(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、火力発電所などのボイラに取り付けられたボイラチューブにおいては、複数のボイラチューブが狭い間隔で密集して配置される狭隘部を有する。このような狭隘部のボイラチューブにおいては、ボイラチューブの特定領域に金属製のワイヤを均一に巻回することは困難であった。また、従来のボイラチューブの補強方法においては、作業者が締付装置を用いて個別に金属製のワイヤをボイラチューブに巻付けているので、必ずしも均一にボイラチューブの特定領域に金属製のワイヤを固定できない場合もあった。そこで、簡便かつ均一にボイラチューブの特定領域にボイラチューブの補強具を固定できる技術が望まれている。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、狭隘部に配置されたボイラチューブであっても、簡便かつ均一にボイラチューブの特定領域に補強具を固定可能なボイラチューブ用補強具固定治具及びボイラチューブの補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のボイラチューブの補強方法は、
ボイラチューブに巻回可能な線材からなるボイラチューブ用補強具を、前記ボイラチューブに巻回して固定するボイラチューブ用補強具固定治具であり、前記ボイラチューブを挿通可能な貫通孔を有する治具本体と、前記貫通孔の内周面に螺旋状に設けられ、前記ボイラチューブ用補強具の前記線材を収容可能な幅を有する溝部とを有するボイラチューブ用補強具固定治具を用いたボイラチューブの補強方法であって、前記ボイラチューブの外周面に前記ボイラチューブ用補強具を巻回す巻付工程と、前記ボイラチューブを前記治具本体の前記貫通孔に挿通し、前記治具本体を前記ボイラチューブの管軸方向を回転軸として前記ボイラチューブの周方向に回転させながら前記ボイラチューブ用補強具を前記ボイラチューブに締付けて固定する締付工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
この方法によれば、ボイラチューブ用補強具を巻回したボイラチューブに治具本体の貫通孔に挿通した後、ボイラチューブの管軸方向を回転軸としてボイラチューブの周方向に回転しながら治具本体をボイラチューブ用補強具の一端側から他端側に移動させるだけでボイラチューブ用補強具をボイラチューブに締付けることができる。これにより、異なる施工者が実施しても貫通孔の内周面に沿って螺旋状に設けられた溝部の幅に応じた均一の間隔でボイラチューブ用補強具をボイラチューブに固定することができる。また、ボイラチューブ用補強具の固定用装置を用いる場合と比較して治具本体を小さく形成することが可能となるので、狭隘部に狭い間隔で配置されたボイラチューブに対しても、容易にボイラチューブ用補強具を巻回することが可能となる。したがって、狭隘部に配置されたボイラチューブであっても、簡便かつ均一にボイラチューブの特定領域に補強具を固定可能なボイラチューブの補強方法を実現できる。
【0012】
本発明のボイラチューブの補強方法においては、さらに、前記ボイラチューブを締付けた前記ボイラチューブ用補強具の両端部を前記ボイラチューブの外周面に固定する固定工程を含むことが好ましい。この方法により、ボイラチューブに締付け後の巻回したボイラチューブ補強用具の両端部をボイラチューブに固定することができるので、ボイラチューブ補強用具の緩みを防ぐことが可能となる。
【0013】
本発明のボイラチューブの補強方法においては、前記ボイラチューブ補強用具の一端部を固定用具で固定し、固定した一端部側から前記治具本体によって前記ボイラチューブ用補強具を締付けることが好ましい。この方法により、治具本体によるボイラチューブ補強用具の締付に伴うボイラチューブ補強具の移動を防ぐことができるので、ボイラチューブ補強用具を一層均一に締付けることが可能となる。
本発明のボイラチューブの補強方法においては、前記治具本体は、固定具によって一体に固定することにより前記貫通孔を形成する第1部材及び第2部材を含むことが好ましい。この方法によれば、第1部材及び第2部材を分離してから前記ボイラチューブの近傍で第1部材と第2部材とを固定することにより、ボイラチューブを貫通孔に挿通できるので、狭隘部に狭い間隔で配置されたボイラチューブに対しても、一層容易にボイラチューブ用補強具を巻回することが可能となる。
本発明のボイラチューブの補強方法においては、前記貫通孔の内径寸法が前記ボイラチューブの外径寸法と略同一であることが好ましい。この方法により、ボイラチューブ補強用具をボイラチューブの外径に沿って巻付けることが可能となるので、ボイラチューブ補強用具をボイラチューブにより一層均一に巻きつけることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、狭隘部に配置されたボイラチューブであっても、簡便かつ均一にボイラチューブの特定領域に補強具を固定可能なボイラチューブ用補強具固定治具及びボイラチューブの補強方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係るボイラチューブの模式図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態に係る補強具の製造に用いられるポジショナの模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態に係る補強具の製造方法の説明図である。
【
図4】
図4は、ダミー材から取り外した後の補強具を示す模式図である。
【
図5】
図5は、補強具を用いた膨出部の補強方法の説明図である。
【
図6A】
図6Aは、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具の正面図である。
【
図6B】
図6Bは、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具の平面図である。
【
図6D】
図6Dは、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具の溝部の説明図である。
【
図6E】
図6Eは、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具の溝部の説明図である。
【
図7A】
図7Aは、本実施の形態に係るボイラチューブの補強方法の説明図である。
【
図7B】
図7Bは、本実施の形態に係るボイラチューブの補強方法の説明図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態に係るボイラチューブの補強方法に用いられる固定用具の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した固定用具を用いたボイラチューブの補強方法の締付工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、各実施の形態において共通する構成要素には同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るボイラチューブtの模式図である。
図1に示すボイラチューブtは、例えば、外径45〜60mmφの高Cr鋼製の管状部材である。このボイラチューブtは、炭化した油分などの付着に基づく局部過熱による減肉及びクリープ劣化により発生した膨出部eを有する。この膨出部eには、例えば、直径1.2mmの1本の連続した金属製ワイヤ12を中空円筒形状に形成してなる補強具10が取り付けられている。なお、本実施の形態に係る補強具10は、必ずしも既に膨出した膨出部eにのみ用いられるものでなく、金属組織の診断によって発見した膨出減肉の可能性がある特定領域にも用いることが可能である。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る補強具10の製造に用いられるポジショナ20の模式的な斜視図である。
図2に示すように、このポジショナ20は、略円柱状のダミー材dを把持するチャック22と、このチャック22を回転させる駆動モータ24とを有する。チャック22及び駆動モータ24は、脚部26によって床上に支持される。このポジショナ20においては、チャック22によって断面が真円の円筒形を有するダミー材dを把持して水平方向へ固定する。そして、このポジショナ20においては、駆動モータ24でダミー材dを把持したチャック22を回転させることで、軸線方向を中心にダミー材dを回転させる。
【0019】
次に、
図3を参照して、本実施の形態に係る補強具10の製造方法について説明する。
図3は、本実施の形態に係る補強具10の製造方法の説明図である。まず、
図3(A)に示すように、ダミー材dにワイヤ12を巻き付けた後、ワイヤ12の始端部を円筒形の固定環28で押えて固定してワイヤ12をダミー材dに巻き付ける。次に、
図3(B)に示すように、ダミー材dに巻き付けたワイヤ12に引張力を付加しながらワイヤ12の間隔を密にし、ワイヤ12をダミー材dの軸方向に一層に隙間なく揃えるようにするワイヤ12の絞り込みを行う。ここでは、必要に応じてワイヤ巻付けと絞込みとを複数回繰り返す。これにより、
図3(C)に示すように、ワイヤ12の全体がダミー材dの外周面に一巻き状態で隙間なく整列された状態となる。
【0020】
次に、ワイヤ12の終端部を固定環28で押え、この状態を10〜20秒保持してワイヤ12の形状を固定する。これにより、ワイヤ12の弾性力による戻り作用をなくすことができ、ダミー材dの外径と一致した内径を有する中空円筒形状の補強具10(
図4参照)を製造でき、補強具10をダミー材dから外した後も、ダミー材dに巻き付けられた状態と同じ形状を維持できる。このようにして、1.2mmの線径を有する金属製ワイヤ12をボイラチューブの外径に相当する径のダミー材dに所定時間巻き付けることで、ワイヤ12に容易に永久歪を与えることができる。
【0021】
図4は、ダミー材dから取り外した後の補強具10を示す模式図である。補強具10は、ダミー材dの外径と略一致した内径をもち、一層で隙間のない中空円筒形状の巻き癖が付いている。なお、ダミー材dとしては、補強対象となるボイラチューブの外径より若干小さい外径を有するダミー材が用いられる。そのため、補強具10の内径は補強対象となるボイラチューブの外径より若干小さくなる。
【0022】
次に、補強具10を用いた膨出部eの補強方法を説明する。
図5は、補強具10を用いた膨出部eの補強方法の説明図である。
図5に示すように、まず、補強具10の中央部に位置するワイヤ12aをボイラチューブtに巻き付ける。次に、ワイヤ12aより上方領域10aをボイラチューブtの周囲に矢印a方向へ旋回させることで、上方領域10aをボイラチューブtの周囲に巻き付ける。さらに、ワイヤ12aより下方領域10bを、同様にボイラチューブtの周囲に矢印b方向へ旋回させることで、下方領域10bをボイラチューブtの周囲に巻き付ける。
【0023】
次に、
図1に示すように、膨出部eが補強具10の中心に位置するように、補強具10をボイラチューブtの管軸方向へ移動させる。ここで、補強具10の内径は、予めボイラチューブtの外径より小さく形成されている。このため、補強具10は、摩擦力により位置ずれすることはなく、容易に補強具10を位置決めすることができる。次に、補強具10を膨出部eに密着するように絞り込んでいき緊締状態にし、この緊締状態を維持しながら、ワイヤ12の両端でワイヤ12の適宜箇所をボイラチューブtの表面に固定する。固定方法は、例えば、点溶接w、押圧による摩擦力を用いた固定、及びバンド14による締付けなどがある。次に、必要に応じて、補強具10の側面に、上から金属製薄板を点溶接wして被覆する。
【0024】
ところで、上述したボイラチューブtの補強方法においては、ボイラチューブtの外周面状に補強具10が必ずしも均一に巻きつけることが困難となる問題がある。特に、狭隘部に配置されたボイラチューブtに上述した補強方法によって補強具10を設ける場合には、ボイラチューブtに必ずしも均一に補強具10を締付けることができない場合がある。また、膨出部eの面積が大きい場合には、補強具10を締付けた部分について点溶接を繰り返しながら補強具10を締付けてゆく必要があり、補強具10の固定が煩雑になるという問題もある。
【0025】
そこで、本発明者らは、以下に説明するボイラチューブ用補強具固定治具を用いることにより、狭隘部などに配置されたボイラチューブtに対しても均一に補強具10を締付けることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具について詳細に説明する。
【0026】
図6Aは、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具100の正面図であり、
図6Bは、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具100の平面図であり、
図6Cは、
図6BのA−A線矢視断面図である。
【0027】
図6A〜
図6Cに示すように、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具100は、ボイラチューブtに巻回可能な金属製のワイヤなどの線材からなるボイラチューブ用補強具10をボイラチューブtに巻回して締付けて固定するものである。このボイラチューブ用補強具固定治具100は、概して円環形状をなしており、中央部にボイラチューブtを挿通可能な貫通孔Hが設けられた治具本体101を有する。この治具本体101の貫通孔Hの内周面には、補強具10の線材を収容可能な幅を有する溝部101aが螺旋状に設けられている。このボイラチューブ用補強具固定治具100においては、貫通孔H内にボイラチューブ用補強具10が締付けられたボイラチューブtを挿通し、この治具本体101の溝部101aに沿ってボイラチューブ補強具10を締付けることにより、狭隘部に狭い間隔で配置されたボイラチューブtの膨出部eであっても、簡便かつ均一にボイラチューブ用補強具10を固定することが可能となる。
【0028】
また、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具100は、所定の厚みを有する平面視にて略半月形状の第1部材102及び第2部材103を備える。この第1部材102と第2部材103は、固定部材104によって第1部材102と第2部材103を一体に固定することにより、貫通孔Hを形成するように設けられている。本実施の形態においては、治具本体101に第1部材102及び第2部材103を貫通するねじ穴102a,103aが設けられており、このねじ穴102a,103aに固定部材104としてのねじを螺合することにより、第1部材102と第2部材103を一体に固定する。これにより、治具本体101を第1部材102と第2部材103とに分解した状態でボイラチューブtに治具本体101を取り付けることができるので、狭隘部に狭い間隔で配置されたボイラチューブtに対しても、容易にボイラチューブ用補強具固定治具100によりボイラチューブ補強具10を締付けることが可能となる。
【0029】
本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具100においては、貫通孔Hの内径寸法とボイラチューブtの外径寸法とが略一致することが好ましい。このように構成することにより、治具本体101の貫通孔Hの溝部101aの底部とボイラチューブtの外周面との間にボイラチューブtの金属ワイヤの線径に応じた間隔ができるので、ボイラチューブ用補強具10をボイラチューブtに対して均一に締付けることが可能となる。
【0030】
図6D及び
図6Eは、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具100の溝部101aの説明図である。
図6Dに示すように、溝部101aの形状としては、所定の幅d1を有する複数の溝部101a(
図6Dに示す例では3つ)が所定間隔d2をとって設けられていてる形状でる。また、
図6Eに示すように、溝部101aの形状としては、複数の溝部101aが連続して設けられている形状であってもよい。
【0031】
次に、本実施の形態に係るボイラチューブの補強方法について説明する。本実施の形態に係るボイラチューブの補強方法は、上記実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具100を用いたボイラチューブの補強方法である。本実施の形態に係るボイラチューブの補強方法は、ボイラチューブtの外周面にボイラチューブ用補強具10を巻回す巻付工程と、ボイラチューブtを治具本体101の貫通孔Hに挿通し、治具本体101をボイラチューブtの管軸方向を回転軸としてボイラチューブtの周方向に回転させながらボイラチューブtをボイラチューブ用補強具10で締付ける締付工程と、を含む。
【0032】
図7A及び
図7Bは、本実施の形態に係るボイラチューブの補強方法の説明図である。巻付工程では、ボイラチューブtの外周面にボイラチューブ用補強具10を作業者が
図5に示すようにボイラチューブtに巻回す。ここでは、
図7Aに示すように、ボイラチューブtの外周面に固定された締付前のボイラチューブ用補強具10は、金属ワイヤ間に僅かな隙間が生じて乱れた状態で固定されている。
【0033】
次に、締付工程では、治具本体101の貫通孔Hにボイラチューブtを挿通した状態でボイラチューブ用補強具10の一端部側に治具本体10を配置する。そして、治具本体101をボイラチューブtの管軸方向を回転軸としてボイラチューブtの周方向に回転させながらボイラチューブtの一端側から他端側に向けて徐々に移動する。これにより、
図7Bに示すように、ボイラチューブ用補強具10を構成する金属ワイヤ12が治具本体101の貫通孔Hに設けられた溝部101a内を順次移動しながらボイラチューブtの外周面に締付けられて固定される。この結果、締付後のボイラチューブ用補強具10dは、締付前のボイラチューブ用補強具10cと比較して均一に締付けられた状態となる。
【0034】
なお、上述したボイラチューブの補強方法においては、締付工程後にボイラチューブtに締付けられたボイラチューブ用補強具の両端部をボイラチューブtの外周面に固定する固定工程を実施してもよい。これにより、締付後のボイラチューブ用補強具10の両端部を固定することが可能となるので、ボイラチューブ補強用治具をボイラチューブに一層均一に巻きつけることが可能となる。締付後のボイラチューブtの両端部は、例えば、ボイラチューブ用補強具とボイラチューブとを
図1に示したように点溶接wすることにより固定することができる。
【0035】
また、締付工程においては、ボイラチューブ用補強具10の締付時の締付け済み部分の緩み止めのために、
図8に示す固定用具200でボイラチューブ用補強具10を固定することが有効である。これにより、締付済み領域におけるボイラチューブ用補強具10の緩みを防止することができるので、締付けの施工部が長い場合であっても、一旦ボイラチューブ用補強具10を固定することができる。
図8は、本実施の形態に係るボイラチューブの補強方法に用いられる固定用具の一例を示す模式図である。
図8に示すように、本実施の形態に係る固定用具200は、帯状のバンド部201と、このバンド部201の一端側と他端側とを固定する固定部202とを備える。この固定用具200においては、固定部202によって円環状に固定したバンド部201をボイラチューブ用補強具10の一端部に締付けることにより、ボイラチューブ用補強具10をボイラチューブtに仮に固定することが可能となる。
【0036】
図9は、
図8に示した固定用具200を用いたボイラチューブの補強方法の締付工程の説明図である。
図9に示すように、締付工程では、ボイラチューブ補強用具10の一端部を固定用具200で固定し、固定した一端部側から治具本体101によってボイラチューブ用補強具10を締付けることが好ましい。これにより、治具本体101によるボイラチューブ補強用具10の締付に伴うボイラチューブ補強具10の移動を防ぐことができるので、ボイラチューブ補強用具10を一層均一に締付けることが可能となる。この場合、ボイラチューブ補強具10の締付範囲が広い場合には、
図9に示した例のように、ボイラチューブ補強具10の一端部を固定用具200で固定して所定範囲のボイラチューブ補強部10の締付を実施した後、ボイラチューブ補強具10の締付範囲の中央部を別の固定用具200で仮に固定してボイラチューブ補強具10を締付けてもよい。これにより、ボイラチューブ補強具10の締付範囲が広範囲に亘る場合であっても、ボイラチューブ補強具10を広範囲に亘ってボイラチューブtに対して均一に締付けることが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ボイラチューブ用補強具10を巻回したボイラチューブtに治具本体の貫通孔に挿通した後、ボイラチューブtの管軸方向を回転軸としてボイラチューブtの周方向に回転しながら治具本体101をボイラチューブ用補強具10の一端側から他端側に移動させるだけでボイラチューブ用補強具10をボイラチューブtに締付けることができる。これにより、異なる施工者が実施しても貫通孔Hの内周面に沿って螺旋状に設けられた溝部101aの幅に応じた均一の間隔でボイラチューブ用補強具10をボイラチューブtに固定することができる。また、ボイラチューブ用補強具10用の固定用装置を用いて施工する場合と比較して治具本体101が小さいので、狭隘部に狭い間隔で配置されたボイラチューブtに対しても、容易にボイラチューブ用補強具10を巻回することが可能となる。したがって、狭隘部に狭い間隔(例えば、60mm)で配置されたボイラチューブtの膨出部eであっても、簡便であって短納期かつ低コストでかつ均一に作業者の個人差がなくボイラチューブの補強具を固定できるボイラチューブの補強方法を実現できる。
【0038】
また、本実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具及びボイラチューブの補強方法によれば、狭い間隔で配置されたボイラチューブ群の中に発生した膨出部eに対する巻付作業が容易であり、短時間で補強作業を完了できる。また、補強具10を用いるだけであるので低コスト化できると共に、ボイラチューブの直管部、ベンド部を問わず、あらゆる領域、形状、管径のボイラチューブに適用可能である。また、隣り合う金属ワイヤ間を隙間なく均一に巻回できるので、膨出部eに対する押圧力を高めることができる。
【0039】
なお、上記実施の形態においては、ボイラチューブtの膨出部eに対してボイラチューブ補強具10を締付ける例について説明したが、本発明は、この構成に限定されるものではない。上記実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具及びボイラチューブの補強方法は、例えば、金属組織の検査によって発見されたボイラチューブの特定領域であって、膨出していない領域に対して施工することが可能である。また、上記実施の形態に係るボイラチューブ用補強具固定治具は、ボイラチューブtの膨出部eであっても、ボイラチューブ用補強具固定治具の内径がボイラチューブtの膨出部eの外径未満であればボイラチューブ補強用治具10を適用することが可能である。
【0040】
また、上記実施の形態においては、ボイラチューブtの膨出部eを含む特定領域の全てについてボイラチューブ用補強具固定治具100を用いてボイラチューブ補強具10を締付ける例について説明したが、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、
図1に示したように、ボイラチューブtの膨出部eの近傍であって、膨出量が小さい領域A1及びA3については、ボイラチューブ用補強具固定治具100を用いてボイラチューブ補強具10の締付けを行い、膨出量が大きい領域A2については、ボイラチューブ用補強具固定治具100を用いずにボイラチューブ補強具10の締付けを行ってもよい。なお、この場合であっても、領域A2におけるボイラチューブtの膨出量がボイラチューブ用補強具固定治具100の貫通孔Hの内径以内であれば、ボイラチューブ用補強具固定治具100を用いて施工することが可能である。