特許第6053451号(P6053451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053451
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】人工呼吸器
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20161219BHJP
   A61M 16/20 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   A61M16/00 328A
   A61M16/00 305A
   A61M16/00 311
   A61M16/20 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-236754(P2012-236754)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-83373(P2014-83373A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022541
【氏名又は名称】アトムメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】松原 一雄
(72)【発明者】
【氏名】松原 照巳
(72)【発明者】
【氏名】大友 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】田邉 佳史
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/108826(WO,A1)
【文献】 米国特許第04502481(US,A)
【文献】 特開2009−150453(JP,A)
【文献】 特表平03−504091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸用ガスを吸気側回路から患者インターフェースを介して患者に供給しつつ呼気側回路から排出するとともに、呼気終末に陽圧をかけて換気するCPAP装置本体と、前記吸気側回路内が最大吸気圧を超えると圧力開放する安全弁と、前記呼気側回路における患者の呼気の流通を遮断可能なシャットオフ弁とを備え
前記シャットオフ弁を前記呼気側回路の終端部又は前記呼気側回路における呼気側チューブと前記患者インターフェースとの間のいずれかに付け替え可能に設けたことを特徴とする人工呼吸器。
【請求項2】
前記シャットオフ弁の弁箱に、押圧操作により弁体を閉じる方向にスライド可能なキャップがスライド方向に沿う軸心回りに回転可能に設けられるとともに、前記弁箱と前記キャップとの間に、前記キャップのスライドを案内するガイド部と、該ガイド部の始端部から周方向に沿って形成され前記キャップに当接してスライドを拘束するロック部と、前記キャップを前記ガイド部に沿って前記弁体を開く方向に付勢する付勢手段とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の人工呼吸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸困難あるいは呼吸不全の患者用として用いられる人工呼吸器に関し、特に、自発的に呼吸をおこなっている新生児などの患者に適した人工呼吸器に関する。
【背景技術】
【0002】
新生児期はさまざまな疾患により呼吸困難や呼吸不全が起こりやすく、このような患者には人工呼吸器により治療を施すことが有効になっている。その際、新生児には定常流型の従圧式人工呼吸器を用いることが主流になっており、この人工呼吸器では従圧式により強制換気がなされるため、肺に過剰な圧がかからず新生児にも安全であることが知られている。
この場合、特に自発呼吸する新生児に対しては、人工呼吸させるために肺の容量を確保し、小さい一回換気量で換気するようにし、一方、肺胞の過進展による肺の損傷を避けながら肺の補助換気をおこなうことが重要である。そのために一般的には、持続気道陽圧(CPAP:continuous positive airway pressure)と呼ばれる方式の補助換気が広く利用されている。このCPAPは、呼気終末に陽圧をかけ、肺胞の虚脱を防ぎ、吸気時にすべての肺胞が拡がるようにする補助換気法である。
【0003】
このような呼吸障害を治療するためのCPAP装置としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されたCPAP装置が提案されている。特許文献1のCPAP装置は、吸気から呼気への遷移の検出時にブロワモータを惰性で動くことを可能にして、睡眠呼吸障害の治療時の空気の波形を快適な状態にしようとしている。特許文献2の空気供給システムでは、空気の湿度或いは温度を調整して供給空気に湿気を含ませている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−36699号公報
【特許文献2】特開平8−38603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2のCPAP装置では、人工呼吸により自発呼吸を補助することはできるが呼吸が停止したときに対応できず、このような緊急時には装置を一旦取り外したのちに医師の手技による人工呼吸や蘇生器などの別の装置を用いて蘇生を試みる必要がある。
【0006】
このような蘇生処置が必要な場合の人工呼吸手段として用いられる蘇生器(レサシテーター)は、通常患者の呼吸が停止したときなどに緊急蘇生用として患者に装着されるが、無呼吸時での使用を想定しており、CPAP装置のような自発呼吸を補助する人工呼吸機能を有していない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、自発呼吸を伴う患者に対してCPAPにより人工呼吸を施しつつ、無呼吸で蘇生が必要なときには蘇生装置として機能を発揮できる人工呼吸器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人工呼吸器は、呼吸用ガスを吸気側回路から患者インターフェースを介して患者に供給しつつ呼気側回路から排出するとともに、呼気終末に陽圧をかけて換気するCPAP装置本体と、前記吸気側回路内が最大吸気圧を超えると圧力開放する安全弁と、前記呼気側回路における患者の呼気の流通を遮断可能なシャットオフ弁とを備え、前記シャットオフ弁を前記呼気側回路の終端部又は前記呼気側回路における呼気側チューブと前記患者インターフェースとの間のいずれかに付け替え可能に設けたことを特徴とする。
【0009】
この人工呼吸器では、通常時には自発呼吸で呼吸する患者を従圧式でCPAP方式の補助換気によって人工呼吸させる。その際、呼気終末の陽圧により人工呼吸回路内の圧を設定した状態で、肺の損傷を防ぎつつ呼気、吸気のそれぞれの肺機能を高めながら患者の自発呼吸が可能となる。このCPAPによる人工呼吸の際に患者が無呼吸になった場合には、呼気側回路のシャットオフ弁を閉じることにより、患者の呼気側回路を遮断して、患者に強制的に呼吸用ガスを送ることができる。シャットオフ弁を開ければ、患者への圧力は開放する。シャットオフ弁の操作により、強制的な呼吸用ガスの供給とその開放とを繰り返しながら、必要な蘇生処置を行うことが可能になる。このため、患者から人工呼吸回路を外すことなく処置を施すことができる。
また、安全弁が設けられていることにより、予め設定した最大吸気圧(PIP:peak inspiratory pressure)を超える圧力をかけてしまうことはなく、肺の過膨張を防止して安全である。
【0010】
さらに、前記シャットオフ弁を前記呼気側回路の終端部又は前記呼気側回路における呼気側チューブと前記患者インターフェースとの間のいずれかに付け替え可能に設けたことにより、患者の状態などに応じて、シャットオフ弁の取り付け位置を呼気側回路の終端部又は患者インターフェースのいずれかに選択することができる。例えば、保育器内に患者である新生児が寝ている場合など、患者の口元付近での操作が難しい場合には、呼気側回路の終端部にシャットオフ弁を設け、患者から離れた位置でシャットオフ弁を操作して無呼吸状態に対処でき、新生児等の口元近くでシャットオフ弁の操作が可能な場合には、患者インターフェースにシャットオフ弁を設けることで患者の容態を確認しながら蘇生手技することが可能になる。
【0011】
本発明の人工呼吸器において、前記シャットオフ弁の弁箱に、押圧操作により弁体を閉じる方向にスライド可能なキャップがスライド方向に沿う軸心回りに回転可能に設けられるとともに、前記弁箱と前記キャップとの間に、前記キャップのスライドを案内するガイド部と、該ガイド部の始端部から周方向に沿って形成され前記キャップに当接してスライドを拘束するロック部と、前記キャップを前記ガイド部に沿って前記弁体を開く方向に付勢する付勢手段とが設けられているとよい。
【0012】
シャットオフ弁を閉じるときには、キャップをロック部から外してガイド部まで回した後に押圧操作する必要があり、キャップを誤って押し込むおそれがない。そのため、蘇生処置が必要な場合にはキャップの操作によって呼気側回路を開閉することができるとともに、通常時には誤操作等によりシャットオフ弁が閉じることを防ぐことができる。また、復帰手段が設けられていることから、キャップが自然に回転することがないため、安心である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の人工呼吸器によれば、自発呼吸を伴う患者に対してCPAPにより人工呼吸を施すことで呼吸困難や呼吸不全の新生児などの患者に対しても肺に過剰な圧をかけることなく安全に使用することができ、患者が無呼吸になって緊急に蘇生が必要になった場合にも、呼吸回路を外すことなく、シャットオフ弁を操作して呼気側を適宜遮断することで蘇生機能を発揮することができる。このため、CPAPの補助換気により呼吸障害の治療を図りながら突然の呼吸の停止にも迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る人工呼吸器の一実施形態を示す外観図である。
図2図1の人工呼吸器の回路図である。
図3図1の人口呼吸器に用いられるシャットオフ弁の一例を示した斜視図である。
図4】シャットオフ弁の正面図である。
図5】シャットオフ弁の開いた状態の縦断面図である。
図6図4のA−A線に沿う横断面図である。
図7】シャットオフ弁を閉じた状態を示す縦断面図である。
図8】CPAP装置本体により補助される呼吸動作の時間と圧力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る人工呼吸器の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1図2に示すように、本実施形態の人工呼吸器1は、CPAP装置本体2を有しており、このCPAP装置本体2には、吸気側回路3、呼気側回路4を介して患者インターフェース5が接続され、所定量の酸素と空気との混合ガスからなる呼吸用ガスを、吸気側回路3から患者インターフェース5を介して患者に供給しつつ呼気側回路4から排出するとともに、呼気終末に陽圧(PEEP:positive end−expiratory pressure)をかけて換気するようになっている。CPAP装置本体2には、呼吸用ガスとなる酸素及び空気が外部より供給される二つのインレット部6A,6B、呼吸用ガスが排出される排気ポート7がそれぞれ設けられ、インレット部6A,6Bから患者インターフェース5までが吸気側回路3、患者インターフェース5から排気ポート7までが呼気側回路4となる。
【0016】
患者インターフェース5は、例えばネーザルプロング、気管挿管チューブ、鼻マスクであり、この患者インターフェース5の内部は、吸気側回路3からの吸気を患者に供給可能であるとともに、この患者からの呼気を呼気側回路4に送ることが可能な構造になっている。患者インターフェース5の吸気側は、吸気側チューブ10によりCPAP装置本体2のアウトレット部11に接続され、患者インターフェース5の呼気側は、呼気側チューブ12によりCPAP装置本体2の呼気接続口13に接続されている。
CPAP装置本体2のアウトレット部11には、供給される呼吸用ガスを適度の温度、湿度に維持するための加温加湿器14が設けられており、吸気側チューブ10は、この加温加湿器14を介してCPAP装置本体2に接続されている。
【0017】
CPAP装置本体2内の吸気側回路3には、その上流側から(インレット部6A,6Bから)順に、供給される空気と酸素とを混合するブレンダ20、メインスイッチ21の操作により吸気側回路3のON/OFFを切り替えるトグルスイッチ22、ブリード23、流量計24、安全弁25、サージタンク26が設けられている。メインスイッチ21及び安全弁25の操作部27はCPAP装置本体の筐体28表面から外部に露出している。
一方、CPAP装置本体2内の呼気側回路4には、上流側からPEEP調整弁30、ブリード31が設けられ、呼気側回路4の終端部がCPAP装置本体2の筐体28表面に形成した排気ポート7に接続されている。PEEP調整弁30の操作部33はCPAP装置本体2の筐体28表面から外部に露出しており、また、排気ポート7はCPAP装置本体2の筐体28表面に筒状に突出形成されている。
【0018】
吸気側回路3に設けられる安全弁25は、例えばリリーフ弁からなり、吸気側回路3内が最大吸気圧(PIP:peak inspiratory pressure)を超えたときに圧力開放されるようになっている。その最大吸気圧の大きさは操作部27により調整可能である。
一方、呼気側回路4に設けられるPEEP調整弁30は、例えばニードル弁より構成され、その操作部33を操作することにより、呼気終末圧(PEEP)の大きさを調整することができるようになっている。
図1及び図2の符号34はブレンダ20の濃度調整ツマミ、符号35は流量計24の流量調整ツマミ、符号36は患者インターフェース5に接続される圧力計である。
【0019】
そして、呼気側回路4の途中に、呼気側回路4内の呼気の流通を遮断可能なシャットオフ弁40が取り付けられている。このシャットオフ弁40は、呼気側回路4の呼気側チューブ12と患者インターフェース5との間、又は呼気側回路4の終端部である排気ポート7のいずれかに選択的に付け替えることができるようになっている。
【0020】
シャットオフ弁40は、図3から図7に示すように、その弁箱41が、その両側方に筒状に突出する流路口42、42と、これら流路口42、42の中間位置から直交して延びる本体筒部43とにより、全体としてT字状に形成されている。流路口42は、CPAP装置本体2の排気ポート7、あるいは患者インターフェース5と呼気側チューブ12との接続部に取り付け得る大きさ、形状に形成される。
そして、本体筒部43に両流路口42、42の間で流路を開閉する弁体45が挿入状態に設けられ、この弁体45と一体の軸部46の先端が本体筒部43から突出しており、この軸部46の先端に、本体筒部43の外側に被さるようにキャップ50が一体に形成されている。このキャップ50は、本体筒部43に対して軸部46の長さ方向に沿ってスライド自在かつ軸部46を中心として回転自在に取り付けられている。
【0021】
また、このキャップ50の周壁部51の下端部には、半径方向内方に突出する爪部52が周方向に間隔をおいて複数(図示例では3個)設けられており、一方、本体筒部43の外周部には、キャップ50を押圧操作したときに爪部52を案内する2本のリブからなるガイド部55が軸部46の長さ方向に沿って形成され、そのガイド部55の始端部に、周方向に沿うリブ状のロック部56が形成されている。キャップ50の爪部52がガイド部55に係合したときに、キャップ50を押圧してスライドすることが可能になり、爪部52がロック部56の上面に当接している状態ではキャップ50を押圧してもスライドできないように構成される。
【0022】
そして、キャップ50と本体筒部43との間に、キャップ50を本体筒部43から離間する方向(シャットオフ弁40を開く方向)に付勢する付勢手段としてのコイルばね57が設けられており、このコイルばね57は、無負荷時には、キャップ50の爪部52がガイド部55から外れた位置となるように付勢しており、その状態でキャップ50を回動することができるようになっている。このキャップ50をガイド部55に位置合わせして押圧すれば、キャップ50はガイド部55に沿ってシャットオフ弁40を閉じる方向にスライドすることができるようになっている。
【0023】
一方、キャップ50の押圧操作を解除すると、圧縮されていたコイルばね57の復元力によりキャップ50がガイド部55に沿って押し戻される方向(シャットオフ弁40を開く方向)にスライドし、ガイド部55から爪部52が抜けた位置まで引き戻される。この状態で、キャップ50を周方向に回動させ、爪部52をロック部56に当接させた状態とすれば、キャップ50を押圧してもロック部56に係止され、スライドできない状態となる。
この場合、複数設けられるガイド部55のうちの一部(図6に示す例では符号55で示す二つの部分)は、ロック部56よりも本体筒部43の先端方向に延びて形成されており、キャップ50への押圧操作を解除して回動したときに、キャップ50の爪部52を当接して、それ以上の回動(図6では右回りの回動)を停止し、ロック部56上で待機した状態に維持するとともに、シャットオフ弁40を閉じるためにキャップ50を回動するときには、爪部52がガイド部55に係合する位置で爪部52に当接して、それ以上の回動(図6では左回りの回動)を停止するためのストッパとなっている。
なお、本体筒部43の先端にはフランジ部58が形成され、キャップ50は爪部52がフランジ部58の下面に当接することにより抜け止めされている。
【0024】
このように構成された人工呼吸器1より患者に人工呼吸処置を施す場合、自発呼吸できる患者に対しては、CPAPによる処理が施され、PEEP調整弁30により設定される呼気終末陽圧(PEEP)をかけて肺胞の虚脱を防ぎ、吸気時にすべての肺胞が拡がるように補助する。このときの最大吸気圧(PIP)は安全弁25により調整され、患者は、図8に示すように、PEEPとPIPとの間で呼吸を繰り返す。
【0025】
この患者が発作的に無呼吸状態に陥ったときには、緊急蘇生処置としてシャットオフ弁40を操作する。この場合、シャットオフ弁40のキャップ50を回動することで爪部52のロック部56への係合を外し、この状態でガイド部55に沿ってコイルばね57を圧縮する方向にキャップ50を押圧することにより、このキャップ50と一体の弁体45が弁箱41の両流路口42の間を閉止した状態となる。このバルブを閉じる操作により、患者の呼気側回路4を遮断して、吸気側回路3から患者に強制的に呼吸用ガスを供給することにより、気道内圧を上昇させる。次いで、シャットオフ弁40のキャップ50への押圧を解除することにより、両流路口42の間から弁体45を退避させて呼気側回路4を開放し、呼気を発生させる。このシャットオフ弁40による呼気側回路4の遮断と開放とを所定時間ずつ交互に繰り返しながら、患者に蘇生処置を施す。
【0026】
このような無呼吸時の人工呼吸において、シャットオフ弁40により呼気側回路4を遮断した際に、呼気側回路4の圧力が上昇してPIPを越えた場合には安全弁25が働いて圧力が解放される。このため、患者に対して過度な圧力の吸気が送られることがなく、人工呼吸器1を安全に使用できる。
シャットオフ弁40による操作を中止(中断)する場合は、キャップ50への押圧を解除することでコイルばね57の復元力によりキャップ50がガイド部55に沿ってスライドしてガイド部55から爪部52が抜けた状態に戻され、その後、キャップ50を回動することにより、ロック部56に爪部52を当接してロック状態とすることができる。
【0027】
このシャットオフ弁40は、患者インターフェース5又は排気ポート7のいずれかに付け替えることができるようになっており、患者の容態等に応じていずれかに取り付ければよい。呼気側チューブ12と患者インターフェース5との間に付ける場合には、呼気側チューブ12から患者インターフェース5を取り外し、これらの間にシャットオフ弁40を介在させるように、各流路口42を呼気側チューブ12及び患者インターフェース5に取付ける。一方、排気ポート7に付ける場合には、この排気ポート7にシャットオフ弁40の一方側の流路口42を差し込むように接続すれば、他方側の流路口42が大気に開放した状態となる。患者が保育器等に収容されている場合など、患者の口元でシャットオフ弁40を操作できない場合には排気ポート7に接続し、患者の口元で操作可能な場合には患者インターフェース5に接続するなど、必要に応じて取り付け位置を選択できて都合がよい。
また、このシャットオフ弁40は、ロック部56とガイド部55により、回動とスライドとの二つの動作を連続して行わなければ呼気側回路4を遮断できない、いわゆるツイストロック機構が構成されているので、誤ってキャップ50が押し込まれることがなく、安全である。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 人工呼吸器
2 CPAP装置本体
3 吸気側回路
4 呼気側回路
5 患者インターフェース
7 排気ポート(終端部)
25 安全弁
40 シャットオフ弁
41 弁箱
45 弁体
50 キャップ
55 ガイド部
56 ロック部
57 コイルばね(付勢手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8