(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体モジュールの動作する動作温度範囲において、前記導電部材と前記第1の半導体素子の正極との間に生じる静電容量に対する、前記コンデンサ素子の静電容量の比が0.9以上1.1以下となるように、前記第1絶縁体を構成する誘電体材料と、前記コンデンサ素子を構成する誘電体材料とは選択されている、請求項1に記載の半導体モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
(実施の形態1)
まず、
図1〜
図5を参照して、本発明の実施の形態1に係る半導体モジュール1および電力変換装置51について説明する。はじめに、
図1を参照して、実施の形態1に係る電力変換装置51の回路図の一例を説明する。実施の形態1に係る電力変換装置51は、直流電源52から入力された直流電力を交流化して、モータ53等に供給することができる。電力変換装置51は、たとえばインバータとして、3つのセミブリッジ回路が並列に接続されて構成されている。具体的には、電力変換装置51は、上アームの半導体素子56a,56b,56cおよび下アームの半導体素子57a,57b,57cを備える。半導体素子56aと半導体素子57aとは直列接続されて第1のセミブリッジ回路を構成している。半導体素子56bと半導体素子57bとは直列接続されて第2のセミブリッジ回路を構成している。半導体素子56cと半導体素子57cとは直列接続されて第3のセミブリッジ回路を構成している。これら第1のセミブリッジ回路〜第3のセミブリッジ回路は並列に接続されて、3相のインバータ回路を構成している。各半導体素子56,57は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタなど任意の半導体素子とすることができるが、たとえばMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)である。各半導体素子には、それぞれ並列にダイオードが接続されている。上アームの半導体素子のドレイン側は直流電源52の正極側に接続され、下アームの半導体素子のソース側は直流電源52の負極側に接続されている。上アームの半導体素子と下アームの半導体素子の接続部はモータ53に接続されている。
【0016】
電力変換装置51の各セミブリッジ回路は、半導体モジュール1として構成されている。
図2は、電力変換装置51を構成する半導体モジュール1の実装状態を示す鳥瞰図である。半導体モジュール1は、導電部材としてのシャーシ導体2上に実装されている。半導体モジュール1は、たとえば正極側導体3、負極側導体4、中間側導体5とを備え、各導体は半導体モジュール1の内部から外部に引き出されている。シャーシ導体2は、放熱性の高い任意の材料で構成されていればよいが、たとえば銅やアルミニウム等で構成されていればよい。
【0017】
図3は、半導体モジュール1の内部構成を説明するための概略上面図である。
図4は、半導体モジュール1の内部構成を説明するための概略断面図である。
図5は、半導体モジュール1に形成されているセミブリッジ回路の回路図である。なお、
図4は、
図2および
図3に示す半導体モジュール1の正極側から負極側までの各構成部材の接続状態を説明するために、
図2および
図3に示す各構成部材の配列を一部変更して示している。
【0018】
半導体モジュール1は、たとえば第1の半導体素子としての上アームの半導体素子6(6a,6b)と、第2の半導体素子としての下アームの半導体素子7(7a,7b)とを備えている。半導体素子6のドレイン電極は、直流電源52の正極側に接続されている正極側導体3に、半導体素子7のソース電極は、直流電源52の負極側に接続されている負極側導体4にそれぞれ接続されている。モータ53に接続されている中間側導体5に、半導体素子6のソース電極および半導体素子7のドレイン電極は、それぞれ接続されている。また、シャーシ導体2は接地されている。正極側導体3、負極側導体4、および中間側導体5は、導電性を有する任意の材料により構成すればよいが、たとえば銅、銀、またははんだ等により構成されている。
【0019】
半導体モジュール1において、上アームの半導体素子6は第1電極としての正極側ベース電極8上に搭載されている。このとき、半導体素子6のドレイン電極は正極側ベース電極8と接合されており、正極側ベース電極8は正極側導体3と接合されている。これにより、上述のように、半導体素子6のドレイン電極は直流電源52の正極側に接続されている。また、下アームの半導体素子7は、第2電極としての中間側ベース電極9上に搭載されている。このとき、半導体素子7のドレイン電極は中間側ベース電極9と接合されており、中間側ベース電極9は中間側導体5と接合されている。つまり、中間側導体5は、上述のように上アームの半導体素子6のソース電極と接合されているとともに、下アームの半導体素子7のドレイン電極と接合されている中間側ベース電極9と接合されており、これにより半導体素子6と半導体素子7とを直列に接続している。
【0020】
正極側ベース電極8および中間側ベース電極9を構成する材料は、導電性を有する任意の材料とすればよいが、たとえば、銅、銀、またははんだ等などである。正極側ベース電極8および中間側ベース電極9は、シャーシ導体2上に形成されている第1絶縁体10上に設けられている。
【0021】
第1絶縁体10を構成する材料は、電気的絶縁性を有する任意の材料から選択することができ、たとえばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂系材料、チタン酸バリウム、アルミナ等のセラミック系材料等である。第1絶縁体10を構成する材料およびその膜厚は、第1絶縁体10に求められる誘電率に応じて適宜設定することができる。なお、本実施の形態のようにパワー半導体素子を用いる場合には、シャーシ導体2への放熱性を高める観点から第1絶縁体10の膜厚を薄く形成するのが一般的である。
【0022】
正極側ベース電極8および中間側ベース電極9は、第1絶縁体10を介してシャーシ導体2と接続されていることにより、それぞれ正極側静電容量101と中間側静電容量102とを形成している。正極側静電容量101と中間側静電容量102とは、第1絶縁体10が同一の材料でかつ同等の膜厚で形成されており、かつ、正極側ベース電極8と中間側ベース電極9とが同等の面積で形成されていることにより、それぞれの静電容量値を同等とすることができる。
【0023】
シャーシ導体2上において、第1絶縁体10が形成されていない領域には接地電極11が形成されている。つまり、接地電極11は、シャーシ導体2を介して接地されている。接地電極11を構成する材料は、導電性を有する任意の材料とすればよいが、たとえば銅である。
【0024】
負極側導体4と接地電極11との間はコンデンサ素子100を介して接続されている。コンデンサ素子100は、所定の静電容量を有するものとして選択されている。具体的には、
図4および
図5を参照して、コンデンサ素子100の静電容量値は、第1絶縁体10を介して接続されている正極側ベース電極8とシャーシ導体2との間に形成される正極側静電容量101の静電容量値の±10%以内であるように選択される。つまり、コンデンサ素子100の静電容量値は、正極側静電容量101を基準として一般的なコンデンサの静電容量値の誤差範囲内に収まっていればよい。なお、
図3を参照して、コンデンサ素子100は、複数のコンデンサ素子100a,100b,100c,100dにより構成されていてもよい。各コンデンサ素子100a,100b,100c,100dは、たとえば負極側導体4と接地電極11との間に互いに並列に接続されている。この場合、正極側静電容量101の静電容量値に対する、コンデンサ素子100a,100b,100c,100dの静電容量値の合計値の比が0.9以上1.1以下であるように設けられていればよい。
【0025】
コンデンサ素子100a,100b,100c,100dは、誘電体を介して2種の電極を交互に多層積層した多層型のコンデンサ素子であり、例えば積層型セラミックコンデンサや多層プリント基板などを用いることができる。また、コンデンサ素子100は誘電体を2層の電極ではさんだものを旋回して巻き込んだ旋回型のコンデンサ素子でもよく、例えばフィルムコンデンサなどを用いることができる。上記誘電体にはセラミックのような高誘電率の誘電体を用いてもよく、樹脂のような低誘電率の誘電体を用いてもよい。
【0026】
上述したシャーシ導体2上に形成されている各部材(中間側導体5、半導体素子6、半導体素子7、正極側ベース電極8、中間側ベース電極9、第1絶縁体10、接地電極11)と正極側導体3および負極側導体4の一部は封止体12で覆われており、これにより半導体モジュール1が構成されている。封止体12を構成する材料は、たとえばエポキシ樹脂である。
【0027】
次に、実施の形態1に係る半導体モジュール1および電力変換装置51の作用効果について説明する。実施の形態1に係る半導体モジュール1では、負極側導体4と接地電極11との間をコンデンサ素子100a,100b,100c,100dを介して接続している。さらに正極側静電容量101の静電容量値に対してコンデンサ素子100a,100b,100c,100dの静電容量値の合計値の比が0.9以上1.1以下に設けられている。これにより、接地されているシャーシ導体2と半導体素子6の正極との間に生じる静電容量(正極側静電容量101)と、該シャーシ導体2と半導体素子7の負極との間に生じる静電容量とを容易に平衡化させることができる。その結果、静電容量をノイズ除去用の静電容量成分として用いることができ、放射ノイズを十分に低減することができる。このとき、たとえば正極側ベース電極8の面積を低減することなく、上記のように半導体素子6および半導体素子7と接地されているシャーシ導体2間の静電容量を半導体モジュール1の正極側と負極側との間で平衡化させることができるため、半導体素子6に対する高い放熱性を維持することができる。
【0028】
さらに、半導体素子7の負極側と接続されてかつ絶縁体を介してシャーシ導体2と接続される電極を新たに設けることにより、正極側静電容量101の静電容量値に対する静電容量値の比が0.9以上1.1以下の静電容量を形成する従来の電力変換装置用半導体モジュールと比べて、半導体モジュール1を小型化することができる。
【0029】
また、このような作用効果はコンデンサ素子100の並列数に関わらず得ることができるが、本実施の形態のようにコンデンサ素子100を並列接続することで、負極側導体4と接地電極11の間を低インダクタンスで接続することができ、より効果的に電力変換装置の大型化を抑制し、かつ高い放熱性を有しながら、放射ノイズを十分に低減することができる。
【0030】
また、実施の形態1に係る電力変換装置51において、第1絶縁体10を構成する材料と、コンデンサ素子100の誘電体材料とは、誘電率の温度変化率が同等程度のものであるのが好ましい。たとえば、第1絶縁体10を構成する材料を低誘電率系のアルミナ(Al
2O
3)とした場合には、アルミナの誘電率の温度変化は約100ppm/℃程度と小さいため、コンデンサ素子100の誘電体材料を誘電率の温度変化が小さい低誘電率系の酸化チタンやジルコン酸カルシウムとすることができる。また、より好ましくは、第1絶縁体10を構成する材料とコンデンサ素子の誘電体材料とは、同じ材料である。たとえば、第1絶縁体10を構成する材料とコンデンサ素子の誘電体材料を高誘電率系のチタン酸バリウム(BaTiO
3)としてもよい。ここで、チタン酸バリウムの誘電率の温度変化は添加物や粒径などで変化する。そのためこれらを適宜選択することにより、100℃で常温時よりも20%誘電率が低下するような第1絶縁体10を構成することができる。また、上述のように、第1絶縁体10を構成する材料をアルミナとした場合にはコンデンサ素子100の誘電体材料もアルミナとしてもよい。
【0031】
誘電体の誘電率は一般的に温度によって変化するため、第1絶縁体10を構成する材料とコンデンサ素子100の誘電体材料とで誘電率の温度変化率が異なる場合には、電力変換装置51の動作温度に依って正極側静電容量101とコンデンサ素子100の静電容量との差異が大きくなり(正極側静電容量101の静電容量値に対する、コンデンサ素子100a,100b,100c,100dの静電容量値の合計値の比が0.9未満、または1.1超えとなり)、放射ノイズの低減効果が損なわれる。これに対し、第1絶縁体10を構成する材料と、コンデンサ素子100の誘電体材料とを、誘電率の温度変化率が同等程度のものとすることにより、電力変換装置51の動作温度によらず放射ノイズ低減効果を得ることができる。
【0032】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る半導体モジュールおよび電力変換装置51について説明する。
図6を参照して、実施の形態2に係る半導体モジュールおよび電力変換装置は、基本的には実施の形態1に係る半導体モジュールおよび電力変換装置51と同様の構成を備えるが、半導体モジュール1において接地電極11がシャーシ導体2とコンデンサ素子100との間、およびシャーシ導体2と第1絶縁体10との間に形成されている点で異なる。
【0033】
接地電極11を構成する材料は、導電性を有する任意の材料とすればよいが、たとえば銅である。このようにすれば、シャーシ導体2と半導体モジュール1との間の熱伝導性を向上させることができる。接地電極11を形成する方法は、任意の方法とすればよく、たとえば活性金属ろう付けプロセスにより接地電極11を第1絶縁体10と接合することで、接地電極11を形成すればよい。
【0034】
一般に、半導体モジュール1とシャーシ導体2との間に熱伝導性の向上を目的として熱伝導グリス等を塗布する場合があるが、熱伝導グリス等の塗布量(厚み)に応じて正極側静電容量101(
図4参照)が変化してしまうという問題がある。そのため、熱伝導グリス等の塗布量の制御が十分でない場合には、正極側静電容量101とコンデンサ素子100の静電容量との差異が大きくなり、放射ノイズ低減効果が損なわれることがある。
【0035】
実施の形態2に係る半導体モジュール1および電力変換装置51では、第1絶縁体10が形成される領域およびコンデンサ素子100が配置される領域に接地電極11が形成されているため、第1絶縁体10と接地電極11との間に熱伝導グリスが存在しないため、熱伝導グリスの塗布量の変動に起因する上記静電容量の変動を防止することができる。なお、接地電極11とシャーシ導体2との間にはしばしば熱伝導グリスが塗布されるが、通常接地電極11とシャーシ導体2とは電気的に接続されており、ここでの熱伝導グリスの塗布量の変動は放射ノイズ低減効果を損なわない。
【0036】
その結果、上述のように熱伝導性グリス等に起因して正極側静電容量101とコンデンサ素子100の静電容量の差異が大きくなる(正極側静電容量101の静電容量値に対する、コンデンサ素子100a,100b,100c,100dの静電容量の合計値の比が0.9未満、または1.1超えとなる)ことを防止することができる。つまり実施の形態2に係る半導体モジュール1および電力変換装置51は、接地電極11により高い放熱性を有することができるとともに、正極側静電容量101と、シャーシ導体2と半導体素子7の負極との間に形成される静電容量とをより確実に平衡化させることができる。
【0037】
シャーシ導体2とコンデンサ素子100との間に形成されている接地電極11と、シャーシ導体2と第1絶縁体10との間に形成されている接地電極11とは、一体として形成されていてもよいし、別体として形成されていてもよい。好ましくは、シャーシ導体2とコンデンサ素子100との間に形成されている接地電極11と、シャーシ導体2と第1絶縁体10との間に形成されている接地電極11とは、同一の材料で同時に形成されている。このようにすれば、接地電極11の影響を排除することができる。
【0038】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る半導体モジュールおよび電力変換装置について説明する。
図7を参照して、実施の形態3に係る半導体モジュール1および電力変換装置は、基本的には実施の形態1に係る半導体モジュールおよび電力変換装置51と同様の構成を備えるが、半導体モジュール1の外部において、コンデンサ素子110と、その両極に接続されている負極側導体接続部材111と、シャーシ導体側接続部材112とを備える点で異なる。
【0039】
コンデンサ素子110は、半導体モジュール1の内部に形成されている正極側静電容量101の静電容量値に対するコンデンサ素子110の静電容量値の比が0.9以上1.1以下となるように設けられている。
【0040】
負極側導体接続部材111は、半導体モジュール1の外部に延びている負極側導体4と接続されている。負極側導体接続部材111は導電性を有する任意の材料とすればよいが、たとえば銅であり、負極側導体4と一体として設けられていてもよい。負極側導体接続部材111は、コンデンサ素子110の一方の電極と接続されている。
【0041】
シャーシ導体側接続部材112は、半導体モジュール1の外部において表出しているシャーシ導体2上に形成されている。シャーシ導体側接続部材112を構成する材料は、導電性を有する任意の材料とすればよいが、たとえば銅である。シャーシ導体側接続部材112は、シャーシ導体2と任意の方法で接続されていればよいが、たとえばねじ止めされている。シャーシ導体側接続部材112は、コンデンサ素子110の他方の電極と接続されている。
【0042】
負極側導体接続部材111とシャーシ導体側接続部材112の形状および寸法は、いずれもコンデンサ素子110の形状および寸法に応じて適宜選択することができる。コンデンサ素子110、負極側導体接続部材111およびシャーシ導体側接続部材112の寸法は、いずれも小さい方が好ましい。
【0043】
このようにしても、半導体モジュール1の負極側においてシャーシ導体2と半導体素子7の負極(負極側導体4)との間に、正極側静電容量101の静電容量値に対する比が0.9以上1.1以下の静電容量値を有するコンデンサ素子110を形成することができる。また、このような電力変換装置も、正極側ベース電極8と同等の面積を有する負極側電極を形成する従来の電力変換装置と比べて小型化することができる。その結果、実施の形態3に係る半導体モジュール1および電力変換装置は、実施の形態1に係る半導体モジュール1および電力変換装置51と同様の効果を奏することができる。
【0044】
また、実施の形態3に係る電力変換装置において、半導体モジュール1は、ディスクリート半導体モジュールとして構成されていてもよい。
図8を参照して、半導体モジュール1は、たとえばシャーシ導体2上に形成された上アームの半導体素子としての第1のディスクリート半導体部品126および下アームの半導体素子としての第2のディスクリート半導体部品127が上述のようなセミブリッジ回路を構成するように形成されていてもよい。第1のディスクリート半導体部品126および第2のディスクリート半導体部品127は、たとえば上述した実施の形態1に係る半導体モジュール1と同様に、その内部においてシャーシ導体2上に形成されている絶縁体と、該絶縁体上に形成されている正極側電極と、該正極電極と接続されている正極側端子123A,123Bと、該正極側電極上に正極が接合されている半導体素子と、該半導体素子の負極と接合されている負極側端子124A,124Bと、これらを覆う封止体により構成されている。このとき、正極側静電容量101は、第1のディスクリート半導体部品126内において絶縁体を介してシャーシ導体2と正極側電極との間に形成される。
【0045】
この場合、第1のディスクリート半導体部品126は外部に伸びる正極側端子123A、負極側端子124A、およびゲート端子125Aを有し、第2のディスクリート半導体部品127は外部に伸びる正極側端子123B、負極側端子124B、およびゲート端子125Bを有している。
【0046】
第1のディスクリート半導体部品126の負極側端子124Aは、シャーシ導体2上に形成されている中間側端子128に接続されている。第2のディスクリート半導体部品127の正極側端子123Bは、シャーシ導体2上に形成されている中間側端子128に接続されている。つまり、第1のディスクリート半導体部品126および第2のディスクリート半導体部品127は中間側端子128を介して直列に接続されている。
【0047】
中間側端子128は、たとえば高い電気伝導率を有する材料からなる配線パターンであってもよい。この場合、中間側端子128は、たとえばプリント基板の絶縁層によりシャーシ導体2と電気的に絶縁されている。
【0048】
このとき、コンデンサ素子121およびシャーシ導体側接続部材122は、第2のディスクリート半導体部品127の負極側端子124Bと、シャーシ導体2との間に形成されていればよい。具体的には、コンデンサ素子121の一方の電極は負極側端子124Bと接続されており、他方の電極はシャーシ導体側接続部材122と接続されている。シャーシ導体側接続部材112はシャーシ導体2と接続されている。
【0049】
コンデンサ素子121の静電容量値は、第1のディスクリート半導体部品126内において形成されている正極側静電容量101の静電容量値に対する比が0.9以上1.1以下となるように設けられていればよい。このようにしても、実施の形態3に係る電力変換装置と同様の効果を奏することができる。
【0050】
実施の形態3に係る電力変換装置において、シャーシ導体側接続部材112,122は、導電性を有する材料で形成されている部材として構成されているが、たとえばコンデンサ素子111,121の実装パターンを備えたプリント基板として構成されていてもよい。
【0051】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る半導体モジュールおよび電力変換装置について説明する。
図9および
図10を参照して、実施の形態4に係る半導体モジュールおよび電力変換装置は、基本的には実施の形態1に係る半導体モジュールおよび電力変換装置と同様の構成を備えるが、コンデンサ素子100に替えて負極側ベース電極130と第2絶縁体131とを備える点で異なる。
【0052】
具体的には、シャーシ導体2上において、第1絶縁体10が形成されていない領域であって負極側導体4と対向する領域に、第2絶縁体131が形成されている。第2絶縁体131上には負極側ベース電極130が形成されている。負極側導体4は負極側ベース電極130と接続されている。これにより、シャーシ導体2と負極側導体4とは、第2絶縁体131の誘電率、面積、厚み等で規定される静電容量値を有する静電容量を介して接続されていることとなる。
【0053】
第2絶縁体131を含む静電容量の静電容量値は、正極側静電容量101の静電容量値に対する比が0.9以上1.1以下となるように設けられている。言い換えると、第1絶縁体10と正極側ベース電極8とが重なる領域の面積(S1)に対する、第2絶縁体131と負極側ベース電極130とが重なる領域の面積(S2)の第1の比(S2/S1)と、第1絶縁体10の厚み(d1)を第1絶縁体10の誘電率(ε1)で割った値(d1/ε1)に対する、第2絶縁体131の厚み(d2)を第2絶縁体131の誘電率(ε2)で割った値(d2/ε2)の第2の比((ε1・d2)/(ε2・d1))とを考えたときに、第1の比に対する第2の比の比率(((ε1・S1)/d1)/((ε2・S2)/d2))が0.9以上1.1以下である。
【0054】
第2絶縁体131を構成する材料は、任意の誘電体とすることができるが、第1絶縁体10を構成する材料よりも誘電率が高い方が好ましい。これにより、上記比率を維持したまま、第2絶縁体131の面積(S2)を小さくすることができる。たとえば、第2絶縁体131を構成する材料の誘電率(ε2)を第1絶縁体10を構成する材料の誘電率(ε1)の2倍としたときには、負極側ベース電極130の面積(S2)を正極側ベース電極8の面積(S1)の半分とすることができる。
【0055】
これにより、絶縁体を介してシャーシ導体2と接続され、かつ正極側ベース電極8と同等の面積を有する電極が設けられている従来の半導体モジュールと比べて、半導体モジュール1を小型化することができる。
【0056】
第1絶縁体10および第2絶縁体131を構成する材料は、電力変換装置51の動作温度域において、シャーシ導体2と正極側ベース電極8との間の正極側静電容量101の静電容量値とシャーシ導体2と負極側ベース電極130との間の負極側静電容量の静電容量値との差異が±10%以内となるように選択されているのが好ましい。これにより、電力変換装置51の動作温度が変動する場合であっても、電力変換装置51は放射ノイズ低減効果を発揮し続けることができる。
【0057】
また、
図11を参照して、実施の形態4に係る半導体モジュール1において、シャーシ導体2と第1絶縁体10および第2絶縁体131との間には接地電極11が形成されていてもよい。この場合、第1絶縁体10は、上述した実施の形態2に係る半導体モジュール1と同様に接地電極11を介してシャーシ導体2上に接続されている。さらに、第2絶縁体131は、上述した実施の形態2に係る半導体モジュール1におけるコンデンサ素子100と同様に、接地電極11を介してシャーシ導体2上に接続されている。この結果、実施の形態2に係る半導体モジュール1および電力変換装置51と同様の効果を奏することができる。
【0058】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5に係る半導体モジュールおよび電力変換装置について説明する。
図12〜
図14を参照して、実施の形態5に係る半導体モジュールおよび電力変換装置は、基本的には実施の形態1に係る半導体モジュールおよび電力変換装置と同様の構成を備えるが、中間側導体5が半導体素子6のソース電極および半導体素子7のドレイン電極と直接接合してこれらを直列に接続している点で異なる。
【0059】
つまり、実施の形態5に係る半導体モジュール1における半導体素子7は、実施の形態1に係る半導体モジュール1における半導体素子7表裏を反転させた構成を採っている。この場合、半導体素子7のソース電極は、第1絶縁体10上に形成されている負極側ベース電極209に接続されている。負極側導体4は、負極側ベース電極209に接続されている。
【0060】
このようにすれば、従来の電力変換装置の半導体モジュールにおいて上アームの半導体素子および下アームの半導体素子が配置されている領域以外の領域に新たに負極側ベース電極を設けることなく、下アームの半導体素子7の負極とシャーシ導体2との間に静電容量を形成することができる。
【0061】
ここで、第1絶縁体10は、正極側ベース電極8および負極側ベース電極209がシャーシ導体2と対向する領域において同一の材料でかつ同等の膜厚で形成されている。この場合、シャーシ導体2と正極側ベース電極8との間に形成される正極側静電容量201の静電容量値は正極側ベース電極8における第1絶縁体10と接触している領域の面積に依存し、シャーシ導体2と負極側ベース電極209との間に形成される負極側静電容量202の静電容量値は負極側ベース電極209における第1絶縁体10と接触している領域の面積に依存する。そのため、正極側ベース電極8および負極側ベース電極209の面積比を制御することにより、容易に正極側静電容量201の静電容量値に対する負極側静電容量202の静電容量値の比を0.9以上1.1以下とすることができる。
【0062】
このように、実施の形態5に係る半導体モジュールおよび電力変換装置は、実施の形態1に係る半導体モジュールおよび電力変換装置と同様に、高い放熱性を有しながら、放射ノイズを十分に低減することができるとともに、より効果的に半導体モジュールおよび電力変換装置を小型化することができる。
【0063】
また、
図15を参照して、実施の形態5に係る半導体モジュール1において、シャーシ導体2と第1絶縁体10との間には実施の形態2に係る半導体モジュール1と同様に接地電極11が形成されていてもよい。このようにすれば、接地電極11により高い放熱性を有することができるとともに、正極側静電容量101と、シャーシ導体2と半導体素子7の負極との間に形成される静電容量とをより確実に平衡化させることができる。
【0064】
(実施の形態6)
次に、実施の形態5に係る半導体モジュールおよび電力変換装置について説明する。
図16〜
図18を参照して、実施の形態5に係る半導体モジュールおよび電力変換装置は、基本的には実施の形態1に係る半導体モジュールおよび電力変換装置と同様の構成を備えるが、コンデンサ素子100に替えて多層型コンデンサ素子300を備える点で異なる。
【0065】
多層型コンデンサ素子300は、第1の電極301と第2の電極302とが電極間絶縁膜303を介して交互に積層した構成を有している。多層型コンデンサ素子300は、たとえば第1の電極301が負極側導体4と接続され、第2の電極302がシャーシ導体2に接続されることにより、シャーシ導体2と下アームの半導体素子7の負極との間に所定の静電容量を形成することができる。このとき、正極側静電容量101の静電容量値に対する多層型コンデンサ素子300の第1の電極301と第2の電極302間での静電容量値の比が0.9以上1.1以下となるように、多層型コンデンサ素子300は設けられている。
【0066】
これにより、実施の形態1に係る半導体モジュールおよび電力変換装置と同様の効果を奏することができる。さらに、第1の電極301の面積、第2の電極302の面積、および電極間絶縁膜303の誘電率等の多層型コンデンサ素子300における特性値を適宜選択することにより、より容易に当該効果を奏することができる。
【0067】
また、多層型コンデンサ素子300の第2の電極302は実施の形態1に係る接地電極11の役割を担うため、新たに多層型コンデンサ素子300とシャーシ導体2との接続部分に接地電極を設ける必要はないが、第1絶縁体10とシャーシ導体2との間に接地電極11が形成されていてもよい。このようにすれば、さらに実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【0068】
半導体モジュール1を構成する各部材は、それぞれ任意の方法で接続されていればよいが、たとえばはんだや接着剤等を用いて接続されている。
【0069】
なお、実施の形態1〜実施の形態6に係る電力変換装置は、3つのセミブリッジ回路が並列に接続されて構成されているが、これに限られるものではない。並列接続数は、任意に選択することができる。また、実施の形態1〜実施の形態6に係る電力変換装置は、インバータとして構成されているが、これに限られるものではなく、たとえばセミブリッジ回路を有するDCDCコンバータ回路や、ダイオードをブリッジ接続した整流回路として構成されていてもよい。
【0070】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。