(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053405
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】パラレル型冷凍機の制御装置および方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
F25B1/00 397E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-200539(P2012-200539)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-55707(P2014-55707A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】竹本 明広
(72)【発明者】
【氏名】和島 一喜
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泰士
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−169532(JP,A)
【文献】
特開平10−132400(JP,A)
【文献】
特開2011−163736(JP,A)
【文献】
特開2012−141098(JP,A)
【文献】
特開2010−275996(JP,A)
【文献】
特表2012−532305(JP,A)
【文献】
特開2007−183077(JP,A)
【文献】
特開平01−196460(JP,A)
【文献】
特許第5413837(JP,B2)
【文献】
国際公開第2010/130064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1流体を流通させるチューブと、前記チューブの外部において第2流体を流通させるシェルと、前記チューブの長手方向と交差する方向に内部空間を区画する仕切板とを備えた複数のシェルアンドチューブ式の熱交換器、および複数の圧縮機を具備するパラレル型冷凍機に適用される制御装置であって、
区画された前記内部空間を、前記第1流体の入口側である上流側空間と前記第1流体の出口側である下流側空間とする場合に、
前記下流側空間における前記第2流体の圧力値に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度と、前記熱交換器の出口で計測される前記第1流体の温度である出口温度計測値とから、前記下流側空間における終端温度差を算出し、前記上流側空間における前記第2流体の圧力に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度から、算出した前記終端温度差を減算することにより、前記上流側空間の出口近傍における前記第1流体の温度を推定する推定手段を
具備するパラレル型冷凍機の制御装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記出口温度計測値と前記熱交換器の入口で計測される前記第1流体の温度である入口温度計測値との差に対する前記上流側空間の前記第1流体の出入口温度差の割合を前記上流側空間における負荷として算出し、前記出口温度計測値と前記入口温度計測値との差に対する前記下流側空間の前記第1流体の出入口温度差の割合を前記下流側空間における負荷として算出し、
前記上流側空間の負荷と前記下流側空間の負荷とに差がある場合には、前記下流側空間の負荷に応じて決定される補正値で、推定した前記上流側空間の出口近傍における前記第1流体の温度を補正する
請求項1に記載のパラレル型冷凍機の制御装置。
【請求項3】
前記熱交換器が凝縮器と蒸発器である場合に、
前記推定手段は、前記凝縮器の交換熱量から、前記圧縮機への入力動力を除去し、前記蒸発器の交換熱量を推定する請求項1または請求項2に記載のパラレル型冷凍機の制御装置。
【請求項4】
内部に第1流体を流通させるチューブと、前記チューブの外部において第2流体を流通させるシェルと、前記チューブの長手方向と交差する方向に内部空間を区画する仕切板とを備えた複数のシェルアンドチューブ式の熱交換器、および複数の圧縮機を具備するパラレル型冷凍機に適用される制御装置であって、
区画された前記内部空間を、前記第1流体の入口側である上流側空間と前記第1流体の出口側である下流側空間とする場合に、
前記下流側空間における前記第2流体の圧力値に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度と、前記熱交換器の出口で計測される前記第1流体の温度である出口温度計測値とから、前記下流側空間における終端温度差を算出し、前記上流側空間における前記第2流体の圧力に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度から、算出した前記終端温度差を減算することにより、前記上流側空間の出口近傍における前記第1流体の温度を推定するパラレル型冷凍機の制御方法。
【請求項5】
内部に第1流体を流通させるチューブと、前記チューブの外部において第2流体を流通させるシェルと、前記チューブの長手方向と交差する方向に内部空間を区画する仕切板とを備えた複数のシェルアンドチューブ式の熱交換器、および複数の圧縮機を具備するパラレル型冷凍機に適用される制御プログラムであって、
区画された前記内部空間を、前記第1流体の入口側である上流側空間と前記第1流体の出口側である下流側空間とする場合に、
前記下流側空間における前記第2流体の圧力値に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度と、前記熱交換器の出口で計測される前記第1流体の温度である出口温度計測値とから、前記下流側空間における終端温度差を算出し、前記上流側空間における前記第2流体の圧力に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度から、算出した前記終端温度差を減算することにより、前記上流側空間の出口近傍における前記第1流体の温度を推定する推定処理をコンピュータに実行させるためのパラレル型冷凍機の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレル型冷凍機の制御装置および方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、1つの熱交換器に圧縮機を2つ対応付けて冷凍機サイクルを構成するパラレル型冷凍機において、蒸発器と凝縮器とを1パス対向流の配置にし、蒸発器および凝縮器の長手方向の中間点(中央)で冷媒系統を仕切り、蒸発器および凝縮器を低圧側/高圧側に分割し、分割した低圧側/高圧側をそれぞれ圧縮機に接続させることにより、圧縮機の圧縮比を低減させて効率を向上させる技術が用いられている(例えば、下記特許文献1)。このように複数の圧縮機を備えるパラレル型冷凍機は、圧縮機の個数分の冷凍能力を発揮できるので、それぞれの圧縮機の容量制御や、インバータを使用している場合には回転数の制御など、圧縮機を個別に制御することが期待されている。
下記特許文献2には、冷凍能力が変動した場合に、冷凍機の出力熱量に基づく風量を反映した第1パラメータと、蒸発器圧力および凝縮器圧力に基づくヘッドを反映した第2パラメータとに基づいて決定される回転数によって圧縮機を運転するインバータを制御し、ターボ冷凍機を安定的に効率よく運転する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−132400号公報
【特許文献2】特開2005−180267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圧縮機を個別に容量制御する場合には、各圧縮機にかかる負荷や各圧縮機の能力を個別に算出する必要がある。交換熱量は、流通させる冷却水(または冷水)の温度差とその流量との積によって算出できるが、上述のように蒸発器や凝縮器の長手方向の中間点で冷媒系統を仕切っている場合には、中間点に温度計を設けるなどして冷却水温度(または冷水温度)を直接計測するという方法を取ることができない。
従来、このように熱交換器の中間点における温度が計測できないことにより、それぞれの冷凍機にかかる負荷が算出できず、圧縮機の容量制御(例えば、吸込みベーン、圧縮機回転数、HGBP(ホットガスバイパス弁))や、膨張弁制御を圧縮機毎に行うことができなかった。そのため、複数の圧縮機が用いられる場合であっても、いずれの圧縮機かによらず膨張弁開度として同じ開度を与えるような精度の低い圧縮機容量制御をしたり、熱交換器内に取り付けられた冷媒の液位レベルセンサで液位が一定になるように制御する冷媒液位を指標とした膨張弁制御がなされており、パラレル型冷凍機を効率よく制御できないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧縮機の容量制御の効率を向上させるパラレル型冷凍機の制御装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、内部に第1流体を流通させるチューブと、前記チューブの外部において第2流体を流通させるシェルと、前記チューブの長手方向と交差する方向に内部空間を区画する仕切板とを備えた複数のシェルアンドチューブ式の熱交換器、および複数の圧縮機を具備するパラレル型冷凍機に適用される制御装置であって、区画された前記内部空間を、前記第1流体の入口側である上流側空間と前記第1流体の出口側である下流側空間とする場合に、前記下流側空間における前記第2流体の圧力値に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度と、前記熱交換器の出口で計測される前記第1流体の温度である出口温度計測値と
から、
前記下流側空間における終端温度差を
算出し、
前記上流側空間における前記第2流体の圧力に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度から、算出した前記終端温度差を減算することにより、前記上流側空間の出口近傍における前記第1流体の温度を推定する推定手段を具備するパラレル型冷凍機の制御装置を提供する。
【0007】
このような構成によれば、熱交換器の内部空間が、第1流体の入口側である上流側空間と第1流体の出口側である下流側空間とに区画される場合に、第1流体は、熱交換器の入口から流入されると上流側空間で第2流体によって熱交換され、下流側空間で第2流体によって熱交換され、出口から放出される。このとき、下流側空間の第2流体の圧力値に基づいて推定される第2流体の飽和温度と、熱交換器の出口で計測される第1流体の温度である出口温度計測値との終端温度差に基づいて、上流側空間の終端温度差が推定され、この上流側空間の終端温度差および上流側空間における第2流体の飽和温度とに基づいて、上流側空間の出口近傍における第1流体の温度が推定される。
【0008】
これにより、熱交換器の上流側空間と下流側空間との間(つまり、熱交換器の中間点)における第1流体の温度を簡便に推定することができる。また、例えば、シェルアンドチューブ式熱交換器のチューブ部分の汚れによる熱交換器の伝熱性能低下が生じている場合であっても、汚れの影響を勘案して熱交換器の中間点の温度を推定できる。
このように、熱交換器の中間点の温度を推定することにより、上流側空間および下流側空間のそれぞれにおける負荷が算出でき、圧縮機の容量制御、インバータによる個別の回転制御、圧縮機の吸込みベーンとHGBP(ホットガスバイパス弁)との独立制御につながり、性能向上や確実なサージング回避につながる。また、膨張弁制御用のレベルセンサが不要となるので、コスト削減につながる。
【0009】
上記パラレル型冷凍機の制御装置の前記推定手段は、前記推定手段は、
前記出口温度計測値と前記熱交換器の入口で計測される前記第1流体の温度である入口温度計測値との差に対する前記上流側空間の前記第1流体の出入口温度差の割合を前記上流側空間における負荷として算出し、前記出口温度計測値と前記入口温度計測値との差に対する前記下流側空間の前記第1流体の出入口温度差の割合を前記下流側空間における負荷として算出し、
前記上流側空間の負荷と前記下流側空間の負荷とに差がある場合には、前記下流側空間の負荷に応じて決定される補正値で、推定した前記上流側空間の出口近傍における前記第1流体の温度を補正することとしてもよい。
【0010】
能力比率に差がある場合には、上流側空間の終端温度差と下流側空間の終端温度差とが異なるので、補正をすることにより、熱交換器の中間温度をより正確に推定することができる。
【0011】
上記パラレル型冷凍機の制御装置が適用される前記熱交換器が凝縮器と蒸発器である場合に、前記推定手段は、前記凝縮器の交換熱量から、前記圧縮機への入力動力を除去し、前記蒸発器の交換熱量を推定することとしてもよい。
【0012】
凝縮器の交換熱量は、圧縮機の入力動力の情報を含むので、これを減算することにより、蒸発器の冷凍能力を正確に推定することができる。
【0013】
本発明は、内部に第1流体を流通させるチューブと、前記チューブの外部において第2流体を流通させるシェルと、前記チューブの長手方向と交差する方向に内部空間を区画する仕切板とを備えた複数のシェルアンドチューブ式の熱交換器、および複数の圧縮機を具備するパラレル型冷凍機に適用される制御装置であって、区画された前記内部空間を、前記第1流体の入口側である上流側空間と前記第1流体の出口側である下流側空間とする場合に、前記下流側空間における前記第2流体の圧力値に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度と、前記熱交換器の出口で計測される前記第1流体の温度である出口温度計測値と
から、
前記下流側空間における終端温度差を
算出し、
前記上流側空間における前記第2流体の圧力に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度から、算出した前記終端温度差を減算することにより、前記上流側空間の出口近傍における前記第1流体の温度を推定するパラレル型冷凍機の制御方法を提供する。
【0014】
本発明は、内部に第1流体を流通させるチューブと、前記チューブの外部において第2流体を流通させるシェルと、前記チューブの長手方向と交差する方向に内部空間を区画する仕切板とを備えた複数のシェルアンドチューブ式の熱交換器、および複数の圧縮機を具備するパラレル型冷凍機に適用される制御プログラムであって、区画された前記内部空間を、前記第1流体の入口側である上流側空間と前記第1流体の出口側である下流側空間とする場合に、前記下流側空間における前記第2流体の圧力値に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度と、前記熱交換器の出口で計測される前記第1流体の温度である出口温度計測値と
から、
前記下流側空間における終端温度差を
算出し、
前記上流側空間における前記第2流体の圧力に基づいて推定される前記第2流体の飽和温度から、算出した前記終端温度差を減算することにより、前記上流側空間の出口近傍における前記第1流体の温度を推定する推定処理をコンピュータに実行させるためのパラレル型冷凍機の制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、圧縮機の容量制御の精度および効率を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る冷凍機の冷媒回路の概略構成を示した図である。
【
図2】本発明に係る凝縮器の詳細を示した図である。
【
図3】本発明に係る制御装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るパラレル型冷凍機の制御装置および方法並びにプログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1には、本実施形態にかかる制御装置が適用されるパラレル型冷凍機の冷媒回路が示されている。パラレル型冷凍機は、内部に冷却水(第1流体)を流通させるチューブ10,12と、チューブ10,12の外部においてガス冷媒(第2流体)を流通させるシェル5と、チューブの長手方向と交差する方向に内部空間を区画する仕切板6とを備えたシェルアンドチューブ式の凝縮器3、内部に冷水(第1流体)を流通させるチューブ20,21と、チューブ20,21の外部においてガス冷媒(第2流体)を流通させるシェル16と、チューブ20,21の長手方向と交差する方向に内部空間を区画する仕切板17とを備えたシェルアンドチューブ式の蒸発器4、複数の圧縮機1,2、絞り機構27,29、およびHGBP(ホットガスバイパス弁)30,31を備えている。また、本実施形態にかかるパラレル型冷凍機の冷媒回路は、チューブの一端側から他端側に冷却水、或いは、冷水を流通させる1パスの構造とされている。
【0019】
凝縮器3はシェル5の内部を仕切板6により区画することによって形成された下流側空間7及び上流側空間8を備え、冷却水は所定温度(例えば、32℃)で上流側空間8内に配設されたチューブ10から流入され、チューブ10及び下流側空間7内に配設されたチューブ12をこの順に経て所定温度(例えば、40℃)となって流出される。
同様に、蒸発器4はシェル16の内部を仕切板17により区画することによって形成された上流側空間18及び下流側空間19を備え、冷水、ブライン等の被冷却媒体(第1流体)は所定温度(例えば、12℃)で上流側空間18内に配設されたチューブ20から流入され、チューブ20及び下流側空間19内に配設されたチューブ21をこの順に経て所定温度(例えば、6℃)となって流出される。
【0020】
図2には、凝縮器3の詳細が示されている。
図2に示されるように、チューブ10,12の中間点においてチューブ10,12に直交する仕切板6によってシェル5を区画した場合には、冷却水は入口室9から上流側空間8内に配設されたチューブ10内を経て下流側空間7内に配設されたチューブ12内を通り、出口室13から流出される。また、凝縮器3は、上流側空間におけるガス冷媒の圧力を計測する第1圧力計測部PT1と下流側空間におけるガス冷媒の圧力を計測する第2圧力計測部PT2を備えており、それぞれ計測した圧力値の情報は制御装置50(
図3参照)に出力される。凝縮器3は、凝縮器3の入口室9から流入される冷却水の温度を計測する第1温度計測部32、凝縮器3の出口室13から流出される冷却水の温度を計測する第2温度計測部33を備えており、入口で計測した入口温度計測値および出口で計測した出口温度計測値の情報は制御装置50に出力される。なお、蒸発器4も凝縮器3と同様に構成されている。
【0021】
冷凍負荷が大きい場合には、圧縮機1,2が電動機25、26によって駆動される。そうすると、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は、凝縮器3の下流側空間7内に入り、チューブ12内を流過する冷却水に放熱され、凝縮液化される。液化された冷媒(液冷媒)は、絞り機構29で絞られることによって流量が調整されるとともに、断熱膨張して蒸発器4の上流側空間18内に入り、チューブ20内を流過する冷水(被冷却媒体)を冷却することによって蒸発気化して圧縮機1に吸い込まれる。
【0022】
一方、圧縮機2から吐出されたガス冷媒は、凝縮器3の上流側空間8内に入り、チューブ10内を流過する冷却水に放熱され、凝縮液化される。この液冷媒は、絞り機構27で絞られることによって流量が調整されるとともに、断熱膨張して蒸発器4の下流側空間19に入り、チューブ21内を流過する冷水(被冷却媒体)を冷却することによって蒸発気化して圧縮機2に吸い込まれる。
【0023】
上述した冷媒回路を有するパラレル型冷凍機に適用される制御装置50について説明する。
図3に示されるように、制御装置50は、推定部51を備えている。
推定部51は、下流側空間における第2流体の圧力値に基づいて推定される第2流体の飽和温度と、熱交換器の出口で計測される第1流体の温度である出口温度計測値との終端温度差に基づいて、上流側空間における終端温度差を推定し、上流側空間における終端温度差および上流側空間における第2流体の飽和温度とに基づいて、上流側空間の出口近傍における第1流体の温度を推定する。
【0024】
以下に熱交換器が凝縮器3である場合を例に挙げて、具体的な推定方法を説明する。推定部51は、凝縮器3の下流側の終端温度差と、凝縮器3の上流側の終端温度差とが等しいことと仮定し、以下の(1)式に基づいて凝縮器3の中間点における冷却水温度を仮定する(Tcwmid´を中間点における冷却水温度(仮定値)(℃)とする)。ここで、第1温度計測部32において計測される凝縮器3の入口側における冷却水の温度である冷却水入口温度(入口温度計測値)(℃)をTcwinとし、第2温度計測部33において計測される凝縮器3の出口側における冷却水の温度である冷却水出口温度(出口温度計測値)(℃)をTcwoutとし、第1圧力計測部PT1に基づいて推定される上流側空間8のガス冷媒凝縮圧力相当の飽和温度(℃)をTTc1とし、第2圧力計測部PT2に基づいて推定される下流側空間7のガス冷媒凝縮圧力相当の飽和温度(℃)をTTc2とする。
Tcwmid´=TTc1−(TTc2−Tcwout) (1)
【0025】
また、推定部51は、上流側空間と下流側空間とにかかる負荷に応じて、上流側空間の出口近傍における冷却水、或いは冷水(第1流体)の温度を補正する。具体的には、推定部51は、上流側空間8の冷凍能力比率a´を以下(2)式、下流側空間7の冷凍能力比率b´を以下(3)式により算出する。
a´=(Tcwmid´−Tcwin)/(Tcwout−Tcwin) (2)
b´=(Tcwout−Tcwmid´)/(Tcwout−Tcwin) (3)
【0026】
(2)式および(3)式に基づいて、凝縮器3の上流側と下流側との能力比率が50:50である場合には、上流側と下流側とはそれぞれ同じ終端温度差となる。一方、凝縮器3の上流側と下流側との能力比率に差がある場合には、終端温度差が異なるので、本実施形態では、そうした能力比率に差がある場合を考慮し、適宜補正をする(以下(4)式および(5)式参照)。ここで、Tcwmidは、凝縮器3の中間点における補正後の冷却水温度(℃)とし、cは、能力比率の差による補正値(℃)とし、凝縮器3の出入口の冷却水温度差の計画値を6.44とする。
Tcwmid=Tcwmid´+c (4)
c=(b´−0.5)×3×(Tcwout−Tcwin)/6.44 (5)
【0027】
なお、上記(5)式における係数(例えば、「3」)は、冷凍機の仕様や性能に左右されるパラメータであり、これに限定されるものではない。
凝縮器3の上流側の補正後の冷凍能力比率をaとし、凝縮器3の下流側の補正後の冷凍能力比率をbとすると、上流側および下流側の冷凍能力比率は以下(6),(7)式のように補正される。
a=(Tcwmid−Tcwin)/(Tcwout−Tcwin) (6)
b=(Tcwout−Tcwmid)/(Tcwout−Tcwin) (7)
【0028】
図4には、終端温度差と負荷との関係を示す図を一例として挙げている。
図4は、横軸に負荷(%)、縦軸に終端温度差TD(℃)が示されている。
図4に示されるように、終端温度差は負荷に比例し、例では負荷が100%である場合の終端温度差は約1℃となる。
【0029】
さらに、推定部51は、凝縮器3の交換熱量から、圧縮機1,2への入力動力を除去し、蒸発器4の交換熱量を推定することが好ましい。
具体的には、(1)圧縮機1,2に接続される電動機25,26の入力の計測値、或いは、電動機25,26に接続されるインバータから入力される電流値から推定される電動機入力により、ヒートバランスに基づいて蒸発器4の交換熱量を算出する、(2)上流側と下流側の凝縮器3の交換熱量比より、蒸発器4の交換熱量比を算出し、蒸発器4を流過する冷水の中間温度を算出する、などの方法により、電動機排熱分を除去して蒸発器4の交換熱量を正確に算出する。
【0030】
以下に本実施形態に係る制御装置50の作用について、熱交換器が凝縮器3である場合と、蒸発器4である場合について説明する。
熱交換器が凝縮器3である場合には、推定部51は、凝縮器3の第2圧力計測部PT2によって計測された下流側空間7におけるガス冷媒の圧力値に基づいてガス冷媒の飽和温度が推定され(例えば、41℃)、凝縮器3の出口において第2温度計測部33が計測した冷却水の温度である出口温度計測値(例えば、40℃)と上記推定された飽和温度との終端温度差に基づいて、上流側空間8における終端温度差が推定される(例えば、41℃−40℃=1℃)。上流側空間8における第1圧力計測部PT1によって計測された上流側空間8におけるガス冷媒の圧力値に基づいて推定されたガス冷媒の飽和温度(例えば、37℃)と、上記推定された上流側空間8における終端温度差(例えば、1℃)とに基づいて、上流側空間の出口近傍(つまり、凝縮器3の中間点)における冷却水の温度が推定される(例えば、37℃−1℃=36℃)。
【0031】
熱交換器が蒸発器4である場合には、推定部51は、蒸発器4の第2圧力計測部によって計測された下流側空間19におけるガス冷媒の圧力値に基づいてガス冷媒の飽和温度が推定され(例えば、5℃)、蒸発器4の出口において第2温度計測部が計測した冷水の温度である出口温度計測値(例えば、6℃)と上記推定された飽和温度との終端温度差に基づいて、上流側空間18における終端温度差が推定される(例えば、6℃−5℃=1℃)。上流側空間18における第1圧力計測部によって計測された上流側空間8におけるガス冷媒の圧力値に基づいて推定されたガス冷媒の飽和温度(例えば、8℃)と、上記推定された上流側空間18における終端温度差(例えば、1℃)とに基づいて、上流側空間の出口近傍(つまり、蒸発器4の中間点)における冷水の温度が推定される(例えば、8℃+1℃=9℃)。
【0032】
このように推定された熱交換器の中間点における第1流体の温度に基づいて、制御装置50は、圧縮機1,2の容量制御、インバータによる圧縮機個別の回転制御、および圧縮機1,2の吸込みベーンとHGBP(ホットガスバイパス弁)30,31との独立制御を行う。
熱交換器の上流側と下流側に能力比率に差がある場合には、上記(4)式に基づいて第1流体の前記推定された温度を補正する。
【0033】
上述した実施形態に係る制御装置50においては、上記処理の全て或いは一部において別途ソフトウェアを用いて処理する構成としてもよい。この場合、制御装置50は、CPU、RAM等の主記憶装置、および上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラム(例えば、制御プログラム)が記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工、演算処理を実行することにより、上述の制御装置50と同様の処理を実現させる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0034】
以上説明してきたように、本実施形態に係るパラレル型冷凍機の制御装置50および方法並びにプログラムによれば、凝縮器3(または蒸発器4)の内部空間が、冷却水(または冷水)の入口側である上流側空間と冷却水(または冷水)の出口側である下流側空間とに区画される場合に、冷却水(または冷水)は、凝縮器3(または蒸発器4)のチューブ10(または20)から流入されると上流側空間を流通するガス冷媒と熱交換され、下流側空間7(または19)でガス冷媒と熱交換され、チューブ12(または21)から放出される。このとき、下流側空間のガス冷媒の圧力値に基づいて推定されるガス冷媒の飽和温度と、凝縮器3(または蒸発器4)の出口で計測される冷却水(または冷水)の温度である出口温度計測値との終端温度差に基づいて、上流側空間の終端温度差を推定し、この上流側空間の終端温度差および上流側空間におけるガス冷媒の飽和温度とに基づいて、上流側空間の出口近傍における冷却水(または冷水)の温度を推定する。
【0035】
これにより、凝縮器3(または蒸発器4)の上流側空間と下流側空間との間である中間点における冷却水(または冷水)の温度を簡便に推定することができる。また、終端温度差の設計値と下流側の終端温度差の実測値とに基づいて中間点の温度を推算するので、シェルアンドチューブ式熱交換器のチューブ部分の汚れによる熱交換器の伝熱性能低下が生じている場合であっても、汚れの影響を加味して中間点の温度を推定できる。
また、上流側空間および下流側空間のそれぞれの空間において計測される冷媒圧力に基づいて温度を推定することにより、各空間に温度センサを設けて温度を計測する場合と比較して正確な温度を計測することができる。
このように、熱交換器の中間点の温度を推定することにより、上流側空間および下流側空間のそれぞれにおける負荷が算出でき、圧縮機の容量制御、インバータによる個別の回転制御、圧縮機の吸込みベーンとHGBP(ホットガスバイパス弁)30,31との独立制御につながり、性能向上や確実なサージング回避につながる。また、膨張弁制御用のレベルセンサが不要となるので、コスト削減につながる。
【0036】
また、凝縮器3と蒸発器4とを比較すると、凝縮器3の方が高い精度が得られる。これは、凝縮器3の場合には、常に伝熱管(チューブ)が液に浸ることがないが、蒸発器4の場合には、負荷の大小により伝熱管が液に浸かったり浸からなかったりするために熱交換状態が変わり、蒸発器4は終端温度差と負荷との関係が変化する。こうしたことから、凝縮器3は、蒸発器4と比較して高い精度が得られる。
【符号の説明】
【0037】
1、2 圧縮機
3 凝縮器
4 蒸発器
5 シェル
6 仕切板
7 凝縮器の下流側空間
8 凝縮器の上流側空間
10、12 チューブ
16 シェル
17 仕切板
27、29 絞り機構
18 蒸発器の上流側空間
19 蒸発器の下流側空間
20、21 チューブ
50 制御装置
51 推定部