【実施例1】
【0017】
実施例1に係るスキミング装置検知装置1は、ATMの内部に設けられる。ATMは、口座を識別する識別情報を記録したカードを受け付け、該カードから読み取った識別情報により口座を特定し、当該口座への預入、当該口座からの引出や振込等を行うことができる。
【0018】
ATMはカードを受け付けるためのカード挿入口を有しており、スキミング装置はこのカード挿入口の近傍に設置される。スキミング装置が設置されると、利用者がカード挿入口にカードを挿入したときにスキミング装置によって識別情報が読み取られる。そして、スキミング装置に読み取られた識別情報は、カードの複製などの不正に用いられるのである。
【0019】
本実施例1に係るスキミング装置検知装置1は、ATM内部のカード挿入口近傍に設けられ、ATM外部に向けて超音波を送信し、その反射波(エコー)を受信する。スキミング装置検知装置1は、受信したエコーによりカード挿入口の近傍に所在する物体を検知し、検知した物体が所定時間以上動いていない場合に、スキミング装置が取り付けられたと判定する。
【0020】
図1は、スキミング装置検知装置1を設置したATMカード挿入口について説明するための説明図である。
図1(a)は、スキミング装置検知装置1を備えたATMのカード挿入口近傍を示す正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA−A’断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)におけるB−B’断面図である。
【0021】
図1(a)に示すように、ATMの前面パネルCには、カード挿入口Dおよび検知孔9が設けられている。また、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、検知孔9の後方には、スキミング装置検知装置1が設置されている。また、カード挿入口Dの後方には、カードリーダユニットEが設置されている。スキミング装置検知装置1は、超音波振動子2と、制御回路3とからなる。
【0022】
次に、スキミング装置検知装置1の構成について説明する。
図2は、スキミング装置検知装置1を示すブロック図である。
図2に示すように、スキミング装置検知装置1は、超音波振動子2と、制御回路3とからなる。また、制御回路3は、トリガ回路4、送信回路5、受信回路6、計数回路7及びプロセッサ8を有する。
【0023】
トリガ回路4は、所定のトリガ間隔Tsでトリガ信号aを発生する回路である。送信回路5は、トリガ回路4からトリガ信号aが入力される毎に超音波振動子2を駆動して超音波パルスを送信させると共に、超音波パルスの出射完了時に送信完了信号bを出力する回路である。
【0024】
受信回路6は、超音波振動子2が受信したエコー(超音波パルスと同一周波数の超音波)と送信完了信号bとに応じて受信信号cを出力する回路である。具体的には、受信回路6は、送信回路5から送信完了信号bが入力された後の所定の受信期間Pr内に平均レベルが所定レベルhより大きいエコーが超音波振動子2で受信され、且つその後にエコーの平均レベルが所定レベルhより小さくなった時に受信信号cを出力する。
【0025】
計数回路7は、送信回路5から送信完了信号bが入力される毎に所定のクロック周波数のクロック信号を「0」からカウントアップする回路である。計数回路7がカウントアップした値である計数値Trは、超音波パルスの送信からエコー受信までの時間差、すなわち超音波パルスを反射した物体までの距離に対応する。
【0026】
プロセッサ8は、送信完了信号bと、計数回路7から読み込んだ計数値Trと、受信信号cとを用いてスキミング装置が取り付けられているか否かを判定し、検知信号を出力する。
【0027】
具体的には、プロセッサ8は、送信回路5から送信完了信号bが入力された後の所定の受信期間Pr内に受信信号cが入力された時、又は受信信号cが入力されずに受信期間Prが経過した時のいずれか早い方のタイミングで計数回路7の計数値Trを読み込む。
【0028】
プロセッサ8は、受信期間Pr内に受信信号cが入力された場合には、計数回路7の計数値Trが判定基準範囲内であるか、すなわち判定すべき距離範囲内からのエコーであるかを判定し、判定基準範囲内であるならば該計数値Trを記憶する。さらに、該計数値Trを以前に記憶した計数値Trと比較し、計数値Trの差が許容範囲内であるかを判定する。計数値Trの差が許容範囲内であることは、超音波パルスを反射した物体が動いていないことを意味する。プロセッサ8は、計数値Trの差が許容範囲内である場合には、検知回数をインクリメントする。
【0029】
プロセッサ8は、検知回数が判定回数以上となった場合、すなわち、所定の距離範囲内に物体が存在し、該物体が所定時間以上動いていない場合にスキミング装置が取り付けられていると判定し、検知信号を出力する。
【0030】
なお、受信信号cが入力されずに受信期間Prが経過した時には、プロセッサ8は、計数値Trの記憶及び検知回数をクリアする。また、プロセッサ8は、受信回路6で用いる所定レベルhを設定可能である。
【0031】
次に、スキミング装置が取り付けられていない状態(
図1の状態)での超音波パルスとエコーについて説明する。
図3は、スキミング装置が取り付けられていない状態での超音波パルスとエコーを模式的に示すタイムチャートである。
【0032】
図3において、超音波パルスが出射される間隔、すなわちトリガ間隔Tsは例えば100msである。また、超音波は、例えば20kHzの正弦波である。超音波パルスのエンベロープは例えば矩形波である。パルス幅wは、エンベロープに含まれる超音波の最初の立ち上がりから最後の立ち下がりまでの時間であり、例えば475μsである(=20kHzの超音波の9.5サイクルに相当する。)。エンベロープに含まれる超音波の最後の立ち下がり時に送信完了信号bが出力される。
【0033】
受信期間Prは、例えば送信完了信号bが入力されてから100μs経過時までの期間である。これは、超音波振動子2からの距離が約17mm以下の物体からのエコーの平均レベルが所定レベルhより小さくなる期間に相当する。クロック周波数が例えば1MHzなら、受信信号が入力されずに受信期間Prが経過した時の計数値Trは「100」になる。
【0034】
所定レベルhは、例えば超音波振動子2からの距離が40mmの物体からのエコーeの平均レベル程度に設定しておく。これにより、超音波振動子2からの距離が40mm以上の物体からのエコーを除去することが出来る。
【0035】
次に、ATMのカード挿入口Dの周囲を囲む形状のスキミング装置Zが取り付けられた状態について説明する。
図4は、スキミング装置Zが取り付けられた状態を示す
図1相当図である。
【0036】
図4に示すように、スキミング装置Zは、ATMの前面パネルCにカード挿入口Dの周囲を囲む形で取り付けられ、カード挿入口Dへのカード挿入は阻害しない。しかし、カード挿入口Dにカードを挿入したならば、カードから識別情報を不正に読み取って内部に記憶若しくは外部に送信する。
【0037】
このようにスキミング装置Zが取り付けられた状態では、スキミング装置Zにより検知孔9が被覆される。このため、スキミング装置検知装置1が超音波パルスを送信すると、スキミング装置Zにより反射されたエコーが受信されることとなる。
【0038】
次に、スキミング装置
が取り付け
られた状態(
図4の状態)での超音波パルスとエコーについて説明する。
図5は、スキミング装置Zが取り付けられた状態での超音波パルスとエコーを模式的に示すタイムチャートである。
【0039】
スキミング装置Zが取り付けられた状態では、計数値Trは、受信期間Prよりも小さくなる。例えば超音波振動子2からスキミング装置Zまでの距離が5mm〜10mmとすると、エンベロープに含まれる超音波の最後の立ち下がり時(=送信完了信号bが入力された時)から29μs〜58μs経過時に受信信号が出力され、計数値Trは「29〜58」になる。ただし、実際には、平均レベルvを基に受信信号が出力されるため、計数値Trは少しずれる。そこで、判定基準範囲を例えば「20〜80」に設定し、計数値Trがこの判定基準範囲内ならスキミング装置Zが設置されていると判定すればよい。
【0040】
次に、
図2に示したプロセッサ8によるスキミング装置検知処理の処理手順について説明する。
図6は、
図2に示したプロセッサ8によるスキミング装置検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0041】
まず、プロセッサ8は、計数値Trの記憶及び検知回数をクリアすることで初期化を行う(ステップS1)。
【0042】
ステップS1の後、プロセッサ8は、送信回路5から送信完了信号bが入力されるのを待つ(ステップS2)。送信完了信号bが入力されたならば(ステップS2;Yes)、プロセッサ8は、受信回路6から受信信号cが入力されたか否かを判定する(ステップS3)。
【0043】
受信信号cが入力されていなければ(ステップS3;No)、プロセッサ8は、受信期間Prが経過したか否かを判定する(ステップS4)。受信期間Prが経過していなければ(ステップS4;No)、プロセッサ8は、ステップS3に移行し、受信信号cが入力されたか否かを判定する。
【0044】
一方、受信信号cが入力されないまま受信期間Prが経過したならば(ステップS4;Yes)、スキミング装置Zが設置されていないと判定できるので、プロセッサ8は、ステップS1に移行し、計数値Trの記憶及び検知回数をクリアすることで初期化を行う。
【0045】
受信信号cが入力されたならば(ステップS3;Yes)、プロセッサ8は、計数回路7から計数値Trを読み込む(ステップS5)。プロセッサ8は、読み込んだ計数値Trが判定基準範囲内か否かを判定する(ステップS6)。読み込んだ計数値Trが判定基準範囲内でなければ(ステップS6;No)、スキミング装置Zが設置されていないと判定できるので、プロセッサ8は、ステップS1に移行し、計数値Trの記憶及び検知回数をクリアすることで初期化を行う。
【0046】
読み込んだ計数値Trが判定基準範囲内であるならば(ステップS6;Yes)、プロセッサ8は、読み込んだ計数値Trを現在時刻に関連付けて記憶する(ステップS7)。その後、プロセッサ8は、現在時刻から所定の比較時間(例えば3秒)以前に記憶した計数値Trが存在するか否かを判定する(ステップS8)。現在時刻から所定の比較時間以前に記憶した計数値Trが存在しなければ(ステップS8;No)、検知した物体が動いているか否かを判断するデータが無いので、プロセッサ8は、ステップS2に移行する。
【0047】
現在時刻から所定の比較時間以前に記憶した計数値Trが存在するならば(ステップS8;Yes)、プロセッサ8は、検知した物体が動いているか否かを判定する。具体的には、比較時間以前に記憶した計数値Trと最新の計数値Trの差が許容範囲(例えば±10)外であれば(ステップS9;No)、検知した物体が動いているのでスキミング装置Zではないと判定し、プロセッサ8は、ステップS1に戻る。
【0048】
一方、所定の比較時間以前に記憶した計数値Trと最新の計数値Trの差が許容範囲内であるならば(ステップS9;Yes)、プロセッサ8は、検知した物体が動いていないと判定し、検知回数を1だけ加算(インクリメント)する(ステップS10)。
【0049】
ステップS10の後、プロセッサ8は、検知回数が所定の判定回数(例えば10回)に達したか否かを判定する(ステップS11)。検知回数が所定の判定回数未満であれば(ステップS11;No)、プロセッサ8は、スキミング装置Zと判定するデータが不十分としてステップS2に移行する。そして、検知回数が所定の判定回数に達したならば(ステップS11;Yes)、プロセッサ8は、検知した物体が動いていないのでスキミング装置Zと判定し、検知信号を出力して(ステップS12)、処理を終了する。
【0050】
上述してきたように、本実施例1にかかるスキミング装置検知装置1によれば、超音波センサを用いてエコーのレベルと時間の2つのパラメータを用いて動かない物体が存在するか否かを検知するので、光学センサよりも安定に検知することが出来る。従って、ATMのカード挿入口Dの近傍にスキミング装置Zが取り付けられたことを安定して検知することが出来る。
【実施例2】
【0051】
上記実施例1では、超音波パルスの送信からエコー受信までの時間差に対応する計数値を用い、略同一の距離に所定時間以上存在する物体をスキミング装置として検知する構成について説明を行ったが、所定の距離範囲内に所定時間以上存在する物体をスキミング装置として検知することとすれば、より簡易な構成でスキミング装置を検知することが可能である。本実施例2では、所定の距離範囲内に所定時間以上存在する物体をスキミング装置として検知するスキミング装置検知装置について説明する。
【0052】
図7は、実施例2に係るスキミング装置検知装置1’を示すブロック図である。
図2に示すように、スキミング装置検知装置1’は、計数回路7を有さない点が
図2に示したスキミング装置検知装置1と異なり、またプロセッサ8’の動作が
図2に示したプロセッサ8と異なる。その他の構成及び動作は
図2に示したスキミング装置検知装置1と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図7に示すプロセッサ8’は、送信回路5が出力した送信完了信号bと、受信回路6が出力した受信信号cとを用いてスキミング装置が取り付けられているか否かを判定し、検知信号を出力する。
【0054】
具体的には、プロセッサ8’は、送信回路5から送信完了信号bが入力された後の所定の受信期間Pr内に受信信号cが入力された時に、検知回数をインクリメントする。そして、検知回数が判定回数以上となった場合、すなわち、所定の距離範囲内に所定時間以上物体が存在する場合にスキミング装置が取り付けられていると判定し、検知信号を出力する。なお、受信信号cが入力されずに受信期間Prが経過した時には、プロセッサ8’は、検知回数をクリアする。
【0055】
次に、
図7に示したプロセッサ8’によるスキミング装置検知処理の処理手順について説明する。
図8は、
図7に示したプロセッサ8’によるスキミング装置検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0056】
まず、プロセッサ8’は、検知回数をクリアすることで初期化を行う(ステップS1’)。ステップS1’の後、プロセッサ8’は、送信回路5から送信完了信号bが入力されるのを待つ(ステップS2)。送信完了信号bが入力されたならば(ステップS2;Yes)、プロセッサ8’は、受信回路6から受信信号cが入力されたか否かを判定する(ステップS3)。
【0057】
受信信号cが入力されていなければ(ステップS3;No)、プロセッサ8’は、受信期間Prが経過したか否かを判定する(ステップS4)。受信期間Prが経過していなければ(ステップS4;No)、プロセッサ8’は、ステップS3に移行し、受信信号cが入力されたか否かを判定する。
【0058】
一方、受信信号cが入力されないまま受信期間Prが経過したならば(ステップS4;Yes)、スキミング装置Zが設置されていないと判定できるので、プロセッサ8’は、ステップS1’に移行し、検知回数をクリアすることで初期化を行う。
【0059】
受信信号cが入力されたならば(ステップS3;Yes)、プロセッサ8’は、検知回数を1だけ加算(インクリメント)する(ステップS10)。ステップS10の後、プロセッサ8’は、検知回数が所定の判定回数(例えば10回)に達したか否かを判定する(ステップS11)。検知回数が所定の判定回数未満であれば(ステップS11;No)、プロセッサ8’は、スキミング装置Zと判定するデータが不十分としてステップS2に移行する。そして、検知回数が所定の判定回数に達したならば(ステップS11;Yes)、プロセッサ8’は、検知した物体が動いていないのでスキミング装置Zと判定し、検知信号を出力して(ステップS12)、処理を終了する。
【0060】
上述してきたように、本実施例2にかかるスキミング装置検知装置1’によれば、超音波センサを用いてエコーのレベルと時間の2つのパラメータを用いて物体が存在するか否かを検知するので、光学センサよりも安定に検知することが出来る。従って、ATMのカード挿入口Dの近傍にスキミング装置Zが取り付けられたことを安定して検知することが出来る。さらに、計数回路7が不要であるために、装置を小型化することができ、また低コストで製造可能である。
【0061】
なお、上記実施例1及び2では、検知孔9を設け、検知孔9から超音波の送受信を行なう構成を例示したが、検知孔9を設けず、カード挿入口Dを検知孔として利用してもよい。この場合、カード挿入の邪魔にならないように且つカード挿入口Dの近傍の物体を検知できるように、カード挿入口Dの斜め上や斜め下に超音波センサを設置し、カード挿入口Dを斜めに通過するように超音波を送信すればよい。
【0062】
また、上記実施例1及び2では、超音波パルスを送信し、エコーを受信して物体を検知する構成を例に説明を行ったが、赤外線を送信し、その反射光を受信して物体を検知してもよい。超音波に代えて赤外線を用いる場合であっても、装置構成並びに動作は同様のものを用いることができる。
【実施例3】
【0063】
本実施例3では、スキミング装置警戒システムについて説明する。
図9は、実施例3に係るスキミング装置警戒システム100を示すブロック図である。
図9に示すスキミング装置警戒システム100は、ATM10と、ATM10のカード挿入口近傍に動かない物体が存在することを検知したときに検知信号を出力する物体検知装置11と、ATM10を操作する人を撮影しうるカメラ12(これはATM10の内部に設置してもよい。)またはATM10を撮影しうるカメラ(これはATM10の外部に設置する。)12と、カメラ12で撮影した画像を表示するモニタ13と、検知信号が出力されたときにATM10を操作する人が存在するか否か又はATM10に異常がないか否かをモニタ13で確認すべきことをモニタ13の管理者Yに報知する報知装置14とを具備している。
【0064】
ATM10と、物体検知装置11と、カメラ12は、ATM室Fに設置されている。ATM10は、通信回線Gを介して、銀行システムHに接続されている。物体検知装置11が出力する検知信号は、通信回線Gを介して、報知装置14に送られる。カメラ12が出力する映像信号は、通信回線Gを介して、モニタ13に送られる。
【0065】
物体検知装置11は、本発明にかかるスキミング装置検知装置1または1’でもよいし、特許文献1,2に記載された光学式センサを用いた物体検知装置でもよい。
【0066】
モニタ13と、報知装置14は、ATM室Fから離れた場所にあるモニタ室Jに設置されている。モニタ室Jには、ATM10に異常があったことを銀行システムHに通知するための通知装置15も設置されている。
【0067】
図10は、メッセージ表示画面の例示図である。
図10に示すように、ATM10に異常がないか否かをモニタ13で確認すべきことをモニタ13の管理者Yに画面で報知している。音声を併用して報知するのが好ましい。
【0068】
管理者Yは、モニタ13を見て、ATM10を操作する人が存在するか否か、ATM10に異常がないか否か、を確認する。そして、ATM10を操作する人が挙動不審であったり、ATM10の異常を発見したら、通知装置15により、ATM10に異常があることを銀行システムHに通知する。
【0069】
上述してきたように、本実施例3にかかるスキミング装置警戒システム100によれば、スキミング装置を取り付ける者やスキミング装置を遅滞なく発見できる。