【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先ず、従来の充填済容器殺菌装置について
図2から
図4に基づいて説明する。
図2は、従来の充填済容器殺菌装置を組み込んだ充填包装ラインの平面図で、一部を模式的に示した図である。
図3は、
図2に示す充填済容器殺菌装置の正面断面図で、一部を省略している。
図4は、充填済容器殺菌装置の各ノズル群の水の温度と製品温度の関係を示す線図である。
図2において、製品(充填済容器)Bは、上流から矢印21fの方向に搬送されて、供給コンベヤ21を経て、充填済容器殺菌装置11へ供給され、矢印11fのように連続搬送されている間に、順次加温用、殺菌用、冷却用の所定温度の水のシャワーを受けて、所定の殺菌条件(温度、時間等)で殺菌された後、下流のアキュームコンベヤ22へ搬出されて、矢印22fに示すように、後工程側へ搬送されるようになっている。
【0005】
図3において、従来の充填済容器殺菌装置11は、上本体3と下本体4で囲われた筐体の中で、製品Bが搬送装置12により矢印11fの方向に連続搬送され、上本体3に設置された複数個のノズルSnから成るノズル群5a、ノズル群5b、ノズル群5c、ノズル群5d、ノズル群5e、ノズル群5f、ノズル群5gからの所定温度の水の散水(以下シャワーと称することもある)を順次受けて熱殺菌されるようになっており、前記ぞれぞれのノズル群5a、ノズル群5b、ノズル群5c、ノズル群5d、ノズル群5e、ノズル群5f、ノズル群5gには図示しない水供給装置からそれぞれ配管Pa、配管Pb、配管Pc、配管Pd、配管Pe、配管Pf、配管Pgを経由して所定温度、所定流量の水が供給されるようになっている。
【0006】
また、下本体4には、前記ノズル群5a、ノズル群5b、ノズル群5c、ノズル群5d、ノズル群5e、ノズル群5f、ノズル群5gからの所定温度の水のシャワーを受けて集めるそれぞれの水槽6a、水槽6b、水槽6c、水槽6d、水槽6e、水槽6f、水槽6gが配置されており、前記それぞれの水槽6a、水槽6b、水槽6c、水槽6d、水槽6e、水槽6f、水槽6gで受けられたシャワー後の水は、図示しない配管系統により図示しない水供給装置へ戻されるようになっている。
【0007】
前記搬送装置12は、図示のように、該充填済容器殺菌装置の始点位置から終点位置までの長さとなっており、運転、停止、或いは、搬送速度変更の制御が制御装置15からの指令によりなされるようになっている。
【0008】
各ノズル群5a〜ノズル群5gからシャワーされる所定温度の水の温度と、前記搬送装置2上を矢印11fの方向に向かって搬送されていく製品Bが前記シャワーを受けて熱処理殺菌されている製品温度との関係を、1例として、
図4を基に説明する。
図4は、
図3の充填済容器殺菌装置11の各ノズル群の水の温度と製品温度を示す線図である。
【0009】
ノズル群5a部に搬入された温度が一例として約5℃の製品Bは、ノズル群5aから散水される温度taの水のシャワーを受けて徐々に温められ、ノズル群5b部でノズル群5bから散水される温度tbの水のシャワーを受けてさらに温められ、ノズル群5c部でノズル群5cから散水される温度tcの高温の水のシャワーを受けて熱殺菌に必要な最低温度tsまで熱せられる。該充填済容器殺菌装置の始点位置から前記熱殺菌に必要な最低温度tsに到達する搬送位置Tsまでのエリアを加温処理エリアと称する。
【0010】
前記搬送位置Tsを過ぎて搬送される製品Bは、ノズル群5c部の前記搬送位置Tsの下流側で、ノズル群5cから散水される温度tcの高温の水のシャワーを受けて熱殺菌に必要な最低温度ts以上の所定温度に直近の温度まで上昇して、ノズル群5d部でノズル群5dから散水される温度tdの高温の水のシャワーを受けて前記所定温度に所定時間保持されて内容物が殺菌される。前記搬送位置Tsから前記所定温度に所定時間保持されて内容物の殺菌が終了する搬送位置までのエリアを殺菌処理エリアと称するが、後述するように、過殺菌回避エリアとも称する。
【0011】
前記殺菌処理エリアを過ぎて搬送される製品Bは、ノズル群5e部でノズル群5eから散水される温度teの水のシャワーを受けて前記所定温度から徐々に冷却され、ノズル群5f部でノズル群5fから散水される温度tfの水のシャワーを受けて中間温度の冷却を経て、さらにノズル群5g部でノズル群5gから散水される温度tgの水のシャワーを受けて所定温度まで冷却される。前記殺菌処理エリアの終点位置から該充填済容器殺菌装置の終点位置までのエリアを冷却処理エリアと称する。
【0012】
即ち、製品Bは、図示温度線
図Csのように加温、殺菌および冷却の処理がなされて、熱殺菌処理される。
前記温度線
図Csは、熱殺菌対象の製品の種類および容量、容器の表面積等の大きさおよび材質等の物性に応じて決められ、加温、殺菌および冷却の制御がなされるようになっている。
【0013】
次に、前記説明の従来の充填済容器殺菌装置11の作用を説明する。
定常運転状態では、製品Bは、搬送装置2により連続搬送されて前記温度線
図Csに示すように、各ノズル群5a〜ノズル群5gから所定温度の水のシャワーを受けて、加温処理エリア、殺菌処理エリア(過殺菌回避エリア)、冷却処理エリアでそれぞれ加温、殺菌、冷却の処理がなされ、所定の殺菌条件(温度、時間等)により熱殺菌処理されて、後工程側のアキュームコンベヤ22へ搬送されていく。
【0014】
後工程側のアキュームコンベヤ22等の機器がトラブル等で停止したとき、或いは、前記アキュームコンベヤ22での製品Bのアキュムレーション量が所定の満杯状態になったときは、前記搬送装置2の停止を必要とすることがある。前記搬送装置2を停止したままとすると、殺菌処理エリアにあった製品Bは、高温の水を所定条件以上の時間で受ける恐れがあり、その場合過殺菌状態となってしまうので、過殺菌回避の対応が必要となる。したがって、殺菌処理エリアを過殺菌回避エリアとも称する。
【0015】
前記過殺菌を回避するためには、制御装置15からの指令により、供給コンベヤ21を停止させるとともに、前記搬送装置2の運転を継続として、前記搬送装置2上にあった製品Bを全て前記搬送装置2から下流側へ排出する必要が生じる。しかし、下流側の製品Bのアキュムレーションに余裕が無い場合は、前記搬送装置2を停止せざるを得なくなって、過殺菌製品が発生してしまう恐れがある。
【0016】
前記説明のように、従来の充填済容器殺菌装置11では、後工程のアキュームコンベヤ22等がトラブル等で停止したとき、或いは、前記アキュームコンベヤ22での製品Bのアキュムレーション量が所定の満杯状態になったときは、供給コンベヤ21を停止させるとともに、前記搬送装置2の運転を継続として、前記搬送装置2上にあった製品Bを前記過殺菌回避エリアの下流以降へ排出しなければならず、排出される製品Bを該充填済容器殺菌装置の前記冷却処理エリア、および、該充填済容器殺菌装置の後工程のアキュームコンベヤ22でアキュムレーションできるように、前記アキュームコンベヤ22の長さを必要長さにしなければならない。
即ち、従来の該充填済容器殺菌装置11では、後工程のアキュームコンベヤ22の長さが長くなり、レイアウトが長くなってしまうという恐れがある。
【0017】
また、前記特許文献1によれば、温水をシャワーするゾーンを搬送方向に複数個設けて、各ゾーンにシャワーする温水の温度をそれぞれコントロールし、さらに、前記コントロールは、搬送中の製品の搬送停止を検出して、各領域に搬送停止中の製品に対して、製品が正常に搬送された場合と実質的に同一の加温、殺菌、冷却の温水がシャワーされるように、各ゾーンにシャワーされる温水の温度をコントロールして、製品の過殺菌を防止するとしている。
【0018】
しかしながら、前記特許文献1の充填済容器殺菌技術では、製品搬送停止時に各ゾーンにシャワーされる温水の温度を変更してしまっているので、充填済容器殺菌装置の運転再開時には、各ゾーンにシャワーされる温水を所定温度にするまでに、即ち、定常運転再開までに長時間を要し、生産性が悪くなるという恐れがある。
【0019】
本発明は、上述した事情に鑑み、搬送装置により連続搬送される充填済容器(製品)に、順次加温用、殺菌用、冷却用の所定温度の水をシャワーして、所定の殺菌条件(温度、時間等)で製品を殺菌する充填済容器殺菌装置および方法において、該充填済容器殺菌装置より後工程の機器の運転停止等があった場合に、生産性を悪化させることがなくて、過殺菌防止を図ることができ、また、レイアウト長さを短くすることができる充填済容器殺菌装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の課題に対し、本発明は以下の手段により解決を図る。
(1)第1の手段の充填済容器殺菌装置は、搬送装置により連続搬送される内容物充填済の容器(以下内容物充填済の容器を充填済容器又は製品と称する)に、順次加温用、殺菌用、冷却用の所定温度の水をシャワーして、所定の殺菌条件(温度、時間等)で製品を殺菌する充填済容器殺菌装置において、前記搬送装置を、該充填済容器殺菌装置の始点位置から、製品が前記加温用並びに殺菌用の水のシャワーを受けることにより順次温度上昇して殺菌温度直近の所定温度(熱殺菌に必要な最低温度)に到達する搬送位置(この搬送位置を搬送位置Tsと称する)までの区間の第一搬送装置と、前記搬送位置Tsから該充填済容器殺菌装置の終点位置までの区間の第二搬送装置に分割するとともに、前記第一搬送装置と第二搬送装置をそれぞれに運転、停止、或いは、搬送速度変更の制御を可能と
し、前記充填済容器殺菌装置より後工程の機器等が停止等となった場合に、前記第一搬送装置の製品搬送を停止、前記第二搬送装置の製品搬送を継続とするように制御が可能な制御装置を備えることを特徴とする。
【0021】
(2)第2の手段の充填済容器殺菌方法は、搬送装置により連続搬送される内容物充填済の容器(以下内容物充填済の容器を充填済容器又は製品と称する)に、順次加温用、殺菌用、冷却用の所定温度の水をシャワーして、所定の殺菌条件(温度、時間等)で製品を殺菌する
充填済容器殺菌装置を用いる充填済容器殺菌方法において、前記搬送装置を、該充填済容器殺菌装置の始点位置から、製品が前記加温用並びに殺菌用の水のシャワーを受けることにより順次温度上昇して殺菌温度直近の所定温度(熱殺菌に必要な最低温度)に到達する搬送位置(この搬送位置を搬送位置Tsと称する)までの区間の第一搬送装置と、前記搬送位置Tsから該充填済容器殺菌装置の終点位置までの区間の第二搬送装置に分割して、前記第一搬送装置と第二搬送装置をそれぞれ運転、停止の制御を可能に、及び、搬送速度変更の制御を可能とし、該充填済容器殺菌装置より後工程の機器等が停止等となった場合に、前記第一搬送装置の製品搬送を停止、前記第二搬送装置の製品搬送を継続とするように制御が可能な運転構成としたことを特徴とする。
【0022】
(3)第3の手段の充填済容器殺菌方法は、前記第2の充填済容器殺菌方法において、前記第一搬送装置の運転継続後、前記搬送位置Tsから、前記殺菌用の水のシャワーを受けて製品の内容物が殺菌温度で所要時間殺菌され、前記冷却用の水のシャワーを受け始める搬送位置までの殺菌処理エリア(該殺菌処理エリアの製品は搬送停止時にそのまま放置されると過殺菌となる恐れがあることから、該殺菌処理エリアを過殺菌回避エリアとも称する)の中の全ての製品が該過殺菌回避エリアから下流側へ搬出されたら、前記第一搬送装置を停止とするように制御が可能な運転構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1および2に係わる本発明は、搬送装置により連続搬送される内容物充填済の容器(以下内容物充填済の容器を充填済容器又は製品と称する)に、順次加温用、殺菌用、冷却用の所定温度の水をシャワーして、所定の殺菌条件(温度、時間等)で製品を殺菌する充填済容器殺菌装置において、前記搬送装置を、該充填済容器殺菌装置の始点位置から、製品が前記加温用並びに殺菌用の水のシャワーを受けることにより順次温度上昇して殺菌温度直近の所定温度(熱殺菌に必要な最低温度)に到達する搬送位置(この搬送位置を搬送位置Tsと称する)までの区間の第一搬送装置と、前記搬送位置Tsから該充填済容器殺菌装置の終点位置までの区間の第
二搬送装置に分割するとともに、前記第一搬送装置と第
二搬送装置をそれぞれに運転、停止
を制御可能に、及び、搬送速度変更の制御を可能とする構成としたことによって、該充填済容器殺菌装置より下流工程の機器が運転停止等となった場合に、前記第一搬送装置を停止とし、前記第
二搬送装置の運転を継続として、前記過殺菌回避エリアにある製品を、該過殺菌回避エリアから下流側へ排出して、過殺菌とならないように防止できるという効果を有する。
また、少なくとも過殺菌回避エリアの製品のみを過殺菌回避エリアから下流側へ排出すればよいので、後工程のアキュムレーション長さを減少させることができ、レイアウトを短くすることができるという効果を有する。
さらに、加温用、殺菌用、冷却用の所定温度の水の条件がそのまま継続されているので、充填済容器殺菌装置の定常運転再開時に直ちに再開することができるという効果を有する。
【0024】
請求項3に係わる本発明は、請求項2に記載する充填済容器殺菌方法において、前記過殺菌回避エリアの中の全ての製品が該過殺菌回避エリアから下流側へ搬出されたら、前記第一搬送装置を停止できるように制御が可能な運転構成としたことによって、後工程のアキュムレーション長さを短くすることができて、レイアウトをさらに短くすることができるという効果を有する。