(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重量平均分子量が、20,000〜400,000のアクリル変性エポキシ樹脂(A)、重量平均分子量が800〜20,000のポリヒドロキシポリエーテル樹脂(但し、アクリル変性エポキシ樹脂を除く)(B)、メラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、及びレゾール型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤(C)ならびに熱伝導性フィラー(D)を含有する熱伝導性接着剤であって、
アクリル変性エポキシ樹脂(A)、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)及び架橋剤(C)の固形分の合計量100質量部に対して、熱伝導性フィラー(D)を1〜60質量部含有する金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤。
熱伝導性フィラー(D)が、鱗片状アルミニウム、鱗片状ニッケル、鱗片状カーボン、窒化ホウ素及びダイアモンド粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤。
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)が、フェノール化合物とエピハロヒドリンとを重縮合させて得られる重合体(b1)を含む請求項1又は2に記載の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤。
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)が、フェノール化合物とエピハロヒドリンとを重縮合させて得られる重合体(b1)に、該重合体(b1)中のエポキシ基と反応性を有する1価のアミン化合物及び1価の酸化合物からなる群より選択される少なくとも一種(b2)を反応させることにより得られる重合体(b12)を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(但し、アクリル変性エポキシ樹脂を除く)(B)、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物及びレゾール型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤(C)ならびに熱伝導性フィラー(D)を含有する金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤である。以下、本発明について、詳細に説明する。
【0020】
[金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤]
アクリル変性エポキシ樹脂(A)
アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、エステル化法、変性エステル化法(直接重合法)、グラフト法等の変性方法によって合成することができる。エステル化法とは、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基とラジカル重合性不飽和二重結合とを併せ持つモノマーとラジカル重合性不飽和二重結合を有する他のモノマーとを共重合してなるカルボキシル基を有するアクリル共重合体中のカルボキシル基の一部と、ビスフェノール型エポキシ樹脂中のエポキシ基の一部とを、例えば有機溶剤中で、エステル化触媒の存在下に加熱してエステル反応せしめることによってエポキシ樹脂を変性する方法である。
【0021】
変性エステル化法(直接重合法)とは、ビスフェノール型エポキシ樹脂中のエポキシ基の一部を、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基とラジカル重合性不飽和二重結合とを併せ持つモノマー中のカルボキシル基と反応せしめ、樹脂中に重合性不飽和二重結合を導入し、ついで、この樹脂とラジカル重合性不飽和二重結合を有する他のモノマーとを、例えば有機溶剤中で、共重合することによってエポキシ樹脂を変性する方法である。
【0022】
グラフト法とは、ビスフェノール型エポキシ樹脂の存在下でベンゾイルパーオキサイド等のフリーラジカル発生剤を用いて、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基とラジカル重合性不飽和二重結合とを併せ持つモノマーと、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する他のモノマーの混合物を、例えば有機溶剤中で、共重合することにより、アクリル共重合体をビスフェノール型エポキシ樹脂にグラフトせしめてエポキシ樹脂を変性する方法である。
【0023】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)の原料として使用されるビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒等の触媒の存在下に縮合して高分子量化させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒等の触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られる樹脂、及び得られたこれらの樹脂又は上記低分子量エポキシ樹脂に、二塩基酸を反応させてなるエポキシエステル樹脂等をあげることができる。
【0024】
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、数平均分子量が好ましくは2,000〜30,000、さらに好ましくは3,000〜20,000であり、エポキシ当量が好ましくは1,000〜15,000g/eq、さらに好ましくは1,500〜10,000g/eqの範囲内であることが、硬化性、耐ブロッキング性、接着性等の点から好適である。
【0025】
本明細書において、樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量の測定は、JIS K 0124−83に準じて行ない、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により、標準ポリスチレンを基準として、測定した。
【0026】
後記製造例等における測定は、GPC装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー(株)製)、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)製、商品名)の4本を用いて、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RI屈折計の条件で行なった。
【0027】
また、本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析(DSC)によるものである。ガラス転移温度(Tg)はDSC(示差走査型熱量計)でJISK7121(プラッスチックの転移温度測定方法)に基づいて、10℃/分の昇温スピードで測定した値である。下記製造例等における測定は、DSCとして、「SSC5200」(商品名、セイコー電子工業(株)製)を用い、試料をサンプル皿に所定量秤取した後、130℃で3時間乾燥させてから行なった。
【0028】
上記ビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン等を挙げることができる。なかでもビスフェノールF、ビスフェノールAを好適に使用することができる。上記ビスフェノール化合物は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0029】
上記エポキシエステル樹脂の製造に用いられる二塩基酸としては、下記式(1)
HOOC−(CH
2 )n −COOH ・・・(1)
(式(1)中、nは1〜12の整数である。)
で示される化合物を好適に使用することができる。具体的には、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロフタル酸等をあげることができる。
【0030】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂として好適な市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の、jER828EL(エポキシ当量約187、数平均分子量約350)、jER1002(エポキシ当量約650、数平均分子量約1,200)、jER1004(エポキシ当量約915、数平均分子量約1,650)、jER1007(エポキシ当量約1,700、数平均分子量約2,900)、jER1009(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,750)、jER1010(エポキシ当量約4,500、数平均分子量約5,500);旭化成エポキシ(株)製の、アラルダイトAER6099(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800);及び三井化学(株)製の、エポミックR−309(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800)等を挙げることができる。
【0031】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、上記市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAと低分子量のエポキシ化合物とを反応させて高分子量化したビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することができる。
【0032】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の、jER806(エポキシ当量約170、数平均分子量約320)、jER4007P(エポキシ当量約2,300、数平均分子量約3,300)、jER4010P(エポキシ当量約4,400、数平均分子量約5,500)、等を挙げることができる。
【0033】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、上記市販のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールFと低分子量のエポキシ化合物とを反応させて高分子量化したビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用することができる。
【0034】
さらに、アクリル樹脂エポキシ樹脂(A)のエポキシ樹脂成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物と、ビスフェノールA及び/又はビスフェノールFとを反応させて高分子量化した化合物もエポキシ樹脂として使用することができる。
【0035】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)において、接着性の観点から特に、エポキシ樹脂として、原料成分であるビスフェノール及びビスフェノール型エポキシ樹脂の総量を基準にして、ビスフェノールF及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を15質量%以上含有する原料成分を反応させることにより得られるエポキシ樹脂を変性してなるアクリル変性エポキシ樹脂(A)を好適に使用することができる。
【0036】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)のエポキシ樹脂成分において、原料成分中、必須成分であるビスフェノールF及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の量は、接着性、耐ブロッキング性等の観点から、ビスフェノール及びビスフェノール型エポキシ樹脂の総量を基準にして15質量%以上であり、好ましくは18〜90質量%、さらに好ましくは20〜80質量%である。
【0037】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)の製造において使用されるカルボキシル基とラジカル重合性不飽和二重結合とを併せ持つモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等のモノマーが挙げられ、なかでもメタクリル酸を好適に使用することができる。これらは単独もしくは2種以上を組合せて使用することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0038】
上記アクリル変性エポキシ樹脂(A)において使用されるラジカル重合性不飽和二重結合を有する他のモノマーは、上記カルボキシル基とラジカル重合性不飽和二重結合とを併せ持つモノマーと共重合可能なモノマーであればよく、求められる性能に応じて適宜選択して使用することができるものであり、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等の芳香族系ビニルモノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−,i−又はt−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−,i−又はt−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のC2〜C8ヒドロキシアルキルエステル;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のN−置換アクリルアミド系モノマー又はN−置換メタクリルアミド系モノマー等の1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。本発明においては、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する他のモノマーとしては、芳香族系ビニルモノマーとアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステルとの組み合わせを含むことが好ましい。
【0039】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、特にスチレン及びアクリル酸エチルの混合物を好適に使用することができ、スチレン/アクリル酸エチルの構成質量比が99.9/0.1〜40/60、さらには99/1〜50/50の範囲内であることが好ましい。
【0040】
上記エステル化法において、カルボキシル基を有するアクリル共重合体は、モノマーの構成比率、種類は特に制限されるものではないが、通常、カルボキシル基とラジカル重合性不飽和二重結合とを併せ持つモノマーが、全モノマーの総量に対し、15〜80質量%、特に20〜60質量%であることが好ましく、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する他のモノマーが85〜20質量%、特に80〜40質量%であることが好ましい。
【0041】
カルボキシル基を有するアクリル共重合体の調製は、例えば、上記したモノマー組成物を重合開始剤の存在下、有機溶剤中で溶液重合反応することにより容易に行うことができる。カルボキシル基を有するアクリル共重合体は、酸価が100〜500mgKOH/g、特に100〜400mgKOH/g、重量平均分子量が7,500〜150,000、特に10,000〜100,000の範囲内であることが好ましい。
【0042】
上記エステル化法は、自体公知の方法で行なうことができ、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂とカルボキシル基を有するアクリル共重合体との均一な有機溶剤溶液中にエステル化触媒を配合せしめ、実質的にエポキシ基の全てが消費されるまで、通常、60〜130℃の反応温度にて約1〜6時間反応させることによって行うことができる。
【0043】
上記エステル化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン化合物、トリフェニルフォスフィン等の第4級塩化合物等を挙げることができ、なかでも第3級アミン化合物を好適に使用することができる。
【0044】
ビスフェノール型エポキシ樹脂とカルボキシル基を有するアクリル共重合体との反応における固形分濃度は、反応系が反応に支障のない粘度範囲内である限り特に限定されるものではない。また、エステル付加反応させる際にエステル化触媒を使用する場合には、その使用量はビスフェノール型エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して通常、0.1〜1当量の範囲で使用するのがよい。
【0045】
ビスフェノール型エポキシ樹脂とカルボキシル基を有するアクリル共重合体の含有割合としては特に制限されるものではないが、通常、ビスフェノール型エポキシ樹脂が60〜90質量%、特に70〜90質量%であることが好ましく、カルボキシル基を有するアクリル共重合体が10〜40質量%、特に10〜30質量%であることが好ましい。
【0046】
上記グラフト法は、自体公知の方法で行うことができ、例えば80〜150℃に加熱されたビスフェノール型エポキシ樹脂の有機溶剤溶液中に、ラジカル発生剤と、カルボキシル基とラジカル重合性不飽和二重結合とを併せ持つモノマーとラジカル重合性不飽和二重結合を有する他のモノマーの混合物との均一な混合溶液を徐々に添加し、同温度に1〜10時間程度保持することによって行なうことができる。上記ラジカル発生剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾイルオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を使用することができる。
【0047】
グラフト法において、エポキシ樹脂成分とカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分との使用割合は、特に制限されるものではないが、通常、前者:後者の比が、95〜70質量%:5〜30質量%の範囲内であることが好適である。この場合、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、全重合性不飽和モノマー中、20〜80質量%となるよう配合するのがよい。グラフト重合反応におけるラジカル発生剤の使用量は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分の総量に対して通常、3〜15質量%の範囲内であることが好適である。
【0048】
前記エステル化法(変性エステル化法)においては、エステル付加反応の際に、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基にアクリル樹脂中のカルボキシル基がエステル付加反応するので、エポキシ樹脂成分中にエポキシ基が必要であり、エポキシ樹脂1分子当りエポキシ基は平均0.5〜2個、好ましくは0.5〜1.6個の範囲内であることが好ましい。一方、前記グラフト法においては、グラフト反応がエポキシ樹脂主鎖の水素引き抜きによって起こり、グラフト重合反応が進行するので、エポキシ樹脂中にエポキシ基は実質上存在しなくてもよい。
【0049】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)を調製する際の有機溶剤としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、カルボキシル基を有するアクリル共重合体又はカルボキシル基とラジカル重合性不飽和二重結合とを併せ持つモノマーとラジカル重合性不飽和二重結合を有する他のモノマーの混合物とを溶解し、且つこれらの反応生成物であるアクリル変性エポキシ樹脂を中和、水性化する際にエマルションの形成に支障を来さない有機溶剤である限り、自体公知のものを使用することができる。
【0050】
上記有機溶媒としては、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤及びカルビトール系溶剤が好ましい。この有機溶剤の具体例としては、イソプロパノール、ブチルアルコール、2−ヒドロキシ−4−メチルペンタン、2−エチルヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
【0051】
また、有機溶剤としては、上記以外の水と混合し難い有機溶剤もアクリル変性エポキシ樹脂(A)の水性媒体中での安定性に支障をきたさない範囲で使用可能であり、このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等をあげることができる。
【0052】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、カルボキシル基を有するものであり、水分散性及び貯蔵安定性等の観点から、酸価が10〜160mgKOH/g、特に20〜100mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
【0053】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、硬化性及び耐ブロッキング性の観点から、重量平均分子量が、20,000〜400,000、好ましくは25,000〜300,000、より好ましくは30,000〜200,000の範囲内であることが好ましい。
【0054】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、耐ブロッキング性及び塗布作業性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が、50〜160℃、特に、60〜150℃、さらに特に、70〜140℃の範囲内であることが好ましい。アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、塩基性化合物で樹脂中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和することにより水性媒体中に分散可能とすることができる。
【0055】
上記カルボキシル基の中和に用いられる塩基性化合物としては、アミン化合物、アンモニア等が好適に使用される。上記アミン化合物の代表例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン化合物;ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルカノールアミン化合物;モルホリン等の環状アミン化合物等を挙げることができる。アクリル変性エポキシ樹脂(A)の中和度は、特に限定されるものではないが、アクリル変性エポキシ樹脂(A)中のカルボキシル基に対して通常0.1〜2.0当量中和の範囲であることが好ましい。
【0056】
上記水性媒体は、水のみであってもよいが、水と有機溶剤との混合物であってもよい。上記有機溶剤としては、自体公知のものをいずれも使用でき、前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)の調製の際に使用できる有機溶剤として挙げたものを好適に使用することができる。本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤おける有機溶剤の量は、金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤の樹脂固形分総量に対して、環境保護の観点等から20質量%以下の範囲であることが望ましい。
【0057】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)を水性媒体中に中和、分散するには、常法に従えばよく、例えば、中和剤である塩基性化合物を含有する水性媒体中に、撹拌下にアクリル変性エポキシ樹脂(A)を徐々に添加する方法、アクリル変性エポキシ樹脂(A)を塩基性化合物によって中和した後、撹拌下にて、この中和物に水性媒体を添加するか又はこの中和物を水性媒体中に添加する方法等により行なうことができる。
【0058】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)を水性媒体中に分散した分散体の平均粒子径は、50〜1,000nm、特に、100〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0059】
なお、本発明において、樹脂粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒子アナライザーN5(商品名、ベックマン・コールター株式会社製、粒度分布測定装置)にて、試料を脱イオン水にて測定に適した濃度に希釈して、常温(20℃)にて測定を行った。
【0060】
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)としては、特定の分子量を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂の骨格を有する熱可塑性樹脂等を挙げることができる。当該ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)は、通常、エポキシ樹脂製造のための原料と同様の原科から製造されるものであり、主として、本接着剤の密着性及び耐ブロッキング性に寄与するものである。なお、本発明の接着剤において、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)とは、アクリル変性エポキシ樹脂以外のポリヒドロキシポリエーテル樹脂を示す。
【0061】
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)は、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとを反応して合成されたものである場合には、下記構造式で示される反復単位を基本骨格とする構造を有するものである。
【0063】
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)は、分子鎖中にOH基と−O−基(エーテル基)を多数含んでいる。OH基は、基材と水素結合を形成することにより密着性の増大に寄与し、−O−基は、分子内の回転運動が容易な構造であることにより、樹脂の可撓性の増大に寄与する。
【0064】
上記ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)は、例えば、以下の方法(1)又は方法(2)により合成することができる。
【0065】
方法(1):フェノール化合物とエピハロヒドリンとを重縮合する方法。フェノール化合物としては、通常、2価のフェノール化合物が使用され、単核型2価フェノールとしては、例えば、レゾルシン、ハイドロキノン、カテコール等を挙げることができる。ニ核型2価フェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等を挙げることができる。これらのフェノール化合物は単独で、あるいは2種以上を使用することができる。エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン等を使用することができる。上記において、なかでもビスフェノールAとエピクロルヒドリンとを反応させた重合体を好適に使用することができる。重縮合反応においては、必要に応じて酸又はアルカリ触媒を使用することができる。
【0066】
方法(2):フェノール化合物とエピハロヒドリンとを、エピハロヒドリン過剰の条件で、重縮合して得られた重合体(b1)のエポキシ基に、さらにエポキシ基と反応性を有する化合物(b2)とを反応させる方法。方法2において、フェノール化合物とエピハロヒドリンとの重縮合反応は、方法1と同様にして行なうことができる。方法(2)においては、フェノール化合物とエピハロヒドリンとの重縮合反応が、エポキシ化合物であるエピハロヒドリン過剰の条件で合成されるため、得られる重縮合反応物は、エポキシ基を有している。
【0067】
上記、方法(1)及び方法(2)における重縮合反応は、基本的に前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)中のエポキシ樹脂と同様にして行なうことができる。
【0068】
具体的には、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒等の触媒の存在下に縮合して高分子量化反応させることにより行うことができる。
【0069】
あるいは、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒等の触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより行うことができる。
【0070】
上記方法(2)の重縮合反応物としては、前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)の原料として例示したエポキシ樹脂を使用することができる。
【0071】
具体的には、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒等の触媒の存在下に縮合して高分子量化させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒等の触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られる樹脂等を挙げることができる。
【0072】
上記方法(2)において、エポキシ基と反応性を有する化合物(b2)としては、例えば、エポキシ基と反応性を有する化合物、具体的には、1価のアミン化合物、1価の酸化合物、リン酸化合物等を挙げることができる。
【0073】
1価のアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン等の1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の2級モノアミン;トリエチルアミン等の3級モノアミン等を挙げることができる。
【0074】
上記1価の酸化合物としては、例えば、一塩基酸等をあげることができる。一塩基酸としては、例えば、安息香酸、蟻酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ラウリル酸、ステアリン酸等の脂肪酸;ジメチロールプロピオン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシカルボン酸をあげることができる。
【0075】
上記リン酸化合物としては、メタリン酸、オルトリン酸、亜リン酸等をあげることができる。
【0076】
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)は、密着性及び耐ブロッキング性の観点から、重量平均分子量が800〜20,000、好ましくは1,000〜15,000、より好ましくは1,200〜10,000の範囲内である。
【0077】
また、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)は、水系化を容易にするため、界面活性剤等により、エマルションの形態であるものであってもよい。界面活性剤としては、通常のノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の界面活性剤を使用することができる。分散安定性の観点から、ノニオン系の界面活性剤により、エマルションの形態となっているものを好適に使用することができる。
【0078】
本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤において、アクリル変性エポキシ樹脂(A)及びポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)の割合(アクリル変性エポキシ樹脂(A)/ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B))は、両者の固形分質量割合で、20/80〜80/20、特に40/60〜80/20の範囲内であることが好ましい。
【0079】
架橋剤(C)
本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤に使用できる架橋剤(C)は、メラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物及びレゾール型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0080】
メラミン樹脂は、メラミンとアルデヒドとの反応により得られる樹脂であり、部分メチロール化メラミン樹脂及び完全メチロール化メラミン樹脂の両者が包含される。また、本発明の接着剤に使用されるメラミン樹脂は、接着性及び硬化性等の観点から、一般に、200〜2,000、好ましくは250〜1,600、さらに好ましくは300〜1,200の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0081】
上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、特にホルムアルデヒドが好適である。また、メチロール化メラミン樹脂を適当なアルコールによってメチロール基をさらに部分的にもしくは完全にエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に使用し得るアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0082】
メラミン樹脂としては、なかでも、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂;部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂;部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールの両者で部分的にもしくは完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を好適に使用することができる。なかでも、接着性及び硬化性等の観点から、メチルエーテル化メラミン樹脂、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、特にメチルエーテル化メラミン樹脂を好適に使用することができる。
【0083】
また、特に、イミノ基含有メチルエーテル化メラミン樹脂、イミノ基含有メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を硬化性の観点から好適に使用することができる。
【0084】
メラミン樹脂としては、市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル701」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0085】
上記のうち、イミノ基含有メチルエーテル化メラミン樹脂としては、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル701」を、イミノ基含有メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂としては、「サイメル202」を挙げることができる。
【0086】
上記メラミン樹脂はそれぞれ単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0087】
また、レゾール型フェノール樹脂、メラミン樹脂が関与する硬化反応を促進するため、必要に応じて、硬化触媒を使用することができる。この硬化反応を促進するための硬化触媒としては、一般に、スルホン酸化合物、スルホン酸化合物の中和物及びリン酸化合物等を使用することができる。
【0088】
スルホン酸化合物としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等を挙げることができる。スルホン酸化合物の中和物における中和剤としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アンモニア、苛性ソーダ、苛性カリ等の塩基性化合物を挙げることができる。
【0089】
ブロック化ポリイソシアネート化合物
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化した化合物である。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート化合物;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート化合物の如き有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ポリイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等を挙げることができる。これらのうち、ヘキサメチレンジイソシアネートが環化重合したイソシアヌレートを好適に使用することができる。
【0090】
上記ブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール化合物;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等ラクタム化合物;メタノール、エタノール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール化合物;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等オキシム化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物等のブロック化剤を好適に使用することができる。これらのうち、ラクタム系化合物、オキシム系化合物等が好ましい。
【0091】
上記ポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。上記ブロック化ポリイソシアネート化合物はそれぞれ単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0092】
また、ブロック化ポリイソシアネート化合物の硬化性を向上させるため硬化触媒を使用することもできる。硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒等を好適に使用することができる。
【0093】
レゾール型フェノール樹脂
レゾール型フェノール樹脂は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)及びポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)の架橋剤として働くものであり、フェノール、ビスフェノールA等のフェノール化合物とホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物とを反応触媒の存在下で縮合反応させて、メチロール基を導入してなるフェノール樹脂だけでなく、導入されたメチロール基の一部を炭素原子数6以下のアルコールでアルキルエーテル化したものも包含される。
【0094】
レゾール型フェノール樹脂の製造において用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等を挙げることができる。これらのフェノール化合物は1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0095】
レゾール型フェノール樹脂の製造に用いられるホルムアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0096】
メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、特に限定されないが、炭素原子数1〜8個の1価アルコールが好ましく、炭素数1〜4個の1価アルコールがより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の1価アルコールを用いるのが、特に好ましい。
【0097】
レゾール型フェノール樹脂は、重量平均分子量が、好ましくは300〜4,000、より好ましくは400〜3,000の範囲内であり、かつベンゼン核1核当りのメチロール基の平均個数が0.3〜3.0個、好ましくは0.5〜3.0個、さらに好ましくは0.7〜3.0個の範囲内であることが好適である。上記レゾール型フェノール樹脂を使用することによって、接着剤としての接着性を向上させることができる。
【0098】
本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤における架橋剤(C)の量は、接着性及び硬化性の観点から、アクリル変性エポキシ樹脂(A)、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)及び架橋剤(C)の固形分総量に対して、1〜30質量%であり、好ましくは3〜25質量%、さらに好ましくは5〜20質量%の範囲内である。
【0099】
熱伝導性フィラー(D)
本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤には、加熱硬化時の熱伝導性を向上させることを目的として、熱伝導性フィラー(D)を含有する。熱伝導性フィラー(D)は例えば、金属粉、鱗片状金属(例えば、鱗片状アルミニウム、鱗片状ニッケル)、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛等)、カーボン粉末、黒鉛、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブ、ダイアモンド粉末、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化珪素、炭化珪素等が挙げられる。ここで、上記金属粉、鱗片状金属の金属種の具体例としては、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム及び錫等を例示することができる。これらの中でも接着剤の安定性と熱伝導性から、特に、鱗片状アルミニウム、鱗片状ニッケル、鱗片状カーボン、ダイアモンド粉末、窒化ホウ素等が好ましい。
【0100】
鱗片状アルミニウムの市販品としては、アルペーストTCR−2060(東洋アルミニウム社製、商品名、平均粒子径16μm)、アルペーストWXM−5660(東洋アルミニウム社製、商品名、平均粒子径9μm)、アルペーストWXM−1160(東洋アルミニウム社製、商品名、平均粒子径32μm)、アルペーストWL−7678(東洋アルミニウム社製、商品名、平均粒子径17μm)、アルペーストEMR−D767E(東洋アルミニウム社製、商品名、平均粒子径17μm)、アルミペーストGX−180(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名、平均粒子径17μm)等が挙げられる。鱗片状ニッケルの市販品としては、HCA−1(NOVAMET会社製、商品名、平均粒子径10μm)等が挙げられる。
【0101】
鱗片状カーボンの市販品としては、BF−3K((株)中越黒鉛工業所製、商品名、平均粒子径3μm)、BF−10K((株)中越黒鉛工業所製、商品名、平均粒子径10μm)、UF−2(富士黒鉛工業製、商品名、平均粒子径5.2μm)、CBF−1(富士黒鉛工業製、商品名、平均粒子径8.4μm)等が挙げられる。
【0102】
窒化ホウ素の市販品としては、六方晶窒化ホウ素では、UHP−1(昭和電工社製、商品名、平均粒子径8μm)等が、立方晶窒化ホウ素では、ISBN−M 4−8(トーメイダイヤ社製、商品名、平均粒子径7μm)、ISBN−M 4−8(トーメイダイヤ社製、商品名、平均粒子径7μm)、ISBN−M 10−20(トーメイダイヤ社製、商品名、平均粒子径14μm)等が挙げられる。
【0103】
ダイアモンド粉末としては、IRM 3−8(トーメイダイヤ社製、商品名、平均粒子径4μm)等が挙げられる。
【0104】
このような熱伝導性フィラー(D)の平均粒子径(注1)は、3〜50μm、好ましくは5〜40μmが、熱伝導率、耐熱性、耐湿性、耐ヒートサイクル性の性能向上の為にも望ましい。
【0105】
(注1)平均粒子径:平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(倍率5,000倍)による電子顕微鏡写真において、伝熱性フィラー(D)の長径を測定し、n=20の平均値を求めて、平均粒子径(nm)とした。
【0106】
なお本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤における熱伝導性フィラー(D)の量は、接着性及び硬化性の観点から、アクリル変性エポキシ樹脂(A)、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)及び架橋剤(C)の固形分の合計量100質量部に対して1〜60質量部であり、好ましくは3〜50質量部、さらに好ましくは5〜40質量部の範囲内である。
【0107】
本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤は、さらに必要に応じて着色顔料、光輝性顔料、添加剤(ブロッキング防止剤、潤滑性付与剤、消泡剤、沈降防止剤、増粘剤、分散剤等)、有機溶剤等を添加することができる。
【0108】
上記ブロッキング防止剤としては、体質顔料(例えば、シリカ微粉末、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリン、球状シリカ、球状ニッケル、アルミナホワイト等)、有機微粒子(ナイロン微粒子、ポリオレフィン微粒子、アクリル樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、シリコーンゴム微粒子、ウレタン樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子、ポリ四弗化エチレン微粒子等)等を挙げることができる。
【0109】
上記潤滑性付与剤は、接着剤表面に潤滑性を付与するために添加されるものであり、潤滑性付与剤としては、例えば、脂肪酸エステルワックス;ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス;ラノリン、蜜蝋等の動物系ワックス;カルナウバワックス、水蝋等の植物系ワックス;マイクロクリスタリンワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス等のワックスを挙げることができる。
【0110】
本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤は、温度25℃において、フォードカップNo.4で50〜300秒の粘度で、固形分質量濃度20〜60質量%、好ましくは25〜50質量%が望ましい。金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤は、接着物である金属上に塗布し乾燥、硬化させることによって、接着物である金属を接着することができる。従って、本発明の接着剤は金属間の接着における用途に対して広く使用することができる。被塗物としては、特に制約はなく、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅、錫、各種金属メツキ鋼板等の金属を挙げることができる。
【0111】
これらの金属表面への金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤の塗布は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、ローラー塗装、浸漬塗装、ロールコート塗装、カーテンフローコーター塗装等のそれ自体既知の方法で行なうことができる。本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤の塗布量は、10〜1,000mg/dm2、特に20〜500mg/dm2の範囲内であることが好ましい。
【0112】
予備乾燥を行なう場合、予備乾燥は通常、塗布液中の溶剤を揮散させる程度で行なわれ、80〜250℃、特に90〜220℃程度の温度で、5秒間〜40分間、特に10秒間〜30分間で行なうことが好ましい。
【0113】
本発明の金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤の硬化は、100〜260℃、特に120〜240℃程度の温度で、5秒間〜40分間、特に10秒間〜30分間程度加熱することにより行なうことができる。接着剤を加熱硬化させることにより接着物である金属素材を強固に接着させることができる。
【0114】
熱交換器用伝熱管
本発明の熱交換器用伝熱管は、前記の熱伝導性接着剤を塗布して得られたものである。熱交換器用金属製伝熱管に用いる金属材としては、通常、伝熱性及び軽量化の点からアルミニウム系金属を使用するが、熱交換器の要求特性に応じて、銅系、鉄系さらにはマグネシウム系、チタン系等の金属材であってもよい。上記アルミニウム系金属とは、アルミニウム及びアルミニウム系合金を含むものである。
【0115】
熱交換器用金属製伝熱管の種類としては、管軸に垂直な断面において円形形状を呈する丸管の他、扁平な形状の管内部を複数の隔壁にて複数の流路に分割してなる構造を有する扁平多穴管(
図3参照)等、一般的に採用されているものを用いることができる。そして、それらのうち、円形断面形状のもの(丸管)においては、例えば、その内面に、多数の溝、例えば管軸に対して所定のリード角をもって延びるように螺旋状の溝を多数形成して、それらの溝間に所定高さの内面フィンが形成されるようにした、所謂、内面溝付伝熱管が挙げられる。また、扁平多穴管としては、ポートホール押出しで得られるもの等が挙げられる。
【0116】
本発明に係る熱交換機用伝熱管は、前記の金属製伝熱管の外周面に、前記接着剤を塗布し、乾燥することによって得ることができる。該接着剤の塗布方法は、刷毛塗り、ロールコータ塗装、スプレー、スポンジ塗布などの公知の方法が挙げられる。
【0117】
以下、製造例、実施例及び比較例をあげて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【実施例】
【0118】
エポキシ樹脂の製造
製造例1 エポキシ樹脂(a1)の製造
jER806(注2)579部、jER828EL(注3)165部 、ビスフェノールF 410部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下160℃で反応を行った。反応はエポキシ当量で追跡し、約6時間反応させることにより数平均分子量約8,000、エポキシ当量約6,500g/eqのビスフェノールF及びビスフェノールA併用型のエポキシ樹脂(a1)を得た。
【0119】
また、エポキシ樹脂(a1)の原料成分において、ビスフェノール及びビスフェノール型エポキシ樹脂の総量に対するビスフェノールF及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有率は、85.7質量%である。
(注2)jER806:三菱化学社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量約170、分子量約320
(注3)jER828EL:三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量約187、分子量約350。
【0120】
製造例2 エポキシ樹脂(a2)の製造
jER806(注2)800部、ビスフェノールF 448部、及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下160℃で反応を行った。反応はエポキシ当量で追跡し、約6時間反応させることにより数平均分子量約8,000、エポキシ当量約7,000g/eqのビスフェノールF型のエポキシ樹脂(a2)を得た。
【0121】
また、エポキシ樹脂(a2)の原料成分において、ビスフェノール及びビスフェノール型エポキシ樹脂の総量に対するビスフェノールF及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有率は、100質量%である。
【0122】
製造例3 エポキシ樹脂(a3)の製造
jER806(注2)268部、jER828EL(注3)546部 、ビスフェノールA 456部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下160℃で反応を行った。反応はエポキシ当量で追跡し、約6時間反応させることにより数平均分子量約7,800、エポキシ当量約5,600g/eqのビスフェノールF及びビスフェノールA併用型のエポキシ樹脂(a3)を得た。
【0123】
また、エポキシ樹脂(a3)の原料成分において、ビスフェノール及びビスフェノール型エポキシ樹脂の総量に対するビスフェノールF及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有率は、21.1質量%である。
【0124】
製造例4 エポキシ樹脂(b1)の製造
jER828EL(注3)558部、ビスフェノールA 329部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下160℃で反応を行った。反応はエポキシ当量で追跡し、約5時間反応させることにより数平均分子量約11,000、エポキシ当量約8,000g/eqのビスフェノールA型のエポキシ樹脂(b1)を得た。
【0125】
また、エポキシ樹脂(b1)の原料成分において、ビスフェノール及びビスフェノール型エポキシ樹脂の総量に対するビスフェノールF及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有率は、0質量%である。
【0126】
製造例1〜4の配合内容を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
アクリル樹脂の製造
製造例5 アクリル樹脂(c1)溶液の製造
還流冷却管、温度計、モノマー流量調整器及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、n−ブタノール1096部を仕込み、窒素気流下100℃に加熱した。次に、メタクリル酸210部、スチレン180部、アクリル酸エチル210部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤)18部の混合物を約3時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに同温度で2時間撹拌を続け、室温まで冷却することにより、固形分約35質量%のアクリル樹脂(c1)溶液を得た。得られたアクリル樹脂(c1)の酸価は228mgKOH/g、重量平均分子量は約25,000であった。
【0129】
製造例6 アクリル樹脂(c2)溶液の製造
還流冷却管、温度計、モノマー流量調整器及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、n−ブタノール1360部を仕込み、窒素気流下110℃に加熱した。次に、メタクリル酸63部、スチレン30部、メタクリル酸エチル117部、アクリル酸エチル90部、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤)54部の混合物を約5時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに同温度で2時間撹拌を続け、室温まで冷却することにより、固形分約35質量%のアクリル樹脂(c2)溶液を得た。得られたアクリル樹脂(c2)の酸価は137mgKOH/g、重量平均分子量は約7,800であった。
【0130】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)の製造
製造例7 アクリル変性エポキシ樹脂(A1−1)水性分散物の製造
還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、製造例1で得たエポキシ樹脂(a1)60部、製造例4で得たエポキシ樹脂(b1)25部、製造例5で得たアクリル樹脂(c1)溶液42.9部(固形分15部)及びジエチレングリコールモノブチルエーテル55.6部を仕込み、100℃に加熱し溶解させた。
【0131】
次に、N,N−ジメチルアミノエタノール3.7部を加え、100℃に保持し約1.5時間反応させることにより、樹脂酸価25mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A1−1)溶液を得た。
【0132】
その後、樹脂溶液の温度を70℃とし、脱イオン水218部を徐々に加えて水分散を行った。次いで、過剰の溶剤を除去するために減圧濃縮することにより、固形分約30質量%のアクリル変性エポキシ樹脂(A1−1)水性分散物を得た。
【0133】
アクリル変性エポキシ樹脂(A1−1)の樹脂固形分の重量平均分子量は約123,000、ガラス転移温度は125℃、水性分散物の平均粒子径は240nmであった。
【0134】
製造例8 アクリル変性エポキシ樹脂(A1−2)水性分散物の製造
還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、製造例2で得たエポキシ樹脂(a2)60部、jER1256(注4)62.5部(固形分25部)、製造例5で得たアクリル樹脂(c1)溶液42.9部(固形分15部)及びジエチレングリコールモノブチルエーテル18.1部を仕込み、85℃に加熱し溶解させた。
【0135】
次に、N,N−ジメチルアミノエタノール3.7部を加え、85℃に保持し約1.5時間反応させることにより、樹脂酸価25mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A1−2)溶液を得た。
【0136】
その後、樹脂溶液の温度を70℃とし、脱イオン水218部を徐々に加えて水分散を行った。次いで、過剰の溶剤を除去するために減圧濃縮することにより、固形分約30質量%のアクリル変性エポキシ樹脂(A1−2)水性分散物を得た。
【0137】
アクリル変性エポキシ樹脂(A1−2)の樹脂固形分の重量平均分子量は、約134,000、ガラス転移温度は115℃、水性分散物の平均粒子径は210nmであった。
【0138】
(注4)jER1256:三菱化学社製、重量平均分子量約12,000、エポキシ当量約8,000のビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液、固形分約40%。
【0139】
製造例9 アクリル変性エポキシ樹脂(A1−3)水性分散物の製造
還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、製造例2で得たエポキシ樹脂(a2)85部、製造例5で得たアクリル樹脂(c1)溶液42.9部(固形分15部)及びジエチレングリコールモノブチルエーテル55.6部を仕込み、100℃に加熱し溶解させた。次に、N,N−ジメチルアミノエタノール3.7部を加え、100℃に保持し約1.5時間反応させることにより、樹脂酸価25mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A1−3)溶液を得た。
【0140】
その後、樹脂溶液の温度を70℃とし、脱イオン水218部を徐々に加えて水分散を行った。次いで、過剰の溶剤を除去するために減圧濃縮することにより、固形分約30質量%のアクリル変性エポキシ樹脂(A1−3)水性分散物を得た。
【0141】
アクリル変性エポキシ樹脂(A1−3)の樹脂固形分の重量平均分子量は約106,000、ガラス転移温度は100℃、水性分散物の平均粒子径は220nmであった。
【0142】
製造例10 アクリル変性エポキシ樹脂(A1−4)水性分散物の製造
還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、製造例3で得たエポキシ樹脂(a3)85部、製造例5で得たアクリル樹脂(c1)溶液42.9部(固形分15部)及びジエチレングリコールモノブチルエーテル55.6部を仕込み、100℃に加熱し溶解させた。次に、N,N−ジメチルアミノエタノール3.7部を加え、100℃に保持し約1.5時間反応させることにより、樹脂酸価28mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A1−4)溶液を得た。
【0143】
その後、樹脂溶液の温度を70℃とし、脱イオン水218部を徐々に加えて水分散を行った。次いで、過剰の溶剤を除去するために減圧濃縮することにより、固形分約30質量%のアクリル変性エポキシ樹脂(A1−4)水性分散物を得た。
【0144】
アクリル変性エポキシ樹脂(A1−4)の樹脂固形分の重量平均分子量は、約132,000、ガラス転移温度は130℃、水性分散物の平均粒子径は220nmであった。
【0145】
製造例11 アクリル変性エポキシ樹脂(A2−1)の製造
還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、製造例4で得たエポキシ樹脂(b1)85部、製造例5で得たアクリル樹脂(c1)溶液42.9部(固形分15部)及びジエチレングリコールモノブチルエーテル55.6部を仕込み、100℃に加熱し溶解させた。次に、N,N−ジメチルアミノエタノール3.7部を加え、100℃に保持し約1.5時間反応させることにより、樹脂酸価25mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A2−1)溶液を得た。
【0146】
その後、樹脂溶液の温度を70℃とし、脱イオン水218部を徐々に加えて水分散を行った。次いで、過剰の溶剤を除去するために減圧濃縮することにより、固形分約30質量%のアクリル変性エポキシ樹脂(A2−1)水性分散物を得た。
【0147】
アクリル変性エポキシ樹脂(A2−1)の樹脂固形分の重量平均分子量は約108,000、ガラス転移温度は130℃、水性分散物の平均粒子径は250nmであった。
【0148】
製造例12 アクリル変性エポキシ樹脂(A2−2)の製造
還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、還流冷却管、温度計及び撹拌機を装着した四つ口フラスコに、製造例2で得たエポキシ樹脂(a2)75部、製造例6で得たアクリル樹脂(c2)溶液71.5部(固形分25部)及びジエチレングリコールモノブチルエーテル55.6部を仕込み、100℃に加熱し溶解させた。次に、N,N−ジメチルアミノエタノール3.7部を加え、100℃に保持し約1.5時間反応させることにより、樹脂酸価28mgKOH/gのアクリル変性エポキシ樹脂(A2−2)溶液を得た。
【0149】
その後、樹脂溶液の温度を70℃とし、脱イオン水218部を徐々に加えて水分散を行った。次いで、過剰の溶剤を除去するために減圧濃縮することにより、固形分約30質量%のアクリル変性エポキシ樹脂(A2−2)水性分散物を得た。
【0150】
アクリル変性エポキシ樹脂(A2−2)の樹脂固形分の重量平均分子量は約19,000、ガラス転移温度は95℃、水性分散物の平均粒子径は260nmであった。
【0151】
製造例7〜12の配合内容を表2に示す。
【0152】
【表2】
【0153】
レゾール型フェノール樹脂(C)の製造
製造例13 レゾール型フェノール樹脂(C1)の製造
反応容器に、石炭酸94部、37%ホルムアルデヒド水溶液243部及び苛性ソーダ1部を加え、60℃で3時間反応させた後、減圧下、50℃で1時間脱水した。ついで、濾過して苛性ソーダを濾別し、固形分約50%のレゾール型フェノール樹脂(C1)溶液を得た。得られたレゾール型フェノール樹脂(C1)の樹脂固形分は、重量平均分子量約1,100、ベンゼン核1核当りのメチロール基の平均個数は1.9個であった。
【0154】
製造例14 レゾール型フェノール樹脂(C2)の製造
反応容器に、ビスフェノールF 150部、37%ホルムアルデヒド水溶液243部及び苛性ソーダ1部を加え、60℃で3時間反応させた後、減圧下、50℃で1時間脱水した。ついで、濾過して苛性ソーダを濾別し、固形分約50%のレゾール型フェノール樹脂(C2)溶液を得た。
【0155】
得られたレゾール型フェノール樹脂(C2)の樹脂固形分は、ビスフェノールF骨格を有しており、重量平均分子量約1,800、ベンゼン核1核当りのメチロール基の平均個数は2.1個であった。
【0156】
金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤の製造
実施例1 熱伝導性接着剤No.1の製造
アクリル変性エポキシ樹脂(A1−1)40部(固形分)、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B1(注5)40部(固形分)、レゾール型フェノール樹脂(C1)10部(固形分、アルペーストWXM−1160(注15)30部を配合し、ガラス製メジアを入れたペイントシェーカーにて30分間分散することによって、固形分40%の熱伝導性接着剤No.1を得た。
【0157】
実施例2〜35、及び比較例1〜14
後記の表3〜表5に示す組成とする以外は、実施例1と同様にして熱伝導性接着剤No.2〜No.49を得た。
【0158】
試験板1の作製
アルミニウム素材(試験に応じて変更)上に、各熱伝導性接着剤を乾燥膜厚が10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、熱風乾燥機によって100℃で2分間予備乾燥させて、以下に示す試験を行なった。
【0159】
試験板2の作製
伝熱管として、アルミニウム合金(JIS A3003)を押出加工することによって、
図3に示すような断面形状を呈する、幅:16mm、厚さ:2mm、7穴の押出扁平多穴管を準備した。この多穴管上に、各熱伝導性接着剤を乾燥膜厚が10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、熱風乾燥機によって100℃で2分間予備乾燥させて試験「(注23)180度ピール剥離強度」に供した。表3〜表5中における性能試験は、下記の評価基準に従って行った。
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
(注5)ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂とモノエタノールアミンとの付加反応物の乳化物、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B1を固形分として40質量%含有、重量平均分子量5,800、エポキシ当量150,000g/eq(固形分当り)。
(注6)ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂と酢酸との付加反応物の乳化物、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B2を固形分として40質量%含有、重量平均分子量5,500、エポキシ当量180,000g/eq(固形分当り)。(注7)ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名、jER4007P)とモノエタノールアミンとの付加反応物の乳化物、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B3を固形分として40質量%含有、重量平均分子量10,800、エポキシ当量200,000g/eq(固形分当り)。
(注8)ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名、jER1007)の界面活性剤による乳化物、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂B4を固形分として40質量%含有、重量平均分子量5,400、エポキシ当量3,400g/eq(固形分当り)。
(注9)サイメル701:日本サイテックインダストリーズ(株)製、イミノ基含有メチルエーテル化メラミン樹脂(メチロール基も含有)、商品名、固形分82%、重量平均分子量700。
(注10)サイメル325:日本サイテックインダストリーズ(株)製、イミノ基含有メチルエーテル化メラミン樹脂(メチロール基も含有)、商品名、固形分80%、重量平均分子量800。
(注11)ブロックポリイソシアネート化合物A:ヘキサメチレンジイソシアネート3量体のオキシムブロック化物、固形分37質量%、NCO含有率3.6%。
(注12)ブロックポリイソシアネート化合物B:ヘキサメチレンジイソシアネートのラクタムブロック化物、固形分100質量%、NCO含有率14.3%。
(注13)BF−3K:中越黒鉛工業所製(株)、商品名、平均粒子径3μm、鱗片状カーボン
(注14)BF−10K:中越黒鉛工業所製(株)、商品名、平均粒子径10μm、鱗片状カーボンの市販品
(注15)アルペーストWXM−1160:東洋アルミニウム社製、商品名、平均粒子径32μm、鱗片状アルミニウムの市販品
(注16)アルペーストWL−7678:東洋アルミニウム社製、商品名、平均粒子径17μm、鱗片状アルミニウムの市販品
(注17)HCA−1:NOVAMET会社製、商品名、平均粒子径10μm、鱗片状ニッケルの市販品。
(注17B)UHP−1:昭和電工社製、商品名、平均粒子径8μm、窒化ホウ素の市販品
(注17C)ISBN−M 4−8:トーメイダイヤ社製、商品名、平均粒子径7μm、ダイアモンド粉末の市販品
(注17D)IRM 3−8:トーメイダイヤ社製、商品名、平均粒子径4μm、ダイアモンド粉末の市販品
【0164】
(注18)接着剤の貯蔵安定性:上記固形分濃度が40質量%となるように調整した各接着剤の貯蔵安定性を下記基準により評価した:
◎:30℃で1ヵ月貯蔵後の接着剤を塗装しても塗面異常(ブツ)が認められない;
○:30℃で2週間貯蔵後の接着剤を塗装しても塗面異常(ブツ)が認められないが、1ヵ月貯蔵後に塗面異常(ブツ)が認められる;
△:30℃で1週間貯蔵後の接着剤を塗装しても塗面異常(ブツ)が認められないが、2週間貯蔵後の接着剤を塗装すると塗面異常(ブツ)が認められる;
×:30℃で1週間貯蔵後の接着剤を塗装すると塗面異常(ブツ)が認められる。
【0165】
(注19)耐ブロッキング性:試験板1(#5052アルミニウム、板厚0.25mm)を10cm×10cmの大きさに2枚裁断し、塗装面側同士を合わせて、圧力5kgf/cm2にて、温度50℃で15分間放置した後の剥れ具合(剥し易さ)を以下の基準により評価した:
◎:抵抗なく剥すことができる;
○:塗膜の剥離は認められないが、剥す際、やや抵抗がある;
△:塗膜の剥離がわずかに認められ、剥す際、抵抗がある;
×:剥す際の抵抗が大きく、塗膜がかなり剥離するか、又は試験板同士を剥がすことができない。
【0166】
(注20)せん断接着強度:試験板1(#5052アルミニウム、板厚0.25mmに塗装)に塗装したものを10cm×1cmの大きさに2枚裁断し、塗装面側端の0.5cm2の面積分同士を合わせて、圧力18kgf/cm2、温度150℃で20分間圧着させた。その後、せん断接着強度をオートグラフにより測定した:
◎:せん断接着強度が、40kgf/0.5cm2以上;
○:せん断接着強度が、10kgf/0.5cm2以上、かつ40kgf/0.5cm2未満;
△:せん断接着強度が、5kgf/0.5cm2以上、かつ10kgf/0.5cm2未満;
×:せん断接着強度が、5kgf/0.5cm2未満。
【0167】
(注21)Tピール剥離強度:上記、試験板1(#1000アルミニウム(板厚0.1mm)に塗装)を10cm×1cmの大きさに2枚裁断し、塗装面側同士を合わせて圧力6kgf/cm2にて、温度150℃で20分間圧着させた。その後、Tピール剥離強度をオートグラフにより測定した:
◎:Tピール剥離強度が、1.0kgf以上/1cm幅;
○:Tピール剥離強度が、0.5kgf以上/1cm幅、かつ1.0kgf未満/1cm幅;
△:Tピール剥離強度が、0.3kgf以上/1cm幅、かつ0.5kgf未満/1cm幅;
×:Tピール剥離強度が、0.3kgf未満/1cm幅。
【0168】
(注22)熱伝導率:ブリキ板上に、各接着剤をバーコーターで乾燥膜厚50μmとなるように塗布し、100℃で15分間予備加熱を行った後、150℃で1時間加熱乾燥した。次いで、各塗膜を剥離(アマルガム法)してフィルムとした。このフィルムを一定の大きさ(70mm×140mm)にカットし、QTM−03(京都電子工業株式会社製、商品名、熱伝導率測定器)を用いて熱伝導率を測定した:
◎は、熱伝導率が 1.2W/mK以上;
○は、熱伝導率が、0.8W/mK以上で、かつ1.2W/mK未満である;
△は、熱伝導率が、0.4W/mK以上で、かつ0.8W/mK未満である;
×は、熱伝導率が、0.4W/mK未満である。
【0169】
(注23)180度ピール剥離強度:上記、試験板2(扁平状多穴伝導管に塗装)を用い、無塗装の#1000アルミニウム(板厚0.1mm)を、10cm×1cmの大きさに裁断し、圧力6kgf/cm2にて、温度150℃で20分間圧着させ貼り付けた。その後、180度ピール剥離強度をオートグラフにより測定した:
◎:180度ピール剥離強度が、1.2kgf以上/1cm幅;
○:180度ピール剥離強度が、0.8kgf以上/1cm幅、かつ1.2kgf未満/1cm幅;
△:180度ピール剥離強度が、0.4kgf以上/1cm幅、かつ0.8kgf未満/1cm幅;
×:180度ピール剥離強度が、0.4kgf未満/1cm幅。
【0170】
(注24)総合評価:本発明が属する金属製伝熱管用の熱伝導性接着剤の分野においては、当該接着剤は、貯蔵安定性、製造時における耐ブロッキング性、硬化性、接着性及び熱伝導性の全ての性能が優れていることが必要とされる。従って、以下の基準にて総合評価を行った。
【0171】
◎:接着剤の貯蔵安定性、耐ブロッキング性、せん断接着強度、Tピール剥離強度、熱伝導率及び180度ピール剥離強度の全ての項目が◎又は○であり、少なくとも1つが◎である;
○:上記6項目が全て○である;
△:上記6項目が全て◎、○又は△であり、少なくとも1つが△である;
×:上記6項目のうち少なくとも1つが×である。