特許第6053605号(P6053605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053605
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20161219BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01R13/11 B
   H01R13/639 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-98655(P2013-98655)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-220120(P2014-220120A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】大久保 公貴
(72)【発明者】
【氏名】乙田 康博
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−002567(JP,U)
【文献】 実開昭61−166482(JP,U)
【文献】 実開昭57−161876(JP,U)
【文献】 特開平05−021106(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118656(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方が開放した筒状壁を有する雌端子と、前記筒状壁の前方から該筒状壁の内部に挿入されることで前記雌端子と接続される雄端子と、を有し、
前記雄端子が、伸長状態にしたとき前記筒状壁の内径よりも縮径し自由状態に戻したとき前記筒状壁の内径よりも拡径するコイルスプリングであって、伸長状態で前記雌端子の前記筒状壁の内部に挿入され、挿入後に自由状態とされることで前記筒状壁に外周が圧接するコイルスプリングによって構成されると共に、
引張方向の操作力を与えることで前記コイルスプリングを伸長状態にすると共に前記操作力を解除することで前記コイルスプリングの自由状態への戻りを許す操作部材が設けられ
前記コイルスプリングの基端が、固定端として電線に接続された端子ベースに固定され、前記コイルスプリングの先端が、自由端として前記操作部材に係止されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記雌端子と前記雄端子とが、互いに嵌合可能な第1のコネクタハウジングと第2のコネクタハウジングにそれぞれ、該両コネクタハウジングの嵌合方向と前記雌端子及び前記雄端子の軸線方向を一致させた状態で収容固定され、
前記雄端子を構成する前記コイルスプリングが、記第2のコネクタハウジングに収容されており、
前記コイルスプリングの内部に前記操作部材としての引張ロッドが、前記コイルスプリングに対して軸線方向に移動自在に挿入され、
前記引張ロッドの前端に前記コイルスプリングの自由端が係止され、前記引張ロッドの後端にスライダが連結され、
該スライダの一部が、前記第2のコネクタハウジングの外部に露出した状態で、該第2のコネクタハウジングにスライド自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記引張ロッドの前記前端に、前記コイルスプリングの自由端よりも前方に位置し、前記雌端子の前記筒状壁の内部に挿入されるときに、挿入をガイドするテーパ状のガイド頭部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌端子と、該雌端子に挿入される雄端子と、を有するコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来のコネクタの一例を示すもので、図4(a)〜図4(d)は第1のコネクタと第2のコネクタとが嵌合するまでの経過を示している。
【0003】
図4(a)に示すように、このコネクタは、コネクタハウジング510の端子収容室512に雌端子520を収容固定した第1のコネクタ500と、雄端子620を有する第2のコネクタ600とから構成されている。雌端子520には、雄端子620が挿入されてきたとき、雄端子620に押されて弾性変形させられることで、雄端子620に圧接して、雄端子620との間に接触荷重を生成する湾曲形状のバネ部521が設けられている。
【0004】
図4(b)に示すように、雄端子620が雌コネクタ500に挿入されると、雄端子620の前端が雌端子520のバネ部521に接触する。雄端子620が更に挿入されると、図4(c)及び(d)に示すように、雌端子520のバネ部521が雄端子620に押されることよって、弾性変形しながら押し広げられる。雄端子620は、バネ部521による弾性反力(バネ荷重)を受けながら、バネ部521と摺動して挿入完了位置に至り、これにより第1のコネクタ500と第2のコネクタ600の嵌合が成立する。
【0005】
この種のコネクタとしては、特許文献1に、雌端子が径方向に弾性変形可能な筒状壁を有するものとして構成され、雄端子が前記筒状壁に挿入されるピン状の端子として構成され、雄端子を雌端子の筒状壁の内部に挿入したとき、筒状壁が弾性変形して接触荷重を発生するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4209775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来のコネクタでは、雄端子を雌端子に挿入するとき、バネ荷重を受けながら雄端子を雌端子に挿入する必要があるので、バネ荷重が摩擦抵抗となり、挿入荷重が高くなってしまうという問題がある。また、摩擦抵抗を受けながら挿入することから、雄端子と雌端子の接点部が摩耗しやすいという問題もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、雄端子を雌端子に挿入するときの摩擦抵抗を減らすことができ、それにより、挿入荷重を小さくすることができると共に、接点部の摩耗を減らすことのできるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 前方が開放した筒状壁を有する雌端子と、前記筒状壁の前方から該筒状壁の内部に挿入されることで前記雌端子と接続される雄端子と、を有し、
前記雄端子が、伸長状態にしたとき前記筒状壁の内径よりも縮径し自由状態に戻したとき前記筒状壁の内径よりも拡径するコイルスプリングであって、伸長状態で前記雌端子の前記筒状壁の内部に挿入され、挿入後に自由状態とされることで前記筒状壁に外周が圧接するコイルスプリングによって構成されると共に、
引張方向の操作力を与えることで前記コイルスプリングを伸長状態にすると共に前記操作力を解除することで前記コイルスプリングの自由状態への戻りを許す操作部材が設けられ
前記コイルスプリングの基端が、固定端として電線に接続された端子ベースに固定され、前記コイルスプリングの先端が、自由端として前記操作部材に係止されていることを特徴とするコネクタ。
【0010】
(2) 前記雌端子と前記雄端子とが、互いに嵌合可能な第1のコネクタハウジングと第2のコネクタハウジングにそれぞれ、該両コネクタハウジングの嵌合方向と前記雌端子及び前記雄端子の軸線方向を一致させた状態で収容固定され、
前記雄端子を構成する前記コイルスプリングが、記第2のコネクタハウジングに収容されており、
前記コイルスプリングの内部に前記操作部材としての引張ロッドが、前記コイルスプリングに対して軸線方向に移動自在に挿入され、
前記引張ロッドの前端に前記コイルスプリングの自由端が係止され、前記引張ロッドの後端にスライダが連結され、
該スライダの一部が、前記第2のコネクタハウジングの外部に露出した状態で、該第2のコネクタハウジングにスライド自在に設けられていることを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ。
【0011】
(3) 前記引張ロッドの前記前端に、前記コイルスプリングの自由端よりも前方に位置し、前記雌端子の前記筒状壁の内部に挿入されるときに、挿入をガイドするテーパ状のガイド頭部が設けられていることを特徴とする上記(2)に記載のコネクタ。
【0012】
上記(1)の構成のコネクタによれば、雄端子がコイルスプリングによって構成されているので、雄端子を雌端子の筒状壁に挿入するときに、操作部材により伸長状態にすることで、コイルスプリングを縮径させることができ、筒状壁とコイルスプリングとの間に隙間を確保した状態で、雄端子を雌端子に挿入することができる。従って、ほとんど筒状壁との間に摩擦抵抗を受けずに、雄端子を雌端子の筒状壁の内部に挿入することができ、挿入抵抗を低くすることができると共に、接点部の摩耗を減らすことができる。
【0013】
また、挿入後は、操作部材に加えていた操作力を解除して、コイルスプリングを自由状態に戻れるようにするだけで、コイルスプリングを拡径させることができて、コイルスプリングの外周を筒状壁の内周に接触導通させることができる。この場合、螺旋状に巻かれたコイルスプリングの多数の点が筒状壁との接点部となるので、多接点構造により接触抵抗を低減でき接点部の温度上昇の低減を図ることができる。
【0014】
上記(2)の構成のコネクタによれば、雌端子と雄端子をそれぞれ、互いに嵌合するコネクタハウジングに収容しているので、雌端子と雄端子の嵌合状態をコネクタハウジングによって保護することができ、雌端子と雄端子の嵌合部に外部からの力が極力及ばないようにすることができる。また、コネクタハウジングの外部に露出した部分に指をかけてスライダを操作することにより、引張ロッドを介して内部のコイルスプリングを伸長状態にしたり戻したりすることができるので、操作性が良い。
【0015】
上記(3)の構成のコネクタによれば、引張ロッドの前端にテーパ状のガイド頭部を設けているので、雌端子の筒状壁の内部にコイルスプリングで構成された雄端子を挿入するとき、挿入しやすくなる。また、ガイド頭部がコイルスプリングに指が触れるのを防ぐことができるので、コイルスプリングを保護することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、雄端子をコイルスプリングで構成し、雄端子を雌端子の筒状壁の内部に挿入するとき、コイルスプリングを伸長状態にすることで、コイルスプリングと筒状壁との間に隙間を確保できるようにしたので、挿入時の摩擦抵抗を減らすことができる。従ってそれにより、挿入荷重を小さくすることができると共に、接点部の摩耗を減らすことができる。また、挿入後にコイルスプリングを伸長状態から自由状態に戻れるようにすることで、コイルスプリングを筒状壁に圧接させることができるので、雌端子と雄端子の接続を容易に行うことができる。しかも、コイルスプリングは多数の点で筒状壁に接触するので、多接点構造により接触抵抗を低減でき接点部の温度上昇の低減を図ることができる。よって、接点部の劣化が抑えられ、接続信頼性を向上させることができ、また、接続部抵抗が下がることにより、大電流を流すことができる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の実施形態のコネクタの接続前の断面図である。
図2図2は実施形態のコネクタの雄端子を構成するコイルスプリングを、伸長して縮径することで、雌端子に挿入した状態を示す断面図である。
図3図3図2に示すように雌端子にコイルスプリングを挿入した後、コイルスプリングの伸長を解除してコイルスプリングを拡径することで、雌端子の筒状壁にコイルスプリングが圧接した状態を示す断面図である。
図4図4(a)〜図4(d)は従来のコネクタの嵌合までの経過を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のコネクタの接続前の断面図、図2は同コネクタの雄端子を構成するコイルスプリングを、伸長して縮径することで、雌端子に挿入した状態を示す断面図、図3は、図2に示すように雌端子にコイルスプリングを挿入した後、コイルスプリングの伸長を解除してコイルスプリングを拡径することで、雌端子の筒状壁にコイルスプリングが圧接した状態を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、このコネクタは、互いに嵌合する第1のコネクタ100及び第2のコネクタ200の組み合わせからなる。第1のコネクタ100は、樹脂製の第1のコネクタハウジング110と、その内部に収容固定された金属製の雌端子120と、を備えて構成されている。また、第2のコネクタ200は、樹脂製の第2のコネクタハウジング210と、その内部に収容固定された金属製の雄端子220と、後述するその他の要素とを備えて構成されている。
【0021】
第1のコネクタハウジング110と第2のコネクタハウジング210は、軸線方向に沿って互いに嵌合可能に構成されており、雌端子120と雄端子220は、第1のコネクタハウジング110と第2のコネクタハウジング210の嵌合方向と軸線方向(挿入方向)を一致させた状態で、各コネクタハウジング110、210の内部に収容固定されている。
【0022】
第1のコネクタハウジング110は、前後方向に貫通した円筒壁111を有している。円筒壁111の前側の内部は端子収容室112となっており、端子収容室112に雌端子120が収容固定されている。円筒壁111の前端には、雌端子120の抜け防止のための係止壁114が設けられている。円筒壁111の外周111aは、第2のコネクタハウジング210との嵌合面として構成されている。
【0023】
雌端子120は、前部に円筒状の端子本体(筒状壁)121を有し、後部に電線加締部122を有している。電線加締部122には、電線Wの先端の絶縁被覆Wbを除去して導体Waを露出させた部分が接続されている。電線Wは、電線加締部122から後方に延び、第1のコネクタハウジング110の後端から外部に引き出されている。第1のコネクタハウジング110の後端と電線Wの絶縁被覆Wbとの間には、シールを兼ねた電線保持リングSが嵌められている。
【0024】
雌端子120の円筒状の端子本体121は、プレス加工によりスリット124を入れた金属板を円筒状に巻くことで構成されており、前方が、雄端子220を受け入れ可能に開放している。
【0025】
第2のコネクタハウジング210も、前後方向に貫通した円筒壁211を有している。円筒壁211の前側の内部は端子収容室212となっており、端子収容室212に雄端子220が収容固定されている。円筒壁211の内周211aは、第1のコネクタハウジング110の円筒壁111の外周111aと嵌合する嵌合面として構成されている。
【0026】
雄端子220は、コイルスプリング221で構成されており、導電メッキが施されている。このコイルスプリング221は、伸長状態にしたときに雌端子120の円筒状の端子本体121の内径よりも縮径し、自由状態に戻したときに雌端子120の円筒状の端子本体121の内径よりも拡径するような仕様に構成されている。そして、このコイルスプリング221は、伸長状態で雌端子120の円筒状の端子本体121の内部に挿入され、挿入後に自由状態とされることで、雌端子120の円筒状の端子本体121の内周に外周が圧接するようになっている。
【0027】
雄端子220を構成するコイルスプリング221は、基端221aを、電線Wが接続された端子ベース230に固定し、先端221bを自由端とした状態で、第2のコネクタハウジング210の端子収容室212に収容されている。端子ベース230は、前部にコイルスプリング221の基端221aを保持するスプリング保持部231を有し、後部に電線加締部232を有している。電線加締部232には、電線Wの先端の絶縁被覆Wbを除去して導体Waを露出させた部分が接続されている。電線Wは、電線加締部232から後方に延び、第2のコネクタハウジング210の後端から外部に引き出されている。第2のコネクタハウジング210の後端と電線Wの絶縁被覆Wbとの間には、シールを兼ねた電線保持リングSが嵌められている。
【0028】
コイルスプリング221の内部には、引張ロッド240が、コイルスプリング221に対して軸線方向に移動自在に挿入されている。引張ロッド240は、コイルスプリング221に引張方向の操作力を与えることでコイルスプリング221を伸長状態にする操作部材であり、操作力を解除することにより、コイルスプリング221を自由状態に戻れるようにするものである。
【0029】
引張ロッド240の前端242には、コイルスプリング221の自由端(先端221b)が係止された係止孔243が設けられ、引張ロッド240の後端241には、スライダ250の脚部251が連結されている。また、引張ロッド240の前端242には、コイルスプリング221の自由端(先端221b)よりも前方に位置し、雌端子120の円筒状の端子本体121の内部に挿入されるときに、挿入をガイドするテーパ状のガイド頭部245が設けられている。このガイド頭部245は、第2のコネクタハウジング210の円筒壁211の内部に位置しており、円筒壁211の内部に作業者などの指が挿入されようとしたときに、指の侵入を妨げてコイルスプリング221に指が触れるのを防止する保護キャップの役割を兼ねている。
【0030】
第2のコネクタハウジング210の円筒壁211の後端(嵌合するときに手で掴むグリップ部に相当する)の一部には、軸線方向に長いスライド溝215が設けられている。このスライド溝215には、スライダ250の操作部252(スライダの一部)が、第2のコネクタハウジング210の外部に露出した状態で、前後方向にスライド自在に設けられている。
【0031】
次に作用を説明する。
第1のコネクタ100と第2のコネクタ200を嵌合する際には、図2中の矢印Aで示すように、スライダ250の操作部252を前方に指でスライドさせる。そうすると、スライダ250に連結された引張ロッド240が前方に移動し、先端221bが引張ロッド240に係止されたコイルスプリング221が伸長状態なる。コイルスプリング221は、伸長状態になると縮径し、コイルスプリング221の外径が、雌端子120の円筒状の端子本体121の内径よりも小さくなる。
【0032】
そこで、この状態で、第1のコネクタハウジング110の円筒壁111の外周111aに第2のコネクタハウジング210の円筒壁211の内周211aを嵌合させると共に、コイルスプリング221よりなる雄端子220を、雌端子120の端子本体121の内部に挿入する。このとき、コイルスプリング221と雌端子120の端子本体121との間(図2中矢印N1で示す部分)には隙間ができるので、雌端子120とほとんど摺動せずに、雄端子220を雌端子120に挿入することができる。従って、ほとんど雌端子120との間に摩擦抵抗を受けずに、雄端子220を雌端子120の内部に挿入することができ、挿入抵抗を低くすることができると共に、接点部の摩耗を減らすことができる。
【0033】
また、挿入後は、スライダ250の操作部252から指を離す。そうすると、操作力が解除されることで、コイルスプリング221が自由状態に戻ろうとする。従って、図3に示すように、スライダ250がコイルスプリング221の復元力により矢印Bに示すように元の位置に戻り、コイルスプリング221が軸線方向に縮んだ状態になる。そうすると、コイルスプリング221が矢印Cで示すように拡径することになるので、コイルスプリング221の外周が雌端子120の端子本体121の内周に接触導通し(図3中矢印N2で示す部分)、雌端子120と雄端子220が電気的に接続される。
【0034】
この場合、螺旋状に巻かれたコイルスプリング221の多数の点が雌端子120の円筒状の端子本体121との接点部となるので、多接点構造により接触抵抗を低減でき接点部の温度上昇の低減を図ることができる。よって、接点部の劣化が抑えられ、接続信頼性を向上させることができ、また、接続部抵抗が下がることにより、大電流を流すことができる。
【0035】
また、このコネクタでは、雌端子120と雄端子220をそれぞれ、互いに嵌合する第1のコネクタハウジング110及び第2のコネクタハウジング210に収容固定しているので、雌端子120と雄端子220の嵌合状態をコネクタハウジング110、210によって保護することができ、雌端子120と雄端子220の嵌合部に外部からの力が極力及ばないようにすることができる。
【0036】
また、第2のコネクタハウジング210の外部に露出した部分に指をかけてスライダ250をスライド操作することだけで、引張ロッド240を介して内部のコイルスプリング221を伸長状態にしたり戻したりすることができるので、操作性が良い。
【0037】
また、このコネクタによれば、引張ロッド240の前端にテーパ状のガイド頭部245を設けているので、雌端子120の端子本体121の内部にコイルスプリング221で構成された雄端子220を挿入するとき、挿入しやすくなる。また、ガイド頭部245がコイルスプリング221に指が触れるのを防ぐことができるので、コイルスプリング221を保護することができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
例えば、上記実施形態では、第1のコネクタハウジング110に雌端子120を収容固定し、第2のコネクタハウジング210に雄端子220を収容固定した場合を示したが、その逆に、第1のコネクタハウジング110に雄端子220を収容固定し、第2のコネクタハウジング210に雌端子120を収容固定してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、雌端子120の端子本体121が全周連続した円筒状に形成されている場合を示したが、全周が連続していない円筒状に形成されていてもよい。例えば、複数の接触片が円筒状に配置されているだけでもよい。また、円筒状以外の形状の筒状であってもよい。
【0041】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0042】
[1] 前方が開放した筒状壁(121)を有する雌端子(120)と、前記筒状壁(121)の前方から該筒状壁(121)の内部に挿入されることで前記雌端子(120)と接続される雄端子(220)と、を有し、
前記雄端子(220)が、伸長状態にしたとき前記筒状壁(121)の内径よりも縮径し自由状態に戻したとき前記筒状壁(121)の内径よりも拡径するコイルスプリング(221)であって、伸長状態で前記雌端子(120)の前記筒状壁(121)の内部に挿入され、挿入後に自由状態とされることで前記筒状壁(121)に外周が圧接するコイルスプリング(221)によって構成されると共に、
引張方向の操作力を与えることで前記コイルスプリング(221)を伸長状態にすると共に前記操作力を解除することで前記コイルスプリング(221)の自由状態への戻りを許す操作部材(240)が設けられていることを特徴とするコネクタ。
【0043】
[2] 前記雌端子(120)と前記雄端子(220)とが、互いに嵌合可能な第1のコネクタハウジング(110)と第2のコネクタハウジング(210)にそれぞれ、該両コネクタハウジングの嵌合方向と前記雌端子(120)及び前記雄端子(220)の軸線方向を一致させた状態で収容固定され、
前記雄端子(220)を構成する前記コイルスプリング(221)が、基端(221a)を電線(W)が接続された端子ベース(230)に固定し先端(221b)を自由端とした状態で前記第2のコネクタハウジング(210)に収容されており、
前記コイルスプリング(221)の内部に前記操作部材(240)としての引張ロッド(240)が、前記コイルスプリング(221)に対して軸線方向に移動自在に挿入され、
前記引張ロッド(240)の前端(242)に前記コイルスプリング(221)の自由端が係止され、前記引張ロッド(240)の後端(241)にスライダ(250)が連結され、
該スライダ(250)の一部(252)が、前記第2のコネクタハウジング(210)の外部に露出した状態で、該第2のコネクタハウジング(210)にスライド自在に設けられていることを特徴とする上記[1]に記載のコネクタ。
【0044】
[3] 前記引張ロッド(240)の前記前端(242)に、前記コイルスプリング(221)の自由端よりも前方に位置し、前記雌端子(120)の前記筒状壁(121)の内部に挿入されるときに、挿入をガイドするテーパ状のガイド頭部(245)が設けられていることを特徴とする上記[2]に記載のコネクタ。
【符号の説明】
【0045】
110 第1コネクタハウジング
120 雌端子
121 円筒状の端子本体(筒状壁)
210 第2コネクタハウジング
220 雄端子
221 コイルスプリング
221a 基端
221b 先端
230 端子ベース
240 引張ロッド
241 後端
242 前端
245 ガイド頭部
250 スライダ
252 操作部(スライダの一部)
W 電線
図1
図2
図3
図4