【実施例】
【0028】
図1aには、先行技術による、回転可能なプレートを備えたマグネットヨークが概略的に示されている。ローレンツ力に基づいて動作するマイクロミラーのための磁場30を実現する、先行技術において公知の装置が、磁気ヨークを形成している。
図1aには、1重のスリットを有する軟磁性磁束ガイドからなる通常のマグネットヨーク20が示されている。スリット内には回転可能なプレート3があり、このプレート3上にミラーと導体ループとがある。導体ループが通電していれば、つまり導体ループに電流が流れていれば、マグネットヨークによって発生した一方向磁場内でプレートにトルクが作用する。軸の両側において電流の方向は異なっているので、軸回りに一方向のモーメントが得られる。
図1bには、先行技術による、電気駆動のための導体ループを備えた回転可能なプレート3が概略的に示されている。単純な実施形態では、マグネットヨークがミラーを軸4回りに傾斜させる。この軸は先行技術による公知の実施形態では準静的に駆動される。
【0029】
ヨーク構造を前提とするならば、回転軸に対して垂直な装置最小幅が様々な境界条件から得られる。ヨークが磁束を伝達することができるためには、サイドアーム20は最小の壁厚を必要とする。磁場を所望の方向にガイドするためには、磁極片21は所定の最小幅を必要とする。回転可能なプレートを固定するためには、フレームが必要である。このフレームは必要な頑強性を保証するために最小幅を有している。ミラーを腐食から保護する必要がある場合、または所望の高い品質に基づいて共振モードでミラーを負圧にて動作せるためには、さらに幅の広いフレームが必要である。必要なトルクを達成するためには、回転軸から導体路までの距離が最小である必要がある。ミラーを腐食から保護する必要がある場合、または所望の高い品質に基づいて共振モードでミラーを負圧にて動作させるためには、さらに幅の広いフレームが必要である。必要なトルクを達成するためには、回転軸から導体路までの距離が最小である必要がある。
【0030】
図2aには、マグネットヨークと軸回転可能なプレートとを備えた本発明による磁気アクチュエータの第1実施例が概略的に示されている。好ましくは半導体材料、特に好ましくはシリコンでできたプレートのチップ平面内、すなわち主平面内で軸対象な磁場は、例えばマグネットヨークのような基本的にコンパクトな構造内に実現することができる。磁石2はチップの下にあり、その磁化方向はチップ表面に対して垂直である。磁石は磁束をガイドする材料でできたU字形レール1内にある。磁力線30は2つの分岐する円筒の形で磁石表面から走っている。z方向における力に対して有効なのはxy平面内の成分、すなわち回転可能なプレートの主平面内を走る磁力線である。磁力線はU字形レール1の正確な形状によって操作することができる。最大のトルクを達成するために、xy平面内の磁力線成分はチップ縁部で最大化される。なぜならば、可能な最大のトルクを達成するために、この領域に導体路10が置かれるからである。
図2bには、補足的に、マグネットヨークとこのマグネットヨークにより発生した軸対称な発散磁場が概略的に示されている。
【0031】
プレート3を平面から回転されるトルクを発生させるために、回転軸にはさんで対向するプレート半面上に2つの導体ループが実現され、逆に、つまり逆の回転方向に通電される。
図3には、2つの導体ループを備えた軸4回りに回転可能なプレートが概略的に示されている。2つの導体ループ10a、10bによって、(回転軸4に対して)上に向かう力と下に向かう力がそれぞれ発生する。
【0032】
ループ10aおよび10bの正面20は垂直な力をプレートに及ぼさない。なぜかと言えば、正面20では磁場と電流の方向が平行だからである。プレートの中心に戻る導体路はプレートに対して垂直に作用する所望の力に抗する力を及ぼす。もっとも、回転軸までの距離が小さく、xy平面における磁場が明らかに低いために、その力の寄与は無視できる程度である。要するに、1つの導体ループと一方向B場の場合とまったく同様に、軸対称なB場とプレート上の2つの導体ループからなるここに提案する装置でも、第1次近似では、軸4回りに同じ大きさのトルクが得られる。それに対して、2つの導体ループを同じ回転方向に通電すれば、正面20は第2の回転軸30回りに全トルクをプレートに及ぼす。
【0033】
提案した装置の別の重要な利点は、開放型磁石に比べて漂遊磁場が低いことである。磁石は1つの方向、すなわちヨークの開口部の方向を除いて磁束ガイドによって遮蔽されており、このため漂流磁場がかなり低減される。漂遊磁場は1つの方向にしか生じないので、上手く方向付けることにより、または適切な遮蔽により、漂遊磁場のネガティブな影響を最小化することが可能である。開放型磁石に比べて、漂遊磁場はヨーク開口部の方向においても低減さていれる。これはすでに磁場の大部分が磁束ガイドの中へ案内されているためである。
【0034】
図4には、通電した導体ループへの力の下で軸回転可能なプレートが傾く様子が示されている。磁場中で傾いているプレートと磁力線が断面図で概略的に示されている。明らかに見て取れるように、磁力線密度は磁石表面までの距離が縮まるにつれて高くなる、すなわち、ローレンツ力は導体路から磁石表面までの距離が縮まるにつれて増大する。
【0035】
プレートが例えば4mmの幅を有し、回転軸回りに7°だけ振れると仮定すると、導体路は上向きに、また向かい側では下向きに、約200μm変位する。したがって、振れが最大となる点における力を計算する際、零位置から200μmだけ上および下の磁場強度を考慮しなければならない。提案した装置の利点は、磁石により近い、プレートの一部分への力の方が、プレートの他の部分への力よりも強く低下することにある。これにより、全体として振れが大きくなるにつれて有効トルクが低下する。
【0036】
図5には、回転軸までの様々な距離に対して磁石を通る磁束がグラフで示されている。図示されているのは、磁石の直ぐ上、磁石上方300μm、600μmおよび900μmにおける関心あるx方向に沿った磁束密度である。符号の変化は磁石方向が変化したことを意味している。
【0037】
図6には、開放側に磁束ガイドを備えたマグネットヨークが示されている。磁石表面上の磁束ガイド部材23は磁極片から出る磁場の強度を高める。例えば、磁石表面上で磁力線が磁極片から離れる場所では2テスラを達成することができる。これは軟磁性材料がこの磁束密度まで磁化されうるからである。これとは対照的に、硬磁性材料でできた永久磁石は最大でも1.4Tで飽和してしまう。材料から出たところで磁化を高めることによって、導体路の箇所における磁場強度を高めることができる。同時に、磁場はx方向により大きな成分を有するようになる。これにより、回転可能なプレートの平面における磁場の成分がさらに大きくなる。
【0038】
以下の計算には、マグネットヨークと可動プレートとを備えた本発明による磁気アクチュエータの内部抵抗および最大電力の推定が含まれている。
I
Windung = 2 * (4e-3m + 2e-3m) 12e-3m
w*t = 50e-6 * 4e-6 2e-10m
2
R =2nrl/wt = 2 * 5 * 1.7e-8Wm * 12e-3m/2e-10m
2 10 W
F = n l B l = 5 * 5e-2A * 5e-1T * 4e-3m +0.5 mN
F
gegen = n l B l = 5 * 5e-2A * 0.5e-1T * 4e-3m -0.05 mN
M = + 0.5 mN * 3.5e-3m 1.75 μNm
M
gegen = - 0.05 mN * 0.5e-3m -0.025 μNm
W
max/mittel = 5e-2 A
2 * 10W 25 / 8mW
【0039】
上記セクションには、(角度振れが最大のときの)内部抵抗と最大電力の概算が示されている。0.5Tの中程度の磁場が仮定されている。さらに、銅(Cu)でできた5回巻のコイルが仮定されている。ここで、導体路は4μmの高さと50μmの幅を有していると仮定される。これらの仮定では、2つのコイルについて、10オームの入力抵抗と25mWの最大電力が得られる。平均電力は約8mWである。
【0040】
マグネットヨークと可動プレートとを備えた磁気アクチュエータの上記実施形態は、準静的なミラーと共振ミラーとにおいて駆動部として使用することができる。通常比較的高い周波数で動作する共振ミラーを設計する際には、比較的硬いばねを使用し、質量ないし慣性モーメントを適合させなければならない。
【0041】
プレートの平面からの回転に逆らう抗力を発生させるばねは様々な形式であってよい。最も簡単な形式はトーションばねである。しかしその他に、プレートを軸4回りに回転させることができる限り、例えば蛇行ばね、曲げばねまたはプログレッシブスプリングのような他のばねを使用してもよい。
【0042】
本発明の1つの様相として、漂遊磁場の低減がある。エッジ寸法が3mmの開放型磁石は磁化の方向に1mm離れた場所に約0.5Tの漂遊磁場を有する。この磁場は磁束ガイドによって案内される、すなわち、磁束ガイド外部の漂遊磁場は低減される。マグネットヨークは、ヨークの開放側を除くすべての側を遮蔽するという点で、漂遊磁場を低減する適切な装置である。最も単純なマグネットヨークで求められた漂遊磁場は、1mm離れた場所において、ヨーク遮蔽された底部では1mT、ヨークの開放部上では20mTである。
【0043】
図6に示されているように、磁石2の開放側の磁束ガイドの層23によって、磁力線の流出を減少させることができる。磁束ガイド層23は磁極片2上に全面にわたって配置してもよいし、または構造化して配置してもよい。磁石の正面から出る磁力線は磁束ガイド部材によっていわば集められ、マグネットヨーク1の方向に運ばれる。
【0044】
提案した装置は漂遊磁場を数桁低減することができる。
【0045】
図7には、マグネットヨークと中央にばね懸架のある回転可能なプレートとを備えた、本発明による磁気アクチュエータが示されている。回転可能なプレート3の支承の考えられる形態は、この実施例で示されているように、例えば中央のばね懸架40である。このような中央ばね懸架は、プレート3を1つの方向または複数の方向に傾けることができるように形成することができる。プレート3は例えば固有のケーシング50で包まれている。ケーシングの材料は、アクチュエータの磁場を通すことができ、ケーシング50内のプレート3をさらに傾き運動または回転運動へと駆動できるように選ばれている。
【0046】
本発明のさらなる様相は、磁気アクチュエータを備えた、少なくとも軸回りに可動、駆動可能なマイクロミラーを駆動部として製作することである。このために、本発明による磁気アクチュエータの上に示した実施例において説明されたプレート3は、反射表面を有するプレートとして形成されているか、または、少なくともマグネットヨークの開口部とは逆側のプレート3の面にミラーエレメントが設けられているか、もしくは反射性材料が敷かれている。
図7の実施例ではさらに、ケーシング50の材料は反射すべき放射に対して透過性を有するように選ばれている。
【0047】
本発明のさらなる様相は、マイクロミラーを駆動するための磁気アクチュエータを製作することである。
図8には、本発明による磁気アクチュエータと磁束ガイドシールドとを有する2ミラーシステムの構造が示されている。光ビーム110を送出するレーザ100の形態の光源が図示されている。光ビーム110は第1ミラー200によって反射される。ミラー200は本発明によれば磁気的に駆動されるものであり、マグネットヨーク210、磁気駆動されるミラーエレメント220および磁束ガイドシールド230を有している。その後、光ビーム110は駆動される第2ミラー300によって反射される。可動ミラーは、投影面に2次元的な光パターンが書き込まれるように、光ビーム110を反射する。これにより、例えば結像光学系またはいわゆる光学式2Dスキャナが実現される。
【0048】
図8に示されているように2ミラー装置を前提とすれば、第1ミラーの漂遊磁場をマグネットヨークの開放側に向かって低減させることができる。これは、向かい側のプリント基板400上、第1ミラーの回転軸に対して垂直な回転軸を有する第2ミラーの箇所に、遮蔽プレートの形態の磁束ガイド部材230が固定されていることによって為される。この磁束ガイド部材230は、例えば漂遊磁場を感知する電子素子500が存在する領域に磁力線が出るのを妨げる。スペーサ27は、マグネットヨークとシールド230とが磁力によって相互に引き寄せ合うのを妨げる。