(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
道路交通情報通信システムにおいては、渋滞、工事、事故、通行規制、駐車場、旅行時間、緊急メッセージ等の道路交通に係る様々な情報を収集して、提供している。
【0003】
これらの情報は、道路交通情報通信システムセンターへ集められて、編集された後、電波ビーコン、光ビーコン、FM(Frequency Modulation)多重放送等の方式を使ってユーザへ届けられる。電波ビーコンや光ビーコンは、道路上に設置されて、その道路に関連する情報を中心に提供している。
【0004】
このような仕組みによって提供される道路交通情報通信システムの情報は、所定時間毎に最新の情報に更新される。つまり、道路交通情報通信システムにおいては、渋滞情報等を搭乗者が入手できることにより、渋滞している道の回避、高速道路の利用区間の変更等、利用する道路を選択したり、目的地までの到着時間を予想したりすることができる。
【0005】
ここで、道路交通情報通信システムの情報は、上下車線のうち、いずれか一方の車線を走行している車両の搭乗者にのみ有用な内容であることも多い。例えば、上り車線の渋滞情報等は、上り車線を走行している車両の搭乗者にのみ有用な内容であり、下り車線を走行している車両の搭乗者にとっては不要な内容である。
【0006】
したがって、このような内容の情報は、対象車線を走行している車両にのみ配信することが望ましい。しかしながら、電波ビーコンや光ビーコンによっては、いずれか一方の車線の範囲内にのみ情報を送信することが難しい。
【0007】
そこで、これらの問題を解決する方法としては、車両に設けられた受信装置が情報を受信した場合に、車両の進行方向を特定して、その進行方向に対して有用な情報のみを搭乗者に提供するといったことが考えられる。このような背景に関連する技術としては、様々なものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
例えば、特許文献1には、移動体に搭載される運動状態判定装置が記載されている。より具体的に説明すると、この装置は、移動体の地球上の位置を検出する。また、この装置は、移動体の方位を検出する。そして、この装置は、これらの検出結果に基づいて、移動体の運動状態を判定する。このようにして、この装置によっては、例えばエンジンの動作状態や車輪の速度等の移動体自身の情報を用いて運動状態を判定する技術的構成を採用していないので、移動体の運動状態を高い精度で判定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の装置は、GPS受信機が今回検出した車両の位置と、前回に検出した車両の位置との差から車両の進行方向を算出している。しかしながら、GPSによる測位は、誤差を生じる。そのため、このような方法によっては、必ずしも車両の進行方向を正確に算出することができない。
【0011】
例えば、
図9を用いて説明すると、ビーコンBから送信される情報は、道路Rの方向D1の車線を走行している車両の搭乗者にのみ有用な情報であるとする。換言すれば、ビーコンBにて送信される情報は、道路Rの方向D2の車線を走行している車両の搭乗者にとっては不要な情報であるとする。
【0012】
ここで、車線を走行している車両VaがビーコンBの無線通信範囲A内に進入したとき、車両VaのGPS受信機は、車両Vaの位置として、測位位置C2を検出したとする。また、車両VaのGPS受信機は、測位位置C2を検出する前の車両Vaの位置として、測位位置C1を検出していたものとする。その場合、特許文献1の方法によっては、車両Vaの進行方向が方向D1であるにも拘らず、車両Vaの進行方向を方向D2であると算出してしまい、ビーコンBから送信された情報が搭乗者に提供されない。
【0013】
一方、車線を走行している車両VbがビーコンBの無線通信範囲A内に進入したとき、車両VbのGPS受信機は、車両Vbの位置として、測位位置C3を検出したとする。また、車両Vbの受信機は、測位位置C3を検出する前の車両Vbの位置として、測位位置C4を検出していたものとする。その場合、特許文献1の方法によっては、車両Vbの進行方向が方向D2であるにも拘らず、車両Vbの進行方向を方向D1であると算出してしまい、ビーコンBから送信された不要な情報が搭乗者に提供されてしまう。
【0014】
また、特許文献1に記載の装置は、地磁気センサからの情報に基づいて車両の向きを算出している。しかしながら、地磁気センサを用いる方法は、高コストとなり、あまり現実的でない。そこで、車両の進行方向を精確に特定するにあたっては、低コストであることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によると、車両の進行方向を特定する進行方向特定システムであって、車両の進行方向を特定する進行方向特定装置を備え、進行方向特定装置は、道路網において、車両が存在している第1のリンクと、当該第1のリンクへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する進行方向特定部を備える。
【0016】
進行方向特定装置は、GPSによる車両の位置の測位結果をマップマッチングして、車両が存在している道路網におけるリンクを特定するリンク特定部を更に備え、進行方向特定部は、リンク特定部が特定した第1のリンクと、当該第1のリンクへ進入する前にリンク特定部が特定した第2のリンクとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定してよい。
【0017】
進行方向特定装置は、車両の搭乗者に対して通知する通知情報と、当該通知情報を通知すべき対象の車両の進行方向を指定する進行方向情報とを含むデータを受信するデータ受信部と、データ受信部が受信したデータに含まれる進行方向情報によって指定されている進行方向と、進行方向特定部が特定した進行方向とが一致しているか否かを判定する進行方向判定部と、2つの進行方向が一致していると進行方向判定部が判定した場合に、データ受信部が受信したデータに含まれる通知情報を出力する通知情報出力部とを更に備えてよい。
【0018】
本発明の第2の形態によると、車両の進行方向を特定する進行方向特定方法であって、道路網において、車両が存在している第1のリンクと、当該第1のリンクへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する進行方向特定段階を備える。
【0019】
本発明の第3の形態によると、車両の進行方向を特定する進行方向特定装置であって、道路網において、車両が存在している第1のリンクと、当該第1のリンクへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する進行方向特定部を備える。
【0020】
本発明の第4の形態によると、車両の進行方向を特定する進行方向特定装置として、コンピュータを機能させるプログラムであって、コンピュータを、道路網において、車両が存在している第1のリンクと、当該第1のリンクへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する進行方向特定部として機能させる。
【0021】
本発明の第5の形態によると、車両の進行方向を特定する進行方向特定装置として、コンピュータを機能させるプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータを、道路網において、車両が存在している第1のリンクと、当該第1のリンクへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する進行方向特定部として機能させるプログラムを記録した。
【0022】
なおまた、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、この発明によっては、コストを掛けることなく、車両の進行方向を正確に特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
図1は、一実施形態に係る道路網Gの一例を示す。道路網Gは、複数のノードN1、N2、N3、・・・(以下、ノードNと総称する。)と、複数のリンクL1、L2、L3、・・・(以下、リンクLと総称する。)の組み合わせによって成る。ここで、ノードNとは、交差点、その他、道路網Gの表現上の結節点等である。また、リンクLとは、2つのノードNの間の道路区間である。なおまた、図中の実線の矢印は、上り車線を示す。また、図中の破線の矢印は、下り車線を示す。
【0027】
リンクL2の路側には、ビーコンBが設けられている。ビーコンBは、道路交通情報通信システムにおける道路交通情報等の車両の搭乗者に対して通知する通知情報を含むデータを送信する装置である。より具体的に説明すると、通知情報には、上り車線、又は下り車線のいずれか一方の車線を走行している車両の搭乗者に対して有用な情報もある。その場合、ビーコンBは、通知情報と、その通知情報を通知すべき対象の車両の進行方向を指定する進行方向情報とを含むデータを送信する。
【0028】
なおまた、本実施形態においては、説明が煩雑になることを防ぐことを目的として、道路網Gに一のビーコンBが設けられている例について説明する。しかしながら、道路網Gには、複数のビーコンBが設けられていてよい。
【0029】
図2は、道路交通情報通信システムを利用する車両の一例を示す。道路交通情報通信システムを利用する車両は、車載器110、GPS受信機130、及びディスプレイ150を備える。なおまた、車載器110は、この発明における「進行方向特定装置」の一例であってよい。
【0030】
GPS受信機130は、電波航法と自立航法とを併用して自位置を測位する装置である。より具体的に説明すると、GPS受信機130は、GPSアンテナ、加速度計、及び角速度計を備える。ここで、GPSアンテナとは、GPS衛星からの電波を受信するアンテナである。また、加速度計とは、車両が移動する際の加速度変化を計測する計測器である。また、角速度計とは、車両が移動する際の角速度変化を計測する計測器である。GPS受信機130は、例えば、車両のダッシュボードDの上等のような、GPSアンテナが遮蔽されない位置に設けられている。そして、GPS受信機130は、車載器110と電気的に接続されている。そして、GPS受信機130は、GPSによる電波航法と、加速度計、及び角速度計を用いた自立航法とを併用して自位置を測位する。そして、GPS受信機130は、その測位結果を示すデータを、車載器110へ出力する。
【0031】
車載器110は、車両の進行方向に応じたデータ処理を行う装置である。より具体的に説明すると、車載器110は、アンテナ、及び受光器を備える。ここで、アンテナとは、電波ビーコンから送信されたデータを受信するためのものである。また、受光器とは、光ビーコンから送信されたデータを受信するためのものである。車載器110は、例えば、車両のダッシュボードDの上等のような、アンテナ、及び受光器が遮蔽されない位置に設けられている。そして、車載器110は、GPS受信機130、及びディスプレイ150と電気的に接続されている。そして、車載器110は、GPS受信機130から出力されたデータの入力を受け付けると、そのデータによって示される測位結果をマップマッチングして、車両が存在している道路網GにおけるリンクLを特定する。そして、車載器110は、ビーコンBから送信されたデータを、アンテナ、又は受光器を介して受信すると、道路網Gにおいて、車両が存在している第1のリンクLと、その第1のリンクLへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクLとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する。そして、車載器110は、ビーコンBから送信されたデータに含まれている進行方向情報によって指定されている進行方向と、特定した車両の進行方向とが一致しているか否かを判定する。そして、2つの進行方向が一致している場合、車載器110は、ビーコンBから送信されたデータに含まれている通知情報を示すデータを、ディスプレイ150へ出力する。
【0032】
ディスプレイ150は、文字や図形を表示する装置である。より具体的に説明すると、ディスプレイ150は、例えば、車両のセンターコンソールC等のような、搭乗者が視認し得る位置に設けられている。そして、ディスプレイ150は、車載器110と電気的に接続されている。そして、ディスプレイ150は、車載器110から出力されたデータの入力を受け付けると、そのデータによって示される通知情報を表示する。
【0033】
なおまた、本実施形態においては、説明が煩雑になることを防ぐことを目的として、車両が一の車載器110、GPS受信機130、及びディスプレイ150を備える構成について説明する。しかしながら、車両は、複数の車載器110、GPS受信機130、及びディスプレイ150を備えてよい。
【0034】
図3は、車載器110のブロック構成の一例を示す。車載器110は、測位データ入力受付部111、リンク特定部112、データ受信部114、進行方向特定部113、進行方向判定部115、及び通知情報出力部116を有する。以下の説明においては、各構成要素の機能、及び動作を詳述する。
【0035】
測位データ入力受付部111は、GPS受信機130から出力されたデータの入力を受け付ける。
【0036】
リンク特定部112は、GPSによる車両の位置の測位結果をマップマッチングして、車両が存在している道路網Gにおけるリンクを特定する。ここで、マップマッチングとは、車両は道路の上を走るものだという前提を持って、たとえ測位結果が道路以外の位置であろうとも、強制的に道路の上に合わせる(測位された走行経路と、地図データとを照合して、位置が道路からずれている場合でも、車両位置を近くの道路上に補正する。)処理である。
【0037】
データ受信部114は、車両の搭乗者に対して通知する通知情報と、その通知情報を通知すべき対象の車両の進行方向を指定する進行方向情報とを含むデータを受信する。
【0038】
進行方向特定部113は、道路網Gにおいて、車両が存在している第1のリンクLと、その第1のリンクLへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクLとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する。より具体的に説明すると、進行方向特定部113は、リンク特定部112が特定した第1のリンクLと、その第1のリンクLへ進入する前にリンク特定部112が特定した第2のリンクLとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する。
【0039】
進行方向判定部115は、データ受信部114が受信したデータに含まれる進行方向情報によって指定されている進行方向と、進行方向特定部113が特定した進行方向とが一致しているか否かを判定する。
【0040】
通知情報出力部116は、2つの進行方向が一致していると進行方向判定部115が判定した場合に、データ受信部114が受信したデータに含まれる通知情報を出力する。
【0041】
図4は、車載器110の動作フローの一例を示す。この動作フローにおいては、車両の進行方向を特定する処理について詳述する。なおまた、この動作フローの説明においては、
図1から
図3を共に参照する。
【0042】
車両の原動機が始動すると、GPS受信機130は、自位置の測位を開始する。例えば、GPS受信機130は、GPSによる電波航法と、加速度計、及び角速度計を用いた自立航法とを併用して、自位置を繰り返し測位する。そして、GPS受信機130は、自位置を測位する度に、その測位結果を示すデータを、車載器110へ出力する。
【0043】
車載器110の測位データ入力受付部111は、GPS受信機130から出力されたデータの入力を受け付けると(S101)、そのデータを、リンク特定部112へ送る。
【0044】
車載器110のリンク特定部112は、測位データ入力受付部111から送られたデータの入力を受け付ける度に、そのデータによって示されるGPSによる車両の位置の測位結果を、デジタル地図にマップマッチングして、車両が存在している道路網GにおけるリンクLを特定する(S102)。ここで、デジタル地図に示されている複数のリンクLには、そのリンクLを識別するための識別情報が対応付けられている。リンク特定部112は、マップマッチングして得られた位置に該当するリンクを、車両が存在している道路網GにおけるリンクLとして特定する。車両が走行している場合、リンク特定部112は、車両が走行している新たなリンクLを経時的に特定していくことになる。リンク特定部112は、新たなリンクを特定する度に、
図5、及び
図6に示すような、特定したリンクLの識別情報と共に、特定したリンクLの上り車線、及び下り車線の入口側にそれぞれ接続されているリンクLの識別情報と、特定したリンクLの上り車線、及び下り車線の出口側にそれぞれ接続されているリンクLの識別情報とを含むデータを、進行方向特定部113へ送る。例えば、
図1に示す道路網Gの場合、リンクL6の上り車線の入口側に接続されているリンクLは、リンクL4、及びリンクL7である。また、リンクL6の上り車線の出口側に接続されているリンクLは、リンクL1、リンクL2、及びリンクL5である。また、リンクL6の下り車線の入口側に接続されているリンクLは、リンクL1、リンクL2、及びリンクL5である。また、リンクL6の下り車線の出口側に接続されているリンクLは、リンクL4、及びリンクL7である。
【0045】
車載器110の進行方向特定部113は、リンク特定部112から送られたデータを受け取る度に、車両の進行方向を特定する(S103)。ここで、マップデータの各リンクにおいては、そのリンクとしての方向(リンク方向;正方向)が定められている。即ち、リンクの各端点は、始点及び終点のいずれかとして定められている。車両の進行方向は、車両が存在しているリンク(第1のリンク)のリンク方向に対する正負で表現される。進行方向特定部113は、第2のリンク(第1のリンクへ進入する前に車両が存在していたリンク)が、第1のリンクの始点及び終点のどちらに繋がっているかを判定し、車両の進行方向を、第1のリンクへの車両の進入方向から特定する。例えば、第2のリンクが第1のリンクの始点に繋がっていれば、車両の進行方向を”正”と判断する。例えば、進行方向特定部113は、リンクLにおける車両の進行方向の車線を特定する。ここで、進行方向特定部113は、
図5に示すような、車両の位置をリンクL6として特定するデータを受け取った後に、
図6に示すような、車両の位置をリンクL2として特定するデータを受け取ったとする。その場合、車両は、リンクL6からリンクL2へ移動していることになる。換言すれば、車両は、リンクL2の入口側にリンクL6が接続されている車線を移動していることになる。したがって、進行方向特定部113は、
図6に示すデータを参照して、入口側のリンクLがリンクL6であるリンクL2の進行方向の車線を特定する。この場合、進行方向特定部113は、車両の進行方向を、リンクL2の上り車線であると特定する。
【0046】
車載器110は、上述したステップS101〜S103の処理を繰り返し行う。このようにして、車載器110は、車両の進行方向を正確に特定することができる。
【0047】
図7は、車載器110の動作フローの一例を示す。この動作フローにおいては、ビーコンBからデータを受信したときの処理について詳述する。なおまた、この動作フローの説明においては、
図1から
図6を共に参照する。
【0048】
ビーコンBの無線通信範囲A内に車両が進入すると、車載器110のデータ受信部114は、ビーコンBから送信されているデータを受信する(S201:Yes)。そして、データ受信部114は、データを受信したことを通知するデータを、進行方向特定部113へ送ると共に、受信したデータに含まれている進行方向情報を示すデータを進行方向判定部115へ送り、受信したデータに含まれている通知情報を示すデータを通知情報出力部116へ送る。
【0049】
車載器110の進行方向特定部113は、データ受信部114から送られたデータを受け取ると、それまでに特定した最新の車両の進行方向を示すデータを、進行方向判定部115へ送る。
【0050】
車載器110の進行方向判定部115は、データ受信部114、及び進行方向特定部113から送られたデータをそれぞれ受け取ると、データ受信部114から受け取ったデータによって示される進行方向と、進行方向特定部113から受け取ったデータによって示される進行方向とが一致しているか否かを判定する(S203)。そして、進行方向特定部113は、その判定結果を示すデータを、通知情報出力部116へ送る。
【0051】
車載器110の通知情報出力部116は、データ受信部114から送られたデータを受け取る。そして、通知情報出力部116は、進行方向判定部115から送られたデータを受け取る。そして、そのデータによって示される判定結果が、2つの進行方向が一致しているとの判定結果であった場合(S203:Yes)、通知情報出力部116は、データ受信部114から受け取ったデータによって示される通知情報をディスプレイ150に出力して表示させる(S204)。一方、進行方向判定部115から受け取ったデータによって示される判定結果が、2つの進行方向が一致していないとの判定結果であった場合(S203:No)、通知情報出力部116は、データ受信部114から受け取ったデータを破棄して、ディスプレイ150に何ら情報を表示させない。
【0052】
このようにして、車両の搭乗者は、車両の進行方向に応じて、有用な情報のみを取得することができる。
【0053】
以上、説明したように、車載器110は、道路網Gにおいて、車両が存在している第1のリンクLと、その第1のリンクLへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する。
【0054】
このようにして、車載器110によっては、コストを掛けることなく、車両の進行方向を正確に特定することができる。
【0055】
また、上述したように、車載器110は、GPSによる車両の位置の測位結果をマップマッチングして、車両が存在している道路網GにおけるリンクLを特定する。そして、車載器110は、特定した第1のリンクと、その第1のリンクへ進入する前に特定した第2のリンクとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する。
【0056】
このようにして、車載器110によっては、GPSを利用しているにも拘らず、GPSの誤差の影響を受けることなく、車両の進行方向を正確に特定することができる。
【0057】
また、上述したように、車載器110は、車両の搭乗者に対して通知する通知情報と、その通知情報を通知すべき対象の車両の進行方向を指定する進行方向情報とを含むデータを受信する。そして、車載器110は、受信したデータに含まれる進行方向情報によって指定されている進行方向と、特定した進行方向とが一致しているか否かを判定する。そして、車載器110は、2つの進行方向が一致している場合に、受信したデータに含まれる通知情報を出力する。
【0058】
このようにして、車両の搭乗者は、車両の進行方向に応じて、有用な情報のみを取得することができる。
【0059】
なおまた、上述した実施形態においては、この発明における「進行方向特定装置」の一例として、車載器110を例にとって説明した。しかしながら、この発明における「進行方向特定装置」は、車載器110に限られない。例えば、この発明における「進行方向特定装置」は、DSRC(Dedicated Short Range Communication)路側無線装置であってもよい。
【0060】
図8は、本実施形態に係る車載器110を構成するコンピュータ800のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ800は、ホストコントローラ801により相互に接続されるCPU(Central Processing Unit)802、RAM(Random Access Memory)803、グラフィックコントローラ804、及びディスプレイ805を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ806により相互に接続される通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808、及びCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ809を有する入出力部と、入出力コントローラ806に接続されるROM(Read Only Memory)810、フレキシブルディスクドライブ811、及び入出力チップ812を有するレガシー入出力部とを備える。
【0061】
ホストコントローラ801は、RAM803と、高い転送レートでRAM803をアクセスするCPU802、及びグラフィックコントローラ804とを接続する。CPU802は、ROM810、及びRAM803に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィックコントローラ804は、CPU802等がRAM803内に設けたフレームバッファ上に生成する画像データを取得し、ディスプレイ805上に表示させる。これに代えて、グラフィックコントローラ804は、CPU802等が生成する画像データを格納するフレームバッファを、内部に含んでもよい。
【0062】
入出力コントローラ806は、ホストコントローラ801と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808、及びCD−ROMドライブ809を接続する。ハードディスクドライブ808は、コンピュータ800内のCPU802が使用するプログラム、及びデータを格納する。CD−ROMドライブ809は、CD−ROM892からプログラム、又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供する。
【0063】
また、入出力コントローラ806には、ROM810と、フレキシブルディスクドライブ811、及び入出力チップ812の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM810は、コンピュータ800が起動時に実行するブートプログラム、及び/又はコンピュータ800のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスクドライブ811は、フレキシブルディスク893からプログラム、又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供する。入出力チップ812は、フレキシブルディスクドライブ811を入出力コントローラ806へと接続すると共に、例えばパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ806へと接続する。
【0064】
RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク893、CD−ROM892、又はIC(Integrated Circuit)カード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM803を介してコンピュータ800内のハードディスクドライブ808にインストールされ、CPU802において実行される。
【0065】
コンピュータ800にインストールされ、コンピュータ800を車載器110として機能させるプログラムは、コンピュータ800を、ステップS103において、道路網Gにおいて、車両が存在している第1のリンクLと、その第1のリンクLへ進入する前に車両が存在していた第2のリンクLとの配置関係に基づいて、車両の進行方向を特定する進行方向特定部113として機能させる。
【0066】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS102において、GPSによる車両の位置の測位結果をマップマッチングして、車両が存在している道路網GにおけるリンクLを特定するリンク特定部112と、リンク特定部112が特定した第1のリンクLと、その第1のリンクLへ進入する前にリンク特定部112が特定した第2のリンクLとの配置関係に基づいて、ステップS103において、車両の進行方向を特定する進行方向特定部113として機能させてもよい。
【0067】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS201において、車両の搭乗者に対して通知する通知情報と、その通知情報を通知すべき対象の車両の進行方向を指定する進行方向情報とを含むデータを受信するデータ受信部114と、データ受信部114が受信したデータに含まれる進行方向情報によって指定されている進行方向と、進行方向特定部113が特定した進行方向とが一致しているか否かを、ステップS203において判定する進行方向判定部115と、2つの進行方向が一致していると進行方向判定部115が判定した場合に、データ受信部114が受信したデータに含まれる通知情報を、ステップS204において出力する通知情報出力部116として機能させてもよい。
【0068】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ800に読み込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である測位データ入力受付部111、リンク特定部112、データ受信部114、進行方向特定部113、進行方向判定部115、及び通知情報出力部116として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ800の使用目的に応じた情報の演算、又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の車載器110が構築される。
【0069】
一例として、コンピュータ800と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU802は、RAM803上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェース807に対して通信処理を指示する。通信インターフェース807は、CPU802の制御を受けて、RAM803、ハードディスクドライブ808、フレキシブルディスク893、又はCD−ROM892等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェース807は、ダイレクトメモリアクセス方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU802が転送元の記憶装置、又は通信インターフェース807からデータを読み出し、転送先の通信インターフェース807、又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0070】
また、CPU802は、ハードディスクドライブ808、CD−ROM892、フレキシブルディスク893等の外部記憶装置に格納されたファイル、又はデータベース等の中から、全部、又は必要な部分をダイレクトメモリアクセス転送等によりRAM803へと読み込ませ、RAM803上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU802は、処理を終えたデータを、ダイレクトメモリアクセス転送等により外部記憶装置へと書き戻す。
【0071】
このような処理において、RAM803は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM803、及び外部記憶装置等をメモリ、記憶部、又は記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なおまた、CPU802は、RAM803の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM803の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM803、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
【0072】
また、CPU802は、RAM803から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索、置換等を含む各種の処理を行い、RAM803へと書き戻す。例えば、CPU802は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数、又は定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、又は等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合、又は不成立であった場合に、異なる命令列へと分岐し、又はサブルーチンを呼び出す。
【0073】
また、CPU802は、記憶装置内のファイル、又はデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU802は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0074】
以上に示したプログラム、又はモジュールは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク893、CD−ROM892の他に、DVD(Digital Versatile Disk)、又はCD(Compact Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto−Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク、又はインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク、又はRAM等の記憶媒体を記録媒体として使用して、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ800に提供してもよい。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更、又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更、又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0076】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示したシステム、方法、装置、プログラム、及び記録媒体における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。