特許第6053395号(P6053395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 光精工株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6053395-ラッシュアジャスタ 図000002
  • 特許6053395-ラッシュアジャスタ 図000003
  • 特許6053395-ラッシュアジャスタ 図000004
  • 特許6053395-ラッシュアジャスタ 図000005
  • 特許6053395-ラッシュアジャスタ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053395
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ラッシュアジャスタ
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/245 20060101AFI20161219BHJP
   F01L 1/255 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F01L1/245 E
   F01L1/245 C
   F01L1/255 G
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-186105(P2012-186105)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-43803(P2014-43803A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】593146017
【氏名又は名称】光精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(72)【発明者】
【氏名】西村 憲一
(72)【発明者】
【氏名】今尾 利男
(72)【発明者】
【氏名】大山 治
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−283708(JP,A)
【文献】 特開2008−267195(JP,A)
【文献】 実開昭59−084207(JP,U)
【文献】 実開平02−085805(JP,U)
【文献】 実開平03−035208(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/245
F01L 1/255
F01L 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに設けられ、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブを作動させるロッカーアームの揺動支点として機能するラッシュアジャスタであって、
一端側に底部を有し加圧オイルが流れるシリンダヘッド内のオイル流路に連通可能な貫通孔を周壁に有する円筒形状のボディと、
ボディに摺動可能に収容される円筒形状であって、周壁にボディの前記貫通孔に連通可能な加圧オイルの導入孔を有し、内側にこの導入孔を介して加圧オイルが流入するリザーバ室を有し、一端側に加圧オイルの排出孔が形成され前記ロッカーアームの揺動支点になるピボットを有し、他端側に前記リザーバ室内の加圧オイルが流出可能な連通路が形成されこの連通路が閉塞されるとボディの前記底部との間で高圧室が区画形成される隔壁を有するプランジャと、
プランジャの前記高圧室に収容されてプランジャの前記連通路の開口部を閉塞し前記リザーバ室に流入した加圧オイルが所定圧に達するとこの開口部を開放して前記高圧室に加圧オイルを流入させるバルブ機構と、
プランジャの前記ピボットがボディから突出する方向にバルブ機構とともにプランジャを付勢して前記ロッカーアームに前記ピボットを当接させるスプリングと、を備え、
前記ボディの周壁には、前記貫通孔の位置よりも前記周壁の開口部側に短軸状のピンを挿通可能なピン挿入孔が形成され、前記プランジャの周壁には、プランジャの摺動方向に線状に延びて前記ピン挿入孔に挿通される前記ピンの挿入先端を係止可能で前記ピボットの突出限度を決めるとともに、前記ピボットの突出限度を決める一端側から前記ピボットの方向に延びる他端側に向かって徐々に深さが増すように溝底が傾斜しているキー溝が形成され、前記シリンダヘッドには、前記ボディを摺接させて挿入可能な円筒穴およびこの円筒穴に連通し前記ピンの外径よりも僅かに幅広で円筒穴の径方向外側に延びる長溝が形成されており、
前記ピンが前記ピン挿入孔に挿通されて前記キー溝に前記挿入先端が挿入されている当該ラッシュアジャスタを、前記シリンダヘッドの円筒穴に組み付ける場合、前記ボディから突出する前記ピンの突出後端が前記シリンダヘッドの長溝に収容されることを特徴とするラッシュアジャスタ。
【請求項2】
シリンダヘッドに設けられ、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブを作動させるロッカーアームの揺動支点として機能するラッシュアジャスタであって、
一端側に底部を有し加圧オイルが流れるシリンダヘッド内のオイル流路に連通可能な貫通孔を周壁に有する円筒形状のボディと、
ボディに摺動可能に収容される円筒形状であって、周壁にボディの前記貫通孔に連通可能な加圧オイルの導入孔を有し、内側にこの導入孔を介して加圧オイルが流入するリザーバ室を有し、一端側に加圧オイルの排出孔が形成され前記ロッカーアームの揺動支点になるピボットを有し、他端側に前記リザーバ室内の加圧オイルが流出可能な連通路が形成されこの連通路が閉塞されるとボディの前記底部との間で高圧室が区画形成される隔壁を有するプランジャと、
プランジャの前記高圧室に収容されてプランジャの前記連通路の開口部を閉塞し前記リザーバ室に流入した加圧オイルが所定圧に達するとこの開口部を開放して前記高圧室に加圧オイルを流入させるバルブ機構と、
プランジャの前記ピボットがボディから突出する方向にバルブ機構とともにプランジャを付勢して前記ロッカーアームに前記ピボットを当接させるスプリングと、を備え、
前記ボディの周壁には、前記貫通孔の位置よりも前記周壁の開口部側に短軸状のピンを挿通可能なピン挿入孔が形成され、前記プランジャの周壁には、プランジャの摺動方向に線状に延びて前記ピン挿入孔に挿通される前記ピンの挿入先端を係止可能で前記ピボットの突出限度を決めるとともに、前記ピボットの突出限度を決める一端側から前記ピボットの方向に延びる他端側に向かって徐々に深さが減るように溝底が傾斜しているキー溝が形成され、前記シリンダヘッドには、前記ボディを摺接させて挿入可能な円筒穴およびこの円筒穴に連通し前記ピンの外径よりも僅かに幅広で円筒穴の径方向外側に延びる長溝が形成されており、
前記ピンが前記ピン挿入孔に挿通されて前記キー溝に前記挿入先端が挿入されている当該ラッシュアジャスタを、前記シリンダヘッドの円筒穴に組み付ける場合、前記ボディから突出する前記ピンの突出後端が前記シリンダヘッドの長溝に収容されることを特徴とするラッシュアジャスタ。
【請求項3】
前記プランジャは、前記導入孔を介して加圧オイルが最初に流入するセパレータ室を前記リザーバ室よりも上流に有するとともに、前記導入孔よりも前記他端側の外周壁に全周に亘って周溝が形成されこの周溝内に前記リザーバ室に連通する戻り孔を有し、
一端部に向けて縮径するテーパを備えた筒形状であって、この一端部を前記プランジャの前記一端側に向けかつ他端部を前記プランジャの前記導入孔よりも前記リザーバ室寄りの内周壁に液密に嵌合するように前記セパレータ室に収容されて、前記導入孔から流入する加圧オイルを前記テーパの外周壁で一端部の方向に案内し一端部から内側に流入した加圧オイルを他端部を介して前記リザーバ室に導くセパレータを備え、
前記内燃機関の運転停止により前記セパレータまたは前記リザーバ室にオイルが停留している場合、このオイルの液面が、前記導入孔および前記戻り孔よりも重力方向下側に位置するように、前記ピン挿入孔の形成位置が設定されることを特徴とする請求項1または2に記載のラッシュアジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドに設けられ、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブを作動させるロッカーアームの揺動支点として機能するラッシュアジャスタで、特に加圧オイルが供給されて作動する油圧式のラッシュアジャスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧式のラッシュアジャスタとして、例えば、下記特許文献1に開示される「油圧式ラッシュアジャスターおよびその製造方法」がある。このラッシュアジャスタでは、プランジャ部およびプランジャキャップ部を同一材料から継ぎ目の連続した一個の部材として構成することにより、エンジンが長期間停止した場合においてもリザーバ室内の油が外部へ漏れることを防止可能にする(下記特許文献1のフロントページ)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−173622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のラッシュアジャスタによると、一個の部材として構成されるプランジャ部およびプランジャキャップ部は、本体内に摺動自在に嵌合した円筒形を有する。そのため、本体内でプランジャ部およびプランジャキャップ部が回転する可能性がある。また、本体も円筒形を有することから、ラッシュアジャスタが組み付けられるシリンダヘッドにも円筒形のポケットが形成されている。そのため、シリンダヘッドに組み付けられたラッシュアジャスタ全体も、このポケット内で回転する可能性がある。
【0005】
このため、例えば、駐車中の車両の傾きやエンジンのタイプによっては、シリンダヘッドに組み付けられたラッシュアジャスタが重力方向に対して斜めになる場合がある。このような場合、本体、プランジャ部およびプランジャキャップ部の回転位置によっては、プランジャキャップ部に形成される貫通孔(油導入孔を介して外部から油をプランジャキャップ部内に導入する孔)が重力方向下側に向くことも想定される。
【0006】
エンジンの停止後にラッシュアジャスタ内に充満する油の液面よりも、プランジャキャップ部の貫通孔が重力方向下側に位置するときには、ラッシュアジャスタ内の油がプランジャキャップ部の貫通孔から外部に漏れ出る可能性が高い。そのため、高圧室の油も抜けてプランジャ部がいわゆる「底付き状態」に至った場合には、エンジンの始動時に異音発生の原因になる(特許文献1;段落番号0002,0003)。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、高圧室のオイル抜けに起因する空気混入による内燃機関の始動時における異音の発生を防止し得るラッシュアジャスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載されたラッシュアジャスタ(10)は、シリンダヘッド(60)に設けられ、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブを作動させるロッカーアーム(70)の揺動支点として機能するラッシュアジャスタであって、一端側に底部(12)を有し加圧オイルが流れるシリンダヘッド(60)内のオイル流路(63)に連通可能な貫通孔(11c)を周壁に有する円筒形状のボディ(11)と、ボディ(11)に摺動可能に収容される円筒形状であって、周壁にボディ(11)の前記貫通孔(11c)に連通可能な加圧オイルの導入孔(21e)を有し、内側にこの導入孔(21e)を介して加圧オイルが流入するリザーバ室(21c)を有し、一端側に加圧オイルの排出孔(21a)が形成され前記ロッカーアーム(70)の揺動支点になるピボット(22)を有し、他端側に前記リザーバ室(21c)内の加圧オイルが流出可能な連通路(21d)が形成されこの連通路(21d)が閉塞されるとボディ(11)の前記底部(12)との間で高圧室(11b)が区画形成される隔壁(26)を有するプランジャ(21)と、プランジャ(21)の前記高圧室(11b)に収容されてプランジャ(21)の前記連通路(21d)の開口部を閉塞し前記リザーバ室(21c)に流入した加圧オイルが所定圧に達するとこの開口部を開放して前記高圧室(11b)に加圧オイルを流入させるバルブ機構(40)と、プランジャ(21)の前記ピボット(22)がボディ(11)から突出する方向にバルブ機構(40)とともにプランジャ(21)を付勢して前記ロッカーアーム(70)に前記ピボット(22)を当接させるスプリング(48)と、を備え、前記ボディ(11)の周壁には、前記貫通孔(11c)の位置よりも前記周壁の開口部(11a)側に短軸状のピン(51)を挿通可能なピン挿入孔(11e)が形成され、前記プランジャ(21)の周壁には、プランジャ(21)の摺動方向に線状に延びて前記ピン挿入孔(11e)に挿通される前記ピン(51)の挿入先端(51a)を係止可能で前記ピボット(22)の突出限度を決めるとともに、前記ピボット(22)の突出限度を決める一端側(21j)から前記ピボット(22)の方向に延びる他端側(21i)に向かって徐々に深さが増すように溝底(21k)が傾斜しているキー溝(21h)が形成され、前記シリンダヘッド(60)には、前記ボディ(11)を摺接させて挿入可能な円筒穴(61)およびこの円筒穴(61)に連通し前記ピン(51)の外径よりも僅かに幅広で円筒穴(61)の径方向外側に延びる長溝(62)が形成されており、前記ピン(51)が前記ピン挿入孔(11e)に挿通されて前記キー溝(21h)に前記挿入先端(51a)が挿入されている当該ラッシュアジャスタ(10)を、前記シリンダヘッド(60)の円筒穴(61)に組み付ける場合、前記ボディ(11)から突出する前記ピン(51)の突出後端(51b)が前記シリンダヘッド(60)の長溝(62)に収容されることを技術的特徴とする。
【0009】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載されたラッシュアジャスタ(10)は、シリンダヘッド(60)に設けられ、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブを作動させるロッカーアーム(70)の揺動支点として機能するラッシュアジャスタであって、一端側に底部(12)を有し加圧オイルが流れるシリンダヘッド(60)内のオイル流路(63)に連通可能な貫通孔(11c)を周壁に有する円筒形状のボディ(11)と、ボディ(11)に摺動可能に収容される円筒形状であって、周壁にボディ(11)の前記貫通孔(11c)に連通可能な加圧オイルの導入孔(21e)を有し、内側にこの導入孔(21e)を介して加圧オイルが流入するリザーバ室(21c)を有し、一端側に加圧オイルの排出孔(21a)が形成され前記ロッカーアーム(70)の揺動支点になるピボット(22)を有し、他端側に前記リザーバ室(21c)内の加圧オイルが流出可能な連通路(21d)が形成されこの連通路(21d)が閉塞されるとボディ(11)の前記底部(12)との間で高圧室(11b)が区画形成される隔壁(26)を有するプランジャ(21)と、プランジャ(21)の前記高圧室(11b)に収容されてプランジャ(21)の前記連通路(21d)の開口部を閉塞し前記リザーバ室(21c)に流入した加圧オイルが所定圧に達するとこの開口部を開放して前記高圧室(11b)に加圧オイルを流入させるバルブ機構(40)と、プランジャ(21)の前記ピボット(22)がボディ(11)から突出する方向にバルブ機構(40)とともにプランジャ(21)を付勢して前記ロッカーアーム(70)に前記ピボット(22)を当接させるスプリング(48)と、を備え、前記ボディ(11)の周壁には、前記貫通孔(11c)の位置よりも前記周壁の開口部(11a)側に短軸状のピン(51)を挿通可能なピン挿入孔(11e)が形成され、前記プランジャ(21)の周壁には、プランジャ(21)の摺動方向に線状に延びて前記ピン挿入孔(11e)に挿通される前記ピン(51)の挿入先端(51a)を係止可能で前記ピボット(22)の突出限度を決めるとともに、前記ピボット(22)の突出限度を決める一端側(21j)から前記ピボット(22)の方向に延びる他端側(21i)に向かって徐々に深さが減るように溝底(21k)が傾斜しているキー溝(21h)が形成され、前記シリンダヘッド(60)には、前記ボディ(11)を摺接させて挿入可能な円筒穴(61)およびこの円筒穴(61)に連通し前記ピン(51)の外径よりも僅かに幅広で円筒穴(61)の径方向外側に延びる長溝(62)が形成されており、前記ピン(51)が前記ピン挿入孔(11e)に挿通されて前記キー溝(21h)に前記挿入先端(51a)が挿入されている当該ラッシュアジャスタ(10)を、前記シリンダヘッド(60)の円筒穴(61)に組み付ける場合、前記ボディ(11)から突出する前記ピン(51)の突出後端(51b)が前記シリンダヘッド(60)の長溝(62)に収容されることを技術的特徴とする。
【0010】
さらに、特許請求の範囲の請求項3に記載されたラッシュアジャスタは、請求項1または2に記載のラッシュアジャスタにおいて、前記プランジャ(21)は、前記導入孔(21e)を介して加圧オイルが最初に流入するセパレータ室(21b)を前記リザーバ室(21c)よりも上流に有するとともに、前記導入孔(21e)よりも前記他端側の外周壁(28)に全周に亘って周溝(21f)が形成されこの周溝(21f)内に前記リザーバ室(21c)に連通する戻り孔(21g)を有し、一端部(31a)に向けて縮径するテーパを備えた筒形状であって、この一端部(31a)を前記プランジャ(21)の前記一端側に向けかつ他端部(31b)を前記プランジャ(21)の前記導入孔(21e)よりも前記リザーバ室寄りの内周壁(23)に液密に嵌合するように前記セパレータ室(21b)に収容されて、前記導入孔(21e)から流入する加圧オイルを前記テーパの外周壁(32)で一端部(31a)の方向に案内し一端部(31a)から内側に流入した加圧オイルを他端部(31b)を介して前記リザーバ室(21c)に導くセパレータ(31)を備え、前記内燃機関の運転停止により前記セパレータ(31)または前記リザーバ室(21c)にオイルが停留している場合、このオイルの液面が、前記導入孔(21e)および前記戻り孔(21g)よりも重力方向下側に位置するように、前記ピン挿入孔(11e)の形成位置が設定されることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、ラッシュアジャスタ(10)がシリンダヘッド(60)の円筒穴(61)に組み付けられる場合、ピン挿入孔(11e)に挿通されてキー溝(21h)に挿入先端(51a)が挿入されているピン(51)は、その突出後端(51b)がシリンダヘッド(60)の長溝(62)に収容される。これにより、ラッシュアジャスタ(10)が円筒穴(61)に組み付けられる場合であっても、シリンダヘッド(60)とラッシュアジャスタ(10)の間には、両者に係合するピン(51)が存在するため、ピン(51)を介してラッシュアジャスタ(10)がシリンダヘッド(60)に係止されて円筒穴(61)におけるラッシュアジャスタ(10)の回転が規制される。また、ラッシュアジャスタ(10)の、ボディ(11)とプランジャ(21)の間にも、両者に係合するピン(51)が存在するため、ピン(51)を介してプランジャ(21)がボディ(11)に係止されてボディ(11)内におけるプランジャ(21)の回転が規制される。つまり、ピン(51)が、シリンダヘッド(60)、プランジャ(21)およびボディ(11)の三者に係合することから、これらの相対回転が規制される。このため、シリンダヘッド(60)内のオイル流路(63)および貫通孔(11c)に連通し得る導入孔(21e)が、内燃機関の運転停止によりセパレータ(31)またはリザーバ室(21c)に停留しているオイルの液面よりも重力方向上側に位置するように、ピン挿入孔(11e)を形成することで、セパレータ(31)またはリザーバ室(21c)に停留しているオイルが導入孔(21e)を介して外部に漏れ出ることを防ぐ。したがって、高圧室(11b)のオイル抜けに起因する空気混入による内燃機関の始動時における異音の発生を防止することができる。また、キー溝(21h)の溝底(21k)が、ピボット(22)の突出限度を決める一端側(21j)からピボット(22)の方向に延びる他端側(21i)に向かって徐々に深さを増すように傾斜している。これにより、ピボット(22)の突出限度におけるプランジャ(21)の位置、つまりプランジャ(21)がボディ(11)から最も突出している状態において、ピン(51)の挿入先端(51a)をキー溝(21h)の溝底(21k)に当接させた位置でピン(51)を固定することにより、キー溝(21h)の最も浅い位置でピン(51)が固定される。このため、プランジャ(21)が反対方向、つまりボディ(11)に挿入する方向にプランジャ(21)が移動すると、キー溝(21h)の深さが増すため、この方向においては、ピン(51)の挿入先端(51a)がキー溝(21h)の溝底(21k)に接触することはない。したがって、ピン(51)の固定位置の設定を容易にするとともに、ピン(51)と溝底(21k)の接触によるプランジャ(21)の挿入方向への移動の妨げが生じないようにすることができる。
【0012】
請求項2の発明では、ラッシュアジャスタ(10)がシリンダヘッド(60)の円筒穴(61)に組み付けられる場合、ピン挿入孔(11e)に挿通されてキー溝(21h)に挿入先端(51a)が挿入されているピン(51)は、その突出後端(51b)がシリンダヘッド(60)の長溝(62)に収容される。これにより、ラッシュアジャスタ(10)が円筒穴(61)に組み付けられる場合であっても、シリンダヘッド(60)とラッシュアジャスタ(10)の間には、両者に係合するピン(51)が存在するため、ピン(51)を介してラッシュアジャスタ(10)がシリンダヘッド(60)に係止されて円筒穴(61)におけるラッシュアジャスタ(10)の回転が規制される。また、ラッシュアジャスタ(10)の、ボディ(11)とプランジャ(21)の間にも、両者に係合するピン(51)が存在するため、ピン(51)を介してプランジャ(21)がボディ(11)に係止されてボディ(11)内におけるプランジャ(21)の回転が規制される。つまり、ピン(51)が、シリンダヘッド(60)、プランジャ(21)およびボディ(11)の三者に係合することから、これらの相対回転が規制される。このため、シリンダヘッド(60)内のオイル流路(63)および貫通孔(11c)に連通し得る導入孔(21e)が、内燃機関の運転停止によりセパレータ(31)またはリザーバ室(21c)に停留しているオイルの液面よりも重力方向上側に位置するように、ピン挿入孔(11e)を形成することで、セパレータ(31)またはリザーバ室(21c)に停留しているオイルが導入孔(21e)を介して外部に漏れ出ることを防ぐ。したがって、高圧室(11b)のオイル抜けに起因する空気混入による内燃機関の始動時における異音の発生を防止することができる。また、キー溝(21h)の溝底(21k)が、ピボット(22)の突出限度を決める一端側(21j)からピボット(22)の方向に延びる他端側(21i)に向かって徐々に深さが減る(他端側(21i)から一端側(21j)に向かって徐々に深さが増える)ように傾斜している。
【0013】
請求項3の発明では、内燃機関の運転停止によりセパレータ(31)またはリザーバ室(21c)にオイルが停留している場合、このオイルの液面が、導入孔(21e)および戻り孔(21g)よりも重力方向下側に位置するように、ピン挿入孔(11e)の形成位置が設定される。これにより、オイルの液面よりも、導入孔(21e)および戻り孔(21g)の方が重力方向上側に位置するため、セパレータ(31)またはリザーバ室(21c)に停留しているオイルが導入孔(21e)を介して外部に漏れ出ることを防ぐ。したがって、高圧室(11b)のオイル抜けに起因する空気混入による内燃機関の始動時における異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るラッシュアジャスタの構成を示す断面図である。
図2】本実施形態のラッシュアジャスタを水平対向エンジンのシリンダヘッドに組み付けた状態を示す説明図である。
図3図2に示す一点鎖線の範囲に対応するシリンダヘッド60の一部をIII方向から見た矢視図である。
図4】本実施形態のラッシュアジャスタを構成するプランジャのキー溝を示す部分断面図である。
図5図2に示すシリンダヘッドに組み付けられたラッシュアジャスタに停留するオイルの液面等を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のラッシュアジャスタの実施形態について図を参照して説明する。まず本実施形態に係るラッシュアジャスタ10の構成等を図1図3に基づいて説明する。図1には、ラッシュアジャスタ10をその軸方向に切断して現れる断面図が図示されている。図2には、ラッシュアジャスタ10を水平対向エンジンのシリンダヘッド60に組み付けた状態を示す説明図が図示されている。図3には、図2に示す一点鎖線の範囲に対応するシリンダヘッド60の一部をIII方向から見た矢視図が図示されている。なお、図2および図3においては、図示される座標軸のZ軸矢印方向が重力方向上側(以下「反重力方向」)である。
【0016】
図1に示すように、ラッシュアジャスタ10は、主に、ボディ11、プランジャ21、セパレータ31、バルブ機構40により構成されている。図2に示すように、ラッシュアジャスタ10は、水平対向エンジン(内燃機関)のシリンダヘッド60の取付穴61に組み付けられ、エンジンの吸気バルブを作動させるロッカーアーム70の揺動支点として機能する。この例では、カムシャフトが回転してカム80がロッカーアーム70を押し動かすと、吸気バルブのバルブリフト機構90とラッシュアジャスタ10との双方に荷重が加わるように構成されている。
【0017】
図3に示すように、シリンダヘッド60の取付穴61は、オイルギャラリ63の反重力方向(Z軸矢印方向)に位置しており、組み付けられたラッシュアジャスタ10の底部12側が重力方向(Z軸反矢印方向)を向くように斜めに形成されている。また、取付穴61の開口には、その内周壁の最下部から重力方向に延びるように長溝62が取付穴61に連通して形成されている。この長溝62は、溝幅が後述するピン51の軸径よりも僅かに幅広に、また溝長さがピン51の軸長よりも短くピン51の軸長の1/3〜1/2の間に、それぞれ設定されている。
【0018】
ボディ11は、例えば、肌焼鋼からなり、一端側に底部12を有し他端側に開口部11aを有する有底の円筒形状に形成されている。ボディ11の内周径は、開口部11aを形成する内周壁13でプランジャ21が摺動し得るように、プランジャ21の外周径よりも僅かに大きく設定されている。
【0019】
ボディ11の周壁には、シリンダヘッド60に組み付けられたときにシリンダヘッド60内のオイルギャラリ63に連通可能な位置にオイル孔11cが形成されている。このオイル孔11cは、オイルギャラリ63を流れる加圧オイルをボディ11内に取り込むための貫通孔で、内周壁13には、このオイル孔11cに連通する環状凹部11dが形成されている。環状凹部11dは、プランジャ21の導入孔21eに加圧オイルを導くための周溝で、プランジャ21の移動位置にかかわらず加圧オイルを導入可能にするため、環状凹部11dの幅はプランジャ21の可動範囲によって定められている。
【0020】
環状凹部11dの開口部11a側にはピン挿入孔11eが形成されている。このピン挿入孔11eは、ラッシュアジャスタ10をシリンダヘッド60に組み付けるときにピン51を挿入する孔である。このピン51は、短軸状に形成されており、その先端51aがプランジャ21のキー溝21hに挿入されるまでピン挿入孔11eに挿通されている(ピン51の左側矢印方向に表されている二点鎖線によるピン51の輪郭)。また、ピン51の後端51bは、ラッシュアジャスタ10がシリンダヘッド60に組み付けられた状態においては、シリンダヘッド60の長溝62に収容される。これにより、後述するように、プランジャ21のキー溝21hと協働してプランジャ21の突出方向の移動を規制するとともに、シリンダヘッド60の長溝62と協働してラッシュアジャスタ10がシリンダヘッド60の取付穴61の内部で回転するのを防止している。
【0021】
環状凹部11dから底部12方向に向かう内周壁13の端部には、底部12に近づくほど拡径する環状のテーパ溝16が形成されており、さらにその先には内周壁13よりも小径の高圧室壁14が形成されて底面12aに繋がっている。つまり、内周壁13と高圧室壁14との間には段部15が形成されており、この段部15によってプランジャ21の挿入方向の移動が規制されている。
【0022】
高圧室壁14は、後述するように、プランジャ21の隔壁26、排出部27、ボール43、底部12や内周壁13ととも高圧室11bを区画形成する壁体である。高圧室11bには、バルブ機構40やプランジャスプリング48が収容されている。
【0023】
プランジャ21は、ボディ11に摺動可能に収容される円筒形状をベースに、一端側にピボット22、他端側に隔壁26や排出部27、がそれぞれ形成されている。即ち、プランジャ21の外周径は、ボディ11の内周径よりも僅かに小さく設定されており、一端側から他端側に向かって内部に、セパレータ室21b、リザーバ室21cおよび連通路21dがそれぞれ形成されている。なお、プランジャ21は、ボディ11と同様に、例えば肌焼鋼からなる。
【0024】
ピボット22は、ロッカーアーム70の一端側に当接する支承部分(ロッカーアームの浮動支点)で、頂部に排出孔21aを有しほぼドーム形状に形成されている。この排出孔21aは、プランジャ21内のセパレータ室21bに連通しており、セパレータ室21bに充満した加圧オイルの排出を可能にしている。なお、このピボット22は、後述するセパレータ31がセパレータ室21bに圧入固定された後、ほぼドーム形状に成形される。
【0025】
セパレータ31を収容するセパレータ室21bは、セパレータ室壁23によって形成される部屋で、加圧オイルが最初に流入する。セパレータ室壁23には加圧オイルを導入する導入孔21eが形成されており、この導入孔21eは、ボディ11に挿入されたプランジャ21の可動範囲において、前述したボディ11の環状凹部11dに連通可能な位置に設けられている。これにより、ボディ11のオイル孔11cから流入する加圧オイルを環状凹部11dを介してセパレータ室21bに導入可能にしている。
【0026】
セパレータ室21bに連通するリザーバ室21cは、リザーバ室壁24により形成される部屋で、セパレータ室21bのセパレータ31を介して流入したオイルを溜める。リザーバ室21cの内径は、セパレータ31の内径とほぼ同径で、セパレータ室21bの内径よりも小径に設定されている。即ち、セパレータ室21bを形成するセパレータ室壁23とリザーバ室21cを形成するリザーバ室壁24との間には、段部25が設けられている。この段部25は、セパレータ室21b内にセパレータ31が圧入固定される際に、セパレータ31の固定位置を決定している。
【0027】
段部25に対するリザーバ室壁24の反対側には、リザーバ室壁24の全周に繋がる隔壁26が形成されている。隔壁26は、流路径が絞られた連通路21dが中央に開口する円盤形状の板壁で、連通路21dを形成する排出部27に繋がっている。排出部27は、リザーバ室21cに充満した加圧オイルを高圧室11bに排出可能にする肉厚の円筒形状部で、端部にシート27aが形成されている。このシート27aは、後述するように、バルブ機構40を構成するボール43が着座可能な弁座として機能する。
【0028】
リザーバ室壁24には戻り孔21gが形成されている。戻り孔21gは、外周壁28の全周に形成される周溝21fに連通可能な位置に設けられており、本実施形態では、段部25の近傍に位置している。外周壁28に形成される周溝21fは、プランジャ21の可動範囲において、ボディ11の環状凹部11dに連通しない位置に設けられている。
【0029】
外周壁28には、周溝21fの他にキー溝21hが形成されている。このキー溝21hは、ボディ11のピン挿入孔11eに挿入されたピン51の先端51aがプランジャ21の可動範囲で入り込んでプランジャ21の突出方向の移動を規制する溝で、プランジャ21の軸方向に延設されて、溝の長さがプランジャ21のほぼストローク長に設定されている。本実施形態では、キー溝21hは、前述した導入孔21eにほぼ対向する位置に設けられている。
【0030】
セパレータ31は、一端部31aに向けて縮径するテーパを備えた肉厚の薄い、例えば、冷間圧延鋼板からなり円筒形状に形成されている。テーパのない他端部31bの外径は、セパレータ室21bの内径よりも僅かに大径に設定され、全長がセパレータ室21bの軸方向長さよりも僅かに短く設定されている。テーパのない他端部31bの幅は、セパレータ31をセパレータ室21bに組み付けた状態で、プランジャ21の導入孔21eを塞ぐことのない位置、つまりテーパとの境界が導入孔21eの形成位置よりも段部25側に位置する大きさに設定されている。また他端部31bの内径は、プランジャ21のリザーバ室21cの内径とほぼ同径に設定されている。本実施形態では、セパレータ31の表面に、防炭処理として硫化銅浴等によるメッキ加工が施されており、外周壁32および内周壁33を含めて全体が銅メッキされている。
【0031】
セパレータ31は、プランジャ21にピボット22を形成する前に組み付けられる。即ち、ピボットをドーム形状に成形する前にセパレータ室21bの内径と同径で開口するプランジャ21の一端側から、他端部31b方向からセパレータ31をセパレータ室21b内に挿入し、他端部31bが段部25に当接する(または当接する直前位置)までセパレータ31を圧入する。他端部31bの外径は、セパレータ室21bの内径よりも僅かに大径に設定されていることから、このような圧入固定によって他端部31bをセパレータ室壁23に液密に嵌合させる。
【0032】
セパレータ31が組み付けられたプランジャ21は、セパレータ室21bの内径と同径に開口する一端側がドーム形状にプレスまたは絞り加工され、さらに浸炭焼入れ焼戻しの各工程等を経て完成する。浸炭焼入れ焼戻しは、プランジャ21の表面の硬度を内部よりも高めるためのもので、これよりプランジャ21の耐摩耗性と靭性がともに向上する。なお、プランジャ21内のセパレータ31には、その表面に防炭処理が施されているため、浸炭されることなく、クラックや割れが発生しない。
【0033】
ラッシュアジャスタ10は、ピボット22が斜め上方(反重力方向)に向くようにシリンダヘッド60に組み付けられる(図2参照)。このため、このようなセパレータ31をプランジャ21のセパレータ室21bに設けることによって、プランジャ21の導入孔21eから流入した加圧オイルは、テーパのある外周壁32により、一旦、上方、つまりピボット22の方向(セパレータ31の一端部31aの方向)に案内された後、セパレータ31の内側を通って一端部31aから他端部31b、つまりリザーバ室21cの方向に導かれる。これにより、オイル孔11cから供給される加圧オイルに空気が混入していても、オイルより軽い空気は、ピボット22の方向に向かう際に、その大半がピボット22の排出孔21aからプランジャ21の外に排出される。そのため、加圧オイルとともにセパレータ31の中を通ってリザーバ室21cに空気が流入することを抑制する。
【0034】
また、セパレータ31には防炭処理が施されていることから、浸炭焼入れ焼戻しによるクラックや割れが発生しない。このため、図2に示すように、ラッシュアジャスタ10のピボット22が斜め上方(反重力方向)に向くようにシリンダヘッド60に組み付けられている状態において、プランジャ21内に溜まるオイルが減ってセパレータ31がオイル溜まりとして機能している場合、クラックや割れを介してセパレータ室21bに漏れ出るのを防ぐことが可能となる。
【0035】
バルブ機構40は、プランジャ21のリザーバ室21cに充満した加圧オイルを排出部27から高圧室11bに導入する制御を行う弁装置で、リテーナ41、ボール43およびボールスプリング45により構成されている。
【0036】
リテーナ41は、ボールスプリング45により弁体であるボール43を弁座であるシート27a方向に付勢可能に、ボール43およびボールスプリング45をプランジャ21の他端側に保持している。また、このリテーナ41には、排出部27から導入されたオイルがボール43の周囲を通過してスムースに高圧室11bを満たすように、ボール43の周囲に開口部41aが形成され、またシート27aから離れたボール43を受ける部位にも連通孔41bが形成されている。
【0037】
ボールスプリング45は、圧縮コイルスプリングで、ボール43を排出部27のシート27a方向に付勢するもので、一端側をリテーナ41、他端側をボール43にそれぞれ当接し得るように、ボール43とともにリテーナ41によって保持されている。このボールスプリング45による付勢力(ばね圧)は、所定圧に設定されている。
【0038】
リテーナ41は、一端側が底面12aに当接するプランジャスプリング48の他端側によって、プランジャ21の他端側に押圧されている。これによってリテーナ41と一緒に突出方向に付勢されるプランジャ21は、前述したキー溝21hとピン51により移動が規制される位置までボディ11の開口部11aから突出する。
【0039】
また、リザーバ室21c内のオイル圧が所定圧未満でボール43がシート27aに着座した状態においては、排出部27の連通路21dはボール43により閉塞されるため、プランジャ21の他端側よりも底部12方向には、隔壁26、排出部27、ボール43、底面12a(底部12)、内周壁13および高圧室壁14によって高圧室11bが区画形成される。なお、図1にはこの状態が図示されている。
【0040】
次に、プランジャ21の外周壁28に形成されるキー溝21hの構成を図4に基づいて説明する。図4には、図1に示すキー溝21hの周囲のプランジャ21の部分断面図が図示されている。なお、図4においては図面表現上の便宜から、セパレータ31やボディ11が省略されていることに注意されたい。また適宜、図5も参照する。
【0041】
キー溝21hは、前述したように、ピン挿入孔11eに挿通されたピン51の先端51aが挿入される長溝で、その長さはプランジャ21のストローク長よりも僅かに大きく設定されている。即ち、キー溝21hの一端側21jから他端側21iまでの距離が、プランジャ21の移動可能な範囲のストローク長よりも大きく設定されている。
【0042】
また、キー溝21hは、その深さが一端側21jよりも他端側21iの方が深くなるように溝底21kに勾配が付与されている。即ち、図4(A)に示すように、プランジャ21の中心軸に対して勾配角θで、一端側21jから他端側21iに向かって徐々に深さを増すように形成されている(図中の一点鎖線はプランジャ21の中心軸に平行な線である)。これにより、図4(B)に示すように、キー溝21hに挿入されたピン51の先端51aが、キー溝21hの一端側21jに当接することによって、プランジャ21を係止してその突出方向の移動を規制する位置においては、キー溝21hの深さが一番浅くなる。これに対して、ボディ11の段部15にプランジャ21の隔壁26が当接してプランジャ21の挿入方向の移動が規制される他端側21iの近傍においては、図4(C)に示すように、キー溝21hの深さが一端側21jよりも深くなる。なお、この場合、ピン51の先端51aは、他端側21iには当接することなく両者間には隙間が形成されている。
【0043】
溝底21kの勾配角θは、可能な限り小さい方がよく、例えば、0.1°以上2.0°以下に設定されている。
【0044】
このため、プランジャ21がボディ11から最も突出している状態において(図4(B)、図5(B)参照)、ピン51の先端51aをキー溝21hの溝底21kに当接させ、その位置でピン51を固定することにより、キー溝21hの深さが最も浅い位置で一律にピン51が固定される。したがって、プランジャ21がボディ11の挿入方向に移動しても(図4(C)、図5(A)参照)、キー溝21hの深さが増すことから、この方向においては、ピン51の先端51aが溝底21kに接触することがない。そのため、溝底21kにこのような勾配を付与することなくプランジャ21の中心軸と平行に溝底21kを形成した場合に比べ、ピン51の固定位置を容易かつ高精度に一律に設定することが可能となる。また、ピン51と溝底21kの接触によるプランジャ21の挿入方向への移動の妨げが生じない。
【0045】
なお、キー溝21hに形成する溝底21kの勾配を逆方向に付けてもよい。即ち、キー溝21hの深さが他端側21iよりも一端側21jの方が深くなるように溝底21kに勾配を付与してもよい。この場合、キー溝21hに挿入されたピン51の先端51aがキー溝21hの一端側21jに当接する位置でキー溝21hの深さが一番深くなり、ボディ11の段部15にプランジャ21の隔壁26が当接してプランジャ21の挿入方向の移動が規制される他端側21iに近傍において一端側21jよりもキー溝21hの深さが浅くなる。
【0046】
図2に示すように、このように構成されたラッシュアジャスタ10が水平対向エンジンのシリンダヘッド60に組み付けられると、当該ラッシュアジャスタ10は、ロッカーアーム70の揺動支点として次のように動作する。
【0047】
例えば、プランジャ21のピボット22とロッカーアーム70との間に隙間がある場合には、プランジャスプリング48に付勢されるプランジャ21が突出方向に移動してピボット22がロッカーアーム70との隙間を埋める。つまり、プランジャスプリング48の付勢力によってプランジャ21が移動することにより、基本的には、高圧室11bは負圧に作用するためバルブ機構40が開弁してリザーバ室21cから高圧室11bへ加圧オイルが流れ込む。
【0048】
これに対して、ロッカーアーム70によりピボット22に荷重が加わりプランジャ21が挿入方向に押圧される場合には、プランジャ21の挿入方向への移動とともに高圧室11bを区画形成する隔壁26も移動するため、高圧室11bの容積が減少して高圧室11bを満たすオイル圧が上昇する。これにより、高圧室11bのオイル圧が、リザーバ室21cのオイル圧からボールスプリング45のばね圧を引いた圧力以上になると、バルブ機構40は閉弁し高圧室11bに充満する加圧オイルのオイル圧でプランジャ21の位置を保持してロッカーアーム70の押圧に抗する。
【0049】
シリンダヘッド60とラッシュアジャスタ10には、両者に係合するピン51が存在するため、ピン51を介してラッシュアジャスタ10がシリンダヘッド60に係止されて取付穴61におけるラッシュアジャスタ10の回転が規制される。また、このピン51は、ラッシュアジャスタ10のボディ11とプランジャ21にも係合するため、ピン51を介してプランジャ21がボディ11に係止されてボディ11内におけるプランジャ21の回転が規制される。つまり、ピン51が、シリンダヘッド60、プランジャ21およびボディ11の3つの部材に係合することから、これらの相対回転が規制されて、ラッシュアジャスタ10の回り止めが可能となる。
【0050】
また、図5に示すように、このピン51によるラッシュアジャスタ10の回り止めは、シリンダヘッド60に組み付けられたラッシュアジャスタ10の導入孔21eおよび戻り孔21gが反重力方向で最も上側に位置するように設定されている。なお、図5には、シリンダヘッド60に組み付けられたラッシュアジャスタ10に停留するオイルの液面等を示す説明図が図示されている。図5(A)はプランジャ21の最小突出(最大挿入)時、図5(B)はプランジャ21の最大突出(最小挿入)時を示す。
【0051】
このため、エンジンの運転停止によりラッシュアジャスタ10内(正確にはセパレータ31、リザーバ室21cおよび高圧室11b)にオイルが停留している場合であっても、停留しているオイルの液面α、βよりも、導入孔21eや戻り孔21gが上側(反重力方向)に位置するため、これらの孔21e、21gを介してラッシュアジャスタ10内のオイルが外部に漏れ出ることを防ぐことが可能となる。したがって、高圧室11bのオイル抜けに起因する空気混入によるエンジン始動時における異音の発生を防止することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るラッシュアジャスタ10によると、ラッシュアジャスタ10がシリンダヘッド60の取付穴61に組み付けられる場合、ピン挿入孔11eに挿通されてキー溝21hに先端51aが挿入されているピン51は、その後端51bがシリンダヘッド60の長溝62に収容される。これにより、ラッシュアジャスタ10が円筒形状の取付穴61に組み付けられる場合であっても、シリンダヘッド60とラッシュアジャスタ10の間には、両者に係合するピン51が存在するため、ピン51を介してラッシュアジャスタ10がシリンダヘッド60に係止されて取付穴61におけるラッシュアジャスタ10の回転が規制される。また、ラッシュアジャスタ10の、ボディ11とプランジャ21の間にも、両者に係合するピン51が存在するため、ピン51を介してプランジャ21がボディ11に係止されてボディ11内におけるプランジャ21の回転が規制される。つまり、ピン51が、シリンダヘッド60、プランジャ21およびボディ11に係合することから、これらの相対回転が規制される。このため、シリンダヘッド60内のオイルギャラリ63およびオイル孔11cに連通し得る導入孔21eや、戻り孔21gが、エンジンの運転停止によりセパレータ31またはリザーバ室21cに停留しているオイルの液面α、βよりも重力方向上側に位置するように、ピン挿入孔11eを形成することで、セパレータ31またはリザーバ室21cに停留しているオイルが導入孔21eや戻り孔21gを介して外部に漏れ出ることを防ぐ。したがって、高圧室11bのオイル抜けに起因する空気混入によるエンジン始動時における異音の発生を防止することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るラッシュアジャスタ10では、セパレータ31は、キー溝21hの溝底21kが、ピボット22の突出限度を決める一端側21jからピボット22の方向に延びる他端側21iに向かって徐々に深さを増すように傾斜している。これにより、ピボット22の突出限度におけるプランジャ21の位置、つまりプランジャ21がボディ11から最も突出している状態において、ピン51の先端51aをキー溝21hの溝底21kに当接させた位置でピン51を固定することにより、キー溝21hの最も浅い位置でピン51が固定される。このため、プランジャ21をボディ11に挿入する方向にプランジャ21が移動すると、キー溝21hの深さが増すため、この方向においては、ピン51の先端51aがキー溝21hの溝底21kに接触することはない。したがって、ピン51の固定位置の設定を容易にするとともに、ピン51と溝底21kの接触によるプランジャ21の挿入方向への移動が妨げが生じないようにすることができる。
【0054】
なお、上述した実施形態では、吸気バルブを作動させるロッカーアーム70にラッシュアジャスタ10を適用する例を説明したが、排気バルブを作動させるロッカーアームにラッシュアジャスタ10を適用しても上述と同様の作用および効果を得ることができる。
【0055】
また、上述した実施形態では、水平対向エンジンのシリンダヘッドにラッシュアジャスタ10を組み付ける例を説明したが、レシプロタイプのエンジンであれば、V型エンジンや直列型エンジン等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…ラッシュアジャスタ
11…ボディ
11a…開口部
11b…高圧室
11c…オイル孔(貫通孔)
11e…ピン挿入孔
12…底部
21…プランジャ
21a…排出孔
21b…セパレータ室
21c…リザーバ室
21d…連通路
21e…導入孔
21f…周溝
21g…戻り孔
21h…キー溝
21i…他端側
21j…一端側
21k…溝底
22…ピボット
26…隔壁
27…排出部
28…外周壁
31…セパレータ
31a…一端部
31b…他端部
32…外周壁
40…バルブ機構
48…プランジャスプリング(スプリング)
51…ピン
51a…先端(挿入先端)
51b…後端(突出後端)
60…シリンダヘッド
61…取付穴(円筒穴)
62…長溝
63…オイルギャラリ(オイル流路)
70…ロッカーアーム
図1
図2
図3
図4
図5