特許第6053296号(P6053296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6053296立軸ポンプ、立軸ポンプの設置方法、及び、立軸ポンプの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053296
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】立軸ポンプ、立軸ポンプの設置方法、及び、立軸ポンプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/00 20060101AFI20161219BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F04D13/00 A
   F04D29/60 D
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-42059(P2012-42059)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-177856(P2013-177856A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】上甲 美喜男
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−181305(JP,U)
【文献】 特開2004−360638(JP,A)
【文献】 特開昭61−085597(JP,A)
【文献】 特開2009−281255(JP,A)
【文献】 特開平05−099189(JP,A)
【文献】 実開昭54−178201(JP,U)
【文献】 実開昭59−201999(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00
F04D 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車を取り付けられた回転軸と、前記羽根車を回転自在に収納したポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの上側に水密に連通された揚水管とを備えた立軸ポンプであって、
前記立軸ポンプは、当該立軸ポンプが設置される躯体に所定の間隔を隔てて設けられた少なくとも2つの円弧状の躯体側支持部と前記立軸ポンプに設けられたポンプ側支持部とを有する中間支持装置を備え、
前記躯体側支持部とポンプ側支持部とは、僅かな隙間を介して対向して、上下方向におけるスライド移動を許容するとともに、前記回転軸の半径方向の移動を規制され、回転軸中心からスライド移動する部分までの距離が前記回転軸中心から前記ポンプケーシングの最大外周までの距離より長く
前記ポンプケーシングは、前記躯体側支持部のない部分を通過する部分であって、前記回転軸中心からの距離が前記回転軸中心からスライド移動する部分までの距離よりも長い部分を有する立軸ポンプ。
【請求項2】
前記中間支持装置は、前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部との相対位置を調整する位置調整機構を備える請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記躯体側支持部が前記立軸ポンプの周方向に沿って設けられている請求項1又は2に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記躯体側支持部は上広がりのテーパー形状を有している請求項1〜3の何れか一項に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
前記中間支持装置は、前記ポンプ側支持部の前記立軸ポンプの周方向における長さが、前記躯体側支持部の前記立軸ポンプの周方向における長さよりも短く設定されている請求項1〜4の何れか一項に記載の立軸ポンプ。
【請求項6】
前記立軸ポンプの揚水管は、管部材をフランジを介して接続して構成され、前記立軸ポンプとは別部材に構成されたポンプ側支持部が前記フランジ部に固定されている請求項1〜5の何れか一項に記載の立軸ポンプ。
【請求項7】
立軸ポンプの固有振動数と共振する際の振動モードのうち、変位が最も大きい振動モードの腹の部分に前記中間支持装置が設けられている請求項1〜6の何れか一項に記載の立軸ポンプ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の立軸ポンプの据付方法であって、
前記立軸ポンプを前記躯体に据付ける際に、前記ポンプ側支持部との相対位置を調整する位置調整機構を用いて、前記立軸ポンプの設置位置及び前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部との相対位置を調整する工程を含む立軸ポンプの据付方法。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載の立軸ポンプの製造方法であって、
前記立軸ポンプの固有振動数に関する振動モードに基づいて前記ポンプ側支持部を設ける位置を決定する立軸ポンプの製造方法。
【請求項10】
羽根車を取り付けられた回転軸と、前記羽根車を回転自在に収納したポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの上側に水密に連通された揚水管と、立軸ポンプが設置される躯体に設けられた躯体側支持部と前記立軸ポンプに設けられたポンプ側支持部とを有する中間支持装置を備えた立軸ポンプの据付方法であって、
前記中間支持装置は、所定の間隔を隔てて設けられた少なくとも2つの円弧状の前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部との上下方向におけるスライド移動を許容するとともに前記回転軸の半径方向の移動を規制するものであり、
前記ポンプケーシングの、前記回転軸中心からの距離が前記回転軸中心からスライド移動する部分までの距離より長い部分を、前記躯体側支持部のない部分で通過させる工程と、
前記立軸ポンプをポンプ井の開口から下方に向かって前記揚水管が垂下するように前記ポンプ井の開口の前記躯体に設置する工程と、
前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部とが、僅かな隙間を介して対向するように調整する工程とを有する立軸ポンプの据付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根車を取り付けられた回転軸と、前記羽根車を回転自在に収納したポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの上側に水密に連通された揚水管とを備えた立軸ポンプであって、前記立軸ポンプは、当該立軸ポンプが設置される躯体に設けられた躯体側支持部と前記立軸ポンプに設けられたポンプ側支持部とを有する中間支持装置を備えた立軸ポンプ、立軸ポンプの設置方法、及び、立軸ポンプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の立軸ポンプは、一般的に比較的長い揚水管を備え、ポンプ井の開口等の立軸ポンプの設置箇所から揚水管を下方に吊下した状態で設置される。このように、上部で支えるポンプ構造ではポンプが設置箇所を支点として大きく振動したり、地震力に対して設置箇所の剛性が不足することがある。このため、中間支持装置を備え、揚水管の中間部を中間支持装置により躯体側に支持して、設置箇所にかかる力を減らしたり、振動を抑制する場合がある。従来、この種の中間支持装置を備えた立軸ポンプとして、躯体と一体となった躯体側支持部と立軸ポンプの揚水管の部分に設けられるポンプ側支持部とを備え、躯体側支持部とポンプ側支持部とをボルト等により固定して、立軸ポンプの揚水管の部分を躯体に対して一体化したものが知られている。
また、特許文献1には、立軸ポンプにおいて、躯体側に固定された固定板と揚水管に押さえつけられる抑え板と固定板と抑え板との間に設けられた防振装置とを備えた吐出口にかかる力を受ける推力受け装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−345989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の立軸ポンプにおいて、メンテナンス等の際に、設置箇所の下方に吊下した揚水管を含めポンプを躯体から引き抜く必要が生じる場合がある。上記のように、躯体側支持部とポンプ側支持部とをボルト等により固定した場合、ポンプを躯体から引き抜く際に、躯体側支持部とポンプ側支持部とのボルト等による固定を解除する必要があるが、一般的に、揚水管の中間部はポンプ井の開口部からも底部からも離間しており、固定を解除するには、高所足場の設置や安全対策が必要となり、解除作業は非常に困難である。
また、特許文献1に記載のように、躯体側に固定された固定板と揚水管に押さえつけられる抑え板と固定板と抑え板との間に設けられた防振装置とを備えた推力受け装置により、揚水管の中間部を支持する場合も、ポンプを躯体から引き抜く際に、抑え板による抑えを解除するとともに、抑え板の間をポンプが引き抜けるだけ広く離間する必要があり、上記と同様に解除が困難な場合がある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、中間部を確実に支持しつつ、メンテナンスの容易な立軸ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による立軸ポンプは、羽根車を取り付けられた回転軸と、前記羽根車を回転自在に収納したポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの上側に水密に連通された揚水管とを備えた立軸ポンプであって、前記立軸ポンプは、当該立軸ポンプが設置される躯体に所定の間隔を隔てて設けられた少なくとも2つの円弧状の躯体側支持部と前記立軸ポンプに設けられたポンプ側支持部とを有する中間支持装置を備え、前記躯体側支持部とポンプ側支持部とは、僅かな隙間を介して対向して、上下方向におけるスライド移動を許容するとともに、前記回転軸の半径方向の移動を規制され、回転軸中心からスライド移動する部分までの距離が前記回転軸中心から前記ポンプケーシングの最大外周までの距離より長く、前記ポンプケーシングは、前記躯体側支持部のない部分を通過する部分であって、前記回転軸中心からの距離が前記回転軸中心からスライド移動する部分までの距離よりも長い部分を有するように構成されている。
【0006】
上記構成により、躯体側支持部とポンプ側支持部とは、回転軸の半径方向への移動が規制されているので、躯体側支持部とポンプ側支持部とにより、立軸ポンプの中間部を確実に支持することができる。一方、躯体側支持部とポンプ側支持部とが上下方向におけるスライド移動を許容されるので、メンテナンス等のために立軸ポンプを引き抜く際には、躯体側支持部とポンプ側支持部とをスライドさせて引き抜くことができる。また、回転軸中心からスライド移動する部分までの距離が回転軸中心からポンプケーシングの最大外周までの距離より長くなるように構成されているので、ポンプケーシングが躯体側支持部に引っかかることなく立軸ポンプを引き抜くことができる。
上述の結果、中間部を確実に支持しつつ、メンテナンスの容易な立軸ポンプを提供することができる。
【0007】
上記構成において、前記中間支持装置は、前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部との相対位置を調整する位置調整機構を備えると好適である。
【0008】
上記構成により、躯体側支持部とポンプ側支持部との相対位置を調整することができる。このため、例えば、躯体側支持部とポンプ側支持部とを十分に離間させた状態で立軸ポンプを設置し、その後、躯体側支持部とポンプ側支持部とを適切な相対位置とすることができ、立軸ポンプの設置が容易になる。
【0009】
上記構成において前記躯体側支持部が前記立軸ポンプの周方向に沿って設けられていると好適である。
【0010】
上記構成により、躯体側支持部が立軸ポンプの周方向に沿って設けられるので、立軸ポンプを周方向に沿って支持して、回転軸の半径に沿った方向の移動を確実に規制することができる。
【0011】
上記構成において、前記躯体側支持部は上広がりのテーパー形状を有していると好適である。
【0012】
上記構成により、躯体側支持部における上広がりのテーパー形状が、立軸ポンプを設置する際のガイドとして機能する。この結果、立軸ポンプを容易に適切な位置に配置することができる。
【0013】
上記構成において、前記中間支持装置は、前記ポンプ側支持部の前記立軸ポンプの周方向における長さが、前記躯体側支持部の前記立軸ポンプの周方向における長さよりも短く設定されていると好適である。
【0014】
本構成により、ポンプ側支持部は躯体側支持部に常に対向、つまり立軸ポンプの周方向における端部よりも内側に位置することとなる。この結果、立軸ポンプを設置する際に、躯体側支持部に対する立軸ポンプの相対位置が多少適切な位置からずれた場合であっても、ポンプ側支持部が躯体側支持部に対向することとなり、中間支持装置を適切に機能させることができる。この結果、立軸ポンプの設置に高い精度が求められることが無くなり、立軸ポンプの設置が容易になる。
【0015】
上記構成において、前記立軸ポンプの揚水管は、管部材をフランジを介して接続して構成され、前記立軸ポンプとは別部材に構成されたポンプ側支持部が前記フランジ部に固定されていると好適である。
【0016】
上記構成により、立軸ポンプとは別部材に構成されたポンプ側支持部を、比較的強度の高いフランジ部に固定するので、従来の立軸ポンプに設計変更等をすることなく、中間支持装置を備えることができる。
【0017】
上記構成において、立軸ポンプの固有振動数と共振する際の振動モードのうち、変位が最も大きい振動モードの腹の部分に前記中間支持装置が設けられていると好適である。
【0018】
本発明の立軸ポンプの据付方法は、上記の立軸ポンプの据付方法であって、前記立軸ポンプを前記躯体に据付ける際に、前記ポンプ側支持部との相対位置を調整する位置調整機構を用いて、前記立型ポンプの設置位置及び前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部との相対位置を調整する工程を含む。
【0019】
上記構成により、位置調整機構を用いて、前記立軸ポンプの設置位置及び前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部との相対位置を調整する工程を含むので、例えば、躯体側支持部とポンプ側支持部とをある程度離間させた状態で立軸ポンプを設置し、その後、躯体側支持部とポンプ側支持部とを適切な相対位置とすることができ、立軸ポンプの設置が容易になる。
【0020】
本発明の立軸ポンプの製造方法は、上記の立軸ポンプの製造方法であって、前記立軸ポンプの固有振動数に関する振動モードに基づいて前記ポンプ側支持部を設ける位置を決定する。
【0021】
上記構成により、立軸ポンプの固有振動数に関する振動モードに基づいてポンプ側支持部を設ける位置を決定するので、例えば、振動による移動量が大きい振動モードの腹の部分若しくは振動モードの腹の部分に近接した位置にポンプ側支持部を設けることにより、立軸ポンプを確実に支持し、振動を抑制することができる。
【0022】
本発明の立軸ポンプの据付方法は、羽根車を取り付けられた回転軸と、前記羽根車を回転自在に収納したポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの上側に水密に連通された揚水管と、立軸ポンプが設置される躯体に設けられた躯体側支持部と前記立軸ポンプに設けられたポンプ側支持部とを有する中間支持装置を備えた立軸ポンプの据付方法であって、前記中間支持装置は、所定の間隔を隔てて設けられた少なくとも2つの円弧状の前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部との上下方向におけるスライド移動を許容するとともに前記回転軸の半径方向の移動を規制するものであり、前記ポンプケーシングの、前記回転軸中心からの距離が前記回転軸中心からスライド移動する部分までの距離より長い部分を、前記躯体側支持部のない部分で通過させる工程と、前記立軸ポンプをポンプ井の開口から下方に向かって前記揚水管が垂下するように前記ポンプ井の開口の前記躯体に設置する工程と、前記躯体側支持部と前記ポンプ側支持部とが、僅かな隙間を介して対向するように調整する工程とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る立軸ポンプの全体図である。
図2】本発明に係る立軸ポンプにおける中間支持装置の断面図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4】位置調整機構を示す図である。
図5】本発明に係る立軸ポンプにおける中間支持装置の斜視図である。
図6】本発明に係る立軸ポンプにおける中間支持装置の斜視図である。
図7】本発明の別実施形態に係る中間支持装置の断面図である。
図8】種々の振動モードを示す模式図であり、(a)は一次振動、(b)は二次振動、(c)は三次振動、(d)は四次振動を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の立軸ポンプPを示す全体図である。この立軸ポンプPは例えば、コンクリート製のポンプ井Aに設けられる。図1に示すように、立軸ポンプPは、下端側に羽根車101と羽根車101を取り付けられた回転軸102と、羽根車101を回転自在に収納したポンプケーシング103と、ポンプケーシング103の下側(上流側)に水密に連通された吸込管107と、ポンプケーシング103の上側(下流側)に水密に連通され上下方向に延びる揚水管104と、揚水管104の上側(下流側)に水密に連通された吐出管105とを備える。回転軸102は揚水管104内に図示しない軸受けにより、回転自在に設けられている。
【0025】
図1に示すように、立軸ポンプPはポンプ井Aの開口から下方に向かって揚水管104が垂下された状態で、ポンプ井Aの開口Aaの躯体に設置されている。揚水管104の上方(ポンプ井の開口の周囲)に架台108が設けられ、この架台に例えばモータ等の原動機が設けられる。原動機の出力軸100と回転軸102の上端側とが接続され、原動機の回転により回転軸102及び羽根車101が回転される。羽根車101の回転により、吸込管107から吸い込まれた水が揚水管104に揚水され、吐出管105から排出される。
【0026】
本実施形態において、揚水管104は、複数の直管部材104a及び中間軸受管104
bをそれぞれの直管部材104a及び中間軸受管部材104bの端部に設けられたフラン
ジ104cを介して接続することにより構成されている。中間軸受管104bは内部に回転軸3を回転自在に支持する軸受(図示せず)を備える。
【0027】
図1及び2に示すように、この立軸ポンプPは、立軸ポンプPの中間部(本実施形態においては揚水管104)を支持する中間支持装置10を備える。この中間支持装置10は、立軸ポンプPが設置される躯体K(本実施形態においてはポンプ井Aの内壁)に設けられた躯体側支持具2(本発明の躯体側支持部に相当)と立軸ポンプに設けられたポンプ側支持具3(本発明のポンプ側支持部に相当)とを備える。
【0028】
図2及び3に示すように、躯体側支持具2は、躯体Kの一例としてのポンプ井Aの内壁に固定される躯体側取付部材21と、躯体側取付部材21に取り付けられる躯体側規制部材22とを有する。
躯体側取付部材21は、ポンプ井Aの内壁に固定される固定部23と、固定部23から立軸ポンプP側に延び後述する躯体側規制部材22の支持部26が取付けられる取付部24とを備える。固定部23は、例えばケミカルアンカー等によりポンプ井Aの内壁に固定される。固定部23には後述する対向部27の孔部271に挿通されるタイロッド231が例えば溶接等により立設置されている。本実施形態では、タイロッド231は上下方向に沿って3箇所に設けられている。また、取付部24にはボルト242が挿通される長孔241が設けられている。本実施形態では長孔241は上下方向に沿って4箇所に形成されている。
【0029】
図2及び3に示すように、躯体側規制部材22は、躯体側規制部25と、躯体側規制部25を支持する支持部26とを備える。
躯体側規制部25は、立軸ポンプPの外周部に円弧状に配置されるとともに上下方向に延びる規制面251と、規制面251の上縁から上方へ向かうほど拡径するようにテーパー状に延びる上側テーパー面252と、規制面251の下縁から下方へ向かうほど拡径するようにテーパー状に延びる下側テーパー面253とを有する。躯体側規制部25の規制面251の裏面には、周方向に沿って補強用のリブ254が立設されている。
【0030】
図2及び3に示すように、支持部26は固定部23に対向して延びる対向部27と、基端部側が取付部24に取り付けられるとともに立軸ポンプP側に延びる被取付部28とを備える。被取付部28の先端側(立軸ポンプ側)に躯体側規制部25が設けられている。
【0031】
図2及び3に示すように、対向部27には孔部271が形成され、タイロッド231が挿通されている。当該タイロッド231には対向部27の両側にナット232が設けられている。孔部271は、タイロッド231に対向して上下方向に3箇所設けられている。また、被取付部28には、長孔241に対向する上下方向の4箇所に孔部281が設けられている。図2及び3に示すように、それぞれの長孔241と孔部281とに亘ってボルト242が挿通されナット243が締結されている。これにより、躯体側規制部材22が躯体側取付部材21を介してポンプ井Aの内壁に支持される。
【0032】
図4に示すように、ボルト242とナット243との締結を緩め、タイロッド231に締結されたボルト232(図2を参照)の締結位置を変更することにより、躯体側規制部材22が長孔241に沿って移動する。これにより、躯体側規制部25の規制面251と後述するポンプ側規制部31の規制面311との相対位置を調整することができる。このように、長孔241及びタイロッド231は本発明の位置調整機構として機能する。
【0033】
なお、本実施形態においては、互いに対向する一対の躯体側規制部材22が設けられている。また、それぞれの躯体側規制部材22は一対の支持部26を有する。このように、躯体側支持具2の躯体側規制部25が立軸ポンプPの周方向に沿って設けられている。
【0034】
図2及び3に示すように、ポンプ側支持具3は、フランジ104cに取付けられるポンプ側取付部32とポンプ側規制部31とを備える。
ポンプ側取付部32はフランジ104cの径方向に延在するとともに、フランジ104cに沿って円弧状に延びている。ポンプ側取付部32の径方向外側で周方向の両端部には、所定の周方向端部に亘ってポンプ側規制部31が一対、周方向に90°離れた位置に設けられている。ポンプ側規制部31は上下方向に延びるとともに、ポンプ側取付部32に沿って、円弧状に延びている。
【0035】
図2及び3に示すように、ポンプ側取付部32の径方向内側部分には、フランジ104cの孔部に対応して孔部322が形成され、ポンプ側取付部32の孔部322及びフランジ104cの孔部に亘ってボルト323及びナット324を締結して共締することにより、ポンプ側取付部32がフランジ104cに固定される。
【0036】
なお、ポンプ側取付部32の上面及び下面には補強用のリブ325,326が立設されている。本実施形態においては、リブ325はポンプ側取付部32の幅方向(径方向)の略全域に亘って設けられている。また、リブ326は、フランジ104cの邪魔にならないように、フランジ104cよりも径方向外側において。フランジ104cに沿って周方向に延在している。
【0037】
上記のとおり、ポンプ側規制部31がポンプ側取付部32により、立軸ポンプP側に支持されている。本実施形態において、一対のポンプ側取付部32が設けられ、それぞれのポンプ側取付部材32に一対のポンプ側規制部31が設けられている。
なお、本実施形態において、回転軸102の中心からスライド移動する部分までの距離Laが、回転軸102からポンプケーシング103の最大外周までの距離Lbより長く設定されている。ここで、距離Laは、回転軸102の中心から躯体側規制部25の規制面251までの距離である。躯体側規制面251とポンプ側規制面311とが当接している場合は、回転軸102の中心からポンプ側規制部31の規制面311までの距離と略等しくなる。
なお、回転軸102からポンプケーシング103の最大外周までの距離Lbは、立軸ポンプPを設置、取り外しするときに、躯体側規制部25の規制面251を通過する部分の寸法である。例えば、本実施例のように躯体側の規制面251が円弧状で形成された場合には、規制面251の無い部分を通過する部分(例えば、取り付けフランジ110)の回転軸102からの距離は、距離Laよりも長くてもよい。つまり、躯体側規制部25を通過して立軸ポンプPを引き抜くことができる形状であればよい。
【0038】
図2に示すように、躯体側規制部25の規制面251とポンプ側規制部31の規制面311とが当接又は僅かな隙間を介して対向する。これにより、立軸ポンプPは、上下方向(回転軸102の長手方向)にスライド移動が許容される。
【0039】
また、本実施形態では、図2に示すように、躯体側支持具2とポンプ側支持具3とが円弧状に配置され、躯体側支持具2の周方向長さがポンプ側支持具3の周方向長さよりも長く設定されている。このため、躯体側支持具2とポンプ側支持具3とを対応させた状態において、躯体側支持具2がポンプ側支持具3の周方向における両端部を越えて延在する。つまり、それぞれのポンプ側規制部材31が躯体側規制部材22の躯体側規制部25の周方向における端部よりも内側に存在する。言い換えると、ポンプ側規制部材31は、躯体側規制部材22に常に対向する。
【0040】
上記の構成により、図5及び6に示すように、この中間支持装置10において、躯体側支持具2の躯体側規制部25とポンプ側支持具3のポンプ側規制部31とは、上下方向においてスライド移動が許容される。一方、ポンプ井Aの内壁に固定された躯体側支持具2の躯体側規制部25とポンプ側支持具3のポンプ側規制部31とが当接することにより、回転軸102の半径方向への移動が規制される。従って、立軸ポンプPはポンプ井の開口から下方に向かって揚水管104が垂下され設置された状態において、揚水管104が回転軸102の半径方向に移動しないように支持される。一方、例えばメンテナンス等のために、立軸ポンプPをポンプ井Aから引き抜く必要がある場合には、図6に示すように、躯体側支持具2の躯体側規制部25とポンプ側支持具のポンプ側規制部31とは、上下方向においてスライド移動が許容されるので、中間支持装置10と干渉することなく、容易に立軸ポンプPを引き抜くことができる。また、回転軸102の中心からスライド移動する部分までの距離Laが、回転軸102からポンプケーシング103など、中間支持装置10より下の立軸ポンプPの外周までの距離Lbより長く設定されているので、立軸ポンプPを引き抜く際にポンプケーシング103などが躯体側規制部25に引っかかることなく引き抜くことができる。
【0041】
以下、この立軸ポンプPの設置方法の一例について説明する。立軸ポンプPの設置に先立ち位置調整機構(長孔241及びタイロッド231)により、躯体側支持具2の躯体側規制部25をポンプ井Aの内壁側に引退させておく(図4の実線を参照)。つまり、対向する躯体側規制部同士の間隔を広げておく。上記の状態において、立軸ポンプPを例えばクレーン(図示はせず)等により、ポンプ井Aの内部に吊り下げて、対向する躯体側規制部25同士の間において、適切な回転軸102の半径方向位置となるよう位置調整をしつつ、上下方向位置についてはポンプ側規制部31の規制面311が躯体側規制部25の規制面251に対向する位置となるように位置調整をする。この状態において、立軸ポンプPの上方部分が、ポンプ井Aの開口部の周囲に設置された状態となる。なお、この際、上側テーパー面252及び下側テーパー面253がガイドとなり、躯体側規制部25が据付の邪魔をすることが無く、ポンプ側規制部31の規制面311を適切な位置に配置することができる。
【0042】
その後、位置調整機構により、躯体側支持具2の躯体側規制部25をポンプ井Aの内壁側からポンプ側に突出させる(図4の2点差線を参照)。これにより、躯体側規制部31の規制面311とポンプ側規制部25の規制面251が接触又は僅かな隙間を隔てて対向する状態となり、立軸ポンプPの設置が完了する。上記のように、立軸ポンプPを躯体Kに据付ける際に、位置調整機構を用いて、立軸ポンプPの設置位置及び躯体側支持具2とポンプ側支持具3の相対位置を調整する工程が行なわれる。なお、位置調整機構とテーパ面は、立軸ポンプPの据付時の振れを吸収するだけでなく立軸ポンプPの製造上の誤差を吸収する役割も有しており、製造コスト削減の効果も有る。
また、ポンプ側規制部31と躯体側規制部25との間には、僅かな隙間がある方が、立軸ポンプPの設置及び取り外しの作業が容易になる。
【0043】
[別実施形態]
(1)上記の実施形態において、躯体側支持具2に位置調整機構を設ける場合を例に説明したが、位置調整機構をポンプ側支持具3に設けても良い。また、位置調整機構は必ずしも設けなくてもよい。なお、上記実施形態のように、躯体側支持具2に位置調整機構を設けると、位置調整は動くことのない躯体側で行なうことができ、位置調整作業が容易に行なえるより良い形態である。
【0044】
(2)上記の実施形態において、一対の躯体側支持具2を立軸ポンプPの周方向に沿って設ける場合を例に説明したが上記の例に限られるものではない。例えば、環状の躯体側支持具2を設けても良く、三以上の躯体側支持具2を立軸ポンプPの周方向に沿って設けてもよい。また、周方向に沿って設けられた躯体側支持具2が、上下方向(軸方向)にずれていても良い。なお、躯体側支持具2を周方向に沿って同じ高さに一対設けることが、コストの削減及び良好な支持を兼ね備えた最良の形態である。
【0045】
(3)上記実施形態において、規制面251の上縁から上方へ向かうほど拡径するようにテーパー状に延びる上側テーパー面252と、規制面251の下縁から下方へ向かうほど拡径するようにテーパー状に延びる下側テーパー面253とを有する場合を例に説明したが、必ずしも上側テーパー面252及び下側テーパー面253を備えなくてもよい。例えば、図7に示すように、上側テーパー面252のみを有したり、下側テーパー面253のみを有するなど、上側テーパー面252及び下側テーパー面253の何れか一方のみを有してもよいし、上側テーパー面252及び下側テーパー面253を有さず、規制面251のみを有してもよい。
なお、上記実施形態のように、上下にテーパー面を備えると、立軸ポンプPの据付及び引き抜きの際に、立軸ポンプPが半径方向に振れたとしても、振れを吸収することができ、軸方向への移動を良好にガイドできる最良の形態である。
【0046】
(4)上記実施形態において、躯体側支持具2の周方向長さがポンプ側支持具3の周方向長さよりも長く設定されている場合を例に説明したが、周方向長さを同一に設定してもよく、ポンプ側支持具3の周方向長さの方を長く設定してもよい。
【0047】
(5)上記実施形態において、揚水管104を複数の直管部材104a及び中間軸受管1
04bを、フランジ104cを介して接続することにより構成する場合を例に説明したが、一体ものの直管部材で揚水管104を構成してもよい。この場合、別体で構成されたポンプ側支持具3を例えば溶接等により、揚水管104にとりつけてもよい。また、予め、揚水管104と一体にポンプ側支持具3を形成しておいてもよい。
【0048】
(6)上記実施形態において、ポンプ側規制部31は、1つのポンプ取付部32の周方向に180°離れた位置に一対設ける場合で説明したが、120°離れた位置に3箇所など、角度や数は適宜変更可能である。
上記実施形態において、ポンプ側規制面311は、1つのポンプ側規制部31の周方向に90°離れた位置に一対設ける場合で説明したが、90°に亘る1つのポンプ側規制面311や、45°毎に3箇所など、角度や数は適宜変更可能である。
なお、90°離れた位置に設けると、径方向の変位を均一に支持することができるとともに、ポンプ側規制面311の数を減らすことができるより良い形態である。
【0049】
(7)上記の実施形態において、ポンプ側支持具3の設置位置を決定するに際し、立軸ポンプPの固有振動数に関する振動モードに基づいて決定することができる。具体的には、図7に示すように、立軸ポンプPは中間支持装置10を備えない場合、上部の据付部を固定端、下部のポンプ部を自由端として、振動を生じ一次振動(図7(a))、二次振動(図7(b))、三次振動(図7(c))、四次振動(図7(d))等により、振動の節及び腹の位置が異なる。そこで、立軸ポンプPの固有振動数と共振する際の振動モードを把握し、例えば変位が最も大きい振動モードの腹の部分にポンプ側支持具3を設けることにより、立軸ポンプPを確実に支持し、振動を抑制することができる。なお、フランジ104cにポンプ側支持具3を設ける場合等、必ずしも振動モードの腹の部分にポンプ側支持具3を設けることができない場合がある。この場合は、振動モードを考慮して、振動モードの腹に近接するフランジ104cにポンプ側支持具3を設けるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、立軸ポンプ、立軸ポンプの設置方法、及び、立軸ポンプの製造方法に利用可能伊である。
【符号の説明】
【0051】
2 躯体側支持具(躯体側支持部)
3 ポンプ側支持具(ポンプ体側支持部)
10 中間支持装置
21 躯体側取付部材
22 躯体側規制部材
25 躯体側規制部
31 ポンプ側規制部
32 ポンプ側取付部
251 規制面
311 規制面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8