(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053452
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】集合基板
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
H05K7/20 Y
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-236814(P2012-236814)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-86670(P2014-86670A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】佐脇 敬法
(72)【発明者】
【氏名】三浦 浩二
【審査官】
久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−24352(JP,A)
【文献】
特開2009−92853(JP,A)
【文献】
特開2005−160228(JP,A)
【文献】
特開平9−237992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
H05K 7/14
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端に開口部を備えた収容ケースと、
外部機器と接続可能なコネクタと電子部品がそれぞれ実装された第1の回路基板及び第2の回路基板と、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが互いに平行になるように前記収容ケースに収容された電子制御装置において、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板は、一部が隙間を有しつつ重なるように配置されており、
前記収容ケースは、回路基板に対向する2つの側面のそれぞれから前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが重なり合う領域を避けて前記収容ケースの内部に向かって設けられた複数の凹部と、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが重なり合う領域において前記第1の回路基板と前記第2の回路基板の間を通る板とを有し、前記板は複数の前記凹部同士を繋ぐように一体に収容ケースに設けられていることを特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項2】
前記板には切り欠き部が形成されており、前記切り欠き部に前記第1の回路基板と前記第2の回路基板を電気的に接続する配線を通すように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置。
【請求項3】
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板が重なり合う領域と複数の前記凹部とを避けた領域の前記第1の回路基板上に背高のコンデンサが実装されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電子制御装置には、収容ケース内に2枚の回路基板が配置され、その各々に外部機器と電気的に接続されるコネクタが1つずつ取り付けられたものがある。2つのコネクタは、収容ケースから同じ方向に突出するように配置されており、各コネクタに外部ハーネスを接続したときに、配線を一箇所に集中できるようになっている。さらに、2枚の回路基板は、大きさが異なるものが使用され、収容ケース内では上下に配置されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、従来の電子制御装置では、2つの回路基板のそれぞれに互いに連結させるための接続用コネクタが1つずつ実装されており、接続用コネクタ同士を結合させることによって、上下に配置された2枚の回路基板の向きや、配置間隔、平行度が保たれるように支持されている。さらに、接続用コネクタは、2つの回路基板を電気的に接続する役割も担っている。
【0003】
電子制御装置を製造するときは、最初に2つの回路基板を接続用コネクタを用いて連結させ、その後に2つの回路基板を収容ケース内に挿入する。収容ケースの内壁の側部には、ガイド溝が刻まれており、ガイド溝にサイズが大きい方の回路基板が係合させられる。サイズが小さい方の回路基板は、収容ケースの前面側の角部にネジで固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−235444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、鞍乗り型車両、例えば自動二輪車や、モペット、ATV(All Terrain Vehicle:全地形型車両)や、スクーターなどでは、四輪自動車に比べて電子制御装置の搭載スペースが狭い。このために、四輪車に比べて電子制御装置をさらに小型化すること必要がある。ところが、電子制御装置を小型化すると、回路基板同士や、電子部品同士の配置間隔が狭くなるので、下側の回路基板上の電子部品で発生した熱が上側の回路基板の電子部品に影響を与え易くなる。
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、回路基板間の熱の影響を低減することによって電子制御装置の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、少なくとも一端に開口部を備えた収容ケースと、外部機器と接続可能なコネクタと電子部品がそれぞれ実装された第1の回路基板及び第2の回路基板と、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが互いに平行になるように前記収容ケースに収容された電子制御装置において、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板は、一部が隙間を有しつつ重なるように配置されており、前記収容ケースは、
回路基板に対向する2つの側面のそれぞれから前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが重なり合う領域を避けて前記収容ケースの内部に向かって設けられた複数の凹部と、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とが重なり合う領域において前記第1の回路基板と前記第2の回路基板の間を通る板とを有し、前記板は複数の前記凹部同士を繋ぐように一体に収容ケースに設けられていることを特徴とする車両用電子制御装置が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、
前記板には切り欠き部が形成されており、前記切り欠き部に前記第1の回路基板と前記第2の回路基板を電気的に接続する配線を通すように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置が提供される。
【0008】
そして、本発明によれば、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板が重なり合う領域
と複数の前記凹部
とを避けた領域の前記第1の回路基板上に
背高のコンデンサが実装されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用電子制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の回路基板の電子部品で発生した熱が、直接に第2の回路基板に伝達されることが防止される。2つの回路基板の配置間隔を小さくできるので、電子制御装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用電子制御装置を上方からみた斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る車両用電子制御装置を下方からみた斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る車両用電子制御装置において、
図1のA矢視図であり、樹脂を注入する前の状態を示す正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る車両用電子制御装置において、
図3のB−B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について以下に詳細に説明する。
図1に電子制御装置の斜視図を示す。電子制御装置1は、樹脂製の収容ケース2を有する。収容ケース2は、前面に開口部2Aを有し、背面2Bが閉鎖された中空構造を有し、開口部2Aからは、2つのコネクタ3,4が突出している。第1、第2のコネクタ3,4は、収容ケース2から同じ方向に向けて配置されており、それぞれが外部の機器に接続される外部ハーネスが結合可能な形状を有する。さらに、収容ケース2の内部空間には、樹脂5が充填されている。
【0012】
また、収容ケース2の上面2Cには、第1の窪み部6が収容ケース2の中心から一方の側面2E側にオフセットさせた位置に形成されている。第1の窪み部6は、収容ケース2の背面2B側から、収容ケース2の前面の開口部2Aの手前まで、側面2Eに略平行に、かつ細長に延びている。
【0013】
さらに、
図2に電子制御装置1を下側から見た斜視図を示すように、収容ケース2の下面2Dには、第2の窪み部7が、収容ケース2の中心から他方の側面2F側のオフセットさせた位置に形成されている。第2の窪み部7は、収容ケース2の背面2Bから側面2Fに略平行に、前面の開口部2Aの近傍まで延びている。第2の窪み部7には、複数のリブ8が収容ケース2の側面と略平行に形成されている。複数のリブ8は、収容ケース2の強度増加と、放熱の役割を担っている。第1の窪み部6と第2の窪み部7とは、収容ケース2の中心に対して左右方向に振り分けて1つずつ形成されており、2つの窪み部6,7が干渉することはない。
【0014】
さらに、
図3に樹脂5を充填する前の
図1のA矢視図を示す。なお、
図3は、理解を容易にするために、第1のコネクタ3を取り外した状態が示されている。
収容ケース2内には、下側に、面積が大きい第1の回路基板10が配置され、上側に面積が相対的に小さい第2の回路基板11が平行に配置されている。2つの回路基板10,11は、上下方向に所定の間隔を持ちつつ、一部が上下方向で重なり合うように配置され
ている。
【0015】
ここで、収容ケース2の一方の側面2Eの内側壁には、一対のレール21が形成されている。同様に、第2の窪み部7が収容ケース2の内側に突出することによって形成された内側壁7Aには、一対のレール22が形成されている。これらレール21,22は、下面2Dからの高さが同じになる位置に、かつ収容ケース2の前面の開口部2Aの近傍から背面2Bに至るまで平行に形成されている。さらに、一対のレール21同士、及びレール22同士は、それぞれが第1の回路基板10の側部に係合可能な隙間を有して配置されており、第1の回路基板10をレール21,22に沿って挿入することで、第1の回路基板10を収容ケース2内に位置決めして収容することができる。
【0016】
また、収容ケース2の他方の側面2Fの内側壁には、一対のレール24が収容ケース2の前面の開口部2Aの近傍から背面2Bに至るまで形成されている。さらに、収容ケース2の背面2Bの内側壁には、一対のレール25が形成されている。これらレール24,25は、下面2Dからの高さが同じになる位置に形成されている。さらに、一対のレール24同士、及びレール25同士は、第2の回路基板11の側部と背面部のそれぞれに係合可能な隙間を有して配置されており、第2の回路基板11をレール24に沿って挿入し、かつレール25に係合させることによって、第2の回路基板11を収容ケース2内に位置決めして収容することができる。
【0017】
そして、
図3と、
図3のB−B線に沿った断面図である
図4に示すように、収容ケース2の内部には、2つの窪み部6,7を繋ぐように遮熱板15が一体に形成されている。遮熱板15は、2つの回路基板10,11が重なって配置される領域において、2つの回路基板10,11の間を通るように延びている。このような遮熱板15によって、第1の回路基板10で発生した熱が第2の回路基板11に直接に伝達されることが防止され、第2の回路基板11の温度上昇が抑えられる。ここで、遮熱板15は、2つの回路基板10,11の配置スペースを仕切る間仕切り板としても機能している。
【0018】
さらに、遮熱板15は、第1の窪み部6との連結部分の先端側に切り欠き部15Aが形成されている。
図3に示すように、切り欠き部15Aには、2つの回路基板10,11を電気的に接続するケーブル16を通すことができる。
【0019】
また、
図3及び
図4に示すように、第1の回路基板10は、前面側に第1のコネクタ3が実装されており、その他の領域にはコンデンサや、FET(Field effect transistor)などの電子部品31が実装されている。このような第1の回路基板10の用途としては、例えば、モータなどの駆動回路がある。
【0020】
ここで、第1の回路基板10に実装されている電子部品のうち、電界コンデンサなどの背の高い電子部品32は、第2の回路基板11から離れた位置に実装されている。より詳細には、第1の回路基板10の左側、即ち収容ケース2の側面2F側で、収容ケース2の第1の窪み部6を避ける位置に、背の高い電子部品32が実装されている。一方、第1の回路基板10のその他の領域、特に第1の回路基板11と重なる領域には、背の低い電子部品33が実装されている。背の低い電子部品33としては、例えば、FETや、背の低い抵抗やコンデンサなどのチップ部品、CPU(Central Processing Unit)、IC(Integrated Circuit)などがあげられる。
【0021】
さらに、第1の回路基板10には、背の低い電子部品33に電気的に接続されるバスバー35が実装されている。バスバー35は、遮熱板15の下方に配置され、電子部品33で発生した熱を放出するように、複数の背の低い電子部品33の間を通って、第1のコネクタ3に向けて延びている。さらに、バスバー35の先端部35Aは、外部に熱を放出し
易いように、第1のコネクタ3の直前で折り曲げられている。
【0022】
図3に示すように、第2の回路基板11は、前方に第2のコネクタ4が実装されており、その他の領域にはコンデンサや、FET(Field effect transistor)、その他の電子部品41が実装されている。さらに、第1の回路基板10と電気的に接続されるフレキシブルなケーブル16を接続するためのコネクタ42が接続されている。ケーブル16は、第1の回路基板10にコネクタ43を介して接続されている。第2の回路基板11の用途としては、例えば、燃料噴射装置の駆動回路がある。
【0023】
電子制御装置1を製造するときは、最初に、コネクタ3,4や電子部品31,41を実装した2つの回路基板10,11を、ケーブル16で電気的に接続する。続いて、樹脂成型した収容ケース2内に2つの回路基板10,11を挿入する。各回路基板10,11は、収容ケース2に形成されたレール21〜25にガイドされながら所定の位置に導かれる。各レール21〜24の先端部分には、回路基板10,11を受け入れ易いように不図示のテーパが形成されているので、回路基板10,11を容易に挿入することができる。
【0024】
第1の回路基板10は、収容ケース2の下面2Dに沿って配置され、第1の窪み部6を避けるように、各電子部品31が配置される。一方、第2の回路基板11は、収容ケース2内で、第2の窪み部7による凸部の上方に主に配置され、一部が第1の回路基板10の上方に重なるように配置される。このとき、第1の回路基板10上の一部の背の低い電子部品33の上方に、遮熱板15及び第2の回路基板11が配置される。なお、背の低い電子部品33と、遮熱板15及び第2の回路基板11の間には、所定の隙間があるので干渉することはない。各回路基板10,11が収容ケース2に収容されたら、樹脂5を収容ケース2内に充填し、隙間を埋めてから硬化させる。
【0025】
以上、説明したように、第1の回路基板10と第2の回路基板11とが上下に重なる領域に、遮熱板15を設けたので、一方の回路基板10,11の電子部品31,41の熱が他方の回路基板10,11の電子部品31,41に直接に伝達されることを防止できる。これに伴って、2つの回路基板10,11の配置間隔を小さくできるので、収容ケース2及び電子制御装置1を小さくでき、狭い領域に搭載することが可能になる。さらに、ケース2に第1の窪み部6と、第2の窪み部7を形成したので、ケース2の内部空間の体積を減少できる。
【0026】
ここで、収容ケース2の小型化することによって、収容ケース2に充填する樹脂5の量を削減できるので、コストの低減や電子制御装置1の軽量化が図れる。また、樹脂5の量を削減することによって、樹脂5の硬化時間が短くなり、電子制御装置1の製造時間を短縮できる。
【0027】
さらに、遮熱板15を2つの窪み部6,7の間を繋ぐように形成したので、収容ケース2の強度を高めることができる。遮熱板15を収容ケース2に一体に形成すると、収容ケース2の強度をさらに高められる。
【0028】
また、遮熱板15の先端側に切り欠き部15Aを設け、切り欠き部15Aにケーブル16を通すようにしたので、回路基板10,11を収容ケース2に収容するときに、ケーブル16の位置決めが容易になり、作業効率が向上する。さらに、遮熱板15の下方にバスバー35を配置し、バスバー35を通して熱を収容ケース2の前面側に放出するように構成したので、2つの回路基板10,11の間の熱伝達をさらに抑制できる。
【0029】
なお、本発明は、実施の形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 電子制御装置
2 収容ケース
3,4 コネクタ
6 第1の窪み部
7 第2の窪み部
10 第1の回路基板
11 第2の回路基板
15 遮熱板
15A 切り欠き部
16 ケーブル