(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の発光素子から出射される複数の光ビームが回転駆動される感光体の回転方向の異なる位置を露光するように前記複数の発光素子が配置された光源を備え、同期信号を基準に前記複数の発光素子それぞれの前記光ビームの出射タイミンを制御する画像形成装置であって、
前記複数の光ビームが前記感光体上を走査するように前記複数の光ビームを偏向する偏向手段と、
前記偏向手段によって偏向された前記複数の光ビームが入射し、入射した前記複数の光ビームを当該複数の光ビームが前記感光体上を走査する走査方向に屈折させる樹脂製の第1のレンズと、
前記偏向手段によって偏向された光ビームが入射するように当該光ビームの光路上に配置され、当該光ビームを前記走査方向に対応する方向に屈折させるガラス製の第2のレンズと、
前記第2のレンズを通過した光ビームを受光して前記同期信号を生成する受光素子と、
前記複数の発光素子に含まれる第1の発光素子及び第2の発光素子それぞれから異なるタイミングで光ビームを出射させ、前記第1の発光素子から出射された光ビームを受光した前記受光素子が生成する第1の同期信号と前記第2の発光素子から出射された光ビームを受光した前記受光素子が生成する第2の同期信号との生成タイミング差を測定し、当該測定結果と前記第1の発光素子から出射された光ビームを受光した前記受光素子が生成する第1の同期信号の生成タイミングとに基づいて、前記複数の発光素子間の相対的な光ビームの出射タイミングを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
前記第2のレンズを通過した光ビームが入射するように当該光ビームの光路上の前記第2のレンズと前記受光素子との間に配置され、入射した光ビームを前記感光体の回転方向に対応する方向に屈折させる樹脂製の第3のレンズを備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
前記第3のレンズは入射した前記光ビームを前記走査方向に対応する方向に屈折させる屈折力を有し、前記第2のレンズが有する前記走査方向に対応する方向の屈折力は、前記第3のレンズが有する前記走査方向に対応する方向の屈折力よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
前記第3のレンズは前記第2のレンズを通過した前記光ビームを透過させる透過部と前記第2のレンズを保持する保持部とを備えることを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
前記複数の発光素子は、前記複数の光ビームが前記走査方向の異なる位置を露光するように前記光源に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の画像形成装置。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から出射された光ビームを回転多面鏡によって偏向し、回転多面鏡によって偏向された光ビームによって感光体を走査することで感光体上に静電潜像を形成する画像形成装置が知られている。このような画像形成装置は、回転多面鏡によって偏向された光ビームを検出する光学センサを備える。光学センサによって生成される同期信号を基準として光源から光ビームを出射させることで、光ビームが感光体上を走査する方向(主走査方向)における静電潜像(画像)の書き出し位置を一致させている。
【0003】
また、画像形成速度の高速化、画像の高解像度化を図るために、光ビームを出射する複数の発光素子が
図9(a)に示すように配列された光源を備える画像形成装置が知られている。
図9(a)中、X軸方向は主走査方向に対応し、Y軸方向は感光体の回転方向(副走査方向)に対応する。このような画像形成装置では、工場における組立工程において光源を
図9(a)中に示す矢印方向に回転し、Y軸方向の発光素子の間隔を調整する。このように光源を回転させることによって、感光体上における各発光素子から出射された光ビームの副走査方向における露光位置間隔を画像形成装置の解像度に対応する間隔に調整していた。
【0004】
図9(a)に示す矢印方向に光源を回転させると、Y軸方向における発光素子の間隔が変動するとともにX軸方向における発光素子の間隔も変動する。そのため、従来の画像形成装置は、光学センサによって生成される水平同期信号を基準に各発光素子毎に定められたタイミングで各発光素子から光ビームを出射させて、静電潜像の主走査方向の書き出し位置を一致させている。
【0005】
上記の組立工程において、画像形成装置の光源の設置状態やレンズやミラーなどの光学部材の光学特性によって、画像形成装置毎に光源を回転させる角度(調整量)が異なる。そのため、複数の画像形成装置の間で、光源の回転調整後のX軸方向の発光素子間隔が一致しないことがある。ここで、光学センサによって生成される同期信号を基準として各発光素子毎に設定される光ビームの出射タイミングをすべての画像形成装置において同一に設定すると、主走査方向における静電潜像の書き出し位置が主走査方向にずれた画像形成装置が発生するおそれがある。
【0006】
このような組立工程において光源を回転させることで生じる主走査方向の静電潜像の書き出し位置のずれを抑制するために、特許文献1は、第1の発光素子及び第2の発光素子それぞれから出射される光ビームによって複数の水平同期信号を生成し、複数の水平同期信号の生成タイミング差から第1の発光素子の光ビームの出射タイミングに対する第2の発光素子の光ビームの出射タイミングを設定する画像形成装置を開示している。
【0007】
また、特許文献2には、fθレンズに樹脂製のレンズを採用し、fθレンズとは異なる集光レンズ(BDレンズ)を通過した光ビームを同期信号を生成する光学センサに入射させるように構成した光走査装置が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
図1は、複数色のトナーを用いて画像形成するデジタルフルカラープリンター(カラー画像形成装置)の概略断面図である。なお、実施例をカラー画像形成装置を例に説明するが、実施の形態はカラー画像形成装置に限られるものではなく単色のトナー(例えば、ブラック)のみで画像形成する画像形成装置であっても良い。
【0014】
まず、
図1を用いて本実施例の画像形成装置100について説明する。画像形成装置100には色別に画像を形成する4つの画像形成部101Y、101M、101C、101Bkが備えられている。ここでのY、M、C、Bkは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを表している。画像形成部101Y、101M、101C、101Bkはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーを用いて画像形成を行う。
【0015】
画像形成部101Y、101M、101C、101Bkには感光体であるところの感光ドラム102Y、102M、102C、102Bkが備えられている。感光ドラム102Y、102M、102C、102Bkの周りには、帯電装置103Y、103M、103C、103Bk、光走査装置104Y、104M、104C、104Bk、現像装置105Y、105M、105C、105Bkがそれぞれ設けられている。また、感光ドラム102Y、102M、102C、102Bkの周りには、ドラムクリーニング装置106Y、106M、106C、106Bkが配置されている。
【0016】
感光ドラム102Y、102M、102C、102Bkの下方には無端ベルト状の中間転写ベルト107が配置されている。中間転写ベルト107は、駆動ローラ108と従動ローラ109及び110とに張架され、画像形成中は図中の矢印B方向に回転する。また、中間転写ベルト107(中間転写体)を介して、感光ドラム102Y、102M、102C、102Bkに対向する位置には一次転写装置111Y、111M、111C、111Bkが設けられている。
【0017】
また、本実施形態の画像形成装置100は、中間転写ベルト107上のトナー像を記録媒体Sに転写するための2次転写装置112、記録媒体S上のトナー像を定着するための定着装置113を備える。
【0018】
ここでかかる構成を有する画像形成装置100の帯電工程から現像工程までの画像形成プロセスを説明する。各画像形成部における当該画像形成プロセスは同一であるため、画像形成プロセスを画像形成部101Yを例にして説明し、画像形成部101M、101C、101Bkにおける画像形成プロセスについては説明を省略する。
【0019】
まず画像形成部101Yの帯電装置により回転駆動される感光ドラム102Yを帯電する。帯電された感光ドラム102Y(像担持体上)は、光走査装置104Yから出射されるレーザ光によって露光される。これによって、回転する感光体上に静電潜像が形成される。その後、該静電潜像は現像装置105Yによってイエローのトナー像として現像される。
【0020】
以下、転写工程以降の画像形成プロセスについて画像形成部を例にして説明をする。一次転写装置111Y、111M、111C、111Bkが転写ベルトに転写バイアスを印加することによって各画像形成部の感光ドラム102Y、102M、102C、102Bk上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像はそれぞれ中間転写ベルト107に転写される。これによって中間転写ベルト107上で各色のトナー像が重ね合わされる。
【0021】
中間転写ベルト107に4色のトナー像が転写されると、中間転写ベルト107上に転写された4色トナー像は2次転写装置112にて、手差し給送カセット114または給紙カセット115から2次転写部T2に搬送されてきた記録媒体S上に再び転写(2次転写)される。そして、記録媒体S上のトナー像は定着装置113で加熱定着され、排紙部116に排紙され、記録媒体S上にフルカラー画像が得られる。
【0022】
なお、転写が終了したそれぞれの感光ドラム102Y、102M、102C、102Bkは、ドラムクリーニング装置106Y、106M、106C、106Bkによって残留トナーを除去され、その後、上記の画像形成プロセスが引き続き行われる。
【0023】
次に、
図2を用いて光走査装置104Y、104M、104C、104Bkの構成を説明する。なお、各光走査装置の構成は同一であるので、以下の説明では色を示す添え字Y、M、C、Bkを省略する。光走査装置104は光学箱200を備え、光学箱200内部には以下で説明する各種光学部材が収容されている。
【0024】
図2A(a)は光走査装置104の斜視図、
図2A(b)は光走査装置104の上面図、
図2B(c)は
図2B(b)におけるA−A’の断面図、
図2B(d)は主要な光学部品の構成を示した斜視図である。(a)に示すように、光学箱200(筐体)には後述する光学ユニット201が取り付けられている。光学箱200の内部には、レーザ光が感光ドラム上を所定の方向に走査するように光学ユニット201から出射されたレーザ光を偏向する偏向手段であるところの回転多面鏡202が備えられている。回転多面鏡202は(c)に示すモータ203によって回転駆動される。回転多面鏡202によって偏向されたレーザ光はfθレンズ204(第1のレンズ)に入射する。第1のfθレンズ204は、レーザ光が入射する入射面側に設けられた位置決め部219によって位置決めされている。第1のfθレンズ204を通過したレーザ光は、反射ミラー205、反射ミラー206(
図2B(c)、(d)参照)によって反射され、fθレンズ207に入射する。fθレンズ207を通過したレーザ光は反射ミラー208によって反射され、防塵ガラス209を通過して感光ドラム上に導かれる。回転多面鏡202によって等角速度で走査されるレーザ光がfθレンズ204とfθレンズ207により感光体上に結像し、かつ感光体上を等速度で走査するようになる。
【0025】
fθレンズ204及びfθレンズ207は、回転多面鏡202によって偏向されたレーザ光が感光体上を等速に走査する走査光に変換するための光学部材である。fθレンズ204、fθレンズ207の少なくとも一方は、入射したレーザ光を主走査方向に屈折させる屈折力(特性)を有する。本実施例では、fθレンズ204及びfθレンズ207がともに入射したレーザ光を主走査方向に屈折させる屈折力を有する。また、fθレンズ204、fθレンズ207の少なくとも一方は、樹脂製のレンズである。本実施例では、fθレンズ204、fθレンズ207は共に樹脂製のレンズである。
【0026】
本実施例の光走査装置104は光ビーム分離手段であるビームスプリッター210を有する。ビームスプリッター210は、光学ユニット201から出射され、回転多面鏡202に向かうレーザ光の光路上に配置されている。本実施例において、ビームスプリッター210は光学ユニット201と回転多面鏡202との間に配置されている。ビームスプリッター210に入射したレーザ光は透過光である第1のレーザ光(第1の光ビーム)と反射光である第2のレーザ光(第2の光ビーム)とに分離される。
【0027】
ビームスプリッター210のレーザ光が入射する面である入射面(光学ユニット201側の面)には一定の反射率(透過率)となるようコーティング(膜)が形成されている。第1のレーザ光が出射する出射面(回転多面鏡202側の面)はこの出射面によってレーザ光が内面反射が発生しても、内面反射されたレーザ光が入射面で反射された第2のレーザ光と異なる方向に導かれるように入射面に対しわずかな角度差を有している。即ち、入射面と出射面は平行ではない。
【0028】
第1のレーザ光は回転多面鏡202によって偏向され、上述の如く感光ドラムに導かれる。第2のレーザ光は、
図2A(a)に示す集光レンズ215を通過した後、後述する光学センサ(受光素子)であるフォトダイオード211(以下、PD211)に入射する。集光レンズ215は、PD211とビームスプリッター210とを結ぶ線分上に配置される。光走査装置104の小型化、及びコストを抑制するために第2のレーザ光の光路上には反射ミラーが配置されていない。PD211は、受光光量に応じた検知信号を出力し、出力された検知信号に基づいて後述する自動光量制御(Automatic Power Control:APC)が行われる。
【0029】
また、本実施例の光走査装置104は、感光ドラム上において画像データに基づくレーザ光の出射タイミングを決定するための同期信号を生成するBeam Detector212(以下、BD212とする。)を備える。
図2B(d)に示すように、回転多面鏡202によって偏向されたレーザ光(第1のレーザ光)は、fθレンズ204を通過し、反射ミラー205、反射ミラー216によって反射され、後述するBDレンズ214に入射する。そして、BDレンズ214を通過したレーザ光がBD212に入射する。
【0030】
図2B(d)に示すように、光学箱200は上下に開放面を備える形状であるため、光学箱200は、上フタ217と下フタ218が取り付けられて内部が密閉される。
【0031】
図3は、光走査装置104に取り付けられる光学ユニット200の分解斜視図である。
図3は後述するレンズ鏡筒側から見た斜視図である。
【0032】
光学ユニット201は、レーザ光(光ビーム)を出射する光源であるところの半導体レーザ302(例えば、垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting LASER))及び半導体レーザ302を駆動するための電気基板303(以下、基板303とする。)を備える。以下では、半導体レーザ302をVCSEL302として説明する。
図3(a)に示すように、VCSEL302は基板303に実装されている。
【0033】
レーザホルダ301は鏡筒部304を備え、鏡筒部304の先端にはコリメータレンズ305が取り付けられている。コリメータレンズ305は、VCSEL302から出射されるレーザ光(発散光)を平行光に変換する。コリメータレンズ305は、光走査装置104の組み立て時に特定の治具でVCSEL302から出射されるレーザ光の照射位置やピントを検出しながら、レーザホルダ301への設置位置が調整される。コリメータレンズ305の設置位置が決定されると、コリメータレンズ305と鏡筒部304との間に塗布された紫外線硬化型の接着剤に紫外線を照射することでコリメータレンズ305はレーザホルダ301に接着固定される。VCSEL302は基板303に電気的に接続されており、基板303から供給される駆動信号によってVCSEL302はレーザ光を出射する。
【0034】
次に、
図3を用いてレーザホルダ301へのVCSEL302が実装された基板303の固定方法について説明する。
図3において基板303をレーザホルダ301へ固定するための基板支持部材307は、弾性を有する材質でできている。
図3(a)に示すように基板支持部材307は、ビス309に螺合する3箇所のビス穴が形成された締結部310、311、312、ビス308を通過させる3箇所の開口313、314、315を備える。ビス309は、基板303に設けられた開口316、317、318を通過して基板支持部材307に設けられたビス穴に螺合する。また、ビス308は、基板支持部材307の開口を通過してレーザホルダ301に設けられたビス穴に螺合する。
【0035】
光学ユニットを組み立てる際に、まず、基板支持部材307をビス308でレーザホルダ301に固定する。次にレーザホルダ301に設けられた不図示の突き当て部に基板303に実装されたVCSEL302を突き当てる。基板支持部材307と基板303との間にはすき間が存在する。次に、ビス309を締結することにより基板支持部材307がレーザホルダ301側を凸とする弓形に弾性変形させる。弾性変形した状態の基板支持部材307の復元力によって基板303が突き当て部に押し付けられて、VCSEL302がレーザホルダ301に固定される。
【0036】
VCSEL302のチップ面上には複数の発光素子が
図4(a)に示すようにアレイ状に配置されている。
図4(a)のように各発光素子が配列されているため、各発光素子から出射されたレーザ光L1からLnは、主走査方向において感光ドラム102上の異なる位置に結像する。また、各発光素子から出射されたレーザ光L1からLnは、副走査方向(回転方向)において異なる位置に結像する。なお、複数の発光素子の配置は2次元配置であっても良い。
【0037】
図4(a)中のD1は、X軸方向において最も離れた発光素子1と発光素子Nとの間隔(距離)である。複数の発光素子のうち発光素子NはX軸方向において発光素子1から最も離れているため、
図4(b)に示すように感光ドラム102上の主走査方向において複数のレーザ光のうちレーザ光Lnの結像位置Snはレーザ光L1の結像位置S1から最も離れた位置となる。本実施例では、レーザ光L1がレーザ光Lnよりも先行して感光ドラム102を走査するように発光素子1及び発光素子Nが光源201に配置されている。このように、発光素子1及び発光素子Nを配置することによって、後述するBD212にはレーザ光L1がレーザ光Lnよりも先に入射する。
【0038】
図4(a)中のD2は、Y軸方向において最も離れた発光素子1と発光素子Nとの間隔(距離)である。Y軸方向において最も離れているため、
図4(b)に示すように感光ドラム102上の副走査方向において複数のレーザ光のうちレーザ光Lnの結像位置Snはレーザ光L1の結像位置S1から最も離れた位置となる。
【0039】
Y軸方向の発光素子間隔Py=D2/N−1は、画像形成装置の解像度に対応する間隔(例えば、1200dpiの場合には約21μm)であり、感光体上における副走査方向の隣接するレーザ光の結像位置間隔が所定の解像度に対応する間隔になるように、組立工程において光源201を回転調整することで設定される値である。また、X軸方向の発光素子間隔Px=D1/N−1は、Y軸方向の発光素子間隔をPyに調整することよって一義的に決まる値である。BD212によって同期信号が生成されてから各発光素子からレーザ光を出射させるタイミングは、所定の治具を用いて組立工程において発光素子毎に設定され、初期値として後述するメモリに記憶される。なお、この初期値はPxに対応した値である。
【0040】
図4(c)は、BD212の概略図である。BD212は光電変換素子が配列された受光面212aを備える。受光面212aにレーザ光が入射することで同期信号が生成される。本実施例のBD212は、レーザ光L1及びレーザ光LnをBD212に入射させることによってそれぞれのレーザ光に対応する複数のBD信号を生成する。
受光面212aの主走査方向の幅はD3に、副走査方向に対応する方向の幅はD4に設定されている。
図4(c)に示すように、発光素子1から出射されたレーザ光L1及び発光素子Nから出射されたレーザ光LnはBD212の受光面212aを走査する。受光面212aの副走査方向に対応する方向の幅D4は、D4>D2×α(α:レンズを通過したレーザ光L1とレーザ光Lnの間隔の副走査方向の変動率)となるように設定される。また、発光素子1と発光素子Nとを同時に点灯させた場合であっても、レーザ光L1及びレーザ光Lnが同時に受光面212aに入射しないように、受光面212aの主走査方向の幅D3は、D3<D1×β(β:レンズを通過したレーザ光L1とレーザ光Lnの間隔の主走査方向の変動率)に設定されている。
【0041】
図6は、本実施例の画像形成装置の制御ブロック図である。本実施例の画像形成装置は、CPU601、カウンタ602、レーザドライバ603を備える。また、本実施例の画像形成装置は、クロック信号生成部(CLK信号生成部)604、画像処理部605、メモリ606、ポリゴンミラー204を回転駆動させるモータ203を備える。CPU601は、メモリ606に記憶された制御プログラムに従って画像形成装置を制御する。クロック信号生成部604はBD212からの出力よりも高周波であって、所定周波数のクロック信号(CLK信号)を生成し、CPU601及びレーザドライバ603にクロック信号を出力する。CPU601はクロック信号に同期してレーザドライバ603、モータ203に制御信号を送信する。
【0042】
モータ203には不図示の速度センサが備えられており、速度センサは回転速度に比例した周波数信号を発生するFG方式(Frequency Generator方式)を採用している。モータ203からCPU601にはポリゴンミラー204の回転速度に応じた周波数のFG信号が出力される。CPU601の内部には計数手段であるところのカウンタ602が備えられており、カウンタ602はCPU601に入力されるクロック信号をカウントする。CPU601は、FG信号の発生周期をカウンタ602のカウント値に基づいて測定し、FG信号の発生周期が所定の周期であればポリゴンミラー204の回転速度が所定の速度に達していると判定する。
【0043】
CPU601にはBD212から出力されるBD信号が入力される。CPU601は、入力されるBD信号に基づいて発光素子1〜発光素子Nからのレーザ光の出射タイミングを制御するための制御信号をレーザドライバ603に送信する。レーザドライバ603には、画像処理部605から出力された画像データが入力される。レーザドライバ603は、CPU601から送信される制御信号に基づくタイミングで、画像データに基づく駆動電流を各発光素子に供給する。
【0044】
図9(b)に示すように、各レーザ光L1〜Lnの結像位置S1〜Snは主走査方向において異なる。従来の画像形成装置では、ある1つの発光素子からレーザ光を出射させて1つのBD信号を生成していた。そして、生成されたBD信号を基準として複数の発光素子毎に設定された光ビームの出射タイミング(固定の設定値)に基づいて各発光素子からレーザ光を出射させることで主走査方向の静電潜像(画像)の書き出し位置を一致させていた。
【0045】
画像形成中、結像位置S1〜Snの相対位置関係が常に一定であれば、各発光素子からレーザ光を出射するタイミングを各発光素子毎に設定された固定の設定値に基づいて制御しても、画像の書き出し位置を一致させることが可能である。しかしながら、レーザ光が出射されると光源の温度が上昇し、光源の温度上昇に伴い、各発光素子から出射されるレーザ光の波長が変動する。また、ポリゴンミラー204を回転させることによってモータ203が昇温し、その熱の影響によって走査レンズの光学特性が変動する。このようなレーザ光の波長変動や走査レンズの光学特性の変動に伴い、
図9(b)及び
図9(c)に示すように、各発光素子から出射されたレーザ光の光路が変動し、結像位置S1〜Snの相対位置関係が変化する。つまり、感光ドラム上における露光位置配列が変動する。すると、各レーザ光によって形成される静電潜像の主走査方向の書き出し位置が一致しないという課題が生じる。
【0046】
そこで、本実施例の画像形成装置は、発光素子1から出射されるレーザ光L1及び発光素子Nから出射されるレーザ光Lnによって2つのBD信号を生成する。CPU601は、2つのBD信号の生成タイミング差(検出タイミング差)に基づいて複数の発光素子の相対的なレーザ光の出射タイミングを制御する。以下において詳しく説明する。
【0047】
図7は、発光素子1〜発光素子Nのレーザ光の出射タイミングとBD212のBD信号出力タイミングを示すタイミングチャートである。(1)はCLK信号を示しており、(2)はBD212からのBD信号の出力タイミングを示している。また、(3)〜(6)は発光素子1、発光素子2、発光素子3、発光素子Nのレーザ光の出射タイミングを示している。
【0048】
レーザ光の1走査周期中において、まず、CPU601は発光素子1及び発光素子Nからレーザ光が出射されるようにレーザドライバ603を制御する。その結果、
図7に示すように、BD212は、レーザ光L1の検出に応じてBD信号701を出力し、レーザ光Lnの検出に応じてBD信号702を出力する。CPU601は、BD信号701が入力されたことに応じてCLK信号のカウントを開始し、BD信号702が入力されたことに応じてカウント値Caを取得する。カウント値Caは、
図7中のBD信号701とBD信号702の生成タイミング差DT1を示す検出データである。
【0049】
メモリ606には基準カウント値データCrefとCrefに対応するカウント値C1からCnが記憶されている。基準カウント値データCrefはある任意の状態において生成される複数のBD信号の生成タイミング差Trefに相当する参照データ(所定のデータ)である。ここでは、上記初期状態において生成される複数のBD信号の生成タイミング差であるとする。カウント値C1からCnそれぞれは、生成される複数のBD信号の生成タイミング差がTrefの場合に主走査方向における各発光素子の書き出し位置を一致させるためのカウント値(書き出しタイミングデータ)である。カウント値C1からカウント値Cnはそれぞれ、
図7中のT1からTnに対応する。
【0050】
CPU601は、BD信号701とBD信号702の生成タイミング差DT1に相当するカウント値CaとCrefとを比較する。比較結果がCa=Crefの場合、CPU601は、BD信号701が生成されてからのCLK信号のカウント値がC1(T1経過後)になったことに応じて発光素子1を点灯させる。つまり、
図7に示すように、BD信号701が生成されてからのCLK信号のカウント値がC1(T1経過後)になったことに応じて発光素子1による静電潜像形成期間が開始される。また、BD信号701が生成されてからのCLK信号のカウント値がCn(Tn経過後)になったことに応じて発光素子Nを点灯させる。つまり、
図7に示すようにBD信号701が生成されてからのCLK信号のカウント値がCn(Tn経過後)になったことに応じて発光素子Nによる静電潜像形成期間が開始される。これにより、主走査方向における発光素子1によって形成される静電潜像(画像)と発光素子Nによって形成される静電潜像(画像)との書き出し位置を一致させることができる。
【0051】
本実施例では、レーザ光L1によって生成されるBD信号を基準に各発光素子のレーザ光出射タイミングを制御しているが、レーザ光Lnによって生成されるBD信号を基準に各発光素子のレーザ光の出射タイミングを制御しても良い。また、レーザ光L1及びレーザ光Lnによって生成される複数のBD信号に基づいて決定される任意のタイミングを基準に各発光素子のレーザ光の出射タイミングを制御しても良い。
【0052】
ここで、Crefの決定方法について説明する。まず、工場における調整時に、光源の温度が基準温度(例えば、25℃)の状態において、ポリゴンミラー204を回転駆動してレーザ光L1及びレーザ光LnをBD212に入射させる。そして、レーザ光L1によって生成されるBD信号とレーザ光Lnによって生成されるBD信号の検出タイミング差DTrefを測定器に入力する。測定器には、クロック信号生成部604からCLK信号が入力されており、検出タイミング差DTrefをカウント値に変換する。測定器は、このカウント値をCrefに決定してメモリ606に記憶させる。
【0053】
また、調整時において感光ドラム面上の潜像書き出し位置に相当する位置には受光装置が配置されており、受光装置はポリゴンミラー204によって偏向されたレーザ光L1及びLnを受光する。受光装置は、レーザ光L1の受光タイミング及びレーザ光Lnの受光タイミングを示す受光信号を測定器に送信する。測定器は、レーザ光L1によって生成されたBD信号と受光装置がレーザ光L1を受光したことによって生成する受光信号との生成タイミング差をカウント値に変換する。このカウント値がC1となり、測定器はC1をCrefに対応させてメモリに記憶させる。一方、測定器は、レーザ光L1によって生成されたBD信号と受光装置がレーザ光Lnを受光したことによって生成する受光信号とのタイミング差をカウント値に変換する。このカウント値がCnとなり、測定器はCnをCrefに対応させてメモリに記憶される。測定器は、調整時にこれらの処理を各発光素子に対して行いC1〜Cnをメモリに記憶させる。
【0054】
なお、メモリには、C1とCnを記憶させておき、
図4(a)のX軸方向において発光素子1と発光素子Nとの間に位置する発光素子M(発光素子2から発光素子N−1)の書き出しタイミングデータを記憶しておかなくても良い。この場合、CPU601は、発光素子Mの書き出しタイミングデータを、C1、Cn、及び発光素子1と発光素子Nに対する発光素子MのX軸方向の配置位置に基づいて演算する。即ち、CPU601は、以下の数式1に基づいて発光素子1と発光素子Nとの間に位置する発光素子Mの書き出しタイミングデータCm(カウント値)を演算する。
Cm=(Cn−C1)×(m−1)/(n−1)+C1
=C1×(n−m)/(n−1)+Cn×(m−1)/(n−1)・・・式1
例えば、光源201が4個の発光素子1から発光素子4を備える場合、CPU601は、発光素子2及び発光素子3の書き出しタイミングデータC2およびC3を次の式に基づいて演算する。
C2=C1+(C4−C1)×1/3
=C1×2/3+C4×1/3・・・式2
C3=C1+(C4−C1)×2/3
=C1×1/3+C4×2/3・・・式3
次に、BD信号703とBD信号704の生成タイミング差がDT2である場合について説明する。
図5に示すように、BD212は、レーザ光L1の検出に応じてBD信号703を出力し、レーザ光Lnの検出に応じてBD信号704を出力する。CPU601は、
図7に示すBD信号703とBD信号704との生成タイミング差DT’1をカウント値C’aとして検出する。CPU601は、カウント値C’1とCrefとを比較する。ここでは、C’a=Crefの場合を例に説明する。CPU601は、C’aとCrefとの差分に基づいて書き出しタイミングデータCnを補正してC’nを算出する。
C’n=Cn×K(Cref−C’1) (Kは1を含む任意の係数)・・・式4
CPU601は、BD信号703が生成されてからのカウンタ602のカウント値が補正した書き出しタイミングデータC’nになったことに応じて発光素子Nを点灯させる。BD信号の生成タイミング差が変動しても、主走査方向における発光素子1によって形成される画像と発光素子Nによって形成される画像との書き出し位置を一致させることができる。
【0055】
ここで、係数Kは、BD上での時間間隔の変化量(Cref−C’1)に対して乗算する係数であり、光走査装置に備えられるfθレンズ204、fθレンズ207、BDレンズ214の光学特性によって決定する。
【0056】
ここで、
図5を用いてBDレンズ214について説明する。
図5(a)中のX軸方向は、主走査方向に対応し、Y軸方向は副走査方向に対応する。つまり、BDレンズ214に入射するレンズは、BDレンズ214の入射面(後述するレンズ502の入射面)を走査する。また、
図5(a)中の一点鎖線の矢印は、BDレンズ214の光軸及び入射するレーザ光の進行方向を示している。
図5(b)は、BDレンズ214の断面図である。
【0057】
BDレンズ214は、ガラス製のレンズ502(第2のレンズ)と樹脂製のレンズ501(第3のレンズ)によって構成されている。レンズ502は、レンズ502に入射したレーザ光をX軸方向に屈折させる屈折力を有する。また、レンズ501は、レンズ501に入射したレーザ光をY軸方向に屈折させる屈折力を有する。レンズ501は、レンズ501に入射したレーザ光をX軸方向に屈折させる屈折力を有さないレンズである。BDレンズ214を通過したレーザ光はBD212に入射する。
【0058】
レンズ501は、レンズ502を保持する保持部503と光ビームを透過させる透過部504を備える。
図5(a)に示すように、レンズ502は円形状であり、保持部503はレンズ502の外形部506より微小に大きい円形状である。
図5(b)に示すように、レンズ502が保持部503に嵌合することによって、レンズ501はレンズ502を保持する。レンズ501は、保持部503及び透過部504を支持する、保持部503及び透過部504に一体的に成型された支持台505を備え、支持台505が光学箱200の底面に設置される。
【0059】
ガラス製のレンズは樹脂製のレンズに比べて熱によって特性が変動し難い。そのため、回転多面鏡202を駆動するモータ203によって光学箱内部が昇温しても、レンズ502のX軸方向の屈折力は樹脂製のレンズに比べて変動し難い。本実施例の画像形成装置は、複数の発光素子を点灯させて複数のBD信号を生成して、複数のBD信号の生成タイミング差に基づいて各発光素子のレーザ光の出射タイミングを制御するである。この制御の精度を確保するためには、BDレンズ214を通過したレーザ光のX軸方向の屈折方向がBDレンズ214乃至光学箱200内部の温度の影響を受け難い構成を採用することが望ましい。そこで、BDレンズ214を構成するレンズ502にガラス製のレンズを採用している。
【0060】
一方、コストを抑えるために、fθレンズ204、fθレンズ207に樹脂製のレンズを採用している。そのため、fθレンズ204、fθレンズ207の昇温によって屈折力が変化し易く、
図9に示すような課題が生じてしまう。
【0061】
次に、
図8を用いてCPU601が実行する制御フローを説明する。画像形成装置に画像データが入力されたことに応じて本制御が開始される。まず、CPU601は、画像データが入力されたことに応じてモータ407を駆動してポリゴンミラー204を回転させる(ステップS801)。続くステップS2において、CPU601は、ポリゴンミラー204の回転速度が所定の回転速度に達したか否かを判定する(ステップS802)。ステップS802において、ポリゴンミラー204の回転速度が所定の回転速度に達していないと判定された場合、CPU601は、ポリゴンミラー204の回転速度を加速させ(ステップS803)、制御をステップS802に戻す。
【0062】
ステップS802において、ポリゴンミラー204の回転速度が所定の回転速度に達していると判定された場合、CPU601は、発光素子1を点灯させる(ステップS804)。続いて、CPU601は、発光素子1から出射されたレーザ光L1によってBD信号が生成されたか否かを判定する(ステップS805)。ステップS805において、レーザ光L1によってBD信号が生成されていないと判定された場合は、BD信号の生成が確認されるまでステップS805に制御を戻す。一方、ステップS805において、レーザ光L1によってBD信号が生成されたと判定された場合は、CPU601は、BD信号が生成されたことに応じてカウンタにCLK信号のカウントを開始する(ステップS806)。
【0063】
ステップS805の後、CPU601は、発光素子1を消灯させ(ステップS807)、発光素子Nを点灯させる(ステップS808)。続いて、CPU601は、発光素子Nから出射されたレーザ光LnによってBD信号が生成されたか否かを判定する(ステップS809)。ステップS809において、レーザ光LnによってBD信号が生成されていないと判定された場合は、BD信号の生成が確認されるまでステップS809に制御を戻す。一方、ステップS809において、レーザ光LnによってBD信号が生成されたと判定された場合、CPU601は、BD信号が生成されたことに応じてカウンタ602によるCLK信号のカウント値をサンプルし(ステップS810)、続くステップS811において発光素子Nを消灯させる。
【0064】
ステップS811後、CPU601は、サンプルされたカウント値CとCrefとを比較してC=Crefであるか否かを判定し(ステップS812)、C=Crefと判定された場合、CPU601は、レーザ光L1によって生成されたBD信号を基準とする各発光素子に対応するレーザ光の出射タイミングをC1からCnに設定する(ステップS813)。一方、ステップS812においてC=Cref(C≠Cref)と判定された場合、CPU601は、Ccor=C−Crefを演算し(ステップS814)、Ccorに基づいてレーザ光L1によって生成されたBD信号を基準とする各発光素子に対応するレーザ光の出射タイミングをC’1からC’nに設定する(ステップS815)。
【0065】
ステップS813またはステップS815の後、CPU601は、各ステップにおいて設定されたレーザ光の出射タイミングに基づいて画像データに基づくレーザ光を光源から出射させて感光ドラムを露光する(ステップS816)。ステップS816の後、CPU601は、画像形成が終了したか否かを判定し(ステップS817)、画像形成が終了していないと判定された場合、制御をステップS814に戻す。一方、ステップS817において、CPU601は、画像形成が終了したと判定された場合、本制御を終了させる。
【0066】
以上説明したように、本実施例の画像形成装置は、BDレンズ214の少なくとも一部に主走査方向に対応する方向に屈折力を有するガラス製のレンズを用いた。そのため、本実施例の画像形成装置は、主走査方向に対応する方向に屈折力を有する樹脂製のBDレンズを用いた場合に比べて、BD212に通過したレーザ光の光路が温度によって変動し難い。