特許第6053706号(P6053706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053706
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20161219BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H02M3/155 K
   H02M7/12 Q
【請求項の数】16
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-29365(P2014-29365)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-154692(P2015-154692A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(72)【発明者】
【氏名】石黒 義章
(72)【発明者】
【氏名】坂下 友一
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝佳
(72)【発明者】
【氏名】福田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】芝原 信一
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−048516(JP,A)
【文献】 特開平06−014577(JP,A)
【文献】 特開平09−261963(JP,A)
【文献】 特開2012−085397(JP,A)
【文献】 特開2002−359977(JP,A)
【文献】 特開2001−197736(JP,A)
【文献】 特表2007−515917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源主回路部と電源制御部とからなり、
前記電源主回路部は、交流電圧を全波整流する全波整流回路と、前記全波整流回路で全波整流された後の入力電圧をフィルタを通して検出する入力電圧検出部と、スイッチング素子及びリアクトルを有して前記全波整流回路によって得られた前記入力電圧を目標とする出力電圧に変換する昇降圧コンバータと、前記昇降圧コンバータで電圧変換された後の出力電圧を検出する出力電圧検出部と、前記昇降圧コンバータのリアクトルに流れるリアクトル電流を検出するリアクトル電流検出部とを備え、
前記電源制御部は、前記各検出部で検出された検出信号に基づいて前記昇降圧コンバータの前記スイッチング素子をオンオフ制御することにより前記出力電圧を制御すると共に、前記リアクトル電流を制御して入力電流波形の位相を入力電圧波形の位相に近づける力率改善制御を行う電力変換装置であって、
前記電源制御部は、前記昇降圧コンバータを制御するモードとして昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御のうちの少なくとも二つ以上の制御モードを有すると共に、前記いずれか二つの制御モード間を切り替えるタイミングを、前記入力電圧検出部により検出した入力電圧検出値と、前記制御モードを切り替える電圧指令値である制御切替指令電圧を前記フィルタを通して検出した前記入力電圧検出値の検出遅れに基づいて補正した値とを比較することにより決定する電力変換装置。
【請求項2】
前記制御切替指令電圧を補正するための補正値は、前記入力電圧検出値を検出した時点の入力電圧波形の傾きが正または負であるかに基づいて決定する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御切替指令電圧を補正するための補正値は、前記入力電圧のレベル、前記目標とする出力電圧のレベル、前記入力電圧の周波数のうち少なくとも1つの条件に基づいて決定する請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記フィルタは、一定の時定数を有するローパスフィルタであり、前記制御切替指令電圧及びその補正値は、前記時定数に基づき決定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御切替指令電圧及びその補正値に関する情報を、前記電源制御部のメモリに格納しておき、前記電源制御部は、外部からの入出力電圧情報を入力し、前記メモリの情報に基づいて前記制御切替指令電圧及びその補正値を決定する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御切替指令電圧を補正するための補正値は、前記フィルタの時定数、前記入力電圧のレベル、前記入力電圧の周波数に対応する前記制御切替指令電圧を用いた近似式を用いて決定する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記近似式は、前記フィルタの時定数に応じた傾きと、前記入力電圧のレベル及び前記入力電圧の周波数に応じた切片を有する1次関数である請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電源制御部が、前記入力電圧検出部により検出した入力電圧検出値と、前記制御切替指令電圧を前記入力電圧検出値の検出遅れに基づいて補正した値とを比較してその大小関係で制御モードを切り替える場合、同じ大小関係が連続して複数回続いた場合に、前記制御モードを切り替えるようにした請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記電源主回路部は、前記電源主回路部につながれた負荷に流れる電流を検出する負荷電流検出部を備え、前記電源制御部は、前記負荷電流検出部で検出された負荷電流が目標負荷電流になるように制御する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記負荷はLEDである請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記電源制御部の前記リアクトル電流を目標リアクトル電流に一致させる制御方式として、ピーク電流制御を用いる請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記電源制御部の前記リアクトル電流を目標リアクトル電流に一致させる制御方式として、ヒステリシスコンパレータ制御を用いる請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記電源制御部の前記リアクトル電流を目標リアクトル電流に一致させる制御方式として、ウインドコンパレータ制御を用いる請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記電源制御部は、昇圧制御と昇降圧制御の二つの制御モード間を切り替えるタイミングを、前記入力電圧検出値と、前記目標とする出力電圧より低い第1制御切替指令電圧を前記フィルタを通して検出した前記入力電圧検出値の検出遅れに基づいて補正した値とを比較することにより決定する請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記電源制御部は、降圧制御と昇降圧制御の二つの制御モード間を切り替えるタイミングを、前記入力電圧検出値と、前記目標とする出力電圧より高い第2制御切替指令電圧を前記フィルタを通して検出した前記入力電圧検出値の検出遅れに基づいて補正した値とを比較することにより決定する請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記電源制御部は、昇圧制御と降圧制御の二つの制御モード間を切り替えるタイミングを、前記入力電圧検出値と、前記目標とする出力電圧を前記フィルタを通して検出した前記入力電圧検出値の検出遅れに基づいて補正した値とを比較することにより決定する請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、力率改善(PFC:Power Factor Correction)機能を備えて交流電力を直流電力に昇降圧変換する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、単相交流電源からの電流波形を電圧波形と同じ波形にして電源力率を1とするコンバータ回路として、出力電圧Vripと出力電圧値Vrefの関係に基づいて、昇圧動作、降圧動作、昇降圧動作を時分割で行うコンバータ回路が開示されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−261963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記特許文献1のようなコンバータ回路では、入出力電圧を電源制御部に入力し、電源制御部は入出力電圧の関係に応じて昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御から適した制御方法を判断して、適切なスイッチングパターンで主回路のスイッチング素子のオンオフを行う。これら入出力電圧信号を入力する際に、電源制御部における誤動作を防ぐために、主回路で発生するスイッチング素子等によるノイズを除去する必要があり、入出力電圧信号をローパスフィルタを通して電源制御部に入力するのが一般的である。
しかしながら、入出力電圧をローパスフィルタを通して検出することにより、検出した入出力電圧は実際の入出力電圧より位相が遅れる。ここで、入力電圧と出力電圧の比較により昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御の制御モードを決定しており、特に検出した入力電圧が実際の入力電圧より遅れることで、電源制御部の制御モードを切り替える指令電圧よりも遅れたタイミングで制御モードの切替が行われる。その結果、入力電流に歪みが発生し、力率の低下及び高調波ノイズが発生する。
【0005】
この発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、入力電圧を電源制御部に入力する際に、フィルタを設けた場合に生じる、実際の入力電圧に対する検出入力電圧の遅れを考慮して、最適なタイミングで制御モードの切替を行い、入力電流の高調波を抑制し、力率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、電源主回路部と電源制御部とからなり、
前記電源主回路部は、交流電圧を全波整流する全波整流回路と、前記全波整流回路で全波整流された後の入力電圧をフィルタを通して検出する入力電圧検出部と、スイッチング素子及びリアクトルを有して前記全波整流回路によって得られた前記入力電圧を目標とする出力電圧に変換する昇降圧コンバータと、前記昇降圧コンバータで電圧変換された後の出力電圧を検出する出力電圧検出部と、前記昇降圧コンバータのリアクトルに流れるリアクトル電流を検出するリアクトル電流検出部とを備え、
前記電源制御部は、前記各検出部で検出された検出信号に基づいて前記昇降圧コンバータの前記スイッチング素子をオンオフ制御することにより前記出力電圧を制御すると共に、前記リアクトル電流を制御して入力電流波形を入力電圧波形に近づける力率改善制御を行う電力変換装置であって、
前記電源制御部は、前記昇降圧コンバータを制御するモードとして昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御のうちの少なくとも二つ以上の制御モードを有すると共に、前記いずれか二つの制御モード間を切り替えるタイミングを、前記入力電圧検出部により検出した入力電圧検出値と、前記制御モードを切り替える電圧指令値である制御切替指令電圧を前記フィルタを通して検出した前記入力電圧検出値の検出遅れに基づいて補正した値とを比較することにより決定するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、昇降圧コンバータを制御するモードとして昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御のうちのいずれか二つの制御モード間を切り替えるタイミングを、入力電圧検出部により検出した入力電圧検出値と、制御モードを切り替える電圧指令値である制御切替指令電圧をフィルタを通して検出した入力電圧検出値の検出遅れに基づいて補正した値とを比較して決定するようにしたので、制御モード切替時の入力電流歪みを抑制することができ、電力変換装置の力率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1による電力変換装置の電源主回路部を示す回路ブロック図である。
図2】この発明の実施の形態1による電力変換装置の電源制御部を示す回路ブロック図である。
図3】この発明の実施の形態1による入出力電圧に対する昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御の動作モードの説明図である。
図4】この発明の実施の形態1によるピーク電流制御方式の説明図である。
図5】実入力電圧波形とフィルタを設けた場合の入力電圧検出波形の概略図及び電圧変換装置の力率が低下する原因を示す概略図である。
図6】この発明の実施の形態1による入力電圧波形の傾きを判断するための概略図である。
図7】この発明の実施の形態1による入力電圧レベルの変化に応じた制御切替指令電圧補正値の変化を示した概略図である。
図8】この発明の実施の形態1による入力電圧レベルの変化に応じた制御切替指令電圧補正値の変化を示した概略図である。
図9】この発明の実施の形態1による目標とする出力電圧レベルの変化に応じた制御切替指令電圧補正値の変化を示した概略図である。
図10】この発明の実施の形態1による目標とする出力電圧レベルの変化に応じた制御切替指令電圧補正値の変化を示した概略図である。
図11】この発明の実施の形態1による入力電圧の周波数の変化に応じた制御切替指令電圧補正値の変化を示した概略図である。
図12】この発明の実施の形態1による入力電圧の周波数の変化に応じた制御切替指令電圧補正値の変化を示した概略図である。
図13】この発明の実施の形態1による電源制御部の演算処理を示すフローチャートである。
図14】この発明の実施の形態1による電源制御部の演算処理を示すフローチャートである。
図15】この発明の実施の形態1によるヒステリシスコンパレータ制御方式の説明図である。
図16】この発明の実施の形態1によるウインドウコンパレータ制御方式の説明図である。
図17】この発明の実施の形態2による制御切替指令電圧とその補正値の関係を近似式で表した図である。
図18】この発明の実施の形態3による電源制御部の演算処理を示すフローチャートである。
図19】この発明の実施の形態3による電源制御部の演算処理を示すフローチャートである。
図20】この発明の実施の形態4による電力変換装置の電源主回路部を示す回路ブロック図である。
図21】この発明の実施の形態4による電力変換装置の電源制御部を示す回路ブロック図である。
図22】この発明の実施の形態5による電力変換装置のリアクトル電流のピーク電流制御方式の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1及び図2は、この発明の実施の形態1による電力変換装置の電源主回路部1及び電源制御部2を示す回路ブロック図であり、実施の形態1の電力変換装置は、図1の電源主回路部1と図2の電源制御部2とを備えている。
【0010】
図1に示す電源主回路部1は、交流電源3から供給された交流入力電圧vacを全波整流するためのダイオードブリッジで構成された全波整流回路4、全波整流後の入力電圧(脈流電圧)|vac|に含まれているスイッチングノイズを平滑するための小容量の入力コンデンサC1、後に詳述する昇降圧コンバータ5(以降、単にコンバータ5という)、および当該コンバータ5の出力電圧の脈動を平滑させて直流の出力電圧vdcを得るための出力コンデンサC2を、主要構成として備えている。そして、この電源主回路部1の直流電力出力側には負荷9が接続されている。
【0011】
また、電源主回路部1は、リアクトル電流検出部6、入力電圧検出部7、および出力電圧検出部8を備えており、これらの検出部が特許請求の範囲における各検出部に相当する。入力電圧検出部7は、入力電圧|vac|の瞬時値を入力電圧検出値vinとして検出するもので、直列に接続された分圧抵抗R1、R2を備え、さらに、ローパスフィルタとして分圧抵抗R2に並列に接続されたコンデンサCinを備えている。また、出力電圧検出部8は、直流化された出力電圧vdcの瞬時値を出力電圧検出値voとして検出するものであり、直列に接続された分圧抵抗R3、R4を備えている。なお、リアクトル電流検出部6による電流検出の内容については後述する。
【0012】
コンバータ5は、全波整流回路4により全波整流された入力電圧(脈流電圧)|vac|を、目標とする出力電圧vdcに調整するものである。このコンバータ5は、降圧型アームを構成する第1スイッチング素子Q1と第1ダイオードD1、および昇圧型アームを構成する第2スイッチング素子Q2と第2ダイオードD2を備えている。また、第1スイッチング素子Q1と第1ダイオードD1の接続点と、第2スイッチング素子Q2とダイオードD2の接続点との間には、リアクトルLが設けられている。なお、第1、第2スイッチング素子Q1、Q2は、電源制御部2で生成したオンオフ制御用のスイッチ信号により駆動されるFET(Field Effect Transister)素子やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子などである。
【0013】
そして、第1スイッチング素子Q1と第1ダイオードD1は入力電圧|vac|に対して直列に接続され、また、第2スイッチング素子Q2と第2ダイオードD2は負荷9に対して直列に接続されている。この回路構成により、コンバータ5は、昇圧機能と、降圧機能と、昇降圧機能とを発揮できる。
【0014】
次に、電源制御部2の機能について説明する。
電源制御部2は、入出力電圧検出部7及び8により検出した入出力電圧検出値vin及びvoを入力し、これら入出力電圧の関係に応じて昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御のうちいずれか1つの適した制御モードを選択すると共に、リアクトル電流検出部6により検出したリアクトル電流iLが目標リアクトル電流iL*になるように、適切なスイッチングパターンでコンバータ5のスイッチング素子のオンオフ制御を行う。
【0015】
具体的には、電源制御部2は、図3に示すように、入力電圧検出値(vin)≦第1制御切替指令電圧(vo1*)の場合は、第1スイッチング素子Q1を常時オンして第2スイッチング素子Q2をスイッチング動作させることでコンバータ5を昇圧コンバータとして動作させる。入力電圧検出値(vin)≧第2制御切替指令電圧(vo2*)の場合は、第2スイッチング素子Q2を常時オフして第1スイッチング素子Q1をスイッチング動作させることでコンバータ5を降圧コンバータとして動作させる。第1制御切替指令電圧(vo1*)<入力電圧検出値(vin)<第2制御切替指令電圧(vo2*)の場合は、第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2を同期させて同時にスイッチング動作させることでコンバータ5を昇降圧コンバータとして動作させる。ここで、制御モードを切り替える際の制御切替指令電圧として、昇圧制御と昇降圧制御との制御切替指令電圧を第1制御切替指令電圧(vo1*)と、降圧制御と昇降圧制御との制御切替指令電圧を第2制御切替指令電圧(vo2*)としており、入力電流歪みを抑制し、力率を高く保つためには目標出力電圧(vo*)に対して、vo1*≦vo*≦vo2*となるように設定する。
【0016】
なお、コンバータ5の回路構成として、第1及び第2ダイオードD1、D2をFET素子やIGBT素子などの第3及び第4スイッチング素子Q3、Q4に変更し、昇圧制御時は、第2スイッチング素子Q2と第4スイッチング素子Q4のオンオフを逆論理で動作させ、降圧制御時は、第1スイッチング素子Q1と第3スイッチング素子Q3のオンオフを逆論理で動作させ、昇降圧制御時は、第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2と第3及び第4スイッチング素子Q3、Q4のオンオフを逆論理で動作させる同期整流方式としてもよい。
【0017】
昇圧制御時には、電源制御部2は、第1スイッチング素子Q1を常時オンして第2スイッチング素子Q2をスイッチング動作させるので、リアクトルLに流れるリアクトル電流iLは、入力電流iinに対応したものとなる。また、降圧制御時には、電源制御部2は、第2スイッチング素子Q2を常時オフして第1スイッチング素子Q1をスイッチング動作させるので、リアクトルLに流れるリアクトル電流iLは、出力電流ioに対応したものとなる。さらに、昇降圧制御時には、電源制御部2は、第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2を同期させて同時にスイッチング動作させるので、リアクトルLには、第1及び第2スイッチング素子Q1及びQ2がオンの期間に入力電流iinに対応した電流が流れ、第1及び第2スイッチング素子Q1及びQ2がオフの期間に出力電流ioに対応した電流が流れる。
【0018】
そして、電源制御部2は、昇圧制御時は全波整流後の入力電流iinに対応して得られた値に基づいて、また、降圧制御時は出力電流ioに対応して得られた値に基づいて、さらに、昇降圧制御時は入力電流iin及び出力電流ioに対応して得られた値に基づいて、それぞれリアクトル電流iLの制御目標となる目標リアクトル電流iL*を設定する。そして、電源制御部2は、リアクトル電流iLが目標リアクトル電流iL*となるように制御することにより、最適に入力電流iinの位相と波形を制御することが可能となる。
【0019】
また、電源制御部2は、コンバータ5の第1、第2スイッチング素子Q1、Q2をオンオフ制御することにより、昇圧制御、降圧制御、又は昇降圧制御のいずれの場合においても、交流入力電流iacが交流入力電圧vacとほぼ同位相で同波形となるように全波整流後の入力電流iinを制御するPFC(PFC:Power Factor Correction)制御を行う。このPFC制御において、入力電流iinを制御する際の制御目標値となる目標入力電流iin*は、力率改善を図る上で、入力電圧|vac|と同じ位相で同じ脈流波形となるように生成する必要があるが、それには、コンバータ5のリアクトルLに流れるリアクトル電流iLを制御することにより調整することができる。そして、リアクトル電流iLの単位時間ごとの平均が目標リアクトル電流iL*に一致するように、電源制御部2はコンバータ5の第1、第2スイッチング素子Q1、Q2を制御する。
【0020】
ここで、目標リアクトル電流iL*の設定にあたって、リアクトル電流iLの単位時間ごとの平均が目標リアクトル電流iL*となるように制御する必要がある。そのためには、図4に示すように、ピーク電流制御によって目標リアクトル電流iL*の2倍の値を目標ピーク電流iref*として設定すればよい。すなわち、リアクトル電流iLが0に達した瞬間にリアクトル電流iLを立ち上げ、目標ピーク電流iref*に達した瞬間にリアクトル電流iLを立ち下げるようにする。そうすれば、リアクトル電流iLが目標リアクトル電流iL*を超えた分で目標リアクトル電流iL*に達しないリアクトル電流iLの不足分を埋め合わせることになるため、リアクトル電流iLの単位時間ごとの平均を目標リアクトル電流iL*に一致させることができる。したがって、目標リアクトル電流iL*と目標ピーク電流iref*との関係は、次の式(1)となる。
【0021】
iref*=2×iL* ・・・(1)
【0022】
さて、実際には、電源主回路部1の入出力電圧検出部7及び8により入出力電圧検出値vin、voを検出して電源制御部2に入力する際に、電源制御部2による制御の誤動作を防ぐために、電源主回路部1で生じるスイッチング等によるノイズを除去する必要がある。そこで、図1に示すように、電源主回路部1の入出力電圧検出部7及び8に、ローパスフィルタを設け、入出力電圧検出値vin、voをこのローパスフィルタを通して電源制御部2に入力するようにしている。なお、図1では入力電圧検出部7のみに分圧抵抗R2及びコンデンサC2からなるローパスフィルタを記載しており、出力電圧検出部8のローパスフィルタは図示省略している。
【0023】
図5は前記のようなローパスフィルタを設けた場合の入出力電圧の実電圧波形(入力電圧:AC200V、出力電圧:DC200V)に対する電源制御部2に入力される入力電圧検出値vinの波形の概略図を示す。図5において、実入力電圧値が実出力電圧値(200V)より小さいときにコンバータ5は昇圧制御を行い、実入力電圧値が実出力電圧値(200V)以上のときにコンバータ5は降圧制御を行うように、電源制御部2が制御切替指令を与えている。なお、図5では、説明の簡略化のため、昇降圧制御については省略し、昇圧制御と降圧制御の切り替え動作について説明する。電源制御部2に入力される入力電圧検出値vinは、ローパスフィルタを通すことで実入力電圧値に対して位相が遅れる。この場合、実入力電圧値と直流の実出力電圧値の比較で制御方法を決定しており、実入力電圧値より入力電圧検出値vinが遅れることにより、電源制御部2の制御切替指令よりも遅れたタイミングで制御の切替が行われる。その結果、図5に示すように、実入力電圧>実出力電圧の期間に昇圧制御、実入力電圧<実出力電圧の期間に降圧制御の動作が生じてしまう。
【0024】
ここで、昇圧制御時には、第1スイッチング素子Q1を常にオンとしている状態で、第2スイッチング素子Q2をオンすることでリアクトルLにエネルギーが蓄積され、リアクトル電流iLは増加し、第2スイッチングQ2をオフすることでリアクトルLに蓄積されたエネルギーが放出され、リアクトル電流iLは減少する。
しかし、昇圧制御時に実入力電圧>実出力電圧となることで、第2スイッチング素子Q2をオフにした場合でもリアクトルLには正の電圧が印加され、リアクトル電流iLは増加を続けてしまう。
【0025】
一方、降圧制御時には、第2スイッチング素子Q2を常にオフとしている状態で、第1スイッチング素子Q1をオンすることでコンバータ5の入力部と出力部が導通し、リアクトル電流iLは増加し、第1スイッチング素子Q1をオフすることでコンバータ5の入力部と出力部が切り離され、リアクトル電流iLは減少する。
しかし、降圧制御時に実入力電圧<実出力電圧となることで、第1スイッチング素子Q1をオンにした場合でもリアクトルLに電流が流れなくなってしまう。
そのため、前記の現象により、図5に示すように、リアクトル電流iLつまり入力電流iinに歪みが発生し、電力変換装置の力率の低下及び高調波ノイズが発生する。
【0026】
そこで、本実施の形態では、ローパスフィルタを設けた場合に生じる、実入力電圧に対する電源制御部2に入力される入力電圧検出値vinの遅れを考慮した値である制御切替指令電圧補正値を制御切替指令電圧に加算して制御切替を実施することで、最適なタイミングで制御モードの切替を行い、入力電流iinの高調波を抑制し、力率を向上することができる電力変換装置を提供する。
【0027】
具体的には、電源制御部2は、入力電圧検出値vinと、第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*を補正した値vo1*+a、vo2*+bに基づき、昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御のうち、いずれかの制御を行うかを決定する。そして、電源制御部2は、昇圧制御と決定した場合は、第1スイッチング素子Q1を常時オンして第2スイッチング素子Q2をスイッチング動作させることでコンバータ5を昇圧コンバータとして動作させる。また、電源制御部2は、降圧制御と決定した場合は、第2スイッチング素子Q2を常時オフして第1スイッチング素子Q1をスイッチング動作させることでコンバータ5を降圧コンバータとして動作させる。さらに、電源制御部2は、昇降圧制御と決定した場合は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2を同期させてスイッチング動作させることでコンバータ5を昇降圧コンバータとして動作させる。
【0028】
次に、電源制御部2が、入力電圧|vac|を入力電圧検出値vinとして検出する際に生じるローパスフィルタによる位相遅れを補正するための制御について説明する。
電源制御部2は、実際の入力電圧|vac|に対する入力電圧検出値vinの位相遅れを補正するための補正値a、bを決定するため、現在の入力電圧波形の傾きが正であるか負であるかの判断を行う。この判断は、例えば、入力電圧検出部7で入力電圧|vac|を検出して得られる現在の入力電圧検出値vin(n)と0.1ms前の入力電圧検出値vin(n−1)との大きさを比較することにより行う。vin(n)>vin(n−1)であれば入力電圧波形の傾きは正であり、vin(n)≦vin(n−1)であれば入力電圧波形の傾きは負である。
入力電圧波形の傾きが正の場合、現在の入力電圧検出値vinは、図6で示す入力電圧波形の左半面の状態であると判断され、左半面用の制御切替指令電圧補正値a1、b1がa、bにセットされる。入力電圧波形の傾きが負の場合、現在の入力電圧検出値vinは、図6で示す入力電圧波形の右半面の状態であると判断され、右半面用の制御切替指令電圧補正値a2、b2がa、bにセットされる。この補正値a、bは入力電圧|vac|を検出する際に生じるローパスフィルタによる位相遅れを補正するための補正値であるため、a1、b1は負の値、a2、b2は正の値となっている。
【0029】
そして、電源制御部2は、入力電圧検出値vinと、第1及び第2制御切替指令電圧を補正した値vo1*+a、vo2*+bとを比較することで、昇圧制御、降圧制御、又は昇降圧制御とを切り替える。具体的には、vin≦vo1*+aのとき昇圧制御を行い、vin≧vo2*+bのとき降圧制御を行い、vo1*+a<vin<vo2*+bのとき昇降圧制御を行う。この場合、昇圧制御ではコンバータ5は昇圧コンバータとして機能し、降圧制御ではコンバータ5は降圧コンバータとして機能し、昇降圧制御ではコンバータ5は昇降圧コンバータとして機能することになる。
【0030】
ここで、第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*は、前記のように目標出力電圧vo*に基づいて決定される。しかし、図7及び図8に示すように、同じ目標出力電圧vo*の場合であっても、入力電圧|vac|が大きくなると、目標出力電圧vo*付近の入力電圧|vac|の傾きが大きくなり、入力電圧検出値vinを検出する際のローパスフィルタによる位相遅れ分に相当する電圧変化量が大きくなる。
そこで、目標出力電圧vo*が同じ場合であって、入力電圧|vac|が大きくなると、昇圧制御と昇降圧制御の間の第1制御切替指令電圧vo1*の補正値aも大きくなるように設定する。すなわち、図7(a)の場合(|vac|が小さい場合)の最適な第1制御切替指令電圧vo1*の補正値a1(1)及びa2(1)の絶対値に対する、図7(b)の場合(|vac|が大きい場合)の最適な補正値a1(2)及びa2(2)の絶対値を大きく設定する。なお、a1(1)<0、a1(2)<0、a2(1)>0、a2(2)>0である。
【0031】
図7では、入力電圧レベルに応じて昇圧制御と昇降圧制御の切替における制御切替指令電圧vo1*の補正値aを変化させることについて説明したが、同様に、降圧制御と昇降圧制御の切替における第2制御切替指令電圧vo2*の補正値bも入力電圧レベルに応じて、その絶対値を変化させるようにする。
すなわち、目標出力電圧vo*が同じ場合であって、入力電圧|vac|が大きくなると、降圧制御と昇降圧制御の間の第2制御切替指令電圧vo2*の補正値bも大きくなるように設定する。つまり、図8(a)の場合(|vac|が小さい場合)の最適な第2制御切替指令電圧vo2*の補正値b1(1)及びb2(1)の絶対値に対する、図8(b)の場合(|vac|が大きい場合)の最適な補正値b1(2)及びb2(2)の絶対値は大きくなるように設定する。なお、b1(1)<0、b1(2)<0、b2(1)>0、b2(2)>0である。
【0032】
次に、入力電圧|vac|のレベルが同じであり、目標とする出力電圧vdcが変化した場合について説明する。図9及び図10に示すように、入力電圧|vac|のレベルが同じであっても、目標とする出力電圧vdcが大きくなり入力電圧|vac|のピーク電圧値に近いほど、入力電圧|vac|の傾きが小さくなり、入力電圧検出値vinを検出する際のローパスフィルタによる位相遅れ分に相当する電圧変化量が小さくなる。
そこで、入力電圧|vac|のレベルが同じであり、目標とする出力電圧vdcが大きくなった場合、昇圧制御と昇降圧制御の間の第1制御切替指令電圧vo1*の補正値aを小さく設定する。すなわち、図9(a)の場合(vdcが小さい場合)の最適な第1制御切替指令電圧vo1*(1)の補正値a1(1)及びa2(1)の絶対値に対する、図9(b)の場合(vdcが大きい場合)の第1制御切替指令電圧vo1*(2)の最適な補正値a1(2)及びa2(2)の絶対値を小さく設定する。なお、a1(1)<0、a1(2)<0、a2(1)>0、a2(2)>0である。
【0033】
図9では、目標とする出力電圧vdcに応じて昇圧制御と昇降圧制御の切替における第1制御切替指令電圧vo1*の補正値aを変化させることについて説明したが、同様に、降圧制御と昇降圧制御の切替における第2制御切替指令電圧vo2*の補正値bも目標とする出力電圧vdcに応じて、その絶対値を変化させるようにする。
すなわち、入力電圧|vac|のレベルが同じであり、目標とする出力電圧vdcが大きくなると、入力電圧検出値vinを検出する際のローパスフィルタによる位相遅れ分に相当する電圧変化量が小さくなる。そこで、図10(a)の場合(vdcが小さい場合)の最適な第2制御切替指令電圧vo2*(1)の補正値b1(1)及びb2(1)の絶対値に対する、図10(b)の場合(vdcが大きい場合)の最適な補正値b1(2)及びb2(2)の絶対値は小さくなるように設定する。
【0034】
さらに、入力電圧|vac|のピーク電圧値と、目標とする出力電圧vdc(目標出力電圧vo*)とを同一とし、入力電圧|vac|の周波数を変化させた場合、当該周波数を高くするほど、入力電圧|vac|の曲線の傾きが大きくなり、入力電圧検出値vinを検出する際のローパスフィルタによる位相遅れ分に相当する電圧変化量が大きくなる。
そこで、入力電圧|vac|のレベルと、目標とする出力電圧vdc(目標出力電圧vo*)とが同じ場合で、入力電圧|vac|の周波数が高くなった場合、昇圧制御と昇降圧制御の間の第1制御切替指令電圧vo1*の補正値aを大きく設定する。すなわち、図11(a)の場合(周波数が低い場合)の最適な第1制御切替指令電圧vo1*の補正値a1(1)及びa2(1)の絶対値に対する、図11(b)の場合(周波数が高い場合)の第1制御切替指令電圧vo1*の最適な補正値a1(2)及びa2(2)の絶対値を小さく設定する。なお、a1(1)<0、a1(2)<0、a2(1)>0、a2(2)>0である。
【0035】
同様に、入力電圧|vac|のレベルと、目標とする出力電圧vdc(目標出力電圧vo*)とが同じ場合で、入力電圧|vac|の周波数が高くなった場合、降圧制御と昇降圧制御の間の第2制御切替指令電圧vo2*の補正値bを大きく設定する。すなわち、図12(a)の場合(周波数が低い場合)の最適な第2制御切替指令電圧vo2*の補正値b1(1)及びb2(1)の絶対値に対する、図12(b)の場合(周波数が高い場合)の第2制御切替指令電圧vo2*の最適な補正値b1(2)及びb2(2)の絶対値を小さく設定する。なお、b1(1)<0、b1(2)<0、b2(1)>0、b2(2)>0である。
【0036】
このように入出力電圧条件に応じて、出力電圧条件から決まる第1、第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*に対する最適な補正値a1、a2、b1、b2が変化するため、あらかじめ入力電圧と出力電圧の情報を外部から受信し、その入出力電圧情報に応じた第1、第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*とその補正値a1、a2、b1、b2をテーブルに格納しておき、入出力電圧情報に応じてテーブルから読み出すことによって、制御切替を行うようにする。
【0037】
次に、電源制御部2の演算処理の内容について、図13及び図14のフローチャート、並びに図2の電源制御部2の回路ブロック図に基づいて説明する。なお、図13及び図14において各処理ステップをステップSで表す。また、図13及び図14のフローチャートのスタートからエンドまでの一連の処理は、所定の周期(ここでは0.02msの周期)で繰り返されるものとする。
【0038】
まず、電源制御部2が、演算処理を開始(START)すると、初期設定部20は外部から初期情報受信したかどうかを判断する(ステップS1)。初期設定部20は、ステップS1でYesの場合、初期設定カウンタinit−cntを1に設定して(ステップS01)、外部の上位システム等から入力電圧及び出力電圧の情報を受信する(ステップS2)。そして、初期設定部20のメモリ内に格納してあるテーブルから、入力電圧及び出力電圧の情報に応じた、昇圧制御と昇降圧制御との間の切り替えの目標となる第1制御切替指令電圧vo1*、降圧制御と昇降圧制御との間の切り替えの目標となる第2制御切替指令電圧vo2*、並びにそれら制御切替指令電圧の補正値a1、a2、b1、b2を読み出し(ステップS3)、読み出した値を制御切替指令電圧補正値決定部21に送りステップS4に進む。なお、ここでは、入力電圧及び出力電圧の情報を上位システム等の外部から受け取り、それに応じた制御切替指令電圧vo1*、vo2*、制御切替指令電圧の補正値a1、a2、b1、b2を設定することとしているが、これに限らず、これらの値は予め定められた定数であってもよい。
また、ステップS1においてNoの場合、初期設定の処理(ステップS01〜S3)を行うことなく、ステップS4に進む。
【0039】
次に、ステップS4において、電源制御部2は、電源主回路部1の入力電圧検出部7により入力電圧|vac|を検出して得られる入力電圧検出値vin、および出力電圧検出部8により出力電圧vdcを検出して得られる出力電圧検出値voをそれぞれ取り込む。
【0040】
次に、制御切替指令電圧補正値決定部21は、現在の入力電圧状態に応じた適切な制御切替指令電圧の補正値a、bを求めるため、現在の入力電圧が図6の入力電圧波形の「左半面」にあるのか「右半面」にあるのか、つまり現在の入力電圧波形の傾きが正であるか負であるかの判断を行う。具体的には、前述したように、入力電圧検出部7で入力電圧を検出して得られる現在の入力電圧検出値vin(n)と0.1ms前の入力電圧検出値vin(n−1)との大きさを比較して、vin(n)>vin(n−1)であれば入力電圧波形の傾きは正であり、vin(n)≦vin(n−1)であれば入力電圧波形の傾きは負であると判断する。
【0041】
現在の入力電圧波形の傾きが正であるか負であるかの判断は、具体的には、図13のフローチャートのステップS5〜S9で行われる。
まず、ステップS1において初期情報を受信した場合について説明する。初期情報を受信した場合、ステップS4からステップS7の処理を初期設定カウンタinit−cntが5になるまで、つまり5回繰り返す。そして、ステップS5において、現在の入力電圧検出値vinをvin[0]に、1回前の検出値vinをvin[1]に、2回前の検出値vinをvin[2]に、3回前の検出値vinをvin[3]に、4回前の検出値vinをvin[4]に設定する。そして、ステップS7において初期設定カウンタinit−cntが5になると、ステップS8に進み、初期設定カウンタinit−cntを10(5以上の値)に設定する。その後、ステップS9において、vin[4]<vin[0]であるかどうか判断する。なお、ステップS6は初期設定カウンタinit−cntをインクリメントする処理を示す。
【0042】
次に、ステップS1において初期情報を受信しない場合について説明する。初期情報を受信しない場合は、ステップS4からステップS9までの通常のフロー処理を行う。すなわち、ステップS4において現在の入力電圧検出値vinを取り込むと、ステップS5において、現在の入力電圧検出値vinをvin[0]に、1回前の検出値vinをvin[1]に、2回前の検出値vinをvin[2]に、3回前の検出値vinをvin[3]に、4回前の検出値vinをvin[4]に更新する。そして、ステップS7では初期設定カウンタinit−cntが5以上なので、ステップS8、S9に進み、vin[4]<vin[0]であるかどうか判断する。
【0043】
制御切替指令電圧補正値決定部21は、ステップS9においてvin[4]<vin[0]である場合は、図6の入力電圧波形の傾きは正である(図6の左半面)と判断して、制御切替指令電圧の補正値a、bにそれぞれa1、b1をセットする(ステップS10)。一方、ステップS9においてvin[4]<vin[0]でない場合は、図6の入力電圧波形の傾きは負である(図6の右半面)と判断して、制御切替指令電圧の補正値a、bにa2、b2をセットする(ステップS11)。
【0044】
次に、出力制御部30は、出力電圧検出値voと目標出力電圧vo*との偏差からPI制御などの演算により出力電圧vdcを所望の値に制御するための出力制御量i**を求める(ステップS100)。
【0045】
次に、比較部22は、入力電圧検出値vinと、ステップS10又は11で補正した制御切替指令電圧vo1*+a、vo2*+bとを比較し、電源主回路部1の制御モードを決定する(ステップS12)。すなわち、vin≦vo1*+aの場合は昇圧制御を行うため、比較部22は、前段のセレクタ23の共通接点cを昇圧制御側の個別接点aに接続し、また、後段のセレクタ26cの各昇圧制御側の個別接点aを共通接点cに接続する。vin≧vo2*+bの場合は降圧制御を行うため、比較部22は、前段のセレクタ23の共通接点cを降圧制御側の個別接点bに接続し、また、後段のセレクタ26cの各降圧制御側の個別接点bを共通接点cに接続する。vo1*+a<vin<vo2*+bの場合は昇降圧制御を行うため、比較部22は、前段のセレクタ23の共通接点cを昇降圧制御側の個別接点dに接続し、また、後段のセレクタ26cの各昇降圧制御側の個別接点dを共通接点cに接続する。
【0046】
次に、目標ピーク電流演算部24a、24b、24dは、それぞれ昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御のための目標ピーク電流iref*を演算する(ステップS13〜S15)。
【0047】
ここで、交流入力電流iacが交流入力電圧vacとほぼ同位相で同波形となるように全波整流後の入力電流iinを制御するPFC制御を行うために、目標リアクトル電流iL*を求め、前述の式(1)に示したように、この目標リアクトル電流iL*の2倍の値を目標ピーク電流iref*として設定する。
【0048】
前述したように、昇圧制御のときリアクトルLには入力電流iinに対応した電流が流れ、降圧制御のときリアクトルLには出力電流ioに対応した電流が流れ、昇降圧制御のときリアクトルLには入力電流iin又は出力電流ioに対応した電流が流れるため、電源制御部2がコンバータ5を昇圧制御、降圧制御、又は昇降圧制御するかによって目標リアクトル電流iL*の演算方法を変更する。
【0049】
昇圧制御時には、リアクトルLには全波整流後の入力電流iinに対応した電流が流れるため、目標リアクトル電流iL*の制御は、入力電流iinに対応する電流を制御することとなる。よって、目標ピーク電流演算部24aにおいて、まず入力電流iinの目標値である目標入力電流iin*と前述の出力制御量i**とを用いて、次の式(2)により目標リアクトル電流iL*を算出する。
【0050】
iL*=iin*×i** ・・・(2)
【0051】
そして、目標入力電流iin*を入力電圧|vac|を検出して得られる入力電圧検出値vinと同じ位相で、同じ脈流波形とするためには、目標入力電流iin*に代えて入力電圧検出値vinを使用すればよい。したがって、昇圧制御時の目標リアクトル電流iL*は、次の式(3)により設定することができる。
【0052】
iL*=vin×i** ・・・(3)
【0053】
そして、目標ピーク電流演算部24aは、ピーク電流制御による目標ピーク電流iref*を前述の式(1)と前記の式(3)とを用いて、次の式(4)により設定する。
【0054】
iref*=2×iL*=2×vin×i** ・・・(4)
【0055】
また、降圧制御時には、リアクトルLには出力電流ioに対応した電流が流れるため、目標リアクトル電流iL*の制御は出力電流ioに対応する電流を制御することとなる。よって、目標ピーク電流演算部24bにおいて、まず出力電流ioと前述の出力制御量i**とを用いて、次の式(5)により目標リアクトル電流iL*を算出する。
【0056】
iL*=io×i** ・・・(5)
【0057】
電源主回路部1の電力変換効率を100%と仮定すると、入力電力と出力電力はエネルギー保存の法則から等しくなるので、出力電流ioは、目標入力電流iin*、入力電圧検出値vin、および出力電圧検出値voを用いて、次の式(6)により換算することができる。
【0058】
io=(vin・iin*)/vo ・・・(6)
【0059】
よって、式(5)と式(6)とから、
【0060】
iL*={(vin・iin*)/vo}×i** ・・・(7)
【0061】
ここで、目標入力電流iin*を入力電圧|vac|を検出して得られる入力電圧検出値vinと同じ位相で、同じ脈流波形とするためには、目標入力電流iin*に代えて入力電圧検出値vinを使用すればよい。したがって、降圧制御時の目標リアクトル電流iL*は、次の式(8)により設定することができる。
【0062】
iL*=(vin/vo)×i** ・・・(8)
【0063】
そして、目標ピーク電流演算部24bは、ピーク電流制御による目標ピーク電流iref*を前述の式(1)と前記の式(8)とを用いて、次の式(9)により設定する。
【0064】
iref*=2×i*L=(2×vin/vo)×i** ・・・(9)
【0065】
さらに、昇降圧制御時には、第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2を同期して同時にオンオフ制御し、また、昇降圧制御時には入出力電圧差が小さい(|vac|≒vdc)ので、第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2のスイッチングのデューティ比は約50%程度である。したがって、昇降圧制御時の目標リアクトル電流iL*は、第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2が昇圧制御時の入力電流に対応した値(式(3)参照)の2倍(式(10))で、また、降圧制御時の出力電流に対応した値(式(8)参照)の2倍(式(11))で簡易的に計算することができる。
【0066】
iL*=2×vin×i** ・・・(10)
【0067】
iL*=2×vin/vo×i** ・・・(11)
【0068】
そして、目標ピーク電流演算部24dは、ピーク電流制御における目標ピーク電流iref*を前述の式(1)と前記の式(10)、(11)とを用いて、次の式(12)、(13)に設定する。
【0069】
iref*=2×iL*=2×2×vin×i** ・・・(12)
【0070】
iref*=2×iL*=2×(2×vin/vo)×i** ・・・(13)
【0071】
なお、入出力電圧差がほぼ0のときの昇降圧制御時に用いる目標ピーク電流演算式は式(12)でも式(13)でも同様の値となり、どちらを適用しても構わない。
【0072】
次に、スイッチ信号生成部25a、25b、25dは、電源主回路部1のリアクトル電流検出部6によりリアクトル電流iLを検出して取り込む(ステップS16)。そして、リアクトル電流iLと目標ピーク電流演算部24a、24b、24dで得られた各目標ピーク電流iref*を用いてピーク電流制御を行うためのスイッチ信号を生成する(ステップS17)。
【0073】
次に、スイッチ制御部26a、26b、26dは、ステップS17で生成した各スイッチ信号と昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御に応じたスイッチングパターンにより第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2のスイッチ制御を行う。すなわち、昇圧制御の場合、スイッチ制御部26aは、昇圧型アームを構成する第2スイッチング素子Q2に対してオンオフ用のスイッチ信号を、また、第1スイッチング素子Q1を常にオンするスイッチ信号を、それぞれ生成して出力する(ステップS18)。
【0074】
降圧制御の場合、スイッチ制御部26bは、降圧型アームを構成する第1スイッチング素子Q1に対してオンオフ用のスイッチ信号を、また、第2スイッチング素子Q2を常にオフするスイッチ信号をそれぞれ生成して出力する(ステップS19)。
【0075】
昇降圧制御の場合、スイッチ制御部26dは、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2に対して同期させたオンオフ用のスイッチ信号を生成して出力する(ステップS20)。
【0076】
なお、実施の形態1では、電源制御部2において、初期設定部20、制御切替指令電圧補正値決定部21、比較部22、セレクタ23、目標ピーク電流演算部24a、24b、24d、スイッチ信号生成部25a、25b、25d、スイッチ制御部26a、26b、26d、出力制御部30を機能ごとにブロックに分けているが、制御プログラムを用いてこのような各機能の制御をマイクロコンピュータで実現することも可能である。
【0077】
また、実施の形態1では、第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*とその補正値a1、a2、b1、b2をテーブルに格納する方法を示したが、第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*を補正した4つの値vo1*+a1、vo1*+a2、vo2*+b1、vo2*+b2を直接メモリ内に格納する方法でも構わない。
【0078】
さらに、前記では、テーブルに格納した第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*とその補正値a1、a2、b1、b2や、メモリに格納した4つの値vo1*+a1、vo1*+a2、vo2*+b1、vo2*+b2を用いて制御切替指令電圧を導き出していたが、その代わりに、実際の入出力電圧検出値vin、voを用いて、電源制御部2内の演算により制御切替指令電圧を算出してもよい。
【0079】
また、前記では、入力電圧検出部7に、一定の時定数(RC定数)を有する分圧抵抗R2及びコンデンサCinからなるローパスフィルタを備えたものを開示しているが、これに限らず、一定の時定数を有すると共に検出する入力電圧の雑音を減衰するフィルタを備えたものでも構わない。
【0080】
以上のように、実施の形態1によれば、昇降圧コンバータを制御するモードとして昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御のうちのいずれか二つの制御モード間を切り替えるタイミングを、入力電圧検出部により検出した入力電圧検出値と、制御モードを切り替える電圧指令値である制御切替指令電圧をローパスフィルタを通して検出した入力電圧検出値の検出遅れに基づいて補正した値とを比較することにより決定するようにしたので、制御モード切替時の入力電流歪みを抑制することができ、電力変換装置の力率を向上させることが可能となる。
【0081】
また、制御切替指令電圧を補正するための補正値として、入力電圧検出部で検出した現在の入力電圧検出値が、入力電圧波形の傾きが正または負のいずれの部分にあるかに基づいて決定するようにしたので、制御モードの切り替えが最適なタイミングとなり、入力電流歪みの抑制及び電力変換装置の力率の向上を図ることができる。
【0082】
さらに、制御切替指令電圧を補正するための補正値として、入力電圧のレベル、目標とする出力電圧のレベル、入力電圧の周波数のうち少なくとも1つの条件に基づいて決定するようにしたので、制御モードの切り替えが最適なタイミングとなり、入力電流歪みの抑制及び電力変換装置の力率の向上を図ることができる。
【0083】
なお、この実施の形態1では、リアクトル電流iLの電流制御方式はピーク電流制御方式として説明したが、このようなピーク電流制御方式に限ることはない。
例えば、図15に示すように、目標リアクトル電流iL*に対して一定幅±ΔTの上下2つの第1及び第2目標リアクトル電流iL1*、iL2*を定め、第1目標リアクトル電流iL1*と第2目標リアクトル電流iL2*の間でリアクトル電流iLを増減させるヒステリシスコンパレータ制御方式を適用することができる。
また、図16に示すように、上限目標リアクトル電流iL3*とその分圧値の下限目標リアクトル電流iL4*との中心位置に目標リアクトル電流iL*が位置するように上限目標リアクトル電流iL3*を定め、両目標リアクトル電流iL3*とiL4*の間でリアクトル電流iLを増減させるウインドウコンパレータ制御方式などを適用することも可能である。
【0084】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、入出力電圧情報に応じた制御切替指令電圧vo1*、vo2*及びその補正値a1、a2、b1、b2をテーブルに、あるいは、制御切替指令電圧補正値vo1*+a1、vo1*+a2、vo2*+b1、vo2*+b2をメモリに格納しておく方法について説明したが、実施の形態2で説明するように、あらかじめローパスフィルタの時定数(RC定数)、入力電圧の周波数及び入力電圧のレベル(入力電圧検出値vinのピーク電圧)に対する制御切替指令電圧vo1*、vo2*を用いた近似式を求めておき、この近似式を用いた演算から制御切替指令電圧の補正値a、bを求めるようにしてもよい。
【0085】
図17は、実施の形態2による、制御切替指令電圧とその補正値の関係を近似式で表した図である。図6において入力電圧検出値vinが入力電圧波形(脈流電圧波形)の「左半面」の場合の補正値a1、b1は、ローパスフィルタの時定数(RC定数)に応じた傾きx、v(x、vは正の値)と入力電圧の周波数及び入力電圧のレベルに応じた切片y、w(y、wは負の値)を用いて第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*を変数とした1次関数a=x・vo1*+y、b=v・vo2*+wで近似することができる。第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*が大きくなるにつれて、制御モード切替点が入力電圧波形のピーク付近に近づくため、ローパスフィルタによる入力電圧検出遅れに対する電圧変動の影響が小さくなり、補正値a1、b1の絶対値が小さくなる。すなわち、第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*の増加にともない補正値a1、b1が0に近づく、図17のa(左半面)、b(左半面)の近似式となる。このとき、前記したように、傾きx、vは正の値、切片y、wは負の値となる。
【0086】
同様に、図6において入力電圧検出値vinが入力電圧波形(脈流電圧波形)の「右半面」の場合の補正値a2、b2は、ローパスフィルタの時定数(RC定数)に応じたx、v(x、vは負の値)と入力電圧の周波数及び入力電圧のレベルに応じた切片y、w(y、wは正の値)を用いて第1及び第2制御切替指令電圧値vo1*、vo2*を変数とした1次関数a=x・vo1*+y、b=v・vo2*+wで近似することができる。第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*が大きくなるにつれて、制御モード切替点が入力電圧波形のピーク付近に近づくため、ローパスフィルタによる入力電圧検出遅れに対する電圧変動の影響が小さくなり、補正値a2、b2の絶対値が小さくなる。すなわち、第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*の増加にともない補正値a2、b2が0に近づく、図17のa(右半面)、b(右半面)の近似式となる。このとき、前記したように、傾きx、vは負の値、切片y、wは正の値となる。
【0087】
以上のように、実施の形態2によれば、制御切替指令電圧とその補正値の関係を1次関数で表せる近似式を用いることにより、大規模な演算回路または演算時間を必要とせず、テーブルを格納するメモリ使用容量を削減することができる。
【0088】
実施の形態3.
前記実施の形態1、2では、入力電圧検出値vinが制御切替指令電圧を補正した値vo1*+a、vo2*+b付近にあるとき、入力電圧にノイズが干渉することで、2つの制御モードの切替を繰り返し行ってしまう可能性があり、電力変換装置の力率の低下や高調波発生の要因となる。この実施の形態3は、制御モード切替の瞬間に発生する繰り返し切替の問題を解決することを目的としたものである。
【0089】
具体的な方法として、実施の形態3では、入力電圧検出値vinと制御切替指令電圧を補正した値vo1*+a、vo2*+bを比較してその大小関係で制御切替を行う際に、前記の大小関係が連続して続いた場合のみ制御モードを切り替えるといったヒステリシス制御を導入したものである。
【0090】
図18及び図19に実施の形態3における電力変換装置の電源制御部2の制御フローチャートを示す。電力変換装置の構成を示す電源主回路部1及び電源制御部2は実施の形態1の図1及び図2と同様であり、電源制御部2の比較部22の動作が、実施の形態1から変更されている。
【0091】
以下、具体的な制御内容について、実施の形態1から変更されたところのみ、図18及び図19のフローチャートに基づいて説明する。
【0092】
まず、ステップS1からステップS100までは、実施の形態1の図13のフローチャートの処理と同様なので説明を省略する。
次に、ステップS101において、比較部22は、制御切替指令電圧補正値決定部21により決定した制御切替指令電圧補正値a、bに基づき、入力電圧検出値vinと制御切替指令電圧を補正した値vo1*+a、vo2*+bの大小関係を比較する。
【0093】
ステップS101の大小関係の比較結果がvin≦vo1*+aの場合、flagの値を確認する(ステップS102)。flag=1ならばcount1に1を加算し(ステップS103)、count1の値を確認する(ステップS104)。ステップS104でcount1の値が5ならば、5回連続で大小関係の比較結果が同じと判断されたこととなり、count1を0にすることでクリアしたあと(ステップS105)、ステップS13の昇圧制御モードに進む。すなわち、比較部22は、前段のセレクタ23の共通接点cを昇圧制御側の個別接点aに接続すると共に、後段のセレクタ26cの各昇圧制御側の個別接点aを共通接点cに接続することで、昇圧制御を実行する。
【0094】
一方、前記のステップS102において、flag=1でなければ、前回の大小関係比較においては、今回の大小関係比較とは別の判断であったため、制御モードは変更せずにcount1を1とし、count2及びcount3を0にすることでクリアし、flagには1を代入する(ステップS107)。ステップS107の処理を行なった場合と、ステップS104においてまだ5回連続では同じ大小関係比較結果を得てない状態の場合には、セレクタ23及び26cによる制御モード切替は行わず、前の周期で動作した制御モードを実行する(ステップS108)。
【0095】
次に、ステップS101の大小関係の比較結果がvin≧vo2*+bの場合、flagの値を確認する(ステップS109)。flag=2ならばcount2に1を加算し(ステップS110)、count2の値を確認する(ステップS111)。ステップS111でcount2の値が5ならば、5回連続で大小関係の比較結果が同じと判断されたこととなり、count2を0にすることでクリアしたあと(ステップS112)、ステップS14の降圧制御モードに進む。すなわち、比較部22は、前段のセレクタ23の共通接点cを降圧制御側の個別接点bに接続すると共に、後段のセレクタ26cの各降圧制御側の個別接点bを共通接点cに接続することで、降圧制御を実行する。
【0096】
一方、前記のステップS109において、flag=2でなければ、前回の大小関係比較においては、今回の大小関係比較とは別の判断であったため、制御モードは変更せずにcount2を1とし、count1とcount3を0にすることでクリアし、flagには2を代入する(ステップS114)。ステップS114の処理を行なった場合と、ステップS111においてまだ5回連続では同じ大小関係比較結果を得てない状態の場合には、セレクタ23及び26cによる制御モード切替は行わず、前の周期で動作した制御モードを実行する(ステップS108)。
【0097】
次に、ステップS101における大小関係の比較結果がvo1*+a<vin<vo2*+bの場合、flagの値を確認する(ステップS116)。flag=3ならばcount3に1を加算し(ステップS117)、count3の値を確認する(ステップS118)。ステップS118でcount3の値が5ならば、5回連続で大小関係の比較結果が同じと判断されたこととなり、count3を0にすることでクリアしたあと(ステップS119)、ステップS15の昇降圧制御モードに進む。すなわち、比較部22は、前段のセレクタ23の共通接点cを昇降圧制御側の個別接点dに接続すると共に、後段のセレクタ26cの各昇降圧制御側の個別接点dを共通接点cに接続することで、昇降圧制御を実行する。
【0098】
一方、前記のステップS116において、flag=3でなければ前回の大小関係比較においては、今回の大小関係比較とは別の判断であったため、制御モードは変更せずにcount3を1とし、count1とcount2を0にすることでクリアし、flagには3を代入する(ステップS121)。ステップS121の処理を行なった場合と、ステップS118においてまだ5回連続では同じ大小関係比較結果を得てない状態の場合には、セレクタ23及び26cによる制御モード切替は行わず、前の周期で動作した制御モードを実行する(ステップS108)。
【0099】
なお、ステップS104、S111、S118において、制御切替するための条件として、同じ大小関係比較結果を得るカウント数を5回としているが、このカウント数はその他の複数回数に変更しても良い。
【0100】
また、ステップS13、S14、S15以降の処理は、実施の形態1の図14のフローチャートの処理と同様なので説明を省略する。
【0101】
以上のように、この実施の形態3は、入力電圧検出値vinと制御切替指令電圧を補正した値vo1*+a、vo2*+bを比較してその大小関係で制御切替を行う際に、前記の大小関係が連続して続いた場合のみ制御モードを切り替えるようにしたので、制御モード連続切替による高調波発生や入力電流歪みを防止することができ、電力変換装置の力率を向上させることができる。
【0102】
実施の形態4.
実施の形態4では、本発明の電力変換装置の適用例として、負荷9にLED(Light Emitting Diode)を接続した場合の制御モード切替について説明する。LED照明用電源は様々な入出力電圧条件に対応することが求められており、例えば、入力電圧範囲がAC100V〜AC242V、出力電圧範囲がDC50V〜DC200Vの要求があり、本発明の前記実施の形態1〜3を用いることで、これらの広範囲な入出力電圧条件に対応した制御モード切替を高力率に行なうことが可能となる。
【0103】
図20及び図21はこの発明の実施の形態4による電力変換装置の電源主回路部及び電源制御部を示す回路ブロック図であり、実施の形態1(図1及び図2)と同一もしくは対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0104】
この実施の形態4では、実施の形態1(図1及び図2)に示した電力変換装置を前提として、複数のLEDを直列に接続したものを負荷9とした場合について説明する。しかしながら、これに限らず、実施の形態2、実施の形態3に示した電力変換装置を前提として、複数のLEDを直列に接続したものを負荷9とした場合であってもよい。また、負荷9となるLEDの接続方法は、単に直列接続した場合に限らず並列接続や直並列接続としてもよい。
【0105】
ここで、LEDは通常、その特性から電流制御が適している。このため、図20及び図21では、実施の形態1の回路構成(図1及び図2)に対し、LEDに流れるLED電流iLEDを検出するための検出回路としてLED電流検出部10が追加されている。また、電源制御部2において、出力制御部30に対する出力電圧検出値voと目標出力電圧vo*の入力に代えて、LED電流検出部10で検出されたLED電流iLED、および目標出力電流iLED*が入力されている。そして、出力制御部30は、LED電流iLEDと目標出力電流iLED*との偏差からPI制御などの演算により負荷電流を所望の値に制御するための出力制御量i**を求める。その他の制御は、実施の形態1と同様である。
【0106】
図20及び図21の構成によれば、前記実施の形態と同様の制御により、LEDに流れるLED電流iLEDの制御を行うことができる。また、光量を調整するための調光機能を搭載する場合は、外部の機器から前記の目標出力電流iLED*を可変するような構成とすれば、調光機能も実現することができる。
【0107】
このように、この実施の形態4では、実施の形態1〜3において負荷9として複数のLEDを設けた場合、LED電流検出部10で検出されたLED電流iLEDを電源制御部2にフィードバックし、出力制御部30でLED電流iLEDが目標出力電流iLED*となるようにすると共に、入力電流iacが入力電圧vacと同位相、同波形となるように演算された目標リアクトル電流を算出することで、広範囲な入出力電圧条件に対応した安価で高力率なLED照明用電源を構成することができる。
【0108】
なお、実施の形態4では、負荷としてLEDを接続した場合について説明したが、直流の負荷電流を制御する機器全般に適用することができ、負荷電流検出部で検出された負荷電流を電源制御部にフィードバックし、出力制御部で負荷電流が目標負荷電流となるように制御することができる。
【0109】
実施の形態5.
前記実施の形態1〜4では、電源制御部2は、コンバータ5を制御するモードとして昇圧制御、降圧制御、昇降圧制御の3つの制御モードを有すると共に、入力電圧検出値vinと、第1及び第2制御切替指令電圧vo1*、vo2*を補正した値とを比較して、制御モードを決定していた。
しかし、制御モード切替時の入力電流歪みによる力率低下などを懸念した場合に、切替回数を減らす目的で前記の「昇圧制御+昇降圧制御+降圧制御」の組み合わせだけでなく、「昇圧制御+降圧制御」、「昇圧制御+昇降圧制御」、「昇降圧制御+降圧制御」の組み合わせとしても良い。
【0110】
「昇圧制御+降圧制御」の場合、制御切替指令信号を目標出力電圧vo*として、入力電圧検出値vinと、制御切替指令電圧(目標出力電圧)vo*を補正した値とを比較して、制御モードを切り替えればよい。
【0111】
また、「昇圧制御+昇降圧制御」の場合、入力電圧検出値vinと、第1制御切替指令電圧vo1*を補正した値とを比較して、制御モードを切り替えればよい。
【0112】
さらに、「昇降圧制御+降圧制御」の場合、入力電圧検出値vinと、第2制御切替指令電圧vo2*を補正した値とを比較して、制御モードを切り替えればよい。
【0113】
ただし、実施の形態1における昇降圧制御時の目標リアクトル電流iL*の演算式は、入出力電圧差が小さいとき(|vac|≒vdc)を想定した式であり、入出力電圧差が大きくなる条件でも昇降圧制御が必要な場合には式(10)または式(11)の演算式は適さない。
【0114】
ここでは、制御切替時に発生する懸念のある目標ピーク電流iref*の演算値の変更と制御に応じたスイッチングパターンの変更にタイミングのズレが生じることによる力率低下を防ぐことを目的として、広い入力電圧|vac|の範囲において昇降圧制御を用いる場合に、適した目標リアクトル電流iL*の演算式を提供する。
【0115】
図22にリアクトル電流のピーク電流制御概略図を示す。昇降圧制御でピーク電流制御をする場合、第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2がオンの期間にはリアクトルLにエネルギーを蓄積し、そのデューティをdとすると、このオン期間に流れる電流は式(14)となる。また、第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2がオフの期間にはリアクトルLからエネルギーを放出し、そのデューティを(1−d)とすると、このオフ期間に流れる電流は式(15)となる。
【0116】
Δi+=(vin/L)×d ・・・(14)
Δi−=(vo/L)×(1−d) ・・・(15)
【0117】
ピーク電流制御を用いているため、この電流増加分Δi+と電流減少分Δi−は等しく、式(16)が成立する。
【0118】
Δi+=Δi− ・・・(16)
【0119】
式(14)、式(15)、式(16)より、オンデューティdは式(17)となる。
【0120】
d=vo/(vo+vin) ・・・(17)
【0121】
次に、リアクトル電流iL*は目標入力電流iin*を第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2のオンデューティdで除算したものと考えられ、式(18)が求まる。
【0122】
iL*=iin*/d=iin*×(vo+vin)/vo ・・・(18)
【0123】
なお、リアクトル電流iL*は出力電流ioを第1及び第2スイッチング素子Q1、Q2のオフデューティ(1−d)で除算したものとも考えられ、この関係性と入力電流iin*を出力電流ioに換算する式(6)を用いて、式(19)で計算しても同様の結果が得られる。
【0124】
iL*=io/(1−d)=iin*×(vo+vin)/vo ・・・(19)
【0125】
そして、目標入力電流iin*を入力電圧|vac|を検出して得られる入力電圧検出値vinと同じ位相で、同じ脈流波形とするために、目標入力電流iin*に代えて入力電圧検出値vinを使用し、さらに前述の出力制御量i**とを用いて、昇降圧制御時の目標リアクトル電流iL*は、次の式(20)により設定することができる。
【0126】
iL*=vin×(vo+vin)/vo×i** ・・・(20)
【0127】
続いて、目標ピーク電流演算部24dは、ピーク電流制御における目標ピーク電流iref*を前述の式(1)と前記の式(20)を用いて、次の式(21)により設定する。
【0128】
iref*=2×iL*=2×vin×(vo+vin)/vo×i** (21)
【0129】
その他の制御は、実施の形態1の場合と同様であるため、説明は省略する。
【0130】
このように、制御切替時に発生する懸念のある目標ピーク電流iref*の演算値の変更と制御に応じたスイッチングパターンの変更にタイミングのズレが生じることによる力率低下を防ぐことを目的とし、昇降圧制御を広い入力電圧範囲で使用する場合には、目標リアクトル電流iL*を式(20)に基づいて算出することで、交流入力電流iacに歪みが発生することなく、交流入力電流iacを交流入力電圧vacと同位相、同波形とし、力率を向上させることができる。
【0131】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 電源主回路部、2 電源制御部、3 交流電源、4 全波整流回路、
5 昇降圧コンバータ、6 リアクトル電流検出部、7 入力電圧検出部、
8 出力電圧検出部、9 負荷、10 LED電流検出部、20 初期設定部、
21 制御切替指令電圧補正値決定部、22 比較部、23,26c セレクタ、
24a,24b,24d 目標ピーク電流演算部、
25a,25b,25d スイッチ信号生成部、
26a,26b,26d スイッチ制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22