特許第6053174号(P6053174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053174
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ゴムクローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   B62D55/253 C
   B62D55/253 A
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-230962(P2013-230962)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-89767(P2015-89767A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】石原 和真
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−088664(JP,A)
【文献】 特開2007−022304(JP,A)
【文献】 特開2004−330830(JP,A)
【文献】 特開2007−210447(JP,A)
【文献】 米国特許第03250577(US,A)
【文献】 特開2006−117134(JP,A)
【文献】 特開2013−086640(JP,A)
【文献】 特開2014−015156(JP,A)
【文献】 実開平01−150183(JP,U)
【文献】 特開平06−286675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 41/00−67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製の無端帯と、
前記無端帯の外周面に形成されるゴム製のラグと、
前記無端帯の内周面に形成され、前記無端帯への駆動力の伝達及び前記無端帯の案内に用いられるゴム製の突起部と、
前記突起部内に設けられる補強部材と、
を具備するゴムクローラであって、
前記補強部材は、
前記無端帯の幅方向に延びるように配置され、
前記幅方向から見た断面において、その外形が前記突起部の外形に沿うように形成され、
前記補強部材の表面のうち、前記突起部内に位置する部分には、凹部及び/又は凸部が形成され、
前記凹部及び/又は凸部のうち少なくとも1つは、
前記補強部材の表面から、当該補強部材の表面に対して垂直な方向とは異なる方向に向かって延びるように形成される、
ゴムクローラ。
【請求項2】
前記凹部及び/又は凸部は、
第一の方向に向かって延びるように形成される第一の凹部及び/又は凸部と、
前記第一の方向と異なる第二の方向に向かって延びるように形成される第二の凹部及び/又は凸部と、
を含む、
請求項1に記載のゴムクローラ。
【請求項3】
前記凹部及び/又は凸部は、
前記無端帯の厚さ方向に向かって延びるように形成される第一の凹部及び/又は凸部と、
前記無端帯の周方向に向かって延びるように形成される第二の凹部及び/又は凸部と、
を含む、
請求項1に記載のゴムクローラ。
【請求項4】
前記凹部及び/又は凸部のうち少なくとも1つは、
前記無端帯の幅方向及び周方向において、前記突起部の中央に位置するように形成される、
請求項2又は請求項3に記載のゴムクローラ。
【請求項5】
前記第一の凹部及び/又は凸部と前記第二の凹部及び/又は凸部とは、
互いに直交する方向に向かって延びるように形成される、
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載のゴムクローラ。
【請求項6】
前記突起部及び前記補強部材は、
前記幅方向から見た断面において、略三角形状に形成される、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のゴムクローラ。
【請求項7】
前記補強部材の前記幅方向における少なくとも一方の端面は、
前記突起部の前記幅方向における少なくとも一方の端面の近傍に位置するように形成されると共に、前記突起部の前記幅方向における少なくとも一方の端面に沿うように形成される、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のゴムクローラ。
【請求項8】
前記補強部材には、前記突起部と前記無端帯との接続面に対向する面から、当該接続面まで延びる延出部が形成される、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のゴムクローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行に用いられるゴムクローラの技術に関し、より詳細には、当該ゴムクローラへの駆動力の伝達及び当該ゴムクローラの案内に用いられるゴム製の突起部を具備するゴムクローラの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行に用いられるゴムクローラの技術、より詳細には、当該ゴムクローラへの駆動力の伝達及び当該ゴムクローラの案内に用いられるゴム製の突起部を具備するゴムクローラの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のゴムクローラの突起部(ゴム突起)の内部には、当該ゴムクローラの幅方向に延びる補強部材(耐摩耗性部材)が埋め込まれるようにして設けられる。当該補強部材は、円形断面を有するように形成され、両端部が突起部の端面に露出している。このように構成することによって、突起部の摩耗や破損が低減される。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、補強部材は円形断面を有するように形成されているため、突起部表面から補強部材までの距離(厚み)が一定ではない。このため、突起部に加わる負荷が一部分に集中し易く、ひいては当該部分から破損し易くなるおそれがある点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3934746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、突起部の破損を防止することが可能なゴムクローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、ゴム製の無端帯と、前記無端帯の外周面に形成されるゴム製のラグと、前記無端帯の内周面に形成され、前記無端帯への駆動力の伝達及び前記無端帯の案内に用いられるゴム製の突起部と、前記突起部内に設けられる補強部材と、を具備するゴムクローラであって、前記補強部材は、前記無端帯の幅方向に延びるように配置され、前記幅方向から見た断面において、その外形が前記突起部の外形に沿うように形成され、前記補強部材の表面のうち、前記突起部内に位置する部分には、凹部及び/又は凸部が形成され、前記凹部及び/又は凸部のうち少なくとも1つは、前記補強部材の表面から、当該補強部材の表面に対して垂直な方向とは異なる方向に向かって延びるように形成されるものである。
【0009】
請求項2においては、前記凹部及び/又は凸部は、第一の方向に向かって延びるように形成される第一の凹部及び/又は凸部と、前記第一の方向と異なる第二の方向に向かって延びるように形成される第二の凹部及び/又は凸部と、を含むものである。
【0010】
請求項3においては、前記凹部及び/又は凸部は、前記無端帯の厚さ方向に向かって延びるように形成される第一の凹部及び/又は凸部と、前記無端帯の周方向に向かって延びるように形成される第二の凹部及び/又は凸部と、を含むものである。
【0011】
請求項4においては、前記凹部及び/又は凸部のうち少なくとも1つは、前記無端帯の幅方向及び周方向において、前記突起部の中央に位置するように形成されるものである。
【0012】
請求項5においては、前記第一の凹部及び/又は凸部と前記第二の凹部及び/又は凸部とは、互いに直交する方向に向かって延びるように形成されるものである。
【0013】
請求項6においては、前記突起部及び前記補強部材は、前記幅方向から見た断面において、略三角形状に形成されるものである。
【0014】
請求項7においては、前記補強部材の前記幅方向における少なくとも一方の端面は、前記突起部の前記幅方向における少なくとも一方の端面の近傍に位置するように形成されると共に、前記突起部の前記幅方向における少なくとも一方の端面に沿うように形成されるものである。
請求項8においては、前記補強部材には、前記突起部と前記無端帯との接続面に対向する面から、当該接続面まで延びる延出部が形成されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本発明においては、突起部表面から補強部材までの厚みを概ね一定の厚みにすることができ、一部に負荷が集中し、突起部が破損するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)第一の実施形態に係るゴムクローラの底面図。(b)同じく、平面図。
図2図1におけるA−A断面図。
図3】突起部を示した斜視図。
図4】突起部内に配置された補強部材を示した斜視図。
図5図1におけるB−B断面図のうち、突起部及び補強部材のみを示した図。
図6図2におけるC−C断面図のうち、突起部及び補強部材のみを示した図。
図7】補強部材を示した背面図。
図8】同じく、側面図。
図9】(a)第一の変形例に係る補強部材を示した背面断面図。(b)第二の変形例に係る補強部材を示した背面断面図。
図10】第三の変形例に係る補強部材を示した斜視図。
図11】(a)第一の実施形態に係る補強部材を示した側面断面図。(b)第四の変形例に係る補強部材を示した側面断面図。(c)第五の変形例に係る補強部材を示した側面断面図。
図12】(a)第六の変形例に係る補強部材を示した側面断面図。(b)第七の変形例に係る補強部材を示した側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図中に示した矢印に従って、前後方向、左右方向及び上下方向をそれぞれ定義する。
【0025】
まず、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態(第一の実施形態)に係るゴムクローラ1の全体的な構成について説明する。
【0026】
ゴムクローラ1は、当該ゴムクローラ1に駆動力を伝達するためのスプロケットや、当該ゴムクローラ1が回転軌道から外れないように案内するためのトラックローラ(転輪)等に巻回され、車両の走行に用いられるものである。ゴムクローラ1は、主として無端帯10、ラグ20、突起部30及び補強部材40を具備する。
【0027】
無端帯10は、ゴムにより形成される無端状の部材である。無端帯10の厚さ方向(図における上下方向)中央部には、スチールコード11及びバイアスコード12が埋め込まれるようにして設けられる(図2参照)。
なお、本実施形態においては、図中における無端帯10の下面(底面)が当該無端帯10の外周面であり、無端帯10の上面が当該無端帯10の内周面である。
【0028】
ラグ20は、ゴムクローラ1から地面へと駆動力を伝達するための部分である。ラグ20は、ゴムにより形成される。ラグ20は、無端帯10の下面から下方へと突出するように形成される。ラグ20は、規則的に並ぶように複数形成される。
【0029】
突起部30は、無端帯10への駆動力の伝達及び無端帯10の案内に用いられる部分である。突起部30は、ゴムにより形成される。突起部30は、無端帯10の上面から上方へと突出するように形成される。突起部30は、無端帯10の幅方向(左右方向)中央部において、前後方向に所定間隔おきに複数形成される。
【0030】
図2に示す補強部材40は、突起部30を補強するための部材である。補強部材40は、合成樹脂により形成される。補強部材40は、突起部30内に左右方向に亘って埋め込まれるようにして設けられる。
【0031】
以下では、図3から図8までを用いて、突起部30及び補強部材40について、より詳細に説明する。
【0032】
図3から図6までに示すように、突起部30には、前側面31、後側面32、左端面33、右端面34及び底面35が形成される。
【0033】
図6に示す前側面31は、突起部30の前部に形成される面である。前側面31は、概ね前下がりに傾斜するように形成される。
図3及び図6に示す後側面32は、突起部30の後部に形成される面である。後側面32は、概ね後下がりに傾斜するように形成される。後側面32の上端部は、前側面31の上端部と連続するように接続される。
【0034】
図3から図5までに示す左端面33は、突起部30の左端部に形成される面である。左端面33は、概ね左下がりに傾斜するように形成される。
図5に示す右端面34は、突起部30の右端部に形成される面である。右端面34は、概ね右下がりに傾斜するように形成される。
【0035】
図5及び図6に示す底面35は、本発明に係る接続面の実施の一形態であり、突起部30の底部に形成される面である。底面35は、上下方向に対して垂直な平面状に形成される。突起部30は、底面35を介して無端帯10と接続される。すなわち、突起部30は、底面35を無端帯10の上面と当接させた状態で全体を加硫されることにより、当該無端帯10に一体的に固定される。
【0036】
このようにして、突起部30は、側面断面視(図6等参照)において略三角形状になるように形成されると共に、左右方向に延びるように形成される。
【0037】
図4から図8までに示すように、補強部材40は、本体部41、上方凸部42、側方凸部43及び延出部44を具備する。
【0038】
本体部41は、補強部材40の主たる構造体を成す部分である。本体部41には、前側面41a、後側面41b、左端面41c、右端面41d及び底面41eが形成される。
【0039】
図6及び図8に示す前側面41aは、本体部41の前部に形成される面である。前側面41aは、概ね前下がり(突起部30の前側面31と概ね平行)に傾斜するように形成される。
図4図6図7及び図8に示す後側面41bは、本体部41の後部に形成される面である。後側面41bは、概ね後下がり(突起部30の後側面32と概ね平行)に傾斜するように形成される。後側面41bの上端部は、前側面41aの上端部と連続するように接続される。
【0040】
図4図5図7及び図8に示す左端面41cは、本体部41の左端部に形成される面である。左端面41cは、概ね左下がり(突起部30の左端面33と概ね平行)に傾斜するように形成される。
図5及び図7に示す右端面41dは、本体部41の右端部に形成される面である。右端面41dは、概ね右下がり(突起部30の右端面34と概ね平行)に傾斜するように形成される。
【0041】
図5図7及び図8に示す底面41eは、本体部41の底部に形成される面である。底面41eは、上下方向に対して垂直(突起部30の底面35と概ね平行)な平面状に形成される。
【0042】
このようにして、本体部41は、側面断面視(図6等参照)において略三角形状になるように形成されると共に、左右方向に延びるように形成される。
【0043】
ここで、図6に示すように、本体部41は、突起部30の略中央部(前後方向及び上下方向における略中央部)に位置するように配置される。また、本体部41の前側面41a、後側面41b及び底面41eは、突起部30の前側面31、後側面32及び底面35とそれぞれ略平行である。このため、本体部41は、側面断面視において突起部30と略相似形状になる。
【0044】
また、図5に示すように、本体部41は、突起部30の左端面33から右端面34に亘るように配置される。本体部41の左端面41c及び右端面41dは、突起部30の左端面33及び右端面34の近傍にそれぞれ位置するように配置される。より具体的には、本体部41の左端面41c及び右端面41dは、突起部30の左端面33及び右端面34からそれぞれ露出するように配置される。本体部41の左端面41cは、突起部30の左端面33と概ね平行に形成されているため、当該本体部41の左端面41cは、突起部30の左端面33と同一面を形成することになる。同様に、本体部41の右端面41dは、突起部30の右端面34と同一面を形成することになる。
【0045】
図4図7及び図8に示す上方凸部42は、本発明に係る凸部の実施の一形態であり、本体部41の表面から突出するように形成される部分である。上方凸部42は、略円柱状に形成される。上方凸部42は、本体部41の上端部から上方に向かって延びるように形成される。上方凸部42は、左右方向に所定間隔おきに複数(本実施形態においては、5つ)形成される。
【0046】
側方凸部43は、本発明に係る凸部の実施の一形態であり、本体部41の表面から突出するように形成される部分である。側方凸部43は、略円柱状に形成される。側方凸部43は、本体部41の前側面41aから前方に向かって延びるように形成される。また、同様に、側方凸部43は、本体部41の後側面41bから後方に向かって延びるように形成される。側方凸部43は、前側面41a及び後側面41bのそれぞれに、左右方向に所定間隔おきに複数(本実施形態においては、4つ)形成される。この際、後側面41b(及び、前側面41a)の側方凸部43は、左右方向において、互いに隣り合う上方凸部42・42の中間にそれぞれ位置するように配置される。
【0047】
図4から図8までに示す延出部44は、本体部41の表面から突出するように形成される部分である。延出部44は、略直方体状に形成される。延出部44は、本体部41の底面41eの中央部から下方に向かって延びるように形成される。延出部44は、その下端部(底面)が突起部30の底面35まで延びるように、すなわち突起部30の底面35から露出するように形成される(図5及び図6参照)。
【0048】
上述の如く構成されたゴムクローラ1において、車両のスプロケット等が突起部30の前側面31又は後側面32(図6等参照)に当接して当該突起部30を後方又は前方に押すことによって、前記スプロケット等からの駆動力が無端帯10に伝達され、ゴムクローラ1が回転駆動される。この際、突起部30内には補強部材40が埋め込まれているため、当該突起部30に加わる負荷を補強部材40が受けることで、当該突起部30を補強することができる。
【0049】
ここで、補強部材40の本体部41の外形(特に、前側面41a及び後側面41b)は、突起部30の外形(前側面31及び後側面32)に沿うように配置されている。このため、互いに対向するように配置されている突起部30の前側面31と補強部材40の前側面41aとの間の厚みは概ね一定になっている。同様に、突起部30の後側面32と補強部材40の後側面41bとの間の厚みも概ね一定になっている。これによって、前記スプロケット等によって突起部30が押されても、当該突起部30の一部に負荷が集中することを防止することができ、ひいては負荷の集中に起因する突起部の破損を防止することができる。
【0050】
また、前記スプロケット等は、突起部30の前側面31(又は後側面32)の上下中央付近を特に強く押すことになる。本実施形態においては、本体部41は突起部30の上下中央付近に配置されているため、補強部材40によって突起部30を効果的に補強することができる。
【0051】
また、上述の如く構成されたゴムクローラ1において、車両のトラックローラ等が突起部30の左端面33又は右端面34(図5等参照)に当接することによって、無端帯10が所定の回転軌道で回転するように案内される。これによって、ゴムクローラ1の回転軌道が左右方向にずれて、当該ゴムクローラ1が車両から脱落するのを防止することができる。ここで、補強部材40の左端面41c及び右端面41dは、突起部30の左端面33及び右端面34とそれぞれ同一面を形成するように、当該突起部30から露出している。このため、前記トラックローラ等が突起部30の左端面33又は右端面34に当接する際に、補強部材40の左端面41c又は右端面41dにも直接当接することになる。これによって、突起部30の摩耗(特に、左端面33及び右端面34の摩耗)を抑制することができる。
【0052】
また、前記トラックローラ等は、突起部30の左端面33(又は右端面34)の上下中央付近に特に強く当接することになる。本実施形態においては、本体部41は突起部30の上下中央付近に配置されているため、補強部材40によって突起部30の摩耗を効果的に抑制することができる。
【0053】
また、補強部材40には、上方凸部42、側方凸部43及び延出部44が形成されているため、当該補強部材40の表面積が大きくなっている。これによって、当該補強部材40と突起部30との接触面積が大きくなり、当該補強部材40と突起部30との接着強度を向上させることができる。
【0054】
また、補強部材40には、上方凸部42、側方凸部43及び延出部44が形成されているため、当該上方凸部42等が突起部30にひっかかり、当該補強部材40が突起部30の内部において移動し難くなる。これによって、前記スプロケット等によって補強部材40に負荷が加わったとしても、当該補強部材40が突起部30内で移動したり(偏ったり)、当該突起部30の端面から脱落したりするのを防止することができる。
【0055】
また、補強部材40の左端面41c、右端面41d及び延出部44の底面は、突起部30から露出するように形成されている。これによって、突起部30を成形(加硫成形等)する際に当該3箇所の露出部分で補強部材40を支持することができるため、当該補強部材40の位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0056】
以上の如く、本実施形態に係るゴムクローラ1は、
ゴム製の無端帯10と、
無端帯10の外周面に形成されるゴム製のラグ20と、
無端帯10の内周面に形成され、無端帯10への駆動力の伝達及び無端帯10の案内に用いられるゴム製の突起部30と、
突起部30内に設けられる補強部材40と、
を具備するゴムクローラ1であって、
補強部材40は、
無端帯10の幅方向に延びるように配置され、
前記幅方向から見た断面において、その外形が前記突起部30の外形に沿うように形成されるものである。
このように構成することにより、突起部30表面から補強部材40までの厚みを概ね一定の厚みにすることができ、一部に負荷が集中し、突起部30が破損するのを防止することができる。
【0057】
また、突起部30及び補強部材40は、
前記幅方向から見た断面において、略三角形状に形成されるものである。
このように構成することにより、ゴムクローラ1に駆動力を伝達する部材(スプロケット等)と突起部30とをスムーズに噛み合わせながらも、突起部30表面から補強部材40までの厚みを概ね一定の厚みにすることができ、一部に負荷が集中し、突起部30が破損するのを防止することができる。
【0058】
また、補強部材40の表面には、上方凸部42及び側方凸部43(凸部)が形成されるものである。
このように構成することにより、補強部材40の表面積を増加させ、突起部30との接着強度を向上させることができる。また、突起部30内における補強部材40の移動を防止することができる。
【0059】
また、補強部材40の左端面41c及び右端面41dは、
突起部30の左端面33及び右端面34の近傍に位置するように形成されるものである。
このように構成することにより、突起部30の左端面33及び右端面34(幅方向における端面)に加わる負荷を補強部材40の左端面41c及び右端面41d(端面)で受けることができる。
【0060】
また、補強部材40の左端面41c及び右端面41dは、
突起部30の左端面33及び右端面34に沿うように形成されるものである。
このように構成することにより、突起部30の左端面33及び右端面34から補強部材40の左端面41c及び右端面41dまでの厚みを概ね一定の厚みにすることができ、一部に負荷が集中し、突起部30が破損するのを防止することができる。
また、補強部材40の左端面41c及び右端面41dが突起部30の左端面33及び右端面34から露出している場合には、当該補強部材40の端面によって突起部30の端面に過度な凹凸が形成されるのを防止し、滑らかな面を形成することができる。
【0061】
また、補強部材40の左端面41c及び右端面41dは、
突起部30の左端面33及び右端面34と同一面を形成するように、突起部30から露出しているものである。
このように構成することにより、突起部30の左端面33及び右端面34(幅方向における端面)に接触する外部の部材(トラックローラ等)と、補強部材40を直接当接させることで、突起部30の摩耗を抑制することができる。
【0062】
また、補強部材40には、突起部30と無端帯10との接続面(底面35)に対向する面から、当該底面35まで延びる延出部44が形成されるものである。
このように構成することにより、突起部30内における補強部材40の移動を防止することができる。また、突起部30の成形時における補強部材40の位置決めが容易になる。
【0063】
なお、本実施形態において、補強部材40は合成樹脂により形成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、補強部材40は、突起部30を補強することが可能であれば、他の材料(例えば、金属等)により形成することも可能である。
【0064】
また、本実施形態においては、突起部30及び補強部材40(特に、本体部41)は側面断面視略三角形状であるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、側面断面視において、補強部材40の外形が突起部30の外形に沿うように形成されていれば、他の形状に形成することも可能である。
【0065】
また、本実施形態においては、補強部材40は左右方向に亘って側面断面視略三角形状であるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、補強部材40は、左右方向のある部分において、その側面断面形状が異なっていても良い。例えば、補強部材40(本体部41)の一部分(左右中途部)だけが側面断面視円形状や、大きさの異なる略三角形状(相似形状)になるように形成することも可能である。これによって、補強部材40が突起部30内で移動するのをより効果的に防止することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、上方凸部42及び側方凸部43は略円柱状に形成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、上方凸部42及び側方凸部43は、他の形状(例えば、円錐状や四角柱状等)に形成することも可能である。
【0067】
また、本実施形態においては、上方凸部42は補強部材40の上端部に5つ、側方凸部43は前側面41a及び後側面41bにそれぞれ4つずつ形成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、上方凸部42及び側方凸部43の個数は任意に設定することが可能である。また、これらの凸部(上方凸部42及び側方凸部)は、補強部材40の任意の位置に形成することが可能である。
【0068】
また、本実施形態においては、補強部材40の両端面(左端面41c及び右端面41d)を、突起部30の両端面(左端面33及び右端面34)の近傍に位置するように、かつ当該突起部30の両端面から露出するように、形成するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、補強部材40のいずれか一方の端面が、突起部30の一方の端面の近傍に位置する(一方の端面から露出する)ものであっても良い。
【0069】
また、本実施形態においては、延出部44は略直方体状に形成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、突起部30の底面35まで延びるように形成されるものであれば、他の形状(例えば、円柱状等)であっても良い。
【0070】
また、本実施形態においては、延出部44は本体部41の底面41eの中央部に1つ形成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、延出部44は複数形成することも可能であり、また任意の位置に形成することも可能である。
【0071】
以下では、本発明に係る補強部材の他の実施形態(変形例)について説明する。
【0072】
図9(a)に示す第一の変形例においては、補強部材40の右端面41dは、突起部30の右端面34から露出せず、当該突起部30の内部(右端面34の近傍)において当該右端面34に沿うように形成される。
【0073】
このように構成することによって、外部から補強部材40が視認できなくなるため、突起部30の見栄えを良くすることができる。また、突起部30の右端面34から補強部材40の右端面41dまでの厚みを概ね一定の厚みにすることができるため、一部に負荷が集中し、突起部30が破損するのを防止することができる。
【0074】
図9(b)に示す第二の変形例においては、補強部材40の右端面41dは、突起部30の右端面34の内部(右端面34の近傍)に形成されるが、当該右端面41dは、突起部30の右端面34に沿うような形状ではない。
【0075】
このように、補強部材40の右端面41dは、突起部30の右端面34に沿うような形状でなくても、当該突起部30の右端面34に加わる負荷を受けることが可能である。
【0076】
なお、上記第一の変形例及び第二の変形例では、補強部材40の右端面41dについてのみ説明したが、左端面41cについても右端面41dと同様に形成することが可能である。
【0077】
図10に示す第三の変形例においては、補強部材40の上方凸部42及び側方凸部43(図4参照)に代えて、上方凹部45及び側方凹部46を形成している。このように、補強部材40に凹部を形成することによっても、当該補強部材40の表面積を増加させることができ、突起部30との接着強度を向上させることができる。また、突起部30内における補強部材40の移動を防止することもできる。
【0078】
図11(a)に示すように、上述の第一の実施形態においては、側面断面視において、補強部材40(特に本体部41)の外形が突起部30の外形に沿うような略三角形状になるように形成したが、以下で述べる各変形例(第四から第七の変形例)に示すような形状に形成することも可能である。
【0079】
図11(b)に示すように、第四の変形例に係る補強部材50は、側面断面視において前後方向に延びるように形成される第一の部分51と、当該第一の部分51から下方に向かって延びるように形成される第二の部分52と、を具備するものである。
【0080】
第一の部分51は、突起部30の上下中央付近に配置され、突起部30の前側面31近傍から後側面32近傍まで延びるように形成される。また、第二の部分52は、第一の部分51の前後中央部から突起部30の底面35まで延びるように形成され、当該第二の部分52の下端部は突起部30の底面35から露出するように形成される。
【0081】
このように構成することにより、補強部材50(特に、第一の部分51)によって突起部30の前側面31又は後側面32に加わる負荷を受けることができ、当該突起部30を補強することができる。
【0082】
図11(c)に示すように、第五の変形例に係る補強部材60は、側面断面視において上下方向に延びるように形成される第一の部分61と、当該第一の部分61の下端部から前後方向に延びるように形成される第二の部分62と、を具備するものである。
【0083】
第一の部分61は、突起部30の前後中央付近に配置され、突起部30の上下中央付近から底面35まで延びるように形成される。また、第二の部分62は、突起部30の底面35に沿うように形成され、当該第二の部分62の底面は突起部30の底面35から露出するように形成される。
【0084】
このように構成することにより、補強部材50(特に、第一の部分61)によって突起部30の前側面31又は後側面32に加わる負荷を受けることができ、当該突起部30を補強することができる。
【0085】
図12(a)に示すように、第六の変形例に係る補強部材70は、側面断面視において前後方向に延びるように形成される第一の部分71と、当該第一の部分71から下方に向かって延びるように形成される第二の部分72と、当該第二の部分72の下端部から前後方向に延びるように形成される第三の部分73と、を具備するものである。
【0086】
第一の部分71は、突起部30の上下中央付近に配置され、突起部30の前側面31近傍から後側面32近傍まで延びるように形成される。また、第二の部分72は、第一の部分71の前後中央部から突起部30の底面35まで延びるように形成される。また、第三の部分73は、突起部30の底面35に沿うように形成され、当該第三の部分73の底面は突起部30の底面35から露出するように形成される。
【0087】
このように構成することにより、補強部材50(特に、第一の部分71)によって突起部30の前側面31又は後側面32に加わる負荷を受けることができ、当該突起部30を補強することができる。
【0088】
図12(b)に示すように、第七の変形例に係る補強部材80は、側面断面視において略円形状に形成される第一の部分81と、当該第一の部分81から下方に向かって延びるように形成される第二の部分82と、を具備するものである。
【0089】
第一の部分81は、突起部30の上下中央付近かつ前後中央付近に配置される。また、第二の部分82は、第一の部分81の下端部から下方に向かって延びるように形成され、当該第二の部分82の下端部は突起部30の底面35から露出するように形成される。
【0090】
このように構成することにより、補強部材80(特に、第一の部分81)によって突起部30の前側面31又は後側面32に加わる負荷を受けることができ、当該突起部30を補強することができる。
【0091】
なお、上述の第四から第七の変形例に示した各補強部材は、突起部30の左端面33近傍から右端面34近傍まで延びるように形成されることで、当該突起部30の左端面33又は右端面34に加わる負荷を受け、当該突起部30を補強することができる。さらに、当該各補強部材を突起部30の左端面33及び右端面34から露出させることで、当該突起部30の摩耗を抑制することができる。
【0092】
また、上述の第四から第七の変形例に示した各補強部材に、さらに凹部や凸部を形成することも可能である。これによって、各補強部材が突起部30内で移動したり、当該突起部30から脱落したりするのを防止することができる。
【0093】
また、上述の第四から第七の変形例に示した各補強部材は、いずれも突起部30の底面35から露出するように形成されているため、突起部30を成形する際の各補強部材の位置決めを容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0094】
1 ゴムクローラ
10 無端帯
20 ラグ
30 突起部
40 補強部材
41 本体部
42 上方凸部(凸部)
43 側方凸部(凸部)
44 延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12