(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスク装置の中には、防振のために、光ピックアップなどの再生部、ならびに搬送ローラおよび可動部材などのディスク搬送部を、コイルばねなどの弾性部材を介してシャーシに取り付けた構成のものがある。以下、この構成を全体フロート型と称す。
図12および
図13は、全体フロート型のディスク装置の断面図であり、再生部およびディスク搬送部などが設けられたフローティング部100が、複数のコイルばね101を介してシャーシ102に保持され、フローティング状態となっている。また、このディスク装置はオーディオセットの意匠外箱103に収納されている。この構成において、フローティング部100のディスク挿入口103a付近に、上記特許文献1に記載の阻止手段104を設けた場合、1枚目のディスク105がフローティング部100の再生部に収まっている状態で2枚目のディスク106が斜め下方向から挿入されると(
図12(a))、このディスク106の外周縁が阻止手段104の垂直面に点接触してフローティング部100を任意方向に押圧することになる。このとき、阻止手段104にディスク106が当接してそれ以上奥へ進まないため、ユーザがディスク106をねじ込んだりするとその動きに応じて阻止手段104が押し下げられることがある。すると、この阻止手段104と一体に遊動するフローティング部100の前部も押し下げられ、シャーシ102との間にディスク106が入り込む隙間ができる(
図12(b))。
このため、
図13に示すように、フローティング部100とシャーシ102の隙間への2枚目のディスク106の誤挿入を防止できないという課題があった。誤挿入されたディスク106は搬送ローラが届かない位置にあるため、ディスク排出不良が発生する可能性があった。
【0006】
なお、上記特許文献1のディスク装置は全体フロート型ではなく、ディスク搬送部がシャーシに直接取り付けられた構成であるので、たとえ2枚目のディスクがディスク挿入口の斜め下方向から挿入されて阻止手段に点接触したとしても、阻止手段を含むディスク搬送部は遊動しない。従って、シャーシと阻止手段との間にディスクが入り込む隙間はできず、上記のような課題もなかった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、光ピックアップなどの再生部および搬送ローラなどのディスク搬送部が弾性部材を介してシャーシに保持されたディスク装置において、再生位置以外へのディスクの誤挿入を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るディスク装置は、ディスク挿入防止突部に、搬送経路の方向に対して傾いた状態で挿入される新たなディスクが当接し、該当接による押圧力によりフローティング部を遊動させる受け部を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、再生部にディスクがある場合にディスク挿入防止突部が搬送経路内に移動して再生部への2枚目のディスクの重複挿入を防止することに加えて、このディスク挿入防止突部に設けた受け部が、斜め下方向から挿入される2枚目のディスクの押圧を受けてフローティング部を上方移動させることによりシャーシ天面との隙間を閉じ、2枚目ディスクの再生部以外への誤挿入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るディスク装置の構成を示す外観斜視図であり、ディスク挿入待機状態である。
【
図2】実施の形態1に係るディスク装置の構成を示す外観斜視図であり、ディスク再生状態である。
【
図3】実施の形態1に係るディスク装置のフローティング部の構成を示す外観斜視図であり、ディスク再生状態である。
【
図4】実施の形態1に係るディスク装置のフローティング部の構成を示す平面図であり、ディスク再生状態である。
【
図5】実施の形態1に係るディスク装置において、ディスク搬送部を
図3のA方向から見た側面図であり、ディスク挿入待機状態を示す。
【
図6】実施の形態1に係るディスク装置において、ディスク搬送部を
図3のA方向から見た側面図であり、ディスク再生状態を示す。
【
図7】実施の形態1に係るディスク装置を模式的に表した側面図である。
【
図8】実施の形態1に係るディスク装置の受け部の変形例を示す斜視図である。
【
図9】実施の形態1に係るディスク装置の受け部の別の変形例を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態1に係るディスク装置の受け部の別の変形例を示す斜視図である。
【
図11】実施の形態1に係るディスク装置の受け部の別の変形例を示す斜視図である。
【
図12】従来の全体フロート型のディスク装置の構成を示す断面図である。
【
図13】従来の全体フロート型のディスク装置の構成を示す断面図であり、2枚目のディスクが誤挿入された様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1および
図2に示すように、本実施の形態1に係るディスク装置1は、外箱である金属製のシャーシ2と、このシャーシ2に弾性部材を介して保持されている樹脂製のフローティング部3とから構成されている。また、シャーシ2の前面には、ディスク4を出し入れするための挿排口5が形成されている。なお、
図1はディスク挿入待機状態、
図2はディスク4が挿入された後のディスク再生状態を示している。
【0012】
図3は、フローティング部3の構成を示す外観斜視図、
図4は、フローティング部3の内部構成を示す平面図であり、それぞれディスク再生状態を示す。また、
図5および
図6は、フローティング部3のディスク搬送部を
図3のA方向から見た側面図であり、
図5はディスク挿入待機状態、
図6はディスク再生状態を示す。
【0013】
防振機構であるフローティング部3は、3箇所のダンパ6と4箇所のコイルばね7aにより、シャーシ2に対して遊動可能に保持されている。なお、コイルばね7aの図示を省略して、このコイルばね7aを掛止するフック7のみ図示している箇所もある。
このフローティング部3には後述するディスク搬送部および再生部が設けられており、シャーシ2が振動してもダンパ6とコイルばね7aにより振動が減衰するのでフローティング部3のディスク搬送部および再生部などに振動が伝わりにくくなる。
なお、図示例では、シャーシ2にフローティング部3を遊動自在に保持する弾性部材としてダンパ6とコイルばね7aを組み合わせて用いたが、これに限定されるものではない。
【0014】
フローティング部3に設けられたディスク搬送部は、挿排口5に挿入されたディスク4を再生位置(
図4に二点鎖線で示すディスク4のある位置)へ搬送する搬送ローラ11と、ディスク再生時に搬送経路内に上昇して重複挿入を阻止するディスク挿入防止突部12と、搬送ローラ11とディスク挿入防止突部12をディスク装置1の状態に応じて上下方向に可動させる可動部材14と、モータ(不図示)と、搬送ローラ11および可動部材14にモータの駆動力を伝達するギア連15と、再生位置に到達したディスク4が押動することにより回動するレバー16と、レバー16の回動動作に伴って前後方向にスライド移動して可動部材14を回転させるスライド部材17と、ディスク4の搬送をガイドするディスクガイド18(
図4では図示省略)とから構成される。
【0015】
搬送ローラ11は、金属製のシャフトをゴム部材などで被覆して構成されている。このシャフトの両端は可動部材14に回転自在に支持されており、
図5および
図6に示すようにシャフトの一端にギア11aが固定されている。そして、
図5に示すディスク挿入待機状態のときにはギア11aがギア連15に噛み合って回転し、搬送ローラ11を回転させて、ディスク装置1前方の挿排口5から挿入されるディスク4を、ディスク装置1後方の再生位置側へ搬送する。
【0016】
板金部材である可動部材14は、再生位置側で搬送ローラ11を回転自在に支持すると共に、他方の挿排口5側を上方向に折り曲げた折り曲げ部14aに樹脂製のディスク挿入防止突部12を取り付けてなる。このディスク挿入防止突部12の挿排口5を向いた面を、挿排口5から挿入されるディスク4の外周縁が当接する受け部13とし、この受け部13を、上方に向かうにつれ挿排口5側に傾斜したテーパ形状にしている。また、可動部材14の軸方向の一端であって搬送ローラ11の支持部分から偏心した位置に、カムピン14bが突設されており、このカムピン14bがスライド部材17のカム溝17aに係合する。また、可動部材14は、フローティング部3に回動自在に支持された支点14c(
図5および
図6に示す)を中心にして回動可能となっており、回動に伴い、搬送ローラ11およびディスク挿入防止突部12が上下方向に互い違いで移動する。
【0017】
樹脂製のスライド部材17には、可動部材14のカムピン14bと係合するためのカム溝17aが形成されている。カム溝17aは、高さ位置の異なる溝部17b,17cと、これら溝部17b,17cを繋ぐ傾斜溝部17dとからなる。また、スライド部材17の上端面にクランパ押上部17eを突設して、スライド部材17の前後方向の移動に伴いクランプ部材23を上下方向に移動させる。このスライド部材17は、ディスク挿入待機状態では
図5に示すように再生位置側へ後退した位置にあり、ディスク4が再生位置に到達してレバー16を押動すると、このレバー16が回動してスライド部材17の後端部を押動して挿排口5側へ前進させ、
図6に示す位置に移動させる。スライド部材17の後退はばね部材など(不図示)で行う。
【0018】
また、スライド部材17には、ディスクガイド18のカムピン18bと係合するためのディスクガイド押下部17fが形成されている。このディスクガイド押下部17fは、スライド部材17の装置内側方向に形成されており、テーパ形状と突形状とからなる。また、ディスクガイド18のスライド部材17側の端部には、側板18aが垂下しており、この側板18aにカムピン18bが突設されている。そして、
図5から
図6へ示す状態へ、スライド部材17が前進する際に、カムピン18bがディスクガイド押下部17fのテーパ形状に当接してディスクガイド18が押し下げられる。スライド部材17が後退すると、カムピン18bがディスクガイド押下部17fから離れ、ディスクガイド18が上方へ移動する。
【0019】
フローティング部3に設けられた再生部は、ディスク4を回転させるターンテーブル21と、ディスク4をターンテーブル21上に保持するクランパ22と、クランパ22をターンテーブル21と対向するように回転自在に保持するクランプ部材23と、ディスク4の情報再生および情報記録を行う光ピックアップ(不図示)とから構成される。クランプ部材23には、スライド部材17が再生位置側へ後退したときにクランパ押上部17eに当接する当接部23aが設けられている。ディスク挿入待機状態のときは当接部23aがクランパ押上部17eに乗りあがることでクランプ部材23が上方へ移動し、ターンテーブル21とクランパ22との間にディスク4挿排用の隙間ができる。ディスク再生状態のときは当接部23aがクランパ押上部17eとずれた位置にくることでクランプ部材23が下方へ移動し、クランパ22がターンテーブル21上のディスク4をクランプする。
【0020】
次に、ディスク装置1の動作を説明する。
図5に示すディスク挿入待機状態のとき、スライド部材17が再生位置側へ後退した状態であるので、可動部材14のカムピン14bがカム溝17aの高い側の溝部17bに係合している。よって、搬送ローラ11は搬送経路へ上昇した位置に配置されて挿排口5から挿入されるディスク4の下面に接触する状態に保持されている。また、この状態ではギア11aがギア連15に噛み合っているので搬送ローラ11が回転しており、挿排口5から挿入されるディスク4は、下面を回転する搬送ローラ11のゴム部材に弾接させ、上面をディスクガイド18に案内されながら再生位置側へと搬送される。さらに、可動部材14の挿排口5側に設けられたディスク挿入防止突部12は、搬送経路から下降した位置に配置され、ディスク4の搬送を妨げないよう退避した状態に保持されている。
また、
図5では省略しているが、クランパ押上部17eと当接部23aの当接により、スライド部材17がクランプ部材23を押し上げた状態に保持して、ターンテーブル21とクランパ22の間にディスク4を挿入する隙間を作る。
【0021】
図4に示すように、再生位置へ搬送されたディスク4の外周縁がレバー16を押動すると、このレバー16が回動してスライド部材17の再生位置側の後端部を押動し、スライド部材17を挿排口5側へ前進させる。
図6に示すように、スライド部材17のスライド移動に伴い、カム溝17aの溝部17bに係合したカムピン14bが傾斜溝部17dから溝部17cへ降下し、かつ、支点14cを中心に可動部材14が回動する。これにより、搬送ローラ11が搬送経路から下降して退避する一方、ディスク挿入防止突部12が搬送経路内へ上昇して搬送経路を塞ぐ。搬送ローラ11が搬送経路から退避すると、ギア11aとギア連15の噛合が外れて搬送ローラ11の回転が止まる。そして、ディスク4の中央穴がターンテーブル21の回転中心部に嵌合する。
また、スライド部材17が前進すると、クランパ押上部17eが当接部23aから外れるのでクランプ部材23が下がり、連動してクランパ22も下がってディスク4をターンテーブル21へクランプする。また、スライド部材17の前進により、ディスクガイド押下部17fがカムピン18bに当接し、ディスクガイド18を押し下げる。
【0022】
その後、
図6に示すディスク再生状態において、不図示の光ピックアップがモータに駆動されて移動しながら、ディスク4の記録再生面の情報読み取りまたは情報書き込みを行う。
【0023】
ここで、ディスク挿入防止突部12の受け部13による重複挿入および誤挿入の防止効果を説明する。
図7は、ディスク装置1の主要な内部構成を模式的に表した側面図である。ここでは、ディスク装置1をオーディオセットの意匠外箱30に収納している。
図7(a)に示すように、ディスク装置1に既にディスク4が挿入されている状態で、2枚目のディスク4aが斜め下方向からディスク挿入口31へ挿入されると、ディスク4aの外周縁が搬送経路内にあるディスク挿入防止突部12の受け部13に面接触して、受け部13を押圧することになる。すると、受け部13がディスク4aの上方向の押圧を受けて、ディスク搬送部および再生部を含めたフローティング部3の前部をシャーシ2に対して上方向に移動させ、シャーシ2の天面とフローティング部3との隙間を閉じさせる。よって、ディスク4aがシャーシ2とフローティング部3の上側の隙間へ誤挿入されることを防止できる。
斜め下方向以外の方向(水平方向、斜め上方向など)からディスク4aが挿入された場合にも、ディスク挿入防止突部12の受け部13にディスク4aの外周縁が接触するので、再生部へ重複挿入されることを防止できる。
【0024】
以上より、実施の形態1によれば、シャーシ2にダンパ6およびコイルばね7aを介して保持されるフローティング部3を備える全体フロート型のディスク装置1は、フローティング部3の可動部材14に突設したディスク挿入防止突部12に、搬送経路に対して傾いた状態で斜め下方向から挿入される新たなディスク4aの外周縁が当接して、この当接による上向きの押圧力によりフローティング部3を上方移動させる受け部13を有するように構成した。このため、フローティング部3の前部が上方移動してシャーシ2の天面との隙間を閉じるようになり、2枚目のディスク4aがこの隙間に誤挿入されることを防止できる。
【0025】
なお、上記実施の形態1では、受け部13を、ディスク挿入防止突部12の挿排口5側に形成された、上方向に向かうにつれ挿排口5側へ傾斜するテーパ形状にしたが、これに限定されるものではなく、ディスクの上方向への押圧力を受けてフローティング部3の前部を上方移動させるような形状であればよい。以下、変形例をいくつか説明する。
【0026】
図8は、可動部材14を挿排口5側から見た斜視図である。
図8の例では、テーパ形状の受け部13を、ディスク挿入防止突部12の挿排口5を向いた面全てではなく、一部に形成している。この場合でも、上記実施の形態1と同様に斜め下方向から挿入されるディスク4aが受け部13に当接することにより、フローティング部3の前部が上方移動するので、シャーシ2とフローティング部3の隙間への誤挿入を防止できる。また、斜め下方向以外の方向からディスク4aが挿入された場合にはディスク挿入防止突部12または受け部13に当接するので、再生部へ重複挿入されることも防止できる。
【0027】
図9も、可動部材14を挿排口5側から見た斜視図である。
図9の例では、別体のディスク挿入防止突部12を折り曲げ部14aに取り付けるのではなく、板金部材である可動部材14を曲げ加工して、折り曲げ部14aにテーパ形状の受け部13を形成している。この場合でも、上記実施の形態1と同様にどの方向からディスクが挿入されても誤挿入および重複挿入を防止できる。
【0028】
図10も、可動部材14を挿排口5側から見た斜視図である。
図10の例では、受け部13をテーパ形状ではなく、突形状に形成している。この受け部13は樹脂製のディスク挿入防止突部12と一体的に成形してもよいし、板金部材の可動部材14を折り曲げ加工して形成してもよい。この場合でも、上記実施の形態1と同様にどの方向からディスクが挿入されても誤挿入および重複挿入を防止できる。
【0029】
図11も、可動部材14を挿排口5側から見た斜視図である。
図11の例では、板金製の可動部材14をシャーシ2の天面側へ折り曲げて折り曲げ部14aを形成し、この折り曲げ部14aの内角θが鈍角をなす形状とする。これにより、折り曲げた先端部分がディスク挿入防止突部12になり、その挿排口5側の面が受け部13となる。この場合でも、上記実施の形態1と同様にどの方向からディスクが挿入されても誤挿入および重複挿入を防止できる。
【0030】
また、
図8〜
図11以外の形状の受け部13を形成してもよい。例えば、
図10ではディスク挿入防止突部12を逆さのL字形状にして、折り曲げ部分を受け部13にしたが、このL字の折り曲げ部分にRをつけてもよい。
【0031】
上記以外にも、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。また、本願発明のディスク装置1は、全体フロート型にして防振効果を高めたので、振動の多い車載用のオーディオ装置およびナビゲーション装置などに用いるのに適している。