(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記基板の前記第2の方向に関する歪量に基づいて、前記ノズルユニット及び前記基板の一方を他方に対して前記第2の方向に移動させる移動速度、及び前記ノズル孔からの薄膜材料の液滴の吐出タイミングの少なくとも一方を決定する工程を有し、
前記薄膜を形成する工程において、前記移動速度及び前記吐出タイミングの少なくとも一方を決定する工程で決定された移動速度または吐出タイミングで前記薄膜を形成する請求項2に記載の基板製造方法。
前記歪量を測定する工程の後、前記薄膜を形成する工程の前に、前記第1の方向に関する歪量に基づいて、前記ノズル孔の並ぶ方向が前記第1の方向に対して傾斜するように前記ノズルユニットの姿勢を変化させる工程を含む請求項2または3に記載の基板製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施例1]
図1に、実施例1による基板製造装置の概略図を示す。定盤20の上に、移動機構21によりステージ22が支持されている。ステージ22の上面(保持面)に、プリント基板等の基板27が保持される。ステージ22の保持面に平行な方向をx方向及びy方向とし、保持面の法線方向をz方向とするxyz直交座標系を定義する。移動機構21は、ステージ22をx方向及びy方向に移動させる。
【0015】
定盤20の上方に、ノズルユニット30及び撮像装置28が、支持部材24よって支持されている。ノズルユニット30は、ノズルユニット支持機構31を介して支持部材24に昇降可能に支持されている。ノズルユニット30及び撮像装置28は、ステージ22に保持された基板27に対向する。撮像装置28は、基板27の表面に形成されている配線パターン、アライメントマーク、基板27に形成された薄膜パターン等を撮像する。撮像されて得られた画像データが、制御装置70に入力される。ノズルユニット30は、複数のノズル孔から基板27に向けて、光硬化性(例えば紫外線硬化性)の薄膜材料の液滴(例えばソルダーレジスト等の液滴)を吐出する。吐出された薄膜材料が、基板27の表面に付着する。
【0016】
制御装置70が、移動機構21、ノズルユニット30、及び撮像装置28を制御する。制御装置70には、基板27に形成すべき薄膜パターンの形状を定義するラスタフォーマットの画像データまたはそれを圧縮した画像データ(圧縮データ)等が記憶されている。オペレータが、入力装置71を通して制御装置70に、種々の指令(コマンド)や、制御に必要な数値データを入力する。制御装置70は、出力装置72からオペレータに対して各種情報を出力する。
【0017】
図2に、ノズルユニット30(
図1)の斜視図を示す。ノズルホルダ35に複数、例えば4個のノズルヘッド34がy方向に並んで取り付けられている。ノズルヘッド34の各々の、ステージ22(
図1)に対向するノズル面38に、複数のノズル孔37が開口している。複数のノズル孔37は、x方向に2列に並んでいる。4個のノズルヘッド34の複数のノズル孔37は、x方向に関して異なる位置に配置され、全体としてx方向に関して等間隔に分布する。
【0018】
ノズルヘッド34の間、及び両端のノズルヘッド34の外側に、それぞれ硬化用光源36が取り付けられている。硬化用光源36は、基板27(
図1)に硬化用の光、例えば紫外線を照射する。
【0019】
図3Aに、歪が発生していない基板27及びノズルユニット30の平面図を示す。1枚の基板27に、複数のプリント配線板32が配置されている。基板27は、いわゆる多面取りパネルである。
図3Aでは、8枚のプリント配線板32が4行2列の行列状に配置されている。基板27に、複数のアライメントマーク29が形成されている。
図3Aでは、基板27の四隅、4辺の各々のほぼ中央、及び基板27のほぼ中心に、アライメントマーク29が配置された例を示している。
【0020】
ノズルユニット30に、複数のノズル孔37が設けられている。複数のノズル孔37は、x方向に関して等間隔に分布する。
図3Aでは、簡略化してノズル孔37が1列に配列しているように表しているが、実際には
図2に示したように、ノズル孔37は複数の列を構成している。
【0021】
図3Bに、1枚のプリント配線板32に形成される薄膜33のパターンの一例を示す。
図3Bのハッチングを付した領域に、ソルダーレジストの薄膜33が形成される。薄膜33に、複数の開口39が分布している。開口39は、電子部品を取り付ける箇所、スルーホールが形成されている箇所等に対応して配置される。
【0022】
次に、薄膜の形成方法について説明する。基板27をy方向に移動させながら、形成すべき薄膜の平面形状を定義する画像データに基づいて、ノズル孔37から薄膜材料の液滴を吐出させる。この動作を、「走査」ということとする。ノズル孔37から吐出された薄膜材料の液滴が基板27に着弾する。基板27に着弾した薄膜材料に、硬化用光源36(
図2)から硬化用の光が照射される。これにより、薄膜材料の少なくとも表層部が硬化する。1回の走査で、x方向に関してノズル孔37が分布している範囲内に、薄膜33を形成することができる。基板27とノズルユニット30とのx方向に関する相対位置を変えて、複数回の走査を行うことにより、基板27の表面のほぼ全域に薄膜33を形成することができる。
【0023】
図4に、歪が生じている基板27の平面図を示す。基板27の歪に応じて複数のアライメントマーク29の相対位置が変化する。アライメントマーク29の位置を検出することにより、基板27のx方向及びy方向の歪量を算出することができる。例えば、x方向及びy方向に関して、2つのアライメントマーク29の間において、歪量が線形に変化していると近似することができる。基板27の全域において、単調に歪む場合には、アライメ
ントマーク29を基板27の四隅にのみ配置してもよい。アライメントマーク29の個数を増やすことにより、複雑な歪を検出することが可能になる。
【0024】
基板27の表面が、複数の補正単位領域40に区分されている。
図4では、補正単位領域40が、4行4列の行列状に配置された例を示している。基板27の歪に応じて、補正単位領域40ごとに、画像データの補正が行われる。
【0025】
図5に、実施例1による基板製造方法のフローチャートを示す。ステップSA1において、形成すべき薄膜の平面形状を定義するラスタフォーマットの画像データを圧縮して、圧縮データを準備する。この圧縮データは、例えば、制御装置70(
図1)の上位の処理装置により生成される。生成された圧縮データが、制御装置70に入力される。
【0026】
図6Aに、ラスタフォーマットの画像データ42の一部分の一例を示す。ラスタフォーマットの画像データ42は、x方向及びy方向に配列した複数のピクセル43で構成される。各ピクセル43に、「W」及び「B」の値の一方が割り当てられている。「B」及び「W」は、それぞれ薄膜材料の液滴を着弾させるピクセル、及び着弾させないピクセルを表す。
図6Aでは、ほぼ円形の開口39が形成される領域の近傍を示している。
【0027】
図6Bに、
図6Aに示したラスタフォーマットの画像データ42をx方向に圧縮したx方向圧縮データ45を示す。ラスタフォーマットの画像データ42の、x方向に連続したピクセルからなるデータ列が圧縮されて、複数の要素で表記される。各要素は、ピクセル43の値「W」と「B」とを区別する識別符号、及び識別符号の値が割り当てられたピクセルが連続する回数を示す数値で構成される。
【0028】
ステップSA2(
図5)において、薄膜を形成すべき基板27をステージ22(
図1)に保持する。ステップSA3において、撮像装置28(
図1)で、基板27のアライメントマーク29(
図4)を撮像する。撮像された画像データが制御装置70に入力される。ステップSA4(
図5)において、制御装置70が、アライメントマーク29の画像データを解析することにより、アライメントマーク29の位置を算出する。撮像装置28は、アライメントマーク29の位置を検出する位置検出装置としての役割を持つ。
【0029】
ステップSA5において、算出されたアライメントマーク29の位置に基づいて、基板27のx方向及びy方向の歪量を算出する。ステップSA6において、x方向圧縮データ45(
図6B)に対して、ピクセルを挿入または除去する処理を行うことにより、歪修正データを生成する。
図7A〜
図11Bを参照して、ステップSA6の処理について説明する。
【0030】
図7Aに、歪修正処理が施されていないx方向圧縮データ45(
図6B)で定義されるパターンの外形50と、歪が生じている基板27の外形51とを簡略化して線図で示す。
図7Aでは、歪を誇張して示している。歪修正前のパターンの外形50は、例えばx方向及びy方向に平行な辺を持つ長方形で表される。基板27の外形51は、x方向及びy方向に歪んでいる。歪修正前のパターンの外形50の内部が、複数の補正単位領域40に区分されている。補正単位領域40は、例えば1行目から4行目までの4行、及びA列〜D列の4列からなる行列状に配置されている。列の識別子A〜D、及び行番号を並べて、1つの補正単位領域40を特定することとする。例えば、B列の3行目の補正単位領域40を「B3」と表記することとする。
【0031】
図7Bに示すように、y方向には歪が発生しておらず、x方向に平行な1次元方向にのみ歪が発生していると仮定する。歪が発生している基板の外形51は、x方向に平行な2つの縁、及びこの縁の端部同士を接続するy方向に延びる縁で構成される。x方向に平行
な縁は、歪修正前のパターンの外形50の、x方向に平行な縁と重なる。各補正単位領域40の外形59も、x方向に平行な2つの縁を含むこととなる。
【0032】
図8Aに、1つの補正単位領域40内のピクセル43、及び歪が発生している補正単位領域40の外形59を示す。1つの補正単位領域40において、x方向に並ぶピクセル43の数はN個である。歪が発生している補正単位領域40の外形59は、x方向に平行な上底と下底とを有する台形で表される。
【0033】
外形59の上底の位置におけるx方向の歪量、及び下底の位置におけるx方向の歪量から、ピクセル43の行ごとのx方向の歪量を算出する。一例として、歪量は、上底と下底との間で、y方向に関して線形に変化すると近似する。
図8Aでは、一例として、上底が縮んで(N−2)個分のピクセルに相当する長さになり、下底が伸びて、(N+3)個分のピクセルに相当する長さになった例を示している。
【0034】
x方向に並ぶピクセル43で構成されたピクセル行ごとに、歪が発生している外形59の寸法に近づくように、ピクセルの挿入または除去を行う。具体的には、補正単位領域40を、高さ方向にn等分する。ここで、「n」は、上底の長さと下底の長さとの差分に相当するピクセルの個数に1を加えた値に等しい。
図8Aに示した例では、n=6である。n等分された領域ごとに、ピクセルの挿入個数または除去個数が決定される。最も下の領域では、ピクセル行ごとに3個のピクセルが挿入される。最も上の領域では、ピクセル行ごとに2個のピクセルが除去される。
【0035】
図8Bに、ピクセルの挿入及び除去後のピクセルの分布、及び歪が発生している補正単位領域40の外形59を示す。ピクセル43aが挿入されており、領域43vのピクセルが除去されている。ピクセル行の各々について、ピクセルの挿入箇所及び除去箇所は、x方向に関して均等に分散される。ピクセル43aが挿入されたピクセル行はx方向に延び、ピクセルが除去されたピクセル行はx方向に縮む。これにより、ピクセルが分布する領域の外形が、歪が生じている補正単位領域40の外形59に近づく。
【0036】
図9Aを参照して、ピクセル行にピクセルを挿入する処理について説明する。
図9Aに、1つのピクセル行の一部分のラスタフォーマットの画像データ及び圧縮データを示す。5個の「B」ピクセル、4個の「W」ピクセル、7個の「B」ピクセル、及び6個の「W」ピクセルがx方向に順番に連続している。このピクセル行の圧縮データは、「B5W4B7W6」と表記される。
【0037】
左から13番目のピクセル43と14番目のピクセル43との間に、ピクセル43aを挿入する場合について説明する。ピクセル43aが挿入される位置の両側のピクセル43の値が共に「B」であるため、挿入されるピクセル43aの値も「B」とする。左から13番目及び14番目のピクセル43は、圧縮データの「B7」で表される連続した7個のピクセル43に含まれる。圧縮データにおいては、要素「B7」を「B8」に修正するのみで、ピクセルの挿入が行われたことになる。
【0038】
図9Bに示すように、ピクセル43aを挿入する位置(左から16番目のピクセル43と17番目のピクセル43との間)の両側のピクセル43の一方の値が「B」であり、他方の値が「W」である場合、挿入されるピクセル43aの値は、「B」及び「W」のどちらにしてもよい。このとき、圧縮データの要素「B7」を「B8」に修正するか、要素「W6」を「W7」に修正することにより、ピクセル43aの追加が行われたことになる。
【0039】
図10を参照して、ピクセル行からピクセルを除去する処理について説明する。
図10に、1つのピクセル行の一部分のラスタフォーマットの画像データ及び圧縮データを示す
。左から13番目のピクセル43を除去する例について説明する。左から13番目のピクセルは、圧縮データにおいて、「B7」で表される連続した7個の「B」ピクセルのうちの1つである。左から13番目のピクセル43を除去するには、圧縮データの要素「B7」を「B6」に修正すればよい。
【0040】
上述のように、x方向圧縮データ45(
図6B)を展開することなく、圧縮されたフォーマットのまま、簡易な手順で、ピクセルの挿入及び除去の処理を行うことができる。
【0041】
図11Aに、x方向に関する歪を修正した後のx方向圧縮データ45(
図9A、
図9B、
図10)で定義される補正単位領域40の各々の外形を示す。ピクセル行の左端のピクセル43の位置を固定にすると、補正単位領域40の外形は、左側の辺がy軸に平行な台形になる。
【0042】
図11Bに示すように、補正単位領域40のピクセル行のうち、同一のピクセル行が連続するように、複数の補正単位領域40を再構築する。再構築するときに、最も左側(A列)の補正単位領域40の左端のピクセル43Lの位置を、
図7Bに示した歪が生じている基板27の外形51の左側の辺に一致させる。x方向に関する歪の補正を行った圧縮データで定義される補正単位領域40を再構築することによって得られるパターンの外形52は、x方向に平行な2つの辺と、この2つの辺の端部同士をy方向に接続する一対の縁とを含む。再構築されたパターンの外形52のy方向に延びる一対の縁の各々は、一般的に、y軸に平行ではなく、かつ1本の直線でもない。
【0043】
再構築されたパターンの外形52を内包する長方形を定義する。この長方形の一対の辺は、再構築されたパターンの外形52のx方向に平行な縁と重なる。この長方形の内部領域のうち、再構築されたパターンの外形52よりも外側の領域54に、「W」ピクセルを挿入する。領域54に「W」ピクセルを挿入するには、再構築後の圧縮データ(外形52を定義する圧縮データ)において、各ピクセル行の左端と右端に、要素「Bi」(iは自然数)を追加すればよい。「W」ピクセルを挿入した画像データを、「x方向歪修正データ」ということとする。x方向歪修正データで定義されるパターンの外形53は、長方形になる。
【0044】
ステップSA7(
図5)において、y方向の歪量に基づいて、ノズル孔37(
図2)からの薄膜材料の液滴の吐出タイミング(吐出周波数)、または基板27(
図1)のy方向(走査方向)への移動速度を決定する。
図12A及び
図12Bを参照して、ステップSA7の処理について説明する。
【0045】
図12Aに、x方向歪修正データで定義されるパターンの外形53、及び歪が生じている基板の外形51を示す。x方向歪修正データで定義されるパターンの外形53の内部に、ピクセル43を示す。x方向歪修正データで定義されるピクセル43のx方向のピッチと、y方向のピッチとは等しい。
【0046】
x方向歪修正データで定義されるパターンの外形53の内部を、x方向に関して複数のパス領域55に区分する。パス領域55の各々のx方向の寸法は、ノズルユニット30の1回の走査で薄膜材料を付着させることができる領域のx方向の幅以下に設定される。
【0047】
図12Bに示すように、パス領域55ごとに、x方向歪修正データで定義されるパターンの外形53をy方向に伸縮させることにより、パス領域55のy方向の寸法を、歪が生じている基板の外形51の、対応する領域のy方向の寸法よりも大きくする。パス領域55をy方向に伸縮させると、パス領域55内のピクセル43の、y方向に関するピッチが変化する。y方向に関するピクセル43のピッチは、ノズルユニット30をy方向に走査
するときの走査速度、またはノズル孔37から薄膜材料の液滴を吐出する周波数(タイミング)に対応する。パス領域55の各々について、伸縮後におけるy方向のピクセルのピッチから、ノズル孔37からの薄膜材料の液滴の吐出タイミング、及び基板27(
図1)のy方向(走査方向)への移動速度を決定することができる。吐出タイミング及び移動速度の一方を固定し、吐出タイミング及び移動速度のうち固定されていない方を調整するようにしてもよい。
【0048】
ステップSA8(
図5)において、ステップSA6で生成されたx方向歪修正データに基づき、ステップSA7で決定された吐出タイミングまたは基板27(
図1)のy方向への移動速度の条件で、薄膜の形成を行う。
【0049】
[実施例1の変形例1]
図13A及び
図13Bを参照して、実施例1の変形例1による基板製造方法で適用されるx方向圧縮データ45の形式、及びx方向圧縮データ45に対してピクセルを挿入及び除去する処理を行う手順について説明する。実施例1で採用したx方向圧縮データ45においては、
図6Bに示したように、「W」または「B」の識別符号と、当該識別符号の値をとるピクセルがx方向に連続する回数によって、1つの要素が構成される。
【0050】
図13Aに、実施例1の変形例1で採用されるx方向圧縮データ45のフォーマットを示す。x方向に並ぶピクセル列ごとに、左端から順番にピクセル43に通し番号#1、#2、#3、・・・を付す。実施例1の変形例1では、x方向圧縮データ45の各要素が、「W」または「B」の識別符号と、ピクセルの通し番号とで構成される。ピクセル43の通し番号は、識別符号の値をとる連続するピクセルの左端及び右端のピクセル43を表す。例えば、「B1−5」は、通し番号#1から#5までの5個のピクセルに割り振られた値が「B」であることを意味する。
【0051】
図13Bに、通し番号#13のピクセル43と通し番号#14のピクセル43との間に、ピクセル43aを挿入する処理を示す。圧縮データの要素「B10−16」に、通し番号#13及び#14のピクセル43が含まれている。ピクセル43aを挿入するには、「B10−16」を「B10−17」に書き換えればよい。このとき、通し番号#14よりも右側のピクセル43の通し番号が繰り下がるため、x方向圧縮データ45においても、各要素に含まれる通し番号が繰り下げられる。例えば、要素「W17−22」が、「W18−23」に書き換えられる。ピクセル43を除去する場合には、除去されるピクセル43の通し番号より大きな通し番号を含む要素において、各通し番号を繰り上げればよい。
【0052】
実施例1及びその変形例1のいずれにおいても、x方向に並ぶピクセル43のうち、同じ値が設定されている連続するピクセル43に着目して画像データの圧縮が行われる。圧縮された画像データ(圧縮データ)では、同値のピクセルが連続する個数、または同値のピクセルが連続する部分の左端と右端の位置が定義される。
【0053】
実施例1及びその変形例1では、基板27(
図4)のx方向の歪量に応じて、薄膜の平面形状を定義する圧縮データを補正する。さらに、基板27(
図4)のy方向の歪量に応じて、薄膜材料の液滴の吐出タイミングまたは基板27の移動速度を決定する。その結果、基板27がx方向及びy方向に歪んでいる場合にも、形成される薄膜の平面形状を、歪後の基板27の導電パターンに整合させることができる。このように、実施例1及びその変形例1による基板製造方法では、基板の歪の影響を緩和することができる。
【0054】
さらに、実施例1及びその変形例1では、
図9A、
図9B、
図10に示したように、基板27(
図4)の、x方向に関する歪の影響を緩和するために、x方向に連続したピクセルからなるデータ列が圧縮された圧縮データを展開することなく、圧縮された状態で、ピ
クセルの挿入及び除去の処理が行われる。y方向に関する歪の影響を緩和するためには、圧縮データに対してピクセルの挿入及び除去の処理を行う必要がない。このため、ガーバーフォーマットの画像データ、または圧縮される前のラスタフォーマットの画像データに対して、ピクセルの挿入及び除去の処理を行う場合に比べて、歪の影響を緩和するための処理時間を短縮することができる。
【0055】
[実施例1の変形例2]
図14A〜
図14Dを参照して、実施例1の変形例2について説明する。実施例1では、
図8Bに示したように、1つの補正単位領域40内のピクセル行ごとに、挿入するピクセル43aをx方向に均等に分散させた。
【0056】
図14Aに示すように、形成すべき薄膜に正方形の開口39が含まれる場合について検討する。補正単位領域40(
図8A)をy方向にn等分したときの境界線が、開口39の内部を通過し、かつ境界線よりも上の領域60のx方向の歪量が、下の領域61のx方向の歪量よりも小さいと仮定する。ピクセルを挿入する位置をx方向に均等に割り振ったとき、例えば、
図14Aの矢印の位置が、挿入箇所として選定される。上の領域60では、ピクセルを挿入する箇所が開口39と重なり、下の領域61では、ピクセルを挿入する箇所が開口39から外れている。
【0057】
図14Bに、ピクセルを挿入した後のx方向圧縮データで定義されるピクセルの配置を示す。上の領域60では、開口39のx方向の寸法が大きくなり、下の領域61では、開口39のx方向の寸法は変化しない。このため、正方形であった開口39の平面形状が、正方形から崩れてしまう。さらに、相対的に歪量が大きな領域61において、開口39を変形させず、相対的に歪量が小さな領域60において、開口39をx方向に引き延ばす結果となる。
【0058】
図14Cに示すように、実施例1の変形例2による方法では、ピクセルを挿入する箇所が開口39と重なった場合、ピクセルの挿入する箇所を、開口39の縁までずらす。
【0059】
図14Dに、実施例1の変形例2による方法でピクセルを挿入した後のx方向圧縮データで定義されるピクセルの配置を示す。上の領域60及び下の領域61のいずれにおいても、開口39のx方向の寸法が変化しない。このため、開口39の形状の崩れを防止することができる。
【0060】
[実施例2]
図15A〜
図17を参照して、実施例2による基板製造方法について説明する。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
図5に示したステップSA1からステップSA6までの工程は、実施例1と実施例2とで共通である。
【0061】
図15Aに、ステップSA6(
図5)で生成されたx方向歪修正データで定義されるパターンの外形53を、歪が生じている基板の外形51と共に示す。外形53は、
図11Bに示した実施例1による方法で得られたx方向歪修正データで定義されるパターンの外形53と同一である。
【0062】
図15Bに示すように、基板27(
図4)に、x方向の歪が発生しておらず、y方向に平行な1次元方向のみの歪が発生していると仮定する。歪が生じている基板の外形51のy方向に延びる縁が、y軸に平行な直線になる。x方向歪修正データにおいては、
図9A、
図9B、
図10に示したように、x方向に連続したピクセルからなるデータ列が圧縮されている。このx方向歪修正データを、y方向に連続したピクセルからなるデータ列に対
して圧縮されたy方向圧縮データに変換する。
【0063】
図16に、y方向に連続したピクセル43からなるデータ列、及び圧縮されたy方向圧縮データ46の一例を示す。y方向圧縮データ46の各要素は、ピクセル43の値「W」と「B」とを区別する識別符号、及び識別符号の値が割り当てられたピクセル43がy方向に連続する回数を示す数値で構成される。
【0064】
図15Bに示すように、y方向圧縮データ46(
図16)で定義されるパターンの外形56は、x方向歪修正データで定義されるパターンの外形53と同一である。y方向圧縮データ46で定義されるパターンの外形56内の領域を、新たに複数の補正単位領域41に区分する。
【0065】
図17に示すように、補正単位領域41ごとに、y方向の歪量に基づいて、y方向圧縮データ46(
図16B)に対してピクセルの挿入及び除去の処理を行う。この処理は、実施例1の
図8A及び
図8Bに示したx方向圧縮データ45に対するピクセルの挿入及び除去の処理と同一である。実施例1の
図11A及び
図11Bに示したように、ピクセルの挿入及び除去が行われた補正単位領域41を再構築する。補正単位領域41が再構築されたパターンの外形57のx方向に延びる縁は、x軸に対して平行な1本の直線にはならない。
【0066】
再構築されたパターンの外形57のx方向に延びる縁の外側の領域58に、「W」ピクセルを挿入する。再構築されたパターンの外形57と、領域58とを合成した領域の外形は、長方形になる。領域58に「W」ピクセルを挿入することにより、xy方向歪修正データが得られる。
【0067】
xy方向歪修正データに基づいて、歪が生じている基板27(
図4)に、薄膜を形成する。実施例2では、y方向に関しても、x方向と同様の歪修正処理が行われる。実施例2においても、実施例1と同様に、基板27(
図4)の歪の影響を緩和するために要する処理時間を短縮することができる。
【0068】
[実施例3]
図18に、実施例3による基板製造装置のステージ22及びノズルユニット30の平面図を示す。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。実施例3による基板製造装置は、ノズル孔37の配列方向が変化するように、ノズルユニット30の姿勢を調整する姿勢調整機構80を有する。ノズル孔37の配列方向を、x方向に対して傾けると、ノズル孔37のピッチのx方向成分が変化する。ステージ22の上に、基板27が保持される。
【0069】
制御装置70が、基板27のx方向に関する歪量に基づいて、ノズル孔37の配列方向がx方向に対して傾斜するように、ノズルユニット30の姿勢を変化させる。この姿勢変化により、ノズル孔37のピッチのx成分が、歪量に応じて変化する。その結果、基板27のx方向に関する歪の影響を緩和することができる。
【0070】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。