(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水平変位計と前記上下変位計とが相対移動不能となるように、該水平変位計及び該上下変位計を支持する変位計支持治具をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受監視システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された偏心計によると、偏心量の計測・演算に際して回転軸の熱変形分は考慮されておらず、偏心量、即ち回転軸の軸心位置の変化量に回転軸の熱変形分による変化量も算入されてしまう。特に大型のタービンでは、計測・演算した軸心位置の変化量に占める回転軸の熱変形量の度合いが大きくなり、正確な軸心位置の値を得ることは難しい。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、回転軸の軸心位置をより正確に把握可能な軸受監視システム、回転機械、及び軸受の監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る軸受監視システムは、回転軸と、該回転軸の外周面を支持するティルティングパッド軸受と、前記回転軸の外周面の位置を水平方向から検出する水平変位計と、前記回転軸の外周面の位置を上下方向から検出する上下変位計と、前記水平変位計からの入力を前記回転軸の熱膨張量とみなし、
運転時である前記回転軸への入熱がある状態での前記水平変位計で検出して得た前記回転軸の外周面の位置と停止時である前記回転軸への入熱がない状態での前記回転軸の外周面の位置との前記回転軸の外周面の位置の変化量と、前記運転時での前記上下変位計で検出して得た前記回転軸の外周面の位置と前記停止時での前記回転軸の外周面の位置との前記回転軸の外周面の位置の変化量と、の差分により前記回転軸の前記上下方向の移動量を演算する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような軸受監視システムによると、水平変位計の入力を熱膨張量とみなし、この熱膨張量を上下変位計の入力から減じることで、熱膨張量を考慮した回転軸の上下方向の移動量を制御装置で演算することができる。即ち、ティルティングパッド軸受に支持された状態で回転軸が上下に移動するとともにこの回転軸に熱膨張が生じる場合に、回転軸の上下方向の移動量をより正確に把握することができる。ここで、回転軸が上下方向に移動した際には、この上下方向の移動にともなって水平方向変位が生じるが、この変位量は微小であるため、水平変位計の入力を回転軸の熱膨張量とみなすことができる。そして、この熱膨張量を用いて回転軸の平均温度を演算し、この平均温度から回転軸に対する入熱量を演算することで、設計の最適化を図ることも可能となる。
【0009】
また、
本発明に係る軸受監視システムは、回転軸と、該回転軸の外周面を支持するティルティングパッド軸受と、前記回転軸の外周面の位置を水平方向から検出する水平変位計と、前記回転軸の外周面の位置を前記回転軸の前記外周面における前記回転軸の頂部から前記回転軸の軸線回りに±45°の位置から検出する上下変位計と、前記水平変位計からの入力を前記回転軸の熱膨張量とみなし、運転時である前記回転軸への入熱がある状態での前記水平変位計で検出して得た前記回転軸の外周面の位置と停止時である前記回転軸への入熱がない状態での前記回転軸の外周面の位置との前記回転軸の外周面の位置の変化量と、前記運転時での前記上下変位計で検出して得た前記回転軸の外周面の位置と前記停止時での前記回転軸の外周面の位置との前記回転軸の外周面の位置の変化量と、の差分により前記回転軸の上下方向の移動量を演算する制御装置と、を備え、前記上下変位計は、前記回転軸を支持する前記ティルティングパッド軸受の軸を通り鉛直方向に延びる鉛直ラインを挟んで前記軸の周方向の一方側に向かって45°傾斜するとともに前記軸を通る第一傾斜ライン上と、前記鉛直ラインを挟んで前記軸の周方向の他方側に向かって45°傾斜するとともに前記軸を通る第二傾斜ライン上とにそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0010】
上下変位計と水平変位計とによって回転軸の軸心の位置を正確に把握することができる。ここで上述した45°の二箇所の外周面の位置を検出するように変位計が設けられていることが一般的となっている。従って、上下変位計を新たに設置することなく、既設の上記変位計をそのまま上下変位計として使用し、水平変位計を追加するのみによって回転軸の軸心の位置を正確に把握することができる。よってコストダウン等も可能である。
【0011】
さらに、本発明に係る軸受監視システムは、前記水平変位計と前記上下変位計とが相対移動不能となるように、該水平変位計及び該上下変位計を支持する変位計支持治具をさらに備えていてもよい。
【0012】
このような変位計支持治具を用いることによって、ティルティングパッド軸受に上下変位計、水平変位計を新たに設置するための加工を行うことなく、変位計支持治具のみに加工を行うことで、これら上下変位計、水平変位計の追加設置を容易に行うことができる。さらに、これら上下変位計と水平変位計との間の相対位置関係について位置合わせが容易となるため、所望の位置から確実に外周面の検出を行うことができ、回転軸の軸心位置をさらに正確に把握できる。
【0013】
また、前記制御装置は、前記水平変位計及び前記上下変位計からの入力値より、前記回転軸の軸心移動成分と前記回転軸の振動成分とを分離抽出する抽出部と、前記軸心移動成分から前記回転軸の前記上下方向の移動量を演算する第一演算部と、該第一演算部で演算された前記移動量が、所定の第一閾値と比較して該第一閾値より大きくなる場合に異常状態であると判断する第一判断部と、前記振動成分から前記回転軸の振動値を演算する第二演算部と、前記第二演算部で演算された前記振動値が、所定の第二閾値と比較して該第二閾値より大きくなる場合に異常状態であると判断する第二判断部とを有していてもよい。
【0014】
このような制御装置によると、まず、回転軸の振れ回りの二成分である軸心移動成分(直流成分)と振動成分(交流成分)とを抽出部によって分離できる。従って、軸心移動成分を抽出して第一演算部で演算することで、より正確に回転軸の上下方向の移動量を把握でき、また、振動成分から第二演算部によって回転軸の振動値も演算できる。さらに、軸心移動成分から演算した回転軸の上下方向の移動量を第一演算部で第一閾値と比較し、振動成分から演算した振動値を第二演算部で第二閾値と比較して、第一判断部で回転軸の上下方向の移動量について、第二判断部で振動値について、異常状態であるか否かの判断を行うことができる。従って、異常状態である場合には回転軸の回転を停止させ、また異常状態でない場合(正常状態である場合)には回転軸の回転を維持することができ、安全性、健全性の確保が可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係る回転機械は、上記の軸受監視システムを備えることを特徴とする。
【0016】
このような回転機械によると、軸受監視システムを備えることで、水平変位計の入力を熱膨張量とみなし、この熱膨張量を上下変位計の入力から減じることで、熱膨張量を考慮した回転軸の上下方向の移動量を制御装置で演算することができ、よって回転軸の上下方向の移動量をより正確に把握することができる。
【0017】
また、本発明に係る軸受の監視方法は、回転軸の外周面の位置を水平方向から検出する水平位置検出工程と、前記外周面の位置を上下方向から検出する上下位置検出工程と、前記水平位置検出工程で検出した値を熱膨張量とみなし、
運転時である前記回転軸への入熱がある状態での前記水平位置検出工程で検出して得た前記回転軸の外周面の位置と停止時である前記回転軸への入熱がない状態での前記回転軸の外周面の位置との前記回転軸の外周面の位置の変化量と、前記運転時での前記上下位置検出工程で検出して得た前記回転軸の外周面の位置と前記停止時での前記回転軸の外周面の位置との前記回転軸の外周面の位置の変化量と、の差分から前記回転軸の前記上下方向の移動量を演算する移動量演算工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
このような軸受の監視方法によると、水平位置検出工程で得た検出値を熱膨張量とみなすことで、上下位置検出工程での検出値からこの熱膨張量を減じて移動量演算工程で回転軸の上下方向の移動量を演算することが可能となり、この移動量を正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の軸受監視システム、回転機械、及び軸受の監視方法によると、熱膨張量を考慮した回転軸の上下方向の移動量を演算することで、軸心位置の計測精度を向上することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態に係る回転機械1について説明する。
回転機械1は、蒸気やガス等の流体を羽根車に接触させて流体エネルギーを回転エネルギーに変換することで動力を得る原動機である。ここで、本実施形態における回転機械1は、蒸気タービンであるとして説明を行うが、例えばガスタービンや原子力タービン等であってもよい。
【0022】
図1に示すように、この回転機械1は、軸P1回りに回転する回転軸2と、回転軸2を径方向から回転可能に支持するティルティングパッド軸受3と、回転軸2の監視を行う監視部4と備えている。そして、これら回転軸2、ティルティングパッド軸受3、監視部4とによって軸受監視システムが構成されている。
【0023】
回転軸2は、軸P1方向に延在し、ティルティングパッド軸受3によって回転可能に外周面2aで支持されている。また回転軸2の外周側には、回転軸2とともに回転し、複数の羽根車を有するタービン本体5が取り付けられている。タービン本体5は、詳細は図示しないが、流体が流入して羽根車に当たることで動力を発生させる動力発生部となっている。
またタービン本体5の概略構成としては、例えば回転軸2に突設された複数の動翼(羽根車)と、複数の動翼を収容するケーシングと、ケーシングの内周面に突設された静翼と、を備えている。上記複数の動翼は、回転軸2を中心にして放射状に配設されており、またこれら複数の動翼と上記複数の静翼とは軸方向に交互に配設されている。
【0024】
図2に示すように、ティルティングパッド軸受3は、回転軸2を外周面2aで径方向から支持する軸P2を中心として設けられたラジアル軸受であり、本実施形態では、回転軸2の外周面2aに対向するように設けられた複数の軸受パッド7と、軸受パッド7を径方向外側から支持する軸受ケーシング8とを有している。
【0025】
複数の軸受パッド7は、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。そして本実施形態では、ティルティングパッド軸受3の軸P2を通り水平方向に延びる水平ラインL1よりも下側の下半部(
図2の紙面下側)に配された二つ、水平ラインL1よりも上側の上半部(
図2の紙面上側)に配された二つの、合計四つが設けられて回転軸2を支持している。また各々の軸受パッド7は、径方向外側を向く面から一部が外側に突出して形成されたピボット7aを有し、このピボット7aが軸受ケーシング8の径方向内側を向く面に接触して、軸受ケーシング8によって軸受パッド7が支持されている。
【0026】
軸受ケーシング8は、環状をなし、上記軸受パッド7を径方向外側から覆うとともに、軸受パッド7がピボット7aを中心に径方向に揺動可能となるように支持している。
【0027】
次に、監視部4について監視方法を交えて説明する。
監視部4は、ティルティングパッド軸受3によって支持される回転軸2の挙動を監視して、回転軸2の外周面2aの位置の検出、回転軸2の軸心位置の演算を行う。
そして、この監視部4は、回転軸2の外周面2aの外側に設けられて、回転軸2の外周面2aの位置を検出する水平変位計9及び上下変位計10と、これら水平変位計9及び上下変位計10から入力された検出値より、回転軸2の軸心位置を演算する制御装置12とを有している。
ここで、水平変位計9及び上下変位計10は、回転機械1の停止時(回転軸2への入熱がない状態)での回転軸2の外周面2aの位置を検出するように検出位置を固定して設置されたものである。即ち、回転機械1が停止時から運転時(回転軸2への入熱がある状態)へ移行して回転軸2に挙動が生じた際に、回転軸2とともに検出位置が移動するものではない。
【0028】
上下変位計10は、ティルティングパッド軸受3の軸P2を通り鉛直方向に延びる鉛直ラインL2上に配置され、鉛直ラインL2と回転軸2の外周面2aとの交点Aの近傍について、この外周面2aの位置を検出する(上下位置検出工程)。この上下変位計10には、渦電流式の変位センサが用いられる。
【0029】
この渦電流式の変位センサは、センサヘッド内のコイルに高周波電流を流して高周波磁界を発生させ、さらにこの高周波磁界によって測定対象物(金属)の表面に電磁誘導による渦電流を発生させる。この渦電流によって生じる上記コイルのインピーダンス変化を検出して、測定対象物の表面までの距離を計測することでこの測定対象物の表面の位置情報を得ることができる。
なお、上下変位計10は、例えば超音波式、レーザー式等の非接触式変位センサや、差動トランス式等の接触式変位センサであってもよい。
【0030】
水平変位計9は、回転軸2の外周面2aの外側であって、水平ラインL1上に配置され、水平ラインL1と回転軸2の外周面2aとの交点Bの近傍について、この外周面2aの位置を検出する(水平位置検出工程)。またこの水平変位計9は、上下変位計10同様に、例えば渦電流式、超音波式、レーザー式等の非接触式変位センサや、差動トランス式等の接触式変位センサである。
【0031】
制御装置12は、回転機械1の運転時(回転軸2への入熱がある状態)において、上下変位計10で検出して得た回転軸2の外周面2aの位置情報を入力し、予め取得しておいた回転機械1の停止時(回転軸2への入熱がない状態)での外周面2aの位置と比較することで、停止時から運転時までの外周面2aの位置の変化量ΔH
Aを演算する(
図3を参照)。
【0032】
また、この制御装置12は、回転機械1の運転時において、水平変位計9で検出して得た回転軸2の外周面2aの位置情報を入力し、予め取得しておいた回転機械1の停止時での外周面2aの位置と比較することで、停止時から運転時までの外周面2aの位置の変化量ΔH
Bを演算する(
図3を参照)。
【0033】
ここで、
図4に示すように、回転軸2が上下方向に移動した際には、この上下方向の移動にともなって外周面2aの水平方向への変位が生じる。この水平方向変位量e
hは、回転軸2の外周面2aの上下方向変位量e
vとし、回転軸2の半径rとすると、外周面2aの水平方向変位量e
hは以下の式(1)によって演算される。
e
h=r[1−{1−(e
v/r)
2}
1/2]・・・(1)
通常、回転軸2の半径rは、上下方向変位量e
vに比べて十分大きな値であるため、上下方向変位量e
vに対して水平方向変位量e
hは微小となり、水平変位計9からの入力によって得た停止時から運転時までの外周面2a位置の変化量を回転軸2の熱膨張量とみなす。
【0034】
このようにして、制御装置12は、上下変位計10の変化量ΔH
Aと水平変位計9の変化量ΔH
Bとから、以下の式(2)によって、回転軸2の軸心位置の上下方向の移動量Eを演算する(移動量演算工程)。
E=ΔH
A−ΔH
B・・・(2)
【0035】
このような回転機械1においては、水平変位計9によって、水平方向から回転軸2の外周面2aの位置を検出するとともに、上下変位計10で外周面2aの位置を検出することで、水平変位計9の入力を熱膨張量とみなす。そしてこの熱膨張量を上下変位計10の入力から減じることで、熱膨張量を考慮した回転軸2の上下方向の移動量Eを制御装置12で演算することができる。
【0036】
より詳細には、上下変位計10の変化量ΔH
Aは、回転軸2の熱膨張量と回転軸2の上下方向の移動量Eの両方を含んだものとなっているため、この変化量ΔH
Aのみから回転軸2の上下方向の移動量Eを正確に把握することができない。しかし本実施形態では、水平変位計9の変化量ΔH
Bによって変化量ΔH
Aから熱膨張量分を除くことができるため、回転軸2の上下方向の正確な移動量Eを演算することができる。
【0037】
さらに、水平変位計9によって得た熱膨張量を用いることで、回転軸2の平均温度の演算が可能である。そしてこの平均温度からは、回転機械1の運転時の回転軸2への入熱量を演算することが可能であり、回転機械1の設計最適化を図ることも可能となる。
【0038】
本実施形態の回転機械1によると、水平変位計9と上下変位計10を併設することで、熱膨張量を考慮した回転軸2の上下方向の移動量を演算することが可能となるため、回転軸2の軸心位置を正確に把握することが可能である。
【0039】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係る回転機械21について説明する。
なお、第一実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、上下変位計25の配置位置が第一実施形態と異なっている。
【0040】
図5に示すように、上下変位計25は、ティルティングパッド軸受3の上半部で、鉛直ラインL2を挟んで軸P2の周方向の一方側(
図5の紙面に向かって右側)に向かって45°傾斜するとともに軸P2を通る第一傾斜ラインL3上と、鉛直ラインL2を挟んで軸P2の周方向の他方側(
図5の紙面に向かって左側)に向かって45°傾斜するとともに軸P2を通る第一傾斜ラインL4上とに一つずつ配置されている。そして、第一傾斜ラインL3と回転軸2の外周面2aとの交点Cの近傍について、また、第二傾斜ラインL4と外周面2aとの交点Dの近傍について、外周面2aの位置を検出する。
【0041】
このような回転機械21によると、上下変位計25と水平変位計9とによって、第一実施形態と同様に、回転軸2の軸心の位置を正確に把握することができる。
ここで上述した45°の二箇所の外周面2aの位置を検出するように変位計が設けられていることは一般的となっている。従って、上下変位計25を新たに設置することなく、既設の変位計をそのまま上下変位計25として使用し、水平変位計9を追加するのみによって回転軸2の軸心の位置を正確に把握することができる。よって設置の手間を省き、コストダウン等も可能である。
【0042】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態に係る回転機械31について説明する。
なお、第一実施形態及び第二実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、回転機械31が、第一実施形態の回転機械1を基本構成として変位計支持治具33をさらに備えている点で第一実施形態と異なっている。
【0043】
図6に示すように、変位計支持治具33は、ティルティングパッド軸受3の外周側で、上下変位計10と水平変位計9との間を接続して、これら上下変位計10と水平変位計9同士を相対移動不能に支持している。またこの変位計支持治具33は、例えば軸受ケーシング8等の回転機械1における静止部分に固定されている。
【0044】
このような回転機械31によると、変位計支持治具33を用いたことで、ティルティングパッド軸受3に上下変位計10、水平変位計9を新たに設置するための加工を行うことなく、変位計支持治具33のみに加工を行うことで、これら上下変位計10、水平変位計9の追加設置を容易に行うことができる。
【0045】
さらに、変位計支持治具33によって、これら上下変位計10と水平変位計9との間の相対位置関係について位置合わせが容易に可能となるため、所望の位置から確実に回転軸2の外周面2aの検出を行うことができ、軸心位置をより正確に把握できる。
【0046】
なお、本実施形態の変位計支持治具33は、第二実施形態の回転機械21にも使用可能である。
【0047】
〔第四実施形態〕
次に、本発明の第四実施形態に係る回転機械41について説明する。
なお、第一実施形態から第三実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、第一実施形態の回転機械1を基本構成として、制御装置43が第一実施形態とは異なっている。
【0048】
図7及び
図8に示すように、制御装置43は、水平変位計9及び上下変位計10からのデータを入力する抽出部45と、互いに並列に設けられて、抽出部45からのデータを入力する第一演算部46及び第二演算部47と、第一演算部46からのデータを入力する第一判断部48と、第二演算部47からのデータを入力する第二判断部49とを有している。
【0049】
抽出部45は、水平変位計9及び上下変位計10における検出値のデータを取得し(S1)、回転機械41の運転時における回転軸2の振れ回りの二つの成分、即ち、回転軸2の軸心を上下方向に移動させる軸心移動成分(直流成分)と、振動を生じさせる振動成分(交流成分)とをフーリエ級数展開等によって分離抽出する(S2)。
【0050】
第一演算部46は、抽出部45での分離抽出された軸心移動成分から、回転軸2の上下方向の移動量を演算する(S31)。より詳細にはこの第一演算部46では、上下変位計10及び水平変位計9からの検出値のうち、軸心移動成分を用いて、第一実施形態の制御装置12で説明したように、回転機械41の停止時から運転時までの外周面2aの位置の変化量ΔH
A(上下変位計10による変化量)及び変化量ΔH
B(水平変位計9による変化量)を演算し、回転軸2の上下方向の移動量を演算する。
【0051】
第一判断部48は、予め取得した回転軸2の上下方向の移動量の上限値となる第一閾値を記憶しているとともに、第一演算部46から入力された回転軸2の上下方向の移動量のデータを第一閾値と比較し(S32)、回転軸2の上下方向の移動量が第一閾値よりも大きくなる場合に、回転機械41が異常状態にあると判断する(S33)。一方で、回転軸2の上下方向の移動量が第一閾値以下となる場合には回転機械41が正常状態にあると判断する(S34)。
【0052】
第二演算部47は、抽出部45での分離抽出された振動成分から、回転軸2の振動値を演算する(S41)。
【0053】
第二判断部49は、予め取得した回転軸2の振動値の上限値となる第二閾値を記憶しているとともに、第二演算部47から入力された振動値のデータを第二閾値と比較し(S42)、振動値が第二閾値よりも大きくなる場合に、回転機械41が異常状態にあると判断する(S43)。一方で、振動値が第二閾値以下となる場合には回転機械41が正常状態にあると判断する(S44)。
【0054】
このような回転機械41によると、まず、回転軸2の振れ回りの成分である軸心移動成分と振動成分とを抽出部45によって分離できる。従って、軸心移動成分を抽出することで、より正確に回転軸2の上下方向の移動量を計測できることとなる。
【0055】
そして、これら軸心移動成分から第一演算部46で演算された回転軸2の上下方向の移動量を第一判断部48で第一閾値と比較し、またこれと並行して振動成分から第二演算部47で演算された回転軸2の振動値を第二判断部49で第二閾値と比較する。よって、回転軸2の軸心の上下方向の移動、回転軸2の振動の両者について、回転機械41が異常状態であるか否かの判断を行うことができる。
【0056】
またこのような第一判断部48及び第二判断部49で異常状態と判断された場合には、回転機械41の運転を停止させ、また正常状態である場合には回転機械41の運転を維持することができる。
【0057】
ここで例えば、第一閾値を回転軸2が軸受パッド7に接触する程度の移動量に設定しておけば、第一閾値を回転軸2の上下方向の移動量が上回った場合に、回転機械41の運転を停止させることができる。また同様に、第二閾値を回転軸2が軸受パッド7に接触する程度の振動値に設定しておけば、第二閾値を振動値が上回った場合に、回転機械41の運転を停止させることができる。従って、安全性、健全性の確保が可能となる。
【0058】
なお、このような
図8に示す処理は、繰り返し連続的に実行してもよいし、間欠的に実行してもよい。
さらに、第二実施形態及び第三実施形態の回転機械21、31に本実施形態の制御装置43を適用してもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、水平変位計9は、水平ラインL1上でなくとも、この水平ラインL1に平行なライン上に配置されていてもよく、即ち検出する外周面2aの位置は交点Aの近傍ではなく、この交点Aから周方向にズレた外周面2a上の点の近傍であってもよい。つまり水平変位計9は、少なくとも外周面2a上の点を水平方向から検出可能であればよい。
【0060】
同様に、上下変位計10の配置位置も鉛直ラインL2上でなくともよく、即ち検出する位置は交点Bの近傍ではなく、この交点Bから周方向にズレた外周面2a上の点近傍であってもよい。つまり上下変位計10は、少なくとも外周面2a上の点を水平方向から検出可能であればよい。
同様に、第二実施形態の上下変位計25の配置位置も鉛直ラインL2、第一傾斜ラインL3、第二傾斜ラインL4上でなくともよく、少なくとも外周面2a上の点を上下方向から検出可能であればよい。
【0061】
さらに、上下変位計10、25及び水平変位計9の設置数量は上述の実施形態の場合に限定されず、設置数量をさらに増やしてもよい。この場合、冗長性を確保でき、検出データの信頼性を向上することができる。