特許第6053237号(P6053237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053237
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/232 20060101AFI20161219BHJP
   E03C 1/22 20060101ALI20161219BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20161219BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   E03C1/232
   E03C1/22 C
   A47K1/14 B
   E03C1/23 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-553694(P2015-553694)
(86)(22)【出願日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2015062655
(87)【国際公開番号】WO2016006303
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-142870(P2014-142870)
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−060333(JP,A)
【文献】 特開2012−241489(JP,A)
【文献】 実開昭59−152271(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部及び当該底壁部に立設された側壁部を有するとともに、前記底壁部に設けられた排水口と、前記側壁部に設けられたオーバーフロー口とを備える槽体に取付けられる排水栓装置であって、
前記槽体に対して上下動することで前記排水口を開閉可能な栓蓋と、
外周側に突出し前記側壁部の表面に直接又は間接的に接触する鍔部を有するとともに、前記オーバーフロー口に挿通され、自身の一端側開口から自身の内部空間へと前記槽体内の水が流入可能に構成された取付部材と、
前記側壁部の表面から突出した状態で前記取付部材の一端側開口に対応して設けられるとともに、自身の外周部分が前記鍔部の外周よりも外周側に張り出し、かつ、回動可能に構成された操作ハンドルと、
前記操作ハンドルの回動動作による駆動力を前記栓蓋側へと伝達し、前記栓蓋を上下動させる伝達部材と、
前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出方向に沿って前記操作ハンドルを移動可能に構成されたハンドル移動手段とを備え、
前記ハンドル移動手段は、前記排水口を開放したときにおける、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量を、前記排水口を閉鎖したときにおける、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量よりも小さくするように構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記ハンドル移動手段は、
前記取付部材の内周に配設されるとともに、前記操作ハンドルの移動方向に沿って延びる円筒状の保持部と、
前記保持部の内周に配置されるとともに、前記操作ハンドルの背後に取付けられ、前記操作ハンドルの回動動作に伴い自身の中心軸を回動軸として回動可能に構成された軸部とを有し、
前記保持部の内周には、保持側接触部が設けられるとともに、
前記軸部の外周には、軸側接触部が設けられ、
前記保持側接触部は、前記軸側接触部に接触するとともに、
前記保持側接触部及び前記軸側接触部の少なくとも一方は、前記中心軸の周方向に対して傾斜する形状をなし、
前記操作ハンドルの回動に伴い、前記軸側接触部が前記保持側接触部を摺動し、前記軸部がその中心軸方向に沿って移動することで、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量が変更されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記操作ハンドルの回動範囲を規定する回動範囲規定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記操作ハンドルの外周には、前記側壁部の表面に相対する外周対向部が設けられ、
前記外周対向部は、前記排水口を開放するときの位置へと前記操作ハンドルを配置したときにおいて、自身に相対する前記側壁部の表面に沿う形状とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項5】
前記排水口を開放したときにおいて、前記操作ハンドルの外周部分が前記鍔部の側方に位置するように、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量が設定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項6】
前記側壁部と前記鍔部との間には、前記側壁部と前記鍔部とで挟み込まれた弾性変形可能な緩衝部材が設けられ、
前記排水口を開放したときにおいて、前記操作ハンドルの外周部分が前記緩衝部材の側方に位置するように、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量が設定されることを特徴とする請求項5に記載の排水栓装置。
【請求項7】
前記排水口を開放した状態における前記栓蓋に対し下方に向けた力を加えることで、前記栓蓋が下動し、前記排水口が閉鎖されるとともに、前記操作ハンドルが回動しつつ、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量が、前記排水口を開放したときにおける前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口に設けられた栓蓋を動作させるための排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、槽体(例えば、浴槽など)の側壁部に、槽体からの水の溢れ出しを防止するためのオーバーフロー口を設けることがある。また、オーバーフロー口に所定の操作部を設け、当該操作部を動作させることで、遠隔操作により槽体の排水口に設けられた栓蓋を上下動(すなわち排水口を開閉)させる排水栓装置が知られている。
【0003】
このような排水栓装置としては、オーバーフロー口に設けられた回動可能な操作ハンドルと、操作ハンドルの回動動作による駆動力を栓蓋側に伝達する伝達部材とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。当該特許文献に記載の技術では、操作ハンドルに相当するカバーロゼットと槽体の側壁部との間の隙間、及び、カバーロゼットに設けられた開口部を通って、オーバーフロー口から排水が流出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−9562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術では、カバーロゼットが、常に槽体の側壁部に対して比較的大きく突出した状態となっている。そのため、シャワーなど、槽体の周辺器具を使用する際に、カバーロゼットが邪魔になり、前記周辺器具の使用に多少なりとも不便が生じてしまう(例えば、シャワーヘッドを動かす際に、シャワーホースがカバーロゼットに引っ掛かってしまう)おそれがある。また、槽体の側壁部からカバーロゼットが常に比較的大きく突出する状態は、見栄えが良いとは言えず、使用者に対して、全体にまとまりがないといった印象を与えてしまうおそれがある。さらに、カバーロゼットが比較的大きく突出する状態は、安全性という面で好ましくない。
【0006】
これに対して、例えば、操作ハンドル(カバーロゼット)を前記側壁部側へと極力接近させ、側壁部に対する操作ハンドル(カバーロゼット)の突出量を比較的小さくすることが考えられる。しかしながら、この場合には、操作ハンドル(カバーロゼット)と側壁部との間の隙間を小さくせざるを得ず、オーバーフロー口側において十分な排水能力を得ることができないおそれがある。また、操作ハンドル(カバーロゼット)と側壁部との間に位置する部位の清掃が困難になってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、利便性、外観品質、安全性、及び、清掃性をそれぞれ向上させることができるとともに、オーバーフロー口側からの排水時に、オーバーフロー口側において良好な排水能力を確保することができる排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.底壁部及び当該底壁部に立設された側壁部を有するとともに、前記底壁部に設けられた排水口と、前記側壁部に設けられたオーバーフロー口とを備える槽体に取付けられる排水栓装置であって、
前記槽体に対して上下動することで前記排水口を開閉可能な栓蓋と、
外周側に突出し前記側壁部の表面に直接又は間接的に接触する鍔部を有するとともに、前記オーバーフロー口に挿通され、自身の一端側開口から自身の内部空間へと前記槽体内の水が流入可能に構成された取付部材と、
前記側壁部の表面から突出した状態で前記取付部材の一端側開口に対応して設けられるとともに、自身の外周部分が前記鍔部の外周よりも外周側に張り出し、かつ、回動可能に構成された操作ハンドルと、
前記操作ハンドルの回動動作による駆動力を前記栓蓋側へと伝達し、前記栓蓋を上下動させる伝達部材と、
前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出方向に沿って前記操作ハンドルを移動可能に構成されたハンドル移動手段とを備え、
前記ハンドル移動手段は、前記排水口を開放したときにおける、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量を、前記排水口を閉鎖したときにおける、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量よりも小さくするように構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【0010】
上記手段1によれば、排水口を開放したとき、すなわち、排水口側から排水が行われ、オーバーフロー口側において排水がほとんど行われない(つまり、オーバーフロー口側における排水能力を特に考慮する必要がない)ときに、槽体の側壁部の表面に対する操作ハンドルの突出量が比較的小さなものとされる。従って、操作ハンドルが邪魔となりにくくなり、槽体の周辺器具(例えば、シャワーなど)を使用する際の利便性を高めることができる。さらに、槽体と操作ハンドルとの一体性が向上した、非常にまとまりの良い見栄えとなり、良好な外観品質を実現することができる。また、操作ハンドルに対して手などが引っ掛かりにくくなり、安全性の向上を図ることができる。
【0011】
一方で、上記手段1によれば、栓蓋により排水口を閉鎖したとき、つまり、オーバーフロー口側において排水が行われ得るときにおいて、操作ハンドルの突出量が排水口の開放時における突出量よりも大きくなる。従って、操作ハンドルと側壁部との間の隙間を大きくすることができ、オーバーフロー口側における排水能力を十分に確保することができる。
【0012】
つまり、上記手段1によれば、排水口から排水が行われ、オーバーフロー口側からの排水がほとんどないときにおいて、周辺器具を使用する際の利便性、外観品質、及び、安全性を効果的に高めることができ、一方で、排水口からの排水が行われず、オーバーフロー口側からの排水が生じ得るときにおいて、オーバーフロー口側の排水能力を非常に良好なものとすることができる。
【0013】
また、上記手段1によれば、操作ハンドルの突出量を比較的大きくすることで、操作ハンドルと側壁部との間に位置する部位の清掃をより容易に行うことができる。
【0014】
手段2.前記ハンドル移動手段は、
前記取付部材の内周に配設されるとともに、前記操作ハンドルの移動方向に沿って延びる円筒状の保持部と、
前記保持部の内周に配置されるとともに、前記操作ハンドルの背後に取付けられ、前記操作ハンドルの回動動作に伴い自身の中心軸を回動軸として回動可能に構成された軸部とを有し、
前記保持部の内周には、保持側接触部が設けられるとともに、
前記軸部の外周には、軸側接触部が設けられ、
前記保持側接触部は、前記軸側接触部に接触するとともに、
前記保持側接触部及び前記軸側接触部の少なくとも一方は、前記中心軸の周方向に対して傾斜する形状をなし、
前記操作ハンドルの回動に伴い、前記軸側接触部が前記保持側接触部を摺動し、前記軸部がその中心軸方向に沿って移動することで、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量が変更されるように構成されていることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0015】
上記手段2によれば、比較的簡易な構成により、ハンドル移動手段を実現することができる。従って、装置の製造に係るコストを効果的に低減することができる。また、ハンドル移動手段における、故障等の不具合の発生をより確実に抑制することができる。
【0016】
手段3.前記操作ハンドルの回動範囲を規定する回動範囲規定手段を備えることを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0017】
上記手段3によれば、回動範囲規定手段により、操作ハンドルの回動範囲を規定することができる。従って、操作ハンドルの過度の回動に伴う、装置の動作不良や故障などをより確実に防止することができる。
【0018】
手段4.前記操作ハンドルの外周には、前記側壁部の表面に相対する外周対向部が設けられ、
前記外周対向部は、前記排水口を開放するときの位置へと前記操作ハンドルを配置したときにおいて、自身に相対する前記側壁部の表面に沿う形状とされていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の排水栓装置。
【0019】
上記手段4によれば、排水口を開放したときに、操作ハンドルの外周対向部が、自身に対向する側壁部の表面に沿う状態とすることができる。従って、排水口の開放時において、操作ハンドルの外周と側壁部との間の隙間を一層小さくすることができる。これにより、槽体の周辺器具を使用する際に、操作ハンドルが一層邪魔となりにくくなり、利便性を一段と高めることができる。さらに、槽体と操作ハンドルとの一体性が飛躍的に向上するため、極めて良好な外観品質を実現することができる。また、操作ハンドルに対して手などがより引っ掛かりにくくなり、さらに優れた安全性を得ることができる。
【0020】
手段5.前記排水口を開放したときにおいて、前記操作ハンドルの外周部分が前記鍔部の側方に位置するように、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量が設定されることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の排水栓装置。
【0021】
上記手段5によれば、排水口を開放したときに、鍔部の側方の少なくとも一部を覆う位置に操作ハンドルの外周部分が配置される。従って、側壁部に対する操作ハンドルの突出量をより確実に十分に小さなものとすることができ、利便性や安全性等を一層高めることができる。
【0022】
また、上記手段5によれば、操作ハンドルにより鍔部が隠れる形となるため、見栄えをより良くすることができ、外観品質の更なる向上を図ることができる。
【0023】
手段6.前記側壁部と前記鍔部との間には、前記側壁部と前記鍔部とで挟み込まれた弾性変形可能な緩衝部材が設けられ、
前記排水口を開放したときにおいて、前記操作ハンドルの外周部分が前記緩衝部材の側方に位置するように、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量が設定されることを特徴とする手段5に記載の排水栓装置。
【0024】
上記手段6によれば、緩衝部材によって、槽体に対する取付部材の取付安定性をより高めることができる。
【0025】
一方で、緩衝部材を設けた場合には、外観品質の低下が懸念されるが、上記手段6によれば、排水口を開放したときに、緩衝部材の側方の少なくとも一部を覆うように操作ハンドルの外周部分が配置されることとなる。つまり、排水口の開放時には、操作ハンドルにより緩衝部材が隠れる形となる。従って、緩衝部材を設けることによるメリットを維持しつつ、緩衝部材を設けることによるデメリットを効果的に解消することができる。
【0026】
手段7.前記排水口を開放した状態における前記栓蓋に対し下方に向けた力を加えることで、前記栓蓋が下動し、前記排水口が閉鎖されるとともに、前記操作ハンドルが回動しつつ、前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量が、前記排水口を開放したときにおける前記側壁部の表面に対する前記操作ハンドルの突出量よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の排水栓装置。
【0027】
上記手段7によれば、栓蓋を踏む等の簡単な操作により、排水口を閉鎖しつつ、操作ハンドルの突出量を排水口の開放時における突出量よりも大きくすることができる。そのため、使用者にとっての利便性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】オーバーフロー口側機構の構成を示す一部破断斜視図である。
図2】排水口側機構の構成を示す一部破断斜視図である。
図3】取付部材、オーバーフロー管及びハンドル移動手段の分解斜視図である。
図4】排水口を閉鎖した状態における、操作ハンドルの位置を示す一部破断斜視図である。
図5】別の実施形態において、排水口を開放した状態における操作ハンドルを示す一部破断平面図である。
図6】別の実施形態において、排水口を閉鎖した状態における操作ハンドルを示す一部破断平面図である。
図7】別の実施形態における突起部を示すための取付部材等の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、排水栓装置1は、図1及び図2に示すように、排水口側機構2と、オーバーフロー口側機構3と、これらの間に設けられた伝達部材4とを備えており、槽体としての浴槽100に取付けられている。尚、浴槽100は、成形品であり、底壁部101と、当該底壁部101の外周に立設された側壁部102とを備えている。また、底壁部101には、浴槽100内の水を排出するための排水口103が設けられており、側壁部102の上部には、浴槽100からの水の溢れ出しを防止するためのオーバーフロー口104が設けられている。
【0030】
まず、排水口側機構2について説明する。排水口側機構2は、図2に示すように、排水口103に設けられており、排水口部材21と、排水管22と、支持軸機構23と、栓蓋24とを備えている。
【0031】
排水口部材21は、所定の樹脂等により筒状に形成されており、排水口103に挿設されている。また、排水口部材21は、自身の内部において前記支持軸機構23を保持している。
【0032】
排水管22は、所定の樹脂により筒状に形成されており、主管22Aと、枝分かれ管22Bとを備えている。
【0033】
主管22Aは、鉛直方向に沿って延びる筒状をなし、排水口部材21の下方において、排水口部材21と同軸状に配置されている。浴槽100内の水は、排水口部材21の内部及び主管22Aの内部を通って排出される。
【0034】
枝分かれ管22Bは、主管22Aの外周から、主管22Aの延びる方向と直交する方向に沿って延びている。また、枝分かれ管22Bは、その内部空間が主管22Aの内部空間に連通するとともに、オーバーフロー口側機構3に設けられた後述するオーバーフロー管32と所定の配管(図示せず)を介して接続されている。
【0035】
支持軸機構23は、伝達部材4の一端部が接触可能に構成されるとともに、上端部に栓蓋24の取付けられた支持軸23Aを有している。支持軸23Aは、伝達部材4の動作に伴い上下動するように構成されており、支持軸23Aの上下動により栓蓋24が上下動する。
【0036】
栓蓋24は、円板状の栓蓋本体24Aと、当該栓蓋本体24Aの背面に設けられたパッキン部24Bとを備えている。支持軸23Aの下動に伴い栓蓋24が下動した際には、前記パッキン部24Bが排水口部材21の内周面に接触することで、排水口103が閉鎖される。一方で、支持軸23Aの上動に伴い栓蓋24が上動した際には、前記パッキン部24Bが排水口部材21の内周面から離間することで、排水口103が開放される。
【0037】
次いで、オーバーフロー口側機構3について説明する。オーバーフロー口側機構3は、図1及び図3に示すように、オーバーフロー口104に設けられており、取付部材31と、オーバーフロー管32と、ハンドル移動手段33と、回動機構部34と、操作ハンドル35とを備えている。
【0038】
取付部材31は、所定の樹脂により筒状に形成されており、本体部31Aと、鍔部31Bとを備えている。
【0039】
本体部31Aは、円筒状をなし、オーバーフロー口104に挿通されている。また、本体部31Aは、ハンドル移動手段33の後述する保持部33Aと連結され、当該保持部33Aを支持するアーム部31Cを備えている。アーム部31Cは、本体部31Aの周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、2つ)設けられている。浴槽100内から本体部31Aの一端側(浴槽100の表側)開口を通って本体部31Aの内部空間へと流入した水は、アーム部31C間の隙間を通ってオーバーフロー管32側へと流れ込むようになっている。
【0040】
また、両アーム部31Cのうち前記保持部33A側に位置する部位には、本体部31Aの軸方向に貫通する挿通孔31Dが形成されている。
【0041】
鍔部31Bは、本体部31Aの一端部から外周側に突出しており、側壁部102の表面に対し後述する緩衝部材6を介して間接的に接触している。尚、緩衝部材6を省略し、鍔部31Bが側壁部102の表面に対し直接的に接触するように構成してもよい。
【0042】
オーバーフロー管32は、所定の樹脂により筒状に形成されており、第一管部32Aと、第二管部32Bとを備えている。
【0043】
第一管部32Aは、その一端側(オーバーフロー口104側)に位置し、オーバーフロー口104の内径とほぼ同一の内径を有する円筒状部32Cと、当該円筒状部32Cの他端部から径方向内側に突出形成された円板状の張出部32Dとを備えている。張出部32Dは、その中心部分に、張出部32Dを貫通する貫通孔32Eを有するとともに、当該貫通孔32Eに隣接する部位に、貫通孔32Eの延びる方向と同一方向に沿って延びる複数(本実施形態では、2つ)の雌ねじ部32Fを有している。
【0044】
本実施形態では、鍔部31Bと第一管部32Aの一端部との間で側壁部102を挟み込んだ状態で、所定の雄ねじ(図示せず)を挿通孔31Dに挿通しつつ雌ねじ部32Fに螺合することにより、側壁部102に対し取付部材31及びオーバーフロー管32が取付けられている。
【0045】
また、第一管部32Aの一端部と側壁部102の背面との間には、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)からなる環状のシール部材5が設けられており、当該シール部材5は、オーバーフロー管32と側壁部102とで挟み込まれた状態となっている。これにより、オーバーフロー管32の外部への漏水防止が図られている。
【0046】
さらに、鍔部31Bと側壁部102の表面との間には、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)からなる環状の緩衝部材6が挟み込まれている。緩衝部材6によって、側壁部102に対する取付部材31及びオーバーフロー管32の取付安定性が良好なものとされている。
【0047】
第二管部32Bは、鉛直下方に向けて延びており、自身の内部空間が第一管部32Aの内部空間と連通している。第二管部32Bには、前記枝分かれ管22Bと接続された前記配管が接続されている。取付部材31の内側を通ってオーバーフロー管32へと流れ込んだ排水は、前記配管、及び、枝分かれ管22Bを通って主管22Aに流れ込み、排出されることとなる。
【0048】
ハンドル移動手段33は、前記アーム部31Cにより本体部31A等の内部にて保持された円筒状の保持部33Aと、当該保持部33Aの内側に配置された軸部33Bと、保持部33A及び軸部33B間に配置された弾性部材33Cとを有している。
【0049】
保持部33Aは、側壁部102に対し取付部材31及びオーバーフロー管32を取付けた状態において、前記貫通孔32Eと同軸状に配置されるように構成されている。また、保持部33Aの内周には、保持部33Aの周方向に沿って延びる環状をなす段差部33Dと、当該段差部33Dよりも他端側(オーバーフロー口104とは反対側)に位置し、軸部33Bの中心軸の周方向に対して傾斜する傾斜面状をなす複数(本実施形態では、2つ)の保持側接触部33Eとが設けられている。本実施形態において、保持側接触部33Eは、それぞれほぼ半周分の螺旋により構成されている。
【0050】
軸部33Bは、保持部33Aの内周において、自身の中心軸を回転軸として回動可能に構成されている。また、軸部33Bは、鍔状の環状突起部33Fと、当該環状突起部33Fよりも他端側に位置する軸側接触部33Gと、当該軸側接触部33Gよりも他端側に位置するスプライン部33Hとを備えている。
【0051】
環状突起部33Fは、弾性部材33Cの他端部と接触しており、弾性部材33Cを支持している。
【0052】
軸側接触部33Gは、軸部33Bの中心軸を挟むようにして複数箇所(本実施形態では、2箇所)に設けられており、それぞれ軸部33Bの中心軸の周方向に対して傾斜する傾斜面状をなしている。また、軸側接触部33Gは、保持側接触部33Eと同一方向に傾斜しており、保持側接触部33Eと面接触している。尚、軸側接触部33Gは、1つであってもよい。
【0053】
スプライン部33Hは、断面視略十字形状をなし、回動機構部34の後述する連動部34Aの内側に挿通されている。また、スプライン部33Hは、連動部34Aに対し、軸部33Bの軸方向に沿ってスライド移動可能である一方で、相対回転不能とされている。
【0054】
弾性部材33Cは、伸縮変形可能なバネ部材により構成されており、前記雄ねじにより取付部材31の一端部に固定された蓋部33Iと、前記環状突起部33Fとにより圧縮された状態で両者の間に配置されている。このため、軸部33Bは、他端側(オーバーフロー口104とは反対側)に向けて付勢された状態となっており、その結果、軸側接触部33Gが保持側接触部33Eへと常に押付けられた状態となっている。
【0055】
回動機構部34は、それぞれ同軸状に設けられた歯車部34B及び接続部34Cを具備してなる連動部34Aと、伝達部材4の他端部と接続されたラック部(図示せず)とを備えている(図1参照)。
【0056】
連動部34Aは、回動可能に構成されるとともに、軸部33Bと同軸状に配置されている。また、連動部34Aは、オーバーフロー管32に取付けられたケース部36により、保持されている。
【0057】
歯車部34Bは、外周に複数の歯を有している。また、接続部34Cは、円筒状をなし、自身の内部空間が断面十字型状に形成されている。そして、接続部34Cの内側には前記スプライン部33Hが挿通されており、軸部33Bが回動した際には、連動部34A(歯車部34B)が軸部33Bとともに回動するようになっている。尚、本実施形態において、歯車部34Bの外周には、図示しない突起が形成されており、当該突起は、前記ケース部36の内面に対し接触可能とされている。
【0058】
ラック部は、側面に複数の歯を有する棒状をなし、自身の長手方向に沿って往復移動可能に構成されている。また、ラック部は、自身の歯が前記歯車部34Bに対して噛合されており、歯車部34Bの回動に伴い往復移動する。そして、ラック部の往復移動に伴い、ラック部に接続された伝達部材4が往復移動するようになっている。
【0059】
操作ハンドル35は、栓蓋24を上下動させ、排水口103を開閉するために用いられるものである。操作ハンドル35は、表面が湾曲する円板状をなしており、側壁部102の表面から突出している。また、操作ハンドル35は、その背後の中心部分に対し軸部33Bの一端部が取付けられることによって軸部33Bにより回動可能に支持されている。
【0060】
さらに、操作ハンドル35は、取付部材31の一端側開口に対応する位置に設けられている。より詳しくは、浴槽100の貯水空間側であって操作ハンドル35の表面と相対する位置からオーバーフロー口側機構3を視認した際に、操作ハンドル35は、取付部材31の一端側開口とオーバーラップする位置に設けられている。また、本実施形態において、操作ハンドル35は、取付部材31と同軸状に設けられている。
【0061】
加えて、操作ハンドル35は、その外周部分が前記鍔部31Bの外周よりも外周側に張り出した形状とされている。そのため、浴槽100の貯水空間側であって操作ハンドル35の表面と相対する位置からオーバーフロー口側機構3を視認した際に、取付部材31のうち側壁部102の表面から突出する部位の全域が、操作ハンドル35とオーバーラップし、操作ハンドル35によって隠れた状態となっている。
【0062】
また、操作ハンドル35の外周には、側壁部102の表面に相対する環状の外周対向部35Aが設けられている。外周対向部35Aは、少なくとも排水口103を開放するときの位置へと操作ハンドル35を回動させて配置した状態において、側壁部102のうち自身に相対する部位の表面に沿う形状とされている。
【0063】
尚、本実施形態では、側壁部102のうち外周対向部35Aに対向する部位の表面は平面とされ、外周対向部35Aは、自身に相対する側壁部102の表面と平行な平面とされている。そのため、本実施形態において、外周対向部35Aの形状は、常に(操作ハンドル35がどの位置に回動されて配置されていても)側壁部102のうち自身に相対する部位の表面に沿うものとなっている。
【0064】
さらに、本実施形態では、後述するように、排水口103の開閉状態に対応して、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が変更するように構成されている。そして、排水口103が開放された状態では、操作ハンドル35の外周部分が緩衝部材6及び前記鍔部31Bの側方に位置する(本実施形態では、操作ハンドル35を外周側から視認した際に、緩衝部材6の外周部分ほぼ全域と鍔部31Bの外周部分全域とが操作ハンドル35とオーバーラップする)ように、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が設定されている。
【0065】
伝達部材4は、例えば金属製のワイヤーにより構成されており、筒状の外皮部41の内周において、往復移動可能に構成されている。伝達部材4が往復移動することによって、操作ハンドル35の回動動作による駆動力が栓蓋24側へと伝達され、ひいては栓蓋24が上下動する。また、本実施形態では、栓蓋24を上下動させることで、伝達部材4が往復移動し、操作ハンドル35が回動する。
【0066】
次いで、図1及び図4に基づき、操作ハンドル35を回動させた際における各部の動作、及び、操作ハンドル35と側壁部102との位置関係などについて説明する。図1は、排水口103を開放した状態における操作ハンドル35等を示し、図4は、排水口103を閉鎖した状態における操作ハンドル35等を示す。
【0067】
排水口103を開放状態から閉鎖状態とすべく、操作ハンドル35を一方側に回動させた場合には、操作ハンドル35とともに、軸部33B及び連動部34Aが一方側に回動する。弾性部材33Cにより、軸側接触部33Gは保持側接触部33Eに接触した状態で維持されているため、軸部33Bの回動に伴い、軸側接触部33Gが保持側接触部33Eを摺動する。その結果、軸部33Bは、その中心軸方向に沿って、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出方向側(図の右側)に移動し、ひいては、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が増大する(図4参照)。これにより、操作ハンドル35と側壁部102の表面との間には、比較的大きな隙間が形成される。尚、操作ハンドル35を一方側へと回動させていくと、最終的には歯車部34Bに設けられた前記突起がケース部36に接触し、操作ハンドル35のそれ以上の回動が抑制される。
【0068】
また、連動部34Aが一方側に回動することで、前記ラック部及びこれに接続された伝達部材4が往動する。これにより、支持軸23A及び栓蓋24が下動し、排水口103が閉鎖される。
【0069】
以上のように、本実施形態では、排水口103を閉鎖した状態において、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が比較的大きなものとされる。
【0070】
尚、本実施形態では、排水口103を開放した状態において、栓蓋24を踏む等、栓蓋24に対し下方に向けた力を加えることで、栓蓋24を下動させ、排水口103を閉鎖することができる。つまり、排水口103の閉鎖は、操作ハンドル35を用いることなく、栓蓋24を踏む等の簡単な操作でも行うことができる。また、排水口103の閉鎖に際しては、栓蓋24の下動により、伝達部材4が往動することとなる。これにより、操作ハンドル35が一方側に回動しつつ、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が増大する。
【0071】
一方で、排水口103を閉鎖状態から開放状態とすべく、操作ハンドル35を他方側に回動させた場合には、操作ハンドル35とともに、軸部33B及び連動部34Aが他方側に回動する。軸部33Bの回動に伴い、軸側接触部33Gが保持側接触部33Eを摺動することで、軸部33Bは、その中心軸方向に沿って、操作ハンドル35の前記突出方向とは反対側に移動する。その結果、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が減少し(図1参照)、操作ハンドル35と側壁部102の表面との間の隙間は非常に小さなものとなる(本実施形態では、操作ハンドル35の外周部分が側壁部102とほぼ接触し、操作ハンドル35と側壁部102の表面との間に、隙間がほとんど存在しない状態となる)。尚、操作ハンドル35を他方側へと回動させていくと、最終的に環状突起部33Fが段差部33Dに接触し、操作ハンドル35のそれ以上の回動が抑制される。本実施形態では、歯車部34Bに設けられた前記突起及びケース部36と、環状突起部33F及び段差部33Dとによって、回動範囲規定手段が構成される。
【0072】
また、連動部34Aが他方側に回動することで、前記ラック部及びこれに接続された伝達部材4が復動する。これにより、支持軸23A及び栓蓋24が上動し、排水口103が開放される。
【0073】
以上のように、本実施形態では、排水口103を開放した状態において、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が比較的小さなものとされる。
【0074】
以上詳述したように、本実施形態によれば、排水口103を開放したとき、すなわち、排水口103側から排水が行われ、オーバーフロー口104側において排水がほとんど行われないときに、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が比較的小さなものとされる。従って、操作ハンドル35が邪魔となりにくくなり、浴槽100の周辺器具(例えば、シャワーなど)を使用する際の利便性を高めることができる。さらに、浴槽100と操作ハンドル35との一体性が向上した、非常にまとまりの良い見栄えとなり、良好な外観品質を実現することができる。また、操作ハンドル35に対して手などが引っ掛かりにくくなり、安全性の向上を図ることができる。
【0075】
一方で、栓蓋24により排水口103を閉鎖したとき、つまり、オーバーフロー口104側において排水が行われ得るときにおいて、操作ハンドル35の突出量が排水口103の開放時における突出量よりも大きくなる。従って、操作ハンドル35と側壁部102との間の隙間を大きくすることができ、オーバーフロー口104側における排水能力を十分に確保することができる。
【0076】
また、操作ハンドル35の突出量を比較的大きくすることで、操作ハンドル35と側壁部102との間に位置する部位の清掃をより容易に行うことができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、操作ハンドル35を移動させるためのハンドル移動手段33を非常に簡易な構成により実現することができる。そのため、排水栓装置1の製造に係るコストを効果的に低減することができる。また、ハンドル移動手段33における、故障等の不具合の発生をより確実に抑制することができる。
【0078】
加えて、排水口103を開放したときに、操作ハンドル35の外周対向部35Aが、自身に対向する側壁部102の表面に沿う状態となる。従って、排水口103の開放時において、操作ハンドル35の外周と側壁部102との間の隙間を一層小さくすることができる。これにより、浴槽100の周辺器具を使用する際に、操作ハンドル35が一層邪魔となりにくくなり、利便性を一段と高めることができる。さらに、浴槽100と操作ハンドル35との一体性が飛躍的に向上するため、極めて良好な外観品質を実現することができる。また、操作ハンドル35に対して手などがより引っ掛かりにくくなり、さらに優れた安全性を得ることができる。
【0079】
併せて、排水口103を開放したときに、鍔部31B及び緩衝部材6の側方を覆う位置に操作ハンドル35の外周部分が配置される。従って、側壁部102に対する操作ハンドル35の突出量をより確実に十分に小さなものとすることができ、利便性や安全性等を一層高めることができる。
【0080】
また、操作ハンドル35の外周側から視認したときに、操作ハンドル35により鍔部31B及び緩衝部材6が隠れる形となるため、見栄えをより良くすることができ、外観品質の更なる向上を図ることができる。
【0081】
加えて、歯車部34Bに設けられた前記突起や環状突起部33F等によって、操作ハンドル35の過度の回動を防止することができる。従って、操作ハンドル35の過度の回動に伴う、排水栓装置1の動作不良や故障などをより確実に防止することができる。
【0082】
さらに、本実施形態では、栓蓋24を踏む等の簡単な操作により、排水口103を閉鎖しつつ、操作ハンドル35の突出量を排水口103の開放時における突出量よりも大きくすることができる。そのため、使用者にとっての利便性をより一層高めることができる。
【0083】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0084】
(a)上記実施形態では、保持側接触部33E及び軸側接触部33Gの双方が、傾斜面状をなすように構成されているが、両接触部33E,33Gのうちの一方のみが傾斜面状をなすように構成してもよい。
【0085】
(b)上記実施形態では、弾性部材33Cにより、保持側接触部33Eへと軸側接触部33Gが圧接される構成とされているが、必ずしも弾性部材を設ける必要はない。
【0086】
従って、例えば、保持部33Aの内周に当該保持部33Aの周方向に対し傾斜する螺旋状の溝を形成し、保持部33Aのうち前記螺旋状の構を形成する部位を保持側接触部とする。また、軸部33Bのうち前記螺旋状の溝に入り込む突起部分を軸側接触部とする。つまり、保持部33Aに対し軸部33Bが螺合されているような状態とする。これにより、弾性部材33Cを省略しつつ、操作ハンドル35を回動させた際には、軸側接触部が保持側接触部を摺動して、軸部33Bがその中心軸に沿って移動し、側壁部102に対する操作ハンドル35の突出量を変更することができる。
【0087】
(c)上記実施形態では、側壁部102のうち外周対向部35Aと相対する部位が平面とされており、外周対向部35Aの形状は、常に(操作ハンドル35がどの位置に回動されて配置されていても)側壁部102のうち自身に相対する部位の表面に沿うものとなっている。
【0088】
これに対し、図5及び図6に示すように、側壁部102のうち少なくとも外周対向部55Aと相対する部位が湾曲面状をなす場合には、操作ハンドル55の外周対向部55Aの形状を、排水口103を開放するときの位置へと操作ハンドル55を配置したときのみにおいて、自身(外周対向部55A)に相対する側壁部102の表面に沿うものとなるようにしてもよい。つまり、図5に示すような、排水口103を開放している状態では、側壁部102の表面に沿う一方で、図6に示すような、排水口103を閉鎖している状態では、側壁部102の表面に沿わないように外周対向部55Aの形状を設定してもよい。
【0089】
(d)上記実施形態では、操作ハンドル35を一方側へと回動させた際に、歯車部34Bに設けられた前記突起がケース部36に接触することで、操作ハンドル35のそれ以上の回動を抑制する構成とされている。
【0090】
これに対し、図7に示すように、保持側接触部33Eの終端に、一端側に突出する突起部53Jを設け、操作ハンドル35を一方側へと回動させた際に、軸部33Bに設けられた、軸側接触部33Gを表面に有する突状の凸部33Kが前記突起部53Jに接触することで、操作ハンドル35の一方側へのそれ以上の回動を規制するように構成してもよい。この場合、突起部53J及び凸部33Kと、環状突起部33F及び段差部33Dとによって、回動範囲規定手段が構成される。
【0091】
加えて、上記実施形態では、操作ハンドル35を他方側へと回動させた際に、環状突起部33Fが段差部33Dに接触することで、操作ハンドル35の他方側へのそれ以上の回動が抑制されている。これに対し、前記凸部33Kが、保持部33Aの内周に設けられた、保持部33Aの軸方向に沿って延びる段差状の立直部33Lに接触することで、操作ハンドル35の他方側へのそれ以上の回動を抑制するように構成してもよい。この場合には、突起部53J、立直部33L及び凸部33Kによって、回動範囲規定手段が構成されることとなる。
【0092】
また、操作ハンドル35を回動させた際に、前記ラック部がオーバーフロー管32やこれに固定された部材(例えば、ケース部36等)に接触することで、操作ハンドル35の過度の回動を規制することとしてもよい。
【0093】
(e)上記実施形態では、排水口103を開放した状態において、操作ハンドル35の外周部分が鍔部31B及び緩衝部材6の側方に位置するように、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量が設定されているが、排水口103を開放した状態における操作ハンドル35の突出量はこれに限定されるものではない。従って、例えば、排水口103を開放した状態において、操作ハンドル35の外周部分が鍔部31Bの側方のみに位置するように、操作ハンドル35の突出量を設定してもよい。但し、外観品質という面では、排水口103を開放した状態における、側壁部102の表面に対する操作ハンドル35の突出量を極力小さなものとすることが好ましい。
【0094】
(f)上記実施形態において、保持部33Aは、アーム部31Cにより取付部材31と連結されているが、保持部をオーバーフロー管32と連結(一体化)するように構成してもよい。
【0095】
(g)上記実施形態では、雄ねじを取付部材31(挿通孔31D)に挿通した上で雌ねじ部32Fに螺合することにより、側壁部102に対し取付部材31及びオーバーフロー管32が取付けられているが、側壁部102に対する取付部材31等の取付態様はこれに限定されるものではない。従って、例えば、取付部材31の本体部31Aの外周に雄ねじを形成するとともに、オーバーフロー管32の円筒状部32Cの内周に雌ねじを形成し、本体部31Aに形成された前記雄ねじを、円筒状部32Cに形成された前記雌ねじに螺合し、鍔部31Bとオーバーフロー管32とで側壁部102を挟み込むことにより、側壁部102に対し取付部材31及びオーバーフロー管32を取付けることとしてもよい。
【0096】
(h)上記実施形態では、槽体として浴槽100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は浴槽に限定されるものではない。従って、例えば、洗面化粧台や流し台などに対して、本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0097】
(i)上記実施形態では、栓蓋24(パッキン部24B)が排水口部材21に接触することで排水口103を閉鎖するように構成されているが、栓蓋24(パッキン部24B)が浴槽100(底壁部101)に接触することで排水口103を閉鎖するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…排水栓装置、4…伝達部材、6…緩衝部材、24…栓蓋、31…取付部材、31B…鍔部、33…ハンドル移動手段、33A…保持部、33B…軸部、33E…保持側接触部、33G…軸側接触部、35…操作ハンドル、35A…外周対向部、100…浴槽(槽体)、101…底壁部、102…側壁部、103…排水口、104…オーバーフロー口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7