(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、湯口周辺にこぼれた湯玉が画像に写り込むことによって、湯口の位置検出の精度が低くなることがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、鋳型の湯口の位置を正確に検出することができる湯口位置検出システムおよび湯口位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態による湯口位置検出システムは、鋳型の湯口の位置を検出する湯口位置検出システムであって、前記鋳型に対して相対的に移動する撮像装置を含む画像処理装置と、前記鋳型に設けられ、前記湯口に対して位置決めされた少なくとも1つのマーカーと、を備え、前記撮像装置は、前記少なくとも1つのマーカーを含む画像を撮像し、前記画像処理装置は、前記撮像装置によって撮像された前記画像に基づいて、前記湯口の位置に関する情報を生成する。
【0008】
ある実施形態において、前記少なくとも1つのマーカーは、複数のマーカーである。
【0009】
ある実施形態において、前記複数のマーカーは、3つ以上のマーカーである。
【0010】
ある実施形態において、前記少なくとも1つのマーカーのそれぞれは、耐熱性材料から形成されたマーカー部材である。
【0011】
ある実施形態において、本発明の湯口位置検出システムは、前記少なくとも1つのマーカーのそれぞれを囲うように設けられた保護部材をさらに備える。
【0012】
ある実施形態において、本発明の湯口位置検出システムは、前記撮像装置に取り付けられ、前記撮像装置に入射する光を制限する遮光カバーをさらに備える。
【0013】
ある実施形態において、前記鋳型は、前記湯口が形成された鋳型本体と、平面視において前記湯口に重ならないように前記鋳型本体上に乗せられる重りとを有し、前記少なくとも1つのマーカーは、前記重り上に設けられている。
【0014】
ある実施形態において、前記鋳型は、鋳枠と、前記湯口が形成され、前記鋳枠内に位置する鋳型本体とを有し、前記少なくとも1つのマーカーは、前記鋳枠上に設けられている。
【0015】
本発明の実施形態による鋳造装置は、上述の湯口位置検出システムと、前記鋳型に前記湯口から溶湯を注入する注湯機と、溶湯が注入された前記鋳型に、前記湯口から少なくとも粒状物を送り込む加圧装置と、を備える。
【0016】
ある実施形態において、前記加圧装置は、前記画像処理装置によって生成された前記湯口の位置に関する情報に基づいて前記粒状物の送り込みを行う。
【0017】
本発明の実施形態による湯口位置検出方法は、鋳型の湯口の位置を検出する湯口位置検出方法であって、前記鋳型に設けられるとともに前記湯口に対して位置決めされた少なくとも1つのマーカーを含む画像を撮像する工程(a)と、前記工程(a)において撮像された前記画像に基づいて前記湯口の位置に関する情報を生成する工程(b)と、を包含する。
【0018】
ある実施形態において、本発明による湯口位置検出方法は、所定の位置に少なくとも1つの開口部が形成された位置決め治具を用いて、前記少なくとも1つのマーカーを前記湯口に対して位置決めする工程(c)をさらに包含する。
【0019】
本発明の実施形態による鋳造品の製造方法は、鋳型に湯口から溶湯を注入する工程(A)と、上述の湯口位置検出方法によって、前記湯口の位置に関する情報を生成する工程(B)と、を包含する。
【0020】
ある実施形態において、本発明の鋳造品の製造方法は、溶湯が注入された前記鋳型に、前記湯口から少なくとも粒状物を送り込む工程であって、前記工程(B)において生成された前記湯口の位置に関する情報に基づいて実行される工程(C)をさらに包含する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によると、鋳型の湯口の位置を正確に検出することができる湯口位置検出システムおよび湯口位置検出方法が提供される。
【0022】
本発明の実施形態による湯口位置検出システムは、撮像装置を含む画像処理装置と、湯口に対して位置決めされた少なくとも1つのマーカーとを備えており、本発明の実施形態による湯口位置検出システムでは、撮像装置によって撮像されたマーカーを含む画像に基づいて、画像処理装置が湯口の位置に関する情報(湯口位置情報)を生成する。そのため、マーカーの位置に対する相対位置として湯口の位置を検出することができるので、湯口周辺にこぼれた湯玉や注湯直後の溶湯の明るさの影響を受けることなく、正確に湯口の位置を検出することができる。
【0023】
湯口の位置の検出をより正確に行う観点からは、1つのマーカーを用いるよりも、複数のマーカーを用いることが好ましい。複数のマーカーを用いることにより、2つのマーカーをペアとして湯口の位置の算出を行うことができるからである。
【0024】
特に3つ以上のマーカーを用いると、任意の2つのマーカーのペアから湯口の位置の算出を行い、ペアの数だけ算出された値の平均値をとることにより、検出精度をいっそう高めることができる。また、3つ以上のマーカーを用いる場合、少なくとも2つのマーカーについて良好な画像が得られれば、残りのマーカーを汚れ等の原因によりうまく撮影できなくても、湯口の位置を算出することができる。
【0025】
マーカーが、耐熱性材料から形成されたマーカー部材であると、湯玉によるマーカーの汚れが発生しにくい。
【0026】
マーカーを囲うように保護部材が設けられていると、保護部材によってマーカーへの湯玉の付着を防止することができるので、湯玉によるマーカーの汚れをより確実に防止することができる。
【0027】
遮光カバーが撮像装置に取り付けられていると、撮像装置に入射する光を遮光カバーによって制限することができるので、撮像装置の周辺の光源による撮像への悪影響(外乱)を抑制することができる。
【0028】
鋳型は、例えば、湯口が形成された鋳型本体と、鋳型本体上に乗せられる重りとを有する。この場合、マーカーは、重り上に設けられてもよい。
【0029】
あるいは、鋳型は、鋳枠と、鋳枠内に位置する鋳型本体とを有する。この場合、マーカーは、鋳枠上に設けられてもよい。
【0030】
本発明の実施形態による湯口位置検出システムは、鋳造装置に好適に用いられる。鋳造装置は、例えば、本発明の実施形態による湯口位置検出システムと、鋳型に湯口から溶湯を注入する注湯機とを備える。鋳造装置が、溶湯が注入された鋳型に湯口から粒状物を送り込む加圧装置をさらに備えていると、鋳型への注湯量を減らすことができる。そのため、注入歩留りが向上し、また、鋳造品の取り出し後の加工作業を簡略化することができる。
【0031】
鋳造装置が加圧装置を備えている構成において、加圧装置は、画像処理装置によって生成された湯口位置情報に基づいて粒状物の送り込みを行うことが好ましい。本発明の実施形態による湯口位置検出システムは、湯口の位置を正確に検出することができるので、湯口位置検出システムの画像処理装置によって生成された湯口位置情報を用いることにより、粒状物の送り込みを好適に行うことができる。
【0032】
本発明の実施形態による湯口位置検出方法は、湯口に対して位置決めされた少なくとも1つのマーカーを含む画像を撮像する工程(a)と、工程(a)において撮像された前記画像に基づいて湯口の位置に関する情報を生成する工程(b)とを包含しており、本発明の実施形態による湯口位置検出方法では、工程(a)において撮像されたマーカーを含む画像に基づいて、工程(b)で湯口の位置に関する情報(湯口位置情報)が生成される。そのため、マーカーの位置に対する相対位置として湯口の位置を検出することができるので、湯口周辺にこぼれた湯玉や注湯直後の溶湯の明るさの影響を受けることなく、正確に湯口の位置を検出することができる。
【0033】
湯口位置検出方法は、所定の位置に少なくとも1つの開口部が形成された位置決め治具を用いてマーカーを湯口に対して位置決めする工程(c)をさらに包含してもよい。位置決め治具を用いることにより、複数の鋳型についてマーカーの位置決めを容易に行うことができる。
【0034】
本発明の実施形態による湯口位置検出方法は、鋳造品の製造方法に好適に用いられる。鋳造品の製造方法は、例えば、鋳型に湯口から溶湯を注入する工程(A)と、本発明の実施形態の湯口位置検出方法によって、湯口の位置に関する情報を生成する工程(B)とを包含する。本発明の実施形態による湯口位置検出方法は、湯口の位置を正確に検出することができるので、鋳造品の製造方法が上述の工程(B)を含んでいることにより、鋳造品の製造を好適に行うことができる。
【0035】
鋳造品の製造方法は、溶湯が注入された鋳型に湯口から粒状物を送り込む工程(C)をさらに包含してもよい。工程(C)を包含することにより、鋳型への注湯量を減らすことができる。そのため、注入歩留りが向上し、また、鋳造品の取り出し後の加工作業を簡略化することができる。この工程(C)は、工程(B)において生成された湯口位置情報に基づいて実行されることが好ましい。本発明の実施形態による湯口位置検出方法は、湯口の位置を正確に検出することができるので、工程(B)において生成された湯口位置情報に基づいて工程(C)を実行することにより、粒状物の送り込みを好適に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0038】
まず、
図1および
図2を参照しながら、本発明の実施形態による湯口位置検出システム100を説明する。
図1は、鋳造ラインCLに設置された湯口位置検出システム100を模式的に示す上面図であり、
図2は、
図1中の2A−2A’線に沿った断面図である。
【0039】
図1に示すように、鋳造ラインCLにおいて、複数の鋳型Mが、所定の方向D1に沿って搬送される。鋳型Mは、湯口1gが形成された鋳型本体1と、鋳枠(ここでは金枠)1Fと、重り2とを有する。鋳型本体1は、砂型であり、その内部にキャビティが形成されている。鋳型本体1は、金枠1F内に位置している。なお、鋳型本体1は、砂型に限定されるものではなく、重力注湯を行う鋳造法用の種々の鋳型であってよい。例えば、セラミックス粒子から形成された鋳型や、金属粒子から形成された鋳型であってもよい。
【0040】
鋳型本体1のキャビティは、
図2に示すように、湯口部1a、湯道部1b、押湯部1cおよび製品部1dから構成される。
図1および
図2に示す例では、鋳型本体1上には重り2が乗せられている。重り2は、開口部2aを有し、開口部2aから鋳型本体1の湯口1gが露出するように(つまり湯口1gが開口部2aに重なるように)配置されている。言い換えると、重り2は、平面視において湯口1gに重ならないように鋳型本体1上に乗せられている。
【0041】
湯口位置検出システム100は、鋳型Mの湯口1gの位置(典型的には湯口1gの中心位置)を検出する。湯口位置検出システム100は、
図1および
図2に示すように、撮像装置(デジタルカメラ)12を含む画像処理装置10と、鋳型Mに設けられ、湯口1gに対して位置決めされた少なくとも1つのマーカー20とを備える。湯口位置検出システム100(マーカー20を除く部分)は、鋳型Mの搬送方向D1と反対の方向D2に沿って移動可能である。そのため、撮像装置12は、鋳型Mに対して相対的に移動可能である。
【0042】
本実施形態では、1つの鋳型Mに対して複数の(より具体的には2つの)マーカー20が設けられている。マーカー20は、重り2上に設けられている。
【0043】
画像処理装置10は、上述した撮像装置12に加え、演算部14を有する。演算部14は、典型的には、コンピュータ(例えばパネルコンピュータ)である。画像処理装置10は、不図示の照明装置をさらに有してもよい。
【0044】
撮像装置12は、
図2およびさらには
図3に示すように、マーカー20を含む画像を撮像する。画像処理装置10は、撮像装置12により撮像された画像(マーカー20を含む画像)に基づいて、湯口1gの位置に関する情報(以下では「湯口位置情報」とも呼ぶ)を生成する。湯口位置情報の生成は、マーカー20を含む画像に対して所定の画像処理を行うことによって実行される。
【0045】
上述したように、本実施形態の湯口位置検出システム100では、マーカー20を含む画像に基づいて湯口位置情報が生成され、そのことにより、鋳型Mの湯口1gの位置を正確に検出することができる。画像処理によって湯口の位置を検出しようとする場合、湯口1gを含む画像を撮像し、その画像から直接湯口1gの位置を検出する手法が考えられる。しかしながら、そのような手法では、湯口1gの位置を正確に検出することができないおそれがある。例えば、湯口1gの周辺にこぼれた湯玉が画像に写り込むことにより、湯口1gの位置の検出精度が低下することがある。これに対し、本実施形態の湯口位置検出システム100では、湯口1gに対して位置決めされたマーカー20を含む画像に基づいて湯口位置情報が生成されるので、マーカー20の位置に対する相対位置として湯口1gの位置を検出することができる。そのため、湯口1gを撮影する手法よりも正確に湯口1gの位置を検出することができる。
【0046】
本実施形態では、マーカー20が2つの場合を例示したが、マーカー20の個数はこれに限定されるものではない。マーカー20は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。ただし、1つのマーカー20を用いる場合よりも、複数のマーカー20を用いる場合の方が、湯口1gの位置をより正確に検出することができる。また、2つのマーカー20を用いる場合よりも、3つ以上のマーカー20を用いる場合の方が、湯口1gの位置をいっそう正確に検出することができる。
【0047】
ここで、複数のマーカー20を用いる場合における、湯口1gの位置の算出方法の例を説明する。以下の例では、重り2に形成された円形の開口部2aの中心が、湯口1gの中心に一致するものとして計算を行っている。
【0048】
図4は、2つのマーカー20を用いる場合における、重り2の開口部2aと2つのマーカー20との位置関係を示す上面図である。ここでは、
図4に示されている2つのマーカー20のうち、相対的に右側に位置するマーカー20Aを第1マーカーと呼び、相対的に左側に位置するマーカー20Bを第2マーカーと呼ぶ。
【0049】
図4において(撮像される画像において)、ある1点を原点とし、原点から左右方向に延びる軸をx軸(原点よりも右側が正、左側が負)、原点から上下方向に延びる軸をy軸(原点よりも上側が正、下側が負)とする座標系を考える。
【0050】
開口部2aの中心をP0(x
0, y
0)、第1マーカー20Aの中心をP1(x
1, y
1)、第2マーカー20Bの中心をP2(x
2, y
2)とする。また、開口部2aの中心P0と第1マーカー20Aの中心P1との距離をRとし、第1マーカー20Aの中心P1および第2マーカー20Bの中心P2を結ぶ直線と、第1マーカー20Aの中心P1および開口部2aの中心P0を結ぶ直線とのなす角度をαとする(反時計回りが正)。さらに、第1マーカー20Aの中心P1および第2マーカー20Bの中心P2を結ぶ直線とx軸の負方向とがなす角度をθ(反時計回りが正)とする。
【0051】
角度θは、下記式(1)により表わされ、開口部2aの中心P0の座標(x
0, y
0)は、下記式(2)および(3)により表わされる。また、距離Rおよび角度αは、例えば後述する位置決め治具24を用いて予め求めておくことが可能である。そのため、第1マーカー20Aおよび第2マーカー20Bを含む画像から、画像処理によってP1の座標(x
1, y
1)、P2の座標(x
2, y
2)を求めることにより、開口部2aの中心P0の座標(x
0, y
0)、つまり、湯口1gの中心の位置を算出することができる。
【数1】
【数2】
【数3】
【0052】
図5は、3つのマーカー20(第1マーカー20A、第2マーカー20Bおよび第3マーカー20C)を用いる場合における、重り2の開口部2aと3つのマーカー20との位置関係を示す上面図である。
【0053】
3つ以上のマーカー20を用いる場合、3つ以上のマーカー20のうちから任意の2つのマーカー20を選択し、そのペア(2つのマーカー20)について、
図4を参照しながら説明した方法と同様に、開口部2aの中心P0の座標(x
0, y
0)を算出することができる。2つのマーカー20のペア(組み合わせ)の数(3つのマーカー20を用いる場合には3)だけ開口部2aの中心P0の座標(x
0, y
0)を算出し、算出された値の平均値をとることにより、検出精度を高めることができる。
【0054】
また、3つ以上のマーカー20を用いる場合、少なくとも2つのマーカー20について良好な画像が得られれば、残りのマーカー20を汚れ等の原因によりうまく撮影できなくても、開口部2aの中心P0の座標(x
0, y
0)を算出することができる。
【0055】
なお、既に説明したように、マーカー20は1つであってもよい。1つのマーカー20を用いる場合、例えば、以下のようにして湯口1gの位置を算出することができる。
【0056】
ここでは、すべての鋳型Mが搬送方向Dに対して平行に並んでおり、平面視における時計回り(または反時計回り)のずれは無視できると仮定する。
【0057】
開口部2aの中心P0の座標 (x
0, y
0)と、マーカー20の中心P1の座標(x
1, y
1)との差を(Δx, Δy)とすると、開口部2aの中心P0の座標 (x
0, y
0)は、下記式(4)および(5)により表わされる。
x
0=x
1−Δx ・・・(4)
y
0=y
1−Δy ・・・(5)
【0058】
Δx、Δyは、例えば後述する位置決め治具24を用いて予め求めておくことが可能であるので、1つのマーカー20を含む画像から、画像処理によってその中心P1の座標(x
1, y
1)を求めることにより、開口部2aの中心P0の座標(x
0, y
0)、つまり、湯口1gの中心の位置を算出することができる。
【0059】
続いて、
図6から
図11を参照しながら、マーカー20の具体的な構成を説明する。
【0060】
図6に示す例では、マーカー20は、平面状であり、耐熱性塗料の塗布か、または、耐熱性材料の貼り付けにより形成されている。マーカー20の認識を好適に行うためには、マーカー20は、白色であることが好ましい。
図6に示した例は、マーカー20を簡便に形成できるという利点を有する。ただし、
図6に示した例では、マーカー20が平面状である(厚さがほぼゼロである)ので、マーカー20が湯玉で汚れやすい。
【0061】
図7に示す例では、マーカー20は、耐熱性材料(例えば鉄)から形成されたマーカー部材であり、円柱状である。
図7に示した例は、マーカー20が湯玉で汚れにくいという利点を有する。マーカー部材であるマーカー20の高さ(厚さ)に特に制限はないが、汚れにくさの観点からは、25mm以上であることが好ましい。
【0062】
図8(a)および(b)は、マーカー部材であるマーカー20のより具体的な構成の一例を示す上面図および斜視図である。マーカー20の認識を好適に行うためには、マーカー20の上面20uは白色であることが好ましく、マーカー20の側面20sはつや消しの黒色であることが好ましい。マーカー20の直径d1は、例えば30mmである。マーカー20の高さh1は、例えば30mmである。マーカー20は、
図8(a)および(b)に示すように、例えばボルト21によって重り2に取り付けられる。
【0063】
図9に示す例では、各マーカー20を囲うように保護部材22が設けられている。ここでは、円柱状のマーカー20の外側に円筒状の保護部材22が配置されている。保護部材22は、耐熱性材料(例えば鉄)から形成されている。
図8に示した例では、保護部材22により、マーカー20への湯玉の付着を防止することができるので、湯玉によるマーカー20の汚れをより確実に防止することができる。
【0064】
図10(a)および(b)は、保護部材22のより具体的な構成の一例を示す上面図および側面図である。マーカー20の認識を好適に行うためには、保護部材22は、その全体がつや消しの黒であることが好ましい。
図10(a)および(b)に示す例では、保護部材22は、円筒状のベース部22aと、ベース部22a上に設けられた半円筒状のカラー部22bとを有する。保護部材22は、カラー部22bがマーカー20に対して湯口1g側(開口部2a側)に位置するように配置される。ベース部22aの外径d2は、例えば70mmであり、カラー部22bの内径d3は、例えば48mmである。ベース部22aの高さh2は、例えば25mmであり、カラー部22bの高さh3は、例えば10mmである。
【0065】
なお、マーカー20および保護部材22aの配色は、上述の例に限定されないが、マーカー20(あるいはマーカー20の上面20u)とその周囲とのコントラストがなるべく大きくなるような配色であることが好ましい。
【0066】
図6〜
図10には、撮像方向(開口部2の中心軸に平行)から見たときのマーカー20の形状(マーカー20の平面形状)が円形である場合を示しているが、マーカー20の平面形状は円形に限定されるものではなく、任意の形状であり得る。例えば、
図11に示すように、マーカー20の平面形状が矩形であってもよい。
図11には、マーカー20として四角柱状のマーカー部材が設けられている例が示されている。マーカー20の平面形状が円形以外である場合でも、マーカー20の重心点やエッジを抽出することにより、開口部2aの中心位置を算出することができる。
【0067】
また、重り2上におけるマーカー20の位置は、これまで図示したものに限定されない。マーカー20は、例えば、
図12に示すように、重り2上の任意の位置20Pに配置することができる。ただし、1回の撮像により、配置されたすべてのマーカー20を撮影し得ることが好ましい。
【0068】
ここで、マーカー20を湯口1gに対して位置決めする方法の例を説明する。マーカー20は、例えば、
図13に示すような位置決め治具24を用いて、湯口1gに対して位置決めされ得る。位置決め治具24は、所定の位置に形成された少なくとも1つ(ここでは複数)の開口部を有する。
図13に示す例では、位置決め治具24は、重り2の開口部2aに対応する第1開口部24aと、マーカー20に対応する第2開口部24bとを有する。
【0069】
図14(a)、(b)および
図15(a)、(b)は、位置決め治具24を用いた位置決め方法を示す図である。まず、
図14(a)に示すように、重り2の開口部2aに、樹脂から形成された栓(ふた)26をはめる。ここでは、開口部2aが円形であるので、栓26は円盤状である。次に、
図14(b)に示すように、位置決め治具24を、第1開口部24aが栓26にはまるように重り2上にのせる。
【0070】
続いて、
図15(a)に示すように、位置決め治具24の第2開口部24bにマーカー20をはめ、ボルト21で固定する。このようにして、
図15(b)に示すように、開口部2aに対して(つまり湯口1gに対して)位置決めされたマーカー20が取り付けられた重り2を得ることができる。
【0071】
位置決め治具24を用いることにより、複数の鋳型1(複数の重り2)についてマーカー20の位置決めを容易に行うことができる。なお、栓26は、重り2の開口部2aの位置のキャリブレーションにも用いることができる。位置決め治具24を重り2上(鋳型M上)に乗せた状態において撮像装置12で撮像した画像から、開口部2aの中心P0の座標(x
0, y
0)を求めることができるので、求めた(x
0, y
0)を用いて、上述したR、α、Δx、Δyが得られる。
【0072】
また、例示した構成では、位置決め治具24自体は、重り2に対して栓26により位置決めされるが、位置決め治具24は、重り2(あるいは鋳型M)に対して何らかの構造により位置決めされてさえいればよく、例示した構成以外の構成であってもよい。そのため、位置決め治具24は、重り2の開口部2aに対応する開口部が必ずしも形成されている必要はなく、少なくともマーカー20に対応する開口部が形成されていればよい。従って、マーカー20が1つの場合には、ただ1つの開口部が形成されていてもよい。
【0073】
マーカー20は、湯口1gに対して位置決めされていればよく、必ずしも重り2上に設けられている必要はない。マーカー20は、例えば、
図16に示すように、鋳型Mの金枠(鋳枠)1F上の任意の位置20Pに設けられる。
【0074】
図17(a)および(b)に、撮像装置12の具体的な構成の例を示す。
図17(a)および(b)は、撮像装置12を模式的に示す側面図および下面図である。
【0075】
図17(a)に示すように、撮像装置12は、通信ケーブル13に接続されており、撮像装置12によって撮像された画像は、この通信ケーブル13を介して演算部14に出力される。また、撮像装置12には、防塵カバー15および遮光カバー16が取り付けられている。防塵カバー15により、撮像装置12のレンズ12aへの塵の付着を防止することができる。
【0076】
遮光カバー16は、撮像装置12に入射する光を制限する。ここでは、遮光カバー16は、
図17(b)に示すように、撮像装置12を下側から見たときにレンズ12aの一部を覆うように設けられている。遮光カバー16により、撮像装置12の周辺の光源による撮像への悪影響(外乱)を抑制することができる。
【0077】
上述したように、本実施形態の湯口位置検出システム100によれば、鋳型Mの湯口1gの位置を正確に検出することができる。湯口位置検出システム100は、鋳造装置に好適に用いることができる。
【0078】
図18に、湯口位置検出システム100を備える鋳造装置200を示す。
図18は、鋳造装置200を模式的に示すブロック図である。
【0079】
鋳造装置200は、
図18に示すように、湯口位置検出システム100と、注湯機110と、加圧装置120とを備える。鋳造装置200は、さらに、制御装置130を備える。
【0080】
注湯機110は、鋳型Mに湯口1gから溶湯を注入する。注湯機110の構成に特に制限はない。注湯機110としては、種々の方式の注湯機を用いることができ、例えば、取鍋傾動式の自動注湯機を用いることができる。取鍋傾動式の自動注湯機は、取鍋や、取鍋を傾動させる取鍋傾動機構などを有する。
【0081】
加圧装置120は、溶湯が注入された鋳型Mに、湯口1gから少なくとも粒状物を送り込む。加圧装置120は、粒状物を送り出すノズル部と、ノズル部を移動させる移動機構と、粒状物をノズル部に供給する粒状物供給機とを有する。粒状物は、耐熱性材料から形成されており、例えば、砂や鋼球である。典型的には、加圧装置120は、粒状物をガス(例えば圧縮空気)とともに湯口1gから鋳型Mに吹き込む。
【0082】
制御装置130は、注湯機110および加圧装置120の動作するタイミングや移動量などを制御する。制御装置130は、上記の制御を、画像処理装置10から出力される情報に基づいて行うことができる。制御装置130は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)である。
【0083】
鋳造装置200は、加圧装置120を有していることにより、鋳型Mへの注湯量を減らすことができる。そのため、注入歩留りが向上し、また、鋳造品の取り出し後の加工作業を簡略化することができる。
【0084】
なお、加圧装置120による粒状物の送り込みは、鋳型Mへの注湯後に速やかに行われる。しかしながら、仮に、溶湯が注入された直後の湯口1gを撮影すると、溶湯が非常に明るいので、湯口1gの形状を精度良く認識することは難しい。これに対し、鋳造装置200では、加圧装置120は、画像処理装置10によって生成された湯口1gの位置に関する情報(つまりマーカー20の位置に対する相対位置として検出された湯口1gの位置)に基づいて粒状物の送り込み(ガスおよび粒状物の吹き込み)を行う。そのため、ノズル部を、湯口1g上に正確に位置させることができ、粒状物の送り込みを好適に行うことができる。また、ノズル部が、鋳型Mの金枠(鋳枠)1Fや重り2と干渉して破損することを防止することができる。
【0085】
ここで、
図19を参照しながら、加圧装置120の具体的な構成の例を説明する。
図19に示す例では、加圧装置120は、ノズル部121と、移動機構122と、粒状物供給機123とを有する。
【0086】
ノズル部121は、鋳型Mの湯口1gにガスおよび粒状物129を吹き出す(送り出す)部分である。
【0087】
移動機構122は、ノズル部121を移動させ得る。具体的には、移動機構122は、ノズル部121を、左右方向(鋳型Mの搬送方向D1に平行な方向)、前後方向(搬送方向D1に直交する方向)および上下方向に移動させることができる。移動機構122は、上述したようなノズル部121の移動が可能である限り、その具体的な構成に特に制限はなく、例えば、左右方向、前後方向および上下方向のそれぞれに沿った移動を可能にするためのサーボモーターを含んでいる。
【0088】
粒状物供給機123は、粒状物129をノズル部121に供給する。粒状物供給機123は、粒状物129を収容する粒状物タンク124と、粒状物タンク124およびノズル部121を連通させる粒状物供給管125と、粒状物タンク124および粒状物供給管125の間に設けられた開閉スライド部材126とを有する。粒状物供給機123は、さらに、粒状物供給管125に接続されたガス供給管127と、ガス供給管127に取り付けられた開閉バルブ128とを有する。
【0089】
既に説明したように、鋳造装置200は、加圧装置120を有していることにより、鋳型Mへの注湯量を減らすことができる。
【0090】
一般に、鋳型のキャビティ―は、湯口部、湯道部、押湯部および製品部から構成される(
図2参照)。鋳造品を製造する際、溶湯は、製品部だけでなく、湯口部、湯道部および押湯部にも注入される。注湯後に鋳型が冷却されて溶湯の凝固が完了すると、鋳型がばらされて鋳造品の取り出しが行われる。このとき、製品部に対応する部分のみが分離されて仕上げ加工を施され、最終的な製品となる。湯口部、湯道部および押湯部に対応する部分は、リターン材として再溶解される。このように製品部(キャビティ―のうち実際の製品に対応する領域)以外にも注湯を行うことは、注入歩留りが低いことの原因であった。また、上記のような余分な注湯は、鋳型からの鋳造品の取り出し後の加工作業を増加させる原因でもあった。
【0091】
これに対し、加圧装置120によって、注湯後の鋳型Mに湯口1gから少なくとも粒状物129を送り込むことにより、湯口部1aおよび湯道部1bへの注湯量を減らすことができる。そのため、注入歩留りが向上し、また、鋳造品の取り出し後の加工作業を簡略化することができる。
【0092】
以下、
図20〜
図23を参照しながら、加圧装置120の動作を説明する。
【0093】
図20は、鋳型M(鋳型本体1)に湯口1gから溶湯mが注入された直後の状態を示している。注入された溶湯mの体積は、鋳型本体1のキャビティ―の総体積よりも小さく、製品部1dおよび押湯部1cの体積にほぼ等しい(あるいは、製品部1dおよび押湯部1cの体積よりもやや大きい)。
【0094】
注湯後の鋳型Mの湯口1g上に、
図21に示すように、加圧装置120のノズル部121が移動機構122(
図21では不図示)により移動し、ノズル部121からガスGが鋳型本体1のキャビティ―内に吹き込まれる。ガスGの吹き込みは、ガス供給管127に取り付けられた開閉バルブ128を開状態とすることによって行われる。これにより、溶湯mが押し込まれ、製品部1dおよび押湯部1cに充填される。
【0095】
次に、
図22に示すように、ノズル部121から粒状物129がキャビティ―内に送り込まれる。粒状物129の送り込みは、粒状物タンク124および粒状物供給管125の間に設けられた開閉スライド部材126を開状態とすることによって行われる。また、このとき、開閉バルブ128も開状態のままであり、粒状物129は、ガスGとともに吹き込まれる。
【0096】
図23は、粒状物129の吹き込みが完了した状態を示している。
図23に示されているように、このとき、溶湯mの最上部は、最後部よりも高い位置にあるので、溶湯mには、
図20に示した状態に戻ろうとする流動力が作用するが、吹き込まれた粒状物129による摩擦力(粒状物129同士の摩擦力と、粒状物129およびキャビティ―内面間の摩擦力)によって、その流動が止められている。
【0097】
このように、加圧装置120によって粒状物129をキャビティ―内に送り込むことにより、湯口部1aおよび湯道部1bへの注湯量を減らす(ほぼ無くす)ことができる。
【0098】
なお、上述した例では、ガスGの吹き込み後に粒状物129の送り込みを行うが、粒状物129の送り込みと同時、あるいは粒状物129の送り込みの後にガスGの吹き込みを行ってもよい。
【0099】
また、粒状物129をガスGとともにキャビティー内に吹き込む構成に代えて、粒状物129を押圧部材(例えば空気圧シリンダーのロッド)によってキャビティ―内に押し込む構成としてもよい。
【0100】
続いて、上述した湯口位置検出システム100および鋳造装置200を用いて実行される、湯口位置検出方法および鋳造品の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
【0101】
図24は、本実施形態における湯口位置検出方法の例を示すフローチャートである。
【0102】
本実施形態における湯口位置検出方法では、まず、湯口1gに対して位置決めされた少なくとも1つのマーカー20を含む画像を撮像する(工程S1)。既に説明したことからわかるように、この工程S1において、複数のマーカー20(好ましくは3つ以上のマーカー20)を含む画像を撮像することにより、湯口1gの位置をより正確に検出することができる。
【0103】
次に、工程S1において得られた画像に対して画像処理を行うことによって、湯口1gの位置に関する情報を生成する(工程S2)。このようにして、鋳型Mの湯口1gの位置を検出することができる。
【0104】
本実施形態の湯口位置検出方法では、湯口1gに対して位置決めされたマーカー20を含む画像に基づいて湯口位置情報が生成されるので、マーカー20の位置に対する相対位置として湯口1gの位置を検出することができる。そのため、湯口1gの位置を正確に検出することができる。
【0105】
図25は、本実施形態における湯口位置検出方法の他の例を示すフローチャートである。
【0106】
図25に示す例では、工程S1の前に、位置決め治具24を用いて、少なくとも1つのマーカー20を湯口1gに対して位置決めする(工程S0)。位置決め治具24には、
図13を参照しながら説明したように、所定の位置に少なくとも1つ(
図13の例では複数)の開口部が形成されている。位置決め治具24を用いることにより、複数の鋳型Mについてマーカー20の位置決めを容易に行うことができる。
【0107】
図26は、本実施形態における鋳造品の製造方法の例を示すフローチャートである。
【0108】
本実施形態における鋳造品の製造方法では、まず、鋳型Mに湯口1gから溶湯を注入する(工程S11)。次に、湯口1gの位置に関する情報を生成する(工程S12)。この工程S12は、上述した湯口位置検出方法によって実行される。
【0109】
続いて、溶湯が注入された鋳型Mに、湯口1gから少なくとも粒状物129を送り込む(工程S13)。この工程S13は、工程S12において生成された湯口位置情報に基づいて実行される。その後、溶湯の凝固が完了すると、型ばらしおよび最終加工を行う(工程S14)。このようにして、鋳造品の製造を行うことができる。
【0110】
本実施形態の鋳造品の製造方法は、溶湯が注入された鋳型Mに湯口1gから粒状物129を送り込む工程S13を含んでいることにより、鋳型Mへの注湯量を減らすことができる。そのため、注入歩留りが向上し、また、鋳造品の取り出し後の加工作業を簡略化することができる。また、この工程S13は、画像処理装置によって生成された湯口1gの位置に関する情報に基づいて行われるので、粒状物129の送り込みを好適に行うことができる。
【0111】
なお、上記の説明では、画像処理装置10によって生成された湯口位置情報に基づいて粒状物129の送り込みを行う例を説明したが、湯口位置情報に基づく制御は、この例に限定されるものではない。例えば、湯口位置情報に基づいて、溶湯の注入を行ってもよい。湯口位置情報に基づいて溶湯の注入を行うことにより、注湯作業のいっそうの効率化や自動化が可能となる。
【0112】
図27は、湯口1gの位置検出のより詳細な例を示すフローチャートである。
【0113】
鋳造装置200がある鋳型の位置へ移動すると、制御装置130からの指令により、撮像装置12がマーカー20を含む画像を撮像する(工程S21)。
【0114】
次に、撮像された画像内におけるマーカー20を抽出する(工程S22)。マーカー20の抽出は、例えば、色(明るさ)、形、大きさを判定することにより行われる。このとき、画像内における湯玉(明るさが最大となる領域)は、除外する。
【0115】
続いて、マーカー20のペア(2つのマーカー20)から、湯口1gの位置(あるいは重り2の開口部2aの中心位置)を算出する(工程S23)。このとき、ペアの一方のマーカー20から湯口1gの位置の平行移動量を算出し、他方のマーカー20から湯口1gの位置の回転移動量を算出する(
図4を参照しながら説明した手法である)。また、3つ以上のマーカー20が設けられている場合には、任意の2つのマーカー20を選択して各ペアについて算出を行い、平均値および分散を求める。
【0116】
次に、算出された湯口1gの位置(あるいは重り2の開口部2aの中心位置)の妥当性を判定する(工程S24)。算出された位置が想定範囲内でない場合には、マーカー20の抽出または鋳造装置200の移動の不具合であるとみなし、エラー信号が出力される。また、マーカー20が3つ以上である場合に、分散が想定範囲を超えたときは、エラー信号が出力されるか、あるいは、マーカー20の汚れ等によるマーカー20の抽出ミスを想定し、正しく抽出されたと見なせるペアについての算出結果のみを用いる。
【0117】
続いて、算出された湯口1gの位置(あるいは重り2の開口部2aの中心位置)と、本来の位置との差を計算する(工程S25)。計算結果は、補正値として制御装置130へ出力される。
【0118】
次に、補正値に基づいて鋳造装置200を移動させ、鋳造動作を実行する(工程S26)。
【0119】
続いて、算出結果の数値および画像をコンピュータファイルとして保存する(工程S27)。その後、鋳造装置200は次の鋳型の位置に移動する。このようにして、湯口1gの位置検出およびそれに続く鋳造動作を実行することができる。