【文献】
佐藤康春,佐藤隆,ステッパにおけるオーバーレイ誤差の統計解析,精密工学会誌,日本,公益社団法人精密工学会,2003年,Vol.69,No.7,p.1018-1024,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/69/7/69_7_1018/_pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置100の構成を示す図である。インプリント装置100は、基板上のインプリント材を型(モールド)により成形して基板上にパターンを形成するインプリント処理を行う。インプリント装置100は、本実施形態では、インプリント材の硬化法として、紫外線の照射によってインプリント材を硬化させる光硬化法を採用する。但し、インプリント装置100は、光以外のエネルギー(例えば、熱)を与えることによってインプリント材を硬化させる硬化法(熱硬化法)を採用することも可能であるし、紫外線以外の光の照射によってインプリント材を硬化させることも可能である。
【0013】
インプリント装置100は、本実施形態では、インプリント処理を繰り返すことによって、基板上の複数のショット領域にパターンを形成する。インプリント処理は、基板上の1つのショット領域に供給されたインプリント材と型とを接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を離型(剥離)することで基板上の1つのショット領域にパターンを形成する処理である。
【0014】
インプリント装置100は、
図1に示すように、硬化部110と、モールド保持機構130と、モールド変形部140と、基板保持機構160と、アライメント機構170と、樹脂供給部180と、制御部190とを有する。また、インプリント装置100は、図示しない定盤や除振器(ダンパ)なども有する。定盤は、インプリント装置100の全体を支持すると共に、基板ステージ164が移動する際の基準平面を形成する。除振器は、床からの振動を除去し、定盤を支持する。
【0015】
硬化部110は、光源部112と、光学系114とを含み、モールド(型)Mを介して、基板Wの上の紫外線硬化型の樹脂(インプリント材)Rに紫外線を照射し、樹脂Rを硬化させる。光源部112は、例えば、紫外線(例えば、i線、g線)を発生するハロゲンランプなどの光源と、かかる光源からの紫外線を集光する楕円ミラーとを含む。光学系114は、光源部112からの紫外線を、基板Wの1つのショット領域に供給された樹脂Rに照射するためのレンズやアパーチャなどを含む。また、光学系114は、モールドMを介して、樹脂Rに対して紫外線を均一に照射するために、オプティカルインテグレータを含んでもよい。アパーチャは、目標とするショット領域(に供給された樹脂R)のみに紫外線を照射するための画角制御や紫外線が基板Wの外形を超えて照射されることを制限する外周遮光制御に使用される。
【0016】
モールドMは、基板Wに転写すべきパターン(微細構造パターン)が形成された型(原版)である。モールドMは、硬化部110からの紫外線を透過するために、紫外線の波長域において透明な材料、例えば、石英で構成される。モールドMは、例えば、チャック(真空チャックなど)を有する搬送ロボットで構成されたモールド搬送機構によって搬送される。
【0017】
インプリント処理を繰り返すと、モールドMのパターンが摩耗したり、モールドMのパターンにゴミがたまったりするため、1つのモールドMを永続的に用いることは不可能である。そこで、インプリント装置100には、同一形状のパターンを有する複数のモールド(レプリカモールド)Mがストック(用意)されており、かかる複数のモールドMを交換しながら使用する。但し、レプリカモールドであっても、製造誤差などによって、それぞれのパターンの形状(シフト、倍率、回転などの線形成分、高次成分、ランダム成分)は僅かに異なっている。本実施形態では、インプリント装置100にストックされる複数のモールドMのそれぞれについて、そのパターンの形状が外部の測定装置で測定され、複数のモールドMのそれぞれのパターンの形状を表す情報(パターン形状情報)が記憶部に記憶されている。パターン形状情報を記憶する記憶部は、例えば、制御部190のメモリであってもよいし、別途設けてもよい。
【0018】
図2は、複数のモールドM00〜M09のそれぞれのパターン形状情報を説明するための図である。
図2(a)は、パターン形状情報の一例を示している。パターン形状情報は、例えば、シフト(シフトX及びY)、倍率(倍率X及びY)、回転(回転X及びY)、及び、モールド内の9つの位置P01乃至P09における高次成分やランダム成分((P01X、P01Y)・・・(P09X、P09Y))を含む。なお、
図2(b)は、モールド内の9つの位置P01乃至P09の一例を示し、
図2(c)は、位置P01乃至P09における高次成分やランダム成分の定義を示している。また、モールドM00は、前層のレイヤ(例えば、ターゲットレイヤ)を形成する際のインプリント処理で用いられたモールドである。
【0019】
モールド保持機構130は、例えば、モールドMを保持するモールドチャック132と、モールドチャック132(即ち、モールドM)を駆動する駆動部134と、駆動部134を支持するモールドベース136とを含む。モールド保持機構130は、モールドMの位置を6軸に関して制御する(モールドMを位置決めする)機能、及び、モールドMを基板Wの上の樹脂Rに押し付けたり、硬化した樹脂RからモールドMを剥離したりする機能を実現する。ここで、6軸とは、モールドチャック132の保持面(モールドMを保持する面)をXY平面とし、XY平面に直交する方向をZ軸とするXYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸、及び、それらの各軸周りの回転である。
【0020】
モールド変形部140は、モールドチャック132に配置され、例えば、空気や油などの流体で作動するシリンダを用いて、モールドMの側面に力を加えることでモールドMのパターンの形状を変形させる(補正する)変形機構を含む。また、モールド変形部140は、モールドMの温度を制御することでモールドMのパターンの形状を変形させる変形機構を含んでいてもよい。基板Wは、熱処理などのプロセスを経ることで変形(典型的には、膨張又は収縮)する可能性があるため、モールド変形部140は、基板Wの変形に応じて、オーバーレイ誤差が許容値を満たすようにモールドMのパターンの形状を変形させる。
【0021】
基板保持機構160は、例えば、基板Wを保持する基板チャック162と、基板チャック162(即ち、基板W)を駆動する基板ステージ164とを含む。基板保持機構160は、基板Wの位置を6軸に関して制御する(基板Wを位置決めする)機能を実現する。
【0022】
アライメント機構170は、本実施形態では、アライメントスコープ172と、アライメントステージ174と、オフアクシススコープ(OAS)176と、基準マーク178aが形成された基準マーク台178とを含む。アライメントスコープ172は、モールドMと基板Wの上のショット領域とを位置合わせする自動調整スコープ(Automatic Adjustment Scope:AAS)を含む。アライメントスコープ172は、モールドMに形成されたアライメントマークの位置、及び、基準マーク178aの位置をモールドMを介して検出する。アライメントステージ174は、モールドベース136に載置され、アライメントスコープ172を位置決めする。基準マーク178aの位置をオフアクシススコープ176によって検出することでベースライン長が求められ、かかるベースライン長に基づいて、基準マーク178aを基準として基板Wの上のアライメントマークの位置が検出される。基準マーク178aは、オフアクシススコープ176と、基板ステージ164と、モールドMとの相互の位置関係を計測するために使用される。
【0023】
樹脂供給部180は、基板Wの上に、詳細には、モールドMのパターンを転写する対象のショット領域に樹脂Rを供給(塗布)する。樹脂供給部180は、例えば、樹脂Rを収容するタンクと、タンクから供給路を介して供給される樹脂Rを基板Wに対して吐出するノズルと、供給路に配置されたバルブと、供給量制御部とを含む。供給量制御部は、1回の樹脂吐出動作において、1つのショット領域に所定量の樹脂が供給されるようにバルブを制御することで、基板Wへの樹脂の供給量を制御する。
【0024】
制御部190は、CPUやメモリなどを含み、インプリント装置100の全体(インプリント装置100の各部)を制御する。制御部190は、例えば、インプリント処理間において、オフアクシススコープ176と協同して、オーバーレイ計測処理を実行する。オーバーレイ計測処理とは、基板Wに形成されたマークをオフアクシススコープ176で検出して、かかる検出結果に基づいてオーバーレイ誤差を求める処理である。オーバーレイ誤差は、基板Wに既に形成されたパターンと基板Wに新たに形成されたパターンとのずれである。本実施形態では、特に、基板Wの上に形成されるレイヤの位置合わせの基準となるターゲットレイヤと、ターゲットレイヤの上に形成されるレイヤ(所定レイヤ)とのずれをオーバーレイ誤差とする。なお、所定レイヤは、後述するように、ターゲットレイヤの直上に形成されるレイヤや中間レイヤの直上に形成されるレイヤを含む。また、制御部190は、後述するように、複数のモールドMから1つのモールドを選択する選択部、及び、選択したモールドを用いてインプリント処理を行う処理部として機能する。
【0025】
図3を参照して、インプリント装置100の動作(インプリント処理)を説明する。かかるインプリント処理は、上述したように、制御部190がインプリント装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0026】
S302では、前層のレイヤ(ターゲットレイヤ)の上のレイヤを形成するためのパターンを有するモールドMを選択する。なお、選択したモールドMは、モールド搬送機構によって搬送され、モールド保持機構130(モールドチャック132)に保持される。
【0027】
本実施形態では、上述したように、複数のモールドM01〜M09がレプリカモールドとしてインプリント装置100に備えられている。従って、複数のモールドM01〜M09から、前層のレイヤを形成した際のインプリント処理で用いられたモールドM00(のパターン)の形状に基づいて、オーバーレイ誤差が許容値を満たす(即ち、許容範囲内となる)モールドを選択する。例えば、前層のレイヤを形成した際のインプリント処理で用いられたモールドの形状に最も近い(即ち、形状差が許容範囲内となる)モールドを選択することが考えられる。具体的には、モールドM00とモールドMi(i=01〜09)との各位置Pn(n=01〜09)での形状差(PnXi−PnX00)及び(PnYi−PnY00)の2乗総和Ei(式1参照)が最も小さくなるようなモールドMiを選択する。
【0028】
Ei=Σ
n=01〜09(PnXi−PnX00)
2+(PnYi−PnY00)
2 ・・・(式1)
【0029】
例えば、モールドM00の形状及びモールドM01〜M04のそれぞれの形状が
図4に示す形状である場合には、記憶部に記憶されたパターン形状情報を参照して、モールドM00の形状に最も近い形状を有するモールドM02が選択される。
【0030】
S304では、ベースライン長を計測する。具体的には、まず、モールドMを介して、基準マーク台178に形成された基準マーク178aとモールドMに形成されたアライメントマークとの位置関係をアライメントスコープ172で検出する。次いで、基準マーク178aがオフアクシススコープ176の下に位置するように基板ステージ164を駆動し、基準マーク178aの位置をオフアクシススコープ176で検出する。アライメントスコープ172及びオフアクシススコープ176の検出結果に基づいてベースライン長が求められる。
【0031】
S306では、基板搬送機構(不図示)を介して基板Wを搬入し、かかる基板Wを、基板保持機構160(基板チャック162)に保持させる。ここでは、基板Wには、少なくとも1層のレイヤ(ターゲットレイヤ)がアライメントマークと共に形成されている。
図5は、基板Wに形成されたアライメントマークAMの一例を示す図である。
図5に示すように、アライメントマークAMは、基板Wの上の複数のショット領域Sのそれぞれに形成されている。また、基板Wの上の各レイヤには、
図6に示すように、オーバーレイ誤差を検出するためのマークが形成されている。
図6(a)は、基板Wの上の第1レイヤに形成されるマークM1を示し、
図6(b)は、第1レイヤの下の第2レイヤに形成されたマークM2を示している。
図6(c)は、マークM1とマークM2とが重ね合わされた状態を示しており、かかる状態からオーバーレイ誤差を検出することができる。
【0032】
S308では、グローバルアライメント方式に従って、アライメント計測処理を行う。具体的には、基板Wの上のサンプルショット領域に形成されたアライメントマークAMの位置をオフアクシススコープ176で検出し、かかる検出結果に基づいて、基板Wの上の各ショット領域Sの配列情報(座標、回転、倍率など)を決定する。
【0033】
S310では、インプリント処理が行われる対象ショット領域の配列情報(座標、回転、倍率など)に予め設定されているアライメントオフセットを反映させる。ここで、反映とは、対象ショット領域の配列情報の補正を意味する。
【0034】
S312では、S302で選択されたモールドMのパターンの形状を補正する。具体的には、基板Wの上のレイヤに形成されたパターンに応じて、モールド変形部140によって、モールドMのパターンの形状を変形させる(即ち、倍率を補正する)。但し、モールドMのパターンの形状の補正は省略することも可能である。
【0035】
S314では、樹脂供給部180によって、基板Wの上の対象ショット領域に樹脂Rを供給(塗布)する。具体的には、対象ショット領域が樹脂供給部180の下に位置するように基板ステージ164を駆動し、樹脂供給部180から樹脂Rを供給しながら基板ステージ164をスキャン駆動することで対象ショット領域に樹脂Rを塗布する。
【0036】
S316では、基板Wの上の対象ショット領域に供給された樹脂RにモールドMを押し付ける(樹脂RとモールドMとを接触させる)。具体的には、対象ショット領域がモールドMのパターンと対向する位置(即ち、樹脂RとモールドMとを接触させる位置)に位置するように基板ステージ164を駆動する。そして、モールド保持機構130によって、モールドMを下降させて対象ショット領域の上の樹脂RにモールドMを押し付ける。なお、樹脂Rに対するモールドMの押し付け力は、駆動部134に内蔵されたセンサを用いて制御される。本実施形態では、基板Wを固定してモールドMを駆動することで対象ショット領域の上の樹脂RにモールドMを押し付けているが、モールドMを固定して基板Wを駆動することで対象ショット領域の上の樹脂RにモールドMを押し付けてもよい。
【0037】
S318では、対象ショット領域の上の樹脂RにモールドMを押し付けた状態で樹脂Rを硬化させる。具体的には、対象ショット領域の上の樹脂RにモールドMを押し付けた状態において、硬化部110によって、モールドMを介して、紫外線を樹脂Rに照射する。これにより、対象ショット領域の上の樹脂Rが硬化し、かかる樹脂RにモールドMのパターンが転写される。
【0038】
S320では、紫外線の照射によって硬化した樹脂RからモールドMを離型(剥離)する。具体的には、モールド保持機構130によって、モールドMを上昇させて硬化した樹脂RからモールドMを離型する。本実施形態では、基板Wを固定してモールドMを駆動することで硬化した樹脂RからモールドMを離型しているが、モールドMを固定して基板Wを駆動することで硬化した樹脂RからモールドMを離型してもよい。
【0039】
S322では、オーバーレイ計測処理を行う。具体的には、オーバーレイ誤差を検出するためのマーク(
図6(c)参照)がオフアクシススコープ176の下に位置するように基板ステージ164を駆動し、かかるマークをオフアクシススコープ176で検出する。そして、オフアクシススコープ176の検出結果に基づいて、オーバーレイ誤差を求める。換言すれば、S322では、ターゲットレイヤにおけるショット領域の形状と、ターゲットレイヤの上に形成されたレイヤ(中間レイヤ)におけるショット領域の形状との差分(即ち、オーバーレイ誤差)を検出する。ここで、中間レイヤとは、ターゲットレイヤとこれから形成するレイヤとの間に形成されるレイヤであって、例えば、これから形成するレイヤの直前に形成されたレイヤである。
【0040】
S324では、S322で求めたオーバーレイ誤差が許容値を満たしているかどうかを判定する。オーバーレイ誤差が許容値を満たしていない場合には、S326に移行し、基板搬送機構を介して基板Wを搬出する。なお、かかる基板W(即ち、オーバーレイ誤差が許容値を満たしていない基板)は、リワークにまわされる。また、オーバーレイ誤差が許容値を満たしている場合には、S328に移行する。
【0041】
S328では、S322で求めたオーバーレイ誤差の高次成分やランダム成分が閾値以上であるかどうかを判定する。オーバーレイ誤差が許容値を満たしていても、オーバーレイ誤差の高次成分やランダム成分が閾値以上である場合には、モールド変形部140によってモールドMのパターンを変形させても高次成分やランダム成分を補正することができない。従って、オーバーレイ誤差の高次成分やランダム成分が閾値以上である場合には、モールドMを交換するために、S328に移行する。また、オーバーレイ誤差の高次成分やランダム成分が閾値以上でない場合には、S330に移行する。
【0042】
S328では、S322で求めたオーバーレイ誤差に基づいて、複数のモールドM01〜M09からオーバーレイ誤差が許容値を満たすモールドを選択する。具体的には、現在のモールドM(即ち、本実施形態では、S316乃至S320で用いられたモールドM02)のパターンの形状に、S322で求めたオーバーレイ誤差に応じて決定される寸法をオフセットとして加えた形状に基づいて、モールドを選択する。
【0043】
例えば、モールド内の9つの位置P01乃至P09におけるオーバーレイ誤差をE01X〜E09X、E01Y〜E09Yとし、現在のモールドMとしてモールドM02が選択されている場合を考える。この場合、理想的なモールド内の9つの位置P01乃至P09における形状P01X’〜P09X’、P01Y’〜P09Y’は、以下の式で表される。
【0044】
P01X’=P01X02+E01X
P02X’=P02X02+E0
:
:
P09X’=P09X02+E09X
P01Y’=P01Y02+E01Y
P02Y’=P02Y02+E02Y
:
:
P09Y’=P09Y02+E09Y
【0045】
従って、理想のモールドと複数のモールドMi(i=01〜09)との各位置Pn(n=01〜09)での形状差(PnXi−PnX’)及び(PnYi−PnY’)の2乗総和Ei(式2参照)が最も小さくなるようなモールドMiを選択する。
【0046】
Ei=Σ
n=01〜09(PnXi−PnX00)
2+(PnYi−PnY00)
2 ・・・(式2)
【0047】
また、S328では、複数のモールドM01乃至M09のそれぞれのパターンの形状をモールド変形部140によって変形させた形状を考慮してもよい。具体的には、モールド変形部140によって変形させたパターンの形状と、現在のモールドのパターンの形状にオーバーレイ誤差に応じて決定される寸法をオフセットとして加えた形状との差分に基づいて、モールドを選択してもよい。
【0048】
S330では、S322で求めたオーバーレイ誤差のうち、高次成分やランダム成分を除く線形成分をアライメントオフセットとして設定する。換言すれば、オーバーレイ計測処理に基づいて、アライメントオフセットの値を更新する。
【0049】
S332では、基板Wの上の全てのショット領域にモールドMのパターンを転写したかどうかを判定する。全てのショット領域にモールドMのパターンを転写していない場合には、S310に移行し、次の対象ショット領域にモールドMのパターンを転写するための処理(即ち、上述した処理)を行う。また、全てのショット領域にモールドMのパターンを転写している場合には、S334に移行し、基板搬送機構を介して基板Wを搬出する。
【0050】
このように、本実施形態では、ターゲットレイヤを形成した際のインプリント処理で用いられたモールド(が有するパターンの形状)に応じて、ターゲットレイヤとこれから形成するレイヤとのオーバーレイ誤差が許容値を満たすモールドを選択している。また、インプリント処理間にオーバーレイ計測処理を行うことでオーバーレイ誤差を速やかに検出し、かかる検出結果に基づいて、ターゲットレイヤとこれから形成するレイヤとのオーバーレイ誤差が許容値を満たすモールドを選択している。従って、インプリント装置100は、インプリント処理に用いるモールドの選択に基準がない(即ち、オーバーレイ誤差を考慮していない)従来のインプリント処理装置と比べて、オーバーレイ誤差を低減させることができる。特に、インプリント装置では、モールドの基板上の樹脂への押し付けに起因するモールドの変形、破損及び劣化によって1回のインプリント処理を単位としてオーバーレイ誤差が変動するため、本実施形態のインプリント装置100は極めて有用である。
【0051】
本実施形態では、S302において、ターゲットレイヤを形成した際のインプリント処理で用いられたモールドが有するパターンの形状に基づいて、オーバーレイ誤差が許容値を満たすモールドを選択している。但し、ターゲットレイヤにおけるショット領域の形状からオーバーレイ誤差が許容値を満たすモールドを選択してもよい。具体的には、S308におけるアライメント計測処理(オフアクシススコープ176の検出結果)からターゲットレイヤにおけるショット領域の形状を取得し、かかるショット領域の形状に基づいて、モールドを選択してもよい。この場合、例えば、制御部190をターゲットレイヤにおけるショット領域の形状を取得する取得部として機能させることが可能である。
【0052】
また、本実施形態では、S308において、グローバルアライメント方式に従ってアライメント計測処理を行っている。但し、基板上の樹脂にモールドを押し付ける際に(S316)、モールドと基板上のショット領域との位置合わせを行ってもよい(即ち、ダイバイダイアライメント方式を採用してもよい)。
【0053】
また、本実施形態では、基板上のショット領域ごとに、樹脂の供給(S314)、モールドの押し付け(S316)、樹脂の硬化(S318)及びモールドの離型(S320)を行っている。但し、基板上の複数のショット領域に樹脂を供給した後に、かかる複数のショット領域のそれぞれにモールドの押し付け、樹脂の硬化及びモールドの離型を行ってもよい。
【0054】
また、本実施形態では、オーバーレイ誤差を検出する検出部としてオフアクシススコープ176を用いているが、アライメントスコープ172やその他の検出器を用いてオーバーレイ誤差を検出してもよい。
【0055】
<物品の製造方法の実施形態>
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)にパターンを形成する工程を含む。更に、かかる製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含む。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、かかる製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを形成された基板を加工する他の処理を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。