特許第6053363号(P6053363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053363
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】触媒構造
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20161219BHJP
   B01D 53/88 20060101ALI20161219BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20161219BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20161219BHJP
   B01J 23/28 20060101ALI20161219BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B01D53/86
   B01D53/86 222
   B01D53/88
   B01D53/94
   B01D53/94 222
   B01J37/02 101Z
   B01J23/28 A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-159827(P2012-159827)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-18738(P2014-18738A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100120053
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰良
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒川 賢一
(72)【発明者】
【氏名】今田 尚美
【審査官】 福永 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−010599(JP,A)
【文献】 特公昭60−027807(JP,B1)
【文献】 実開昭49−057552(JP,U)
【文献】 特開2005−296819(JP,A)
【文献】 特開昭54−079188(JP,A)
【文献】 特開2006−26606(JP,A)
【文献】 実公昭56−26819(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94
B01J 21/00−38/74
F01N 3/24
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスに対する触媒活性を有する成分を表面に担持した平板部と、前記排ガスが流れる方向に延在され、前記排ガスの流れに直交する方向に等間隔で前記平板部に配置された複数のスペーサとを有してなる触媒エレメントを複数枚備え、
複数の前記触媒エレメントは、前記スペーサを介して積層され、前記触媒エレメントの積層方向に隣り合う2つの前記平板部と、隣り合う2つの前記スペーサとにより形成されるガス流路に設けられ、前記排ガスを攪拌する攪拌部を有して形成され、
前記攪拌部は、前記各ガス流路の一方の前記平板部に形成された切り込みを折り曲げて、前記ガス流れ方向に設定間隔を空けて形成された複数のリード部と、前記リード部の切り込みにより形成された複数の開口部とを有し、
前記各リード部は、前記排ガスの流れに直交する方向に幅を有し、前記ガス流れ方向に対して略同一の方向に折り曲げて形成され、
隣り合う前記触媒エレメントは、前記リード部が前記排ガスの流れ方向に交互に存在するように配置されていることを特徴とする触媒構造。
【請求項2】
前記リード部は、前記隣り合う2つの前記平板部の一方から他方の前記平板部に接触する位置まで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の触媒構造。
【請求項3】
積層方向に隣り合う前記触媒エレメントは、一方の前記触媒エレメントに形成された前記リード部が、他方の前記触媒エレメントの前記ガス流れ方向に隣り合う2つの前記リード部の間の平坦部に対応する位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒構造。
【請求項4】
前記リード部の長さは、隣り合う2つの前記触媒エレメントの間隔の5倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の触媒構造。
【請求項5】
前記リード部の前記所定の角度は、7°以上30°以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の触媒構造。
【請求項6】
前記撹拌部は、前記排ガスが流れる方向に複数存在し、それぞれの間隔が30mm以上100mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の触媒構造。
【請求項7】
前記リード部の前記幅は、前記ガス流路の幅の1/5以上1/2以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の触媒構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒構造に関し、特に、燃焼排ガスを浄化する触媒構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、各種工場、及び自動車などから排出される排煙中のNOxは、光化学スモッグや酸性雨の原因物質である。NOxを効果的に除去するために、アンモニア(NH)などを還元剤とした選択的接触還元による排煙脱硝法が、火力発電所など幅広く用いられている。
【0003】
触媒には、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、又はタングステン(W)などを活性成分とした酸化チタン(TiO)系触媒が使用されている。特に、活性成分の1つとしてバナジウムを含む触媒は、活性が高いだけでなく、排ガス中に含まれている不純物による劣化が少なく、より低温で使用できるので、現在の脱硝触媒の主流になっている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、触媒は、ハニカム状や板状などの構造に成形され、触媒の各種製造法が提案されている。例えば、金属薄板をメタルラスに加工した網状物やセラミック繊維製織布や不織布を基板に用い、この基板に触媒成分を塗布・圧着して得た板状触媒を波形に加工して積層する触媒構造体が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3)。これらの発明は、通風損失が小さく、煤塵や石炭の燃焼灰で閉塞されにくいなどの優れた特徴があり、火力発電用ボイラの排ガス脱硝装置に多数用いられている。
【0005】
また、触媒の平坦部に堰状突起を設け、ガス触媒表面に形成されるガス流境界層の発生を防止した触媒構造が提案されている(例えば、特許文献4)。
【0006】
また、金属、セラミック、又はガラス製のガス分散体を、板状触媒と交互に積層する触媒構造が提案されている(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭50−128681号公報
【特許文献2】特開昭54−79188号公報
【特許文献3】特開昭59−73053号公報
【特許文献4】特開平9−10599号公報
【特許文献5】国際公開WO00−13775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の触媒構造は、触媒の平坦部に堰状突起を設け、これによりガス流れを乱して活性向上に寄与する。しかしながら、充分な乱し効果を得るために、堰状突起を多数設けたり、高い堰状突起を設けたりする必要があり、圧損の上昇を招きやすく改善の余地があった。
【0009】
また、従来の触媒構造において、金属、セラミック、又はガラス製のガス分散体を板状触媒と交互に積層する方法は、積層における単位板状触媒(触媒エレメント)の中心部(隣設される平板部の中心部)のガス流れを効率よく乱すことはできるが、ガス分散体(棒状体など)を触媒エレメント内に所定の間隔で設置する工夫が必要となる。
【0010】
本発明の目的は、簡易な構造により、圧損の上昇を防止しつつ、隣設される触媒エレメント間に接触する構造により、ガス流れを効率よく攪拌する触媒構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の触媒構造は、排ガスに対する触媒活性を有する成分を表面に担持した平板部と、前記排ガスが流れる方向に延在され、前記排ガスの流れに直交する方向に等間隔で前記平板部に配置された複数のスペーサとを有してなる触媒エレメントを複数枚備え、複数の前記触媒エレメントは、前記スペーサを介して積層され、前記触媒エレメントの積層方向に隣り合う2つの前記平板部と、隣り合う2つの前記スペーサとにより形成されるガス流路に設けられ、前記排ガスを攪拌する攪拌部を有して形成され、前記攪拌部は、前記各ガス流路の一方の前記平板部に形成された切り込みを折り曲げて、前記ガス流れ方向に設定間隔を空けて形成された複数のリード部と、前記リード部の切り込みにより形成された複数の開口部とを有し、前記各リード部は、前記排ガスの流れに直交する方向に幅を有し、前記ガス流れ方向に対して略同一の方向に折り曲げて形成され、隣り合う前記触媒エレメントは、前記リード部が前記排ガスの流れ方向に交互に存在するように配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、簡易な構造により、圧損の上昇を防止しつつ、隣設される触媒エレメント間に接触する構造により、ガス流れを効率よく攪拌する触媒構造を提供することができる。すなわち、リード部の幅方向の両側を抜けて裏側に回る渦流により撹拌されたガスが,リード部を切り起こした後の開口部を通って上下の他のガス流路に流れやすくなり、ガス流路のガス流を激しく攪拌することができ、触媒との接触効率を飛躍的高めることができる。また、リード部で攪拌されたガスの乱れによる圧力差が、開口部を通って他の流路にガスが流れることを促進し、触媒の反応効率をさらに高めることができる。
【0026】
本発明の触媒構造では、前記撹拌部は、前記排ガスが流れる方向に複数存在し、それぞれの間隔が30mm以上100mm以下である。
【0027】
この構成によれば、圧損の上昇を防止しつつ、ガス流れを効率よく攪拌する触媒構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、対向する第1の平板部と第2の平板部との間に接触するように設けられる撹拌部により、圧損の上昇を防止しつつ、隣設される触媒エレメント間に接触する構造により、ガス流れを効率よく攪拌することができる触媒構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態の触媒構造の構成の一例を示した図である。
図2】ガス流方向に対する攪拌部の角度を5°以上30°以下とする触媒構造を示した図である。
図3】板状触媒の平板部の一部に切り込み加工を施して、リード状に切り起こした触媒構造を示した図である。
図4】ガス流方向に対するリード部の角度を5°以上30°以下とする触媒構造を示した図である。
図5】攪拌部(リード部)の折り曲げ方向が交互に反対方向である触媒構造を示した図である。
図6】撹拌部(リード部)の折り曲げ方向が交互に反対方向である触媒エレメントを積層した触媒構造を示した図である。
図7】攪拌部(リード部)の折り曲げ方向が略同一方向である触媒構造を示した図である。
図8】実施の形態の触媒構造における排ガスの流れを説明する図である。
図9】比較例の触媒構造における排ガスの流れを説明する図である。
図10】比較例の触媒構造における排ガスの流れを説明する図である。
図11】実施例及び比較例に用いられた触媒エレメントを示した図である。
図12】触媒エレメントを積層体にした積層触媒構造を示した図である。
図13】比較例2の触媒エレメントを示した図である。
図14】実施例1の触媒エレメントを示した図である。
図15】積層触媒構造の脱硝率と圧力損失の測定条件を示した表である。
図16】積層触媒構造の脱硝率と圧力損失の測定結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態の触媒構造について、図面を用いて説明する。本実施の形態の触媒構造の構成の一例を図1に示す。本実施の形態では、燃焼排ガスに含まれるNOxを除去するために用いられる脱硝触媒構造を説明する。図1に示すように、平板部(触媒エレメント)1,10,11が積層される。それぞれの平板部(触媒エレメント)1,10,11は、スペーサ2により、一定の間隔に保たれ、平板部(触媒エレメント)1,10,11の間を、排ガスが流れる。
【0031】
図1(a)に示すように、触媒構造100は、第1の平板部1、第2の平板部10、及び攪拌部3を備える。第1の平板部1及び第2の平板部10は、排ガスに対する触媒活性を有する成分を表面に担持し、相互に対向する。攪拌部3は、排ガスが流れる方向(ガス流方向)4に対して所定の角度(例えば、0°以上90°以下)で、第1の平板部1から第2の平板部10に接触するように設けられる。ここで、攪拌部3は、平板部1,10のスペーサ2を補強する機能を果たす。
【0032】
触媒構造100は、第3の平板部11を備える。第3の平板部11は、第1の平板部1の反対側で、第2の平板部10に対向する。このように、B−B’方向に、平板部(触媒エレメント)が積層される。平板部1,10,11が、それぞれ触媒エレメントとなる。
【0033】
図1(b)は、触媒エレメント間の中心部であるA−A’方向の断面図における排ガスの流れを模式的に示した図である。図1(b)に示すように、触媒エレメント間のガス流路の中心部において、ガスを乱す(攪拌する)ことにより、触媒活性を向上させることができる。つまり、攪拌部3が、ガス流路の中心部を通過するガスを撹拌する。
【0034】
また、図2に示すように、ガス流方向4に対する攪拌部3の角度を変えて、触媒活性効果について実験したところ、角度を5°以上30°以下にして攪拌部3を設けると、排ガスと攪拌体の接触比率を増大させることができ、攪拌部3を迂回して流れるガスによる抵抗を大幅に低減することができた。
【0035】
攪拌部3は、図1及び図2に示すように、スペーサ2を補強する部材として、第1の平板部1から第2の平板部10に接触するように設けられてもよいし、排ガスに対する触媒活性を有する成分を含浸した無機繊維により構成されていてもよい。また、撹拌部3は、第2の平板部10に設けられた切り込みを折り曲げて形成されるリード部を含んでもよい。
【0036】
例えば、攪拌部3は、バルク状の無機繊維に触媒成分を浸み込ませた突起物を触媒エレメント間に接触するように設け、触媒エレメントを積層してもよい。また、図3(a)に示すように、板状触媒の平板部1,10,11の一部に切り込み加工を施して、リード状に切り起こし、リード部の先端が積層されている他の触媒エレメント面に接するように積層してもよい。リード部を設けて触媒エレメントを積層する場合、リード部の加工が容易であり、リード部がスペーサ2を補強する部材として機能するので、触媒構造の生産性や強度が高くなる。図3(b)に示すように、触媒エレメント間のガス流路の中心部において、ガスを乱す(攪拌する)ことにより、触媒活性を向上させることができる。つまり、攪拌部3が、ガス流路の中心部を通過するガスを撹拌する。
【0037】
図4は、攪拌部3がリード部であることを示した図である。撹拌部3(リード部)は、第2の平板部10に設けられた切り込みを折り曲げて形成され、ガス流方向4に対して所定の角度θで、第1の平板部1から第2の平板部10に接触するように設けられる。
【0038】
図5は、攪拌部(リード部)3の折り曲げ方向が交互に反対方向である触媒構造を示した図である。図5に示すように、第1の平板部1と第2の平板部10が、排ガスに対する触媒活性を有する成分を表面に担持し、相互に対向する。第3の平板部11が、第1の平板部1の反対側で、第2の平板部10に対向する。
【0039】
撹拌部(リード部)3は、第2の平板部10に設けられた切り込みを折り曲げて形成される。そして、第1の平板部1側に折り曲げられたリード部31と、第3の平板部11側に折り曲げられたリード部32とが、排ガスが流れる方向4に交互に存在する。また、図6のように、撹拌部(リード部)3の折り曲げ方向が交互に反対方向である触媒エレメント10,12を積層してもよい。この場合、図5及び図6に示すように、第1の平板部1及び第3の平板部11には、攪拌部(リード部)3が存在しないようにすることもできる。
【0040】
図7は、攪拌部(リード部)3の折り曲げ方向が略同一方向である触媒構造を示した図である。図7に示すように、第1の平板部1と第2の平板部10が、排ガスに対する触媒活性を有する成分を表面に担持し、相互に対向する。第3の平板部11が、第1の平板部1の反対側で、第2の平板部10に対向する。
【0041】
撹拌部(リード部)3は、第2の平板部10に設けられた切り込みを折り曲げて形成される。そして、第1の平板部1に設けられたリード部33と、第2の平板部10に設けられたリード部34とは、略同一の方向に折り曲げられ、排ガスが流れる方向4に交互に存在する。また、撹拌部(リード部)3が、第3の平板部11に設けられた切り込みを折り曲げて形成され、第2の平板部10に設けられたリード部34と、第3の平板部11に設けられたリード部35とが、略同一の方向に折り曲げられ、排ガスが流れる方向4に交互に存在してもよい。
【0042】
次に、図8を用いて、本実施の形態の触媒構造における排ガスの流れを説明する。また、図9及び図10を用いて、比較例の触媒構造における排ガスの流れを説明する。
【0043】
図8に示すように、攪拌部(リード部)3は、第1の平板部1と第2の平板部10とに接するように形成されている。その結果、流路(ガス流路)の触媒面付近の層流41を乱すだけでなく、流路の中心部のガス流6をも激しく攪拌することができ、触媒との接触効率を飛躍的高めることができる。
【0044】
また、攪拌部(リード部)3を切り起こした部分に開口部30が形成される。攪拌部(リード部)3で攪拌されたガスの乱れによる圧力差が、開口部30を通って他の流路にガスが流れることを促進し、触媒の反応効率をさらに高めることができる。特に、攪拌部(リード部)3が、第1の平板部1から第2の平板部10に接触するように設けられると、乱れによる圧力差が大きくなり、開口部30を通って他の流路にガスが流れることを促進することができる。
【0045】
この場合、図5又は図6に示すように、攪拌部(リード部)3を交互に反対方向に折り曲げたり、図7に示すように、第1の平板部1に設けられたリード部33と、第2の平板部10に設けられたリード部34とを、略同一の方向に折り曲げて、排ガスが流れる方向4に交互に存在させたりすることにより、開口部30を通って他の流路にガスが流れることを効率的に促進することができ、触媒活性効果(脱硝率)を向上させることができる。
【0046】
一方、図9及び図10に示すように、比較例では、触媒の平坦部に堰状突起40を設け、堰状突起40が、ガス触媒表面に形成されるガス流境界層の発生を防止する。しかしながら、堰状突起40が設けられた触媒面付近の層流41を乱すだけであり、流路の中心部のガス流6や突起部が存在しない触媒面の層流50を充分攪拌することができない。比較例の堰状突起40が、触媒エレメントの間隔に比べて、充分小さい場合は、ガス拡散抵抗の増大を防ぐ機能を果たす。しかしながら、流路の中心部のガス流6を攪拌するために、比較例の堰状突起40を大きくすると、圧損の増大を招く。
【0047】
次に、具体的な実施例と比較例を用いて、脱硝率(%)と圧損(mmHO/m)について実験を行った結果について説明する。なお、1Pa=1.01972×10−1mmHO/mである。
【0048】
(比較例1)
酸化チタン粉末(比表面積:300mm/g、SO含有量:3.4wt%)13.5kgに、パラモリブデン酸アンモン((NH・Mo24・4HO)1.7kg、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)1.3kg、蓚酸1.7kgを添加し、水を加えながらニーダで1時間混練して水分約34wt%のペーストにした。このペーストに、カオリン系セラミック繊維2.3kgを加えて、さらに混練した。このペーストを、SUS430製メタルラス基板(幅490mm、厚さ0.15mm)のラス目間及び表面に、ローラプレスを用いて塗布して平板とし、厚さ約0.7mmの板状の触媒エレメント(平板部)を得た。この触媒エレメントに、プレス機を用いて、図11に示すように、波型のスペーサ2を形成した後、長さ600mm、幅150mmに切断し、スペーサ2を含む触媒エレメントを得た。そして、図12に示すように、触媒エレメント(図11)を積層体にして、金属製の外枠5の中に入れた後、積層体の上から加圧しながら蓋をし、積層触媒構造(150mm角(高さ150mm−幅150mm)、長さ600mm)を得た。積層触媒構造を24時間風乾した後、空気を流しながら500℃で2時間焼成したものを比較例1とした。
【0049】
(比較例2)
図13に示すように、タガネを用いて、上記の触媒エレメント(図11)に対し、長さ方向に約50mm間隔で打ち起こし加工を施し、高さ約1.5mm−幅約25mmの堰状突起40を含む触媒エレメントを得た。そして、図12に示すように、触媒エレメント(図13)を積層した積層触媒構造を、比較例2とした。
【0050】
(実施例1)
図14に示すように、上記の触媒エレメント(図11)に、排ガスに対する触媒活性を有する成分を含浸した無機繊維(撹拌部3)を設けたものを実施例1とした。酸化チタン粉末(比表面積:300mm/g、SO含有量:3.4wt%)13.5kgに、パラモリブデン酸アンモン((NH・Mo24・4HO)1.7kg、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)1.3kg、蓚酸1.7kgを添加し、水を加えながらニーダで1時間混練した後、押し出し造粒機で3φの柱状に押し出したものを、流動層乾燥機で乾燥させて、500℃で2時間焼成し、さらにハンマーミルで微粉砕した触媒粉末を得た。この触媒粉末4kgに水6kgを加えて触媒スラリを調製した。この触媒スラリをカオリン系無機繊維バルク成形体(厚さ(高さ)3mm、1cm角(幅10mm−長さ10mm))に浸み込ませたものを、実施例1の無機繊維(撹拌部3)とした。図14に示すように、実施例1の無機繊維(撹拌部3)を触媒エレメント(図11)上に約50mm間隔で配置した。
【0051】
実施例1の無機繊維(撹拌部3)を配置した触媒エレメントを繰り返して積層体にし、図12に示すように、金属製の外枠5の中に入れた後、積層体の上から加圧しながら蓋をし、積層触媒構造を得た。積層触媒構造を24時間風乾した後、空気を流しながら500℃で2時間焼成したものを実施例1とした。
【0052】
(実施例2)
図3に示すように、触媒エレメント(図11)に、加工用金型を用いて切り起こし加工を施し、切り込みを折り曲げて攪拌部(リード部)3を形成したものを実施例2とした。実施例2の攪拌部(リード部)3は、長さaを18mmとし、幅bを8mmとした。そして、図7に示すように、実施例2の撹拌部(リード部)3をガス流方向4に約50mm間隔で配置した触媒エレメントを積層体にし、図12に示すように、金属製の外枠5の中に入れた後、積層体の上から加圧しながら蓋をし、積層触媒構造を得た。積層触媒構造を24時間風乾した後、空気を流しながら500℃で2時間焼成したものを実施例2とした。この場合、図7に示すように、第1の平板部1に設けられたリード部33と、第2の平板部10に設けられたリード部34とが、ガス流方向4に交互に存在するように、触媒エレメントを積層した。また、第2の平板部10に設けられたリード部34と、第3の平板部11に設けられたリード部35とが、ガス流方向4に交互に存在するように、触媒エレメントを積層した。
【0053】
(実施例3)
実施例3は、実施例2の攪拌部(リード部)3の長さaを25mmとし、幅bを15mmとしたものである。
【0054】
(実施例4)
実施例4は、実施例2の攪拌部(リード部)3の長さaを20mmとし、幅bを10mmとしたものである。
【0055】
(実施例5)
実施例5は、図6に示すように、実施例2の攪拌部(リード部)3の折り曲げ方向を交互に反対方向にしたものである。この場合、図6に示すように、第1の平板部1及び第3の平板部11には、攪拌部(リード部)3が存在しないようになっている。
【0056】
(実施例6)
実施例6は、実施例2の撹拌部(リード部)3の間隔(約50mm)を、ガス流方向4に約100mmに変更したものである。
【0057】
以上の実施例1−6及び比較例1−2の積層触媒構造を用いて、図15に示す条件で、それぞれの積層触媒構造の脱硝率と圧力損失を測定した。図16は、測定結果である。
【0058】
図16に示すように、脱硝率に関し、比較例1(65%)及び比較例2(83%)に比べて、実施例1−6は何れも高い脱硝率(86−93%)を示した。特に、実施例4は、最も高い脱硝率(93%)を示した。また、圧損に関し、比較例2(78mmHO/m)に比べて、実施例3を除く実施例は、低い圧損(42−67mmHO/m)を示した。特に、実施例6(約100mm間隔)は、最も低い圧損(42HO/m)を示した。実施例3についても、圧損の大きな上昇なく活性を高くできることが示された。
【0059】
このように、本実施の形態によれば、比較例に比べ、脱硝率が向上した。これは、ガス流れを効率よく攪拌することができたためである。また、本実施の形態によれば、圧損の上昇を防止しつつ、脱硝率を向上させることも可能である。つまり、隣設される触媒エレメント間にわたる触媒構造により、簡易な構造で圧損の上昇を防止しつつ、脱硝率を向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、脱硝性能を高くすることで、触媒の使用量を大幅に低減(省資源化)することができ、コストと環境負荷を低減することができる。また、圧力損失の増大を防止することで、排ガス脱硝装置の運転動力の負荷を低減することができ、省資源化と省エネルギー化を図ることができる。
【0061】
つまり、本実施の形態の触媒構造について、発明者は、生産性が高く活性向上効果が大きい形状を実現するため、従来技術の解決すべき課題の摘出を行った。従来技術のうち、特許文献4などに示すように、堰状突起を設ける方法は堰状構造の形成の仕方に関し種々の貴重な工夫がなされているが、その根幹に位置するのは、図10及び図13に示すように、平行平板部に設けた堰状物でガスを乱して層流形成によるガス拡散抵抗の増大の低減しようとするものである。その効果は、突起の小さい時には比較的大きいが、更に効果を高めようとして大きな突起にすると、ガス拡散抵抗の減少に比し圧損上昇のみが顕著になる。この点が、堰状突起による活性向上策の原理的な問題であると言える。
【0062】
一方、特許文献5に示すように、丸棒や網状のガス攪拌体を平行流路の平行面の中心部に設ける活性向上策は、触媒表面から遠い流路中心部のガスを乱して触媒へのガス拡散を促進しようとするものであり、特許文献4の発明とは本質的に異なっており、発明者の研究によれば、同一圧損上昇に対する活性向上度が大きく、原理的には優れた方法である。しかしながら、流路の中心部に流路を形成する板状触媒とは別の網状物や棒状物を設置する必要があり、触媒製造工程とは別ラインでこれらを準備するとともに、交互に積層するために、製造工程が増え製造速度やコスト面で不利になる。
【0063】
そこで、発明者は、原理的に優れる後者のガス流路の中心部のガスを乱すことにより活性を向上させる技術について鋭意研究した結果、従来技術では網状物や棒状物を平行平板流路の平行部触媒面に平行に設置しているものを、発想を変えて、平行部触媒面に直交するようなガス攪拌体を、図1などに示すように設置することにした。すなわち、平行平板触媒とスペーサで構成される長方形流路の長辺の中心部にガス攪拌体を設ければ、従来技術と同様の高い中心部撹拌効果が得られる点を見出し、本発明をするに至った。
【0064】
さらに、発明者は、図1に示す本願発明と従来の棒状攪拌体を設置した場合との効果の差異について研究した結果、図2に示すように、ガス攪拌体を傾けて設けて、ガスと攪拌体の接触比率を増大させるとともに、ガス攪拌体を迂回して流れる抵抗を大幅に低減できることを見出した。
【0065】
さらに、従来技術に示されるように、触媒表面に形成される層流の破壊を目的とした突起は、流路の間隔に対し小さく、ガス流の乱れも表層部に限られていた(例えば、図9参照)。これに対し、本実施の形態のリード状ガス攪拌体は、流路の上下両面に接する様に形成されており、その結果、図8に示すように、触媒面の層流を乱すだけでなく、流路の中心部のガスをも激しく撹乱して触媒との接触効率を飛躍的高める作用がある。さらに、このガスの乱れによる圧力差が、リード状攪拌体を切り起こした跡の開口部を通って他の流路にガスが流れることを促進し、一層反応効率を高めることができる。
【0066】
以上、本発明にかかる実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において変更・変形することが可能である。
【0067】
本実施の形態では、排ガスの脱硝触媒構造について説明したが、触媒成分を変えることで、NOx以外の排ガス成分を除去することも可能である。
【0068】
また、本実施の形態では、攪拌部(リード部)3のガス流方向4の間隔を50mm又は100mmとしたが、触媒エレメントの間隔(ピッチ)に応じて適宜変更してもよい。ピッチが3mmである場合、20mm以上の間隔で攪拌部(リード部)3を配置すれば効果が得られる。通常、30mm−100mmの間隔で攪拌部(リード部)3を配置すれば、高い効果が得られる。
【0069】
また、攪拌部(リード部)3の幅は、ガス流路の流路幅cの1/5−1/2であればよい。また、リード部の折り曲げ角度θは、5°以上30°以下であればよく、触媒エレメントの間隔が3mmである場合、リード部の長さaが15mm−25mmであれば、圧損が低く触媒活性効果が大きくなる傾向がある。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明にかかる触媒構造は、簡易な構造により、ガス流を効率的に攪拌することで、圧損の上昇を防止しつつ、脱硝率を向上させることができるという効果を有し、排ガス浄化用の触媒構造などとして有用である。
【符号の説明】
【0071】
1,10−15 平板部
2 スペーサ
3,31−35 攪拌部(リード部)
5 外枠
30 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16