(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フォーカスレンズを含む撮像光学系を通過した被写体からの光を光電変換して電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子から出力される電気信号から撮影画面内の所定の被写体を検出する検出手段と、
前記撮像素子から出力される電気信号のうち、前記所定の被写体を含んで設定された焦点検出領域に対応する電気信号から焦点評価値を生成する生成手段と、
前記検出手段が検出した被写体が近づいているか否か判別する被写体移動判定手段と、
前記フォーカスレンズを駆動制御して焦点調節を行う制御手段と、を有する自動焦点調節装置であって、
前記制御手段は、前記焦点検出領域から得られる焦点評価値を用いて前記フォーカスレンズを移動させて焦点調節を行う第1の焦点調節動作モードと、前記被写体移動判定手段にて被写体が近づいていると判定された場合、前記検出手段にて検出された被写体のサイズの変化に基づいて算出された駆動量で、前記フォーカスレンズを無限側から至近側に追従駆動動作させて焦点調節を行う第2の焦点調節動作モードとを有し、
前記制御手段は、前記被写体移動判定手段にて被写体が近づいていると判定された場合、前記第2の焦点調節動作モードにて移動できる前記フォーカスレンズの駆動範囲を設定するとともに、前記第2の焦点調節動作モードを実行し、前記被写体移動判定手段にて被写体が近づいていないと判定された場合、前記第1の焦点調節動作モードを実行し、
前記制御手段は、前記被写体移動判定手段にて被写体が近づいていると判定された場合であっても前記フォーカスレンズが前記駆動範囲を超えたとき、前記第2の焦点調節動作モードを実行しないことを特徴とする自動焦点調節装置。
フォーカスレンズを含む撮像光学系を通過した被写体からの光を光電変換して電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子から出力される電気信号から撮影画面内の所定の被写体を検出する検出手段と、
前記撮像素子から出力される電気信号のうち、前記所定の被写体を含んで設定された焦点検出領域に対応する電気信号から焦点評価値を生成する生成手段と、
前記検出手段が検出した被写体が遠ざかっているか否か判別する被写体移動判定手段と、
前記フォーカスレンズを駆動制御して焦点調節を行う制御手段と、を有する自動焦点調節装置であって、
前記制御手段は、前記焦点検出領域から得られる焦点評価値を用いて前記フォーカスレンズを移動させて焦点調節を行う第1の焦点調節動作モードと、前記被写体移動判定手段にて被写体が遠ざかっていると判定された場合、前記検出手段にて検出された被写体のサイズの変化に基づいて算出された駆動量で、前記フォーカスレンズを至近側から無限側に追従駆動動作させて焦点調節を行う第2の焦点調節動作モードとを有し、
前記制御手段は、前記被写体移動判定手段にて被写体が遠ざかっていると判定された場合、前記第2の焦点調節動作モードにて移動できる前記フォーカスレンズの駆動範囲を設定するとともに、前記第2の焦点調節動作モードを実行し、前記被写体移動判定手段にて被写体が遠ざかっていないと判定された場合、前記第1の焦点調節動作モードを実行し、
前記制御手段は、前記被写体移動判定手段にて被写体が遠ざかっていると判定された場合であっても前記フォーカスレンズが前記駆動範囲を超えたとき、前記第2の焦点調節動作モードを実行しないことを特徴とする自動焦点調節装置。
前記焦点評価値のうち、ピントの変化に対して焦点評価値の変動が得られやすい焦点評価値を第1の焦点評価値とし、前記第1の焦点評価値よりもピントの変化に対して焦点評価値の変動が得られにくい焦点評価値を第2の焦点評価値とし、
前記第1の焦点調節動作モードでは、主として前記第1の焦点評価値を用いて制御を実行し、
前記第2の焦点調節動作モードでは、前記初期合焦度値として前記第2の焦点評価値を用いて制御を実行することを特徴とする請求項4に記載の自動焦点調節装置。
前記第1の焦点評価値は、前記焦点検出領域において、所定の周波数成分の輝度信号を抽出し、各水平ライン毎に最大の輝度信号を算出し、算出された全ての水平ラインの最大の輝度信号を垂直方向に積分したラインピーク積分評価値であり、
前記第2の焦点評価値は、前記焦点検出領域における、各水平ラインの輝度信号の最も明るい信号と最も暗い信号の差の最大値であるコントラスト最大値、もしくは、所定の周波数成分の輝度信号の最大値を前記コントラスト最大値で除算した値であることを特徴とする請求項5に記載の自動焦点調節装置。
前記第1の焦点調節動作モードでは、前記焦点評価値が最大となる合焦方向を判定し、前記第2の焦点調節動作モードでは、前記第1の焦点調節動作モードにおいて判定された合焦方向と前記被写体移動判定手段における被写体の近づきあるいは遠ざかりの判断結果の方向とが同方向か否かを判定し、該判定の結果、逆方向であると判定された場合には、前記第2の焦点調節動作モードにおける前記駆動範囲は、同方向と判定される場合よりも広い範囲に設定することを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の自動焦点調節装置。
前記第2の焦点調節動作モードにおける前記駆動量は、焦点距離に応じて可変にし、焦点距離が小さくなる程、小さくした値とすることを特徴とする請求項3に記載の自動焦点調節装置。
前記第2の焦点調節動作モードにおける前記駆動量は、被写体距離に応じて可変にし、被写体距離が至近側になる程、大きくした値とすることを特徴とする請求項3に記載の自動焦点調節装置。
前記第2の焦点調節動作モードにおける前記駆動範囲は、被写体のサイズ変化量に応じて可変にし、被写体のサイズ変化が大きくなる程、広い範囲に設定することを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の自動焦点調節装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮影している映像から1枚の画像を切り出し、その撮影画像上の顔が検出されるまでには時間がかかってしまうことがある。そのために、特に、動いている人物を撮影している場合、実際の撮影画面上の人物の顔位置と検出された顔位置との間にズレが生じる事態が発生する。また、人物が近づいてきたり遠ざかっていくような状況では、人物が歩いたり走ったりすることで、撮像画面内で人物が上下左右に動いてしまうことがある。これにより、検出された顔に対して焦点検出領域を設定しピント合わせを行った場合、実際の人物の顔位置とはズレてしまった位置に焦点検出領域を設定してしまうことが起こり得る。また、こうした場合、人物は上下左右に動くために、実際の人物の顔位置に対して常に一定方向にズレるわけでもない。よって、焦点検出領域に含まれる被写体が常に変わってしまうことが起こり得る。その際、ピントが合っているかどうかに関わらず、焦点検出領域に含まれる被写体の変化によって焦点評価値が変動してしまう。この場合、通常のTV−AF方式によりピント合わせを行った場合、フォーカスレンズを駆動させることで得られる焦点評価値の変動よりも、焦点検出領域に含まれる被写体の変化で焦点評価値が変動することが支配的となる。そのために、近づいてきたり遠ざかったりする人物に対して、ピント合わせを追従させることが困難となってくる。
【0005】
また、特許文献2に記載の発明のようにフォーカスレンズの単位駆動量を増加させると、背景のふわつきが目立ってしまい、さらに見栄えが悪い映像となってしまうことが懸念される。上述したような事態が発生すると、撮影者に対して不快感を与えてしまうことになる。
【0006】
本発明は、上述したような課題を鑑みてなされたものである。その目的は、顔などの検出機能を用いた自動焦点調節装置において、人物などが近づいてきたり遠ざかったりした際などに、ピント合わせの追従性を向上させることができる自動焦点調節装置、その制御方法などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動焦点調節装置は、フォーカスレンズを含む撮像光学系を通過した被写体からの光を光電変換して電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子から出力される電気信号から撮影画面内の所定の被写体を検出する検出手段と、前記撮像素子から出力される電気信号のうち、前記所定の被写体を含んで設定された焦点検出領域に対応する電気信号から焦点評価値を生成する生成手段と、前記検出手段が検出した被写体が近づいているか否か判別する被写体移動判定手段と、前記フォーカスレンズを駆動制御して焦点調節を行う制御手段と、を有する。そして、前記制御手段は、前記焦点検出領域から得られる焦点評価値を用いて前記フォーカスレンズを移動させて焦点調節を行う第1の焦点調節動作モードと、前記被写体移動判定手段にて被写体が近づいていると判定された場合、
前記検出手段にて検出された被写体のサイズの変化に基づいて算出された駆動量で、前記フォーカスレンズを無限側から至近側に
追従駆動動作させて焦点調節を行う第2の焦点調節動作モードとを有し、前記制御手段は、前記被写体移動判定手段にて被写体が近づいていると判定された場合、前記第2の焦点調節動作モードにて移動できる前記フォーカスレンズの駆動範囲を設定するとともに、前記第2の焦点調節動作モードを実行し、前記被写体移動判定手段にて被写体が近づいていないと判定された場合、前記第1の焦点調節動作モードを実行し、前記制御手段は、前記被写体移動判定手段にて被写体が近づいていると判定された場合であっても前
記フォーカスレンズが前記駆動範囲を超えたとき、前記第2の焦点調節動作モードを実行しない。または、フォーカスレンズを含む撮像光学系を通過した被写体からの光を光電変換して電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子から出力される電気信号から撮影画面内の所定の被写体を検出する検出手段と、前記撮像素子から出力される電気信号のうち、前記所定の被写体を含んで設定された焦点検出領域に対応する電気信号から焦点評価値を生成する生成手段と、前記検出手段が検出した被写体が遠ざかっているか否か判別する被写体移動判定手段と、前記フォーカスレンズを駆動制御して焦点調節を行う制御手段と、を有する自動焦点調節装置であって、前記制御手段は、前記焦点検出領域から得られる焦点評価値を用いて前記フォーカスレンズを移動させて焦点調節を行う第1の焦点調節動作モードと、前記被写体移動判定手段にて被写体が遠ざかっていると判定された場合、
前記検出手段にて検出された被写体のサイズの変化に基づいて算出された駆動量で、前記フォーカスレンズを至近側から無限側に
追従駆動動作させて焦点調節を行う第2の焦点調節動作モードとを有し、前記制御手段は、前記被写体移動判定手段にて被写体が遠ざかっていると判定された場合、前記第2の焦点調節動作モードにて移動できる前記フォーカスレンズの駆動範囲を設定するとともに、前記第2の焦点調節動作モードを実行し、前記被写体移動判定手段にて被写体が遠ざかっていないと判定された場合、前記第1の焦点調節動作モードを実行し、前記制御手段は、前記被写体移動判定手段にて被写体が遠ざかっていると判定された場合であっても前
記フォーカスレンズが前記駆動範囲を超えたとき、前記第2の焦点調節動作モードを実行しない。
【0008】
また、本発明の自動焦点調節方法は、フォーカスレンズを含む撮像光学系を通過した被写体からの光を光電変換して電気信号に変換する撮像ステップと、前記撮像ステップにおいて出力される電気信号から撮影画面内の所定の被写体を検出する検出ステップと、前記撮像ステップにおいて出力される電気信号のうち、前記所定の被写体を含んで設定された焦点検出領域に対応する電気信号から焦点評価値を生成する生成ステップと、前記検出ステップで検出した被写体が近づいているか否か判別する被写体移動判定ステップと、前記フォーカスレンズを駆動制御して焦点調節を行う制御ステップと、を有する。そして、前記制御ステップにおいて、前記焦点検出領域から得られる焦点評価値を用いて前記フォーカスレンズを移動させて焦点調節を行う第1の焦点調節動作モードと、前記被写体移動判定ステップにて被写体が近づいていると判定された場合、
前記検出ステップにて検出された被写体のサイズの変化に基づいて算出された駆動量で、前記フォーカスレンズを無限側から至近側に
追従駆動動作させて焦点調節を行う第2の焦点調節動作モードとが実行可能であり、前記制御ステップでは、前記被写体移動判定ステップにて被写体が近づいていると判定された場合、前記第2の焦点調節動作モードにて移動できる前記フォーカスレンズの駆動範囲を設定するとともに、前記第2の焦点調節動作モードを実行し、前記被写体移動判定ステップにて被写体が近づいていないと判定された場合、前記第1の焦点調節動作モードを実行し、前記制御ステップでは、前記被写体移動判定ステップにて被写体が近づいていると判定された場合であっても前
記フォーカスレンズが前記駆動範囲を超えたとき、前記第2の焦点調節動作モードを実行しない。または、フォーカスレンズを含む撮像光学系を通過した被写体からの光を光電変換して電気信号に変換する撮像ステップと、前記撮像ステップにおいて出力される電気信号から撮影画面内の所定の被写体を検出する検出ステップと、前記撮像ステップにおいて出力される電気信号のうち、前記所定の被写体を含んで設定された焦点検出領域に対応する電気信号から焦点評価値を生成する生成ステップと、前記検出ステップで検出した被写体が遠ざかっているか否か判別する被写体移動判定ステップと、前記フォーカスレンズを駆動制御して焦点調節を行う制御ステップと、を有する自動焦点調節方法であって、前記制御ステップにおいて、前記焦点検出領域から得られる焦点評価値を用いて前記フォーカスレンズを移動させて焦点調節を行う第1の焦点調節動作モードと、前記被写体移動判定ステップにて被写体が遠ざかっていると判定された場合、
前記検出ステップにて検出された被写体のサイズの変化に基づいて算出された駆動量で、前記フォーカスレンズを至近側から無限側に
追従駆動動作させて焦点調節を行う第2の焦点調節動作モードとが実行可能であり、前記制御ステップでは、前記被写体移動判定ステップにて被写体が遠ざかっていると判定された場合、前記第2の焦点調節動作モードにて移動できる前記フォーカスレンズの駆動範囲を設定するとともに、前記第2の焦点調節動作モードを実行し、前記被写体移動判定ステップにて被写体が遠ざかっていないと判定された場合、前記第1の焦点調節動作モードを実行し、前記制御ステップでは、前記被写体移動判定ステップにて被写体が遠ざかっていると判定された場合であっても前
記フォーカスレンズが前記駆動範囲を超えたとき、前記第2の焦点調節動作モードを実行しない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顔などの検出機能を有する自動焦点調節装置及び方法において、人物等が近づいてきたり遠ざかったりした際にも、ピント合わせの追従性を向上させることができ、撮影者に不快感を与えることの少ない安定したピント合わせが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴は、被写体の距離変化があると判定された場合には、被写体の距離変化に対応させて少なくとも被写体サイズの大きさに基づいて算出された駆動量ずつフォーカスレンズを移動させて追従駆動動作を行う第2の焦点調節動作モードをフォーカスレンズの駆動制御として実行し、被写体の距離変化がないと判定された場合には第2の焦点調節動作モードを制限することにある。この考え方に基づき、本発明の焦点調節装置及び方法は、課題を解決するための手段のところで述べた様な基本的な構成を有する。
【0012】
以下、本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の実施例である自動焦点調節装置を含むビデオカメラ(撮像装置)の構成を示す。以下の実施例では、ビデオカメラについて説明するが、本発明はデジタルスチルカメラ等の他の撮像装置にも適用できる。
【0013】
第1の実施例に係る撮像装置としてのビデオカメラの主要部の構成を示す
図1において、101は第1の固定レンズ群、102は光軸方向に移動して変倍を行い焦点距離を変化させることができる変倍レンズ、103は絞りである。また、104は第2の固定レンズ群、105は変倍に伴う焦点面の移動を補正する機能とフォーカシングの機能とを兼ね備えたフォーカスコンペンセータレンズ(「フォーカスレンズ」とも記す)である。第1の固定レンズ群101、変倍レンズ102、絞り103、第2の固定レンズ群104及びフォーカスレンズ105により撮像光学系が構成される。
【0014】
106は、CCDセンサやCMOSセンサにより構成される光電変換素子としての撮像素子である。撮像素子106は、フォーカスレンズを含む撮像光学系により形成された被写体像を撮像して光電変換による電気信号を出力する。107は、撮像素子106の出力をサンプリングし、ゲイン調整するCDS/AGC回路である。108はカメラ信号処理回路であり、CDS/AGC回路107からの出力信号に対して各種の画像処理を施し、映像信号を生成する。109はLCD等により構成されるモニタであり、カメラ信号処理回路108からの映像信号を表示する。115は記録部であり、カメラ信号処理回路108からの映像信号を磁気テープ、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
【0015】
110は、変倍レンズ102を移動させるためのズーム駆動源である。111は、フォーカスレンズ105を移動させるためのフォーカシング駆動源である。ズーム駆動源110及びフォーカシング駆動源111は、ステッピングモータ、DCモータ、振動型モータ及びボイスコイルモータ等のアクチュエータにより構成される。112は、CDS/AGC回路107からの全画素の出力信号のうち焦点検出に用いられる領域(所定の被写体を含んで設定された焦点検出領域)の信号のみを通すAFゲートである。AFゲートは、次のAF信号処理回路113などと共に、生成手段を構成する。AF信号処理回路113は、AFゲート112を通過した信号から高周波成分や輝度差成分ないしコントラスト最大値(AFゲート112を通過した信号の輝度レベルの最大値と最小値の差分)等を抽出してAF評価信号を生成する。すなわち、AF信号処理回路は、撮像素子から出力される電気信号のうち、所定の被写体を含んで設定された焦点検出領域に対応する電気信号から焦点評価値を生成する生成手段を構成する。AF評価信号は、カメラ/AFマイクロコンピュータ(単に「マイクロコンピュータ」とも記す)114に出力される。AF評価信号は、撮像素子106からの出力信号に基づいて生成される映像信号の鮮鋭度(コントラスト状態)を表すものであるが、鮮鋭度は撮像光学系の焦点状態によって変化するので、結果的にAF評価信号は撮像光学系の焦点状態を表す信号となる。
【0016】
制御手段であるマイクロコンピュータ114は、ビデオカメラ全体の動作の制御を司ると共に、フォーカシング駆動源111を制御してフォーカスレンズ105を駆動制御するAF制御を行う。すなわち、制御手段は、撮影画面内に設定された焦点検出領域から得られる焦点評価値を用いてフォーカスレンズを駆動制御して焦点調節をも行う。マイクロコンピュータ114は、AF制御として、TV−AF方式でのAF制御(単に「TV−AF」とも記す)を行う。顔検出部116は、映像信号に対して公知の顔検出処理を施して、撮影画面内の人物の顔(所定の被写体)を検出し、その検出結果をマイクロコンピュータ114に送信する。マイクロコンピュータ114は、上記検出結果に基づき、撮影画面内の顔を含む領域に顔枠を追加するようにAFゲート112へ情報を送信する。ここで、顔検出部116により複数の人物の顔を検出した場合には、顔の位置、顔のサイズ、もしくは撮影者の指示によって優先順位をつける主顔判定処理部があり、この主顔判定処理部によって最も優先と判断された顔を主顔(主被写体)とする。例えば、撮影者の指示によって選択された顔が最も優先度が高く、続いて顔の位置が画面中央に近い程、そして、顔のサイズが大きい程、優先度が高くなる様に判定を行う。但し、この限りではない。顔検出処理としては、例えば、画像データで表される各画素の階調色から、肌色領域を抽出し、予め用意する顔の輪郭プレートとのマッチング度で顔を検出する方法がある。また、周知のパターン認識技術を用いて、目、鼻、口等の顔の特徴点を抽出することで顔検出を行う方法等もある。本実施例では、顔検出処理の方法については、上述した方法に限られず、どのような方法を用いてもよい。また、ビデオカメラにはズームキー117が設けられており、撮影者はズームキー117を操作することができる。ズームキー117の操作に対応して、マイクロコンピュータ114がズーム駆動源110を制御することにより変倍レンズ102が移動し、これによりズーム倍率が変倍される。
【0017】
次に、マイクロコンピュータ114が実行する顔AF制御処理について説明する。
図2は、
図1におけるマイクロコンピュータ114が実行する顔AF制御処理を示すフローチャートである。本処理は、マイクロコンピュータ114内に格納されたコンピュータプログラムに従って実行され、例えば、1フィールド画像を生成するための撮像素子106からの撮像信号の読み出し周期にて繰り返し実行される。ここでは、人物が近づいてくる場合を想定する。
図2において、まず、顔検出部116から、最新の映像信号に対して顔検出処理を実行した結果を取得する(Step201)。次いで、Step202で、Step201の結果、顔検出領域が存在する場合には、Step205へ移行し、顔検出領域が存在しない場合には、Step203へ移行する。Step203では、画面上の所定の位置にAFゲート112により領域(「AF枠」とも記す)を設定し、Step209で通常のTV−AF制御を実行する。一方、Step204では、顔検出部116で検出された結果から、主顔を設定し、主顔の位置にAF枠(顔枠)を設定する。主顔は、検出された顔が1つの場合には、その顔を主顔とし、複数の顔が検出された場合には、複数の顔の中から、主となる1つの顔を決定する。決定の方法については、例えば、顔の位置が中央に近く、顔のサイズが大きいほど主顔となる様に設定する。但し、この限りではない。
【0018】
次に、Step205で、顔が近づいているかどうかを判定し、その結果を受けて、後述する本発明の特徴である顔近づき制御処理(Step207)を実行する。マイクロコンピュータ114内の被写体移動判定手段による顔近づき制御処理の結果、顔近づき制御を実行している場合には本処理を終する。顔近づき制御を実行していない場合には、通常のTV−AF制御処理(Step209)を実行し、本処理を終了する。通常のTV−AF制御処理については、公知の後述する微小駆動動作モードと山登り駆動動作モードを組み合わせた方式であり、焦点評価値が最大となる様にフォーカスレンズを駆動させながら焦点評価値の増減を判定し、合焦点を探索する方法である。ここで、Step205における顔近づき判定は、例えば、顔の大きさの履歴を保持しておき、今回の顔の大きさと前回の顔の大きさが所定の大きさ以上変化していたら、顔が近づいていると判定する。ここで、所定の大きさは、実測に基づくばらつき以上の値を設定すれば良い。また、顔の大きさがどれくらい変化したら、焦点深度分のフォーカスレンズの移動量に換算されるかの関係を示すデータを不揮発性のメモリに予め記憶しておく。そして、このデータに基づいて、今回の顔の大きさと前回の顔の大きさ変化が、焦点深度に対し、どれくらいの割合になるかを示す顔サイズ変化駆動量を算出する。顔が近づいているか否かの判定は、大きさ変化の連続性を見てもよい。また、次の様に判定してもよい。すなわち、顔サイズが小さく、至近方向へ中心移動をしている場合は、近づき制御をしないという判定をしてもよい。こうした場合、顔サイズが小さいというのは、通常、被写体距離が遠いことを意味し、後述の
図6のカムが狭く、通常のTV−AF制御により至近方向への中心移動にそれなりに追従できると考えられるからである。また、顔サイズが大きいときは近づき制御をしないという判定をしてもよい。こうした場合、既に人物が近づいており、これ以上近づきをする場合は被写体が画面から抜けたりすることが想定されるからである。
【0019】
次に、前述した本発明の特徴である顔近づき制御処理について説明する。
図3は、
図2の顔近づき制御の概略を説明するための図である。
図3において、横軸は時間を、縦軸はフォーカスレンズ105の位置を示している。顔が近づいていると判定されている期間(T
AからT
Eまでの期間)内で顔近づき制御(301)は実行される。顔が近づいていると判定された場合、フォーカスレンズ105を駆動しても、近づいてくる人物に対してピントがボケないであろう駆動範囲を決定する(302)。その駆動範囲を超えない様にフォーカスレンズ105を所定量ずつ(同量とは限らない)至近方向へ駆動させる(303)。
【0020】
駆動範囲をフォーカスレンズ105が駆動したら、予め設定された期間(T
BからT
Cまでの期間)顔近づき制御を休止し(306)、通常のTV−AF制御を実行させてピント合わせの微調整を行う。これは、被写体に対して、ピント位置が至近方向に行き過ぎてしまい、顔近づき制御を継続して実行してしまうと常にボケた状態になってしまうのを防ぐためである。予め設定された期間を過ぎて、なお、顔が近づいていると判定されている場合には(307)、再度顔近づき制御を実行し(301’)、フォーカスレンズ105を所定量ずつ至近方向へ駆動させる。ただし、誤って顔近づきと判定されてしまう可能性もある。このような場合を想定したとき、被写体に対してピント合わせが誤ってしまうことを軽減する手段が必要となってくる。そのために、顔近づき制御を開始する際に、後述する第2の焦点評価値を初期合焦度値P
Cとして記憶しておく(304、時間T
Cのタイミング)。尚、不図示ではあるが時間T
Aでも同様に合焦度P
Aを記憶しておく。そして、その第2の焦点評価値が低下していないかどうかを監視しておき、第2の焦点評価値が下がった場合には、顔近づき制御を終了させる(305、時間T
D)。すなわち、制御手段は、第2の焦点調節動作モードである顔近づき制御の実行開始時に、現在の焦点評価値を初期合焦度値として記憶する。そして、第2の焦点調節動作モードを実行中に、現在の焦点評価値が初期合焦度値よりも予め設定された変化量下がった場合には、当該第2の焦点調節動作モードの実行を禁止する。以上の様にに、制御手段は、駆動する所定方向と同方向にフォーカスレンズの駆動範囲を設定し、第2の焦点調節動作モードを実行後、フォーカスレンズを駆動量ずつ移動した際に、駆動範囲内である場合には、被写体移動判定手段による判定の結果、被写体の距離変化ありの判定が継続している場合には第2の焦点調節動作モードを継続する。しかし、駆動範囲を超えた場合には、被写体移動判定手段による判定の結果、被写体の距離変化ありの判定が継続していても、第2の焦点調節動作モードを予め設定された期間だけ休止する。
【0021】
第1の焦点調節動作モードである通常のTV−AF制御は、フォーカスレンズ105を駆動させ、フォーカスレンズの駆動毎に取得される焦点評価値の増減を比較しながら、焦点評価値が増える方向へフォーカスレンズ105の動く方向を決定し、そして、合焦位置を探索していく。すなわち、フォーカスレンズを順次駆動させる毎に得られる焦点評価値の増減関係に基づいてフォーカスレンズを駆動させる。しがしながら、第2の焦点調節動作モードである上記顔近づき制御は、フォーカスレンズ105の位置に応じた焦点評価値の履歴の増減関係を比較し、その結果に応じてフォーカスレンズ105を駆動させる制御を行わない。所定の方向にフォーカスレンズ105を所定の駆動範囲駆動させ、近づいてくる人物の動きに滑らかに追従するように、想定されるピント位置を予測して駆動させ、人物が近づいてくる前のピント状態からズレない様にフォーカスレンズ105を駆動させる制御である。すなわち、第2の焦点調節動作モードでは、フォーカスレンズを順次駆動させる毎に得られる焦点評価値の増減関係に関わらず、所定方向に駆動量ずつフォーカスレンズを順に駆動させる。
【0022】
図4は、顔近づき制御処理におけるフローチャートであり、これに基づいて説明する。まず、
図2のStep205における判定の結果、人物が近づいていると判定されたかどうかを判別(Step401)する。判定の結果、人物が近づいていると判断された場合には、後述する顔近づき動作ウエイトフラグがセットされているかどうか判別(Step404)する。逆に、人物が近づいていないと判断された場合には、顔近づき動作ウエイトフラグをクリア(Step402)し、顔近づき動作継続フラグをクリア(Step403)する。そして、顔近づき動作中フラグをクリア(Step416)し、顔近づき制御処理の状態を初期状態にする。
【0023】
次に、顔近づき動作ウエイトフラグがセットされていると判定(Step404でYes)された場合には、顔近づき動作ウエイトカウントをカウントアップ(Step405)し、顔近づき動作ウエイトカウントが所定カウント以上であるかどうか判定する(Step406)。ここで、所定カウントは、TV−AF制御が十分実行できる時間があればよく、例えば0.5秒経過する時間をカウントする値であれば良い。顔近づき動作ウエイトカウントが所定カウント未満(Step406でNo)の場合、顔近づき動作中フラグをクリア(Step416)し、顔近づき制御は実行しない。そして、顔近づき動作ウエイトカウントが所定カウント以上(Step406でYes)の場合、顔近づき動作ウエイトフラグをクリア(Step407)し、後述するStep409へ移行する。
【0024】
次に、顔近づき動作ウエイトフラグがセットされていないと判定(Step404でNo)された場合、顔近づき制御が実行途中であるか否かを判定するために、後述する顔近づき動作中フラグがセットされているかどうかを判定する(Step408)。顔近づき動作中フラグがセットされていない(Step408でNo)場合には、通常のTV−AF制御で用いられる第1の焦点評価値の変動が所定量以上であるかどうかを判別する(Step409)。例えば、焦点評価値の履歴を取得しておき、今回の焦点評価値と前回の焦点評価値とを比較する。さらに、前回と前々回の焦点評価値を比較しても良い。ここで、第1の焦点評価値とは主に積分値を示しており、これはAF枠内の水平方向の1ラインから高周波成分のピーク値を取得し、このピーク値を垂直方向の全ライン数分加算したものである。
【0025】
このような積分値は、ノイズの影響を受けにくく、コントラストが高い被写体から低い被写体まで、滑らかな焦点評価値の山形状を形成しやすい。また、フォーカスレンズ位置の変化による焦点評価値の変動が得られやすいため、焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ位置を探索しやすい。そして、
図2における通常のTV−AF制御(Step209)では、この第1の焦点評価値を主に用いてAF制御を行う。特に微小駆動では、フォーカスレンズ105の動きが撮影者に見えない様に動作させる必要があるため、主に使用される。但し、ここで第1の焦点評価値として、上述したような積分値を用いたが、この限りではない。フォーカスレンズ位置の変化に対して焦点評価値の変動が得られやすい、つまりフォーカスレンズによるピント変化に対して変動が大きい(敏感に反応する、すなわちダイナミックレンジが広い)焦点評価値であればよい。
【0026】
Step409において、第1の焦点評価値が予め設定されている値以上変動している(Step409でYes)場合には、通常のTV−AF制御ではピント合わせが困難である可能性が高く、ピント合わせを誤ってしまう可能性が高い。よって、Step410へ移行する。逆に、第1の焦点評価値が予め設定されている値以上変動していない(Step409でNo)場合には、通常のTV−AF制御でピント合わせをしやすい。もしくは、誤って顔近づきが判定されてしまった可能性があるために、顔近づき制御は実行せずにStep416へ移行し、顔近づき動作中フラグをクリアし、通常のTV−AF制御を実行させる。ここで、上述のStep409で比較する予め設定されている値は、経験的に70%の変化量である。変化量が70%未満の場合には、通常のTV−AF制御を実行させる。これは、顔検出の検出精度、
図2のStep205における人物が近づいているかどうかの判定精度等により変えればよく、誤って顔近づき制御に入らない値とすれば良い。また、この値は、AF枠の大きさで可変にしてもよい。さらに、今回の第1の焦点評価値と前回の第1の焦点評価値だけではなく、前回の第1の焦点評価値と前々回の第1の焦点評価値との比較も含めて、連続性があるかどうかを判断に入れても良い。この様に、制御手段は、第1の焦点評価値の履歴を保持し、第2の焦点調節動作モードでは、第1の焦点評価値の履歴を比較し、第2の焦点調節動作モードの実行開始時に、第1の焦点評価値の変化量が予め設定された値未満の場合には、このモードの実行を禁止する。
【0027】
次に、合焦近傍にあるかどうかを判定する(Step410)。ここで、合焦近傍にあるかどうかの判定は、例えば、TV−AF制御における微小駆動が実行されている、または、合焦判定されフォーカスレンズ105が停止している状態であるが、この限りではない。合焦近傍にないと判定された(Step410でNo)場合には、顔近づき制御は実行せずにStep416へ移行し、顔近づき動作中フラグをクリアし、通常のTV−AF制御を実行させる。合焦近傍にあると判定された(Step410でYes)場合には、後述する第2の焦点評価値を初期合焦度値として記憶する(Step411)。次に、フォーカスレンズ105の駆動速度を設定し(Step412)、至近方向への駆動範囲と1回あたりの駆動量を設定する(Step413)。そして、至近方向へフォーカスレンズ105をStep413で設定された駆動量分駆動させ(Step414)、顔近づき制御を実行していることを示す顔近づき動作中フラグをセットする(Step415)。
【0028】
ここで、第2の焦点評価値としては、上述の第1の焦点評価値として主に用いる積分値よりも、ピント変化に対して変動が少ない(敏感に変動しない、すなわちダイナミックレジンが狭い)焦点評価値を用いる。本実施例においては、被写体のコントラストを示す輝度差成分(AF枠を通過した信号の輝度レベルの最大値と最小値の差分)、もしくは、AF枠内の高周波成分の最大ピークホールド値を輝度差成分で除算し、正規化した値(簡易合焦度)を用いる。簡易合焦度は、ピントが合っている状態では、最大ピークホールド値も高く、輝度差成分も高く、値が大きくなる。ピントが合っていない状態では、最大ピークホールド値は減少するが、輝度差成分は変化が少なく、値が小さくなる。よって、被写体にピントが合っているか否かの状態を大まかに得られる。そして、比較的ダイナミックレンジが狭い値である。この様に、前記焦点評価値のうち、ピントの変化に対して焦点評価値の変動が得られやすい焦点評価値を第1の焦点評価値とし、第1の焦点評価値よりもピントの変化に対して焦点評価値の変動が得られにくい焦点評価値を第2の焦点評価値とする。そして、第1の焦点調節動作モードの通常の制御では、主として第1の焦点評価値を用いて制御を実行し、第2の焦点調節動作モードの顔近づき制御では、初期合焦度値として第2の焦点評価値を用いて制御を実行する。
【0029】
また、上述のStep408で顔近づき動作中フラグがセットされている(Step408でYes)場合には、現在の第2の焦点評価値が初期合焦度値よりも予め設定された合焦度量下がったかどうかを判定する(Step417)。ここで、この予め設定しておく合焦度量は、近づいてくる人物に概ねピントが合っている状態で変化しうる値よりも大きく設定する。経験値に基づくと、簡易合焦度の場合、0.2下がった場合と設定し、輝度差成分の場合、最大値が256である場合に、20下がった場合と設定する。この値は、レンズの特性、CMOSセンサ106等により各自動焦点調節装置に応じて、適切な値を設定すれば良い。
【0030】
現在の第2の焦点評価値が初期合焦度値よりも予め設定された合焦度量下がっていない(Step417でNo)場合には、Step413で設定した駆動範囲を超えたかどうかを判定する(Step418)。駆動範囲を超えていない(Step418でNo)場合には、Step413で設定した1回あたりの駆動量分フォーカスレンズ105が駆動したかどうかを判定する(Step419)。フォーカスレンズ105が1回あたりの駆動量駆動した(Step419でYes)場合には、再度至近方向への1回あたりの駆動量を設定し(Step413)、フォーカスレンズを至近方向へ駆動させる(Step414)。逆に、フォーカスレンズ105が1回あたりの駆動量駆動していない(Step419でNo)場合には、近づき制御処理はそのまま終了し、次の制御周期までウエイトする。
【0031】
また、現在の第2の焦点評価値が初期合焦度値より予め設定された合焦度量下がった(Step417でYes)、また、駆動範囲を超えた(Step418でYes)場合は、予め設定された期間、通常のTV−AF制御により、ピント合わせの状態を微調整させる。そのために、顔近づき動作中フラグをクリアし(Step420)、顔近づき制御を一時禁止している状態であることを示す顔近づき動作ウエイトフラグをセットする(Step421)。そして、顔近づき動作ウエイトカウントをクリアし(Step422)、顔近づき制御を再度実行する際に、顔が近づいていると判定されてから、顔近づき制御が初めて実行されるものではないことを示す顔近づき動作継続フラグをセットする(Step423)。
【0032】
次に、
図4のStep413における至近方向への駆動範囲と1回あたりの駆動量の設定方法について
図5を用いて説明する。
図5は、この駆動量を設定するフローチャートである。まず、1回あたりの駆動量を設定する(Step501)。1回あたりの駆動量は、上述した顔サイズ変化駆動量分とし、これを基準駆動量とする。そして、1回あたりの駆動量の最大値は、駆動させてもボケて見えない焦点深度分の駆動量に設定する。この様に、制御手段は、被写体のサイズ変化と焦点深度との関係を示すデータを記憶しておき、前記駆動量を、被写体のサイズの変化から前記データに基づいて算出された焦点深度に対する割合を基準駆動量として設定する。そして、制御手段中の被写体移動判定手段の判定結果から、被写体が近づいている場合には、駆動する所定方向を至近方向に設定し、被写体が遠ざかっている場合には無限方向に設定するのである。
【0033】
次に、
図4で設定される顔近づき動作継続フラグがセットされているかどうかを判定する(Step502)。ここで、顔近づき動作継続フラグがセットされていない(Step502でNo)場合には、第1の基準駆動範囲を設定する(Step503)。第1の基準駆動範囲は、人物が近づいてきたと判断したときには、人物がすでに至近側に動いており、当然遅れが生じている。そのために、ジャストピント位置からズレている可能性が高いため、フォーカスレンズが駆動できる範囲は1回あたりの駆動量よりも広く設定する必要がある。例えば、Step501で設定した1回あたりの駆動量の2倍を第1の基準駆動範囲とし駆動範囲を設定する。つまり、1回あたりの駆動量を焦点深度とした場合、焦点深度の2倍を駆動範囲として設定する。
【0034】
次に、顔の大きさの変化量が所定の大きさ以上かどうかを判定する(Step504)。人物の近づいてくるスピードを顔の大きさの変化量で判断し、顔の大きさの変化量が所定の大きさ以上の場合には、近づいてくるスピードが速いため、駆動範囲を大きくする必要がある。よって、顔の大きさ変化量が所定の大きさ以上(Step504でYes)の場合には、駆動範囲に第1の所定範囲量を加算する。ここで、第1の駆動範囲量は、1回あたりの駆動量で良い。また、顔の大きさ変化量と比較する所定の大きさは、例えば、上述した顔の大きさがどれくらい変化したら焦点深度分のフォーカスレンズの移動量に換算されるかの関係を示すデータを用いる。そして、顔の大きさ変化が焦点深度の1.5倍を超える場合の顔の大きさ変化を所定の大きさとすれば良く、近づいてくる人物のスピードに対応できるように設定すればよい。
【0035】
次に、TV−AF制御における後述する微小駆動による方向判別で、無限方向と判断されているか否かを判定する(Step506)。この場合、人物が近づいてきているのに、TV−AF制御が誤った無限方向へ駆動しており、ジャストピント位置からさらにズレている可能性が高い。そのために、TV−AF制御における微小駆動による方向判別で、無限方向(逆方向)と判断されいている(Step506でYes)場合には、これまでの処理で算出された駆動範囲に第1の所定範囲量を加算した値を駆動範囲とする。
【0036】
また、顔近づき動作継続フラグがセットされている(Step502でYes)場合には、第2の基準駆動範囲を駆動範囲に設定する。この状態は、
図3で示した様に、顔近づき制御を予め設定された期間禁止し、TV−AF制御による微調整を行い、人物に対してピント位置が至近側に行き過ぎる状態を軽減する。しかし、TV−AF制御による微調整の期間も人物が近づいている場合、被写体距離が近くなっているため、後述するカム軌跡(
図6)より、等距離を人物が移動した場合でも、フォーカスレンズの移動量は大きくなる。そのため、第2の基準駆動範囲は、第1の基準駆動範囲よりも大きくする。例えば、第2の基準駆動範囲は、Step501で設定した1回あたりの駆動量の3倍とし駆動範囲を設定する。すなわち、1回あたりの駆動量を焦点深度とした場合、焦点深度の3倍を駆動範囲として設定する。
【0037】
Step509とStep510は、Step504とStep505と同様であり、顔の大きさ変化量が所定の大きさ以上の場合、駆動範囲に第2の所定範囲量を加算する。ここで、第2の駆動範囲量は、第1の駆動範囲量と同様に、1回あたりの駆動量でよいが、第1の駆動範囲量と同等かそれ以上を設定する。
【0038】
次に、Step511で、TV−AF制御による微小駆動で方向判別の結果、至近方向と判断されているかどうかを判定する(Step511)。これは、
図3で示した顔近づき制御を予め設定された期間禁止している期間のTV−AF制御による微調整において、至近方向(同方向)へ方向判別されている場合、近づいてくる人物に対して明らかに誤った方向にピント合わせを行っているわけではないと考えられる。そして、第2の基準駆動範囲を第1の基準駆動範囲より大きく設定している。そのために、ここでは、TV−AF制御による方向判別で至近方向と判断されている(Step511でYes)場合には、これまでの処理で算出された駆動範囲に第2の所定範囲量を減算した値を駆動範囲とする(Step512)。
【0039】
ここで、上述した駆動範囲は、本実施例では1回あたりの駆動量の整数倍、さらに、1回あたりの駆動量を加算、減算して設定したが、この限りではない。ただし、被写体に対するピント位置のズレは顔の大きさ変化から算出される1回あたりの駆動量で判断でき、被写体が近づいている場合、その1回あたりの駆動量が継続することになるので、この1回あたりの駆動量に基づいて決定すれば良い。
【0040】
図6は、横軸を焦点距離、縦軸をフォーカスレンズ位置として表されたカム軌跡を示した図である。ここで、601は被写体距離1mのカム軌跡、602は被写体距離2.4mのカム軌跡、603は被写体距離が無限のカム軌跡を示しており、焦点距離がワイド側になるにつれて、各カム軌跡の間隔幅が小さくなっていく。そして、破線604は無限のカム軌跡からの焦点深度分のフォーカスレンズ位置を表しており、焦点距離がワイド側になるにつれて、焦点深度内に含まれる被写体距離が多くなっていることが分かる。そのため、
図5のStep501に示した1回あたりの駆動量は、焦点距離に応じて可変にする。つまり、焦点距離がワイド側になるにつれて、1回あたりの駆動量を基準駆動量より小さくする。例えば、テレ端で1回あたりの駆動量を焦点深度とした場合、テレ端における1mカム(601)と無限カム(603)のフォーカスレンズ移動量に対する焦点深度の割合(ここでは1:1)と同等になる様に、各焦点距離における1回あたりの駆動量を算出すればよい。つまり、各焦点距離における1mカム(601)と無限カム(603)のフォーカスレンズ移動量から1回あたりの駆動量を算出すればよい。
【0041】
また、被写体距離によって、カム軌跡の広がりが異なる。1mカム(601)と2.4mカム(602)及び無限カム(603)と2.4mカム(602)は、フォーカスレンズの移動量は同等程度であるのに、被写体距離の変化幅は1mカム(601)と2.4mカム(602)の方が狭い。つまり、同じ被写体距離の変化に対して、フォーカスレンズの移動量は、被写体が至近になるにつれて大きくなる。そのため、
図5のStep501に示した1回あたりの駆動量は、被写体距離に応じて可変にする。つまり、被写体距離が至近側になるにつれて、1回あたりの駆動量を基準駆動量よりも大きくする。例えば、被写体距離3.8mよりも至近に被写体がいる場合には、1回あたりの駆動量を2倍する。この値は、レンズのカム軌跡に基づいて決定すれば良い。
【0042】
さらに、人物が近づいてきて顔のサイズが大きくなってくると、近づいてくる人物が撮影画面から外れていく可能性がある。また、撮影画面からはみ出してくる場合も考えられ、こうした場合、顔のサイズの変化量が正確な値にならない可能性がある。また、ドラマ撮影や映画撮影においては、或る決まった人物が近づいてくるシチュエーションでの撮影シーンの場合、撮影画面からはみ出さない様に、顔の大きさが大きくなると人物が近づくのを止めるような動きをすることが多いと考えられる。このような撮影条件で、上述した1回あたりの駆動量でフォーカスレンズを駆動させた場合、撮影画面から外れそうなのにフォーカスレンズがより至近に移動したり、フォーカスレンズの行き過ぎが起こったりし得る。それを防ぐために、顔のサイズが所定サイズ以上の場合は、1回あたりの駆動量を基準駆動量よりも小さくすることで、行き過ぎを軽減するとよい。例えば、この場合、1回あたりの駆動量を基準駆動量の1/2にする。さらに、駆動速度を遅くしてもよい。
【0043】
上述した様に、焦点距離、被写体距離、顔のサイズに応じて1回あたりの駆動量を設定する処理フローを示した図が
図7である。Step701及びStep702で、現在の焦点距離と被写体距離を取得する。次に、現在の焦点距離及び被写体距離から、1回あたりの駆動量を設定する(Step703)。そしてStep704で、現在の顔サイズが所定サイズよりも大きいかどうかを判定する。現在の顔サイズが所定サイズよりも大きい場合(Step704でYes)、Step705へ移行し、1回あたりの駆動量を1/2にする。
【0044】
また、
図4のStep412で示したフォーカスレンズの駆動速度設定は、平均的な人物が近づいてくる際の移動速度に適した駆動速度を設定すればよい。例えば、被写体距離が無限から1mまで移動する際に、約10秒程度の時間で移動するような駆動速度に設定すればよい。さらに、
図5のStep504及びStep509における顔の大きさの変化量が所定の大きさ以上かどうかを判定するのと同様に、1回あたりフォーカスレンズを駆動する際のフォーカスレンズの速度を可変にする。つまり、顔の大きさ変化が所定の大きさ未満の場合には、フォーカスレンズの駆動速度を、所定の大きさ以上の場合と比較して遅くする。例えば、顔の大きさ変化が所定の大きさ未満の場合、所定の大きさ以上の場合と比較して、フォーカスレンズの駆動速度を1/2にする。これにより、近づいてくる人物の速度に滑らかに追従することができ、ピントの状態を安定して保つことができる。また、上述した様に、顔のサイズが所定以上の場合は、駆動速度を遅くしてもよい。
【0045】
図8は、
図2のTV−AF処理におけるStep209で実行されるフォーカスレンズ105の微小駆動動作モードを説明するための図である。
図8において、横軸は時間を、縦軸はフォーカスレンズ105の位置を示している。また、図中上方において、映像信号の垂直同期信号を示している。
図8に示す様に、期間Aの間に撮像素子106に蓄積された電荷(図中、斜線楕円で示す)に対する焦点評価値EV
Aが時刻T
Aで取り込まれ、期間Bの間に撮像素子106に蓄積された電荷に対する焦点評価値EV
Bが時刻T
Bで取り込まれる。また、期間Cの間に撮像素子106に蓄積された電荷に対する焦点評価値EV
Cが時刻T
Cで取り込まれる。そして、時刻T
Dでは、焦点評価値EV
A、EV
B、EV
Cを比較して、EV
A>EV
BかつEV
C>EV
Bであれば、微小駆動の駆動(振動)中心を移動させる。一方、EV
A<EV
BまたはEV
C<EV
Bあれば、振動中心を移動させない。この様に、フォーカスレンズ105を移動させながら焦点評価値が増加する方向を判定したり、焦点評価値が最も大きくなるフォーカスレンズ105の位置(ピーク位置)を探したりするのが微小駆動動作モードである。なお、焦点評価値の変化から合焦状態か否かを判定するためにフォーカスレンズ105を微小駆動させる制御は、合焦確認制御ということもできる。また、焦点評価値の変化から合焦方向を判定するためにフォーカスレンズ105を微小駆動させる制御は、合焦方向判別制御ということもできる。
【0046】
そして、
図5におけるStep506とStep511で、方向判別が無限方向か至近方向かどうかを判定するのは、この微小駆動の駆動(振動)中心を移動させる方向が、無限方向に移動しているか、至近方向に移動しているか、そして、その移動方向が連続しているかどうかで判定される。なお、上述の
図8の説明で用いられている焦点評価値は、主に前述の第1の焦点評価値を示すものである。
【0047】
以上説明した様に、上述した本発明の実施例では、顔検出結果から得られた顔の大きさの変化を用いて人物が近づいているかを判定する。人物が近づいていると判定された場合には、焦点評価値の最大値を探索するTV−AF制御とは異なる顔近づき制御を実行する。顔近づき制御は、近づいてくる人物の動きに追従する様に、フォーカスレンズを駆動させても人物がボケて見えない焦点深度を基準にした駆動量ずつフォーカスレンズを駆動させ、人物が近づきを開始した際のピント状態から外れない様にフォーカスレンズを駆動させる。
【0048】
また、上述の実施例では、フォーカスレンズの駆動範囲を設定し、所定方向にフォーカスレンズ105を所定駆動量ずつ駆動させる。また、これらの値は、被写体の大きさ、顔などの大きさの変化、TV−AF制御から得られた方向判別の方向に応じて変化させる。さらには焦点距離、被写体距離に応じて駆動範囲、所定の駆動量を可変させる。これにより、フォーカスレンズ105の位置に応じて取得した焦点評価値の履歴を比較し、その増減関係に基づいた制御を行わない。そのため、人物などが近づいてくる際に上下左右に動くことで焦点評価値が変動してしまい、ピント合わせが誤ってしまうことを軽減することが可能となる。また、上述した第2の焦点評価値を用い、顔などの近づき制御が開始された際の第2の焦点評価値を初期合焦度値とし、その値から下がったかどうかを監視する。このことで、誤って人物などが近づいていると判定されて、近づき制御を実行することによりボケてしまうことを軽減できる。さらに、上述した第1の焦点評価値を近づき制御の開始時に参照する。この第1の焦点評価値の変動が大きい場合には、近づき制御を実行しないことにより、誤って人物などが近づいていると判定されて、近づき制御を実行することによりボケてしまうことを軽減できる。上記実施例では、人物などが近づいてくる場合について主に説明したが、人物などが遠ざかる場合についても本発明を適用できる。
【0049】
上記実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接或いは有線/無線通信を用いて、プログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含まれる。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を構成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータがコンピュータプログラムをダウンロードしてプログラムするような方法も考えられる。
【0050】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明はこうした特定の実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。また、上述の実施例の各部は、適宜省略したり、選択した一部を適宜組み合わせてもよい。