特許第6053507号(P6053507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053507
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/328 20060101AFI20161219BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20161219BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   D06M13/328
   D06M13/463
   D06M15/53
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-282466(P2012-282466)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-125692(P2014-125692A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 典明
(72)【発明者】
【氏名】山元 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】山根 有介
【審査官】 馳平 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−250473(JP,A)
【文献】 特開2010−222711(JP,A)
【文献】 特開2006−138063(JP,A)
【文献】 特開2012−107369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00〜15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び水を含有し、30℃でのpHが2.5以上、4.0以下である、液体柔軟剤組成物。
(A)成分:(a1)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物、その酸塩及び(a2)その4級化物から選ばれる化合物、又はそれらを含む混合物 3質量%以上、20質量%以下
〔R−C(=O)−O−(C2pO)−C2qN(R3−m (1)
〔式中、
は炭素数11以上、23以下の炭化水素基であり、
は炭素数1以上、3以下の炭化水素基及びHO−(C2pO)−C2q基から選ばれる基であり、
mは1以上、3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0である。
同一分子内にR、R、HO−(C2pO)−C2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていても良い。〕
(B)成分:下記一般式(2)で表される化合物 0.1質量%以上、1.0質量%以下
−N(R ・X (2)
〔式中、Rは炭素数8以上、12以下の炭化水素基であり、Rは炭素数1以上、4以下のアルキル基、炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基及び−(CO)−H基から選ばれる基であり、sは平均付加モル数であり2以上、5以下の数である。Xは陰イオン基である。〕
(C)成分:炭素数9以上、12以下の脂肪族アルコールに、エチレンオキサイドが平均15モル以上、50モル以下付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル 3.0質量%以上、5.0質量%以下
(D)成分:無機塩 0.1質量%以上、1.0質量%以下
【請求項2】
請求項1に記載の液体柔軟剤組成物が袋状容器に充填された袋状柔軟剤物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中に排出されても、速やかに分解し、環境への負荷を低減することを目的に、分子内にエステル基を有する柔軟基剤が使用されている。
特許文献1には、脂肪酸、分子内にエステル基を有する柔軟基剤及び単一長鎖第4級アンモニウム塩を含有し、保存による柔軟性の低下を抑制し、各種温度での保存安定性に優れた液体柔軟仕上げ剤組成物が開示されている。
特許文献2には、分子内にエステル基を有する柔軟基剤及び単一長鎖第4級アンモニウム塩を含有し、洗濯時に濯ぎが不充分であっても好ましい柔軟性能を付与することのできる柔軟仕上げ剤が開示されている。
【0003】
近年、環境意識の高まりにより、柔軟剤組成物は袋状の容器に充填された詰め替え品を購入し、それをボトルに詰替えて使用することが一般的となってきている。
【0004】
特許文献3には、非イオン界面活性剤と柔軟基剤とを含む柔軟剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート層、アルミニウム蒸着層が形成されたプラスチックからなる層、及びアルミニウム層から選ばれる1層以上含む、厚さ100〜250μmの積層材料から形成される袋状容器に充填した袋入り柔軟剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−81881号公報
【特許文献2】特開2004−525271号公報
【特許文献3】特開2010−222711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、分子内にエステル基を含む柔軟基剤を含有する液体柔軟剤組成物は、乳濁状態の外観の組成物として調製される。しかし、そのような乳濁状態の液体柔軟剤組成物は、冬場などに−10℃以下の条件にさらされると凍結し、その後、室温に戻ると粘度が増加してゲル状となることが見出されている。更には、乳濁状態の液体柔軟剤組成物が充填された袋状の容器が日光に暴露されると、容器の光が当たった面に接触している乳濁状態の液体柔軟剤組成物中に固形物が析出するという現象が生じることが明らかとなった。これを改善するためには、鎖式炭化水素の炭素数が長い基を1つだけ有し、他は親水性基か短鎖炭化水素基である、単一長鎖第4級アンモニウム塩が有効であることを本発明者らは見出したが、新たな問題として、組成物を製品として輸送される時を想定した評価方法として、組成物に振動を加えた場合に、単一長鎖第4級アンモニウム塩に起因すると考えられる粘度増加という新たな課題を見出すに至った。
【0007】
本発明は、保存安定性のみならず、凍結回復性に優れ、袋状容器に充填された状態で日光に暴露されても固形物の析出を抑制することができ、かつ振動が与えられても使用に適した粘度を維持できる、液体柔軟剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を含有し、30℃でのpHが2.5以上、4.0以下である、液体柔軟剤組成物に関する。
(A)成分:(a1)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物、その酸塩〔以下、(a1)成分という〕及び(a2)その4級化物〔以下、(a2)成分という〕から選ばれる化合物、又はそれらを含む混合物 3質量%以上、20質量%以下
〔R1−C(=O)−O−(Cp2pO)r−Cq2qmN(R23-m (1)
〔式中、
1は炭素数11以上、23以下の炭化水素基であり、
2は炭素数1以上、3以下の炭化水素基及びHO−(Cp2pO)r−Cq2q基から選ばれる基であり、
mは1以上、3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上、5以下の数である。
同一分子内にR1、R2、HO−(Cp2pO)r−Cq2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていても良い。〕
(B)成分:下記一般式(2)で表される化合物 0.1質量%以上、1.0質量%以下
3−N+(R43 ・X- (2)
〔式中、R3は炭素数8以上、12以下の炭化水素基であり、R4は炭素数1以上、4以下のアルキル基、炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基及び−(C24O)S−H基から選ばれる基であり、sは平均付加モル数であり2以上、5以下の数である。X-は陰イオン基である。〕
(C)成分:炭素数9以上、12以下の脂肪族アルコールに、エチレンオキサイドが平均15モル以上、50モル以下付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル 3.0質量%以上、5.0質量%以下
(D)成分:無機塩 0.1質量%以上、1.0質量%以下
【0009】
また、本発明は、上記本発明の液体柔軟剤組成物が袋状容器に充填された袋状柔軟剤物品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存安定性に優れ、袋状容器に充填された状態で日光に暴露されても固形物の析出を抑制することができ、かつ振動が与えられても使用に適した粘度を維持できる、液体柔軟剤組成物が提供される。本発明の液体柔軟剤組成物は、乳濁状態である場合でもこのような効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔(A)成分〕
(A)成分は、(a1)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物、その酸塩、及び(a2)その4級化物から選ばれる化合物又はそれらを含む混合物である。
〔R1−C(=O)−O−(Cp2pO)r−Cq2qmN(R23-m (1)
〔式中、
1は炭素数11以上、23以下の炭化水素基であり、
2は炭素数1以上、3以下の炭化水素基及びHO−(Cp2pO)r−Cq2q基から選ばれる基であり、
mは1以上、3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上、5以下の数である。
同一分子内にR1、R2、HO−(Cp2pO)r−Cq2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていても良い。〕
【0012】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、所定のアルカノールアミン化合物と脂肪酸とのエステル化反応や、所定のアルカノールアミン化合物と脂肪酸エステルとのエステル交換反応により製造することができる。一般式(1)中のR1は、脂肪酸の入手性の点から、飽和炭化水素基と不飽和炭化水素基とを含むことが好ましい。更には、脂肪酸の入手性の点から、炭素数14以上、18以下の飽和脂肪酸と、炭素数14以上、18以下の不飽和脂肪酸とを、炭素数14〜18の不飽和脂肪酸/炭素数14〜18の飽和脂肪酸=0.1以上、3以下のモル比で含むことが好ましい。前記モル比は、液体柔軟剤組成物の変色を抑制する点から、3以下が好ましい。一般式(1)中のR1は、炭素数14〜18の不飽和炭化水素基/炭素数14〜18の飽和炭化水素基=0.1以上、3以下のモル比であることが好ましい。
【0013】
飽和脂肪酸とは、分子内に不飽和基を有さない脂肪酸を表す。飽和脂肪酸としては、直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪酸が挙げられる。
【0014】
不飽和脂肪酸に含まれる不飽和基はシス体とトランス体が存在する。シス体とトランス体比の具体例は、モル比でシス体/トランス体=30/70以上、99/1以下のものが挙げられる。アルケニル基の入手性の観点から、モル比でシス体/トランス体=50/50以上、97/3以下が好ましい。本発明において、シス体とトランス体の比は1H−NMRの積分比で算出することができる。
【0015】
p及びqは2又は3の数である。(A)成分の製造の容易性の観点から、qは2の数が好ましい。
rは、繊維製品の柔軟化の点から、0以上、2以下が好ましく、0がより好ましい。
【0016】
(a1)成分である一般式(1)で表される化合物のうち、第3級アミン化合物は、液体柔軟剤組成物のpHにより、一部又は全てが酸塩の状態で含有していても良い。
【0017】
第3級アミン化合物が酸塩で存在する場合の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上、10以下の1価のカルボン酸、炭素数1以上、20以下の1価又は多価のスルホン酸、炭素数1又は2のモノアルキル硫酸エステルが挙げられる。より具体的にはグリコール酸、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、モノメチル硫酸エステル、モノエチル硫酸エステルが挙げられる。
【0018】
(a1)成分である一般式(1)で表される第3級アミン化合物を得る製造方法は特に制限されないが、例えば、下記一般式(1−1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸とのエステル化反応、又は一般式(1−1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸短鎖アルキル(メチル、エチルまたはプロピル)エステルとのエステル交換反応によって得ることができる。
【0019】
〔HO−(Cp2pO)r−Cq2qnN(R53-n (1−1)
〔式中、R5は炭素数1以上、3以下の炭化水素基から選ばれる基であり、nは1以上、3以下の数、p、q、rは、前記一般式(1)と同じ意味を表す。〕
【0020】
エステル化反応の例としては、例えば、特表2000−510171号公報の8〜9頁目に記載されている方法を適用することができる。
【0021】
エステル交換反応の例としては、例えば、特開平7−138211号公報の段落〔0013〕〜段落〔0016〕に記載の方法を適用することができる。
【0022】
(a2)成分である前記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物は、一般式(1)で表される第3級アミン化合物とアルキル化剤を用いた4級化反応により得ることができる。
【0023】
アルキル化剤は、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。4級化反応の例としては、例えば、特開平7−138211号公報の段落〔0017〕〜段落〔0023〕に記載の方法や、特開66号公報に記載の製造方法を適用することができる。
【0024】
(A)成分は、光暴露時の固形物の析出抑制の点から、一般式(1)において、R2がHO−(Cp2pO)r−Cq2q基である化合物が好ましい。(A)成分は複数の化合物の混合物であってもよく、その場合は(A)成分として、一般式(1)において、R2がHO−(Cp2pO)r−Cq2q基である化合物を含むことが好ましい。
【0025】
(A)成分が2種類以上の化合物の混合物である場合、mの数平均の数は1.2以上、2.5以下の混合物を用いることができる。繊維製品の柔軟化の観点から、mの数平均の数は、1.3以上、更に1.4以上が好ましく、そして、2.0以下、更に1.9以下が好ましい。
【0026】
前記mの数平均の数を満たす混合物を得る上で、その原料となる一般式(1−1)の化合物は異なる構造の化合物を混合したものを用いてもよいが、一般式(1−1)においてn=3の化合物を用いて調製した場合に前記mの数平均の数値範囲になることが好ましい。
【0027】
(A)成分は、前記(a1)成分及び(a1)成分の酸塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物、並びに(a2)成分の混合物である。混合物は、各々の成分を得た後、混合して得ることが出来る。
また、(a1)成分を4級化反応し(a2)成分を得る際に、未反応物や副反応物としての(a1)成分及びその酸塩を含む混合物として使用することもできる。
また、4級化反応率を調整することで、意図的に(a1)成分や(a1)成分の酸塩を含む混合物を得ることができる。
【0028】
(a1)成分及び(a1)成分の酸塩、並びに(a2)成分の質量の比率は、〔(a1)成分+(a1)成分の酸塩〕/〔(a2)成分〕で表される。
(a1)成分の質量は、一般式(1)で表される第3級アミン化合物の場合には第3級アミン化合物そのものの質量であり、該第3級アミン化合物の酸塩の場合には該第3級アミン化合物に換算した質量である。
(a2)成分の質量は、第3級アミン化合物の4級化に使用した4級化剤に由来する対イオン(例えば、ジメチル硫酸で4級化した場合にはメチル硫酸イオン)を含む質量である。
前記の質量の比率は、光暴露時の固体析出抑制の点で、〔(a1)成分+(a1)成分の酸塩〕/〔(a2)成分〕=0.01以上、更に0.1以上が好ましく、そして、0.6以下、更に0.5以下、更に0.3以下が好ましい。
【0029】
〔(B)成分〕
(B)成分は、下記一般式(2)で表される1種以上の化合物である。
3−N+(R43 ・X- (2)
〔式中、R3は炭素数8以上、12以下の炭化水素基であり、R4は炭素数1以上、4以下のアルキル基、炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基及び−(C24O)S−H基から選ばれる基であり、sは平均付加モル数であり2以上、5以下の数である。X-は陰イオン基である。〕
【0030】
一般式(2)の構造では、R3は、長鎖に相当する基であり、疎水性基として機能する基である。一方、一般式(2)の構造では、R4は、短鎖に相当する基又は親水性基として機能する基である。R3は光暴露時の固体析出抑制の点から、炭素数8以上、12以下の炭化水素基であり、炭素数10以上、12以下の炭化水素基が好ましい。炭化水素基はアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が好ましい。(B)成分の入手の容易性の点からアルキル基がより好ましい。更には炭素数10以上、12以下の直鎖のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が好ましい。
4の具体例としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基及び−(C24O)s−H基(ここで、sは2以上、5以下、好ましくは4以下の数である。)から選ばれる1種以上の基が挙げられる。一般式(2)で示される化合物は、同一分子内のR4は同じ基でも異なった基でもよい。一般式(2)中、R4の少なくとも2つが同じ基であることが好ましい。
【0031】
(B)成分の製造の容易性の点から、R4は、メチル基、エチル基及びヒドロキシエチル基から選ばれる基が好ましい。
【0032】
-は陰イオン基であり、具体的にはハロゲンイオン、例えば塩素イオン、臭素イオン、又は炭素数1もしくは2のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンが挙げられる。
【0033】
〔(C)成分〕
(C)成分は、炭素数9以上、12以下の脂肪族アルコールに、エチレンオキサイドが平均15モル以上、50モル以下、付加したポリオキシエチレンアルキルエーテルである。鎖凍結回復性の観点から、前記脂肪族アルコールは直鎖1級アルコール、分岐鎖1級アルコール及び直鎖2級アルコールから選ばれる1種以上が好ましい。ここで1級アルコールとは、水酸基が結合する炭素原子が第1炭素原子の化合物であり、2級アルコールとは、水酸基が結合する炭素原子が第2炭素原子である化合物を指すものとする。更に本発明では直鎖及び分岐鎖は、アルキル基の構造を指し、アルキル基が炭化水素基の枝分かれ構造を有する場合を分岐鎖とする。本発明では、例えば、水酸基以外で分岐構造を有さない脂肪族アルコールを直鎖2級アルコールとする。
【0034】
柔軟剤組成物に振動を与えられたときの増粘を抑制する観点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数は、15以上であり、20以上が好ましく、そして、50以下であり、40以下が好ましい。
【0035】
本発明では、(C)成分として、炭素数9以上、11以下の直鎖2級アルコールに、エチレンオキシドが平均20モル以上、40モル以下付加したポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0036】
〔(D)成分〕
(D)成分は、無機塩である。無機塩は、水溶性無機塩が好ましい。本発明では20℃、100gの脱イオン水に10g以上溶解する化合物を水溶性無機塩とする。無機塩として好ましくは、アルカリ金属塩化物及びアルカリ土類金属塩化物から選ばれる無機塩が挙げられる。更に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群から選ばれる1以上の無機塩が、組成物の貯蔵安定性の点から、好ましい。粘度調整の観点から、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群から選ばれる1以上の無機塩がより好ましい。
【0037】
〔液体柔軟剤組成物〕
本発明の液体柔軟剤組成物において、(A)成分の含有量は3質量%以上、20質量%以下である。(A)成分の含有量は、洗濯1回当たりの使用量を少なくできる点から、組成物中、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。また、(A)成分の含有量は、光暴露時の固体析出抑制の点で、組成物中、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましい。
【0038】
本発明の液体柔軟剤組成物において、(B)成分の含有量は、光暴露時の固体析出抑制の観点から、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましい。長期保存による分離抑制や経済性の観点から、1.0質量%以下であり、0.8質量%以下が好ましい。
【0039】
本発明の液体柔軟剤組成物において、(C)成分の含有量は、振動付与時の増粘抑制の観点から、3.0質量%以上であり、3.5質量%以上が好ましい。長期保存による分離抑制や経済性の観点から、5.0質量%以下であり、4.5質量%以下が好ましい。
【0040】
本発明の液体柔軟剤組成物において、(D)成分の含有量は、組成物の減粘の観点から0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましい。長期保存による分離抑制や経済性の観点から、1.0質量%以下であり、0.8質量%以下が好ましい。
【0041】
本発明の液体柔軟剤組成物の粘度(30℃)は、使用勝手の点から、5mPa・s以上、更に10mPa・s以上が好ましく、そして、100mPa・s以下、更に80mPa・s以下がより好ましい。組成物の粘度は、B型粘度計を用いて、No.1〜No.3ローターの何れかのローターを用い、60r/minで、測定開始から1分後の指示値である。液体柔軟剤組成物は30±1℃に調温して測定する。
【0042】
本発明の液体柔軟剤組成物は、(A)成分の加水分解安定性の点から、30℃でのpHが2.5以上、4.0以下である。pHは3.5以下が好ましい。pHはJIS K 3362;2008の項目8.3に従って30℃で測定する。
【0043】
本発明の液体柔軟剤組成物は、保存安定性の理由により、乳濁状態(エマルション)の液体柔軟剤組成物であることが好ましい。本発明において、乳濁状態の液体柔軟剤組成物とは、(A)成分が液体柔軟剤組成物中で可視光を散乱する程度の大きな粒子を形成することで、可視光を散乱し、目視上、外観が濁った状態の液体柔軟剤組成物を表す。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れた際に、紫外可視分光光度計をもちいて測定された、試料の可視光線透過率(波長660nm)が25%未満である、液体柔軟剤組成物を指す。
【0044】
〔任意成分〕
乳濁状態の液体柔軟剤組成物には、任意成分として油剤、pH調整剤、香料、酸化防止剤、キレート剤、染料、防腐剤、シリコーン化合物等を含有することが出来る。
【0045】
本発明において用いられる油剤は、繊維製品に更に優れた柔軟性能を付与するために用いられる。例えば、多価アルコールと脂肪酸のエステル化物等が挙げられ、好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。柔軟性能向上の点から、脂肪酸の種類としては、パルミチン酸、ステアリン酸、およびその混合物が好ましい。
【0046】
本発明において用いられるpH調整剤は、(A)成分の加水分解抑制を目的として柔軟剤組成物を最適なpHに調整するために用いられる。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、プロピオン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クロトン酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、ポリアクリル酸等の有機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン等の無機塩基、もしくは有機塩基が挙げられる。
【0047】
本発明において用いられる香料は、柔軟剤組成物に対して消費者に高い嗜好性を与えるために用いられる。嗜好性とは、高揚感や鎮静感、爽快感、など単に心地良い感情を与える効果だけではなく、汗臭やタバコ臭、生乾き臭など不快なニオイを防臭する効果、冷涼作用や温熱作用、催眠作用、催淫作用、抗うつ作用、抗菌作用、ダイエット作用など機能的な効果についても含み得る。香料成分としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料、特表平10−507793号公報記載の香料を使用することができる。
【0048】
香りの質や強度、柔軟剤系での安定性などの点から、適宜香料成分を選択して用いる。以下、本発明に配合できる、香料成分として用いられる化合物を、香料分野で示される分類に分けて挙げると次の通りになる。テルペン化合物として、リモネン、p−サイメン、α−ピネン、β−ピネン、β−カリオフィレンが挙げられ、アルコール化合物として、シス−3−ヘキセノール、トランス−2−ヘキセノール、メチルトリメチルシクロペンテニルブテノール、ジヒドロミルセノール、l−メントール、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ターピネオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロゲラニオール、ジメチルベンジルカルビノール、β−フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、シンナミックアルコール、アニスアルコール、ファルネソール、ネロリドール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、o,t−ブチルシクロヘキサノール、p,t−ブチルシクロヘキサノール、サンダルマイソールコア(2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール)(花王(株)製)、バグダノール(IFF社製)、ジャバノール(ジボダン社製)が挙げられ、エステル化合物として、酢酸ベンジル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸リナリル、酢酸ネリル、酢酸o,t-ブチルシクロヘキシル、酢酸p,t-ブチルシクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸テトラヒドロゲラニル、酢酸テルペニル、酢酸イソボルニル、酢酸l−メンチル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、酢酸スチラリル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸ヘキシル、酢酸シンナミル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸2−フェニルエチル、プロピオン酸シトロネリル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸アリル、酪酸ゲラニル、酪酸シトロネリル、酪酸イソアミル、酪酸アミル、酪酸アリル、イソ酪酸フェノキシエチル、イソ酪酸ゲラニル、イソ吉草酸ゲラニル、カプロン酸エチル、カプロン酸アリル、エナント酸エチル、エナント酸アリル、オクタン酸エチル、アンスラニル酸メチル、安息香酸シス−3−ヘキセニル、安息香酸ベンジル、サリチル酸アミル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸2−フェニルエチル、メチルジヒドロジャスモネート、クマリン、γ−オクタラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−デカラクトン、γ−ノナラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、シクロペンタデカノリド、シクロペンタデセノリド(ハバノライド、フィルメニッヒ社製)、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、11-オキサ-16-ヘキサデカノリド(ムスクR-1、ジボダン社製)、10-オキサ-16-ヘキサデカノリド(オキサリド、高砂香料工業社製)、12-オキサヘキサデカノリド、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート(ムスクC-14)が挙げられ、アルデヒド化合物として、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、10−ウンデセナール、ドデカナール、シトラール、シトロネラール、アニスアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、マイラックアルデヒド、リリアール、リラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、ヘリオナールが挙げられ、ケトン化合物として、フロラロゾン、l−カルボン、メントン、シスジャスモン、ゲラニルアセトン、ダマスコン類、ダマセノン類、α−ダイナスコン、イオノン類、メチルイオノン類、β−メチルナフチルケトン、イソEスーパー、ラズベリーケトン、マルトール、エチルマルトール、カシュメラン(IFF社製)、5-シクロヘキセデセノン-1-オン(ムスクTM-II)が挙げられ、エーテル化合物として、アネトール、オイゲノール、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、1,8−シネオール、セドリルメチルエーテル、アンブロキサン(3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン)、エトキシメチルシクロドデシルエーテル(ボアサンブレンフォルテ、花王(株)製)、含窒素化合物として、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、インドール、アセチルセドレン、アントラニル酸メチル、N−メチルアントラニル酸メチル、オーランチオール、ペオニル(ジボダン社製)等を挙げることが出来る。
【0049】
このような組成物に使用される香料は、香りの持続性、残香性を目的として香料をマイクロカプセル化して配合してもよい。香料のマイクロカプセルは、芯物質の香料を壁材で包んだ球状物質であり、その役割は芯物質の香料を保護し、カプセルに物理的な力が加わった際にカプセルの壁が破れて芯物質の香料を放出するものである。
【0050】
また、香りの持続性、残香性を目的として、ケイ酸と、香料として用いられるアルコール(以下、「アルコール性香料」という。)とのエステル、例えば、特開2009−256818号公報の一般式(1)で表される化合物などを用いることができる。アルコール性香料としては、下記i)〜iii)のアルコールが挙げられる。
i)logPが1〜5の脂肪族アルコール
具体的には、シス−3−へキセノール(1.4)、ゲラニオール(2.8)、ネロール(2.8)、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール(3.0)、メントール(3.2)、シトロネロール(3.3)、ロジノール(3.3)、9−デセノール(3.5)、テトラヒドロリナロール(3.5)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)、4−メチル−3−デセン−5−オール(3.7)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)等が挙げられる。ここで、( )内は、logP値〔以下のii)とiii)についても同様〕である。
【0051】
ii)logPが1〜5の芳香族アルコール
具体的には、アニスアルコール(1.0)、ラズベリーケトン(1.1)、フェニルエチルアルコール(1.2)、オイゲノール(2.4)、イソオイゲノール(2.6)、ジメチルベンジルカルビノール(3.0)、フェニルエチルメチルエチルカルビノール(3.0)、3−メチル−5−フェニルペンタノール(3.2)、チモール(3.4)等が挙げられる。
【0052】
iii)logPが1〜5の、飽和又は不飽和の環式アルコール
具体的には、p−tert−ブチルシクロヘキサノール(3.1)、o−tert−ブチルシクロヘキサノール(3.1)、l−メントール(3.2)、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール(3.3)、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)エタノール(3.6)、サンタロール(3.9)、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール(3.9)ベチベロール(4.2)等が挙げられる。
【0053】
本発明において、logP値とは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告されており、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP"等で計算することができる。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと共に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。
【0054】
フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値を、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いる。
【0055】
本発明において用いられる酸化防止剤は、例えば、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤である。分子内にフェノール基を有する酸化防止剤は、香料の臭いの変化を抑制する為に用いられる。酸化防止剤を香料と併用すると、臭いの変化を抑制できるが、酸化を受けたフェノール基を有する酸化防止剤が着色されることで、柔軟剤組成物の変色が促進されることから、酸化防止剤の配合量は、酸化の影響を受けやすい香料成分とその含有量とともに、十分に確認した上で使用される。
【0056】
入手の容易性の点から、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤が好ましい。変色抑制の点から、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤が好ましい。
【0057】
本発明において用いられるキレート剤は、保存による柔軟剤組成物の変色や染料の褪色を抑制するために用いられる。例えば、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L−グルタミン酸−N,N−二酢酸、N−2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸及びそれらの塩から選ばれる一種以上が好ましい。
【0058】
本発明において用いられる染料は、柔軟剤組成物に対して消費者に高い嗜好性を与えるために用いられる。例えば、カラーインデックス酸性赤色染料、カラーインデックス酸性黄色染料及びカラーインデックス酸性青色染料からから選ばれる1種又は2種以上の染料である。
【0059】
カラーインデックス酸性赤色染料の具体例としては、C.I.Acid Red 18 C.I.Acid Red 27、C.I.Acid Red 52、C.I.Acid Red 82、C.I.Acid Red 114、C.I.Acid Red 138、C.I.Acid Red 186が挙げられる。
カラーインデックス酸性黄色染料の具体例としては、C.I.Acid Yellow 1 、C.I.Acid Yellow 7、C.I.Acid Yellow 23、C.I.Acid Yellow 141が挙げられる。
カラーインデックス酸性青色染料の具体例としては、C.I.Acid Blue 5、C.I.Acid Blue 9、C.I.Acid Blue 74が挙げられる。またポリマー染料として入手可能な染料も使用することができる。
【0060】
染料はキレート剤と併用することで、香料又は香料及び酸化防止剤を含有する柔軟剤組成物の変色を抑制することが出来る。変色抑制の点で、カラーインデックス酸性赤色染料、及びカラーインデックス酸性黄色染料から選ばれる1種又は2種以上の染料が好ましい。
【0061】
本発明において用いられる防腐剤は、柔軟剤組成物に防腐性を与えるために用いられる。例えば、ビグアニド系化合物、イソチアゾリン系化合物、イソチアゾリノン系化合物が挙げられる。具体例としては、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2≡ベンズイソチアゾリン−3−オンが挙げられ、それぞれ市販品として、「プロキセルIB」、「ケーソンCG」、「プロキセルBDN」を用いることもできる。
【0062】
本発明において用いられるシリコーン化合物は、繊維製品に更に優れた柔軟性能を付与するために用いられる。例えば、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。柔軟効果の観点から、中でもジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーンがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0063】
本発明の液体柔軟剤組成物は、繊維製品用として好適であり、繊維製品としては、衣料、布帛、寝具、タオル等が挙げられる。
【0064】
〔袋状柔軟剤物品〕
本発明の袋状柔軟剤物品は、上記した液体柔軟剤組成物が袋状容器に充填されたものである。
袋状容器は、少なくとも2層のプラスチック層が積層された積層材料で構成されたものである。この袋状容器としては、特開2001−098300号公報の段落〔0019〕〜段落〔0022〕又は特開2011−122093号公報に記載の袋状容器を使用できる。
【0065】
袋状容器を製造するための積層材料としては、最外層(光が最初に入射する層)に延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)や高密度ポリエチレン(HDPE)等からなる基材層〔層I〕が配置され、内側に無延伸ポリプロピレン(CPP)、直線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等からなるシーラント層〔層II〕が配置されたものが好ましい。日光暴露における固形物の析出抑制効果をより得易い点で、前記最外層として延伸ナイロン(ONy)からなる基材層〔層I〕が配置され、内側に直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)からなるシーラント層〔層II〕が配置された積層材料が好ましい。
【0066】
基材層〔層I〕の厚みは、剛性などについて必要最小限に保持され得る厚さであればよく、製袋加工性、コスト及び強度を加味して決めることができるが、10μm以上、50μm以下が好ましい。積層材料全体の厚みも、製袋加工性、コスト、強度及び剛性を加味して決めることができ、100μm以上、300μm以下が好ましい。
【0067】
フィルム各層の積層は、ポリウレタン系、エステル系等の接着剤や、カゼインなどの水溶性接着剤などの糊材を用いて行われる。
【0068】
袋状容器は、上記のような積層材料(複合フィルム基材)を、最内層となる層を内側にして重ね合わせ、その周縁部をヒートシール等により接着して袋状に成形して得られる。
【実施例】
【0069】
〔(A)成分〕
実施例で使用した(A)成分を以下に示す。
(a−1)成分
トリエタノールアミンとのR1COOHで表される脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.65/1で、エステル化反応させ、一般式(1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸(組成は後述の通り)が5質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.98等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った。
【0070】
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、下記の(a11−1)成分〜(a11−3)成分、(a21−1)成分〜(a21−3)成分、及び未反応の脂肪酸からなる混合物(合計で100質量%)であった。4級化率は92%であった。4級化率はアミン価から求めることができる。
【0071】
( )内の含有量は、(a11−1)成分〜(a11−3)成分、(a21−1)成分〜(a21−3)成分の第4級アンモニウムイオン部分(CH3OSO3-を除く部分)、及び未反応の脂肪酸の合計における各成分の含有割合を示す。
【0072】
【化1】
【0073】
未反応の脂肪酸:(2質量%)
製造に用いたR1COOHの組成を以下に示す。
ミリスチン酸:2質量%
パルミチン酸:27質量%
パルミトレイン酸:3質量%
ステアリン酸:32質量%
炭素数18で、不飽和基を1つ有する脂肪酸:33質量%
炭素数18で、不飽和基を2つ有する脂肪酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。前記不飽和基のシス/トランス体の質量比は85/15(1H−NMRによる、積分比)である。
【0074】
(a−2)成分
N−メチルジエタノールアミンとR1COOHで表される脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.9/1で、エステル化反応させ、一般式(1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸(組成は後述の通り)が5質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、10質量%のエタノールを添加し均一に混合した後、前記アミンに対してメチル基が0.98等量となるように、塩化メチルで4級化反応を行った。4級化率は90%であった。
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、下記の(a12−1)成分、(a22−1)成分、(a22−2)成分、及び未反応の脂肪酸からなる混合物(合計で100質量%)であった。
( )内の数字は、(a12−1)成分、(a22−1)成分、(a22−2)成分の第4級アンモニウムイオン部分(Cl-を除く部分)、及び未反応の脂肪酸の合計における各成分の含有割合を示す。
【0075】
【化2】
【0076】
未反応の脂肪酸:(8.7質量%)
製造に用いたR1COOHの組成を以下に示す。
パルミチン酸:10質量%
ステアリン酸:60質量%
炭素数18で、不飽和基を1つ有する脂肪酸:30質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。前記不飽和基のシス/トランス体比は1/1(1H−NMRによる、積分比)である。
【0077】
〔(B)成分〕
(b−1):N−ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド
(b−2):N−オクチルトリメチルアンモニウムクロリド
(b−3):N−ラウリル−N−ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム・メチルサルフェート
【0078】
〔(B’)成分〕
(b’−1):N−テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド
(b’−2):N−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド
【0079】
〔(C)成分〕
(c−1):ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを平均21モル付加させたポリオキシエチレンラウリルエーテル
(c−2):エマルゲン1135S−70〔Exxal 11アルコール(炭素数9〜11の分岐鎖1級アルコール、エクソンモービル社製)に、エチレンオキサイドを平均35モル付加させたポリオキシエチレンアルキルエーテル、花王(株)製〕
(c−3):ソフタノール400〔炭素数9〜11の直鎖2級アルコールに、エチレンオキサイドを平均40モル付加させたポリオキシエチレンアルキルエーテル、(株)日本触媒製〕
【0080】
〔(C’)成分〕
(c’−1):ネオドール91−8〔炭素数9〜11の直鎖アルコールに、エチレンオキサイドを平均8モル付加させたポリオキシエチレンアルキルエーテル、シェルケミカルズジャパン(株)製〕
【0081】
〔(D)成分〕
(d−1):塩化カルシウム
(d−2):塩化マグネシウム
【0082】
〔任意成分〕
(e−1):ステアリン酸モノ、ジ、トリグリセリド混合物(モノ/ジ/トリ=60/35/5、モル比)
(f−1):クエン酸
(g−1):水酸化ナトリウム
(h−1):表2の香料組成物
(i−1):1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(プロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン(株)製))
(j−1):高重合ジメチコンエマルジョン:25℃における動粘度が500,000mm2/sのジメチルポリシロキサン60質量%、平均エチレンオキサイド(以下EOという)付加モル数5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル1.5質量%、平均EO付加モル数23モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル4.5質量%、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩0.1質量%、水 残部のエマルジョン、分散粒子の平均粒子径500nm
【0083】
〔袋状容器〕
下記構成を有する積層材料を用いて成形された袋状容器(長さ:200mm、幅90mm)を用いた。層Iは外層、層IIは内層(組成物と接する層)とした。
(層I)延伸ナイロン(ONy)、厚さ15μm、裏面(層IIと接する面)にグラビア印刷(白ベタ2回)したもの
(層II)直線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、暑さ150μm
【0084】
<乳濁型液体柔軟剤組成物の製造方法>
表1(配合量の数字は質量%。各成分とも有効分で表示。)に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、乳濁型液体柔軟剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。
【0085】
300mLビーカーに、乳濁型液体柔軟剤組成物のでき上がり質量が200gとなるのに必要な量の90質量%相当量のイオン交換水と(B)成分〔又は(B’)成分〕、(C)成分〔又は(C’)成分〕、(i−1)成分を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。(B)成分〔又は(B’)成分〕及び(C)成分〔又は(C’)成分〕がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて下記の攪拌羽根を用いて攪拌した。
60±2℃の温度に調温した(B)成分〔又は(B’)成分〕、(C)成分〔又は(C’)成分〕、(i−1)成分を含むイオン交換水を、直径が5mmの攪拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根(羽根の数:3枚、羽根の長辺/短辺:3cm/1.5cm、羽根の設置:回転面に対して45度の角度)で撹拌(300r/m)しながら、65℃で(e−1)成分とともに加熱溶解させた(A)成分を3分間掛けて投入した。投入終了後に15分間撹拌した。
(D)成分の10質量%水溶液を投入し10間攪拌した。5℃のウォーターバスを用いて、内容物の温度が30±2℃になるまで冷却した。その後、順次、(f−1)成分、(g−1)成分、(h−1)成分、(j−1)成分を投入し5分間攪拌した。出来上がり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間攪拌した後、塩酸または水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整することで液体柔軟剤組成物を得た。
【0086】
表1の実施例、比較例の液体柔軟剤組成物について、乳濁型であること確認した。すなわち、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れ、紫外可視分光光度計(島津製作所製のUV−2500PC)を用いて測定された、液体柔軟剤組成物の可視光線透過率(波長660nm)は10%未満であり、エマルションの乳濁型液体柔軟剤組成物であることを確認した。乳濁型液体柔軟剤組成物の組成を表2に示す。
【0087】
<評価方法>
(1)外観安定性
液体柔軟剤組成物をNo.6ガラス透明広口規格ビンに40ml入れ、ポリエチレン製の中栓及びポリプロピレン製のスクリューキャップで蓋をした評価用サンプルを調製した。該評価用サンプルを、室温、具体的には20〜25℃の範囲で、20日保存した後の外観を観察した。外観に変化のないものを「○」とし、上層もしくは下層が水相分離してきたものを「分離」とした。
【0088】
(2)光安定性
(2−1)暴露試験
試験機は低温サイクルキセノンフェードメーター(型番;XL75、スガ試験機株式会社製)を使用した。
試験機内に、液体柔軟剤組成物を300g充填し、ヒートシール機で密封した袋状容器の最大面積面を、ランプに向けて設置し、下記の照射条件で光を照射した後、試験機の運転を止め、そのまま18時間放置した(1サイクル)。このサイクルを11サイクル行った後の、容器の上辺のシール部を摘み、内部の液体柔軟剤組成物を動かさないように注意深く、試験機内から取り出した。
*照射条件
・設定放射照度;42W/m2
・設定放射時間;6時間(積算放射照度;0.9MJ/m2
・ブラックパネル温度;45℃
【0089】
(2−2)析出した固形物の重量の測定
容器の上辺のシール部をハサミで裁断し、容器を逆さまにし、内容物(液体柔軟剤組成物)をステンレス製メッシュ(200メッシュ 目開き75μm)でろ過した。ろ過後、1分放置した後の、メッシュに残存した固体析出物の重量を測定した(ろ過前のステンレス製メッシュの重量を予め測定し、その差分を固体析出物の重量とした)。結果を表1に示す。
【0090】
(3)凍結回復性
液体柔軟剤組成物の凍結回復性を、凍結回復後の粘度で評価した。
試験機は低温恒温機(型番;PU−3K、エスペック株式会社製)を使用した。試験機内に、液体柔軟剤組成物を300g充填した袋状容器を配置し、−20℃で12時間、20℃で12時間静置する操作を1サイクルとして、このサイクルを3回繰り返した。
終了後、液体柔軟剤組成物90gを、No.11規格瓶に移し入れ、専用キャップで封をし、30℃のウォーターバスを用いて内容物温度30℃に調温した後、内容物温度を30℃に保ったまま1時間放置した。B型粘度計(型番;TVB−10東機産業株式会社製、No.1〜3のローターの何れかを使用、60r/min)を用いて各液体柔軟剤組成物の粘度測定を開始し、1分後の値を読み取った(粘度の単位は「mPa・s」)。この評価では、凍結回復後の粘度は500mPa・s以下が好ましい。結果を表1に示す。
【0091】
(4)振とう安定性
液体柔軟剤組成物の振とう安定性を、振とう保存後の粘度で評価した。
試験機は強力振とう機(型番;レシプロシェイカーSR−II、タイテック株式会社製)を使用した。No.6規格瓶に30gを封入し、振とう条件360rpmにて20秒振とうし、一週間室温で静置した。30℃のウォーターバスを用いて内容物温度30℃に調温した後、内容物温度を30℃に保ったまま1時間放置した。B型粘度計(型番;TVB−10東機産業株式会社製、No.1〜3のローターの何れかを使用、60r/min)を用いて各液体柔軟剤組成物の粘度測定を開始し、1分後の値を読み取った(粘度の単位は「mPa・s」)。この評価では、振とう保存後の粘度は100mPa・s以下が好ましい。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】