領域線作成手段と、
前記オペレータにより任意の高さが指定される高さ入力手段とを備え、
前記作業領域線作成手段は、前記高さ入力手段により前記任意の高さが指定された場合には、前記任意の高さを基準にして前記作業領域線を作成し、
前記画像処理手段は、前記表示画像として前記任意の高さを基準にして作成された前記作業領域線を前記撮像画像に重畳したものを作成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の作業確認装置は、前記フックまたは前記吊荷の高さが前記高さ入力手段により前記任意の高さとして指定された場合に前記フックまたは前記吊荷の高さを算出する高さ算出手段をさらに備えても良い。この場合に前記作業領域線作成手段は、前記作業領域線を、前記高さ算出手段で算出された前記フックまたは前記吊荷の高さを基準にして作成する。
【0013】
また、本発明の作業確認装置は、前記ロープの繰出し長さを検出するロープ繰出し長さ検出手段と、前記ブームの姿勢を検出するブーム姿勢検出手段とをさらに備えても良い。この場合に前記高さ算出手段は、前記ロープ繰出し長さ検出手段で検出された前記ロープの繰出し長さと前記ブーム姿勢検出手段で検出された前記ブームの姿勢とに基づいて前記フックまたは前記吊荷の高さを算出する。
【0014】
また、本発明の作業確認装置では、前記画像処理手段は、前記高さ入力手段で指定された前記任意の高さに関する情報と、前記任意の高さを基準にした前記作業領域線とを関連付けて前記表示画像を作成することが好ましい。
【0015】
また、本発明の作業確認装置では、前記作業領域線作成手段が、前記高さ入力手段で指定された前記任意の高さを基準にした前記作業領域線の他に地面を基準にした前記作業領域線を作成する場合には、双方の作業領域線を異なる線種に設定し、前記画像処理手段は、前記表示画像として前記双方の作業領域線を前記撮像画像に重畳したものを作成することが好ましい。
【0016】
また、本発明の作業確認装置では、前記作業領域線作成手段が、前記高さ入力手段により指定された前記任意の高さを基準にした前記作業領域線の他に地面を基準にした前記作業領域線を作成する場合には、前記画像処理手段は、双方の作業領域線を切り替えて前記表示画像を作成することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の作業確認装置では、オペレータが指定した任意の高さを基準にした作業領域線が表示されるので、モニタに立体物の屋上が映っても従来のように作業領域線がずれて表示されることがなくなり、オペレータは吊荷の停止位置を正確に確認することが可能になる。よって、本発明の作業確認装置は、吊荷の移動作業をより安全に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態のクレーン1の側面図である。最初にクレーン1の全体的な構成を簡単に説明する。このクレーン1は、走行機能を有する車両の本体部分(車体)となるキャリア2と、キャリア2の上部に水平旋回可能に取り付けられた旋回台3と、旋回台3に設けられたキャビン4とを備えている。
【0021】
キャリア2の前側と後側には、それぞれ左右一対のアウトリガ5,5(一方のみ図示)が設けられている。旋回台3の上側にはブラケット6が固定されている。このブラケット6にはブーム7が取り付けられている。
【0022】
ブーム7は、その基端部が支持軸8を介してブラケット6に取り付けられ、この支持軸8を中心にして起伏可能となっている。ブラケット6とブーム7との間には起伏用シリンダ9が介装されている。ブーム7は、この起伏用シリンダ9が伸縮することにより起伏する。
【0023】
ブーム7は基端ブーム7aと中間ブーム7bと先端ブーム7cとを有し、この順序で基端ブーム7a内に外側から内側へ入れ子式に組み合わされている。各ブーム7a〜7cは内部で伸縮シリンダ(図示せず)により連結され、各伸縮シリンダが伸縮することで伸縮する。
【0024】
先端ブーム7cの先端部7dにはシーブ(図示せず)が設けられている。このシーブにはブラケット6に設けられたウインチ(図示せず)から延びたワイヤロープW(以下ワイヤWと称する)が掛けられている。このワイヤWにはフックブロック10が吊り下げられており、フックブロック10の下側にはフック11が取り付けられている。このフック11にはワイヤロープ(図示せず)により吊荷(図示せず)が掛けられる。
【0025】
キャビン4内には操作盤(図示せず)が設けられている。この操作盤は、操作レバー(図示せず)を備えている。この操作レバーは、オペレータがブーム7の旋回・起伏・伸縮、各アウトリガ5の張出・格納、エンジン始動・停止等の操作を行うものである。
【0026】
図2は、このクレーン1に用いられている本発明の作業確認装置21の構成を示すブロック図である。この作業確認装置21は、クレーン1により吊荷を移動したい位置に移動するときに、その位置に吊荷を移動できるか否かをオペレータに確認させるものである。
【0027】
この作業確認装置21は、各種の演算処理を行う演算手段22を中心に構成されている。この演算手段22は、例えばキャビン4(
図1参照)内に設けられている。
【0028】
演算手段22の入力側には、吊荷監視カメラ23、チルトセンサ24、パンセンサ25、ブーム姿勢検出手段(シリンダ圧力センサ26、ブーム長センサ27、起伏角度センサ28、旋回角度センサ29、歪センサ30)、アウトリガ張出センサ31、ウインチドラム回転センサ32、高さ入力手段33が接続されている。演算手段22の出力側には、モニタ34が接続されている。
【0029】
この作業確認装置21において本発明の画像処理手段および高さ算出手段は演算手段22から構成される。本発明の作業領域線作成手段は、演算手段22および各センサ26〜28、31から構成される。本発明のワイヤ繰出し長さ検出手段は、ウインチドラム回転センサ32および演算手段22から構成される。
【0030】
吊荷監視カメラ23は、
図1に示すように先端ブーム7cの先端部7dにレンズを真下に向けて取り付けられている。この吊荷監視カメラ23は、ブーム7の先端から下方を視たときの風景(吊荷や吊荷周辺)を撮像して、その撮像画像を取得するものである。
【0031】
また、吊荷監視カメラ23は、チルト方向(垂直方向)とパン方向(水平方向)へ垂直軸線に対して任意の角度に傾斜可能に構成されている。吊荷監視カメラ23の傾斜(傾き)の操作は、キャビン4内の操作盤(図示せず)で行われる。以下の説明では、吊荷監視カメラ23を単にカメラ23と称する。
【0032】
また、
図1に示すようにチルトセンサ24とパンセンサ25は、吊荷監視カメラ23の上面に取り付けられている。このチルトセンサ24とパンセンサ25は、吊荷監視カメラ23の傾斜角度を検出するものである。
【0033】
シリンダ圧力センサ26は、起伏用シリンダ9に取り付けられ、起伏用シリンダ9の圧力を検出するものである。ブーム長センサ27は、ブーム7に取り付けられ、ブーム7の長さと伸長量を検出するものである。起伏角度センサ28は、ブーム7に取り付けられ、ブーム7の起伏角度を検出するものである。旋回角度センサ29は、旋回台3に取り付けられ、ブーム7の旋回角度を検出するものである。歪センサ30は、起伏用シリンダ9に取り付けられ、ブーム7にかかる負荷モーメント量を検出するものである。
【0034】
アウトリガ張出センサ31は、各アウトリガ5にそれぞれ取り付けられ、各アウトリガ5の張出量を検出するものである。ウインチドラム回転センサ32は、ウインチを構成するウインチドラムの回転数を検出してウインチドラムに掛けられているワイヤWの繰出し長さを検出するものである。
【0035】
高さ入力手段33は、オペレータがフック11または吊荷の移動位置により、作業領域線を表示すべき任意の高さを指定するために使用される。また、高さ入力手段33は、オペレータが数値で高さを入力するものであっても良い。高さ入力手段33としては、押しボタン式のスイッチ、マウスやキーボード等のデバイスが挙げられる。その他には、モニタ34をタッチパネル式のモニタにして、このモニタ上に高さ入力手段を設定するようにしても良い。
【0036】
モニタ34はキャビン4(
図1参照)内に設けられている。このモニタ34は、カメラ23によって取得された撮像画像をオペレータに表示するものである。
【0037】
次に、
図3のフローチャートを用いて作業確認装置21による作業領域線の表示処理を説明する。
【0038】
(ステップS1)
最初に、カメラ23によりブーム7の先端から下方を視たときの風景を撮像し、その撮像画像を取得する。この撮像画像は、演算手段22へ出力される。
【0039】
(ステップS2)
演算手段22は、撮像画像からオペレータに表示するための表示画像を作成してモニタ34に表示する。また、演算手段22は、カメラ23のズーム倍率、チルトセンサ24やパンセンサ25から得られるカメラ23の傾斜角度、およびカメラ23の高さ位置に基づいて、ブーム7の旋回中心を原点にした撮像画像の座標位置を算出する。
【0040】
なお、カメラ23の高さ位置は、ブーム長センサ27から得られるブーム7の長さと、起伏角度センサ28から得られるブーム7の起伏角度とに基づいて算出される。
【0041】
(ステップS3)
演算手段22は、ブーム7に吊荷が吊り下げられているか否かを判断する。なお、この判断は、シリンダ圧力センサ26から得られる起伏用シリンダ9の圧力の変化量や、起伏角度センサ28から得られるブーム7の起伏角度の変化量、ウインチドラム回転センサ32から得られるワイヤWの巻上量等に基づいて行う。
【0042】
(ステップS4)
演算手段22は、ブーム7に吊荷が吊り下げられていないと判断した場合は(ステップS3の判断結果がNO)、現在位置しているフック11の所定位置の高さを算出する。この所定位置としては、フック11の最下部またはフックブロック10のシーブ中心等が挙げられる。なお、フック11の所定位置の高さは、ブーム7の旋回中心を原点にした撮像画像の座標位置に基づいて算出する。
【0043】
(ステップS5)
演算手段22は、ブーム7に吊荷が吊り下げられていると判断した場合は(ステップS3の判断結果がYES)、現在位置している吊荷の所定位置の高さを算出する。この所定位置としては、吊荷の底面等が挙げられる。なお、吊荷の所定位置の高さは、ブーム7の旋回中心を原点にした撮像画像の座標位置に基づいて算出する。
【0044】
(ステップS6)
続いて演算手段22は、オペレータによって高さ入力手段33から高さが指定されたか否かを判断する。高さの入力方法としてはオペレータが高さを数値で入力する方法がある。立体物の高さが事前に分かっている場合はこの方法でも良いが、本実施の形態においてオペレータが指定する高さは、高さの分かっていない立体物の高さを想定している。そこで、フック11を立体物(例えば建物の屋上)に移動させたときにオペレータが高さ入力手段33を操作することで作業領域線を表示すべき高さを指定する。これにより高さの分かっていない立体物であっても、その高さを指定することができる。
【0045】
(ステップS7)
演算手段22は、高さの指定がないと判断した場合は(ステップS6の判断結果がNO)、クレーン1の吊荷の最大吊下荷重性能に関わる作業領域線を作成する。ここで作成する作業領域線は、ステップS4またはステップS5で算出したフック11または吊荷の所定位置の高さを基準にした作業領域線と、地面S(
図1参照)を基準にした作業領域線である。
【0046】
(ステップS8)
演算手段22は、高さの指定があると判断した場合は(ステップS6の判断結果がYES)、指定された高さ(建物の屋上の高さ)を算出して、クレーン1の吊荷の最大吊下荷重性能に関わる作業領域線を作成する。ここで作成する作業領域線は、指定された高さを基準にした作業領域線と、地面Sを基準にした作業領域線である。
【0047】
ここで作業領域線について説明する。作業領域線は、吊荷が移動可能な範囲を示す領域線であり、アウトリガ5の張出量、吊荷の実荷重、演算手段22に予め記憶されている定格総荷重表に基づいて作成する。なお、吊荷がモニタ34に表示する範囲内全てを移動可能な場合(移動可能な最大半径の作業領域線がモニタの表示画面の外側に位置する場合)はモニタの表示画面上に作業領域線が表示されないので、前述した負荷率(最大吊上可能な吊荷荷重による負荷に対する現在の吊荷荷重による負荷の割合となる負荷率)の値を小さくして作業領域線が表示されるようにする。
【0048】
吊荷の実荷重は、シリンダ圧力センサ26から得られるブーム7の起伏用シリンダ9の圧力、ブーム長センサ27から得られるブーム7の長さ、起伏角度センサ28から得られるブーム7の起伏角度に基づいて算出される。
【0049】
定格総荷重表は周知であるため図示しないが、アウトリガ5の張出量、ブーム7の長さ、ブーム7の旋回中心を中心とした最大作業半径とに基づく最大荷重を示したものである。
【0050】
演算手段22は、定格総荷重表からアウトリガ5の張出量および吊荷の実荷重に相当する最大作業半径を算出し、この最大作業半径の円弧を作成する。この円弧が作業領域線となる。
【0051】
(ステップS9)
次に演算手段22は、ステップS7またはステップS8で作成した作業領域線をモニタ34に表示する。
【0052】
最初に、ステップS8で作成した作業領域線をモニタ34に表示する場合について説明する。演算手段22は、ブーム7の旋回中心を原点にした撮像画像の座標位置に基づき、
図4に示すように作業領域線A1、B1を撮像画像Cに重畳した表示画像D1を作成し、モニタ34に表示する。作業領域線A1は、地面Sを基準にした作業領域線である。作業領域線B1は、指定された高さ(建物Kの屋上Kaの高さ)を基準にした作業領域線である。
【0053】
つまり作業領域線B1は、オペレータが指定した任意の高さを基準にして表示される。そのため、モニタ34に建物Kの屋上Kaが映っても従来のように作業領域線がずれて表示されることがなくなり、オペレータは吊荷の停止位置を正確に確認することが可能になる。よって、本実施の形態の作業確認装置21は、吊荷の移動作業をより安全に行うことができる。また、この作業確認装置21は、地面Sに置いてある荷物を建物Kの屋上Kaに繰り返し運ぶ作業を行うときに有効である。
【0054】
また、本実施の形態の作業確認装置21では、オペレータが指定した位置(例えば建物Kの屋上Ka)で作業領域線B1を表示するようにしたので、使い勝手を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態の作業確認装置21では、双方の作業領域線A1、B1を異なる線種に設定している。具体的には、双方の作業領域線A1、B1の表示色を変えている。これによりオペレータは、双方の作業領域線A1、B1を容易に判別しやすくなるので、吊荷の停止位置をより正確に確認することが可能になる。よって、本実施の形態の作業確認装置21は、吊荷の移動作業をいっそう安全に行うことができる。
【0056】
次に、ステップS7で作成した作業領域線をモニタ34に表示する場合について説明する。演算手段22は、ブーム7の旋回中心を原点にした撮像画像の座標位置に基づき、
図5に示すように作業領域線A2、B2を撮像画像Cに重畳した表示画像D2を作成し、モニタ34に表示する。作業領域線A2は、地面Sを基準にした作業領域線である。作業領域線B2は、フック11の所定位置の高さを基準にした作業領域線である。なお、吊荷の所定位置の高さを基準にした作業領域線も、フック11の所定位置の高さを基準にした作業領域線B2と同様に表示される。
【0057】
このように本実施の形態の作業確認装置21では、高さの指定がない場合は、現在位置しているフック11または吊荷の所定位置の高さを基準にした作業領域線B2を作成して撮像画像Cに重畳する(
図6も参照)。
図6においてSaはフック11の高さを示す平面である。このような場合は、ブーム7の姿勢変化やワイヤWの繰出し長さの変化に応じて作業領域線の位置が変わる。こうすることで、モニタ34上に立体物が表示されても作業領域線がフック11または吊荷の高さ基準で表示されるので、オペレータは吊荷の停止位置を立体物の高さと関係付けて推定することが可能になり、吊荷の移動作業をより安全に行うことができる。なお、双方の作業領域線A2、B2は、ステップS8の場合(
図4参照)と同様に異なる線種に設定しているので容易に判別しやすくなる。
【0058】
また、本実施の形態の作業確認装置21では、指定された高さ(以下、屋上Kaの高さで説明する)を算出する場合に、下記で説明するようにオペレータがフック11または吊荷を屋上Kaに位置させて演算手段22がフック11または吊荷の高さを算出し、この高さを基準にして作業領域線B1を作成する。このため、ステレオカメラやレーザーを用いてフック11または吊荷の高さを算出する場合に比べて簡易的に高さを算出して作業領域線を作成することが可能になる。よって、本実施の形態の作業確認装置21は低コスト化を図ることができる。
【0059】
さらに、フック11または吊荷を用いて屋上Kaの高さを算出するときには、下記で説明するようにウインチドラム回転センサ32とブーム姿勢検出手段とを用いている。したがって、より簡易的に高さを算出することが可能になる。よって、本実施の形態の作業確認装置21は低コスト化をさらに図ることができる。
【0060】
図7を用いて、フック11または吊荷を用いた屋上Kaの高さHbの算出方法を説明する。この算出方法としては、以下の3つの方法が挙げられる。各方法を説明する。
(A)繰出し長さの基準をウインチドラム回転数の初期設定に設定して算出する方法
(B)繰出し長さの基準を地面Sに設定して算出する方法
(C)繰出し長さの基準をブーム先端シーブに設定して算出する方法
【0061】
(A)繰出し長さの基準をウインチドラム回転数の初期設定に設定して算出する方法
(1)初期設定
クレーン組立時等の初期設定で、ウインチドラムにワイヤWが掛けられたワイヤ繰出開始状態で、演算手段22に繰出し長さをゼロ(ウインチドラムの回転数ゼロ)として演算手段22に記憶する。
【0062】
(2)フック11の揚程Lの算出
次に、オペレータはブーム7とウインチを操作して二点鎖線で示すようにフック11を屋上Kaまで巻き上げる。演算手段22は、このときのウインチドラム回転センサ32から得られる回転数に基づいてウインチドラムからの繰出し長さを算出する。続いて演算手段22は、この繰出し長さから、ブーム姿勢検出手段で算出されたウインチドラムからシーブ中心までの長さを差し引くことにより、フック11が屋上Kaに位置したときのフック11の揚程Lを算出する。同時にブーム7の姿勢からブーム7先端の高さを演算して、揚程Lを減じることにより屋上Kaの高さHbを演算する。オペレータは、フック11を屋上Kaに位置させたときに高さ入力手段33を操作して屋上Kaの高さHbを演算手段22に記憶する。
【0063】
(B)繰出し長さの基準を地面Sに設定して算出する方法
(1)初期設定
オペレータはワイヤWを繰り出してフック11を実線に示すように地面Sまで下げ、この状態で、演算手段22に接続した設定スイッチ等により繰り出し長さ(巻上量)をゼロ(ウインチドラムの回転数がゼロ)として演算手段22に記憶する。
【0064】
(2)フック11の揚程Lの算出
次に、オペレータはブーム7を操作すると共にワイヤWを巻き上げて二点鎖線で示すようにフック11を建物Kの屋上Kaまで上げる。演算手段22は、このときにウインチドラム回転センサ32から得られる回転数に基づいて地面Sからの繰出し長さを算出し、この繰出し長さからフック11の揚程Lを算出する。またオペレータは、フック11を屋上Kaまで上げたときに高さ入力手段33を操作して作業領域線を描く高さを演算手段22に記憶する。
【0065】
(3)ブーム7の先端位置の変化量ΔHの算出
演算手段22は、ブーム姿勢検出手段から得られた各検出値に基づき、フック11が地面Sと屋上Kaにそれぞれ位置したときのブーム7の先端の高さを算出し、さらにその変化量ΔHを算出する。
【0066】
(4)屋上Kaの高さHbの算出
演算手段22は、高さ入力手段33によりそれぞれ記憶されたフック11の高さの変化量(揚程H−L)を算出し、この変化量からブーム7の先端位置の変化量ΔHを差し引いて屋上Kaの高さHbを算出する。屋上Kaの高さHbの算出式は以下の通りである。
Hb=H−L−ΔH
(H:フック11が地面Sに位置したときの揚程 L:フック11が屋上Kaに位置したときの揚程 ΔH:ブーム7の先端位置の変化量)
【0067】
このように、オペレータがフック11を地面Sに位置させた後、フック11を屋上Kaに移動させることで屋上Kaの高さHbを求めることができる。
【0068】
(C)繰出し長さの基準をブーム先端シーブに設定する方法
(1)初期設定
オペレータはフック11をブーム先端シーブまで上げ、この状態で、演算手段22に接続した設定スイッチ等により繰出し長さがゼロ(ウインチドラム回転数ゼロ)として演算手段22に記憶する。
【0069】
(2)フック11の揚程Lの算出
次にオペレータは、ワイヤWを繰り出して二点鎖線で示すようにフック11を建物Kの屋上Kaまで下げる。演算手段22は、このときにウインチドラム回転センサ32から得られる回転数に基づいてシーブからの繰り出し長さを算出し、この繰り出し長さからフック11の揚程Lを算出する。またオペレータは、フック11を屋上Kaまで下げたときに高さ入力手段33を操作して揚程Lを演算手段22に記憶する。
【0070】
上記と同様に、ブーム7の先端位置の変化量を算出して屋上Kaの高さHbを算出する。
【0071】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態の作業確認装置121による作業領域線A3、B3の表示内容を示す図である。
図2に示すように本実施の形態の作業確認装置121の構成は、第1の実施の形態の作業確認装置21の構成と同様である。
【0072】
また、本実施の形態の作業確認装置121による作業領域線の表示処理の流れは、第1の実施の形態の作業確認装置21の作業領域線の表示処理の流れと同様である(
図3参照)。なお、本実施の形態では第1の実施の形態と同様な部分は同じ符号を付し、異なる部分を中心にして説明する。
【0073】
作業確認装置121の演算手段122は、
図3のステップS9において、
図8に示すように作業領域線A3、B3を撮像画像Cに重畳した表示画像D3を作成してモニタ34に表示する。
【0074】
作業領域線A3は、地面Sを基準にした作業領域線である。作業領域線B3は、指定された高さ(屋上Kaの高さ)を基準にした作業領域線である。つまり作業領域線B3は、第1の実施の形態と同様、オペレータが指示した任意の高さを基準にして表示される。
【0075】
特に、本実施の形態の作業確認装置121では、オペレータが建物Kの屋上Kaを指定したときに、演算手段122はステップS9において撮像画像Cの座標位置の画素の特徴に基づき画像認識により屋上Kaの範囲を特定し、または画像上でオペレータが屋上Kaの輪郭(範囲)を指定し、その範囲に作業領域線B3を重畳させている。また、作業領域線A3は屋上Ka以外の範囲に重畳させている。このため、モニタ34に複数の建物が表示されていても、作業領域線B3がどの建物の屋上を基準としたものであるかが容易に判別することが可能になる。また、屋上Kaの範囲を特定することで、屋上Kaの高さに関連付けて作業領域線B3が表示されることにより、屋上Kaの高さを認識することができる。よって、本実施の形態の作業確認装置121は、吊荷の移動作業をいっそう安全に行うことができる。
【0076】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態の作業確認装置221による作業領域線B4の表示内容を示す図である。
図2に示すように本実施の形態の作業確認装置221の構成は、第1の実施の形態の作業確認装置21や第2の実施の形態の作業確認装置121の構成と同様である。
【0077】
また、本実施の形態の作業確認装置221による作業領域線の表示処理の流れは、上記の2つの実施の形態の作業確認装置21、121による作業領域線の表示処理の流れと同様である(
図3参照)。なお、本実施の形態では第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様な部分は同じ符号を付し、異なる部分を中心にして説明する。
【0078】
作業確認装置221の演算手段222は、
図3のステップS9において、
図9に示すように作業領域線B4を撮像画像Cに重畳した表示画像D4を作成してモニタ34に表示する。この作業領域線B4は、指定された高さ(屋上Kaの高さ)を基準にした作業領域線である。つまり作業領域線B4は、上記の2つの実施の形態と同様にオペレータが指定した任意の高さを基準にして表示される。
【0079】
さらに、本実施の形態の作業確認装置221では、オペレータが建物Kの屋上Kaを指定したときに、演算手段222は、
図3のステップS9において
図9に示すように屋上Kaに目印B5をつけて、この目印B5を通るように作業領域線B4を撮像画像Cに重畳する。したがって、モニタ34上に複数の建物が表示されていても、作業領域線B4がどの建物の屋上を基準としたものであるかが容易に判別することが可能になる。また、目印B5を用いることで屋上Kaの高さに関連付けて作業領域線B4が表示されることにより、屋上Kaの高さを認識することができる。よって、本実施の形態の作業確認装置221は、吊荷の移動作業をいっそう安全に行うことができる。
【0080】
以上、本発明に係る実施の形態を例示したが、これらの実施の形態は本発明の内容を限定するものではない。また、本発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0081】
実施の形態では、オペレータが高さを指定するために高さ入力手段33を使用したが、高さ入力手段33を使用せずに、ワイヤWを繰出す、あるいは巻き上げてフック11が地面Sまたは建物Kの屋上Kaに位置したときにフック11の揚程H、Lを演算手段22が算出して自動的に記憶するようにしても良い。
【0082】
また実施の形態では、指定された任意の高さに関する情報と、任意の高さを基準にした作業領域線とを関連付ける方法として、
図8に示したように屋上Kaの範囲に作業領域線B3を表示したり、
図9に示したように屋上Kaに目印B5をつけるようにしたが、その他にはオペレータが任意の高さを指定したときに、その高さをモニタ34に数値で表示しても良い。
【0083】
また、地面Sを基準にした作業領域線と、建物Kの屋上Kaの高さやフックの高さ等の任意の高さを基準にした作業領域線とを表示する場合には、双方の作業領域線を切り替えて表示するようにしても良い。切り替える方法としては、オペレータが手動で切り替える方法や、演算手段22がモニタ34に表示される画像(地面S、建物Kの屋上Ka)の割合に応じて自動的に切り替える方法等が挙げられる。
【0084】
また、実施の形態では、伸縮式のブームの先端に吊荷監視カメラを備えた例を用いて説明したが、ブームまたはジブに監視カメラを備えるものであれば、本発明はそのいずれにも適用できる。すなわち、ブームおよびジブは伸縮機能の有無に関わらず本発明は適用可能である。