(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の支持構造体では、パネル設置領域が広大な駐車場や作業ヤードである場合に、傾斜梁が大きくなるため、ソーラーパネルの重量に比べて、傾斜梁の重量(自重)が極めて大きくなり、不経済な構造となる。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、上部構造を軽量化するとともに、建造コストを低減することができるソーラーパネル支持構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ソーラーパネルを支持するソーラーパネル支持構造体であって、パネル設置領域の一方側に立設された第一支持体と、前記パネル設置領域の他方側に立設された第二支持体と、前記第一支持体および前記第二支持体に張り渡された
複数の線材と、前記線材に固定されたパネル取付部材と、を備え、前記線材は、緊張力が付与されたPC鋼線またはPC鋼より線であり、前記パネル取付部材に前記ソーラーパネルが取り付けられ
ており、前記パネル取付部材は、隣り合う前記線材に架け渡された連結部材と、前記連結部材に設けられた複数の支持台と、前記支持台上に設けられた傾斜部材とで構成され、前記傾斜部材に前記ソーラーパネルが載置されている。
【0007】
この構成では、線材を用いてソーラーパネルを支持しているので、ソーラーパネル支持構造体の上部構造を軽量化することができる。また、ソーラーパネル支持構造体の全体構造が簡素化され、部品点数が少なくなる。したがって、本発明では、ソーラーパネル支持構造体の経済性を高めることができる。
また、本発明では、ソーラーパネル支持構造体の全体構造が簡素化されるため、ソーラーパネルの下方空間を有効に利用することができる。例えば、パネル設置領域を駐車場や作業ヤードに利用した場合には、ソーラーパネルが日除けとなるため、暑熱環境を改善することができる。
【0008】
前記したソーラーパネル支持構造体において
、前記連結部材が隣り合う前記線材をそれぞれ挟持するように構成してもよい。
この構成では、線材に対して連結部材を取り付け易くなっているため、ソーラーパネル支持構造体を建造するときの作業性を高めることができる。
【0009】
前記したソーラーパネル支持構造体において、前記第一支持体と前記第二支持体との間に、前記線材を支持する中間支持体を立設した場合には、線材のたわみが小さくなるとともに、風による線材の挙動を抑えることができる。
【0010】
前記したソーラーパネル支持構造体において、前記第一支持体は少なくとも三本の第一支柱を有し、前記第二支持体は少なくとも三本の第二支柱を有している場合には、二本の前記第一支柱の間に配置された前記第一支柱および二本の前記第二支柱の間に配置された前記第二支柱に、二本の前記線材を張り渡すことが望ましい。このように、二本の線材を支持する支柱を設けることで、支柱の本数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のソーラーパネル支持構造体では、上部構造を軽量化するとともに、全体構造が簡素化され、部品点数が少なくなるため、経済性を高めることができる。さらに、ソーラーパネルの下方空間を有効に利用することができ、機能性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、本発明のソーラーパネル支持構造体を駐車場に設置した場合を例として説明する。
【0014】
ソーラーパネル支持構造体1は、
図1に示すように、多数のソーラーパネル2を駐車場P(特許請求の範囲における「パネル設置領域」)の上方に支持するものである。ソーラーパネル2は、複数の太陽電池を並べて板状に形成したものであり、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する公知の太陽電池モジュールである。
【0015】
ソーラーパネル支持構造体1は、駐車場Pの一方側に立設された第一支持体10と、駐車場Pの他方側に立設された第二支持体20と、第一支持体10および第二支持体20に張り渡された複数の線材30と、第一支持体10と第二支持体20との間に立設された中間支持体40と、隣り合う線材30に固定された複数のパネル取付部材50と、を備えている。そして、各パネル取付部材50に多数のソーラーパネル2が取り付けられる。
なお、以下の説明では、線材30の延在する方向を左右方向とし、線材30に直交する水平方向を前後方向とする。
【0016】
第一支持体10は、
図2に示すように、駐車場Pの左縁部に沿って、前後方向に等間隔に並設された四本の第一支柱11によって構成されている。各第一支柱11は、地面に垂直に立設されている。
前後に隣り合う第一支柱11の上端部同士には、梁部材13が架け渡されている。四本の第一支柱11は、梁部材13を介して連結されている。
また、各第一支柱11には斜材12がそれぞれ設けられている。斜材12は、
図3に示すように、駐車場Pの外側となる第一支柱11の左側で地面に立設されており、斜材12の上端部は第一支柱11の上端部に取り付けられている。
【0017】
第一支柱11および斜材12の下端部は、地盤に埋設された第一フーチング15に接続されている。また、第一フーチング15は、地盤に埋設された複数の基礎杭16の上端部に接続されている。
このように、第一支柱11および斜材12は、第一フーチング15および基礎杭16に支持されているため、第一支柱11および斜材12の引き抜き耐力が大きくなっている。
【0018】
第二支持体20は、
図2に示すように、前記した第一支持体10に対して左右対称の構成となっており、駐車場Pの右縁部に並設された四本の第二支柱21によって構成され、各第二支柱21が梁部材23を介して連結されている。
また、各第二支柱21には斜材22がそれぞれ設けられており、第二支柱21および斜材22は第二フーチング25および基礎杭26に支持されている。
【0019】
線材30は、左右一対の第一支柱11および第二支柱21に張り渡されたPC鋼より線である。線材30の左端部は第一支柱11の上端面に取り付けられ、右端部は第二支柱21の上端面に取り付けられている。線材30には緊張力が付与されている。
【0020】
中間支持体40は、第一支持体10と第二支持体20との間で線材30を支持するものである。本実施形態では、第一支持体10と第二支持体20との間に二つの中間支持体40が等間隔に立設されている(
図3参照)。
中間支持体40は、前後方向に並設された四本の中間支柱41によって構成されている。前後に隣り合う中間支柱41の上端部同士には、梁部材43が架け渡されている。四本の中間支柱41は、梁部材43を介して連結されている。
【0021】
中間支柱41の上端面には、
図3に示すように、第一支柱11と第二支柱21と張り渡された線材30が取り付けられている。中間支柱41は、線材30が撓まないように支持している。
また、中間支柱41は、地盤に埋設された中間フーチング45に支持されている。中間支柱41には、線材30からの引張力を作用させないため、中間フーチング45に基礎杭が設けられていない。
【0022】
最前列および最後列の支柱11,41,21には一本の線材30が張り渡されている。また、最前列および最後列の支柱11,41,21の間に位置する二つの中間列の支柱11,41,21にはそれぞれ二本の線材30が張り渡されている。このように、本実施形態では、駐車場Pの上方に六本の線材30が平行して配置されている。
【0023】
パネル取付部材50は、
図4に示すように、前後に隣り合う線材30に架け渡された連結部材51と、連結部材51に設けられた複数の支持台52と、を備えている。支持台52にはソーラーパネル2が載置される。
【0024】
連結部材51は、長手方向が前後方向となるように配置された矩形断面の鋼管からなる。連結部材51の両端部の下部には、線材30に固定される固定部51aが設けられている。
固定部51aは、連結部材51の左右側面よりも左右方向(線材30の延在方向)に片持ち状に突出しており、
図5に示すように、線材30の上側に配置される。
固定部51aの左右両端部には、二つの挟持部材51bが、ボルト51cによってそれぞれ取り付けられる。両挟持部材51bは、線材30の下側に配置され、固定部51aと挟持部材51bとの間に線材30が挟み込まれることで、連結部材51の左右両端部が二本の線材30にそれぞれ固定される(
図4参照)。
【0025】
連結部材51の上部には、
図4に示すように、複数の支持台52が前後方向に間隔を空けて配置されている。支持台52は、連結部材51の上部に立設された板状の脚部53と、脚部53の上端部に取り付けられた傾斜部材54とを備えている。
【0026】
傾斜部材54は、
図5に示すように、長手方向が左右方向となるように配置された直線状の部材であり、縦板部の上縁部に横板部が垂直に形成されている。
傾斜部材54の左右方向の中間部は、脚部53の上端部にボルト(図示せず)によって連結されており、傾斜部材54は水平面に対して右端が上端となるように傾いている。
【0027】
ソーラーパネル2は、傾斜部材54の上面に載置され、傾斜部材54に形成された複数のボルト締付用穴(図示せず)に対して、ボルト(図示せず)等の固定手段を用いて取り付けられる。ソーラーパネル2は、前後に隣り合う傾斜部材54に架け渡され、ソーラーパネル2の前後の側縁部が二つの支持台52にそれぞれ支持される。
【0028】
これにより、ソーラーパネル2は、
図1に示すように、水平面に対して右端が上端となるように傾いた状態で、駐車場P(
図3参照)の上方に安定して配置される。また、前後に隣り合うソーラーパネル2は連続して配置される。
なお、ソーラーパネル2(傾斜部材54)の傾斜角度は限定されるものではなく、太陽光がソーラーパネル2の上面に対して効率良く照射されるように、ソーラーパネル支持構造体1の設置場所に応じて適宜に設定される。
【0029】
本実施形態では、三つのパネル取付部材50が前後方向に連続して並設されており、各パネル取付部材50はそれぞれ二本の線材30に支持されている。また、前後一列に配置されたパネル取付部材50が、左右方向に間隔を空けて複数列並設されている。
【0030】
これにより、前後一列に連続して配置されたソーラーパネル2が、左右方向に間隔を空けて複数列並設され、多数のソーラーパネル2が駐車場Pの上方に配置される。
なお、左右のソーラーパネル2の間隔は、
図3に示すように、一方のソーラーパネル2が他方のソーラーパネル2の影に入らないように設定するとともに、ソーラーパネル2による駐車場Pの日除け効果および風通しを考慮して設定する。
【0031】
図2に示すように、第一支持体10の前後方向の略中間部と、第二支持体20の前後方向の略中間部とには、配線ラック60が架け渡されている。
配線ラック60には、各ソーラーパネル2(
図1参照)から延ばされた送電ケーブル(図示せず)が集約される。配線ラック60は、パネル取付部材50に吊り下げられている。
配線ラック60の左端部は、地面に設置された直流交流変換装置61に接続されている。各ソーラーパネル2から延ばされた送電ケーブルは、配線ラック60を通じて、直流交流変換装置61に接続されている。
【0032】
以上のようなソーラーパネル支持構造体1では、
図1に示すように、線材30を用いてソーラーパネル2を支持しているので、上部構造を軽量化することができる。また、ソーラーパネル支持構造体1の全体構造が簡素化され、部品点数が少なくなる。したがって、ソーラーパネル支持構造体1の経済性を高めることができる。
【0033】
また、ソーラーパネル支持構造体1の全体構造が簡素化されているため、ソーラーパネル2の下方空間を有効に利用することができ、機能性を高めることができる。本実施形態のように、ソーラーパネル支持構造体1を駐車場Pに設置した場合には、多数のソーラーパネル2が日除けとなるため、暑熱環境を改善することができる。
【0034】
また、パネル取付部材50は、隣り合う線材30に固定されているため、パネル取付部材30(ソーラーパネル2)を安定させることができる。
【0035】
また、
図2に示すように、PC鋼より線である線材30に緊張力が付与されるとともに、第一支持体10と第二支持体20との間に線材30を支持する中間支持体40が立設されているため、線材30のたわみが小さくなるとともに、風による線材30の挙動を抑えることができる。
【0036】
また、
図4に示すように、連結部材51は隣り合う線材30をそれぞれ挟持しており、線材30に対して連結部材51を取り付け易くなっているため、ソーラーパネル支持構造体1(
図1参照)を建造するときの作業性を高めることができる。
【0037】
また、
図2に示すように、最前列および最後列の支柱11,41,21の間に配置された中間列の支柱11,41,21には二本の線材30が張り渡されており、六本の線材30を前後四列の支柱11,41,21によって支持している。このように、線材30の本数よりも支柱11,41,21の列を少なくすることができ、支柱11,41,21の本数を少なくすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
図2に示す第一支柱11、中間支柱41および第二支柱21の本数および間隔は限定されるものではなく、駐車場P(パネル設置領域)の大きさに応じて適宜に設定される。
例えば、第一支持体10および第二支持体20をそれぞれ二本の支柱11,21によって構成することもできる。さらに、第一支持体10と第二支持体20との間に中間支持体40を設けなくてもよい。
また、パネル取付部材50に取り付けられるソーラーパネル2の枚数は限定されるものではない。さらに、太陽熱を利用したソーラーパネルを用いてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、
図2に示すように、第一支持体10、第二支持体20および中間支持体40を支柱11,21,41によって構成しているが、第一支持体、第二支持体および中間支持体の構成は限定されるものではなく、例えば、壁や建物等の構造体によって構成してもよい。
【0040】
また、第一支持体10と第二支持体20との間に張り渡される線材30の本数も限定されるものではない。また、第一支持体10の梁部材13と第二支持体20の梁部材23とに線材30を張り渡してもよい。また、線材30をPC鋼線によって構成してもよい。
【0041】
また、パネル取付部材50の配置は限定されるものではなく、日除け効果や風通し等を考慮して適宜に変更してもよい。例えば、前後に配置されたパネル取付部材50を左右方向にずらして千鳥状に配置してもよい。この場合には、前側のパネル取付部材50の後端部と、後側のパネル取付部材50の前端部とを同じ線材30に固定することで、前後のパネル取付部材50を一本の線材30に固定することができる。
【0042】
また、一本の線材30にパネル取付部材50を固定してもよい。さらに、線材30にパネル取付部材50を固定する方向は限定されるものではなく、例えば、連結部材51に筒状部位(図示せず)を形成し、この筒状部位に線材30を挿通させ、その筒状部位の両端部に形成したボルト締付用穴に対して、ボルト(図示せず)等の固定手段を用いて、連結部材51を線材30に固定することもできる。
【0043】
また、本実施形態では、
図1に示すように、ソーラーパネル支持構造体1を駐車場Pに設置しているが、パネル設置領域は限定されるものではなく、各種作業ヤード、建物の屋上、道路および公園などの各種パネル設置領域にソーラーパネル支持構造体1を適用可能である。