(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回路基板と電気的に接続される基板接続部を一側に有するとともに、被接続部品と電気的に接続される部品接続部を他側に有し、前記基板接続部が前記回路基板の接続孔に挿通されて固定される複数のコネクタ端子と、
前記コネクタ端子を保持する保持壁を有するコネクタハウジングと、
前記保持壁に対して垂直方向に位置付けられ、前記基板接続部が挿通される貫通孔を有するコネクタ端子振れ抑止部材を備え、
前記コネクタ端子は、前記貫通孔の前記保持壁に対して奥側の孔面から前記保持壁までの寸法範囲かつ屈曲角度が90°以下で前記部品接続部に対して前記基板接続部が他のコネクタ端子と干渉することなく屈曲され、
前記コネクタ端子振れ抑止部材の貫通孔は、該貫通孔に挿通された基板接続部の中心軸位置を、前記接続孔の中心軸位置よりも保持壁寄りに位置付けるように形成されてなることを特徴とする基板用コネクタ構造。
前記貫通孔は、前記コネクタ端子の屈曲角度が90°よりも小さい場合には該コネクタ端子の基板接続部を一対の開口にそれぞれ接触させて前記基板接続部の位置を矯正しつつ拘束を与えるように形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の基板用コネクタ構造。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、コネクタハウジングに圧入されたコネクタ端子が直角に屈曲され、該コネクタ端子の先端がプリント回路基板の接続孔に挿通されて半田付けされる水平タイプの基板用コネクタ構造の一構成が例示されている。
【0003】
かかる基板用コネクタ構造では、コネクタ端子に所定のプレート部材(アライメント補正板)が取り付けられており、該プレート部材に形成された複数の貫通孔にコネクタ端子の先端をそれぞれ挿通することで、コネクタ出荷時や回路基板への半田付け時におけるコネクタ端子の振れ(アライメント)の抑制が図られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された基板用コネクタ構造においてコネクタ端子の振れを効果的に抑制するためには、プレート部材の貫通孔をコネクタ端子の大きさに合わせて極力小さくする必要がある。この点を考慮し、例えばかかる貫通孔の孔径をコネクタ端子の外径よりも僅かに大きい程度の寸法に設定した場合には該貫通孔にコネクタ端子を挿通し難くなり、無理に挿通しようとすればコネクタ端子が変形してしまうおそれがある。このため、現実的にはプレート部材の貫通孔の寸法(孔径)はコネクタ端子の大きさ(外径)に対して十分に余裕を持たせて設定しており、プレート部材だけでコネクタ端子の振れを抑制することは難しい。
【0006】
またコネクタ端子の屈曲精度が悪い場合、例えばコネクタ端子の振れ寸法が公差を外れるおそれもある。したがって、コネクタ端子を屈曲させる際には精度の確保が必要となり、屈曲加工を行う設備機器を十分な工数をかけて調整するとともに、加工時にコネクタ端子の厳正な寸法検査を行わねばならない。
【0007】
このような問題への対処法の一つとして、例えばプレート部材を肉厚とすればコネクタ端子の振れの抑制効果を高めることはできるが、そのためにはプレート部材を製造する際の樹脂材の使用量が増加してしまい、部品コストの上昇を招くこととなる。
【0008】
本発明はこれを踏まえてなされたものであり、その解決しようとする課題は、コネクタ端子の屈曲精度を緩和しつつ、コネクタ端子の振れの抑制を図ることが可能な基板用コネクタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る基板用コネクタ構造は、回路基板と電気的に接続される基板接続部を一側に有するとともに、被接続部品と電気的に接続される部品接続部を他側に有し、前記基板接続部が前記回路基板の接続孔に挿通されて固定される複数のコネクタ端子と、前記コネクタ端子を保持する保持壁を有するコネクタハウジングと、前記保持壁に対して垂直方向に位置付けられ、前記基板接続部が挿通される貫通孔を有するコネクタ端子振れ抑止部材を備え、前記コネクタ端子は、前記貫通孔の前記保持壁に対して奥側の孔面から前記保持壁までの寸法範囲かつ屈曲角度が90°以下で前記部品接続部に対して前記基板接続部が他のコネクタ端子と干渉することなく屈曲され、前記コネクタ端子振れ抑止部材の貫通孔は、該貫通孔に挿通された基板接続部の中心軸位置を、前記接続孔の中心軸位置よりも保持壁寄りに位置付けるように形成されてなることを特徴とする。
【0010】
これによれば、コネクタ端子の振れ幅を従来よりも狭めることができる。すなわち、コネクタ端子の基板接続部が貫通孔の保持壁に対して手前側の孔面と接触した際の振れ(アライメント)から、コネクタ端子の基板接続部が貫通孔の一対の開口にそれぞれ接触した際の振れの範囲にコネクタ端子の振れ幅を止めるように、該コネクタ端子の屈曲位置と屈曲角度を容易に調整することができる。
【0011】
かかるコネクタ構造において、前記貫通孔は、前記コネクタ端子の屈曲角度が90°よりも小さい場合には該コネクタ端子の基板接続部を一対の開口にそれぞれ接触させて前記基板接続部の位置を矯正しつつ拘束を与えるように形成することができる。これにより、貫通孔にコネクタ端子の基板接続部を挿通した状態では該基板接続部の先端が保持壁とは反対側を向くことがなく、該先端が保持壁とは反対側にも向く場合がある従来のコネクタ構造と比べて確実にコネクタ端子の基板接続部の振れ幅を狭めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コネクタ端子の屈曲精度を緩和しつつ、コネクタ端子の振れの抑制を図ることが可能な基板用コネクタ構造を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の基板用コネクタ構造について、添付図面を参照して説明する。本発明は、各種の電子機器が備えるプリント回路基板(PCB)に取り付けられて被接続部品を電気的に接続するための構造である。
【0015】
図1及び
図2には、本発明の一実施形態に係る基板用コネクタ構造の構成を示す。
図1は基板用コネクタ構造の縦断面図、
図2は
図1に示す一点鎖線内を拡大して示す図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る基板用コネクタ構造は、回路基板10と電気的に接続される基板接続部21を一側(以下、基板側という)に有するとともに、被接続部品(図示しない)と電気的に接続される部品接続部22を他側(以下、部品側という)に有し、基板接続部21が回路基板10の接続孔10aに挿通されて固定される複数のコネクタ端子2と、コネクタ端子2を保持する保持壁41を有するコネクタハウジング4と、保持壁41に対して垂直方向に位置付けられ、基板接続部21が挿通される貫通孔61を有するコネクタ端子振れ抑止部材6を備えて構成されている。なお、被接続部品はコネクタ端子2の部品接続部22と電気的に接続可能な接続インターフェースを有する部品であれば特に限定されないが、例えば、フレキシブル集約配線などの電線ケーブルなどを想定することができる。
【0016】
ここで、
図1及び
図2における上下方向はコネクタハウジング4の保持壁41の起立方向に相当し、左右方向は該保持壁41の起立方向に対して垂直方向に相当しており、以下の説明ではかかる方向の右側を基板側(コネクタ端子2の一側)、左側を部品側(コネクタ端子2の他側)という。ただし、これらの上下方向及び左右方向はコネクタ端子2が回路基板10及び被接続部品と電気的に接続された状態における各方向と必ずしも一致していなくともよい。
【0017】
図1には、導電材でなる五本のコネクタ端子2(第一のコネクタ端子2a、第二のコネクタ端子2b、第三のコネクタ端子2c、第四のコネクタ端子2d、第五のコネクタ端子2e)を一組とする端子列が配されたコネクタ端子2の構成を一例として示している。そして、かかるコネクタ端子2の端子列が複数並列に配されて基板用コネクタの端子群を構成している。なお、一つの基板用コネクタが有するコネクタ端子2の本数は特に限定されず、任意に設定可能である。この場合、回路基板10には複数(一例としてコネクタ端子2と同数)の接続孔10aが形成されており、各コネクタ端子2はこれらの接続孔10aの配置に応じて配されている。また、コネクタ端子2はいわゆるピン状に形成されている場合を想定するが、中心軸と交差する方向の断面形状は任意であり、例えば円形、楕円形、矩形状などとすることが可能である。なお、コネクタ端子2は基板接続部21が回路基板10の接続孔10aに挿通された後、半田付け等により固定されて接続孔10aを介して回路基板10と電気的に接続される。
【0018】
コネクタハウジング4は絶縁樹脂等からなり、コネクタ端子2を配設する空間を内部に有する筒状に形成され、保持壁41はコネクタ端子2の配設空間を基板側と部品側の二つに隔てるようにコネクタハウジング4に内設されている。
図1に示す構成では、コネクタハウジング4はコネクタ端子2の部品接続部22を保持壁41で位置決め固定し、基板接続部21と部品接続部22の先端を保持壁41を挟んで両側に位置付けた状態で該コネクタ端子2を筒内で保持する構成となっている。この場合、コネクタハウジング4はインサート成形によりコネクタ端子2と一体化すればよいが、コネクタハウジング4の筒軸方向(
図1においては左右方向)に保持壁41を貫通する保持孔を形成し、該保持孔にコネクタ端子2を部品側(もしくは基板側)から圧入することで該コネクタ端子2を保持して一体化させる構成とすることも可能である。
【0019】
コネクタ端子振れ抑止部材(以下、タインプレートという。)6は、所定の肉厚を有する板材に貫通孔61が穿孔加工されて形成された部材であって、コネクタハウジング4と一体化されたコネクタ端子2(基板接続部21)に装着されて出荷時や回路基板10への取付時におけるコネクタ端子2(特に基板接続部21)の振れ(アライメント)を抑制する。タインプレート6は厚肉であるほどコネクタ端子2の振れ抑制効果を高めることができるが、製造時の板材(絶縁性樹脂材など)の使用量増加に伴う部品コストを考慮し、例えばコネクタ端子2の大きさ(外径)と比べて十分に大寸の肉厚に設定すればよい。
【0020】
貫通孔61は、コネクタ端子2と同数だけタインプレート6に穿孔されている。また、貫通孔61は一定の孔径でタインプレート6を上下方向に沿って貫通しており、上下方向の両端にそれぞれ開口61a,61bを有している。そして、タインプレート6は貫通孔61にコネクタ端子2の基板接続部21を挿通した状態で保持壁41に対して垂直をなしてコネクタハウジング4に取り付けられている。なお、コネクタハウジング4に対するタインプレート6の取付方法は特に限定されず、例えばコネクタハウジング4及びタインプレート6の一方に取付部(圧入突起や係合片等)を設け、他方に被取付部(圧入穴や係合溝等)を設けて取り付ける方法などを採用することが可能である。
【0021】
本実施形態に係るコネクタ端子2は、貫通孔61の保持壁41に対して奥側の孔面61cから保持壁41までの寸法範囲内(
図2(a)にLで示す寸法範囲内)かつ屈曲角度(同図(a),(b)にθで示す変動角度)が90°以下で部品接続部22に対して基板接続部21が他のコネクタ端子2と干渉することなく屈曲されている。具体的には
図2(a),(b)に示すように、コネクタ端子2は屈曲部位の基板側位置23が寸法Lの範囲内に位置付けられるとともに、部品接続部22の伸長方向から基板接続部21が下方へ(回路基板10へ向けて)90°以下の屈曲角度θで屈曲した構成となっている。
図2(a),(b)には第一のコネクタ端子2aの屈曲態様を一例として示すが、その他のコネクタ端子2(例えば第二のコネクタ端子2b〜第五のコネクタ端子2e)も同様の屈曲条件(屈曲位置が寸法Lの範囲内及び屈曲角度が90°以下の範囲内)に従って屈曲されている。その際、他のコネクタ端子2と干渉することがなければ、各コネクタ端子2はすべて同一の屈曲態様となっていなくともよく、上記屈曲条件に従っていれば任意の屈曲態様となっていて構わない。
【0022】
図2(a)に示す態様では、屈曲部位の基板側位置23が寸法Lの最大位置(保持壁41から最も遠い位置)で、屈曲角度θが90°で部品接続部22に対して基板接続部21が屈曲して第一のコネクタ端子2aが貫通孔61の孔面61cと接触している。また、
図2(b)に示す態様では、屈曲部位の基板側位置23が寸法Lよりも若干小さい位置で、屈曲角度θが90°よりも若干小さい角度で部品接続部22に対して基板接続部21が屈曲して第一のコネクタ端子2aが貫通孔61の一対の開口61a,61bにそれぞれ接触している。
【0023】
また、本実施形態に係るタインプレート6の貫通孔61は、該貫通孔61に挿通されたコネクタ端子2の基板接続部21の中心軸位置(
図2(c)にC1で示す軸位置)を、接続孔10aの中心軸位置(同図(c)にC2で示す軸位置)よりも保持壁41寄りに位置付けるように形成されている。
図2(c)に示す状態では、コネクタ端子2は屈曲角度θが90°で屈曲され、貫通孔61は該コネクタ端子2の基板接続部21と接触することなく空隙をあけた状態を保つように孔径が設定されている。
【0024】
これにより、コネクタ端子2の振れ幅を従来よりも狭めることができる。すなわち
図2(d)に示すように、コネクタ端子2は実線で示す屈曲態様S1を基準とし、細実線で示す屈曲態様S2から点線で示す屈曲態様S3までの範囲内の振れ幅Wに振れ(アライメント)が抑制される。
図2(d)に実線で示す屈曲態様S1は同図(c)に示す屈曲態様と同様であり、同図(d)に細実線で示す屈曲態様S2は同図(b)に示す屈曲態様と同様である。そして、
図2(d)に点線で示す屈曲態様S3は、屈曲部位の基板側位置23が屈曲態様S1と屈曲態様S2の間かつ屈曲角度θが90°で屈曲され、コネクタ端子2の基板接続部21が貫通孔61の保持壁41に対して手前側の孔面61dと接触するようになっている。
【0025】
また本実施形態において、貫通孔61はコネクタ端子2の屈曲角度θが90°よりも小さい場合には該コネクタ端子2の基板接続部21を一対の開口61a,61bにそれぞれ接触させてコネクタ端子2の基板接続部21の位置(回路基板10の接続孔10aに対する位置)を矯正しつつ拘束を与えるように形成されている。これにより、貫通孔61にコネクタ端子2の基板接続部21を挿通した状態では該基板接続部21の先端が保持壁41とは反対側を向くことがなく(
図2(b)に示す状態)、該先端が保持壁41とは反対側にも向く場合がある従来のコネクタ構造と比べて確実にコネクタ端子2の基板接続部21の振れ幅を狭めること(つまり振れ幅Wの範囲内とすること)ができる。
【0026】
このように、本実施形態に係る基板用コネクタ構造によれば、コネクタ端子2の屈曲精度を緩和しつつ、コネクタ端子2の振れ(アライメント)の抑制を図ることができる。これにより、コネクタ端子2の屈曲位置及び屈曲角度の公差を緩和すること、換言すればタインプレート6をコネクタ端子2に装着(貫通孔61に基板接続部21を挿通)すれば該コネクタ端子2の振れを公差内に収めることが可能となる。したがって、例えばコネクタ端子2の屈曲加工を行う設備機器の調整と加工時におけるコネクタ端子2の寸法検査の簡素化を図った場合であっても、容易かつ確実にコネクタ端子2の振れの抑制を図ることが可能となる。また、コネクタ端子2の基板接続部21を回路基板10の接続孔10aへスムーズに挿通させることが可能となる。
【0027】
以上、本発明を
図1及び
図2に示すような一実施形態に基づいて説明したが、上述した実施形態は本発明の例示に過ぎないものであり、本発明は上述した実施形態の構成のみに限定されるものではない。したがって、本発明の要旨の範囲で変形又は変更された形態で本発明を実施可能であることは、当業者にあっては明白なことであり、そのような変形又は変更された形態が本願の特許請求の範囲に属することは当然のことである。