特許第6053151号(P6053151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 綜合警備保障株式会社の特許一覧

特許6053151不正物体検知装置及び不正物体検知システム
<>
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000002
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000003
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000004
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000005
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000006
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000007
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000008
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000009
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000010
  • 特許6053151-不正物体検知装置及び不正物体検知システム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053151
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】不正物体検知装置及び不正物体検知システム
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   G07D9/00 461Z
   G07D9/00 436Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-57265(P2013-57265)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-182643(P2014-182643A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 久也
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−070476(JP,A)
【文献】 特開2010−170379(JP,A)
【文献】 特開2010−250711(JP,A)
【文献】 特開平07−049915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金自動預け払い機のカード挿入口近傍に不正に取り付けられた不正物体を検知する不正物体検知装置であって、
前記カード挿入口の近傍内部に設けられ、装置内部から該カード挿入口方向に超音波又は赤外線を送信するとともに、該送信した超音波又は赤外線の反射波又は反射光を受信する送受信手段と、
前記送受信手段による受信結果に応じて前記カード挿入口近傍に所在する物体を検知する物体検知手段と、
前記送受信手段により前記超音波又は赤外線を送信してから反射波又は反射光を受信するまでの時間差の変化量が所定の範囲内であるか否かに基づいて前記物体が動体であるか否かを判定する判定手段と、
前記物体検知手段により検知された物体が所定時間以上継続して所在し、かつ、前記判定手段により前記物体が動体ではないと判定された場合に前記物体を前記不正物体として検知する検知手段と
を備えたことを特徴とする不正物体検知装置。
【請求項2】
前記送受信手段は、前記現金自動預け払い機の前記カード挿入口の近傍内部に設けられ、該カード挿入口に隣接する装置前面の位置に設けられた孔を介して装置内部からカード挿入口方向に超音波又は赤外線を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の不正物体検知装置。
【請求項3】
前記物体検知手段により検知された物体までの距離を特定する距離特定手段をさらに備え、
前記検知手段は、前記距離特定手段により特定された距離が所定範囲内となる状態で前記所定時間以上継続して所在し、かつ、前記判定手段により動体ではないと判定された物体を前記不正物体として検知する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不正物体検知装置。
【請求項4】
前記物体検知手段は、所定の距離以内に所在する物体を検知し、
前記検知手段は、前記物体検知手段が前記所定時間以上継続して物体を検知し、かつ、前記判定手段により前記物体が動体ではないと判定された場合に当該物体を前記不正物体として検知する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不正物体検知装置。
【請求項5】
現金自動預け払い機のカード挿入口近傍に不正に取り付けられた不正物体を検知する不正物体検知システムであって、
前記カード挿入口の近傍内部に設けられ、装置内部から該カード挿入口方向に超音波又は赤外線を送信するとともに、該送信した超音波又は赤外線の反射波又は反射光を受信する送受信手段と、
前記送受信手段による受信結果に応じて前記カード挿入口近傍に所在する物体を検知する物体検知手段と、
前記送受信手段により前記超音波又は赤外線を送信してから反射波又は反射光を受信するまでの時間差の変化量が所定の範囲内であるか否かに基づいて前記物体が動体であるか否かを判定する判定手段と、
前記物体検知手段により検知された物体が所定時間以上継続して所在し、かつ、前記判定手段により前記物体が動体ではないと判定された場合に前記物体を前記不正物体として検知する検知手段とを有する不正物体検知装置と、
前記現金自動預け払い機又は前記現金自動預け払い機の操作者を撮像範囲に含む撮像装置と、
前記撮像装置による撮像結果を表示するモニタと、
前記不正物体検知装置により不正物体が検知された場合に、前記モニタによる確認を求める報知を管理者に対して行う報知手段と
を備えたことを特徴とする不正物体検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現金自動預け払い機のカード挿入口近傍に不正な物体が取り付けられたことを安定して検知することができる不正物体検知装置及び不正物体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関の店舗内には現金自動預け払い機(Automated Teller Machine 以下、「ATM」と言う)が設置されており、利用者は、金融機関の窓口に赴かなくとも、該ATMを用いて現金の預け入れ、現金の引き出し及び振込依頼等を行うことができる。最近では、金融機関の店舗だけではなく、コンビニエンスストア、空港等の交通機関及びオフィスビル等様々な場所にこのATMが広範に設置されつつある。
【0003】
このようにATMが普及するにつれて、ATMのカード挿入口の近傍にスキミング装置と呼ばれるリーダライタ装置を不正に設け、このスキミング装置によって銀行カードのカード番号等を読み取る不正が社会問題化しつつある。
【0004】
このため、かかるスキミング装置を用いた不正を防止する従来技術が知られている。例えば、ATMのカード挿入口近傍にスキミング装置が取り付けられたことを光学式近接センサにより検知するとともに、利用者、係員又はホストコンピュータに対してスキミング装置の存在を通知する技術が開示されている(例えば特許文献1,2参照。)。かかる従来技術によれば、カード挿入口近傍に物体が存在する場合には発光器から出射した光が物体で反射され受光器で受光するが、物体が存在しない場合には光が反射されず受光器で受光しない性質を利用し、所定レベル以上の光を受光器で受光するか否かにより物体が存在するか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−250711号公報
【特許文献2】特開2010−170379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術のものは、ATM自身が発光させているLEDや、ATMが設置されている室内の照明光や、外光などの光を受光して、物体が存在すると誤判定してしまう可能性があるという問題点がある。また、かかる誤判定を防止するためには、その仕組みが複雑化してしまうという問題点がある。
【0007】
このため、照明光等に起因する誤判定を招くことなく、いかに簡易かつ効率的にATMのカード挿入口の近傍にスキミング装置が取り付けられたか否かを検知するかが重要な課題となっている。特に、日常的に監視することができない場所にATMが設置された場合には、不正者が時間的な余裕を持ってスキミング装置を取り付けることができるため、不正者に簡単に対策を講じられるものであってはならない。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであって、ATMのカード挿入口近傍にスキミング装置等の不正な物体が取り付けられたことを安定して検知することができる不正物体検知装置及び不正物体検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、現金自動預け払い機のカード挿入口近傍に不正に取り付けられた不正物体を検知する不正物体検知装置であって、前記カード挿入口の近傍内部に設けられ、装置内部から該カード挿入口方向に超音波又は赤外線を送信するとともに、該送信した超音波又は赤外線の反射波又は反射光を受信する送受信手段と、前記送受信手段による受信結果に応じて前記カード挿入口近傍に所在する物体を検知する物体検知手段と、前記送受信手段により前記超音波又は赤外線を送信してから反射波又は反射光を受信するまでの時間差の変化量が所定の範囲内であるか否かに基づいて前記物体が動体であるか否かを判定する判定手段と、前記物体検知手段により検知された物体が所定時間以上継続して所在し、かつ、前記判定手段により前記物体が動体ではないと判定された場合に前記物体を前記不正物体として検知する検知手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記送受信手段は、前記現金自動預け払い機の前記カード挿入口の近傍内部に設けられ、該カード挿入口に隣接する装置前面の位置に設けられた孔を介して装置内部からカード挿入口方向に超音波又は赤外線を送信することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記物体検知手段により検知された物体までの距離を特定する距離特定手段をさらに備え、前記検知手段は、前記距離特定手段により特定された距離が所定範囲内となる状態で前記所定時間以上継続して所在し、かつ、前記判定手段により動体ではないと判定された物体を前記不正物体として検知することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記物体検知手段は、所定の距離以内に所在する物体を検知し、前記検知手段は、前記物体検知手段が前記所定時間以上継続して物体を検知し、かつ、前記判定手段により前記物体が動体ではないと判定された場合に当該物体を前記不正物体として検知することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、現金自動預け払い機のカード挿入口近傍に不正に取り付けられた不正物体を検知する不正物体検知システムであって、前記カード挿入口の近傍内部に設けられ、装置内部から該カード挿入口方向に超音波又は赤外線を送信するとともに、該送信した超音波又は赤外線の反射波又は反射光を受信する送受信手段と、前記送受信手段による受信結果に応じて前記カード挿入口近傍に所在する物体を検知する物体検知手段と、前記送受信手段により前記超音波又は赤外線を送信してから反射波又は反射光を受信するまでの時間差の変化量が所定の範囲内であるか否かに基づいて前記物体が動体であるか否かを判定する判定手段と、前記物体検知手段により検知された物体が所定時間以上継続して所在し、かつ、前記判定手段により前記物体が動体ではないと判定された場合に前記物体を前記不正物体として検知する検知手段とを有する不正物体検知装置と、前記現金自動預け払い機又は前記現金自動預け払い機の操作者を撮像範囲に含む撮像装置と、前記撮像装置による撮像結果を表示するモニタと、前記不正物体検知装置により不正物体が検知された場合に、前記モニタによる確認を求める報知を管理者に対して行う報知手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現金自動預け払い機のカード挿入口近傍にスキミング装置等の不正な物体が取り付けられたことを安定して検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、スキミング装置検知装置を設置したATMカード挿入口について説明するための説明図である。
図2図2は、スキミング装置検知装置を示すブロック図である。
図3図3は、スキミング装置が取り付けられていない状態での超音波パルスとエコーを模式的に示すタイムチャートである。
図4図4は、スキミング装置が取り付けられた状態を示す図1相当図である。
図5図5は、スキミング装置が取り付けられた状態での超音波パルスとエコーを模式的に示すタイムチャートである。
図6図6は、図2に示したプロセッサによるスキミング装置検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、実施例2に係るスキミング装置検知装置を示すブロック図である。
図8図8は、図7に示したプロセッサによるスキミング装置検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、実施例3に係るスキミング装置警戒システムを示すブロック図である。
図10図10は、メッセージ表示画面の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る不正物体検知装置及び不正物体検知システムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係るスキミング装置検知装置1は、ATMの内部に設けられる。ATMは、口座を識別する識別情報を記録したカードを受け付け、該カードから読み取った識別情報により口座を特定し、当該口座への預入、当該口座からの引出や振込等を行うことができる。
【0018】
ATMはカードを受け付けるためのカード挿入口を有しており、スキミング装置はこのカード挿入口の近傍に設置される。スキミング装置が設置されると、利用者がカード挿入口にカードを挿入したときにスキミング装置によって識別情報が読み取られる。そして、スキミング装置に読み取られた識別情報は、カードの複製などの不正に用いられるのである。
【0019】
本実施例1に係るスキミング装置検知装置1は、ATM内部のカード挿入口近傍に設けられ、ATM外部に向けて超音波を送信し、その反射波(エコー)を受信する。スキミング装置検知装置1は、受信したエコーによりカード挿入口の近傍に所在する物体を検知し、検知した物体が所定時間以上動いていない場合に、スキミング装置が取り付けられたと判定する。
【0020】
図1は、スキミング装置検知装置1を設置したATMカード挿入口について説明するための説明図である。図1(a)は、スキミング装置検知装置1を備えたATMのカード挿入口近傍を示す正面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A’断面図であり、図1(c)は、図1(a)におけるB−B’断面図である。
【0021】
図1(a)に示すように、ATMの前面パネルCには、カード挿入口Dおよび検知孔9が設けられている。また、図1(b)及び図1(c)に示すように、検知孔9の後方には、スキミング装置検知装置1が設置されている。また、カード挿入口Dの後方には、カードリーダユニットEが設置されている。スキミング装置検知装置1は、超音波振動子2と、制御回路3とからなる。
【0022】
次に、スキミング装置検知装置1の構成について説明する。図2は、スキミング装置検知装置1を示すブロック図である。図2に示すように、スキミング装置検知装置1は、超音波振動子2と、制御回路3とからなる。また、制御回路3は、トリガ回路4、送信回路5、受信回路6、計数回路7及びプロセッサ8を有する。
【0023】
トリガ回路4は、所定のトリガ間隔Tsでトリガ信号aを発生する回路である。送信回路5は、トリガ回路4からトリガ信号aが入力される毎に超音波振動子2を駆動して超音波パルスを送信させると共に、超音波パルスの出射完了時に送信完了信号bを出力する回路である。
【0024】
受信回路6は、超音波振動子2が受信したエコー(超音波パルスと同一周波数の超音波)と送信完了信号bとに応じて受信信号cを出力する回路である。具体的には、受信回路6は、送信回路5から送信完了信号bが入力された後の所定の受信期間Pr内に平均レベルが所定レベルhより大きいエコーが超音波振動子2で受信され、且つその後にエコーの平均レベルが所定レベルhより小さくなった時に受信信号cを出力する。
【0025】
計数回路7は、送信回路5から送信完了信号bが入力される毎に所定のクロック周波数のクロック信号を「0」からカウントアップする回路である。計数回路7がカウントアップした値である計数値Trは、超音波パルスの送信からエコー受信までの時間差、すなわち超音波パルスを反射した物体までの距離に対応する。
【0026】
プロセッサ8は、送信完了信号bと、計数回路7から読み込んだ計数値Trと、受信信号cとを用いてスキミング装置が取り付けられているか否かを判定し、検知信号を出力する。
【0027】
具体的には、プロセッサ8は、送信回路5から送信完了信号bが入力された後の所定の受信期間Pr内に受信信号cが入力された時、又は受信信号cが入力されずに受信期間Prが経過した時のいずれか早い方のタイミングで計数回路7の計数値Trを読み込む。
【0028】
プロセッサ8は、受信期間Pr内に受信信号cが入力された場合には、計数回路7の計数値Trが判定基準範囲内であるか、すなわち判定すべき距離範囲内からのエコーであるかを判定し、判定基準範囲内であるならば該計数値Trを記憶する。さらに、該計数値Trを以前に記憶した計数値Trと比較し、計数値Trの差が許容範囲内であるかを判定する。計数値Trの差が許容範囲内であることは、超音波パルスを反射した物体が動いていないことを意味する。プロセッサ8は、計数値Trの差が許容範囲内である場合には、検知回数をインクリメントする。
【0029】
プロセッサ8は、検知回数が判定回数以上となった場合、すなわち、所定の距離範囲内に物体が存在し、該物体が所定時間以上動いていない場合にスキミング装置が取り付けられていると判定し、検知信号を出力する。
【0030】
なお、受信信号cが入力されずに受信期間Prが経過した時には、プロセッサ8は、計数値Trの記憶及び検知回数をクリアする。また、プロセッサ8は、受信回路6で用いる所定レベルhを設定可能である。
【0031】
次に、スキミング装置が取り付けられていない状態(図1の状態)での超音波パルスとエコーについて説明する。図3は、スキミング装置が取り付けられていない状態での超音波パルスとエコーを模式的に示すタイムチャートである。
【0032】
図3において、超音波パルスが出射される間隔、すなわちトリガ間隔Tsは例えば100msである。また、超音波は、例えば20kHzの正弦波である。超音波パルスのエンベロープは例えば矩形波である。パルス幅wは、エンベロープに含まれる超音波の最初の立ち上がりから最後の立ち下がりまでの時間であり、例えば475μsである(=20kHzの超音波の9.5サイクルに相当する。)。エンベロープに含まれる超音波の最後の立ち下がり時に送信完了信号bが出力される。
【0033】
受信期間Prは、例えば送信完了信号bが入力されてから100μs経過時までの期間である。これは、超音波振動子2からの距離が約17mm以下の物体からのエコーの平均レベルが所定レベルhより小さくなる期間に相当する。クロック周波数が例えば1MHzなら、受信信号が入力されずに受信期間Prが経過した時の計数値Trは「100」になる。
【0034】
所定レベルhは、例えば超音波振動子2からの距離が40mmの物体からのエコーeの平均レベル程度に設定しておく。これにより、超音波振動子2からの距離が40mm以上の物体からのエコーを除去することが出来る。
【0035】
次に、ATMのカード挿入口Dの周囲を囲む形状のスキミング装置Zが取り付けられた状態について説明する。図4は、スキミング装置Zが取り付けられた状態を示す図1相当図である。
【0036】
図4に示すように、スキミング装置Zは、ATMの前面パネルCにカード挿入口Dの周囲を囲む形で取り付けられ、カード挿入口Dへのカード挿入は阻害しない。しかし、カード挿入口Dにカードを挿入したならば、カードから識別情報を不正に読み取って内部に記憶若しくは外部に送信する。
【0037】
このようにスキミング装置Zが取り付けられた状態では、スキミング装置Zにより検知孔9が被覆される。このため、スキミング装置検知装置1が超音波パルスを送信すると、スキミング装置Zにより反射されたエコーが受信されることとなる。
【0038】
次に、スキミング装置取り付けられた状態(図4の状態)での超音波パルスとエコーについて説明する。図5は、スキミング装置Zが取り付けられた状態での超音波パルスとエコーを模式的に示すタイムチャートである。
【0039】
スキミング装置Zが取り付けられた状態では、計数値Trは、受信期間Prよりも小さくなる。例えば超音波振動子2からスキミング装置Zまでの距離が5mm〜10mmとすると、エンベロープに含まれる超音波の最後の立ち下がり時(=送信完了信号bが入力された時)から29μs〜58μs経過時に受信信号が出力され、計数値Trは「29〜58」になる。ただし、実際には、平均レベルvを基に受信信号が出力されるため、計数値Trは少しずれる。そこで、判定基準範囲を例えば「20〜80」に設定し、計数値Trがこの判定基準範囲内ならスキミング装置Zが設置されていると判定すればよい。
【0040】
次に、図2に示したプロセッサ8によるスキミング装置検知処理の処理手順について説明する。図6は、図2に示したプロセッサ8によるスキミング装置検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0041】
まず、プロセッサ8は、計数値Trの記憶及び検知回数をクリアすることで初期化を行う(ステップS1)。
【0042】
ステップS1の後、プロセッサ8は、送信回路5から送信完了信号bが入力されるのを待つ(ステップS2)。送信完了信号bが入力されたならば(ステップS2;Yes)、プロセッサ8は、受信回路6から受信信号cが入力されたか否かを判定する(ステップS3)。
【0043】
受信信号cが入力されていなければ(ステップS3;No)、プロセッサ8は、受信期間Prが経過したか否かを判定する(ステップS4)。受信期間Prが経過していなければ(ステップS4;No)、プロセッサ8は、ステップS3に移行し、受信信号cが入力されたか否かを判定する。
【0044】
一方、受信信号cが入力されないまま受信期間Prが経過したならば(ステップS4;Yes)、スキミング装置Zが設置されていないと判定できるので、プロセッサ8は、ステップS1に移行し、計数値Trの記憶及び検知回数をクリアすることで初期化を行う。
【0045】
受信信号cが入力されたならば(ステップS3;Yes)、プロセッサ8は、計数回路7から計数値Trを読み込む(ステップS5)。プロセッサ8は、読み込んだ計数値Trが判定基準範囲内か否かを判定する(ステップS6)。読み込んだ計数値Trが判定基準範囲内でなければ(ステップS6;No)、スキミング装置Zが設置されていないと判定できるので、プロセッサ8は、ステップS1に移行し、計数値Trの記憶及び検知回数をクリアすることで初期化を行う。
【0046】
読み込んだ計数値Trが判定基準範囲内であるならば(ステップS6;Yes)、プロセッサ8は、読み込んだ計数値Trを現在時刻に関連付けて記憶する(ステップS7)。その後、プロセッサ8は、現在時刻から所定の比較時間(例えば3秒)以前に記憶した計数値Trが存在するか否かを判定する(ステップS8)。現在時刻から所定の比較時間以前に記憶した計数値Trが存在しなければ(ステップS8;No)、検知した物体が動いているか否かを判断するデータが無いので、プロセッサ8は、ステップS2に移行する。
【0047】
現在時刻から所定の比較時間以前に記憶した計数値Trが存在するならば(ステップS8;Yes)、プロセッサ8は、検知した物体が動いているか否かを判定する。具体的には、比較時間以前に記憶した計数値Trと最新の計数値Trの差が許容範囲(例えば±10)外であれば(ステップS9;No)、検知した物体が動いているのでスキミング装置Zではないと判定し、プロセッサ8は、ステップS1に戻る。
【0048】
一方、所定の比較時間以前に記憶した計数値Trと最新の計数値Trの差が許容範囲内であるならば(ステップS9;Yes)、プロセッサ8は、検知した物体が動いていないと判定し、検知回数を1だけ加算(インクリメント)する(ステップS10)。
【0049】
ステップS10の後、プロセッサ8は、検知回数が所定の判定回数(例えば10回)に達したか否かを判定する(ステップS11)。検知回数が所定の判定回数未満であれば(ステップS11;No)、プロセッサ8は、スキミング装置Zと判定するデータが不十分としてステップS2に移行する。そして、検知回数が所定の判定回数に達したならば(ステップS11;Yes)、プロセッサ8は、検知した物体が動いていないのでスキミング装置Zと判定し、検知信号を出力して(ステップS12)、処理を終了する。
【0050】
上述してきたように、本実施例1にかかるスキミング装置検知装置1によれば、超音波センサを用いてエコーのレベルと時間の2つのパラメータを用いて動かない物体が存在するか否かを検知するので、光学センサよりも安定に検知することが出来る。従って、ATMのカード挿入口Dの近傍にスキミング装置Zが取り付けられたことを安定して検知することが出来る。
【実施例2】
【0051】
上記実施例1では、超音波パルスの送信からエコー受信までの時間差に対応する計数値を用い、略同一の距離に所定時間以上存在する物体をスキミング装置として検知する構成について説明を行ったが、所定の距離範囲内に所定時間以上存在する物体をスキミング装置として検知することとすれば、より簡易な構成でスキミング装置を検知することが可能である。本実施例2では、所定の距離範囲内に所定時間以上存在する物体をスキミング装置として検知するスキミング装置検知装置について説明する。
【0052】
図7は、実施例2に係るスキミング装置検知装置1’を示すブロック図である。図2に示すように、スキミング装置検知装置1’は、計数回路7を有さない点が図2に示したスキミング装置検知装置1と異なり、またプロセッサ8’の動作が図2に示したプロセッサ8と異なる。その他の構成及び動作は図2に示したスキミング装置検知装置1と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図7に示すプロセッサ8’は、送信回路5が出力した送信完了信号bと、受信回路6が出力した受信信号cとを用いてスキミング装置が取り付けられているか否かを判定し、検知信号を出力する。
【0054】
具体的には、プロセッサ8’は、送信回路5から送信完了信号bが入力された後の所定の受信期間Pr内に受信信号cが入力された時に、検知回数をインクリメントする。そして、検知回数が判定回数以上となった場合、すなわち、所定の距離範囲内に所定時間以上物体が存在する場合にスキミング装置が取り付けられていると判定し、検知信号を出力する。なお、受信信号cが入力されずに受信期間Prが経過した時には、プロセッサ8’は、検知回数をクリアする。
【0055】
次に、図7に示したプロセッサ8’によるスキミング装置検知処理の処理手順について説明する。図8は、図7に示したプロセッサ8’によるスキミング装置検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0056】
まず、プロセッサ8’は、検知回数をクリアすることで初期化を行う(ステップS1’)。ステップS1’の後、プロセッサ8’は、送信回路5から送信完了信号bが入力されるのを待つ(ステップS2)。送信完了信号bが入力されたならば(ステップS2;Yes)、プロセッサ8’は、受信回路6から受信信号cが入力されたか否かを判定する(ステップS3)。
【0057】
受信信号cが入力されていなければ(ステップS3;No)、プロセッサ8’は、受信期間Prが経過したか否かを判定する(ステップS4)。受信期間Prが経過していなければ(ステップS4;No)、プロセッサ8’は、ステップS3に移行し、受信信号cが入力されたか否かを判定する。
【0058】
一方、受信信号cが入力されないまま受信期間Prが経過したならば(ステップS4;Yes)、スキミング装置Zが設置されていないと判定できるので、プロセッサ8’は、ステップS1’に移行し、検知回数をクリアすることで初期化を行う。
【0059】
受信信号cが入力されたならば(ステップS3;Yes)、プロセッサ8’は、検知回数を1だけ加算(インクリメント)する(ステップS10)。ステップS10の後、プロセッサ8’は、検知回数が所定の判定回数(例えば10回)に達したか否かを判定する(ステップS11)。検知回数が所定の判定回数未満であれば(ステップS11;No)、プロセッサ8’は、スキミング装置Zと判定するデータが不十分としてステップS2に移行する。そして、検知回数が所定の判定回数に達したならば(ステップS11;Yes)、プロセッサ8’は、検知した物体が動いていないのでスキミング装置Zと判定し、検知信号を出力して(ステップS12)、処理を終了する。
【0060】
上述してきたように、本実施例2にかかるスキミング装置検知装置1’によれば、超音波センサを用いてエコーのレベルと時間の2つのパラメータを用いて物体が存在するか否かを検知するので、光学センサよりも安定に検知することが出来る。従って、ATMのカード挿入口Dの近傍にスキミング装置Zが取り付けられたことを安定して検知することが出来る。さらに、計数回路7が不要であるために、装置を小型化することができ、また低コストで製造可能である。
【0061】
なお、上記実施例1及び2では、検知孔9を設け、検知孔9から超音波の送受信を行なう構成を例示したが、検知孔9を設けず、カード挿入口Dを検知孔として利用してもよい。この場合、カード挿入の邪魔にならないように且つカード挿入口Dの近傍の物体を検知できるように、カード挿入口Dの斜め上や斜め下に超音波センサを設置し、カード挿入口Dを斜めに通過するように超音波を送信すればよい。
【0062】
また、上記実施例1及び2では、超音波パルスを送信し、エコーを受信して物体を検知する構成を例に説明を行ったが、赤外線を送信し、その反射光を受信して物体を検知してもよい。超音波に代えて赤外線を用いる場合であっても、装置構成並びに動作は同様のものを用いることができる。
【実施例3】
【0063】
本実施例3では、スキミング装置警戒システムについて説明する。図9は、実施例3に係るスキミング装置警戒システム100を示すブロック図である。図9に示すスキミング装置警戒システム100は、ATM10と、ATM10のカード挿入口近傍に動かない物体が存在することを検知したときに検知信号を出力する物体検知装置11と、ATM10を操作する人を撮影しうるカメラ12(これはATM10の内部に設置してもよい。)またはATM10を撮影しうるカメラ(これはATM10の外部に設置する。)12と、カメラ12で撮影した画像を表示するモニタ13と、検知信号が出力されたときにATM10を操作する人が存在するか否か又はATM10に異常がないか否かをモニタ13で確認すべきことをモニタ13の管理者Yに報知する報知装置14とを具備している。
【0064】
ATM10と、物体検知装置11と、カメラ12は、ATM室Fに設置されている。ATM10は、通信回線Gを介して、銀行システムHに接続されている。物体検知装置11が出力する検知信号は、通信回線Gを介して、報知装置14に送られる。カメラ12が出力する映像信号は、通信回線Gを介して、モニタ13に送られる。
【0065】
物体検知装置11は、本発明にかかるスキミング装置検知装置1または1’でもよいし、特許文献1,2に記載された光学式センサを用いた物体検知装置でもよい。
【0066】
モニタ13と、報知装置14は、ATM室Fから離れた場所にあるモニタ室Jに設置されている。モニタ室Jには、ATM10に異常があったことを銀行システムHに通知するための通知装置15も設置されている。
【0067】
図10は、メッセージ表示画面の例示図である。図10に示すように、ATM10に異常がないか否かをモニタ13で確認すべきことをモニタ13の管理者Yに画面で報知している。音声を併用して報知するのが好ましい。
【0068】
管理者Yは、モニタ13を見て、ATM10を操作する人が存在するか否か、ATM10に異常がないか否か、を確認する。そして、ATM10を操作する人が挙動不審であったり、ATM10の異常を発見したら、通知装置15により、ATM10に異常があることを銀行システムHに通知する。
【0069】
上述してきたように、本実施例3にかかるスキミング装置警戒システム100によれば、スキミング装置を取り付ける者やスキミング装置を遅滞なく発見できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明に係る不正物体検知装置及び不正物体検知システムは、スキミング装置がATMに取り付けられたことを検知するのに利用することが出来る。
【符号の説明】
【0071】
1、1’ スキミング装置検知装置
2 超音波振動子
3 制御回路
4 トリガ回路
5 送信回路
6 受信回路
7 計数回路
8、8’ プロセッサ
9 検知孔
10 ATM
11 物体検知装置
12 カメラ
13 モニタ
14 報知装置
15 通知装置
100 スキミング装置警戒システム
D カード挿入口
G 通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10