(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053144
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】オイルフィルタのオイル排出機構
(51)【国際特許分類】
F01M 11/03 20060101AFI20161219BHJP
F01M 1/10 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
F01M11/03 A
F01M1/10 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-32896(P2013-32896)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-163245(P2014-163245A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】313004724
【氏名又は名称】ユニキャリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩二
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−114693(JP,U)
【文献】
実開昭59−021807(JP,U)
【文献】
特開昭49−103031(JP,A)
【文献】
実開昭52−015635(JP,U)
【文献】
実開昭51−143944(JP,U)
【文献】
特開昭56−151240(JP,A)
【文献】
実開昭58−086459(JP,U)
【文献】
実開昭62−071360(JP,U)
【文献】
特開2008−267322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/03
F01M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側が閉鎖部材によって閉じられるとともに他方側がオイルフィルタに通じる油路に連通する弁収容孔と、該弁収容孔内に摺動自在に収容された弁ピストンと、該弁収容孔内の前記閉鎖部材と前記弁ピストンとの間に介在されたコイルバネと、前記弁収容孔に形成されて前記弁ピストンによって開閉されるドレンポートとを備えるリリーフバルブと、
前記閉鎖部材を貫通して延び、該閉鎖部材の外側から前記コイルバネのバネ力に抗して前記弁ピストンを牽引操作可能な牽引ロッドと、
前記コイルバネのバネ力に抗して前記牽引ロッドを所定位置に保持することにより前記弁ピストンをドレン位置に保持可能な保持手段と、
を有し、
前記弁ピストンに凹部が形成され、
前記牽引ロッドの先端部が、前記弁ピストンの凹部に、前記弁ピストンの相対移動を許容しつつ抜脱不能に収容されていることを特徴とするオイルフィルタのオイル排出機構。
【請求項2】
前記牽引ロッドの先端部が、前記コイルバネより小さいバネ力の補助バネにより前記凹部の奥側に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルフィルタのオイル排出機構。
【請求項3】
一方側が閉鎖部材によって閉じられるとともに他方側がオイルフィルタに通じる油路に連通する弁収容孔と、該弁収容孔内に摺動自在に収容された弁ピストンと、該弁収容孔内の前記閉鎖部材と前記弁ピストンとの間に介在されたコイルバネと、前記弁収容孔に形成されて前記弁ピストンによって開閉されるドレンポートとを備えるリリーフバルブと、
前記閉鎖部材を貫通して延び、該閉鎖部材の外側から前記コイルバネのバネ力に抗して前記弁ピストンを牽引操作可能な牽引ロッドと、
前記コイルバネのバネ力に抗して前記牽引ロッドを所定位置に保持することにより前記弁ピストンをドレン位置に保持可能な保持手段と、
を有し、
前記弁ピストンに貫通孔が形成され、
前記牽引ロッドが前記弁ピストンの貫通孔を貫通し、該弁ピストンの受圧面に係止する係止部を該牽引ロッドの先端部に備えることを特徴とするオイルフィルタのオイル排出機構。
【請求項4】
前記保持手段は、前記牽引ロッドと前記閉鎖部材とに係止する係止ピンを備えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のオイルフィルタのオイル排出機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフィルタのオイル排出機構に係り、特に、産業車両や建設車両等の油圧回路に設けられるオイルフィルタのオイル排出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来のフォークリフトの油圧回路を示している。オイルタンク100からストレーナ101を介してポンプ102で油を吸い込み、ポンプ102から吐出することによりトルクコンバータ103を駆動し、トルクコンバータ103を通過した油は、油路104a、オイルフィルタ105を介してオイルクーラ106を通過し、クラッチ107等の潤滑油として利用された後、再びオイルタンク100に戻される。
【0003】
フォークリフト等の産業車両の油圧回路には、
図14に示すように、ポンプ102で吐出した油を濾過するためにオイルフィルタ105が接続されている。また、一般的に、油圧回路の潤滑油回路保護のためにリリーフバルブ(1X、1Y等)が設けられている。
【0004】
リリーフバルブ1Xは、油路104bを通じてオイルフィルタ105より低い位置に配置されている。リリーフバルブ1Xは、
図15及び
図16に示すように、トランスミッションケースやトルクコンバータケース等のケース120或いはこれらのケーシングに固定されるオイルブロック等に、オイルフィルタ105に通じる油路104bと連通して形成された弁収容孔104cと、弁収容孔104cの開口を閉じる閉鎖部材4Xとしてのプラグネジと、弁収容孔104c内に摺動可能に収容された弁ピストン2Xと、弁収容孔104c内で閉鎖部材4Xと弁ピストン2Xとの間に介在され弁ピストン2Xを押圧付勢するコイルバネ3と、弁収容孔104cに形成され弁ピストン2Xによって開閉されるドレンポート109aと、を備えている。弁ピストン2Xの受圧面2X1に当接可能なストッパーピン108が弁収容孔104c内に固定されている。
【0005】
リリーフバルブ1Xは、弁ピストン2Xの受圧面2X1の油圧が設定圧より小さいときは、弁ピストン2Xがコイルバネ3によりストッパーピン108に押し付けられたままドレンポート109aを塞ぎ、受圧面2X1の油圧が設定圧より大きくなると、弁ピストン2Xはコイルバネ3のバネ力に抗して
図16に示すように左方向に押され、弁ピストン2Xがドレン位置に移動してドレンポート109aを開き、圧力油の一部がドレンポート109aからドレン油路109を通じてオイルタンク100へ排出され、過度の圧力上昇を防止する。なお、
図15及び
図16において、弁ピストン2X1の受圧面2X1側から弁ピストン2Xの摺動面を介して弁収容孔104cのコイルバネ3の側に漏れ出た油は、弁収容孔104cに開口する別のドレン油路110からオイルタンク100へ排出される。
【0006】
図17及び
図18はフォークリフトの内部構造を示しており、図示されているように、オイルフィルタ105は、オイルクーラライン用ホース111(
図17)、トランスミッションケース112(
図18)、或いはトルクコンバータケース113等に取り付けられており、オイルフィルタ105に内蔵されるフィルタエレメントの交換時にホース111やオイルフィルタ105内に残った油が流出するという問題がある。
【0007】
図17に示すようにオイルフィルタ105がホース111に接続されている場合には、フィルタエレメント取り外し時にホース端部を上向きに保持することで油漏れを防ぐことができる(
図17の二点鎖線参照)。しかし、オイルフィルタ105が、
図18に示すようにトランスミッションケース112に直に取り付けられている場合や、トルクコンバータケース113に直に取り付けられている場合(図示せず。)は、取り付けスペースの点で有利となるが、
図17の例のようにホース111にオイルフィルタ105が取り付けられている場合のような手法で油漏れを防ぐことができない。
【0008】
そこで、オイルフィルタのフィルタエレメント交換時にオイルフィルタからオイルが外部に溢れたり、こぼれ落ちたりして周囲を汚すことを防止するため、例えば、オイルフィルタへの流入路からドレンポートに分岐する分岐路に流路を切り替えて流体フィルタからドレンポートへの通流を可能にする流路切替部材を設けた流体フィルタのドレン構造が提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−267322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来技術では、ドレン油路を別途設ける等、既存のものに対して大幅な設計変更を要するとともに、それに伴う大幅なコスト上昇も生じ得る。
【0011】
本発明は、従来の油路を変更することなく、油圧回路を構成している油路内の既存部品に改良を加えることにより低コストで具現可能なオイルフィルタのオイル排出機構を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構は、一方側が閉鎖部材によって閉じられるとともに他方側がオイルフィルタに通じる油路に連通する弁収容孔と、該弁収容孔内に摺動自在に収容された弁ピストンと、該弁収容孔内の前記閉鎖部材と前記弁ピストンとの間に介在されたコイルバネと、前記弁収容孔に形成されて前記弁ピストンによって開閉されるドレンポートとを備えるリリーフバルブと、前記閉鎖部材を貫通して延び、該閉鎖部材の外側から前記コイルバネのバネ力に抗して前記弁ピストンを牽引操作可能な牽引ロッドと、前記コイルバネのバネ力に抗して前記牽引ロッドを所定位置に保持することにより前記弁ピストンをドレン位置に保持可能な保持手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
前記弁ピストンに凹部が形成され、前記牽引ロッドの先端部が、前記弁ピストンの凹部に、前記弁ピストンの相対移動を許容しつつ抜脱不能に収容されていることが好ましい。
【0014】
さらに、前記牽引ロッドの先端部が、前記コイルバネより小さいバネ力の補助バネにより前記凹部の奥側に付勢されていることが好ましい。
【0015】
或いは、前記弁ピストンに貫通孔が形成され、前記牽引ロッドが前記弁ピストンの貫通孔を貫通し、該弁ピストンの受圧面に係止する係止部を該牽引ロッドの先端部に備えるようにしても良い。
【0016】
前記保持手段は、前記牽引ロッドと前記閉鎖部材とに係止する係止ピンを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、油圧回路の回路保護のために通常備えられているリリーフバルブに改良を加えることにより、リリーフバルブを外部からの操作で強制的にドレン位置に保持することができるので、オイルフィルタエレメント交換前にリリーバルブからオイルフィルタに通じる油路の油をオイルタンクに排出することで、従来の油路を変更することなく低コストで、オイルフィルタのオイル排出機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第1実施形態を示す縦断側面図である。
【
図3】本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第2実施形態を示す縦断側面図である。
【
図4】本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第3実施形態を示す縦断側面図である。
【
図5】上記第3実施形態の要部を拡大して示す縦断正面図である。
【
図6】本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第4実施形態を示す縦断面図である。
【
図7】本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第5実施形態を示し、
図9のVI−VI視から視た縦断面図である。
【
図8】
図7の他の作動状態の要部を拡大して示し、
図9のVII−VII視から視た横断平面図である。
【
図9】
図7のVIII−VIII視から閉鎖部材を見た部分断面正面図である。
【
図10】本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第6実施形態の要部を拡大して示し、
図11のIX−IXから視た縦断面図である。
【
図11】
図10のX−X視から閉鎖部材を見た部分断面正面図である。
【
図12】本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第7実施形態を示す縦断面図であり、(a)〜(c)は操作手順を示している。
【
図13】
図12の閉鎖部材を示し、(a)は側面図、(a)のb−b視から視た背面図である。
【
図14】従来のフォークリフトの油圧回路を概略的に示す油圧回路図である。
【
図15】従来のリリーフバルブの構造を示す縦断面図である。
【
図16】
図15のリリーフバルブの作動状態を示す縦断面図である。
【
図17】従来のリリーフバルブの取付位置を示すフォークリフト内部の側面図である。
【
図18】従来のリリーフバルブの他の取付位置を示すフォークリフト内部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の実施形態について、
図1〜
図13を参照して説明する。なお、従来技術を含め全実施形態において、同一又は類似の構成部分には同符号を付している。なお、下記説明において、
図14に示した従来の油圧回路を適宜参照する。
【0020】
図1は、本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第1実施形態を示している。リリーフバルブ1Aは、
図1に示すように、ケース120に形成された弁収容孔104cに摺動自在に収容された弁ピストン2Aと、弁収容孔104cの開口を閉じる閉鎖部材4Aと、弁収容孔104c内の弁ピストン2Aと閉鎖部材4Aとの間に収容され弁ピストン2Aを付勢するコイルバネ3と、弁収容孔104cに形成されて弁ピストン2Aによって開閉されるドレンポート109aとを備えている。弁ピストン2Aの受圧面2A1にかかる油圧が設定圧より小さいときは、弁ピストン2Aはコイルバネ3で押し付けられたままドレンポート109aを閉じてドレン油路109を断ち、受圧面2A1の油圧が設定圧より大きくなると、弁ピストン2Aはコイルバネ3のバネ力に抗して
図1の左方向に押され、弁ピストン2Aがドレン位置となり、圧力油の一部はドレンポート109aからドレン油路109を通ってオイルタンク100へ流れ、過度の圧力上昇を防止する。
【0021】
閉鎖部材4Aは、図示例ではプラグネジであるが、設定圧調節ネジとすることもできるし、或いは、
図2に示すようにケース120の外面にボルト等で固定されたプレートとすることもでき、弁収容孔104cの開口を閉じてコイルバネ3が当接し得るものであればよい。なお、閉鎖部材4Aとケース120との間にはガスケット等のオイルシール材121が介在される。
【0022】
閉鎖部材4Aにその軸方向に貫通する貫通孔4A1が形成されており、この貫通孔4A1を牽引ロッド5Aが貫通して延びている。閉鎖部材4Aの貫通孔4A1の内周面に形成された周溝6にOリング7が嵌着されており、Oリング7により牽引ロッド5Aは液密的に軸長さ方向へ摺動可能となっている。
【0023】
弁ピストン2Aのコイルバネ3当接面に凹部8が形成され、牽引ロッド5Aの先端部5A1が弁ピストン2の凹部8に収容されている。牽引ロッド5Aの先端部5A1は、鍔状に形成されている。牽引ロッド5Aの先端部5A1は、図示例では鍔状をしているが、割りピン等のピン状その他の形状であってもよい。
【0024】
牽引ロッド5Aの先端部5A1が、コイルバネ3より小さいバネ力の補助バネ9により凹部8の奥側に付勢されている。図示例では、弁ピストン2Aの凹部8の入口側内周面にスナップリング10が装着され、牽引ロッド5Aの鍔状をした先端部5A1とスナップリング10との間に両者に当接する補助バネ9が配置されている。スナップリング10と補助バネ9により、牽引ロッド5Aの先端部5A1は、凹部8から抜脱不能に収容されている。凹部8は、弁ピストン2Aが牽引ロッド5Aの先端部5A1に対して相対的に移動できる程度に、即ち
図1に示す状態で弁ピストン2Aが図の左方へ移動できる程度に、十分な奥行きを持って形成されている。
【0025】
牽引ロッド5Aは、リリーフバルブ1Aの外部から、コイルバネ3のバネ力に抗して弁ピストン2Aを牽引操作することにより、弁ピストン2Aをドレン位置(ドレンポート109aが開口する位置)に強制移動させることができる。ドレン位置に強制移動した弁ピストン2Aをその位置に保持するため、牽引ロッド5Aを所定位置に保持する保持手段12Aが備えられている。
【0026】
保持手段12Aは、牽引ロッド5Aと閉鎖部材4とに係止する係止ピン12aを備えることができる。係止ピン12aは、例えばベータピンや割りピンとすることができ、牽引ロッド5Aに設けたピン孔12bに挿すことにより、閉鎖部材4Aの外側面に係止して、コイルバネ3のバネ力に抗して牽引ロッド5Aを所定位置に保持し、弁ピストン2Aをドレン位置に保持することができる。
【0027】
図1において、係止ピン12aの一例としてのベータピンが、牽引ロッド5Aに形成されたピン孔13に挿通されているが、このピン孔13は、リリーフバルブ1Aの通常作動時に係止ピン12aを挿しておくためのピン孔である。
【0028】
牽引ロッド5Aの後端部にはスプリングピン14が挿しこまれるピン孔が形成されている。スプリングピン14は、牽引ロッド5Aから係止ピン12aを抜脱した際に、コイルバネ3の作用によって牽引ロッド5Aが閉鎖部材4Aの貫通孔4A1に引き込まれて埋没しないようにストッパーとしての働きする。ストッパーとして機能し得るものであれば、スプリングピンに限らず、鍔状部その他の形態とすることもできる。
【0029】
上記構成を有するオイルフィルタのオイル排出機構によれば、オイルフィルタ105(
図14)のフィルタエレメントを交換する場合、先ず、ポンプ102(
図14)を停止させ、牽引ロッド5Aを引っぱり、
図1の状態から牽引ロッド5Aを引き出し、ピン孔13に挿されている係止ピン12aを抜いて、引き出した牽引ロッド5Aのピン孔12bに係止ピン12aを挿せば、弁ピストン2Aがドレン位置に保持され、油が排出口109からオイルタンク100に排出される。従って、リリーフバルブ1Aの弁ピストン2Aと閉鎖部材4Aに変更を加え、牽引ロッド5Aを追加することにより、既存の油路を変更することなく、低コストでオイルフィルタのオイル排出機構を提供することができる。
【0030】
牽引ロッド5Aによる強制ドレン操作を行わない、リリーフバルブの通常作動状態(
図1の状態)では、弁ピストン2Aは、牽引ロッド5Aの先端部5A1に対して相対移動可能であるので、油圧に応じて
図1の(ストッパーピン108の左側で)左右方向に移動可能であり、通常のリリーフバルブとしての働きをする。また、補助バネ9を備えていることにより、リリーフバルブ1Aの通常作動状態時に油圧に応じて弁ピストン2Aが
図1の状態から左側に移動しても、牽引ロッド5Aは図の左側に動かず一定位置を保つことができる。従って、弁ピストン2Aが受圧面2A1に受ける油圧によって左右に動いても、牽引ロッド5Aは一定位置を保つことができる。
【0031】
図3は、本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第2実施形態を示している。第2実施形態のリリーフバルブ1Bは、弁ピストン2A内に第1実施形態で示した補助バネ9を備えていない点が上記第1実施形態と相違している。第2実施形態では、第1実施形態の補助バネ9を省略することによりコストを削減することができるが、リリーフバルブ1Bの通常作動時に弁ピストン2Aの動きによって牽引ロッド5Aも軸方向に前後動(図の左右方向の動き)する場合がある。
【0032】
図4及び
図5は、本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第3実施形態を示している。第3実施形態では、弁ピストン2Cに貫通孔2C1が形成され、牽引ロッド5Cが弁ピストン2Cの貫通孔2C1を貫通し、弁ピストン2Cの受圧面2C2に係止する係止部5C1を牽引ロッド5Cの先端部に備えている。貫通孔2C1は、牽引ロッド5Cとの間の隙間が出来るだけ小さくなるように設計される。係止部5C1は、牽引ロッド5Cにピン孔を形成してそのピン孔に挿着したスプリングピン等を充てることができる。また、コイルバネ3のバネ力に抗して牽引ロッド5Cを所定位置に保持することにより弁ピストン2Cをドレン位置に保持可能な保持手段12C(
図5)は、牽引ロッド5Cの後方部に周溝15を形成し、閉鎖部材4Cにボス部4C1を形成してそこにピン孔16を形成し、ベータピン(
図5参照)等の係止ピン17をピン孔16に挿して周溝15に係止させるようになっている。第1、第2実施形態と同様、牽引ロッド5Cの周溝18は、リリーフバルブ1Cの通常作動時に係止ピン17を留めておくための周溝である。第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態のストッパーピン108に代えて、牽引ロッド5Cの後端部に鍔状ヘッド5C2が形成されているが、鍔状ヘッド5C2に代えて割りピン等の他のストッパーを採用してもよい。
【0033】
図6は、本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第4実施形態を示している。第4実施形態では、コイルバネ3のバネ力に抗して牽引ロッド5Dを所定位置に保持することにより弁ピストン2Cをドレン位置に保持可能な保持手段12Dが、閉鎖部材4Dの貫通孔4D1に形成した雌螺子部19と、牽引ロッド5Dの後端部に形成された雄螺子部20とを備えている。リリーフバルブ1Dの強制ドレン時に、雄螺子部20を螺脱方向に回動させることにより、弁ピストン2Cをドレン位置に強制的に後退させることができる。
【0034】
図7〜
図9は、本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第5実施形態を示している。第5実施形態は、コイルバネ3のバネ力に抗して牽引ロッド5Eを所定位置に保持することにより弁ピストン2Eをドレン位置に保持可能な保持手段12Eが、上記第4実施形態と相違している。第5実施形態の保持手段12Eは、牽引ロッド5Eに軸直交方向に突出するように設けられたスプリングピン等の係止ピン21と、閉鎖部材4Eの外側面に形成されて係止ピン21が嵌る、深さの異なる2種類の線状の溝22(
図7)、23(
図8)と、を備えている。第5実施形態では、リリーフバルブ1Eの通常作動時は係止ピン21が深い方の溝22に係止している(
図7)。牽引ロッド5Eを牽引し、係止ピン21を溝22から引き出して、牽引ロッド5Eを軸回りに回転させて係止ピン21を浅い方の溝23に嵌めて係止させることにより(
図8)、弁ピストン2Cを簡単にドレン位置に保持できる。
【0035】
図10及び
図11は、本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第6実施形態を示している。第6実施形態は、保持手段12Fの構成要素である、閉鎖部材4Fの係止ピン21の嵌る溝24、25の形状が、上記第5実施形態と相異している。第6実施形態では、閉鎖部材4Fの溝は、深い方の溝24が浅い方の溝25より奥の側で貫通孔4F1の内周面に沿う円周溝24aと繋がっており、貫通孔4F1の浅い方の溝25が形成されている軸方向範囲に雌螺子部26が形成され、雌螺子部26に螺合する雄螺子部27が牽引ロッド5Fに形成されている。第6実施形態では、リリーフバルブの通常作動時は、係止ピン21が円周溝24a内にある。牽引ロッド5を軸回りに回転させて雌螺子部26から雄螺子部27を螺脱させてから、係止ピン21を深い方の溝24から抜脱し、牽引ロッド5の軸回りに回転(図示例では90°)を加えて、係止ピン21を浅い方の溝25に嵌めて係止することにより、図示していない弁ピストン2C(
図7参照)をドレン位置に保持できる。第6実施形態では、リリーフバルブの通常作動時は、牽引ロッド5Fが閉鎖部材4Fにネジ止めされているため、牽引ロッド5Fの動きを防止することができる。
【0036】
図12及び
図13は、本発明に係るオイルフィルタのオイル排出機構の第7実施形態を示している。第7実施形態は、保持手段12Gの構成要素である、閉鎖部材4Gに形成されている溝28の態様が、第6実施形態と異なる。第7実施形態では、溝28は閉鎖部材4Gの内側面に形成されており、係止ピン29も牽引ロッド5Gの後端から離れた位置に取り付けられている。係止ピン29が係止する溝28は、
図13に側面形状を示すように略鉤状をしている。第7実施形態ではリリーフバルブの通常作動時は係止ピン29が閉鎖部材4Gから離れた位置にある。
図12(a)〜(b)に順に示すように、牽引ロッド5Gの雄螺子部30を閉鎖部材4Gの雌螺子部31から螺脱し、さらに牽引ロッド5Gを引き出して係止ピン29が溝28の奥底28aに当たったところで牽引ロッド5を軸回りに回転させ(
図12(b))、断面略鉤状の溝28の先端部28bに係止させることにより(
図12(c))、弁ピストン2をドレン位置に保持することができる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更態様を採用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G リリーフバルブ
2A,2C 弁ピストン
2C1 貫通孔
3 コイルバネ
4A,4C,4D,4E,4F,4G 閉鎖部材
5A,5C,5D,5E,5F,5G 牽引ロッド
5C1 係止部
8 凹部
9 補助バネ
12A,12C,12D,12E,12F, 12G 保持手段
12a,17,21,29 係止ピン